説明

電子レンジ調理用容器

【課題】電子レンジ調理した後にも容器取手部が容器取り出しに適する強度を有し、かつ伝熱を防いで容器取手部を介して取り出せる電子レンジ調理用容器を提供する。
【解決手段】合成樹脂シートをシート成型法で成型してなる電子レンジ調理用容器であって、内容物収納部とその全周に設けられたフランジと、前記フランジの全周に設けられた容器下方に延びる長さ4mm以上のスカートとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ調理用容器に関し、より詳細には、電子レンジ調理後に持って熱くなく、更に強度に優れる電子レンジ調理用容器を提供する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵または冷凍で販売され、家庭で電子レンジ加熱して食べるレンジグラタンが販売されている。このような加工食品に使用される電子レンジ調理用容器としては、紙絞りトレーや紙モールドトレーなどの紙容器と、シート成型プラスチックトレーとがある。
【0003】
紙容器は、環境イメージは良いと思われるが種々の問題を有している。例えば、紙絞りトレーは、容器に絞りしわが出るため見栄えが悪く、容器の剛性に劣るため、調理後のハンドリング性が十分でない。また、成型の制約上、自動供給の際の供給機適性が悪い場合がある。また、紙モールドトレーは、形状はかなり自由に設計できるのであるが、容器の製造に手間がかかるため割高となりやすい。また、通常、この紙容器は、表面に紙面が露出するため、紙粉等が発生しやすいので取り扱いに注意が必要である。これを改善するため、紙表面を樹脂層でコーティングした容器があるが、更にコストが高くなる。
【0004】
一方、シート成型のプラスチック容器は安価に製造でき、形状的にも自由度が高く種々の形状のものを容易に製造できるメリットがある。このようなプラスチック製の電子レンジ調理用容器は、充填した調理食品を加熱して食するための容器であり、従来から加熱むらをなくす努力がなされてきた。例えば、容器底部に、上方あるいは下方に突出する角を有する凸部を設け、その凸部で囲まれる平面を有した構造とする容器がある(特許公報1)。該公報に記載される容器には、更に容器上部に水平に突出するフランジが設けられている。
【0005】
一方、加熱むらの問題は、電子レンジの改良によって低減する傾向にあり、次いで調理後の容器取り出しの問題が取り上げられるようになっている。すなわち、電子レンジ調理用容器は、電子レンジから取り出す際に内容物の加熱によって容器も熱くなるため、取り出しが困難になる場合が多い。このような問題を解決するものとして、食品を収納する容器本体の上部外周面に、人の指を浮き上がらせ、放熱効果もある断熱フランジを複数本形成した電子レンジ用の食品容器がある(特許文献2)。該公報に記載される容器は、容器本体と一体的に成型されるものであり、容器の外側に幅が0.5〜1.5mm、高さ0.5〜4mmのフランジを容器外周に3段に亘って突出させたものである。
【特許文献1】特開平9−215594号公報
【特許文献2】特開2000−7054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従前の電子レンジ調理用容器は、容易に製造でき、かつ電子レンジ調理によって加熱された容器の取り扱いに優れる容器とはいえない。例えば、上記特許文献1記載の容器は、容器上部に設けたフランジ幅が狭いため、指が容器側面に当たりやすく、加熱調理後の容器の取り出しが容易でない。また、特許文献2記載の容器は、フランジが多いため製造が困難であり、多量の樹脂を使用するため製造コストも高くなる。
【0007】
また、加工食品に使用する電子レンジ調理用容器としては、シート成型法によるものがコストや生産性の点で優れるが、シート成型法は本来加熱によって樹脂を軟化させて成型するものであるから、この方法で製造された容器は、電子レンジ調理後に容器が加熱されると容器が軟化して変形し、安定した持ち運びが困難となる。特に、シート成型法の場合には、容器フランジや取手部の厚みが薄い構造となるため、特に強度の点でも十分でない。
【0008】
更に、薄いシートを成型したものであるから見栄えが悪い場合があり、商品価値を低下させる恐れもある。
【0009】
また、シート成型法による電子レンジ調理用容器は、これに内容物を充填して加工食品として市場に出されるが、内容物充填の際の生産性を向上させるため、積み重ねた容器どうしがブロッキングしないように、予め容器にスタックリブを設けることが一般的である。しかしながらスタックリブは内容物収納部側壁周縁部に不規則な凹凸が存在することとなり、食物を充填する容器としての美観を損ない、商品価値を低下させる。
【0010】
また、単一素材のシートを用いて製造した容器には、部材の特質によって容器への印刷効果を期待することができず、この点でも美観が損なわれる。
【0011】
このような現状下、発明は、シート成型法による容器でありながら、陶器のトレーのような見栄えを有し、加熱後の商品取り出しの際に持って熱くなく、更に安定的にハンドリングできる電子レンジ調理用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、シート成型法による電子レンジ調理用容器の形状を詳細に検討した結果、容器上部にフランジを設け、かつフランジの外周に容器下方に向かうスカートを長さ4mm以上で設けると、電子レンジ調理後に加熱された容器を取り出す際にも、熱さを感じることなく容易に取り出せること、およびスカートを設けることで構造的に強度が向上し、加熱後の容器変形を効果的に抑制できること、容器側壁に逆テーパー構造の段を設けることで、ブロッキングを防止できること、及び合成樹脂シートを積層体とすることで容器を着色することができ、容易に美観を向上させうることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スカートを有するため、電子レンジ調理後に容器が熱くなっても、容易に電子レンジから取り出すことができ、かつ強度を向上させることができ、調理後の熱による軟化に対する安定性に優れる。
【0014】
本発明によれば、逆テーパー構造を設けることで、容器の自動供給を容易に行うことができる容器形状となり、従来のスタックリブを容器周上にランダムに数箇所設ける方法と比較して、調理具としての見栄えが向上する。
【0015】
また、本発明によれば、合成樹脂シートの表面層に耐熱性樹脂フィルムを積層することで、着色を容易にし、色を選定することでより洋食器や陶器等の質感に近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、合成樹脂シートをシート成型法で成型してなる電子レンジ調理用容器であって、内容物収納部とその全周に設けられたフランジと、前記フランジの全周に設けられた容器下方に延びる長さ4mm以上のスカートとを有することを特徴とする、電子レンジ調理用容器である。本発明の実施態様の一例を示す図1を使用して、以下、本発明を説明する。
【0017】
本発明の電子レンジ調理用容器は、図1に示すように、内容物収納部10と、その全周に亘って設けられたフランジ40とを有する。この際、該フランジ40の一部が幅広に構成され、内容物収納部10の取手部50として機能するものであってもよい。なお、収納部10は側壁20と底部30とを含む。
【0018】
本発明では、フランジ40は、内容物収納部10の上部から横方向に伸びた部分であれば、その形状は内容物収納部10の側壁20から略直角に横方向かつ水平に延伸するものであっても、前記側壁20から湾曲しつつ横方向に張り出す形状であってもよい。また、内容物収納部10の上部から横方向に伸びた部分であれば、フランジ40の全周に亘って同じ傾斜や湾曲である必要はなく、後記するように、取手50の先端が上方に向かって傾斜していてもよい。図1(b)に、図1に示す容器の短径側の横側面図を示すが、やや湾曲したフランジ40を有するものである。
【0019】
内容物収納部10の形状は特に限定されず、開口部は円形、楕円形、方形、多角形などのいずれでもよく、収納する内容物によって適宜選択することができ、収納部10の深さも、収納する内容物によって適宜選択することができる。また、底部30は、平面であってもよく、底部に丸く凸部をもうけてもよい。図1(a)には、底部30が平面の容器を示す。
【0020】
また、本発明では上記したようにフランジ40の一部が幅広に構成され、内容物収納部10の取手部50として機能するものであってもよく、取手部50の形状やサイズも内容物収納部10の形状や、該収納部に充填する内容物の種類に応じて適宜選択することができる。例えばグラタンを充填する場合には従来のグラタン皿に近似した形状とし、例えば、短径100〜150mm、長径150〜220mmの略楕円形の開口部を有する、深さ20〜40mmの収納部とし、長径の両端のフランジを幅広として取手部50としてもよい。同様に、チーズホンデュを収納する場合にはホンデュ鍋に近似した形状とすることができる。
【0021】
本発明では、フランジ40および取手部50の全周に亘り、容器下方向かって4mm以上、好ましくは5〜10mmの長さのスカート60が設けられることを特徴とする。なお、スカート60の長さは、図1(b)に示すように、フランジ40の頂部からスカートの最下部にいたる高さ(h1)である。
【0022】
このようにフランジ40にスカート60を設けると、電子レンジ調理して加熱された内容物を収納した容器100を電子レンジから取り出す際に、指の平にスカート60を線で接して取り出すことができるため、容器の取り扱いが容易となる。しかも、スカート60の長さが4mm以上であれば、立体構造的に強度が増加され、加熱された内容物を収納した容器100であっても、電子レンジからの取り出しに十分な容器の強度を確保することができる。従前から、電子レンジ調理用容器の開発は、加熱ムラの対策に主眼がおかれ、次いで電子レンジ調理後に取り出す際の容器の加熱を問題とする技術が散見されるに過ぎず、シート成型品における加熱後の容器の強度を問題とするものは少なかった。これは、シート成型法が、本来加熱によって樹脂を軟化させて成型するものであって、電子レンジ調理後の容器の軟化を回避するには、材質の変更などが一般的なためである。特に、シート成型法では、一枚のシートから凹凸を形成させて容器を調製するため、フランジを形成することや、ましてフランジにスカートを設けることは容易でない。しかしながら本発明では、フランジにスカートを設け、かつその長さを4mm以上とすることで、容器強度を構造的に増加させ、加熱後であっても容器の変形を低減させ、安定的なハンドリングを可能とした。しかも、4mm以上のスカートの配設により、内容物面からの距離が確保されるため、放熱効果により熱さを感じることなく容器を取り扱うことができる。なお、スカート60は、4mm以上であればフランジ40の全周に亘って均一の長さである必要はなく、例えば、取手50近傍のみ更に長くしてもよい。
【0023】
本発明の電子レンジ調理用容器において、前記内容物収納部10の側壁20には、逆テーパー構造の段が設けられていることが好ましい。シート成型の場合には、同一形状の容器が加工成型されるため、これらを重ねると相互に密着し、いわゆるブロッキングを生ずる場合が多い。ブロッキングが発生すると、容器を一枚づつはがして取り出すことが困難となり、例えば次工程で容器に内容物を収納する場合には、2枚の容器に収納してしまうなどの問題が発生する。このようなブロッキングを防ぐには、異なる位置にスタックリブを設けた容器を、ブロッキングが発生しないように交互に重ねるなどの操作が必要であり、工程が煩雑であった。しかしながら本発明によれば、逆テーパー構造を設けることで、同一形状の容器の場合でも、ブロッキングをおこさせずに容器を重ねることができる。しかも、スタックリブなどと相違して、内容物収納部10の側壁の全周に亘って逆テーパー構造を設けた場合には、容器の外観と融合して美観を損なうことなく、容器の見栄えが向上する。このような簡便な構造によって、該容器を用いて加工済みグラタンの生産性を向上させることができる。
【0024】
図2(a)に二枚の容器を重ねた場合の断面図を示す。上段の容器10の側壁20に設けた逆テーパー構造の段25が、下段の容器10のフランジ40と接触して2つの容器底部30との間に空間を形成し、このため各容器が密着することがない。図2(b)に、フランジ40近傍の逆テーパー構造の拡大図を示し、図2(c)に、傾斜角(θ)で傾斜して取り付けられた取手部50近傍の逆テーパー構造の拡大図を示す。なお、図2(b)、(c)において、容器側壁20の上端から逆テーパー構造の段25までの距離をh2で示す。本発明において、容器側壁20の上端から逆テーパー構造の段25までの距離(h2)は、h1〜h1+5mm、より好ましくはh1+1〜h1+2mmである。本発明では、前記したように傾斜を有する取手部50を有し、かつ取手部50のスカート60がフランジ40のスカート60よりも長い場合があるが、このような場合であっても容器側壁20の上端から逆テーパー構造の段25までの距離(h2)が上記範囲であれば、逆テーパー構造の段25によるブロッキング防止機能が阻害されることがない。h2<h1の場合、容器を積み重ねた際に隙間(h3)が得られないため、製造工程の自動供給適性が悪くなる。また、h2>h1+5の場合、容器の積み重ね効率が悪くなり、輸送効率が悪くなる。
【0025】
また、逆テーパー構造における幅w1は、図2(b)に示すように、スタック時の容器間隙をw3、シート厚をw2とした場合に、w1>(2×w3)+w2mm、より好ましくは(2×w3+w2+0.5)〜(2×w3+w2+2)mmである。
【0026】
本発明の電子レンジ調理用容器において、取手部50は、容器10の上方に向かって、水平に対する傾斜角(θ)0〜40°、より好ましくは5〜35°で傾斜して取り付けられていてよい(図2(c)参照)。このような傾斜角を設けることで陶磁器製のグラタン皿に近似した形状とすることができる。
【0027】
また、図2(c)に示すように、取手部50の外方向への突出幅(w4)は、10〜30mm、より好ましくは15〜20mmである。10mmを下回ると両端を左右の指で押さえて持ち上げる際に、容器側壁20に指が接触する場合がある。このため、電子レンジ調理後に内容物の加熱によって収納部10が熱くなっている場合に、指が容器側壁20に接触して熱さを感じる場合がある。一方、30mmを超えると容器のたわみが大きくなり、調理後の容器の取り出しが困難となる場合がある。また、30mmを超えるとしっかりと持った際に指先の腹部分が取手50の面に触れるため持って熱く、見た目のバランスも悪くなり、包材コストも高くなる。
【0028】
取手部50の取付幅としては、少なくとも人差し指、中指、薬指の3本で持つと非常に安定するため、40mm以上、より好ましくは40〜60mmの幅である。
【0029】
本発明の電子レンジ調理用容器では、前記取手部50の天面は、少なくとも一部に曲面を有することが好ましい。なお、天面とは、取手部50のスカート60にいたるまでの略平面の箇所をいう。図3(a)に本発明の容器100の部分平面図を示す。このような曲面55の構造としては特に制限はなく、なだらかでも険しい凹凸であってもよく、例えば図3(a)に示すように天面に設けられた緩やかな凹部であってもよい。図3(b)は、図3(a)で示す容器の部分透視側面図である。このように、天面の一部に曲面55を有すると、取手部50を介して容器100を持ち上げた際に、取手部50に掛かる荷重をその曲面55が吸収するため更に構造的な強度を向上させることができる。しかも、このような曲面は、シート成型法によって取手部50に形成することが容易である。なお、このような曲面55は、天面内に、取手部面積の10〜100%の範囲で設けられていれば、構造的強度の増強に効果がある。
【0030】
本発明の電子レンジ調理用容器は、合成樹脂シートをシート成型法によって調製したものである。シート成型法としては、合成樹脂シートを加熱し、型に減圧、または加圧して、成形品をつくる加工方法であればよく、真空成型法、真空圧空成型法、圧空成型法などのいずれであてもよい。なお、成型時の温度のかけ方により、表面に光沢を出したり、マット調にしたりすることができる。例えば、温度180〜200℃で成型すると表面に光沢がある洋食器のイメージとすることができ、温度250〜300℃で成型するとマット調にすることと和食器のイメージとすることができる。
【0031】
本発明で使用する合成樹脂シートとしては、シート成型法によって従来電子レンジ調理用容器を製造する際に使用される電磁波透過性の種々の合成樹脂を使用することができる。このような合成樹脂としては、例えばポリプロピレン、タルクなどの無機物入りポリプロピレン、結晶化ポリエチレンテレフタレートなどがある。また、シート厚も容器サイズや使用する合成樹脂に合わせて適宜選択することができ、一般には0.4〜1mmである。
【0032】
また、前記合成樹脂シートは、一種の合成樹脂シートからなる単一層であってもよいが、更に、他のフィルムやシートを積層した積層体であってもよい。このような他のフィルムやシートを積層することで、耐熱性や強度を向上させ、遮光性や滑り性を付与することができ、または着色料を含むフィルムを積層する、または印刷を施こしたフィルムを貼り合わせることで容器を着色したり、模様などのデザインを施すことができる。本発明では、樹脂シートに着色した耐熱性樹脂フィルムを積層したものを使用することが好ましい。耐熱性があれば電子レンジ調理後の容器の剛性を確保することができる。このような積層用のフィルムやシートを構成する樹脂としては、未延伸ポリプロピレンフィルム、耐熱性ポリエチレンテレフタレートなどがある。
【0033】
また、本発明で使用する合成樹脂シートは、400〜600nmの光線透過率が5%未満、より好ましくは2%未満の遮光性を有することが好ましい。本発明の電子レンジ調理用容器は、陶磁器製の容器に代えて使用されるものであり、このような遮光性の付与によって陶磁器に近似した質感とすることができる。400〜600nmの光線透過率を、5%未満に調整するには、合成樹脂シートを構成する樹脂層の種類や厚さを調整したり、または、400〜600nmの光線透過率の低い顔料やタルクなどのフィラーを混練したり、またはシートの中間層にカーボン、酸化鉄、酸化チタンなどを含む遮光層を設けるなどの方法によって調整することができる。特に、合成樹脂シートとして、合成樹脂シート層と着色した耐熱性樹脂フィルムとの積層体であれば、収納する内容物に適する色彩に容易に調整することができる。
【0034】
このような積層体としては、前記樹脂シート層と前記着色した耐熱性樹脂フィルムとが接着剤を介して積層されることが好ましい。熱融着による接着では、電子レンジ調理の際の伝熱によって容器の強度が低下したり、積層体がはがれる場合がある。従って、このような接着剤としては、例えば、1液、あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を使用することができる。上記接着剤のコーティング法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。そのコーティング量としては、好ましくは0.1〜10g/m2(乾燥状態)の範囲、より好ましくは1〜5g/m2(乾燥状態)の範囲である。なお、上記接着剤には、例えば、シランカップリング剤などの接着促進剤を任意に添加することができる。
【0035】
また、接着剤の塗布前に、アンカーコート剤などの接着改良剤などをコートすることもできる。このようなアンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、その他の水性または油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。本発明においては、上記アンカーコート剤を、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤などを乾燥して、アンカーコート剤層を形成することができる。上記アンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)の範囲が好ましい。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0037】
実施例1
タルクを30質量%含み、シート厚構成比1:1:1で中間層にカーボンを含有した中間遮光層を有する厚さ0.5mmのポリプロピレンシートに、ポリエステル系ドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製、商品名「TIM593」)を2〜3μmの厚さに塗布し、厚さ30μmの茶色に印刷された未延伸ポリプロピレンを積層してシート成型用の積層体を調製した。該積層体の400〜600nmの光線透過率は、0%であった。
【0038】
このシートを温度260〜270℃で真空シート成型して、図4(a)、(b)、(c)に示す、電子レンジ調理用容器を製造した。該容器は、長径150mm、短径115mm、深さ25mmの内容物収納部と、幅5mmのフランジ、フランジのスカート5mm、取手部(長さ60mm、突出幅15mm、傾斜各15°)、取手部のスカート8mmである。また、内容物収納部の上端から5mmの位置に深さ2mmの逆テーパー構造が設けられ、底部には凹部が2本楕円状に設けられていた。
【0039】
実施例2〜5
スカート長さを表1に示すように変化させた以外は、実施例1と同様に操作して、電子レンジ調理用容器を製造した。
【0040】
特性評価
実施例1〜5で得た電子レンジ調理用容器に、それぞれ230gのグラタンを充填し、700wで4.5分間、電子レンジ調理加熱した。調理後の容器について下記官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
(評価方法)
(1) 容器たわみ量は、図5に示すように、容器の取手を固定台に載せ、調理前に対する調理後の容器中央部におけるフランジ上部の降下量(h4)を容器たわみ量として評価した。
フランジ中央部分で沈んだ距離を測定し、容器たわみ量とした。
【0042】
(2)実施例で得た電子レンジ調理用容器について、容器の持ち易さと取手の熱さについて官能評価を行った。
【0043】
持ち易さの評価基準は、○:持ち運び問題なし、△:やや変形があり持ちづらい、×:激しい変形があり内容物がこぼれる、とした。
【0044】
また、取手の熱さの評価基準は、○:熱いと感じない、△:やや熱いと感じる、×:かなり熱いと感じる、とした。
【0045】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)は、本発明の電子レンジ調理用容器の平面図を示し、図1(b)は該容器の短径側側面図、図2(c)は長径側側面図を示す。
【図2】図2(a)は、本発明の電子レンジ調理用容器を二枚重ねた場合の短径側断面図を示し、図2(b)は、図2(a)のフランジ部分の拡大図であり、図2(c)は長径側断面の取手部の拡大図である。
【図3】図3(a)は、本発明の電子レンジ調理用容器の取手部の平面拡大図であり、図3(b)は図3(a)の短径側側面図である。
【図4】図4(a)は、実施例で製造した電子レンジ調理用容器の平面図であり、図4(b)は該容器の長径側横側面図、図4(c)は短径側横側面図を示す。
【図5】実施例における容器たわみ量を説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
10・・・内容物収納部、
20・・・収納部側壁、
25・・・逆テーパー構造の段、
30・・・収納部底部、
40・・・フランジ、
50・・・取手部、
55・・・凹部、
60・・・スカート、
70・・・固定台、
100・・・電子レンジ調理用容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートをシート成型法で成型してなる電子レンジ調理用容器であって、
内容物収納部とその全周に設けられたフランジと、前記フランジの全周に設けられた容器下方に延びる長さ4mm以上のスカートとを有することを特徴とする、電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
前記内容物収納部の側壁は、逆テーパー構造の段を有することを特徴とする請求項1記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記合成樹脂シートは、合成樹脂シート層と耐熱性樹脂フィルムとの積層体であり、かつ前記樹脂シート層と前記着色した耐熱性樹脂フィルムとは接着剤を介して積層されたことを特徴とする、請求項1または2記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項4】
前記合成樹脂シートは、400〜600nmの光線透過率5%未満の遮光性を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項5】
前記フランジの一部が前記内容物収納部の取手部を構成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項6】
前記取手部の天面は、少なくとも一部に曲面を有することを特徴とする請求項5記載の電子レンジ調理用容器。
【請求項7】
グラタンを充填するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の電子レンジ調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−153352(P2007−153352A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347951(P2005−347951)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【出願人】(000222565)東洋科学株式会社 (13)
【出願人】(502454086)株式会社アクリフーズ (2)
【Fターム(参考)】