説明

電子レンジ調理用蓋材

【課題】電子レンジ調理用の蓋材において、産業上利用価値の高い紙材のみを用いた場合でも、電子レンジ調理中に内容物から発生する蒸気によって反らない蓋材を得ること。
【解決手段】紙材から切り出した蓋材の相対する2箇所の周辺部に、それぞれ繋止片を折り目線を介して設けると共に、繋止片を設けた周辺部と垂直に交わる2箇所の周辺部に、それぞれ該周辺部と並行に折り目線を入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材に樹脂フィルム加工をしなくても電子レンジ調理中に内容物から発生する蒸気によって蓋材が反ることがなく、また沸騰した内容物の飛散による電子レンジ内部の汚れを防止することができる電子レンジ調理用蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子レンジ加熱時の沸騰した内容物の飛散防止や、内容物を蒸す事を目的として、種々の樹脂製の蓋材が発明され、用いられている(特許文献1、2、3、4、5)。樹脂製蓋材は、耐熱性、耐吸湿性を兼ね備える事ができるため、電子レンジ加熱時の変形がなく、安心して使用できる利点があるが、リサイクル時の再利用先として樹脂製製品への還元率が低い、且つ、コストが高いなどの欠点がある。一方、紙製蓋材は、リサイクル時にその大半が再度、紙製製品に復元される、且つ廉価であるという利点があるものの、電子レンジ調理時に内容物から発生する蒸気によって、内容物を収容したトレー内側へ湾曲し、喫食部である内容物に接触して非衛生的な印象を与える、さらに湾曲した結果、沸騰した内容物の飛散防止に効果を充分に発揮しないという欠点があった。
【0003】
そこで、このような欠点を解決する方法として、紙材を樹脂フィルム層と耐水性ニス層でラミネートする事が提案されている(特許文献6)。この方法では、紙材から切り出した蓋材の相対する2箇所の周辺部に繋止片を設けると共に、樹脂フィルム層と耐水性ニス層をラミネートすることで、電子レンジ調理時に内容物から発生する蒸気の吸着を防止し、蓋材の反りを防止している。しかし、紙材に樹脂フィルム層、ニス層をラミネートするため、リサイクルに適さない、さらに高価な蓋材となっていた。
【0004】
また、樹脂フィルムを用いる事なく課題を解決する方法として、紙材からなる電子レンジ調理用蓋材において、天面板の四隅に対称形をしたL字状の切り込みを入れ、左右一対の該切り込みの先端同士を折り込み線で結んでなる側壁部を谷折りして立上げ、トレー容器の上に立脚させる事が提案されている(特許文献7)。この方法では、紙材の紙目に垂直に折り込み線を入れることで紙材の収縮を妨げると共に、L字状の切り込みから、電子レンジ調理時の内容物から発生する蒸気を逃すことで蓋材の反りを防止しているが、トレー容器の上に立脚させるために蓋材の勘合が不安定で、トレー内に落下する事が起こり易い。特に、回転盤を持つ電子レンジでの用途としては不適であった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−240864
【特許文献2】特開2004−35051
【特許文献3】特開2006−87632
【特許文献4】特開2006−103733
【特許文献5】特開2006−232280
【特許文献6】特開2003−432
【特許文献7】特開2006−69602
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紙材に樹脂フィルム加工をしなくても電子レンジ調理中に内容物から発生する蒸気によって反ることがなく、また沸騰した内容物の飛散による電子レンジ内部の汚れを防止することができる電子レンジ調理用蓋材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、紙材の紙目の方向に関係なく、紙材から切り出した蓋材の相対する2箇所の周辺部に、それぞれ繋止片を折り目線を介して設けると共に、繋止片を設けた周辺部と垂直に交わる2箇所の周辺部に、それぞれ該周辺部と平行に折り目線を入れることで、電子レンジ調理中に内容物から発生する蒸気による紙製蓋材の反り返りが発生しないことを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。すなわち、たとえば特許文献6においては樹脂フィルム層と耐水性ニス層でラミネートするという方法で回避していた紙製蓋材の反り返りを、折り目線という簡易な方法で回避することに成功したのである。
【0008】
1つの実施形態では、繋止片を設けた周辺部と垂直に交わる2箇所の周辺部と平行に設けた折り目線の連続した長さは、該周辺部の長さの1/6以上であり、且つ複数個の該折り目線を合わせた長さが該周辺部の1/3以上である。
【0009】
1つの実施形態では、該蓋材に、蒸気抜き用の穴を設ける。
【0010】
本発明でいう紙製蓋材には、木材をパルプ化して叩解し、所定の工程を経て製造される板紙(230g/m2以上)の内、食品の包材として衛生的な環境下で製造されたものを用いる。複数枚の板紙を接着して使用することも可能であるが、コスト面と衛生的観点から1枚の紙材から切り出すことが望ましい。
【0011】
蓋材とは喫食部を収納するトレーの上面側をおおよそ覆い、電子レンジ調理時に内容物が沸騰して飛散した場合にも、物理的にその飛散を押さえるものをいう。
【0012】
繋止片とは喫食部を収納するトレーに設けられたフランジ部に略勘合し、略固定できるものを指す。フランジ部に略勘合し略固定するため、紙材に切り込み、又は穴を設けるが、これらの切り込み、又は穴は、フランジ部にほぼ平行に設けられ、同様に平行に折り目線が入る。
【0013】
折り目線は、プレス線、又はプレス線をさらに屈折させた線のいずれでも良く、プレスする事によって付加される線の断面形状は、U字型、凸型、V字型、ベース型のいずれでも良い。
【0014】
蒸気抜き用の穴は、調理、及び喫食される内容物に含まれ、沸騰時に飛散する可能性のある部材のサイズより小さければ良く、形状は丸型、星型、線形など多様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明に係る電子レンジ調理用蓋材の1実施例を示す平面図であり、図2は本発明における折り目線の連続した長さを該周辺部の長さの1/6以上とした1実施例を示す平面図であり、図3は本発明に係る折り目線の実施例を示す断面図であり、図4は本発明に係る電子レンジ調理用蓋材の使用時の状態を示す斜視図である。
【0017】
本発明の1実施例の電子レンジ調理用蓋材は、図1に示すように、喫食される内容物が沸騰時に飛散した場合に、物理的にその飛び散りを防止する蓋材部(1)を有し、トレーのフランジ部に略勘合される繋止片(2)と、トレーへの固定を安定したものにする切り込み(3)を有し、折り目線(4)は、周辺部(6a)に平行に設けられ、さらに折り目線(5)は、周辺部(6b)に平行に設けられる。また、蒸気抜き用の穴(7)は、内容物の形状、サイズにより、適したサイズで設ければ良い。
【0018】
内容物の水分量が多い時など、電子レンジ調理時に多量の蒸気が発生する場合に、調理後、蒸気が噴出して火傷の危険がある時がある。このような場合には、本発明の1実施例の電子レンジ調理用蓋材である図2に示すように、周辺部に接した網目部(8)を切り落とした蓋材(1)を用いれば良い。網目部(8)を切り落とす事で、蒸気抜き用の穴(7)と網目部(8)から蒸気が外部に逃れることができるために、電子レンジ調理後の蒸気の噴出を防止することができる。
【0019】
本発明の1実施例である図2は、電子レンジ調理用蓋材が、蓋材部(1)を有し、トレーのフランジ部に略勘合される繋止片(2)と、トレーへの固定を安定したものにする切り込み(3)を有し、折り目線(4)は、周辺部(6a)に平行に設けられ、さらに折り目線(5)は、周辺部(6b)に平行に設けられ、折り目線(5)の長さ(L6)が、周辺部(6b)の長さ(L4)の1/6以上であり、複数個の折り目線(5)の長さを合わせたものが、周辺部(6b)の長さの1/3以上であることを示している。
【0020】
連続した折り目線(5)の長さ(L6)は、周辺部(6b)の長さ(L4)の1/6以上であり、且つ、複数個の折り目線(5)を設けて、それらを合わせたものが、周辺部(6b)の長さの1/3以上であることが好ましい。折り目線(5)が長く連続して入ることで、電子レンジ調理中に内容物から発生する蒸気によって、周辺部(6b)が反ることを効果的に防止できる。
【0021】
本発明の実施に用いられる折り目線の実施例である図3は、紙面をプレスする事によって付加される線の形状の断面図を示している。S1はU字型のプレス線を垂直に切断した場合の断面図を図示している。S2はU字型のプレス線を線進行方向に対して平行に屈折させた線を垂直に切断した場合の断面図を図示している。S3は凸型のプレス線を垂直に切断した場合の断面図を図示している。S4はV字型のプレス線を垂直に切断した場合の断面図を図示している。S5はベース型のプレス線を垂直に切断した場合の断面図を図示している。このような形状のプレス線を紙面に付加することで紙に強度が付与される。
【0022】
本発明の1実施例である図4は、フランジ部(B)を有したトレー(A)に、図2で示した電子レンジ調理用蓋材(1)が、切り込み(3)にフランジ部(B)を貫通することを介して略固定されている状態を示している。この状態で電子レンジ調理されることで、紙材に樹脂フィルム加工をしなくても、電子レンジ調理中に内容物から発生する蒸気によって紙製蓋材が反ることがなく、また沸騰した内容物の飛散による電子レンジ内部の汚れを防止することができる。
【0023】
以下に、本発明に係る電子レンジ調理用蓋材について、具体的に実施例、及び比較例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
本発明の電子レンジ調理用蓋材を次の要領で作製した。まず、秤量310g/m2の白板紙(王子製紙製 PCグリーン100)を使用して、通常の打ち抜き型を用いた打ち抜き工程で、図1に示した横幅(L1)の長さが135mm、縦幅(L2)の長さが145mm、蒸気抜き用の穴の直径(L3)が15mm、電子レンジ調理及び喫食用の容器として用いるトレー(図3A)のフランジ部(図3B)に略勘合させるための繋止片(2)及び、切り込み(3)を設けた一枚の紙製蓋材を得た。
【0025】
次に、図1に示した折り目線(4、5)の位置に、U字型のプレス線を設けて、本発明の電子レンジ調理用蓋材を得た。
【0026】
こうして得た紙製蓋材(図1)を、一般的に市販されている200gのクリームリゾットを収容したポリプロピレントレー(図3A:中央化学製)に、フランジ部(図3B)と切り込み(3)を介して、図3のように略勘合させ、電子レンジ(National製:NE−EZ2)を用いて、500W3分間の電子レンジ調理を行ったところ、蒸気によって紙製蓋材が反ることなく、また、内容物の飛散による電子レンジ内部の汚れも発生しなかった。
【0027】
(実施例2)
続いて、本発明の電子レンジ調理用蓋材を次の要領で作製した。まず、図2に示すように、周辺部に接した網目部(8)を除いた後のL6の長さを25mmとして、後は、実施例1と同様の一枚の紙製蓋材を得た。
【0028】
次に、図2に示した折り目線(4、5)の位置に、U字型のプレス線を設けて、本発明の電子レンジ調理用蓋材を得た。
【0029】
こうして得た紙製蓋材(図2)を、一般的に市販されている200gの野菜スープを収容したポリプロピレントレー(図3A:中央化学製)に、フランジ部(図3B)と切り込み(3)を介して、図3のように略勘合させ、電子レンジ(National製:NE−EZ2)を用いて、500W5分間の電子レンジ調理を行ったところ、蒸気によって紙製蓋材が反ることなく、また、内容物の飛散による電子レンジ内部の汚れも発生しなかった。
【0030】
(比較例1)
本発明の比較例として、電子レンジ調理用蓋材を次の要領で作製した。実施例1と同様の一枚の紙製蓋材を得た後、図5に示すように、切り込み(3)と垂直方向の折り目線を設けなかった。
【0031】
こうして得た紙製蓋材を、切り込み(3)と垂直方向の折り込みを入れることのないまま一般的に市販されている200gのクリームリゾットを収容したポリプロピレントレー(図3A:中央化学製)に、フランジ部(図3B)と切り込み(3)を介して、図3のように略勘合させ、電子レンジ(National製:NE−EZ2)を用いて、500W3分間の電子レンジ調理を行ったところ、蒸気によって紙製蓋材が湾曲し、紙製蓋材の一部がクリームリゾットに付着した。
【産業上の利用の可能性】
【0032】
本発明の電子レンジ調理用蓋材によれば、紙材に樹脂フィルム加工をしなくても電子レンジ調理中に内容物から発生する蒸気によって蓋材が反ることがなく、また沸騰した内容物の飛散による電子レンジ内部の汚れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の電子レンジ調理用蓋材の好ましい実施形態を例示する模式図である。
【図2】図2は、本発明の電子レンジ調理用蓋材の好ましい実施形態を例示する模式図である。この模式図において、蓋材に、蒸気抜き用の穴と合わせて、周辺部に接した切り取り部を設けた場合を例示している。
【図3】図3は、本発明の実施に用いられる折り目線の断面図を例示している。
【図4】図4は、電子レンジ調理、及び喫食に使用する容器に、本発明の電子レンジ調理用蓋材を略勘合させた状態の好ましい実施形態を例示する模式図である。
【図5】図5は、図1の電子レンジ調理用蓋材について、切り込み(3)と垂直方向の折り目線を設けないものである。
【符号の説明】
【0034】
1… 紙製蓋材
2… 繋止片
3… 切り込み
4… 折り目線
5… 折り目線
6a… 周辺部
6b… 周辺部
7… 蒸気抜き用の穴
8… 周辺部に接した切り取り部
L1… 横幅
L2… 縦幅
L3… 蒸気抜き用の穴の直径
L4… 横幅
L5… 縦幅
L6… 折り目線幅
S1… U字型プレス線
S2… U字型プレス線を線進行方向に対して平行に屈折させた線
S3…
凸型プレス線
S4…
V型プレス線
S5… ベース型プレス線
A… 調理、及び喫食に使用する容器、トレー
B… フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジで加熱して調理、及び喫食する食品を収容した、トレー状などの容器の上面側に載置して電子レンジ調理時に使用する紙製蓋材において、紙材から切り出した蓋材の相対する2箇所の周辺部に、それぞれ繋止片を折り目線を介して設けると共に、繋止片を設けた周辺部と垂直に交わる2箇所の周辺部に、それぞれ該周辺部と平行に折り目線を入れる事を特徴とした蓋材。
【請求項2】
繋止片を設けた周辺部と垂直に交わる2箇所の周辺部と平行に設けた折り目線の連続した長さが、該周辺部の長さの1/6以上であり、且つ複数個の該折り目線を合わせた長さが該周辺部の1/3以上であることを特徴とする請求項1記載の蓋材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓋材に、蒸気抜き用の穴を開けたことを特徴とする蓋材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−162601(P2008−162601A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351109(P2006−351109)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】