説明

電子ロッカー及びその調整方法

【課題】ロッカー内部に収納した物品にRFIDタグを貼付して管理する電子ロッカーで、収納個数、収納物品の種類等の収納形態が変化しても、収納形態に影響受けずに安定してRFIDタグのデータを読み出すことができるようにすること。
【解決手段】RFIDタグのデータを読み出すリーダライタと、通信を行うアンテナと、アンテナ切替器と、前記アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うアンテナ調整部とを有し、前記アンテナ調整部は、前記アンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定するSWR測定部と、アンテナ同調回路に並列接続される可変可能に構成されたコンデンサ容量可変手段とを有し、前記アンテナ調整部は、前記アンテナに搬送波の給電時のアンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定して電圧定在波比を算出し、前記電圧定在波比が最小となるようにアンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグによりロッカー内の物品の管理を行う電子ロッカー及びその調整方法に関し、特に、電子ロッカー内のRFIDタグとの通信を安定して行うことが可能な電子ロッカー及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを用いて物品の管理、物流管理が行われている。RFIDタグは、電磁波によってリーダライタとの通信を行い、リーダライタは、RFIDタグ内に記憶されているID番号を呼び出し、リーダライタを制御する管理装置は、リーダライタからのID番号によってRFIDタグを貼付した物品を管理する。例えば、RFIDタグを貼付した重要書類等を収納したロッカーの書類を閲覧しようとする者は、RFIDタグを内蔵した社員証等を読み取り機に近づけて、許可された者のみが閲覧が可能となる。また、ロッカー内の書類の管理は、閲覧前後のロッカー内のRFIDタグの情報を読み出すことにより、書類の持ち出し等を判断することができる。これにより、閲覧者、閲覧文書、閲覧日時等が自動的に記録されるため、セキュリティーの向上が図られる。
【0003】
また、特許文献1には、決済機能及び認証機能を備えたカードを電子ロッカーを利用するための認証媒体として使用することができるようにして、専用の認証媒体を使用することなく電子ロッカーを利用することができ、かつ、決済手段をあらかじめ登録することなく利用対価の決済を自動的に行うことができる決済及び認証機能付きカード連動型電子ロッカーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−157738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、RFIDタグによりロッカー内の物品の管理を行う場合には、ロッカーの収納物品が、書類に限らず、鍵、ノートPC等多岐に渡り、また、収納場所も一定しておらず、更に、ノートPC等のように金属を使用した物品も収納される。また、ロッカーからの物品の出し入れにより、収納個数、収納物品の種類等が異なり、収納形態が常に変化している。
【0006】
また、ロッカー内部に金属等がある場合には、アンテナからの電磁波が干渉、反射、減衰等により、RFIDタグとの通信に障害が発生して、RFIDタグのID情報を読み出すことができずに、ロッカー内に収納されていないと判断することもある。
【0007】
このような多種の収納物品に対応すべく、スペクトラムアナライザー等の測定器を使用し、アンテナの発振周波数、受信感度の調整を行ってアンテナ同調回路のコンデンサを最適な容量に設定するようにする。しかしながら、測定器による調整は、作業時間、費用が大幅にかかり、収納物品が変化するたびに測定器による調整を実施することは現実的ではない。
【0008】
そこで本発明は、ロッカー内部に収納した物品にRFIDタグを貼付して管理する電子ロッカーで、アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を自動で行うようにして、ロッカー内部に金属等があっても、安定してRFIDタグのデータを読み出せるようにして、確実にロッカー内部の物品を管理することが可能な電子ロッカー及びその調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目標達成のため、本発明の電子ロッカーは、ロッカー内部に収納した物品にRFIDタグを取り付けて管理する電子ロッカーであって、前記RFIDタグのデータを読み出すリーダライタと、前記RFIDタグと通信を行うアンテナと、前記アンテナの切替を行うアンテナ切替器と、前記アンテナ切替器と前記アンテナ間に前記アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うアンテナ調整部とを有し、前記アンテナ調整部は、前記アンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定するSWR測定部(SWR:Standing Wave Ratio)と、アンテナ同調回路に並列接続される可変可能に構成されたコンデンサ容量可変手段とを有し、前記アンテナ調整部は、前記アンテナに搬送波の給電時のアンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定して電圧定在波比を算出し、前記電圧定在波比が最小となるように前記コンデンサ容量可変手段でコンデンサ容量を可変してアンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子ロッカーにおける前記コンデンサ容量可変手段は、電源供給が不要な自己保持型のスイッチを有し、前記コンデンサを接続した前記スイッチの接点を切り換えてコンデンサ容量を可変するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電子ロッカーにおける前記コンデンサ容量可変手段のスイッチは、ロータリースイッチからなり、前記アンテナ調整部は、前記ロータリースイッチの回転角度の大きさに応じて、コンデンサ容量が増加するように前記ロータリースイッチの端子にコンデンサを接続し、前記アンテナ調整部は、初回のコンデンサ容量の可変時に、前記ロータリースイッチの端子数が奇数のときには、中央の回転角度をコンデンサ容量の可変開始位置とし、端子数が偶数のときには、端子数の半分又は端子数の半分に1を加算した値の端子の回転角度をコンデンサ容量の可変開始位置とし、初回以後のコンデンサ容量の可変時では、前回のコンデンサ容量の可変での前記ロータリースイッチが保持している回転角度を可変開始位置として、可変開始位置及び可変開始位置の両隣の端子の位置に於ける電圧定在波比から、ロータリースイッチの回転方向を決定してアンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電子ロッカーは、電子ロッカーの扉の開閉後及び/又は定時間毎に、アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電子ロッカーは、更に、リーダライタからの搬送波の給電電圧を電源部の電圧に重畳する混合器を有し、前記混合器からアンテナに供給される重畳電圧をアンテナ調整部で搬送波の給電電圧と電源部の電圧とに分離して、前記アンテナ調整部に電源を供給するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電子ロッカーにおける前記アンテナ調整部は、前記アンテナ切替器により切り換えられたアンテナからの電源の供給を受けて、アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電子ロッカーの調整方法は、ロッカー内部に収納した物品にRFIDタグを取り付けて管理する電子ロッカーの調整方法であって、前記アンテナ調整部は、前記アンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定するSWR測定部と、アンテナ同調回路に並列接続される可変可能に構成されたコンデンサ容量可変手段とを有し、前記アンテナ調整部は、前記アンテナに搬送波の給電時のアンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定して電圧定在波比を算出し、前記電圧定在波比が最小となるように前記コンデンサ容量可変手段でコンデンサ容量を可変してアンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子ロッカーの扉の開閉後や定時間毎に、アンテナの周波数、受信感度の調整を自動で行うため、収納個数、収納物品の種類等の収納形態が変化しても、収納形態に影響受けずに安定してRFIDタグのデータを読み出すことができる。
【0017】
また、書類に限らず、ロッカー内部にノートPC等の金属等があっても、安定してRFIDタグのデータを読み出せるため、多種の収納物品を管理することができる。
【0018】
また、アンテナの周波数、受信感度の調整を自動で行うため、手動による測定器等を用いた調整は不要となる。このため、調整時間を大幅に短縮することができる。
【0019】
また、本発明の電子ロッカーは、アンテナの周波数、受信感度の調整を実行するときのみ、アンテナ調整器に通電するため、電力消費の節約が可能となる。また、アンテナの周波数、受信感度の調整によって選択されたコンデンサは、電力が供給されない状態であっても常時アンテナ同調回路に接続されているため、アンテナ調整器に通電することなしに、RFIDタグのデータを読み出すことが可能である。
【0020】
また、本発明の電子ロッカーは、アンテナの周波数、受信感度の調整でのアンテナ同調回路に接続するコンデンサの選択を、中間の容量を有するコンデンサから調整を開始し、その前後の容量を有するコンデンサに於ける調整結果からコンデンサ容量を増加又は減少すべきかの判断を行って以後の調整を行うため、アンテナの周波数、受信感度の調整時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーの外観斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーの開扉した状態を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーのアンテナ調整器の構成を示すブロック図である。
【図5】周波数調整に於ける周波数調整用ロータリースイッチの回転方向を決める処理を示すフローチャートである。
【図6】周波数調整に於ける周波数調整用ロータリースイッチの回転方向に基づく周波数調整の処理を示すフローチャートである。
【図7】感度調整に於ける感度調整用ロータリースイッチの回転方向を決める処理を示すフローチャートである。
【図8】感度調整に於ける感度調整用ロータリースイッチの回転方向に基づく感度調整処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーのアンテナ調整器の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーの電源投入後のアンテナ調整器における制御部の処理の概要を示すフローチャートである。
【図12】周波数調整に於ける周波数調整用コンデンサ切替部への出力ポートの数値の増減を決める処理を示すフローチャートである。
【図13】周波数調整に於ける周波数調整用コンデンサ切替部への出力ポートの数値の増減結果に基づく周波数調整処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明による電子ロッカー及びその調整方法を実施するための形態について説明する。なお、本発明の電子ロッカー及びその調整方法は、ロッカー内部に収納した物品にRFIDタグを貼付して管理する電子ロッカーで、発振周波数の調整、受信感度の調整を自動で行うようにして、ロッカー内部に金属等があっても、安定してRFIDタグ2のデータを読み出せるようにして、確実にロッカー内部の物品を管理するようにしたものである。
【0023】
[第1の実施形態]
[電子ロッカーの構成]
図1は本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーの外観斜視図、図2は電子ロッカーを開扉した状態の正面図、図3は、本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーの構成を示すブロック図、図4は、本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーのアンテナ調整器の構成を示すブロック図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、電子ロッカー1の筐体は、一般的な直方体で観音開きの扉である、左扉51、右扉52を有する。また、電子ロッカー1の制御・管理用の制御用端末機60が接続されている。左扉51、右扉52を開けると、5枚の棚板55によって、筐体内の収納区画が上下五段に分けられており、それぞれの棚板55の上に、収納物品56a乃至56c等を置いて、収納することができる。また、右扉52の外面には、表示部53及びアンテナ(認証用)13aを有し、棚板55は、複数のアンテナ(ロッカー内)13を内蔵する。本実施例における、電子ロッカー1は高さ約200cm、横幅約100cmであり、棚板55一枚について、三基のアンテナ(ロッカー内)13を内蔵している。なお、電子ロッカー1及び棚板55の大きさ、棚板55の枚数とアンテナ13の個数は任意でよい。
【0025】
タグ2は、物体の識別に利用される小さなチップであり、自身の識別用符号などの情報が記録されており、電波を使って受信機と情報を交換する能力をもつ。本実施形態では、パッシブ方式のRFIDタグを用いた例を説明する。
【0026】
アンテナ13aは、右扉52の外面に設置されており、認証のために使用者が自己のIDカードを読ませる箇所である。認証によって使用者の電子ロッカーの使用が許可された場合、鍵が解除され、使用者は左扉51及び右扉52を開くことができる。
【0027】
表示部53は電子ロッカー1の収納物品の個数や電子ロッカー1の状態を表示する表示する領域であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの液晶を用いた表示手段を用いれば良い。
【0028】
天板50は、中空に成っており、電子機器を設置することができる。本実施例では、図3に示す電子ロッカー制御部3(電子ロッカー制御部3は、メイン制御部4、電源部5、リーダライタ6、及びアンテナ切替器10等を有する)が、天板50の内部に設置されている。
【0029】
収納物品56a乃至56cは商品、書類ファイル、ノートパソコン、貴重品等であり、RFIDタグ2を貼付して棚板55の上に収納される。収納物品の検出の為の電波は、収納物品が載っている棚板55に内蔵されているアンテナ13から上方に向かって発信されるため、収納物品56a乃至56cに貼付されたRFIDタグ2は、棚板55の近傍に配置されるように、収納物品56a乃至56cの向きを考慮して収納する必要がある。例えば収納物品56aに貼付されたRFIDタグ2は下部の棚板55内蔵しているアンテナ13から遠いため、RFIDタグ2に記憶されているデータを読み出すことが不可能なため、電子ロッカー1内に存在しない(未収納)と判定される。また、収納物品56b及び56cに貼付されたRFIDタグ2は下部の棚板55の近傍にあるため、棚板55に内蔵しているアンテナ13がRFIDタグ2に記憶されているデータを読み出すことが可能なため、電子ロッカー1内に存在しており、収納済みと判定される。
【0030】
制御用端末機60は、電子ロッカー1の制御、管理用、監視、使用者の認証等を行う端末機であり、電子ロッカー1の収納物品の一覧及び使用者の一覧等を記載するデータベース61を有している。制御用端末機60との接続は、電子ロッカー1は直接結線する方法、又はLAN(Local Area Network)、インターネット(クラウドコンピューティング等)等のネットワークを介する方法で行う。また、一台の制御用端末機60で一台又は複数台の電子ロッカー1を接続することが可能である。
【0031】
図3に示すように、電子ロッカー制御部3は、電子ロッカー1の制御を行うメイン制御部4と、RFIDタグ2のデータを読み出すリーダライタ6と、電源を供給する電源部5と、リーダライタ6からのアンテナ13用の駆動電圧と電源部5からの電圧とを混合する電波電源混合器7と、RFIDタグ2との通信を行うアンテナ13を選択するアンテナ切替器10と、アンテナ13の発振周波数の調整、受信感度の調整を行うアンテナ調整器18と、ロッカー扉の前面に設けられた認証用のアンテナ13aと、ロッカー内の棚板55に内蔵されて設けられる複数のアンテナ13とを有する。なお、アンテナ調整器18、アンテナ13及びアンテナ同調回路16(図4に示す)は、一体となって構成されており、これらをアンテナ部11と称する。図3に示すように、電子ロッカー制御部3は、アンテナ13の数量と同数のアンテナ部11が設けられている。
【0032】
電子ロッカー制御部3の制御を行うメイン制御部4は、マイクロコンピュータからなり、プログラムを内蔵した記憶装置を有し、プログラムを実行して電子ロッカー制御部3の制御を行うものである。メイン制御部4は、アンテナ切替器10へのアンテナ13の切替指示、RFIDタグ2のデータを読み出すためのリーダライタ6との通信等を行い、また、アンテナ調整器18に電源を供給するために電源部5のON、OFF制御を行う。なお、メイン制御部4は、必要により、制御用端末機60(図1に示す)との通信が行えるように構成されている。
【0033】
リーダライタ6は、RFIDタグ2に対してアンテナ13から電波(電磁界)を発するためのアンテナ13用の駆動電圧(搬送波)の給電を行い、RFIDタグ2からの電波を受信してRFIDタグ2に記憶されているデータを読み出すものである。なお、RFIDタグ2と通信を行うための電波の周波数は、例えば、13.56MHz(メガヘルツ)を使用するようにする。
【0034】
電源部5は、電波電源混合器7及びアンテナ切替器10を介してアンテナ調整器18に電源を供給するものであり、電源部5からのアンテナ調整器18への電源供給は、メイン制御部4の指示により行われる。電波電源混合器7は、リーダライタ6からのアンテナ13用の駆動電圧を電源部5からの電圧に重畳してアンテナ切替部に出力するものである。アンテナ切替器10は、メイン制御部4からのアンテナ選択信号により複数のアンテナ部11から1つのアンテナ部11を選択して切替を行うものである。
【0035】
アンテナ調整器18は、アンテナ切替器10からのアンテナ13用の駆動電圧及び電源部5の電圧が入力され、アンテナ13用の駆動電圧と電源部5の電圧とを分離して、駆動電圧をアンテナ13に供給するものである。また、アンテナ調整器18は、アンテナ13毎に設けられており、電源が供給された際には、自動でアンテナ13の周波数調整、受信感度調整を行うものである。電子ロッカー扉の前面に設けられた認証用のアンテナ13は、電子ロッカー使用者のカードに内蔵されたRFIDタグ2のデータを読み出すためのものであり、フラット型アンテナが用いられている。また、ロッカー内に設けられているアンテナ13は、ロッカーの棚毎に複数設けられて、棚毎の所定のエリア内のRFIDタグ2のデータを読み出すためのものであり、同様にフラット型アンテナが用いられている。
【0036】
[アンテナ調整器の構成]
次に、アンテナ調整器について、図4を用いて説明する。図4に示すように、アンテナ調整器18は、アンテナ用の駆動電圧と電源電圧とを分離する電波電源分離器21と、アンテナに接続され搬送波のロス(損失)を測定するSWR測定部22と、SWR測定部22からのデータを処理し、周波数調整用モータ制御部25及び感度調整用モータ制御部26を制御する制御部23と、コンデンサ35を接続した周波数調整用ロータリースイッチ29と、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸の駆動を行う周波数調整用モータ27と、周波数調整用モータ27の制御を行う周波数調整用モータ制御部25と、コンデンサ35を接続した感度調整用ロータリースイッチ30と、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸の駆動を行う感度調整用モータ28と、感度調整用モータ28の制御を行う感度調整用モータ制御部26とを有している。
【0037】
図4に示すように、電子ロッカー制御部3のアンテナ調整器18は、図3に示すアンテナ切替器10からの電源部5の電圧に重畳されたアンテナ13用の駆動電圧が電波電源分離器21に入力され、電波電源分離器21は、アンテナ13用の駆動電圧と電源部5の電圧とに分離する。また、電波電源分離器21は、入力信号に電源部5の電圧が重畳されていないときには、アンテナ13用の駆動電圧を通過させるように構成されている。更に、SWR測定部22から入力される信号に対しても、その信号を通過させてアンテナ切替器10に出力するようになっている。分離されたアンテナ13用の駆動電圧は、SWR測定部22に入力され、一方、電源は、制御部23に供給される。
【0038】
SWR(定在波)測定部22は、電波電源分離器21から入力されたアンテナ13用の駆動電圧をアンテナ13に供給し、アンテナ13に供給される進行波の電圧と、アンテナ13から戻ってくる反射波の電圧を測定するものである。SWR測定部22で測定した進行波の電圧と反射波の電圧は、制御部23に出力される。
【0039】
制御部23は、マイクロコンピュータ、例えば、CPU、メモリ、AD(アナログデジタル)コンバータ、IO(入出力)等を1つのICチップに組み込んだワンチップマイコン等から構成されており、メモリにプログラムが格納されている。制御部23のマイクロコンピュータは、プログラムを実行して、アンテナ13の周波数調整、受信感度調整を実行する。制御部23は、電波電源分離器21から電源が供給され、制御部23のマイクロコンピュータは、電源が供給されると自動的にプログラムを実行するようになっている。また、制御部23は、周波数調整又は感度調整を実行中にそれぞれの実行を示すLEDから成る表示ランプ32が設けられている。更に、処理状況を通知するブザー34も設けられている。
【0040】
周波数調整用モータ制御部25は、パルスモータからなる周波数調整用モータ27を所定の角度で回転するように制御するものであり、制御部23からのデータに基づいて、周波数調整用モータ27の回転を制御する。
【0041】
周波数調整用モータ27は、周波数調整用モータ制御部25からの駆動信号により指定された回転方向に、所定の角度回転する。周波数調整用モータ27の回転軸は、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸と結合されており、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸を回すように、周波数調整用モータ27が回転する。
【0042】
周波数調整用ロータリースイッチ29は、その回転軸上に設けられている接点の共通端子と、ロータリースイッチの回転軸を中心とする円状に等間隔の角度で設けられている複数の接点の端子を有している。周波数調整用ロータリースイッチ29は、取り付けるコンデンサの数と同数の端子を有している。周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸が回転することにより、共通端子の接点といずれかの端子の接点とが接触するようになっている。また、周波数調整用ロータリースイッチ29の各端子には、コンデンサ35の一方の端子が接続されており、コンデンサ35の他方の端子は、他のコンデンサ35の端子と一体に接続されている。周波数調整用ロータリースイッチ29の共通端子からの接続線は、周波数調整用のアンテナ同調回路16の一方に接続されており、また、コンデンサ35の他方の全ての端子が接続されている箇所からの接続線は、周波数調整用のアンテナ同調回路16の他方に接続されている。コンデンサ35は、周波数調整用ロータリースイッチ29の各端子に、例えば、5pF(ピコファラッド)、18pF、23pFのように、回転軸の回転角度の大きさに応じて、順にコンデンサ35の容量が大きくなるように接続されている。これにより、周波数調整用モータ27が回転して、周波数調整用ロータリースイッチ29の共通端子が、18pFが接続されている端子と接触することにより、周波数調整用のアンテナ同調回路16にコンデンサ35が接続される。
【0043】
上記構成において、アンテナ調整器18に電源が供給されないときには、周波数調整用ロータリースイッチ29は、最後に周波数調整用モータ27によって設定された接続状態を保持するようになっている。
【0044】
一方、感度調整用モータ制御部26は、パルスモータからなる感度調整用モータ28を所定の角度で回転するように制御するものであり、制御部23からのデータに基づいて、感度調整用モータ28の回転を制御する。
【0045】
感度調整用モータ28は、感度調整用モータ制御部26からの駆動信号により指定された回転方向に、所定の角度を回転する。感度調整用モータ28の回転軸は、感度調整用ロータリースイッチの回転軸と結合されており、感度調整用ロータリースイッチの回転軸を回すように、感度調整用モータ28が回転する。
【0046】
また、感度調整用ロータリースイッチ30は、周波数調整用ロータリースイッチ29と同様の構成を成しており、感度調整用モータ28が回転して、感度調整用ロータリースイッチ30の共通端子が、例えば、18pFが接続されている端子と接触することにより、感度調整用のアンテナ同調回路16に18pFのコンデンサ35が接続される。
【0047】
上記構成において、アンテナ調整器18に電源が供給されないときには、感度調整用ロータリースイッチ30は、最後に感度調整用モータ28によって設定された接続状態を保持するようになっている。
【0048】
[アンテナの周波数調整]
次に、上記構成からなる電子ロッカーのアンテナの周波数調整、受信感度調整について説明する。電子ロッカーでは、物品の出し入れにより、収納個数、収納物品の種類等が異なったりするため、収納形態が変化する。このため、RFIDタグ2との通信が安定して行えるように、例えば、電子ロッカーの扉の開閉後や定時間毎に、アンテナの周波数調整、受信感度調整を行うようにする。アンテナの周波数調整は、アンテナ同調回路の周波数側のコンデンサを可変して、アンテナからの電波が効率よく放射されるように調整するものである。また、受信感度調整は、アンテナ同調回路の受信側のコンデンサを可変して、アンテナからの電波を感度よく受信するように調整するものである。
【0049】
最初に、アンテナの周波数調整について図5及び図6を用いて説明する。図5は、周波数調整に於ける周波数調整用ロータリースイッチの回転方向を決める処理を示すフローチャート、図6は、周波数調整に於ける周波数調整用ロータリースイッチの回転方向に基づく周波数調整の処理を示すフローチャートである。
【0050】
図3に示すメイン制御部4は、電源部5に対して、電源を供給するように通電開始信号を出力する。また、リーダライタ6に対して、アンテナ13用の駆動電圧(搬送波)を発するように制御する。また、アンテナ切替器10に対して、電波の周波数調整、感度調整を行うアンテナ部11を選択するように制御する。これにより、選択されたアンテナ調整器18にアンテナ13用の駆動電圧及び電源部5の電圧が印加され、また、選択されたアンテナ部11に駆動電圧(搬送波)が印加される。更に、アンテナ調整器18に電源が通電され、制御部23のマイクロコンピュータが起動して、プログラムが実行される。
【0051】
最初に、図4に示すアンテナ調整器18の制御部23は、初回のアンテナの周波数調整で、周波数調整用ロータリースイッチ29の共通端子と端子の導通状態が、端子数の中間位置となるように、周波数調整用モータ制御部25を介して周波数調整用モータ27を制御する。例えば、周波数調整用ロータリースイッチ29の端子数が奇数のときには、共通端子が中央に位置する端子と接触するようにする。また、周波数調整用ロータリースイッチ29の端子数が偶数のときには、端子数の半分又は端子数の半分に1を加算した値に位置する端子と接触するようにする。これは、アンテナの周波数調整を短時間で行うためのものである。以下の説明では、周波数調整用ロータリースイッチ29の端子数を16とし、初期状態は、周波数調整用ロータリースイッチ29の第8番目の端子の接点が、共通端子の接点と接触しているものとする。尚、初回以後の周波数調整は、前回の周波数調整で周波数調整用ロータリースイッチ29が保持している回転角度から開始するようにする。
【0052】
アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)を算出し、算出したデータをデータD1としてメモリに記憶(保管)する(ステップS1)。なお、算出された電圧定在波比は、ロス値と見なし、低い値ほどロスが少ないと判断するようにする。
【0053】
次に、制御部23は、周波数調整用モータ制御部25を介して、周波数調整用ロータリースイッチ(フローチャートでは周波数調整用ロータリーSWと記す)29正面の回転軸が右回転して共通端子が次の端子(第9番目の端子)に接続するように1ステップ更新する(ステップS2)。周波数調整用ロータリースイッチ29の回転完了後に、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD2としてメモリに記憶する(ステップS3)。
【0054】
次に、制御部23は、周波数調整用モータ制御部25を介して、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸を左回転して共通端子が2つ先の端子(第7番目の端子)に接続するように2ステップ更新する(ステップS4)。周波数調整用ロータリースイッチ29の回転完了後に、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD3としてメモリに記憶する(ステップS5)。
【0055】
次に、算出したデータD1乃至データD3に基づいて、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸の回転方向を決定するための処理を行う。最初に、メモリに記憶したデータD1とデータD2とを比較して(ステップS6)、データD1がデータD2より大きい場合には、データD2とデータD1の差(データD2−データD1)をデータD4としてメモリに記憶する(ステップS7)。その後、データD1とデータD3とを比較して(ステップS8)、データD1がデータD3より大きい場合には、データD3とデータD1の差(データD3−データD1)をデータD5としてメモリに記憶する(ステップS9)。
【0056】
次に、データD4とデータD5とを比較して(ステップS10)、データD4がデータD5より大きい場合には、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸が左回転するように回転フラグをセットする(ステップS11)。また、データD5がデータD4以上のときには、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸が右回転するように回転フラグをセットする(ステップS12)。また、ステップS8でデータD3がデータD1以上のときには、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸が右回転するように回転フラグをセットする(ステップS13)。また、ステップS6でデータD2がデータD1以上のときには、データD1とデータD3とを比較して(ステップS14)、データD1がデータD3より大きい場合には、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸が左回転するようにメモリ上に回転フラグをセットする(ステップS15)。また、ステップS14でデータD3がデータD1以上のときには、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸を右回転して共通端子が次の端子(第8番目の端子)に接続するように1ステップ更新する(ステップS16)。
【0057】
このとき、周波数調整用ロータリースイッチ29の第8番目の端子での位置が、両隣に位置する端子のコンデンサよりもロスが少ないため、周波数調整の最適値と判断する。また、周波数調整を完了したものとして、周波数用表示ランプ32を点灯して、ブザー34を2回鳴らす(ステップS17)。
【0058】
また、ステップS11、ステップS12、ステップS13及びステップS15で、周波数調整用モータ27の回転フラグが設定されたときには、図6に示す周波数調整の処理を行う。図6に示すように、周波数調整は、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD6としてメモリに記憶する(ステップS20)。
【0059】
次に、制御部23は、周波数調整用モータ制御部25を介して、周波数調整用モータ27により周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸を回転フラグの示す指定回転方向に回すようにして次の端子と接続するように1ステップ更新する(ステップS21)。アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD7としてメモリに記憶する(ステップS22)。
【0060】
次に、データD6とデータD7とを比較して(ステップS23)、データD6がデータD7より大きい場合には、データD7をデータD6としてデータD6のメモリエリアに記憶する(ステップS24)。その後、ステップS21に移行する。ステップS23でデータD7がデータD6以上のときには、周波数調整用ロータリースイッチ29の回転軸を指定回転方向と逆の方向に回転して次の端子に接続するように1ステップ更新する(ステップS25)。これにより周波数調整用ロータリースイッチ29の共通端子と導通した端子に接続されているコンデンサの値が周波数調整の最適値と判断する。また、周波数調整を完了したものとして、周波数用表示ランプ32を点灯して、ブザー34を2回鳴らす(ステップS26)。以上により、アンテナの周波数調整が完了する。周波数調整の完了後、図7に示す受信感度調整を実行する。
【0061】
[受信感度調整]
次に、受信感度調整について図7及び図8を用いて説明する。図7は、感度調整に於ける感度調整用ロータリースイッチの回転方向を決める処理を示すフローチャート、図8は、感度調整に於ける感度調整用ロータリースイッチの回転方向に基づく感度調整処理を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、受信感度調整を感度調整と記す。
【0062】
感度調整は、周波数調整後に行うものであり、周波数調整用ロータリースイッチ29で選択したコンデンサ値を保持した状態で行うようにする。
【0063】
図4に示すアンテナ調整器18の制御部23は、初回の感度調整で、感度調整用ロータリースイッチ30の共通端子と端子の導通状態が、端子数の中間位置となるように、感度調整用モータ制御部26を介して感度調整用モータ28を制御する。例えば、感度調整用ロータリースイッチ30の端子数が奇数のときには、共通端子が中央に位置する端子と接触するようにする。また、感度調整用ロータリースイッチ30の端子数が偶数のときには、端子数の半分又は端子数の半分に1を加算した値に位置する端子と接触するようにする。これは、受信感度調整を短時間で行うためのものである。以下の説明では、感度調整用ロータリースイッチ30の端子数を16とし、初期状態は、感度調整用ロータリースイッチ30の第8番目の端子の接点が、共通端子の接点と接触しているものとする。尚、初回以後の感度調整は、前回の感度調整で感度調整用ロータリースイッチ30が保持している回転角度から開始するようにする。
【0064】
アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比(VSWR)を算出し、算出したデータをデータD10としてメモリに記憶(保管)する(ステップS30)。なお、算出された電圧定在波比は、ロス値と見なし、低い値ほどロスが少ないと判断するようにする。
【0065】
次に、制御部23は、感度調整用モータ制御部26を介して、感度調整用ロータリースイッチ30正面の回転軸が右回転して共通端子が次の端子(第9番目の端子)に接続するように1ステップ更新する(ステップS31)。感度調整用ロータリースイッチ30の回転完了後に、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD11としてメモリに記憶する(ステップS32)。
【0066】
次に、制御部23は、感度調整用モータ制御部26を介して、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸を左回転して共通端子が2つ先の端子(第7番目の端子)に接続するように2ステップ更新する(ステップS33)。感度調整用ロータリースイッチ30の回転完了後に、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD12としてメモリに記憶する(ステップS34)。
【0067】
次に、算出したデータD10乃至データD12に基づいて、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸の回転方向を決定するための処理を行う。最初に、データD10とデータD11とを比較して(ステップS35)、データD10がデータD11より大きい場合には、データD11とデータD10の差(データD11−データD10)をデータD13としてメモリに記憶する(ステップS36)。
【0068】
その後、データD10とデータD12とを比較して(ステップS37)、データD10がデータD12より大きい場合には、データD12とデータD10の差(データD12−データD10)をデータD14としてメモリに記憶する(ステップS38)。次に、データD13とデータD14とを比較して(ステップS39)、データD13がデータD14より大きい場合には、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸が左回転するように回転フラグをセットする(ステップS40)。また、データD14がデータD13以上のときには、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸が右回転するように回転フラグをセットする(ステップS41)。また、ステップS37でデータD12がデータD10以上のときには、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸が右回転するように回転フラグをセットする(ステップS42)。また、ステップS35でデータD11がデータD10以上のときには、データD10とデータD12とを比較して(ステップS43)、データD10がデータD12より大きい場合には、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸が左回転するようにメモリ上に回転フラグをセットする(ステップS44)。また、ステップS43でデータD12がデータD10以上のときには、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸が右回転して共通端子が次の端子(第8番目の端子)に接続するようにする(ステップS45)。
【0069】
このとき、感度調整用ロータリースイッチ30の第8番目の端子での位置が、両隣に位置する端子のコンデンサよりもロスが少ないため、感度調整の最適値と判断する。また、感度調整を完了したものとして、感動用表示ランプ32を点灯して、ブザーを2回鳴らす(ステップS46)。
【0070】
また、ステップS40、ステップS41、ステップS42及びステップS44で、感度調整用モータ28の回転フラグが設定されたときには、図8に示す感度調整の処理を行う。
【0071】
図8に示すように、感度調整は、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD15としてメモリに記憶する(ステップS50)。次に、制御部23は、感度調整用モータ制御部26を介して、感度調整用モータ28により感度調整用ロータリースイッチ30を指定回転方向に回すようにして次の端子と接続するように1ステップ更新する(ステップS51)。アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD16としてメモリに記憶する(ステップS52)。
【0072】
次に、データD15とデータD16とを比較して(ステップS53)、データD15がデータD16より大きい場合には、データD16をデータD15としてデータD15のメモリエリアに記憶する(ステップS54)。その後、ステップS51に移行する。ステップS53でデータD16がデータD15以上のときには、感度調整用ロータリースイッチ30の回転軸を指定回転方向と逆の方向に回転して次の端子に接続するように1ステップ更新する(ステップS55)。これにより感度調整用ロータリースイッチ30の共通端子と導通した端子に接続されているコンデンサの値が感度調整の最適値と判断する。また、感度調整を完了したものとして、感度用表示ランプ32を点灯して、ブザーを2回鳴らす(ステップS56)。以上により、感度調整が完了する。
【0073】
感度調整の後に、アンテナ13は一枚ずつ、全15枚が収納物品のスキャンを行う。RFIDタグ2のデータを読み出した結果から、収納物品の個数を検出し、表示部53に検出個数を表示する。また、制御用端末機60(図1に示す)に検出個数及び検出時間等の検出結果データを送信し、これらの検出結果データをデータベース61(図1に示す)に保存する。
【0074】
このように、第1の実施形態に係る電子ロッカーは、アンテナの周波数、受信感度の調整を実行するときに、アンテナ調整器に通電するため、電力消費の節約が可能となる。また、アンテナの周波数、受信感度の調整によって選択されたコンデンサは、電力が供給されない状態であっても常時アンテナ同調回路に接続されているため、アンテナ調整器に通電することなしに、RFIDタグ2のデータを読み出すことが可能である。
【0075】
このように、第1の実施形態に係る電子ロッカー1は、アンテナの周波数、受信感度の調整を、アンテナ13の全てについて実行する。実行時間はアンテナ13一枚あたり約3秒であり、全15枚では約45秒で終了する。従来の調整方法では、計測機器を接続し、アンテナ一枚毎に計測値を確認しながら手動調整を必要とすることから、アンテナ13を全15枚調整するために約2〜3時間を費やしていたが、本発明では、アンテナの調整時間、作業を大幅に縮減することが可能である。また、従来の収納物品の検出方法よりも調整後のアンテナの精度が高いため、従来よりも短時間で収納物品の検出をすることが可能である。
【0076】
また、従来の方法では、金属製の収納物品が電子ロッカーに収納されている場合、アンテナから発信する電波が金属に反射してRFIDタグ2のデータの読み出しに問題が発生する場合があるが、本発明の場合、アンテナ13の調整によって、金属製の収納物品があっても、RFIDタグ2のデータの読み出しを問題なくすることができる。
【0077】
以上述べたように、電子ロッカーの扉の開閉後や定時間毎に、アンテナの周波数、受信感度の調整を自動で行い最適な状態に保つため、収納個数、収納物品の種類等の収納形態が変化しても、収納形態や収納物品の材質(金属等)に影響受けずに安定してRFIDタグ2のデータを高い精度で読み出せることができる。
【0078】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーアンテナ調整器に常時電源の供給を行う電子ロッカーについて図9及び図10を用いて説明する。なお、本発明の第1の実施形態に係る電子ロッカーは、発振周波数調整、受信感度調整の実行時のみに、アンテナ調整器に電源が供給されるが、本発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーは、アンテナ調整器に常時電源が供給されているものである。
【0079】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーの構成を示すブロック図、図10は、本発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーのアンテナ調整器の構成を示すブロック図である。なお、図3及び図4と同一のものに関しては、同一の符号を用い、構成に関する詳細な説明は省略する。
【0080】
図9に示すように、電子ロッカー制御部3は、電子ロッカー制御部3の制御を行うメイン制御部4と、RFIDタグ2のデータを読み出すリーダライタ6と、リーダライタ6からの給電電圧を受け、RFIDタグ2との通信を行うアンテナ13を選択するアンテナ切替器10と、電源を供給する電源部5と、アンテナ切替器10からのアンテナ13用の駆動電圧と電源部5からの電圧とを混合する電波電源混合器8と、アンテナ13の発振周波数の調整、受信感度の調整を行うアンテナ調整器19と、ロッカー扉の前面に設けられた認証用のアンテナ13と、ロッカー内に設けられている複数のアンテナ13とを有する。なお、アンテナ調整器19、アンテナ13及びアンテナ同調回路16(図10に示す)は、一体となって構成されており、これらをアンテナ部12と称する。図9に示すように、電子ロッカー制御部3は、アンテナ13の数量と同数のアンテナ部12が設けられている。
【0081】
図9に示す電子ロッカー制御部3は、アンテナ切替器10とアンテナ部12の間に電波電源混合器8が接続されており、電源部5をONすることにより常時、アンテナ調整器19に電源が供給されるように構成されている。
【0082】
次に、図10を用いてアンテナ調整器について説明する。図10に示すように、アンテナ調整器19は、アンテナ13用の駆動電圧と電源電圧とを分離する電波電源分離器21と、アンテナ13に接続され搬送波のロス(損失)を測定するSWR測定部22と、SWR測定部22からのデータを処理し、周波数調整用コンデンサ切替部37及び感度調整用コンデンサ切替部41を制御する制御部23と、コンデンサ35を接続した周波数調整用コンデンサ切替部37と、コンデンサ35を接続した感度調整用コンデンサ切替部41とを有している。
【0083】
図10に示すように、電子ロッカー制御部3のアンテナ調整器19は、電波電源混合器8からの電源部5の電圧に重畳されたアンテナ13用の駆動電圧が電波電源分離器21に入力され、アンテナ13用の駆動電圧と電源部5の電圧とに分離される。分離されたアンテナ13用の駆動電圧は、SWR測定部22に入力され、また、電源は、制御部23に供給される。制御部23は、マイクロコンピュータ、例えば、CPU、メモリ、IO等を1つのICチップに組み込んだワンチップマイコンから構成されており、メモリにプログラムが格納されている。マイクロコンピュータは、プログラムを実行して、周波数調整、感度調整とを実行する。制御部23は、電波電源分離器21から電源が供給され、制御部23のマイクロコンピュータは、電源が供給されると自動的にプログラムを実行する。また、制御部23は、周波数調整用コンデンサ切替部37及び感度調整用コンデンサ切替部41を制御するためのIOの出力ポートが各々に4個(4ビット)設けられている。
【0084】
図10に示すように周波数調整用コンデンサ切替部37は、4個の電磁リレーRL0、RL1、RL2、RL3で構成されており、電磁リレーの一方の接点の端子は、コンデンサ35の一方の端子に接続されており、電磁リレーの他方の接点の端子は、一体に接続されている。また、コンデンサ35の他方の端子は、他のコンデンサ35の他方の端子と一体に接続されている。コンデンサ切替部の電磁リレーは、制御部23のIOの出力によりコントロールされ、制御部23のIOからの出力信号により、電磁リレーの接点の開閉が行われる。
【0085】
図10に示す周波数調整用コンデンサ切替部37は、制御部23の4ビットの出力ポートOa3、Oa2、Oa1及びOa0により制御される。例えば、周波数調整用コンデンサ切替部37の電磁リレーRL1に5pF、電磁リレーRL2に18pF、電磁リレーRL3に33pF及び電磁リレーRL4に68pFが接続が接続されている場合には、4ビットの出力ポートOa3、Oa2、Oa1及びOa0によりコンデンサ35容量を0(出力ポートに0を出力)から124pF(出力ポートに16進数でFを出力)まで選択することが可能である。なお、コンデンサ切替部は、電磁リレーに限らず、例えば、トランジスタ又はアナログスイッチであってもよい。
【0086】
また、図10に示すように感度調整用コンデンサ切替部41は、周波数調整用コンデンサ切替部37と同様の構成を成し、制御部23の4ビットの出力ポートOb3、Ob2、Ob1及びOb0によりコンデンサ35の容量が制御される。
【0087】
以下に、上記構成からなる電子ロッカー制御部3の周波数調整、感度調整について図11乃至図13を用いて説明する。図11は、発明の第2の実施形態に係る電子ロッカーの電源投入後のアンテナ調整器における制御部の処理の概要を示すフローチャート、図12は、周波数調整に於ける周波数調整用コンデンサ切替部への出力ポートの数値の増減を決める処理を示すフローチャート、図13は、周波数調整に於ける周波数調整用コンデンサ切替部への出力ポートの数値の増減基づく周波数調整処理を示すフローチャートである。なお、RFIDタグ2と通信を行うための電波の周波数は、例えば、13.56MHz(メガヘルツ)を使用する。
【0088】
図9に示すメイン制御部4は、電源部5に対して、電源を供給するように通電開始信号を出力する。また、リーダライタ6に対して、アンテナ13用の駆動電圧を発するように制御する。また、アンテナ切替器10に対して、電波の周波数調整、感度調整を行うアンテナ部12を選択するように制御する。これにより、選択されたアンテナ部12にアンテナ13用の駆動電圧が印加される。また、アンテナ調整器19に電源が通電され、制御部23のマイクロコンピュータが起動して、プログラムが実行される。なお、全てのアンテナ調整器19に通電されて、制御部23のマイクロコンピュータが起動するが、各アンテナ13での電波の周波数調整、感度調整は、アンテナ切替器10により選択されたアンテナ13にアンテナ13用の駆動電圧が印加されていることを確認後に行うようにする。
【0089】
[アンテナの周波数調整]
図11は、電源投入後のアンテナ調整器19における制御部の処理の概要を示すフローチャートである。図7に示すように、メイン制御部4は、最初に、アンテナ切替器10に対して第1のアンテナ部12を選択するように信号を出力する(ステップS60)。また、電源部5に対して電源がONするように信号を出力する。また、リーダライタ6に対して、アンテナ13用の駆動電圧(搬送波)を発するように制御する。
【0090】
これにより、第1のアンテナ部12にアンテナ13用の駆動電圧が印加される。アンテナ部12に於けるアンテナ調整器19の制御部23は、アンテナ13にアンテナ13用の駆動電圧が印加されたのを確認後、周波数規定範囲の処理を行う。制御部23は、出力ポートから周波数調整用コンデンサ切替部37に出力データとして0(ゼロ)を出力する(ステップS61)。なお、出力データは、メモリに記憶され、読み書きができるようになっている。このとき、周波数調整用コンデンサ切替部37の全ての電磁リレーの接点は、開放しているため、コンデンサ容量は0である。アンテナ調整器19のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比(VSWR)を算出し、算出したデータをD20とする(ステップS62)。制御部23は、データD20が規定値以下であるかをチェックする(ステップS63)。データD20が規定値を越えている場合には、出力ポートから出力データに+1を加算したデータを周波数調整用コンデンサ切替部37に出力し、ステップS62に移行する。また、ステップS63でデータD20が規定値以下である場合には、感度規定範囲の処理を行う。制御部23は、出力ポートから感度調整用コンデンサ切替部41に出力データとして0(ゼロ)を出力する(ステップS65)。
【0091】
このとき、感度調整用コンデンサ切替部41の全ての電磁リレーの接点は、開放しているため、コンデンサ容量は0である。アンテナ調整器19のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比(VSWR)を算出し、算出したデータをD21とする(ステップS66)。
【0092】
制御部23は、データD21が規定値以下であるかをチェックする(ステップS67)。データD21が規定値を越えている場合には、出力ポートから出力データに+1を加算したデータを周波数調整用コンデンサ切替部37に出力し、ステップS66に移行する。また、ステップS67でデータD21が規定値以下である場合には、後述する周波数、感度の調整処理の処理を行う。メイン制御部4は、全てのアンテナ部に於ける調整処理が終了したかをチェックし(ステップS69)、終了していない場合には、アンテナ切替器10に対して次のアンテナ部12を選択するように信号を出力する(ステップS70)。その後、ステップS61に移行して、アンテナ調整器19の制御部23は、周波数規定範囲及び感度規定範囲の処理を行う。このように、全てのアンテナ部に対して、周波数規定範囲の処理、感度規定範囲の処理及び調整処理を行う。
【0093】
次に、調整処理の詳細を説明する。まず、図12を用いて周波数調整処理について述べる。最初に、アンテナ調整器19の制御部23は、周波数調整用コンデンサ切替部37への出力ポートOa3、Oa2、Oa1、Oa0から出力される最大値の半分の値となるようにする。例えば、周波数調整用コンデンサ切替部37への出力ポートから出力される最大値が、16進数でFの場合には、16進数で7を出力するようにする。これは、アンテナの周波数調整を短時間で行うためのものである。以下の説明では、制御部23の出力ポートから16進数で7が出力されているものとする。
【0094】
アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD25としてメモリに記憶する(ステップS80)。なお、算出された電圧定在波比は、ロス値と見なし、低い値ほどロスが少ないと判断するようにする。
【0095】
次に、制御部23は、出力ポートの現在値に1を加算して周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する。(ステップS81)。周波数調整用コンデンサ切替部37の出力ポート出力後に、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD26としてメモリに記憶する(ステップS82)。
【0096】
次に、制御部23は、出力ポートの現在値から2を減算して周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する(ステップS83)。周波数調整用コンデンサ切替部37に出力後に、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD27としてメモリに記憶する(ステップS84)。
【0097】
次に、データD25乃至データD27に基づいて、制御部23の出力ポートから周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する値の増減を決定するための処理を行う。最初に、データD25とデータD26とを比較して(ステップS85)、データD25がデータD26より大きい場合には、データD26とデータD25の差(データD26−データD25)をデータD28としてメモリに記憶する(ステップS86)。その後、データD25とデータD27とを比較して(ステップS87)、データD25がデータD27より大きい場合には、データD27とデータD25の差(データD27−データD25)をデータD29としてメモリに記憶する(ステップS88)。
【0098】
次に、データD28とデータD29とを比較して(ステップS89)、データD28がデータD29より大きい場合には、制御部23の周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する出力ポートの現在値から1を減算するための減算フラグをセットする(ステップS90)。また、データD29がデータD28以上のときには、制御部23の周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する出力ポートの現在値に1を加算するための加算フラグをセットする(ステップS91)。また、ステップS87でデータD27がデータD25以上のときには、制御部23の周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する出力ポートの現在値に1を加算するための加算フラグをセットする(ステップS92)。また、ステップS85でデータD26がデータD25以上のときには、データD25とデータD27とを比較して(ステップS93)、データD25がデータD27より大きい場合には、制御部23の周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する出力ポートの現在値から1を減算するための減算フラグをセットする(ステップS94)。また、ステップS93でデータD27がデータD25以上のときには、制御部23は、出力ポートの現在値に+1を加算して周波数調整用コンデンサ切替部37に出力する。(ステップS95)。このときの周波数調整用コンデンサ切替部37で選択したコンデンサ値が、周波数調整の最適値と判断する。また、周波数調整を完了したものとして、周波数用表示ランプ32を点灯して、ブザーを2回鳴らす(ステップS96)。
【0099】
また、ステップS90、ステップS91、ステップS82及びステップS94で、周波数調整用モータ27の回転のフラグが設定されたときには、図13に示す周波数調整の処理を行う。図13に示すように、周波数調整は、アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD30としてメモリに記憶する(ステップS100)。次に、制御部23は、周波数調整用コンデンサ切替部37に出力ポートの現在値に指定加減算のフラグに基づいて演算した数値を出力する(ステップS101)。アンテナ調整器18のSWR測定部22において、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧と反射波の電圧を測定して、測定したそれぞれの電圧値(アナログ値)を制御部23に出力する。制御部23は、アンテナ13用の駆動電圧における進行波の電圧値と反射波の電圧値をADコンバータによりアナログ値からデジタル値(デジタルデータ)に変換する。制御部23は、変換したデジタルデータから電圧定在波比を算出し、算出したデータをデータD31としてメモリに記憶する(ステップS102)。
【0100】
次に、データD30とデータD31とを比較して(ステップS103)、データD30がデータD31より大きい場合には、データD31をデータD30としてデータD30のメモリエリアに記憶する(ステップS104)。その後、ステップS101に移行する。ステップS103でデータD31がデータD30以上のときには、制御部23は、周波数調整用コンデンサ切替部37の出力ポートに指定加減算を反転した加減算(加算のときは減算、減算のときには加算)に基づいて演算した数値を出力する(ステップS105)。これにより、周波数調整用コンデンサ切替部37でのコンデンサの値が周波数調整の最適値と判断する。また、周波数調整を完了したものとして、周波数用表示ランプ32を点灯して、ブザーを2回鳴らす(ステップS106)。以上により、アンテナ13の周波数調整が完了する。
【0101】
また、受信感度調整は、図11乃至図13に示す周波数調整用コンデンサ切替部を感度調整用コンデンサ切替部に置き換えたものであり、同様のフローであるため説明を省略する。なお、制御部から感度調整用コンデンサ切替部に出力する出力ポートは、Ob3、Ob2、Ob1及びOb0である。
【0102】
以上述べたように、本発明によれば、電子ロッカーの扉の開閉後や定時間毎に、アンテナの周波数、受信感度の調整を自動で行うため、収納個数、収納物品の種類等の収納形態が変化しても、収納形態に影響受けずに安定してRFIDタグのデータを読み出せることができる。
【0103】
また、書類に限らず、ロッカー内部にノートPC等の金属等があっても、安定してRFIDタグ2のデータを読み出せるため、多種の収納物品を管理することができる。また、アンテナの周波数、受信感度の調整を自動で行うため、測定器等による調整は不要となる。
【0104】
また、本発明の電子ロッカーは、アンテナの周波数、受信感度の調整を実行するときのみ、アンテナ調整器に通電するため、電力消費の節約が可能となる。また、アンテナの周波数、受信感度の調整によって選択されたコンデンサは、電力が供給されない状態であっても常時アンテナ同調回路に接続されているため、アンテナ調整器に通電することなしに、RFIDタグのデータを読み出すことが可能である。
【0105】
また、本発明の電子ロッカーは、アンテナの周波数、受信感度の調整でのアンテナ同調回路に接続するコンデンサの選択を、中間の容量を有するコンデンサから調整を開始し、その前後の容量を有するコンデンサからコンデンサ容量を増加又は減少すべきかの判断を行って以後の調整を行うため、アンテナの周波数、受信感度の調整時間を大幅に短縮することが可能である。
【0106】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0107】
1 電子ロッカー
2 RFIDタグ(タグ)
3 電子ロッカー制御部
4 メイン制御部
5 電源部
6 リーダライタ
7、8 電波電源混合器
10 アンテナ切替器
11、12 アンテナ部
13 アンテナ(ロッカー内)
13a アンテナ(認証用)
16 アンテナ同調回路
18、19 アンテナ調整器
21 電波電源分離器
22 SWR測定部
23 制御部
25 周波数調整用モータ制御部
26 感度調整用モータ制御部
27 周波数調整用モータ
28 感度調整用モータ
29 周波数調整用ロータリースイッチ
30 感度調整用ロータリースイッチ
32 表示ランプ
34 ブザー
35 コンデンサ
37 周波数調整用コンデンサ切替部
41 感度調整用コンデンサ切替部
50 天板
51 左扉
52 右扉
53 表示部
54 IDカードリーダ
55 棚板
56a、56b、56c 収納物品
60 制御用端末機
61 データベース
RL0、RL1、RL2、RL3 電磁リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッカー内部に収納した物品にRFIDタグを取り付けて管理する電子ロッカーであって、
前記RFIDタグのデータを読み出すリーダライタと、前記RFIDタグと通信を行うアンテナと、前記アンテナの切替を行うアンテナ切替器と、前記アンテナ切替器と前記アンテナ間に前記アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うアンテナ調整部とを有し、
前記アンテナ調整部は、前記アンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定するSWR測定部と、アンテナ同調回路に並列接続される可変可能に構成されたコンデンサ容量可変手段とを有し、前記アンテナ調整部は、前記アンテナに搬送波の給電時のアンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定して電圧定在波比を算出し、前記電圧定在波比が最小となるように前記コンデンサ容量可変手段でコンデンサ容量を可変してアンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする電子ロッカー。
【請求項2】
前記コンデンサ容量可変手段は、電源供給が不要な自己保持型のスイッチを有し、前記コンデンサを接続した前記スイッチの接点を切り換えてコンデンサ容量を可変するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電子ロッカー。
【請求項3】
前記コンデンサ容量可変手段のスイッチは、ロータリースイッチからなり、前記アンテナ調整部は、前記ロータリースイッチの回転角度の大きさに応じて、コンデンサ容量が増加するように前記ロータリースイッチの端子にコンデンサを接続し、前記アンテナ調整部は、初回のコンデンサ容量の可変時に、前記ロータリースイッチの端子数が奇数のときには、中央の回転角度をコンデンサ容量の可変開始位置とし、端子数が偶数のときには、端子数の半分又は端子数の半分に1を加算した値の端子の回転角度をコンデンサ容量の可変開始位置とし、初回以後のコンデンサ容量の可変時では、前回のコンデンサ容量の可変での前記ロータリースイッチが保持している回転角度を可変開始位置として、可変開始位置及び可変開始位置の両隣の端子の位置に於ける電圧定在波比から、ロータリースイッチの回転方向を決定してアンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の電子ロッカー。
【請求項4】
電子ロッカーの扉の開閉後及び/又は定時間毎に、アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子ロッカー。
【請求項5】
更に、リーダライタからの搬送波の給電電圧を電源部の電圧に重畳する混合器を有し、前記混合器からアンテナに供給される重畳電圧をアンテナ調整部で搬送波の給電電圧と電源部の電圧とに分離して、前記アンテナ調整部に電源を供給するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電子ロッカー。
【請求項6】
前記アンテナ調整部は、前記アンテナ切替器により切り換えられたアンテナからの電源の供給を受けて、アンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子ロッカー。
【請求項7】
ロッカー内部に収納した物品にRFIDタグを取り付けて管理する電子ロッカーの調整方法であって、
前記アンテナ調整部は、前記アンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定するSWR測定部と、アンテナ同調回路に並列接続される可変可能に構成されたコンデンサ容量可変手段とを有し、
前記アンテナ調整部は、前記アンテナに搬送波の給電時のアンテナの進行波電圧、反射波電圧を測定して電圧定在波比を算出し、前記電圧定在波比が最小となるように前記コンデンサ容量可変手段でコンデンサ容量を可変してアンテナの発振周波数の調整、受信感度の調整を行うようにしたことを特徴とする電子ロッカーの調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−214986(P2012−214986A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79392(P2011−79392)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390001454)NECネッツエスアイ株式会社 (36)
【出願人】(507138789)クレスコ・アイディー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】