説明

電子体温計用収納ケース

【課題】電子体温計の先端部を保持する部材の柔軟性を維持しつつ耐久性を向上する。
【解決手段】電子体温計を収納するための電子体温計用収納ケースは、上面パネル、該上面パネルに対向する下面パネル、該上面パネルと該下面パネルを接続する側面パネルによって電子体温計を収納する内部空間が形成された容器本体を有する。この内部空間の一端には、電子体温計を先端キャップの側から挿入するための開口が形成され、開口と反対側の端部には、電子体温計の先端キャップに嵌合して電子体温計を内部空間に保持するように配置された、円弧状の断面を有する複数の保持部材を有する。上面パネルと下面パネルは、開口の反対側の端部に向かって細くなるテーパー形状を有し、複数の保持部材は、テーパー形状に沿って設けられた側面パネルが形成する内壁から電子体温計の挿入方向に沿って延びるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子体温計の収納ケースに関する。更に、詳しくは電子体温計の挿入口が開口したタイプの電子体温計用収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の挿入口が開口したタイプの電子体温計用の収納ケースにおいて電子体温計を係止・固定するための機構として、種々の構成が提案されている。一般に電子体温計の収納ケースでは、その内部空間へ電子体温計をスムーズに出し入れできるようにするため、内部空間の大きさに余裕を持たせ、内壁にリム等を設けて電子体温計を固定している。
【0003】
特許文献1では、収納された電子体温計の先端キャップを包むように保持する円筒状の保持部材を、収納ケース先端部側の内部空間における底平面に設けることが記載されている。このような収納ケースによれば、保持部材が電子体温計の先端キャップを保持することでケース内において電子体温計を固定するとともに、電子体温計が収納ケースから不用意に飛び出すことを防止している。
【0004】
さらに、特許文献1によれば、円筒形の保持部材にスリットを設けてたわみやすくしたり、保持部材の端部を面取りしたりしている。このように構成することで、電子体温計の収納ケースへの挿入時に、その先端キャップが保持部材と接触した際の先端キャップに加わる衝撃を弱め、電子体温計の先端部の破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2572127号公報(第3図(イ)、(ロ)、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した保持部材は、電子体温計の先端キャップを係止・固定することを目的としたものであるので、過度に撓みやすくすることはできない。したがって、保持部材の端部を面取りをしてはいるものの保持部材の端部に電子体温計の先端が突き当たることで電子体温計の先端部に衝撃が加わってしまう。また、電子体温計の出し入れを容易にするために内部空間の大きさに余裕を持たせているため、電子体温計の内部空間への挿入の仕方(角度)によっては、先端キャップの先端中央部と保持部材の端面とがぶつかり、より大きな衝撃が先端キャップに加わる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、挿入口が開口しており、電子体温計の先端部を保持して固定するタイプの電子体温計の収納ケースにおいて、収納時に電子体温計の先端部に加わる衝撃を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による電子体温計用収納ケースは以下の構成を備える。すなわち、
電子体温計を収納するための電子体温計用収納ケースであって、
前記電子体温計を収納する内部空間が形成された容器本体と、
前記容器本体の前記内部空間の一端には、前記電子体温計を先端キャップの側から挿入するための開口が形成され、
前記内部空間の前記開口と反対側の端部において、前記電子体温計の前記先端キャップに嵌合して前記電子体温計を前記内部空間に保持するように配置され、円弧状の断面を有する複数の保持部材と、
前記複数の保持部材を囲むように設けられ、前記開口に向かって前記保持部材よりも高く延びた、断面が円弧状の板状の部材で形成された複数のガイド部材と、を備える。
【0009】
また、上記の目的を達成するための本発明の他の態様による電子体温計用収納ケースは以下の構成を備える。すなわち、
電子体温計を収納するための電子体温計用収納ケースであって、
上面パネル、該上面パネルに対向する下面パネル、該上面パネルと該下面パネルを接続する側面パネルによって前記電子体温計を収納する内部空間が形成された容器本体と、
前記容器本体の前記内部空間の一端には、前記電子体温計を先端キャップの側から挿入するための開口が形成され、
前記内部空間の前記開口と反対側の端部において、前記電子体温計の前記先端キャップに嵌合して前記電子体温計を前記内部空間に保持するように配置された、円弧状の断面を有する複数の保持部材とを備え、
前記上面パネルと前記下面パネルとは、前記開口の反対側の端部に向かって細くなるテーパー形状を有し、前記複数の保持部材は、前記テーパー形状に沿って設けられた前記側面パネルの内壁から前記電子体温計の挿入方向と平行に延びるように設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、挿入口が開口しており、電子体温計の先端部を保持して固定するタイプの電子体温計の収納ケースにおいて、収納時に電子体温計の先端キャップに加わる衝撃が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態による電子体温計用収納ケースの外観を示す図である。
【図2】実施形態による電子体温計用収納ケースの容器本体の上面図、側面図、下面図である。
【図3】実施形態による電子体温計用収納ケースの、電子体温計挿入方向に沿った断面を示す図である。
【図4】実施形態による電子体温計用収納ケースの、電子体温計挿入方向と直交する方向に沿った断面を示す図である。
【図5】実施形態による電子体温計用収納ケースの、先端部における保持部材とガイド部材の詳細を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本実施形態による電子体温計用収納ケース(以下、収納ケースという)の外観を示す図である。
【0013】
図1の(a)に示すように、収納ケース10は容器本体11とキャップ部材12を有する。収納ケース10はプラスチックにて作られている。キャップ部材12は回動部15を介して容器本体11に取り付けられており、回動部15により回動して収納ケース10の開閉を可能にしている。キャップ部材12を、例えば透明な部材で形成すれば、収納ケース10に電子体温計が収納されているか否かを直ちに視認することができる。容器本体11の上面パネル111には窓13が設けられている。使用者は、収納ケース10の内部空間に収納された電子体温計20の表示部22を外部から見ることが出来る。使用者は、窓13により収納ケース10に電子体温計20が収納されているか否かを知ることができる。ただし、上述したようにキャップ部材12を透明にした場合、窓13を省略することもできる。
【0014】
図1の(b)に示すように、キャップ部材12を回動させると、容器本体11の内部空間へ電子体温計20の抜き差しを行うための開口14が露出する。収納ケース10への電子体温計20の収納時には、電子体温計20は先端キャップ21の側から容器本体11の内部空間へ挿入される。容器本体11は、上面パネル111、これに対向する下面パネル112、上面パネル111と下面パネル112を接続する側面パネル113とを有し、これらのパネルによって電子体温計20を収納し得る内部空間と、開口14とが形成されている。なお、便宜上、容器本体11が、上面パネル111、下面パネル112、側面パネル113により構成されるとしているが、これらは実際の部品の単位を示すものではない。例えば、容器本体11は、射出成形により、上面パネル111、下面パネル112、側面パネル113を一体的に成形して得られる。容器本体11は、耐衝撃性の熱可塑性樹脂、例えばハイインパクト・スチロール樹脂、ブチレン、スチレン樹脂等で形成されている。
【0015】
容器本体11は、外観が先端部に向かって細くなるテーパー形状を有している。本実施形態では、特に上面パネル111と下面パネル112とが、電子体温計20の外形に対応するようなテーパー形状を有し、側面パネル113がこの形状に沿うように設けられて、上面パネル111と下面パネル112とを接続している。その結果、側面パネル113は、開口14とは反対側の端部で、電子体温計の挿入方向に対して傾斜面を形成することになる。
【0016】
図2は、本実施形態による電子体温計用収納ケースの容器本体11(キャップ部材12は省略している)を、(a)上面パネル側から見た図、(b)側面パネル側から(図2(a)のX方向から)見た図、(c)下面パネル側から(図2(b)のY方向から)見た図である。上述したように、上面パネル111には窓13が設けられている。このため、電子体温計20が収納ケース10に正しく収納されている場合には、電子体温計の表示部22には何も表示がされないので正しく収納されているか否かが確認できる。また、上下逆にして収納された場合には、電子体温計の表示部22が何も見えないので、正しく収納されているか否かが確認できる。また、回動部15は円弧状のアーム部材151を介して側面パネル113に接続されている。また、下面パネル112には、ラベルなどを貼付するのに都合がよいように浅い溝16が設けられている。
【0017】
次に、本実施形態による収納ケース10の容器本体11に設けられた内部空間について図3を参照して説明する。
【0018】
図3(a)は、図2(a)のA−Aにおける断面を示した図である。上面パネル111、下面パネル112、及び側面パネル113の内壁により電子体温計20を収納するための内部空間30が示されている。収納ケース10のキャップ部材12を図1(b)のように回動させ、容器本体11の一端に設けられた開口14から容器本体11の内部空間30に電子体温計20を先端キャップ21側から挿入する。容器本体11の内部空間30の開口14側に設けられた第1の導入リブ31aと、容器本体11のほぼ中間部に設けられた第2のリブ31bにより、内部空間の壁面と電子体温計20との間に隙間が出来、電子体温計20を収納ケース10に挿入する時のガイド部としての機能を果たすために、電子体温計20は空気抵抗を受けることなくスムーズに内部空間30に挿入される。なお、第1の導入リブ31aは、幅0.8mm程度、長さ40mm程度、開口14側の高さ0.7mm程度で3本が並行に幅4mm程度で設けられている。
【0019】
内部空間30の開口14と反対側の端部には、バネ弾性を有し、断面が円弧形状の板状の部材からなる保持部材32とガイド部材33が設けられている。保持部材32は電子体温計20の先端キャップ21を包み、電子体温計20を内部空間30内で固定するように作用する。
【0020】
図3(b)、図3(c)はそれぞれ図3(a)のB−B断面、C−C断面を示している。ガイド部材33は保持部材32の外側に設けられ、保持部材32よりも開口14の側へ長く延びている。側面パネル113は、上面パネル111及び下面パネル112が形成するテーパー形状のために、電子体温計の挿入方向に対して傾斜して設けられており、内部空間30の内壁において電子体温計20の挿入方向に対して斜面を形成している。保持部材32とガイド部材33は側面パネル113におけるそのような斜面から挿入方向と略平行に起立している。
【0021】
図4(a)(b)は、保持部材32とガイド部材33とを開口14の側から観察した様子を示す図であり、図4(a)は図2(a)のD−D断面を示し、図4(b)は図2(a)のE−E断面を示している。
【0022】
保持部材32は、断面が円弧状の板状の部材であり、本実施形態では2つの保持部材32が向かい合って配置されて、電子体温計20の先端キャップ21を保持するように円筒状の部材を形成している。ガイド部材33は、断面が円弧状の板状の部材であり、保持部材32が形成する円筒を囲むように配置されている。図示のように、複数の保持部材32、複数のガイド部材33は、すべて側面パネル113から起立している。
【0023】
また、保持部材32の内側の面にはリブ34が設けられている。リブ34は、保持部材32にさらなるバネ弾性を付与するとともに、保持部材32の摩耗を防止する効果を有する。
【0024】
図5は収納ケース10の先端部の横断面を示す図であり、図5(a)は図3(a)の先端部を拡大したもの、図5(b)は図3(b)の先端部を拡大するとともに、電子体温計20の先端キャップ21を保持した様子を合わせて示した図である。
【0025】
図1(b)に示したように、電子体温計20を先端キャップ21側から内部空間30に挿入していくと、先端キャップ21は図5(b)に示すように、保持部材32の弾性力により確実に嵌合され、不使用時に不用意に容器本体11から抜けたりすることがない。又、使用時には、これらの弾性力に抗して電子体温計20を引っ張れば、電子体温計20は容器本体11の内部空間30から容易に離脱させることが出来る。
【0026】
側面パネル113とガイド部材33との隙間、ガイド部材33と保持部材32との隙間が先端キャップ21の径に対して十分に狭くなるように保持部材32とガイド部材33が配置されている。例えば、好ましくは、これらの隙間が先端キャップ21の半径よりも小さくなるようにガイド部材33と保持部材32とが設けられる。また、保持部材32とガイド部材33は撓み性を有し、それらの端面は面取りされてそれぞれにR面32a、R面32bが形成されている。そのため、電子体温計20の先端キャップ21は、ガイド部材33や保持部材32に当接しても、矢印35に示すようにスムーズに案内されて、保持部材32に保持されるようになる。したがって、電子体温計20を収納ケース10に収納する際に先端キャップ21に加わる衝撃を低減することができ、電子体温計20の先端キャップ21の耐久性を向上できる。
【0027】
また、上述したように、保持部材32とガイド部材33は、側面パネル113が形成する傾斜面から起立している。このため、規律方向に垂直な面から起立した場合に比べて、保持部材32とガイド部材33と側面パネルの接合部分(保持部材32とガイド部材33の根元)における接合面積が大きくなる。そのため、保持部材32、ガイド部材33は十分な撓み性を有しながら、その耐久性を向上させることができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、2つの保持部材32と4つのガイド部材33を設けた構成を示したが、これに限られるものではない。例えば、3つ以上の保持部材32、2つまたは4つ以上のガイド部材33を設けるようにしてもよい。いずれにしても、複数の保持部材32とガイド部材33は、側面パネル113上における、収納ケース10の先端部を中心とした対称位置に配置され、上述のバネ弾性により収納空間に挿入された電子体温計20の先端キャップ21と確実に嵌合するようになっている。
【0029】
なお、収納ケース10の外観は直方体としてもよい。その場合、テーパー部の斜面から保持部材やガイド部材を立ち上げることはできないが、ガイド部材によって保持部材へのスムーズな挿入が可能となる。
【0030】
また、側面パネル113が形成する斜面に保持部材32を設けることでその耐久性を向上させるという観点からすれば、ガイド部材33を設けない構成も本願発明の範疇ある。
【符号の説明】
【0031】
10:(電子体温計用)収納ケース 11:容器本体 12:キャップ部材 13:窓 14:開口、111:上面パネル 112:下面パネル 113:側面パネル 30:内部空間 31a:第1の導入リブ 31b:第2のリブ 32:保持部材 33:ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子体温計を収納するための電子体温計用収納ケースであって、
前記電子体温計を収納する内部空間が形成された容器本体と、
前記内部空間の一端には、前記電子体温計を先端キャップの側から挿入するための開口が形成され、
前記内部空間の前記開口と反対側の端部において、前記電子体温計の前記先端キャップに嵌合して前記電子体温計を前記内部空間に保持するように配置され、円弧状の断面を有する複数の保持部材と、
前記複数の保持部材を囲むように設けられ、前記開口に向かって前記保持部材よりも高く延びた、断面が円弧状の板状の部材で形成された複数のガイド部材と、を備えることを特徴とする電子体温計用収納ケース。
【請求項2】
前記複数の保持部材と前記複数のガイド部材との間の隙間は、前記電子体温計の前記先端キャップの半径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子体温計用収納ケース。
【請求項3】
前記上面パネルと前記下面パネルは、前記開口の反対側の端部へ向かって細くなるテーパー形状を有し、
前記複数の保持部材と前記複数のガイド部材は、前記テーパー形状に沿って設けられた前記側面パネルが形成する内壁から前記電子体温計の挿入方向と平行に延びるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子体温計用収納ケース。
【請求項4】
前記保持部材と前記ガイド部材の先端部がそれぞれ面取りされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子体温計用収納ケース。
【請求項5】
電子体温計を収納するための電子体温計用収納ケースであって、
上面パネル、該上面パネルに対向する下面パネル、該上面パネルと該下面パネルを接続する側面パネルによって前記電子体温計を収納する内部空間が形成された容器本体と、
前記内部空間の一端には、前記電子体温計を先端キャップの側から挿入するための開口が形成され、
前記内部空間の前記開口と反対側の端部において、前記電子体温計の前記先端キャップに嵌合して前記電子体温計を前記内部空間に保持するように配置された、円弧状の断面を有する複数の保持部材とを備え、
前記上面パネルと前記下面パネルとは、前記開口の反対側の端部に向かって細くなるテーパー形状を有し、前記複数の保持部材は、前記テーパー形状に沿って設けられた前記側面パネルの内壁から前記電子体温計の挿入方向に沿って延びるように設けられていることを特徴とする電子体温計用収納ケース。
【請求項6】
前記開口の側において開閉が可能に設けられたキャップ部材をさらに備え、
前記キャップ部材が透明の部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子体温計用収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208016(P2012−208016A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73972(P2011−73972)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)