説明

電子体温計

【課題】ユーザによる日付の設定ミスを低減させることが可能な女性用電子体温計を提供する。
【解決手段】電子体温計は、日時を計る時計部と、体温の計測結果を時計部により提供される日時と関連付けて保持するデータ保持部としてのRAMを有する。更に、電子体温計は、電波時計のための標準電波を受信する受信部と、電子体温計に電力を供給する電池の交換後に最初に電源がオンされた時に、受信部により標準電波を受信して時計部の日時を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、時計の機能を内蔵し、体温,血圧,血糖等を測定日時とともに記憶する、電子体温計,電子血圧計,血糖計等の医療装置が知られている。例えば、女性の基礎体温を測定する女性用電子体温計では、測定値と日時とを関連付けてメモリに記録する機能を持つものがある。女性の基礎体温は高温相と低温相とが周期的に変化する2相性を有しており、女性用電子体温計はその基礎体温を測定するために使用される。女性用電子体温計を用いて基礎体温を毎日記録し、トレンドグラフを作成・表示させることで、ユーザは、高温相と低温相の周期を知ることができる。また、女性用電子体温計には、一般に、作成されたトレンドグラフに基づいて、次回生理日や次回排卵日を予測する予測機能や、当該トレンドグラフと対応付けて日々の体調を入力するメモ入力機能といった、体調管理を行う上で便利な機能が多数搭載されている。
【0003】
一方で、これらの機能を有効にするためには、測定された基礎体温が、内蔵されたタイマによって管理された日時と正しく対応付けして、トレンド記憶されていることが前提となる。このため、女性用電子体温計の場合、内蔵された時計による正確な日付の管理が重要となってくる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−68839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、電池交換等により、古い電池が取り外され、再度、新たな電池が取り付けられた場合等、ユーザによる日付の設定が必要となる。このような場合、現在の日付を正確に設定することが重要となってくるが、操作ミス等により、誤った設定がなされた場合、以下のような不都合が生じる。
【0006】
すなわち、設定された現在の日付が、既に測定された基礎体温が対応付けして記憶された日付よりも前の日付となった場合、当該記憶されている基礎体温は、現在の日付よりも後に記憶された基礎体温となり、見かけ上、未来の基礎体温が記憶されていることとなる。つまり、次回生理日や次回排卵日等を予測する予測機能を正しく動作させることができなくなってしまう。そのため、設定された現在の日付が、既に測定された基礎体温が対応付けして記憶されている日付よりも前の日付となった場合、当該設定された現在の日付よりも、後の日付に記憶されているすべての基礎体温を、自動的に消去するように構成された女性用電子体温計もある。
【0007】
このため、女性用電子体温計の場合、現在の日付を設定するにあたっては、不用意な操作ミスを極力回避できるように構成されていることが望ましい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ユーザによる日時の設定ミスを低減させることが可能な電子体温計およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による電子体温計は以下の構成を備える。すなわち、
日時を計る時計手段と、
体温の計測結果を前記時計手段により提供される日時と関連付けて保持するデータ保持手段と、
電波時計のための標準電波を受信する受信手段と、
前記電子体温計に電力を供給する電池の交換後に最初に電源がオンされた時に、前記受信手段により標準電波を受信して前記時計手段の日時を設定する設定手段と、を備える。
また、
電子体温計であって、
制御部と、
日時を計る時計手段と、
体温の計測結果を前記時計手段により提供される日時と関連付けて保持するデータ保持手段と、を備え、
前記制御部は、前記電子体温計に電力を供給する電池の交換後に最初に電源がオンされた後に、時刻設定された日時が、前記保持手段に記憶されている前記体温に関連付けられた日時のうち最新の日時より古いか否か判断し、前記最新の日時より古い場合には、警告を発生するようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザによる日時の設定ミスを低減させることが可能な電子体温計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る女性用電子体温計の外観構成を示す図である。
【図2】女性用電子体温計のシステム構成を示す図である。
【図3】女性用電子体温計の表示部の表示内容を示す図である。
【図4】女性用電子体温計における日時設定処理の流れ示すフローチャートである。
【図5】女性用電子体温計における時刻変更処理の流れ示すフローチャートである。
【図6】女性用電子体温計における、マニュアルによる時刻設定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、体温の計測結果を日時と関連付けて保持する機能を有する電子体温計として女性用電子体温計を例示することにより、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0013】
<第1実施形態>
1.女性用電子体温計の外観構成
図1は、本発明の一実施形態に係る女性用電子体温計100の外観構成を示す図である。図1において、101は、耐衝撃性、耐薬品性を備えた合成樹脂によって形成された本体ケースであり、後述する演算制御部や、ブザー部、電池(電源部)等が収納されている。102はステンレス製の金属キャップであり、内部にはサーミスタ(後述)等の温度計測部が接着剤により固定して収納されている。つまり、金属キャップ102は、サーミスタに対して体温(温度)を伝熱させるとともに、サーミスタを外部の衝撃等から保護する役割を担っている。
【0014】
103は表示部であり、数字・文字・図形(キャラクター、アイコン等)を表示可能な、ドットマトリックス液晶部等により構成されている。なお、表示部103に表示される表示内容の詳細は後述する。本体ケース101上には、更に、表示部103上に表示された表示内容に基づいて、女性用電子体温計100に各種指示を入力するための入力ボタン104(十字ボタン)が設けられている。
【0015】
入力ボタン104は、表示部103上に表示されたメニュー項目等の選択対象を選択状態にするための識別子(カーソル)を移動させるための指示(移動指示)を与える左ボタン111、右ボタン112を備える。また、カーソルの移動先の選択対象について、設定値を変更したりするための指示(変更指示)を与える上ボタン121、下ボタン122を備える。更に、カーソルの移動先の選択対象(またはカーソルの移動先の選択対象ついて、変更された設定値)を決定するための決定ボタン130を備える。なお、決定ボタン130は、女性用電子体温計100の電源ON/OFFスイッチとしての役割も担っている。
【0016】
さらに、図示しないが、女性用電子体温計100には、パーソナルコンピュータ(PC)などをホストとして接続するための外部通信部(コネクタ等を含む)も備えられている。また、定時測定を促すための目覚まし機能も備えられており、別途設定された時刻になると目覚まし音を鳴らしてユーザに体温測定を促すよう構成されているものとする。
【0017】
2.女性用電子体温計のシステム構成
次に、女性用電子体温計100のシステム構成について図2を参照しながら説明する。図2は、女性用電子体温計100のシステム構成を示す図である。
【0018】
図2に示すように、女性用電子体温計100は、温度を計測しそれをデジタル値として出力する温度計測部210と、計測された温度から予測温度を演算すると共に女性用電子体温計100全体を制御・判断、各工程の動作の制御・判断を行なう演算制御部220と、測定結果を表示する、バックライト用のLED231を備えた表示部230と、目覚まし音等の音声を出力するブザー部240と、ユーザからの操作を受け付ける入力部250と、各部に電源を供給する電源部260とを備える。電源部260には、女性用電子体温計100に電力を供給する電池が交換可能に装着されている。
【0019】
温度計測部210は、並列に接続された感温部に設置されたサーミスタ及びコンデンサと、測温用CR発振回路とから構成され、サーミスタの温度に対応するカウンタ226のカウント量の変化に従い、温度をデジタル量として出力する。なお、上述の温度計測部210の構成は一例であって、これに限定されるものではなく、たとえば、AD積分方法により温度をデジタル量として出力するものであってもよい。
【0020】
演算制御部220は、表示部230を制御するための表示制御部227と、測温用CR発振回路の発振信号をカウントするカウンタ226と、ROM222の予測式プログラムに従い予測演算等を行う演算処理部221とを備える。更に、カウンタ226や演算処理部221、表示制御部227を制御する制御回路225を備える。
【0021】
また、演算制御部220は、1日1回の計測から得られた測定値(基礎体温データ)及び入力部250により入力された各種入力値を日付及び時刻と対応付けて所定日数分(例えば240日分)記憶するとともに、月経周期ごと(生理初日から次の生理初日の前日まで)の中間データ等を一時記憶するRAM223と、体温測定に必要なパラメータや予測式プログラム等を格納したROM(コンピュータ読取可能な記憶媒体)222と、時刻及び日付を管理する時計部224とを備える。なお、測定値などを記憶するデータ保持部としての一時記憶領域には、不揮発性の書き換え可能メモリが用いられるものとするが、以下では、このような一時記憶領域を含めて、RAM223と称することにする。受信部228は、電波時計の標準電波を受信する。演算処理部221は、受信部228で受信した標準電波に基づいて時計部224に日時を設定する。すなわち、時計部224と受信部228は電波時計として機能する。
【0022】
入力部250には、上述した左ボタン111、右ボタン112、上ボタン121、下ボタン122、決定ボタン130などが含まれ、ユーザからの各種指示を受け付ける。なお、RAM223に日付及び時刻を対応付けて記憶された所定日数分の測定値及び各種入力値は、時計部224によって管理されている時刻(現在の日付及び時刻)よりも先の日付及び時刻に対応付けられた値については、自動的に消去するように構成されているものとする。次回生理日や次回排卵日等を予測する予測機能を正しく動作させることができなくなってしまうからである。
【0023】
なお、RAM223に日付及び時刻と対応付けて記憶された所定日数分の測定値及び各種設定値が、時計部224によって管理されている時刻(現在の日付及び時刻)よりも先の日付及び時刻に対応付けられたものとなってしまう状態とは、例えば、電池交換等により、時計部224が管理している時刻及び日付がリセットされ、ユーザが現在の日付及び時刻をあらためて設定する場合に、誤った日付及び時刻を設定してしまう場合等が挙げられる。
【0024】
3.表示部の表示内容
次に、女性用電子体温計100の表示部103に表示される表示内容について説明する。図3は、女性用電子体温計100の表示部103に表示される表示内容を示す図である。図3において、301は女性用電子体温計100の各種機能を選択するための選択機能表示領域である。選択機能表示領域301に表示された各絵文字(アイコン)は、左から順に、メモ入力機能、次回生理日表示機能、次回排卵日表示機能、選択機能、目覚まし時刻設定機能、音量設定機能、時刻設定機能を選択するためのアイコンである。
【0025】
302はメモ入力機能が選択された際に、入力されるメモ内容を選択するための選択メモ表示領域である。選択メモ表示領域302に表示された各絵文字(アイコン)は、左から順に、生理日、発熱、不正出血を示すアイコンであり、矢印に沿って更に、生理痛、性交、飲薬、おりもの等を示すアイコンが表示可能である。303は測定データ表示領域であり、測定された体温データを表示したり、過去の所定日数分の体温データをトレンドグラフとして表示したりする。
【0026】
304は設定情報表示領域であり、音量設定機能等、ユーザが設定した設定内容を表示する。なお、本実施形態に係る女性用電子体温計100では、音量設定機能を用いて音量を設定する際に、音量を変更するための操作を行った場合、当該操作を行ったタイミングで、変更後の音量による音声が出力されるよう構成されているものとする。このように、変更した音量を、実際にユーザがその場で視聴できる構成とすることで、ユーザは最適な音量設定を行うことが可能となる。
【0027】
305は現在日時表示領域であり、時計部224から提供される現在の日付(年月日)または時刻(時分)が表示される。306は内部状態表示領域であり、女性用電子体温計100の内部状態を示す情報(例えば、電池の残量等)が表示される。307は状態表示領域であり、次回排卵日が近づいていること、次回生理日が近づいていること、ならびに、低温相期であること、をそれぞれ示すマークが表示される。
【0028】
なお、女性用電子体温計100の各種機能のうち、メモ入力機能、次回生理日表示機能、次回排卵日表示機能等については、例えば、上記特許文献1に既に開示されているため、ここでは説明を省略し、以下では、本実施形態に係る女性用電子体温計100の特徴的な機能である、時計部224の日時設定機能について詳説する。
【0029】
4.日時設定処理の説明
図4は、本実施形態の女性用電子体温計100における、時刻の初期設定処理を説明する図である。本実施形態の女性用電子体温計100において所定の操作により電源がオンされると図4の処理が実行される。なお、本実施形態の女性用電子体温計100では、決定ボタン130を所定時間(たとえば3秒以上)押し続けることにより(以下、このようなボタン操作を長押しという)電源がオンされる。電源がオンされると、ステップS401において、演算処理部221は、この電源オンが、電池交換後の最初の電源オンまたはユーザが女性用電子体温計100を購入して初回の電源オンであるか否かを判定する。電池交換後の最初の電源オンか否かの判定は、例えば、電池の取り外しにより時計部224の現在時刻とともにリセットされ、時計部224に日時が設定されたことでセットされるフラグを用いることで実現できる。また、購入後初回の電源オンか否かについても、特定のフラグを用いることにより判定することが可能であることは当業者には明らかであろう。電池交換後の最初の電源オンでなく、且つ、購入後の初回の電源オンでもない場合は(S401でNO)、そのまま通常動作へ移行する(S406)。
【0030】
電池交換後の最初の電源オン、あるいは、購入後の初回の電源オンであった場合、ステップS402において、演算処理部221は受信部228により電波時計の標準電波を受信する。そして、ステップS403において、演算処理部221は、受信部228により標準電波の受信に成功したか否かを判定する。標準電波の受信に成功した場合、ステップS404において、演算処理部221は、標準電波により示される日時を時計部224に設定する。そして、ステップS406において、通常動作へ移行する。以上の動作により、購入後や、電池交換のたびに日時設定を行なうという煩雑さからユーザを解放することができる。また、ユーザが女性用電子体温計100を購入して初回の電源オンの場合にはステップS401でメーカの出荷時の日時が表示されるが、その後のステップS402で現在の日時(年・月・日・時・分・秒)を時計部224,受信部228により自動で取得されるのでマニュアルで日時の設定をすることが不要となり、日時合わせの煩雑さが解消される。
【0031】
電波時計のための標準電波は、使用場所によっては受信できない場合があり、そのような場合にはステップS403で標準電波の受信に失敗したと判定される。標準電波の受信に失敗した場合、演算処理部221は、ステップS405において、マニュアルによる日時設定を行なうモードへ自動的に移行する。マニュアルによる時刻設定において、ユーザは、例えば、左ボタン111と右ボタン112により設定する項目(年、月、日、時、分)を選択し、上ボタン121と下ボタン122により選択されている項目の値を増減する。所望の日時を設定した後、決定ボタン130を押すことで日時のマニュアル設定が完了し、処理はステップS406へ進む。
【0032】
以上のように、電池交換等により時計部が初期化された場合には、電波時計の機能を利用して時計部224の日時設定が行なわれるので、ユーザによる日時の誤設定を防止できる。また、標準電波を受信できない場合には、自動的に日時を設定するモードへ移行するので、操作性が向上する。
【0033】
また、上記実施形態では、電池交換後の最初の電源オン時にのみ時計部224の日時設定を行うようにしたので、標準電波による日時設定に起因した電力消費を最小限にとどめることができ、電池を使用する女性用電子体温計100にとって好都合である。
【0034】
但し、時計部224においてより正確な時刻を維持するために、上記最初の電源オン時以外のタイミングにおいても、標準電波による日時設定を実行するような構成を採用することもできる。例えば、以下の(1)〜(4)に示されるタイミングなどの少なくともいずれかのタイミングにおいて、受信部228により標準電波を受信して時計部224の日時を設定するようにしてもよい。ただし、これらタイミング(1)〜(4)などにおいては、標準電波の受信に失敗しても自動的にマニュアルによる日時設定を行なうモードへ移行することはしない。
(1)RAM223へ計測結果を保持するとき
(2)時計部224により提供される時刻が所定の時刻になったとき
(3)女性用電子体温計100の電源をオンしたとき
(4)女性用電子体温計100に対して標準電波を用いた日時設定の実行を要求する所定の操作が行なわれたとき
【0035】
<第2実施形態>
女性用電子体温計100のユーザの中には、時計部224の日時を、実際の日時から数分(たとえば5分程度)ずらして女性用電子体温計100を用いるユーザがいる。そのようなユーザが第1実施形態の女性用電子体温計100を用いた場合、標準電波に基づいて日時が設定されるたびに日時を更新しなくてはならない。第1実施形態で説明したような、電池交換後の最初の電源オン時にのみ標準電波を用いた日時設定を行なう構成であれば、電池交換後に一度だけ日時の更新操作を行えば済む。しかしながら、「RAM223へ計測結果を保持するとき(上記タイミング(1))」といったような「最初の電源オン時」以外にも日時設定を実行する構成を用いた場合、ユーザはその都度、時刻を更新するための操作を行なわなくてはならず、操作が煩わしくなってしまう。
【0036】
第2実施形態では、時計部224の時刻をユーザが所望の時間だけずらして使用するような場合にも、標準電波による日時設定のたびにユーザが時刻の更新を繰り返すといった煩雑さを解消する構成を説明する。
【0037】
図5は、第2実施形態による、ユーザ操作による時刻更新の処理を説明するフローチャートである。本処理は、選択機能表示領域301において「時刻設定機能」のアイコンが選択されて、時刻設定機能が起動した場合に起動される。
【0038】
ステップS501において、演算処理部221は、時刻の変更操作がなされたか否かを判定する。時刻の変更操作では、例えば、左ボタン111と右ボタン112により設定項目として「分」が選択された状態で、上ボタン121と下ボタン122により値の増減を指示することで、「分」の値を変更することができる。本実施形態では、上ボタン121と下ボタン122による値の増減の指示があると時刻変更操作が発生したものと判断し、処理はステップS501からステップS502へ進む。
【0039】
時刻の変更操作が発生したと判断された場合、演算処理部221はステップS502においてその時刻変更操作にしたがって時計部224の時刻を変更し、ステップS503においてその変更量をRAM223に保持する。例えば、標準電波を用いて設定された時刻から10分遅らせる操作を行なった場合、「−10分」という変更量がRAM223に保持されることになる。なお、変更操作により生じ、RAM223に保持される変更量は、標準電波により設定された時刻からの変更量とする。例えば、今回の変更操作までに既に「−10分」の変更量が設定されており、今回の変更操作(S502)で「+5分」した場合には、「−5分」が更新後の変更量となる。なお、変更量の格納は、測定データと同様に、不揮発性の書き換え可能メモリが用いられるものとする。
【0040】
ステップS503に続いて、あるいはステップS501で時刻変更操作が発生していないと判定された場合、処理はステップS504へ進む。ステップS504において、演算処理部221は、決定ボタン130が押されたか否かを判定する。決定ボタン130が押されていると判定された場合、処理はステップS506へ進む。ステップS506において、演算処理部221は、時計部224にステップS502で変更された時刻を設定する。
【0041】
決定ボタン130が押されていなければ、処理はステップS505へ進み、演算処理部221は、時刻設定操作がキャンセルされたか否かを判定する。本実施形態では、時刻変更操作と決定操作が所定時間行なわれなかった場合(すなわち、所定時間にわたって入力ボタン104のいずれのキーも操作されなかった場合)に、時刻設定操作がキャンセルされたと判定される。時刻設定操作がキャンセルされていないと判定された場合は、処理はステップS501へ戻る。
【0042】
また、ステップS505において時刻変更操作がキャンセルされたと判定された場合、処理はステップS507へ進む。ステップS507において、演算処理部221は、ステップS502においてなされた時刻の変更操作を破棄し、時計部224の時刻とRAM223に保持された変更量を当該時刻変更操作前の状態に戻す。したがって、当該時刻変更操作前に既に変更操作が行なわれていた場合には、既に行われた変更操作により設定された時刻に時計部224の日時が戻される。例えば、既に「−10分」の変更量が設定されている状態で、今回の変更操作で「+5分」の変更を行なったが、ステップS505でキャンセルと判定された場合、変更量は「−10分」が維持される。
【0043】
なお、標準電波により示される時刻へ戻したい場合には、別途変更リセット操作を行なうものとする。例えば、時刻設定機能において、決定ボタン130が長押しされた場合に、演算処理部221はRAM223に保持されている変更量を現在の時刻から差し引いて元の時刻に戻し、変更量を0にリセットする。
【0044】
なお、ステップS404における時計部224の日時設定や、その他のタイミングにおける標準電波を用いた時計部224の日時設定においては、RAM223に保持された上記変更量にしたがって時刻が変更されるようにする。
【0045】
以上のように、第2実施形態によれば、標準電波により設定された標準時刻からユーザが敢えて時刻を変更した場合、その変更量がRAM223に記憶され、標準電波を用いた日時設定が行なわれた場合にその変更量を用いて時計部224の時刻が変更される。そのため、標準電波を用いた日時設定のたびにユーザが所望の時間だけ時刻をずらすという変更操作を行なう必要がなくなり、使い勝手が向上する。
【0046】
なお、時計部224のユーザ操作による時刻の変更においては、その変更範囲が制限されるようにしてもよい。例えば、変更が可能な項目を「分」のみとして、「年」「月」「日」「時」の項目は変更できないように制限してもよい。或いは、例えば、変更の量、すなわち変更が可能な範囲、を±6時間などのように制限してもよい。
【0047】
<第3実施形態>
第1実施形態では、標準電波を受信できない場合に、マニュアルによる日時設定を行なうようにした(S405)。このようなマニュアルによる日時設定では、過去に記憶されたすべてまたは一部の体温データを誤って消去することなく行なわれる必要がある。第3実施形態では、このようなマニュアル設定においても、誤った日時の設定によりデータが消滅してしまうことを防止するための構成について説明する。なお、第3実施形態で説明する制御は、標準電波を受信する受信部228を備えていない構成にも適用できるものであり、マニュアルによる日時設定の誤操作を防止することが可能である。
【0048】
図6は、マニュアルによる時刻設定(S405)の処理を説明するフローチャートである。ステップS601において、演算処理部221は、時刻設定操作(上下左右ボタンによる日時の設定操作)がなされたか否かを判定する。時刻設定操作がなされた場合、ステップS602において、演算処理部221は、当該時刻設定操作にしたがって時計部224の日時を変更する。決定ボタン130が押されると、処理はステップS603からステップS604へ進み、演算処理部221は、RAM223に保持されている測定値に関連付けられた日時のうち、最新の日時を取得する。そして、ステップS605において、演算処理部221は、ステップS602で設定された日時が、ステップS604で取得された最新の日時よりも古いか否かを判定する。
【0049】
ステップS602で設定された日時がステップS604で取得された日時よりも古い場合は、現在日時よりも古い日時が設定されていると判定され、ステップS606で演算処理部221はその旨をユーザに警告する。この警告は、記憶されている測定データの日時より古い日時が設定されるために記憶されている測定データが消去される可能性があることを示しており、例えば、ブザー部240を所定パターンで鳴動するなど、種々の方法により行うことができる。ユーザが、このような警告にもかかわらず、そのまま日時設定を行ないたい場合には、ユーザは設定確認操作(たとえば、決定ボタン130を長押しする)を行なう。ユーザの設定確認操作が検出されると、処理はステップS607からステップS608へ進み、演算処理部221は、時計部224の日時をステップS602で設定された時刻に設定する。また、入力ボタン104の上下左右ボタンが押されると、演算処理部221は、日時設定のやり直しが要求されたものと判断し、処理をステップS601に戻す。
【0050】
以上説明したように、第3実施形態によれば、電波時計のための標準電波が届かない場所で電池交換を行なった場合に実行されるマニュアルによる日時設定操作において、不用意に誤った日時が設定されることを防止できる。すなわち、RAM223に保持されている計測データのうちの最新の日時よりもマニュアルで設定された日時の方が古い場合、その旨の警告がユーザに発せられるようになるため、誤操作による計測データの消失等を、より確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…女性用電子体温計、101…本体ケース、102…金属キャップ、103…表示部、104…入力ボタン、111…左ボタン、112…右ボタン、121…上ボタン、122…下ボタン、130…決定ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子体温計であって、
日時を計る時計手段と、
体温の計測結果を前記時計手段により提供される日時と関連付けて保持するデータ保持手段と、
電波時計のための標準電波を受信する受信手段と、
前記電子体温計に電力を供給する電池の交換後に最初に電源がオンされた時に、前記受信手段により標準電波を受信して前記時計手段の日時を設定するように制御する制御手段と、を備えることを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記制御手段の制御により日時が設定された後、前記時計手段の日時をユーザ操作に応じて変更する変更手段を更に備え、
前記変更手段は、日時の変更範囲が制限されている、ことを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記変更手段による日時の変更量を保持する手段を更に備え、
前記制御手段は、前記標準電波から得られた日時を前記変更量で変更して、前記時計手段に設定することを特徴とする請求項2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記制御手段は、前記最初に電源がオンされた時のみに、前記時計手段の日時の設定を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記制御手段は、更に、
前記データ保持手段へ前記計測結果を保持するとき、
前記時計手段により提供される時刻が所定の時刻になったとき、
前記電子体温計の電源をオンしたとき、
前記標準電波を用いた日時設定の実行を要求する所定の操作が行なわれたとき、
の少なくともいずれかにおいて、前記受信手段により前記標準電波を受信して前記時計手段の日時を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子体温計。
【請求項6】
前記制御手段は、前記最初に電源がオンされた時において前記受信手段により前記標準電波を受信できない場合には、マニュアルにより前記時計手段を設定するモードを実行することを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項7】
マニュアルにより前記時計手段を設定する前記モードにおいて、設定される日時が前記データ保持手段に保持された最新の計測結果に関連付けられている日時よりも古い日時となる場合に、ユーザに警告を行なう警告手段を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の電子体温計。
【請求項8】
電子体温計であって、
日時を計る時計手段と、
体温の計測結果を前記時計手段により提供される日時と関連付けて保持するデータ保持手段と、
前記電子体温計に電力を供給する電池の交換後に最初に電源がオンされた後に、時刻設定された日時が、前記保持手段に記憶されている前記体温に関連付けられた日時のうち最新の日時より古いか否か判断し、前記最新の日時より古い場合には、警告を発生する制御手段と、を備えることを特徴とする電子体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72654(P2013−72654A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209740(P2011−209740)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】