説明

電子入札システム、開札者用装置、入札者用装置、電子入札方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】複数の属性値を有する財に対応し、かつ開札者の個人合理性を保証する。
【解決手段】入札者用装置2は、複数の属性値を含む、財に対する評価値を開札者用装置1に送信し、選択された財とその属性値と選択された財に対する支払額とを開札者用装置1から通知されたときに、通知された属性値と支払額に基づいて入札者の効用を算出し、効用に基づいて支払額を承諾するか否かを決定し、結果を開札者用装置1に通知する。開札者用装置1は、入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成し、パターンの中から入札者と開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択して入札者への支払額を算出し、財の組み合わせと属性値の組み合わせと支払額とを入札者用装置2に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワーク上に分散配置された複数の入札者用装置を用いる複数の入札者が電子的手段によって入札を行う電子入札システム、開札者用装置、入札者用装置、電子入札方法、プログラムおよび記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オークションは、資源の効率的な配分を実現するために最も重要なメカニズムの1つである。特に、近年は通信ネットワークを用いた大規模なオークションが一般的になりつつある。通信ネットワークを用いたオークションでは、新しいタイプの不正行為が問題となる。例えば単一の入札者が複数の名義(例えば異なるメールアドレス)を用いて、複数の入札を行うことが容易に可能である。これを架空名義入札と呼ぶ。
【0003】
そこで、通信ネットワークを用いたオークションにおいて、多様な興味を持つ(すなわち、複数の財に興味を持つ)人が存在する場合でも機能し、かつ架空名義による入札を困難にする技術として、PORF(Price-Oriented Rationing-Free )が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。このPORFプロトコルについて、以下に説明する。
【0004】
組み合わせオークションの対象領域モデルを定義する。PORFプロトコルでは、単一の買い手(以下、開札者という)0、この開札者に対して売り手(以下、入札者という)の集合N={1,2,・・・,n}、入札者が提供する仕事や物等の財tの集合T={t1,・・・,tm}が存在する。各入札者はそれぞれタイプθi を有している。タイプθi は集合Θの要素である。ここで、タイプθi とは、入札者iが所有する財に対して、入札者iが付与した評価値を意味する。財tの入札者への可能な割り当ては、式(1)で表される。
【0005】
【数1】

【0006】
ここで、バンドルBi⊆T であり、i≠kであれば式(2)が成り立つ。なお、バンドルBとは、任意の財の組み合わせのことを意味する。
【0007】
【数2】

【0008】
財の割り当てがバンドルBiのとき、入札者が入札に要するコストはc(θi,Bi)で表され、式(3)の条件を満たす。
【0009】
【数3】

【0010】
開札者から入札者iへの財に関する支払額はpi で表される。各入札者の効用が準線形であることを仮定すると、各入札者iにとっての効用は、pi−c(θi,Bi) で表される。ここでの入札者の効用とは、支払額pi からコストc(θi,Bi)を引いているため、入札者の利益を表している。また、開札者にとっての効用は式(4)で表される。
【0011】
【数4】

【0012】
次に、PORFプロトコルは以下のように定義される。まず、各入札者iは、式(5)で表される自分のタイプを申告する。ただし、入札者iは真のタイプθi を申告するとは限らない。
【0013】
【数5】

【0014】
タイプを申告すると、入札者iに関して、任意のバンドルB⊆Tに対する支払額pB,i が決定される。この支払額pB,i は、入札者iが申告したタイプとは無関係に決定される。なお、支払額pB,i は、他者の申告したタイプには依存しても良い。
ここで、B⊆B’の場合、式(6)を仮定する。
【0015】
【数6】

【0016】
入札者iには、式(7)で表される効用を最大化するバンドルBが割り当てられる。支払額pB,i は、式(7)の効用を最大化するバンドルが複数存在する場合には、それらのいずれか1つが割り当てられる。ここで、式(8)は入札者iのバンドルBに対する評価値である。
【0017】
【数7】

【0018】
【数8】

【0019】
割り当て結果は、割り当て可能性を満たすように決定する。すなわち、入札者i,jにそれぞれ割り当てられるバンドルBi,Bjに関して、式(9)が成立するように決定される。
【0020】
【数9】

【0021】
このようなPORFプロトコルによれば、入札者にとっては、バンドルの支払額が自分の申告したタイプとは無関係に決定され、また他者の割り当て結果とは独立に、自分の効用を最大化するバンドルを得ることができる。PORFプロトコルにより通信ネットワークを用いたオークションを実現すると、入札者自身ではバンドルの支払額を操作することができない。すなわち支払額の戦略的操作が不可能となる。
【0022】
一方、PORFプロトコルでは、各入札者の各バンドルの支払額は、割り当て可能性が満たされるように、すなわち同じ財を同時に複数の入札者に割り当てないよう適切に決定される必要がある。しかし、PORFプロトコルでは、入札者iに対して効用を最大化するバンドルが複数存在する場合、そのいずれか1つを割り当てるが、どれを割り当てるかに関しては規定していない。したがって、オークションの主催者は、割り当て可能性が満足されるように、割り当てを調整することが可能である。
【0023】
PORFプロトコルを用いたオークションにおける支払額の決定例を以下に示す。なお、上述したようにPORFプロトコルは戦略的操作不可能であるため、以下の例では各入札者iは真のタイプθi を申告するものとする。
【0024】
単一の財のオークションの場合、唯一のバンドルB=Mの支払額は、pB,i=maxjiv(B,θj) で与えられる。このプロトコルはVickreyオークションと等価である。複数の財の組み合わせオークションの場合、プロトコルの記述の簡単化のため、入札者の集合Xと財の集合Bに対して、V*(X、B) をBがXに最適に割り当てられたときのXの評価値の合計とする。このとき、入札者への支払額pB,i は以下のような式で表される。
B,i=V*(N\{i},M)−V*(N\{i},M\B) ・・・(10)
この式(10)の支払額の算出は、VCG(Vickrey-Clarke-Groves)メカニズムと等価である。
【0025】
【非特許文献1】Makoto Yokoo,“ Characterization of Strategy/False-name Proof Combinatorial Auction Protocols:Price-oriented, Rationing-free Protocol”,In Proceedings of 19th International Joint Conference on Artifical Intelligence(IJCAI-2003), p.733-739,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
複数の財をオークションにより売却する場合、各財の価値の間に依存関係が存在することが通例である。また、各財に対して品質などの属性値が設定される場合もある。
しかしながら、従来のPORFプロトコルにより実現可能な従来のオークションでは、複数の属性値を持つ複数の財のオークションに対応することができないという問題点があった。
【0027】
また、従来のPORFプロトコルにより実現可能な従来のオークションでは、開札者の個人合理性を保証できないという問題点があった。開札者の個人合理性とは、開札者に損失が生じることがない、という意味である。
【0028】
そこで、本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであり、複数の属性値を有する財に対応可能で、かつ開札者の個人合理性を保証することができる電子入札システム、開札者用装置、入札者用装置、電子入札方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、財を購入する単一の開札者が使用する開札者用装置と、前記財を提供する複数の入札者が使用する複数の入札者用装置と、前記開札者用装置と前記複数の入札者用装置とを接続するネットワークとを備え、複数の属性値を有する財に対して入札を行う電子入札システムであって、前記入札者用装置は、前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手段と、前記入札者が売却する財を前記開札者用装置が選択して、この選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手段と、前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手段と、この決定手段の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手段とを有し、前記開札者用装置は、前記入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手段と、これらのパターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する支払額算出手段と、この支払額算出手段によって選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する第3の送信手段とを有するものである。
また、本発明の電子入札システムの1構成例において、前記開札者用装置の支払額算出手段は、任意の入札者用装置から提供される前記財に対する支払額を、前記任意の入札者用装置以外の入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて算出するものである。
【0030】
また、本発明は、複数の属性値を有する財を提供する複数の入札者が使用する複数の入札者用装置とネットワークを介して接続され、前記財を購入する開札者が使用する開札者用装置であって、前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記入札者用装置から受信したときに、前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手段と、これらのパターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する支払額算出手段と、前記選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する送信手段とを有するものである。
また、本発明は、財を購入する単一の開札者が使用する開札者用装置とネットワークを介して接続され、複数の属性値を有する財を提供する入札者が使用する入札者用装置であって、前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手段と、前記入札者が売却する財を前記開札者用装置が選択して、この選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手段と、前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手段と、この決定手段の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手段とを有するものである。
【0031】
また、本発明は、財を購入する単一の開札者が使用する開札者用装置と、前記財を提供する複数の入札者が使用する複数の入札者用装置と、前記開札者用装置と前記複数の入札者用装置とを接続するネットワークとを備えた電子入札システムにおいて、複数の属性値を有する財に対して入札を行う電子入札方法であって、前記入札者用装置が、前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手順と、前記開札者用装置が、前記入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手順と、前記開札者用装置が、前記パターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する算出手順と、前記開札者用装置が、前記選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する通知手順と、前記入札者用装置が、前記選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手順と、前記入札者用装置が、前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手順と、前記入札者用装置が、この決定手順の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手順とを有するものである。
また、本発明の電子入札方法の1構成例において、前記算出手順は、任意の入札者用装置から提供される前記財に対する支払額を、前記任意の入札者用装置以外の入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて算出するものである。
【0032】
また、本発明の電子入札プログラムは、前記入札者用装置が、前記財の複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手順と、前記開札者用装置が、前記入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手順と、前記開札者用装置が、前記パターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する算出手順と、前記開札者用装置が、前記選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する通知手順と、前記入札者用装置が、前記選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手順と、前記入札者用装置が、前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手順と、前記入札者用装置が、この決定手順の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手順とをコンピュータに実行させるようにしたものである。
また、本発明の記録媒体は、電子入札プログラムを記録したものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、入札者用装置から受信した財の評価値に基づいて、開札者用装置が、入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成し、これらのパターンの中から入札者と開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて入札者への支払額を算出することにより、複数の属性値を有する複数の財のオークションに対応することが可能となる。また、本発明では、開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択することから、開札者の個人合理性を保証することができる。また、本発明では、入札者にとって使い勝手がよいオークションを実現することができる。さらに、本発明では、単一の入札者が複数の名義を用いる架空名義入札を行っても、入札者が利益を得ることがないようにして、架空名義入札不可能性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[発明の原理]
本発明は、複数の属性値を持った複数の財を電子入札により売却する際に、全ての入札者の入札値とそれに対応するクオリティを基に、各入札者ごとに各クオリティに対する支払額のリストを決定し、そこから入札者がクオリティと入札額を決定することを特徴とするものである。なお、クオリティとは、財の属性値に含まれるものであり、特に財の品質等を意味する。
【0035】
従来、オークションのプロトコルが誘因両立であるとは、真のタイプ/評価値を宣言することが入札者にとって最良の戦略であることを意味している。本発明では、誘因両立の定義を拡張して、架空名義入札に対する頑健性も示すことができるようにした。すなわち、オークションプロトコルが誘因両立とは、唯一つのIDを用いて真のタイプを宣言することが各入札者にとって最良の戦略であることを意味している。従来の定義と拡張した定義を区別するために、従来の定義を戦略的操作不可能性と呼び、本発明による拡張した定義を架空名義入札不可能性と呼ぶ。
オークションプロトコルが個人合理的であるとは、支配戦略均衡においてはどの入札者も損失が生じることがない、すなわち入札に要するコストが支払額を超えることがない、という意味である。オークションでは、個人合理性は不可欠である。入札者は、財を勝ち取るために使う費用よりも得られる金額が少ないオークションには参加したいとは思わない。それゆえ、本発明では、個人合理的なプロトコルのみに焦点を当てる。また、入札者から入力されるタイプθが同じであれば、常に同じ財の割り当てと支払額が得られるプロトコルのみを扱う。
【0036】
[拡張LDSプロトコル]
本発明の拡張LDS(Leveled Division Set:レベル付分割セット)プロトコルのモデル、すなわち環境を以下のように定義する。
【0037】
本発明の拡張PORFプロトコルでは、単一の買い手(開札者)0と、この開札者に対して売り手(入札者)の集合N={1,2,・・・,n}が存在し、また入札者が提供する仕事や物等の財tの集合T={t1,・・・,tm}が存在する。各入札者はそれぞれタイプθi を有している。タイプθi は集合Θの要素である。タイプθi とは、入札者iが所有する財に対して、入札者iが付与した評価値を意味する。
【0038】
各財tj に対して、入札者によりクオリティqj が定義される。このクオリティqj は集合Qの要素である。クオリティqj とは、属性値に含まれるものであり、特に財tの品質などを意味している。入札者への財tの可能な割り当ては、式(11)のように表される。
【0039】
【数10】

【0040】
ここで、バンドルBi⊆Tであり、i≠kであれば式(12)が成り立つ。なお、バンドルBとは、任意の財の組み合わせのことを意味する。
【0041】
【数11】

【0042】
クオリティのプロファイルは式(13)で表される。クオリティプロファイルとは、財のクオリティの集合を意味し、式(13)のようにベクトルで表記される。
【0043】
【数12】

【0044】
式(13)のクオリティプロファイルとバンドルBi={ti,1,ti,2,...}に対して、クオリティプロファイルへのバンドルBiの射影(projection )を以下の式(14)で表す。
【0045】
【数13】

【0046】
入札者に割り当てる財がバンドルBiで、このときに達成されるクオリティプロファイルが式(15)の場合、入札者がオークションの入札に要するコストは式(16)のように表される。ここで、式(16)のコストcは式(17)により正規化されているものとする。
【0047】
【数14】

【0048】
【数15】

【0049】
【数16】

【0050】
クオリティプロファイルが式(13)のように表されるとき、開札者0のグロスの効用は式(18)で表される。この開札者0のグロスの効用とは、開札者にとってどれほど価値があるのかを示す指標である。
【0051】
【数17】

【0052】
開札者から入札者iへの財に関する支払額はpi で表される。各入札者の効用が準線形であることを仮定すると、各入札者iにとっての効用は、支払額pi からコストcを除いた式(19)で表される。また、開札者にとってのネットワークの効用は、式(18)のグロスの効用から支払額を除いた式(20)で表される。
【0053】
【数18】

【0054】
【数19】

【0055】
割り当てられてない財tj のクオリティをq0∈Q とする。この場合の開札者の効用は式(21)となり、割り当てられない財tj のクオリティプロファイルは式(22)となる。
以上が、本発明の拡張PORFプロトコルのモデル(環境)の定義である。
【0056】
【数20】

【0057】
【数21】

【0058】
財のクオリティを表すパラメータはqjのただ一つであるが、これはクオリティが一次元であることを示すのではなく、qjは複数の属性値を持つベクトルとすることができる。このようなモデルの具体例について述べる。
入札者が二人、すなわち入札者の集合N={1,2}が存在し、財が二つ、すなわち財の集合T={t1,t2}が存在し、クオリティプロファイルが式(23)であり、qj が一次元の場合の入札者1のコスト関数は、式(24)〜(26)のように表すことができる。
【0059】
【数22】

【0060】
c(θ1,{t1},(q1))=(1/4)q1 ・・・(24)
c(θ1,{t2},(q2))=(1/2)q2 ・・・(25)
c(θ1,{t1,t2},(q1,q2))=(1/4)q1+(1/2)q2
・・・(26)
【0061】
また、開札者のグロスの効用が式(27)であり、入札者2のコストは常に入札者1のコストよりも大きいものとする。このような場合に、財t1とt2の両方が式(28)のクオリティプロファイルで入札者1に割り当てられたとすると、入札者1のコストはc(θ1,{t1,t2},(4,4))=2となり、社会的余剰はV((4,4))−c(θ1,{t1,t2},(4,4))=2となる。
【0062】
【数23】

【0063】
【数24】

【0064】
[支払額pの決定方法]
次に、入札者への支払額pの決定方法について説明する。まず、参照入札者という特別な入札者を導入する。この参照入札者は以下のような(A)、(B)、(C)の特性を有する。
【0065】
(A)財を買い取る開札者は、財tk がクオリティqk で参照入札者に割り当てられたときのコストの上界値を知っている。すなわち、開札者は、式(29)が成立しているときに、コストc(θr,{tk},(qk)) の上界値cr,tk,qk を知っている。
【0066】
【数25】

【0067】
(B)参照入札者のコストは加算的である。すなわち、任意のバンドルB、式(30)のクオリティプロファイルに対して、式(31)が成り立つ。これにより、式(32)が成り立つ。
【0068】
【数26】

【0069】
【数27】

【0070】
【数28】

【0071】
(C)式(33)に示す任意のクオリティプロファイルに対して、式(34)が成り立つ。これはどんなクオリティに対しても、全ての財が参照入札者に割り当てられて、支払額が上界値の合計と等しくなったとき、開札者のネットワークの効用は負にならないことを意味する。
【0072】
【数29】

【0073】
【数30】

【0074】
次に、入札者が入力したタイプθに基づいて、入札者へ割り当て可能な財の組み合わせとクオリティの組み合わせを示すLDSを次の(D)、(E)のように定義する。
(D)まず、各組み合わせパターンに固有のレベル1,2,・・・,max_levelを定義する。
(E)各レベルに対して、財の組み合わせパターンを示す分割Dl と式(35)に示すクオリティプロファイルを定義する。
【0075】
【数31】

【0076】
各レベルの分割は以下の(F)、(G)の性質を満たすものとする。
(F)D1 =T、すなわちレベル1の分割は全ての財のバンドルのみからなる集合である。
(G)各レベルとその分割に対して、その分割に含まれる複数のバンドルの和は常により小さいレベルの分割に含まれ、また同じクオリティである。すなわち、式(36)が成立し、またBu=∪BD'で∀l>1、∀D’⊆Dlとなる。そのとき、Bu∈Dl'かつ式(37)が成立する分割Dl'があるレベルl’<lが存在する。
【0077】
【数32】

【0078】
【数33】

【0079】
表1と表2にレベル付分割セットの例を示す。表1では財tの数は2で、クオリティは1か2である。また、表2では財tの数は3で、クオリティは1か2である。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
例えば、表1において、分割{(t1,t2)}は一人の入札者に財t1,t2が割り当てられることを示す。また、分割{(t1),(t2)}は一人の入札者に財t1 が割り当てられ、別の入札者に財t2 が割り当てられることを示す。表2の場合も同様である。また、表1において、分割{(t1,t2)}に対してクオリティ(q1,q2)が(2,2)であることは、財t1のクオリティq1が2であり、財t2のクオリティq2も2であることを示す。
【0083】
分割Dl ={Bl,1,Bl,2,・・・}と財の実現可能な割り当てを示す式(38)に対して、以下の条件(H)、(I)が満たされたときに分割Dl の元で式(38)が許されると言う。
【0084】
【数34】

【0085】
(H)ある分割中の同じバンドルに属する財は、同じ入札者に割り当てられなければならない。また、もし同じ分割中の異なるバンドルに属する財は、参照入札者に割り当てられる場合以外は異なる入札者に割り当てられなければならない。すなわち、i≠rで、式(39)が成立するならば、Bl,k=Biであり、式(40)が成立するならば、Bl,k⊆Brである。
【0086】
【数35】

【0087】
【数36】

【0088】
(I)もし財が分割のどのセットにも属さないならば、その財は参照入札者に割り当てられる。すなわち、全ての財tk に対して、もし∀Bl,k∈Dlと式(41)が成り立つならば、tk∈Brである。
【0089】
【数37】

【0090】
また、分割Dl で許される割り当ての集合をレベルlでの可能な割り当てSBl と記述する。
以上のLDSプロトコルを実行するためには、開札者はあらかじめレベル付分割セットを決定しておく必要がある。入札者iは前述の式(5)で表される自分のタイプを宣言する。このタイプは真のタイプθi と異なっていてもよい。
【0091】
財が割り当てられるべきレベルを探索するために、開札者はプロシージャLDS(l)を呼び出す。LDS(l)は再帰的なプロシージャになっており、以下の(J)、(K)、(L)の通り定義する。
【0092】
(J)∃Bx∈Dlと式(42)に示すコストの条件を満たすただ一人の入札者x∈Nが存在する場合は、後述するVCG(l)プロシージャとLDS(l+1)とを比較して、入札者xに対してより大きな効用を与えるほうを選択する。このときの入札者xをビボタル入札者と呼ぶ。LDS(l+1)の結果が選択された揚合は、入札者x以外の通常の入札者には財は割り当てられない。入札者xに割り当てられなかった財は、前述の参照入札者に割り当てられる。
【0093】
【数38】

【0094】
(K)∃Bx1∈Dlと∃Bx2∈Dlと式(43)、式(44)に示すコストの条件を満たす少なくとも二人の入札者x1,x2∈N、x1≠x2が存在する場合は、後述するVCG(l)プロシージャを適用する。
【0095】
【数39】

【0096】
【数40】

【0097】
(L)前記の(J)、(K)の条件を満たさない場合は、LDS(i+1)を実行する。そして、i=max_levelの場合は終了する。
【0098】
次に、プロシージャLDS(l)中で用いられるVCG(l)を以下のように定義する。プロシージャVCG(l)では、式(45)に示す開札者の効用を最大化するような式(46)の割り当てを選ぶ。
【0099】
【数41】

【0100】
【数42】

【0101】
入札者x(x≠r)への支払い額px は式(47)のように計算される。式(48)はレベルlでの可能な割り当てSBl の中で入札者xを除いたときに社会的余剰を最大化する割り当てを示している。
以上のようにして、本発明では、入札者への財の割り当てと財のクオリティと支払額pとを開発者側で決定することができる。
【0102】
【数43】

【0103】
【数44】

【0104】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係るオークションシステムの構成を示すブロック図である。
本実施の形態のオークションシステムは、オークションを取り仕切るオークショニアや、入札者から仕事や物等の財を買う買い取り者である開札者が用いる開札者用装置1と、開札者に財を提供する複数の入札者がそれぞれ用いる複数の入札者用装置2と、開札者用装置1と入札者用装置2とを接続するネットワーク3とから構成される。
【0105】
図2は、開札者用装置1の1構成例を示すブロック図である。開札者用装置1は、ネットワーク3を介して入札者用装置2と各種情報の送受信を行う送受信部11と、開札者の操作入力を検出する入力部12と、オークションに関する各種情報を表示する表示部13と、入札者用装置2から受信するタイプ、財およびこの財の属性値などのオークションに関する各種情報を記憶する記憶部14と、入札者が提供する財に対する支払額を算出する支払額演算部15と、これらの開札者用装置1の各機能部の動作を制御する制御部16とを備え、これらの開札者用装置1の各機能部はバス等の公知の通信回線17により接続されている。支払額演算部15は、分割セット手段と支払額算出手段を構成し、送受信部11は、第3の送信手段を構成している。
【0106】
このような開札者用装置1は、CPU等の中央処理装置、記憶装置、入札者用装置2と各種情報の送受を行うI/F装置、キーボード、マウス等の入力装置、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置などを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成されている。中央処理装置がメモリに格納されたプログラムを実行することにより、すなわちハードウェア資源とソフトウェアが協働することにより、上述した送受信部11、入力部12、表示部13、記憶部14、支払額演算部15、制御部16および通信回線17が実現される。
【0107】
図3は、入札者用装置2の1構成例を示すブロック図である。入札者用装置2は、ネットワーク3を介して開札者用装置1と各種情報の送受信を行う送受信部21と、入札者の操作入力を検出する入力部22と、オークションに関する各種情報を表示する表示部23と、開札者用装置1から受信する支払額などのオークションに関する各種情報を記憶する記憶部24と、開札者用装置1により算出された支払額に基づいて財の効用を算出する効用演算部25と、これらの入札者用装置2の各機能部の動作を制御する制御部26とを備え、これらの入札者用装置2の各機能部はバス等の公知の通信回線27により接続されている。効用演算部25は、効用算出手段を構成し、送受信部21は、第1の送信手段と第2の送信手段を構成している。
【0108】
このような入札者用装置2は、CPU等の中央処理装置、記憶装置、開札者用装置1と各種情報の送受を行うI/F装置、キーボード、マウス等の入力装置、LCD等の表示装置などを備えたコンピュータと、このコンピュータにインストールされたプログラムとから構成されている。中央処理装置がメモリに格納されたプログラムを実行することにより、すなわちハードウェア資源とソフトウェアが協働することにより、上述した送受信部21、入力部22、表示部23、記憶部24、効用演算部25、制御部26および通信回線27が実現される。
【0109】
ネットワーク3は、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の公知の電気通信システムから構成される。
【0110】
次に、図4を参照して本実施の形態のオークションシステムの情報の送受信について説明する。図4は、オークションシステムの情報の送受信を説明するためのシーケンス図である。
まず、開札者は、あらかじめ開札者用装置1を通して(またはその他の何らかの通知手段により)、競争入札を実施する旨の案内を各入札者の入札者用装置2に通知しておく。
【0111】
競争入札が開始されると、入札者は入札者用装置2に自身のタイプθを入力する。入札者用装置2の制御部26は、入力部22から入力された入札者のタイプθを送受信部21を通じて開札者用装置1に通知する(図4ステップS401)。ここで、タイプθとは、入札者が提供する財のコストなど入札者の財に対する評価を表すものであり、入札者が提供する仕事や物等の財と、この財の品質などを表すクオリティ(属性値)とを少なくとも含む。
【0112】
なお、本発明の拡張PORFプロトコルによれば、各入札者にとっては真のタイプを入力することが最良の戦略であるため、各入札者が入力するタイプは真の評価値、すなわちコストとしてよい。よって、入札者は、複数の財の全ての組み合わせの、その全てのクオリティに関してコストを入力することとする。
【0113】
開札者用装置1の制御部16は、受信したタイプθを記憶部14に格納し、このタイプθに基づいて入札者への財の割り当てとクオリティと支払額pとを支払額演算部15に決定させて、決定した財の割り当てとクオリティと支払額pとを送受信部11を通じて入札者用装置2に通知する(ステップS402)。ここで、制御部16は、入札に参加する全ての入札者の入札者用装置2からタイプθを受信してから、支払額pを算出させる。支払額演算部15は、前述の支払額pの決定方法に基づいて入札者への財の割り当てとクオリティと支払額pを入札者毎に決定する。
【0114】
入札者用装置2の制御部26は、開札者用装置1から受信した割り当てとクオリティと支払額pとを記憶部24に格納し、このクオリティと支払額pに基づいて効用演算部25に入札者の効用を算出させて、効用が正の場合、すなわち入札者に損失が生じない場合には、支払額pを承諾することを送受信部21を通じて開札者用装置1に通知し、効用が負の場合、すなわち入札者に損失が生じる場合には、入札から降りることを開札者用装置1に通知する(ステップS403)。効用演算部25は、前述の式(19)により入札者の効用を算出する。このようにすることにより、本実施の形態では、複数の属性値を有する複数の財のオークションに対応することが可能となる。
【0115】
次に、図5を参照して、開札者用装置1の動作について説明する。図5は、開札者用装置1の動作を示すフローチャートである。
まず、開札者用装置1は、オークションに参加する各入札者の入札者用装置2からそれぞれタイプθを受信する(図5ステップS501)。ネットワーク3を通じて入札者用装置2から送信されたタイプθは、送受信部11により受信されて、記憶部14に格納される。
【0116】
この受信動作は、オークションに参加する全ての入札者の入札者用装置2からタイプθを受信するまで行われる。すなわち、開札者用装置1の制御部16は、オークションに参加する全ての入札者の入札者用装置2からタイプθを受信したかどうかを判定し(ステップS502)、タイプθを受信していない場合は(ステップS502においてNO)、ステップS501の処理に戻る。
【0117】
なお、全ての入札者のタイプθを受信したかどうかは、あらかじめ競争入札に参加する入札者を特定しておいて、これら特定の入札者の入札者用装置2からタイプθを受信したかどうかで判断すればよい。また、あらかじめ入札の終了時刻を設定しておき、その終了時刻までにタイプθを送信した入札者を競争入札に参加する入札者とし、終了時刻が経過した時点で全ての入札者のタイプθを受信したと見なしてもよい。
【0118】
制御部16は、全ての入札者からタイプθを受信すると、受信したタイプθに基づいて入札者への財の割り当てとクオリティと支払額pとを支払額演算部15に決定させる(ステップS503)。この割り当てとクオリティと支払額pとは記憶部14に記憶される。財の割り当てとクオリティと支払額pとは、オークションに参加した入札者用装置2毎(入札者毎)に決定される。このとき、支払額演算部14は、同一の財が複数の入札者に割り当てられないよう支払額pを算出する。
【0119】
続いて、制御部16は、決定した財の割り当てとクオリティと支払額pとを送受信部11を通じて入札者用装置2に送信する(ステップS504)。このとき、制御部16は、オークションに参加した各入札者用装置2に対して、それぞれ対応する財の割り当てとクオリティと支払額pとを送信する。
【0120】
最後に、制御部16は、入札者用装置2から選択情報(支払額pの承諾又は不承諾)を受信する(ステップS505)。オークションに参加した全ての入札者の入札者用装置2から選択情報を受信すると(ステップS506においてYES)、オークションに関する全ての処理を終了する。
【0121】
次に、図6を参照して、入札者用装置2の動作について説明する。図6は、入札者用装置2の動作を示すフローチャートである。
入札者用装置2の制御部26は、入札者がオークションに参加する旨の操作入力を入力部22が検出すると、この検出した操作入力に基づいて、提供する財とこの財のクオリティとを含むタイプθを送受信部21を通じて開札者用装置1に送信する(図6ステップS601)。このタイプθの送信動作は、送受信部21により行われる。送信したタイプθは、記憶部24に記憶される。
【0122】
続いて、入札者用装置2は、開札者用装置1から財の割り当てとクオリティと支払額pとを受信する(ステップS602)。この受信動作は、送受信部21により行われる。受信した割り当てとクオリティと支払額pとは、記憶部24に記憶される。
次に、制御部26は、記憶部24に記憶された財のクオリティと支払額pに基づいて効用演算部25に入札者の効用を算出させる(ステップS603)。算出した効用は、記憶部24に記憶される。
【0123】
そして、制御部26は、入札者の効用が正となるかどうかを判定し(ステップS604)、効用が正の場合、支払額pを承諾することを送受信部21を通じて開札者用装置1に通知する(ステップS605)。また、制御部26は、効用が負の場合、入札から降りることを開札者用装置1に通知する(ステップS606)。以上で入札者用装置2における処理が終了する。
【0124】
以上のように、本実施の形態によれば、入札者用装置から受信した財の評価値に基づいて、入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成し、これらのパターンの中から入札者と開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて入札者への支払額を算出することにより、複数の属性値を有する複数の財のオークションに対応することが可能となる。
また、本実施の形態では、開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択することから、開札者の個人合理性を保証することができる。
【0125】
また、本実施の形態では、入札者は、効用が最大となる、すなわち入札者にとって最も利益があるバンドルと属性値の組み合わせを得ることが可能となる。さらに、本実施の形態によれば、入札者にとって不利益となる場合は、入札から降りることを選択することが可能となる。したがって、本実施の形態に係るオークションシステムは、入札者にとってとても使い勝手がよい。
【0126】
また、本実施の形態では、LDSプロトコルを導入することで、単一の入札者が複数の名義を用いる架空名義入札を行っても、入札者が利益を得ることがないようにして、架空名義入札不可能性を実現することができる。LDSプロトコルにより、架空名義入札不可能性を実現できることは、例えば文献「横尾真他,“架空名義入札に頑健なオークションプロトコル”,情報処理学会論文誌,Vol.43,No.6,p.1814-1824,2002 」や、文献「Makoto Yokoo,et al.,“Robust Combinatorial Auction Protocol Against False-name Bids”,Proceedings of the Seventeenth National Conference on Artifical Intelligence(AAAI-2000), p.110-115,2000」に開示されている。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明に係る電子入札システムは、政府や企業が複数の要素からなり、また品質などにばらつきが出てくるような仕事を発注する場合において、例えば工事のような入札に適用することができる。一般に、工事は、設計、施工などいくつかの工程を経て仕事が完了し、設計の質や工期などにより支払額が変わる。また、請け負う側では複数の工程を同時に請け負うことにより支払額を下げることができることもある。このような場合に、本発明の電子入札システムで入札を行うことにより、複数の工程とその属性値などを含めて同時に入札することができ、開札者と入札者の双方に利益となる入札が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態に係るオークションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1のオークションシステムにおける開札者用装置の1構成例を示すブロック図である。
【図3】図1のオークションシステムにおける入札者用装置の1構成例を示すブロック図である。
【図4】図1のオークションシステムにおける情報の送受を説明するためのシーケンス図である。
【図5】図1のオークションシステムにおける開札者用装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1のオークションシステムにおける入札者用装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0129】
1…開札者用装置、2…入札者用装置、3…ネットワーク、11…送受信部、12…入力部、13…表示部、14…記憶部、15…支払額演算部、16…制御部、17…通信回線、21…送受信部、22…入力部、23…表示部、24…記憶部、25…効用演算部、26…制御部、27…通信回線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
財を購入する単一の開札者が使用する開札者用装置と、前記財を提供する複数の入札者が使用する複数の入札者用装置と、前記開札者用装置と前記複数の入札者用装置とを接続するネットワークとを備え、複数の属性値を有する財に対して入札を行う電子入札システムであって、
前記入札者用装置は、
前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手段と、
前記入札者が売却する財を前記開札者用装置が選択して、この選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手段と、
前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手段と、
この決定手段の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手段とを有し、
前記開札者用装置は、
前記入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手段と、
これらのパターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する支払額算出手段と、
この支払額算出手段によって選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する第3の送信手段とを有することを特徴とする電子入札システム。
【請求項2】
請求項1記載の電子入札システムにおいて、
前記開札者用装置の支払額算出手段は、任意の入札者用装置から提供される前記財に対する支払額を、前記任意の入札者用装置以外の入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて算出することを特徴とする電子入札システム。
【請求項3】
複数の属性値を有する財を提供する複数の入札者が使用する複数の入札者用装置とネットワークを介して接続され、前記財を購入する開札者が使用する開札者用装置であって、
前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記入札者用装置から受信したときに、前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手段と、
これらのパターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する支払額算出手段と、
前記選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する送信手段とを有することを特徴とする開札者用装置。
【請求項4】
請求項3記載の開札者用装置において、
前記支払額算出手段は、任意の入札者用装置から提供される前記財に対する支払額を、前記任意の入札者用装置以外の入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて算出することを特徴とする開札者用装置。
【請求項5】
財を購入する単一の開札者が使用する開札者用装置とネットワークを介して接続され、複数の属性値を有する財を提供する入札者が使用する入札者用装置であって、
前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手段と、
前記入札者が売却する財を前記開札者用装置が選択して、この選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手段と、
前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手段と、
この決定手段の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手段とを有することを特徴とする入札者用装置。
【請求項6】
財を購入する単一の開札者が使用する開札者用装置と、前記財を提供する複数の入札者が使用する複数の入札者用装置と、前記開札者用装置と前記複数の入札者用装置とを接続するネットワークとを備えた電子入札システムにおいて、複数の属性値を有する財に対して入札を行う電子入札方法であって、
前記入札者用装置が、前記複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手順と、
前記開札者用装置が、前記入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手順と、
前記開札者用装置が、前記パターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する算出手順と、
前記開札者用装置が、前記選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する通知手順と、
前記入札者用装置が、前記選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手順と、
前記入札者用装置が、前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手順と、
前記入札者用装置が、この決定手順の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手順とを有することを特徴とする電子入札方法。
【請求項7】
請求項6記載の電子入札システムにおいて、
前記算出手順は、任意の入札者用装置から提供される前記財に対する支払額を、前記任意の入札者用装置以外の入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて算出することを特徴とする電子入札方法。
【請求項8】
財を購入する単一の開札者が使用する開札者用装置と、前記財を提供する複数の入札者が使用する複数の入札者用装置と、前記開札者用装置と前記複数の入札者用装置とを接続するネットワークとを備え、複数の属性値を有する財に対して入札を行う電子入札システムの前記開札者用装置と前記入札者用装置としてコンピュータを機能させる電子入札プログラムであって、
前記入札者用装置が、前記財の複数の属性値を含む、前記財に対する評価値を前記開札者用装置に送信する第1の送信手順と、
前記開札者用装置が、前記入札者用装置から受信した前記評価値に基づいて、前記入札者が売却する財の組み合わせと属性値の組み合わせの実現可能な複数のパターンを生成する分割セット手順と、
前記開札者用装置が、前記パターンの中から前記入札者と前記開札者に最大の効用を与える財の組み合わせと属性値の組み合わせを選択し、選択した組み合わせに基づいて前記入札者への支払額を算出する算出手順と、
前記開札者用装置が、前記選択された財の組み合わせと属性値の組み合わせと前記算出された支払額とを前記入札者用装置に通知する通知手順と、
前記入札者用装置が、前記選択された財とその属性値と前記選択された財に対する支払額とを前記開札者用装置から通知されたときに、この通知された属性値と支払額に基づいて前記入札者の効用を算出する効用算出手順と、
前記入札者用装置が、前記算出された効用に基づいて前記支払額を承諾するか否かを決定する決定手順と、
前記入札者用装置が、この決定手順の結果を前記開札者用装置に通知する第2の送信手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする電子入札プログラム。
【請求項9】
請求項8記載の電子入札プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−34365(P2007−34365A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212325(P2005−212325)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)