説明

電子内視鏡システム

【課題】通常観察用の光源とPDT用の光源とを同一の装置内に配置することができ、かつ、PDTの実行時の治療光の強度を確認して自動的に適切な光量となるよう設定できるシステムを提供すること。
【解決手段】光源プロセッサ装置1bには、白色光源31、PDTに用いられる治療用光源32、体腔内の組織を励起させるための紫外線を発生する励起光源33とが備えられている。内視鏡挿入部1aには、白色光または励起光を先端に導いて配光レンズ21a,21bを介して体腔内の組織に照射させるライトガイド22と、治療光を導いて射出レンズ23a,23bを介して照射させる治療用プローブ24とが引き通されている。治療用光源の出力は治療用プローブの先端に設けられた光量センサ44a,44bの信号に基づいて自動的に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内等の対象部位の画像を撮像素子により電子的に撮影して表示させる電子内視鏡システムに関し、特に、光線力学治療(以下、PDTとする)が可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡システムは、光源装置から発する白色光により対象物を照明し、内視鏡挿入部の先端に配置された対物レンズにより形成される対象物の像を撮像素子により撮像し、この撮像素子から出力される映像信号を画像処理装置により処理して外部のモニター画面に表示する。操作者は、モニター画面に動画、または静止画として表示される画像を観察して撮影対象部位の状態を把握する。
【0003】
また、早期肺癌、表在性食道癌、表在性早期胃癌等の早期癌の治療法として内視鏡的PDTが広く用いられている。これは、光感受性物質のフォトフリンが癌細胞に特異的に集積する性質を利用し、患者にフォトフリンを静脈注射で投与し、所定時間後に、腫瘍部位に長波長(例えば680nm)の比較的高強度のレーザーを照射し、腫瘍内に取り込まれた光感受性物質を励起し、癌細胞を壊死させる技術である。
【0004】
特許文献1には、内視鏡用照明装置からの白色光を照明用のファイババンドルを介して内視鏡先端に導くと共に、光線力学診断(以下、PDDという)及びPDT用の特定の波長を発する光線力学的診断・治療用光線装置からの光束を鉗子チャンネルに引き通したライトガイドを介して内視鏡先端に導く内視鏡装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−299940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される内視鏡装置は、内視鏡用照明装置と光線力学的診断・治療用光線装置とがそれぞれ独立した装置として設けられているため、システム全体をコンパクトに構成することができないという問題がある。また、特許文献1に開示される内視鏡装置は、PDTの実行時に光源の発光量を出力調整ダイヤルにより調整することができるが、照射される光量が治療に必要十分な値になっているか否かを確認することはできず、自動的に適切な光量に調整することはできなかった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、通常観察用の光源とPDT用の光源とを同一の装置内に配置することができ、かつ、PDTの実行時の治療光の強度を確認して自動的に適切な光量となるよう設定できる電子内視鏡システムを提供することを目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために案出された本発明の電子内視鏡システムは、内視鏡挿入部の先端に配置された対物レンズにより形成される体腔内の組織の像を撮像素子により撮像する撮像光学系と、照明用の白色光を発する白色光源と、光線力学治療に用いられる治療光を発する治療用光源と、白色光源と治療用光源とを内蔵する単体の光源装置と、白色光源からの光束を内視鏡挿入部の先端に導いて体腔内の組織に照射させるライトガイドと、治療用光源からの光束を内視鏡挿入部の先端に導いて体腔内の組織に照射させる治療用プローブと、治療光の光量を測定する光量センサと、光量センサの出力に基づいて治療用光源から発する治療光の光量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
光量センサは、治療用プローブから射出される治療光の光量を測定することが望ましい。治療用プローブが内視鏡挿入部側で複数本に分岐している場合には、光量センサは分岐した各プローブから射出される光量を測定するよう複数設けることが望ましい。
【0010】
また、光量センサは、治療用プローブから射出される治療光の光量を測定する代わりに、あるいは、これに加えて、治療用プローブに入射する治療光の光量を測定するようにしてもよい。
【0011】
なお、光源装置内に、体腔内の組織を励起させる励起光を発する励起光源と、励起光源から発する励起光の光路をライトガイドに向かう白色光の光路に合成する光路合成手段とをさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子内視鏡システムによれば、白色光を発する白色光源と、PDT用の治療光を発する治療用光源とを同一の光源装置内に設けることができるため、それぞれの光源について独立した光源装置を用いる場合と比較して、システム全体の構成をコンパクトにすることができる。また、PDTの実行時に照射される治療光の強度を確認し、これに基づいて治療用光源の発光量を制御することができ、治療光の強度を自動的に適切な光量となるよう設定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、添付図面に基づいて、本発明を実施するための形態を説明する。図1は、実施形態の電子内視鏡システムの概略構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示されるように、この電子内視鏡システム1は、体腔内に挿入されるために細長く形成された内視鏡挿入部1aと、この挿入部に接続された光源プロセッサ装置1bとから構成されている。図1は、内視鏡挿入部1aの先端部分の構成と、光源プロセッサ装置1b内の各回路の接続関係とを示している。
【0015】
内視鏡挿入部1aの先端には、対物レンズ11と、この対物レンズ11により形成される対象物の像を撮像するCCDイメージセンサ等の電荷蓄積型の撮像素子12とから構成される撮像光学系10が設けられている。光源プロセッサ装置(光源装置)1bには、照明用の白色光を発するキセノンランプ等の白色光源31と、PDTに用いられる波長630nmの治療光を発する半導体レーザー等の治療用光源32と、体腔内の組織を励起させるための波長320nm〜400nm程度の紫外線を発生する半導体レーザー等の励起光源33とが設けられている。これらの光源は同一の光源プロセッサ装置1b内に配置されているため、独立した光源装置を用いる場合と比較して、システム全体の構成をコンパクトにすることができる。
【0016】
内視鏡挿入部1aには、白色光源31または励起光源33からの光束を2分割して先端に導き、それぞれ配光レンズ21a,21bを介して体腔内の組織に照射させるライトガイド22と、治療用光源32からの光束を2分割して先端に導き、それぞれ射出レンズ23a,23bを介して体腔内の組織に照射させる治療用プローブ24とが引き通されている。なお、内視鏡挿入部1aの先端では、対物レンズ11を中心に、その周囲に治療光を照射させる射出レンズ23a,23bが配置され、そのさらに周囲に白色光又は励起光を照射する配光レンズ21a,21bが配置されている。治療光は、対物レンズ11を介して撮影される視野の中心部の狭い範囲に照射され、白色光及び励起光は、これより広い範囲に照射される。
【0017】
ライトガイド22は、複数本の光ファイバを束ねて構成されており、内視鏡挿入部1aの内部で2等分され、各配光レンズ21a,21bに対して同一光量の白色光を導くように構成されている。同様に、治療用プローブ24も、複数本の光ファイバを束ねて構成され、内視鏡挿入部1aの内部で2等分され、各射出レンズ23a,23bに対して同一光量の治療光を導くように構成されている。
【0018】
励起光源33は、体腔内の組織の自家蛍光を発生させて蛍光撮影するための励起光を発する光源として使用されると共に、事前に生体に投与された光感受性物質を励起して光線力学診断(PDD)を行うためのPDD用光源としても利用される。
【0019】
対物レンズ11と撮像素子12との間には、励起光源33から発する励起光に相当する波長成分を除去するための励起光カットフィルタ13が組み込まれている。励起光カットフィルタは、図2に示すように、励起光を遮断し、励起光より長い波長の光を透過させる特性を有しており、これにより、蛍光撮影時に撮像素子12に励起光が入射するのを防ぎ、蛍光画像のみの撮影が可能となる。
【0020】
白色光源31とライトガイド22とを結ぶ直線的な光路上には、回転により白色光を断続的に透過させるロータリーシャッタ35、白色光の光量を調整するための絞り36、励起光源33から発する励起光の光路をライトガイドに向かう白色光の光路に合成する光路合成手段としてのハーフミラー37、第1集光レンズ38が光源側から順に配置されている。
【0021】
ロータリーシャッタ35は、図3に平面形状を示すように、中心角約180°の扇形の開口35aが形成された円板であり、第1集光レンズ38の光軸に対して直交し且つオフセットした状態で、第1モータ51の回転軸に固定されている。開口35aの径方向のサイズは、白色光の径より大きく設定されており、第1モータ51を駆動してロータリーシャッタ35を回転させることにより、撮影時に画像信号のフレームやフィールドの切り替えに同期して白色光がオン/オフされる。ロータリーシャッタ35を透過した白色光源31からの白色光の一部は、ハーフミラー37を透過して第1集光レンズ38により集光されてライトガイド22に入射する。
【0022】
ロータリーシャッタ35は、第1モータ51と共にスライド台39に取り付けられており、第2モータ52を駆動することにより、ロータリーシャッタ35を図1に示す光路中の設定位置と、図中上側に光路からから外れた待避位置との間で切り替えられる。絞り36は、第3モータ53により駆動され、その開口径を変化させる。
【0023】
一方、治療用光源32と治療用プローブ24とを結ぶ光路中には、プレート型ビームスプリッター40と、第2集光レンズ41とが光源側から順に配置されている。プレート型ビームスプリッター40は、治療用光源32から発する治療光の95%を透過させ、5%を反射させる。反射された治療光は、治療光の光量を測定する第1光量センサ42に入射する。
【0024】
プレート型ビームスプリッター40を透過した治療光は、第2集光レンズ41により集光されて治療用プローブ24に入射する。2本に分岐した治療用プローブ24の先端と射出レンズ23a,23bには、それぞれキューブ型ビームスプリッター43a,43bが配置されている。図4は、2本に分岐した治療用プローブ24の一方の先端部分の拡大図である。キューブ型ビームスプリッター43a,43bも、プレート型と同様、治療用プローブ24から発する治療光の95%を透過させ、5%を反射させる。反射された治療光は、それぞれ治療光の光量を測定する第2光量センサ44a、第3光量センサ44bに入射する。
【0025】
次に、撮像光学系10により撮像された画像信号や光量センサ42,44a,44bから出力される光量信号を処理し、各光源32、33や各モータ51〜53を制御する電気系統の構成について説明する。電子内視鏡システム1の電気系統は、全体の制御を司るシステムコントローラ60を中心に、第1〜第3モータ51〜53をそれぞれ駆動する第1〜第3ドライバ61〜63、治療用光源32を駆動する第4ドライバ64、撮影時に画像信号のフレームやフィールドの切り替える同期信号を出力するタイミングコントローラ65、このタイミングコントローラ65からの信号に同期して撮像素子12を駆動する駆動信号を出力するCCDドライバ66を備えている。
【0026】
また、画像信号の処理系として、撮像素子12から出力される映像信号を処理する前段信号処理回路67、この前段信号処理回路67で処理され出力されたデジタルの映像信号を演算処理する画像処理回路68、この画像処理回路68で演算された映像信号をモニター80に表示するための規格化映像信号に変換して出力する後段信号処理回路69を備える。
【0027】
さらに、第1光量センサ42から出力される光量信号は、第1アンプ70により増幅され、第1A/Dコンバータ71によりディジタルデータに変換され、システムコントローラ60に入力される。同様に、第2,第3光量センサ44a,44bから出力される光量信号は、第2、第3アンプ72,73により増幅され、第2、第3A/Dコンバータ74,75によりディジタルデータに変換され、システムコントローラ60に入力される。
【0028】
さらに、内視鏡挿入部に接続される操作部には、動作モードを通常観察モード、蛍光観察モード、蛍光観察/PDTモードとの間で切り替えるためのモード切替スイッチ45が設けられている。このスイッチは、内視鏡による観察、治療時に操作者(術者)により操作される。また、光源プロセッサ装置1bには、キースイッチ76、緊急停止ボタン77、PDT強度調整つまみ78が設けられている。キースイッチ76は、PDT用の高出力のレーザー光が誤って照射されないようにするための安全スイッチであり、緊急停止ボタン77は、緊急時に治療光の照射を停止させるためのスイッチである。また、PDT強度調整つまみ78は、後に説明するPDT用の治療光の強度を自動調整する際の基準値を設定するために用いられる。
【0029】
第1ドライバ61は、タイミングコントローラ65からの同期信号に基づいて第1モータ51を駆動し、ロータリーシャッタ35回転させる。第2ドライバ62は、システムコントローラ60により制御されて第2モータ52を駆動し、スライド台39を移動させる。第3ドライバ63は、白色光を利用する際には画像処理装置68からのフィードバックを受けて白色光の光量を調整するよう第3モータ53を駆動して絞り36の開口径を調整し、白色光を利用しない場合にはシステムコントローラ60からの制御により絞りを完全に閉じて白色光を遮断する。第4ドライバ64は、キースイッチ76がオンであり、緊急停止ボタン77が押されていない場合にのみ治療用光源32の発光を許可し、システムコントローラ60からの制御により治療用光源32の発光量を調節し、タイミングコントローラ65からの同期信号に基づいて治療用光源32をオンオフする。
【0030】
システムコントローラ60は、図5に示すように、第4ドライバ64に対する制御手段として、モード切替スイッチ45によりPDT以外のモードが選択された場合に治療用光源32の発光を停止させる判別回路60aと、第1A/Dコンバータ71から入力される第1光量センサ42からの光量信号を予め定められた治療用光源の最大光量値と比較し、光量信号が最大光量値を上回ったときに安全のため治療用光源32の発光を停止させる第1比較回路60bと、第2,第3A/Dコンバータ74,75から入力される第2,第3光量センサ44a,44bからの光量信号を比較し、一方の信号レベルが他方の信号レベルの半分以下となった場合にファイバ切断等の不具合が生じたものと判断して治療用光源の発光を停止させる第2比較回路60cと、第2,第3A/Dコンバータ74,75から入力される第2,第3光量センサ44a,44bからの光量信号を加算する加算回路60dと、PDT強度調整つまみ78によって設定された基準値から加算回路60dの出力をマイナスしてその差をフィードバック信号として第4ドライバ64に与える引算回路60eとを備えている。すなわち、システムコントローラ60は、第2,第3光量センサ44a,44bの出力に基づいて治療用光源32から発する治療光の光量を制御する制御手段としての機能を備えている。
【0031】
次に、上記のように構成された電子内視鏡システム1の動作を説明する。システムの電源が投入されると、システムコントローラ60が起動し、白色光源31が点灯する。システムコントローラ60は、モード切替スイッチ45の設定を読み込み、各観察モードに合わせて各部を制御する。以下、通常観察モード、蛍光観察モード、蛍光観察/PDTモードの順に動作を図6に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0032】
通常観察モードが選択されている場合には、システムコントローラ60は、第2ドライバ62を介して第2モータ52を制御してロータリーシャッタ35を光路外に待避させ、第3ドライバ63を介して第3モータ53を制御して絞り36を開く。これにより、白色光源31から発した照明光が連続的にライトガイド22を介して内視鏡先端部に届き、配光レンズ21a,21bを介して体腔内の組織を照明する。白色光により照明された組織からの反射光は、撮像光学系10に取り込まれて組織のカラー画像を形成する。通常観察モードにおける撮像素子12による撮像のタイミングは図6のAに示されている。NTSCのインターレース方式に準拠し、1秒間に30フレーム、60フィールド分の画像を撮像し、次のフィールドの撮像中に前のフィールドのデータを転送する。画像データは、フィールド毎に画像処理回路68内の図示せぬ画像メモリに順次記憶され、1フィールド分のデータが揃った時点で合成されて1フレーム分の画像データとして出力される。この結果、通常撮影モードでは、体腔内の組織のカラー映像がモニター80上に動画で表示される。
【0033】
蛍光観察モードが選択されている場合には、システムコントローラ60は、第2ドライバ62を介して第2モータ52を制御してロータリーシャッタ35を光路中に設定し、第3ドライバ63を介して第3モータ53を制御して絞り36を開く。また、タイミングコントローラ65からの同期信号により、第1ドライバ61を介して第1モータ51を駆動してロータリーシャッタ35を回転させ、白色光がロータリーシャッタ35を透過する間は励起光源33を消灯させ、白色光がロータリーシャッタ35により遮断される間は励起光源33を発光させる。これにより、白色光源31から発した白色光と、励起光源33から発した励起光とが交互にライトガイド22に入射する。
【0034】
励起光が照射されている期間は励起された組織からの蛍光が励起光と共に撮像光学系10に入射するが、励起光は励起光カットフィルタ13により遮断されるため、蛍光のみが撮像素子12に到達し、蛍光画像の信号が得られる。なお、蛍光画像には、生体組織の励起による緑色の自家蛍光と、PDDにより癌細胞に滞留した光感受性物質から発生する赤色の蛍光とが含まれる。PDDを実施する場合には、検査を始める前に光感受性物質(フォトフィリン)を体内に静脈注射投与しておく。フォトフィリンは、一定時間後には正常細胞からは流れ出すが、腫瘍部には滞留する。このため、短波長の励起光を照射してフォトフィリンを励起すると、赤色の蛍光が発生し、腫瘍部の特定が容易となる。
【0035】
一方、白色光が照射されている期間は、組織からの反射光が撮像素子12に到達する。撮像素子12は、図6Bに示すようなタイミングでフィールド毎に通常画像(カラー画像)の撮像と、蛍光画像の撮像及びPDDとを繰り返す。これにより、フィールド毎に通常画像のデータと蛍光画像及びPDDのデータとが画像メモリに記憶されるが、これらは通常の画像データのようにインターレースの処理をせず、それぞれ独立した画面を表示するように1フィールド分の画像データで公知の補間処理を行って1フレームの画面データを生成する。
【0036】
モニター80には、図7に示すように、通常画像(カラー画像)と蛍光画像とが並べて表示される。図7の蛍光画像では、中央の濃度が濃い部分がフォトフィリンによる赤色の蛍光、その周囲が緑色の自家蛍光を示している。
【0037】
蛍光観察/PDTモードが選択されている場合には、システムコントローラ60は、第3ドライバ63を介して第3モータ53を制御して絞り36を閉じて白色光を遮断し、タイミングコントローラ65からの同期信号により、フィールド毎に治療用光源32と励起光源33とを交互に発光させる。
【0038】
これにより、治療用光源32は、図6Cに示すタイミングでフィールド毎にオンオフを繰り返し、治療光が治療用プローブ24及び射出レンズ23a,23bを介して体腔内の組織に高出力で照射され、治療用光束が照射されない期間には励起光源32から発した励起光がライトガイド22及び配光レンズ21a,21bを介して組織を照射する。
【0039】
このように、フィールド毎に治療光と励起光とのオンオフを切り換え、励起光が照射される期間に撮像する。PDTの治療用光束が高出力で照射されている間は、撮像光学系10に入射する反射光量が極めて大きく、撮像素子12の出力は飽和するため、この期間は撮像素子12の電荷は蓄積せずに捨てる。この間、生体組織の癌細胞に滞留しているフォトフィリンが照射された治療用光束の光エネルギーを吸収し、癌細胞を壊死させる。
【0040】
PDT用の治療光が照射されている期間には、各光量センサ42,44a,44bに治療光の一部が入射し、各センサからは入射した光量に応じた光量信号が出力される。これらの光量信号は、図5に示される第1比較回路60b、第2比較回路60cにより比較され、光源近くに配置された第1光量センサ42の出力が所定の最大光量を超えた場合、あるいは、治療用プローブの先端に配置された第2,第3光量センサ44a,44bの光量信号を比較し、一方の信号レベルが他方の信号レベルの半分以下となった場合には、第4ドライバ64に対して治療用光源32の発光を停止するよう指令する。また、引算回路60eは、PDT強度調整つまみ78によって設定された基準値から第2,第3光量センサ44a,44bの光量信号を加算した光量信号をマイナスしてその差をフィードバック信号として第4ドライバ64に与える。高出力の治療光を安全に利用するため、光量センサ42で光源自体の発光量をチックすると共に、光量センサ44a,44bにより治療用プローブを介して伝達される光量をもチェックするようにしている。
【0041】
励起光が照射されている期間は、励起された組織からの蛍光と励起光とが撮像光学系10に入射する。ただし、励起光は励起光カットフィルタ13により遮断されるため、蛍光のみが撮像素子12に到達し、蛍光画像の信号が得られる。これにより、1フィールドおきに蛍光画像のデータが画像メモリに記憶される。そして、1フィールド分の画像データで公知の補間処理を行って1フレームの画面データを生成する。
【0042】
モニター80には、PDTの開始時には、図8に示すような画像が表示される。中心にはPDDによる赤色の蛍光、その周囲には自家蛍光による緑色の蛍光画像が表示される。治療が進み、癌細胞が壊死すると、図9に示すように、その部分の蛍光が弱くなり、黒く表示される。したがって、このモードでは、術者は治療部位の状態を観察しながら治療を行うことができる。なお、蛍光観察/PDTモードでは、画面の右上にPDTの高出力の治療用レーザ光が照射されていることを術者が確実に認識できるように表示する。
【0043】
一方、PDTの実行中に治療光が照射する範囲を知りたい場合には、図6Dに示すように、蛍光撮影のタイミングに合わせて治療用光源32からの治療光を十分に低い強度で照射する。これにより、モニター80上には、図10に示すように中心部に治療光の照射範囲が赤く表示され、その周囲に緑色の自家蛍光の画像が表示される。ただし、この場合にはPDDによる赤色の蛍光が識別しにくくなる。なお、図6Dのように蛍光画像の撮像中に治療用光源32を低出力で発光させる場合には、図5の引算器60eに入力させる基準値をフィールドの切り替えに応じて高出力用と低出力用とで切り替える。これにより、PDTの実行時にも、蛍光撮影時にも、それぞれ適切な光量が得られるよう治療用光源32をフィードバック制御することができる。この場合、治療用光源32は高出力と低出力とを繰り返すこととなるため、各光量センサ42,44a,44bにより治療用光源32自体の光量とプローブにより伝達された光量とを確認し、それぞれの出力に適合するよう調整する動作が繰り返される。
【0044】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、PDT用の光源を通常の白色光源や励起光源と同一の光源装置内に格納することができ、システムのサイズをコンパクトにすることができる。また、治療光の強度を測定してフィードバックをかけることにより、治療用光源の発光量を自動的に制御することができ、内視鏡挿入部1aを交換して治療用プローブを構成する光ファイバの本数が変わった場合等にも一定の光量を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態による電子内視鏡システムの内部構成を示すブロック図である。
【図2】図1の電子内視鏡システムに含まれる励起光カットフィルタの特性を示すグラフである。
【図3】図1の電子内視鏡システムに含まれるロータリーシャッタの平面図である。
【図4】図1の電子内視鏡システムに含まれる治療用プローブの先端部分の構成を示す断面図である。
【図5】図1の電子内視鏡システムに含まれるシステムコントローラの第4ドライバを制御する部分の詳細を示すブロック図である。
【図6】図1の電子内視鏡システムにおける撮像タイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】図1の電子内視鏡システムの蛍光観察モードにおいてモニター上に表示される画面例を示す説明図である。
【図8】図1の電子内視鏡システムの蛍光観察/PDTモードにおいて治療開始時にモニター上に表示される画面例を示す説明図である。
【図9】図1の電子内視鏡システムの蛍光観察/PDTモードにおいて治療終了時にモニター上に表示される画面例を示す説明図である。
【図10】図1の電子内視鏡システムの蛍光観察/PDTモードにおいて治療光の照射範囲を確認する場合にモニター上に表示される画面例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 電子内視鏡システム
1a 内視鏡挿入部
1b 光源プロセッサ装置
10 撮像光学系
11 対物レンズ
12 撮像素子
13 励起光カットフィルタ
21a,21b 配光レンズ
22 ライトガイド
23a,23b 射出レンズ
24 治療用プローブ
31 白色光源
32 治療用光源
33 励起光源
35 ロータリーシャッタ
37 ハーフミラー
38 集光レンズ
42 第1光量センサ
44a,44b 第2、第3光量センサ
45 モード切換スイッチ
51〜53 第1〜第3モータ
60 システムコントローラ
61〜64 第1〜第4ドライバ
65 タイミングコントローラ
67 前段映像信号処理回路
68 画像処理回路
69 後段映像信号処理回路
80 モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部の先端に配置された対物レンズにより形成される体腔内の組織の像を撮像素子により撮像する撮像光学系と、
照明用の白色光を発する白色光源と、
光線力学治療に用いられる治療光を発する治療用光源と、
前記白色光源と前記治療用光源とを内蔵する単体の光源装置と、
前記白色光源からの光束を前記内視鏡挿入部の先端に導いて体腔内の組織に照射させるライトガイドと、
前記治療用光源からの光束を前記内視鏡挿入部の先端に導いて体腔内の組織に照射させる治療用プローブと、
前記治療光の光量を測定する光量センサと、
前記光量センサの出力に基づいて前記治療用光源から発する治療光の光量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記光量センサは、前記治療用プローブから射出される治療光の光量を測定することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記治療用プローブは、前記内視鏡挿入部側で複数本に分岐し、前記光量センサは分岐した各プローブから射出される光量を測定するよう複数設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記光量センサは、前記治療用プローブに入射する治療光の光量を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記光源装置内に、体腔内の組織を励起させる励起光を発する励起光源と、該励起光源から発する励起光の光路を前記ライトガイドに向かう白色光の光路に合成する光路合成手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−22654(P2009−22654A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190912(P2007−190912)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】