説明

電子内視鏡装置

【課題】撮像と表示との同期を確保することができる電子内視鏡装置を提供する。
【解決手段】位相制御部111は、表示同期信号110と、撮像クロック生成部106が生成したクロック信号107から生成されたクロック信号113との位相を比較し、比較結果に基づいて撮像クロック生成部106の発振を制御する。駆動信号生成部125は、クロック信号107に同期した逓倍クロック信号120に基づいて、CMOSセンサ122を駆動する駆動信号121を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子を搭載する内視鏡スコープと、内視鏡スコープからの画像信号に所定の画像処理を施す画像処理プロセッサとを備える電子内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の進歩により、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサといった固体撮像素子の高画素化が進んでいる。この傾向は、固体撮像素子を搭載する電子内視鏡においても例外ではなく、電子内視鏡の高精細化が進んでいる。
【0003】
しかし、固体撮像素子の高画素化に伴い、画像処理に必要となるクロック信号の周波数も高くなってきており、種々の問題を引き起こしている。例えば、電子内視鏡は、撮像素子が搭載される内視鏡スコープの先端部と、画像処理を行う画像処理プロセッサとの間が離れており、内視鏡スコープと画像処理プロセッサとの間の伝送路上での信号劣化が発生しやすい構造を有している。内視鏡スコープと画像処理プロセッサとの間で伝送される信号の周波数が高くなると、信号劣化はさらに大きくなる。また、高周波信号が伝送路を流れることによる電磁波の漏洩もより顕著になる。
【0004】
このような問題を解決する方法として、特許文献1に記載の電子内視鏡装置が提案されている。この電子内視鏡装置では、電子スコープの出力部に波形平滑回路が挿入されており、この波形平滑回路によって、電子スコープとプロセッサ装置との間で放出される高周波ノイズが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-275956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、内視鏡スコープとモニタ機器との同期という観点について記載されていない。内視鏡スコープには、観察対象や用途にあわせて種々の画角の固体撮像素子が搭載されるため、内視鏡スコープごとに動作周波数や画角が異なる。よって、内視鏡スコープが撮像した画像をモニタに表示するためには、モニタの同期信号にあわせた周波数変換が必要である。
【0007】
しかし、表示用のクロックと撮像用のクロックとの関係次第では、内視鏡スコープが1フレームの撮像を行う周期と、モニタ機器が1フレームの画像を表示する周期とが微妙に異なるため、両者の位相が徐々にずれていくという問題が発生する。また、両者の位相のずれが1フレームの時間を超過すると、「追い越し」や「コマ落ち」といった現象が発生する。
【0008】
図5は、撮像クロックを基準とした1フレーム周期と、表示クロックを基準とした1フレーム周期との関係を模式的に示している。図5に示すように、撮像クロックを基準とした1フレーム周期と、表示クロックを基準とした1フレーム周期とが微妙に異なっており、時間の経過と共に1フレーム周期のずれ(D0,D1,D2)が増加している。
【0009】
一方、モニタ機器側でも高精細化に伴う高速化が進んでおり、モニタ機器への信号の入力には厳密なタイミング規定を満足する必要がある。仮に、撮像と表示とで1フレーム周期を完全にあわせることができたとしても、テレビジョン規格に準拠していない内視鏡スコープ側のクロックを基準に表示用同期信号を生成した場合は、モニタ機器において正常な表示ができない可能性がある。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、撮像と表示との同期を確保することができる電子内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、画像処理プロセッサおよび内視鏡スコープを備える電子内視鏡装置であって、前記画像処理プロセッサは、表示クロックを生成する表示クロック生成部と、前記表示クロックに基づいて表示同期信号を生成する表示同期信号生成部と、固体撮像素子を駆動する元となる原振撮像クロックを生成する撮像クロック生成部と、前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周した第1の撮像クロックと、前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周した第2の撮像クロックとを生成する逓倍/分周部と、前記表示同期信号と、前記第1の撮像クロックとの位相を比較し、比較結果に基づいて前記撮像クロック生成部の発振を制御する制御部と、を備え、前記内視鏡スコープは、光学情報を電気信号に変換し、画像信号として出力する固体撮像素子と、前記第2の撮像クロックを逓倍した逓倍撮像クロックを生成する逓倍部と、前記逓倍撮像クロックに基づき、前記固体撮像素子を駆動する信号を生成する駆動信号生成部と、を備えることを特徴とする電子内視鏡装置である。
【0012】
また、本発明は、画像処理プロセッサおよび内視鏡スコープを備える電子内視鏡装置であって、前記画像処理プロセッサは、表示クロックを生成する表示クロック生成部と、前記表示クロックに基づいて表示同期信号を生成する表示同期信号生成部と、固体撮像素子を駆動する元となる原振撮像クロックを生成する撮像クロック生成部と、前記表示同期信号と、前記原振撮像クロックとの位相を比較し、比較結果に基づいて前記撮像クロック生成部の発振を制御する制御部と、を備え、前記内視鏡スコープは、光学情報を電気信号に変換し、画像信号として出力する固体撮像素子と、前記原振撮像クロックを逓倍した逓倍撮像クロックを生成する逓倍部と、前記逓倍撮像クロックに基づき、前記固体撮像素子を駆動する信号を生成する駆動信号生成部と、を備えることを特徴とする電子内視鏡装置である。
【0013】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記内視鏡スコープは、前記画像信号を光信号に変換する電光変換部を備え、前記画像処理プロセッサは、前記光信号を前記画像信号に変換する光電変換部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記内視鏡スコープは、前記画像信号を差動信号に変換する変換部を備え、前記画像処理プロセッサは、前記差動信号を前記画像信号に復調する復調部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記内視鏡スコープは、前記画像信号を無線送信する無線送信部を備え、前記画像処理プロセッサは、前記無線送信部によって無線送信された前記画像信号を受信する無線受信部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記画像処理プロセッサは、前記内視鏡スコープに前記表示同期信号を出力し、前記駆動信号生成部は、前記逓倍撮像クロックおよび前記表示同期信号に基づき前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記表示同期信号は、前記第2の撮像クロックが伝送される伝送路と同一の伝送路に、前記第2の撮像クロックと重畳して送信されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記表示同期信号は、前記原振撮像クロックが伝送される伝送路と同一の伝送路に、前記原振撮像クロックと重畳して送信されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の電子内視鏡装置において、前記内視鏡スコープは、前記画像信号を圧縮する圧縮部を備え、前記画像処理プロセッサは、前記圧縮部によって圧縮された前記画像信号を伸長する伸長部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モニタ表示用同期信号と第1の撮像クロックまたは原振撮像クロックとを同期させることが可能となり、モニタ表示用同期信号と同期した第1の撮像クロックまたは原振撮像クロックから固体撮像素子の駆動信号を生成することによって、撮像と表示との同期を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態による電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による電子内視鏡装置が備える位相制御部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態による電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による電子内視鏡装置の構成を示すブロック図である。
【図5】従来の問題を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、本実施形態による電子内視鏡装置の構成を示している。電子内視鏡装置は内視鏡スコープ100と画像処理プロセッサ101で構成され、画像処理プロセッサ101はモニタ103に接続されている。
【0024】
内視鏡スコープ100は、分離部116と、逓倍部119と、CMOSセンサ122と、駆動信号生成部125と、差動ドライバ126とを有する。画像処理プロセッサ101は、表示クロック生成部102と、表示同期信号生成部104と、撮像クロック生成部106と、逓倍/分周部108と、位相制御部111と、重畳部114と、差動信号受信部128と、S/P変換部129と、画像処理部130とを有する。
【0025】
画像処理プロセッサ101において、表示クロック生成部102は、表示に係る各部を駆動する表示クロックである表示クロック信号105を生成する。表示クロック信号105は、表示同期信号生成部104に出力されると共に、被検者の安全のために設けられた絶縁素子127を通して画像処理部130に供給される。表示同期信号生成部104は、表示クロック信号105に基づいて、モニタ103に画像を表示するための、テレビジョン規格に準拠した表示同期信号110を生成する。表示同期信号110の生成では、表示クロック生成部102が生成したクロック信号105を使用する。表示同期信号110は、位相制御部111および重畳部114に出力されると共に、絶縁素子127を通して画像処理部130に供給される。撮像クロック生成部106は、CMOSセンサ122を駆動する元となる原振クロックであるクロック信号107を生成する。
【0026】
逓倍/分周部108は、撮像クロック生成部106が生成したクロック信号107に対して、適宜、逓倍のみの処理、分周のみの処理、あるいは逓倍と分周とを組み合わせた処理を行い、クロック信号109およびクロック信号113を生成する。クロック信号109は、内視鏡スコープ100へ送信される信号であり、クロック信号109の周波数は、撮像クロック生成部106が生成したクロック信号107の周波数よりも低い周波数である。クロック信号113は、位相制御部111に出力されると共に、絶縁素子127を通してS/P変換部129および画像処理部130に供給される。クロック信号113の周波数は、撮像クロック生成部106が生成したクロック信号107の周波数よりも高い周波数である。
【0027】
位相制御部111は、クロック信号113と表示同期信号110との位相を比較し、比較結果に基づいて、撮像クロック生成部106におけるクロック信号107の発振状態を制御するための制御信号112を撮像クロック生成部106に出力する。撮像クロック生成部106は、制御信号112に基づいて、クロック信号113と表示同期信号110の位相を合わせるように、クロック信号107の周波数を制御する。なお、外部からの制御信号により周波数を任意に変更できる発振器が存在するので、撮像クロック生成部106の実装には、それらの発振器を使用すればよい。
【0028】
図2は、位相制御部111の動作の内容を示している。位相制御部111は、例えばクロック信号113の立ち上がりのエッジ位置と表示同期信号110(図2の例では垂直同期信号)の立ち上がりのエッジ位置とを比較し、両者のエッジ位置の差に基づく制御信号112を撮像クロック生成部106に出力する。制御信号112に基づいて撮像クロック生成部106がクロック信号107の発振状態すなわちクロック信号107の周波数を制御することによって、クロック信号107から生成されたクロック信号113の立ち上がりのエッジ位置と表示同期信号110の立ち上がりのエッジ位置とが一致し、クロック信号107と表示同期信号110との同期を確保することができる。図2ではクロック信号113との位相の比較に垂直同期信号を使用する例を示したが、水平同期信号を使用してもよい。
【0029】
重畳部114は、クロック信号107から生成されたクロック信号109に対して表示同期信号110を重畳し、クロック信号115を生成する。クロック信号115は、画像処理プロセッサ101から出力され、内視鏡スコープ100の伝送ケーブルを通って、スコープ先端部の分離部116に入力される。分離部116は、クロック信号115に含まれるクロック信号117(クロック信号109に相当)と表示同期信号118(表示同期信号110に相当)を分離して出力する。
【0030】
逓倍部119は、クロック信号117を逓倍することによって逓倍クロック信号120を生成する。駆動信号生成部125は、逓倍クロック信号120を動作クロックとして、CMOSセンサ122を駆動する駆動信号121を生成する。この際、表示同期信号118は、フレームの開始位置を規定する信号として参照される。CMOSセンサ122は、駆動信号121に従って、光学情報を電気信号に変換し、シリアル形式の画像信号123を出力する。差動ドライバ126は画像信号123を差動信号124に変換する。差動ドライバ126から出力された差動信号124は、内視鏡スコープ100の伝送ケーブルを通って画像処理プロセッサ101に入力される。
【0031】
画像処理プロセッサ101では、入力された差動信号124は、絶縁素子127を通過して差動信号受信部128によって受信される。差動信号受信部128は、受信した差動信号124をシリアル形式の画像信号131に復調する。S/P変換部129は、シリアル形式の画像信号131をパラレル形式の画像信号132に変換する。S/P変換部129から出力された画像信号132は画像処理部130に入力される。
【0032】
画像処理部130は、バッファメモリを用いて、画像信号132を処理するためのクロック信号を、撮像クロックに相当するクロック信号113から表示クロック信号105に切り替える処理(いわゆるクロックの乗り換え)を行うと共に、画像信号132に対して画像表示のための各種の画像処理を行う。この際、表示同期信号110は、フレームの開始位置を規定する信号として参照される。画像処理部130によって処理された画像信号はモニタ103に出力され、モニタ103での画像表示に使用される。
【0033】
本実施形態では、CMOSセンサ122を駆動する駆動信号121を生成する際、表示同期信号118と位相を合わせた逓倍クロック信号120を用いて駆動信号121を生成しているため、撮像側と表示側とで1フレームの時間が異なる、という問題は発生しない。また、表示クロックと同期を取った撮像用クロックを伝送する際、内部の駆動周波数よりも遅い(低い周波数の)クロック信号109を生成して送信しているため、信号劣化の影響を受けにくく、さらに電磁ノイズの発生も抑制できる。
【0034】
本実施形態では種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、固体撮像素子としてCMOSセンサを使用したが、CCDを用いてもよい。また、CMOSセンサは同一のチップ上に各種の処理回路を搭載することが可能である。よって、本実施形態の駆動信号生成部125や逓倍部119もCMOSセンサと同一のチップ上に搭載してもよい。
【0035】
上述したように、本実施形態によれば、位相制御部111が表示用同期信号110とクロック信号113との位相を比較した結果に基づいて、撮像クロック生成部106が生成するクロック信号107の発振状態を制御することによって、表示用同期信号110とクロック信号107とを同期させることが可能となる。このクロック信号107と同期している逓倍クロック信号120から駆動信号121を生成することによって、撮像の1フレーム周期と表示の1フレーム周期の長さを一致させ、撮像と表示との同期を確保することができる。
【0036】
また、クロック信号107よりも低い周波数のクロック信号115が画像処理プロセッサ101から内視鏡スコープ100に送信されるため、信号の劣化や電磁波ノイズの生成といった、信号の高速化による影響を低減することができる。また、画像信号の伝送に差動信号を使用することで、外乱ノイズへの耐性を高くすることができる。
【0037】
本実施形態のように撮像側と表示側とで1フレームの周期をあわせることができても、内視鏡スコープと画像処理プロセッサが独自のタイミングで同期信号と駆動信号を生成するのでは、撮像側と表示側のフレームの開始タイミングがそろわない。このため、フレームの開始タイミングを調整するためのバッファ機能をどこかに設ける必要があるが、本実施形態のように駆動信号生成部125において表示同期信号118で撮像側のフレーム開始を指示することによって、撮像側と表示側のフレームのタイミングを揃えることができる。
【0038】
また、表示同期信号110をクロック信号109に重畳して同一の伝送線路で内視鏡スコープ100に伝送することによって、伝送線路の本数を削減できるため、内視鏡スコープ100の細径化が可能になる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。図3は、本実施形態による電子内視鏡装置の構成を示している。図3において、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素に関しては、同一の符号を付与するとともに説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、第1の実施の形態と同様に、位相制御部111が生成した制御信号112に従って撮像クロック生成部106がクロック信号107を生成し、逓倍/分周部108がクロック信号107からクロック信号109およびクロック信号113を生成する。第1の実施形態では、クロック信号109に表示同期信号110が重畳されて画像処理プロセッサ101から出力されていたが、本実施形態では、表示同期信号110をクロック信号109に重畳せず、クロック信号109が、絶縁素子127を通して画像処理プロセッサ101から出力され、内視鏡スコープ100に送信される。同様に、表示同期信号110も、クロック信号109とは独立して、絶縁素子127を通して画像処理プロセッサ101から出力され、内視鏡スコープ100に送信される。
【0041】
内視鏡スコープ100では、逓倍部119によって、クロック信号109を逓倍した逓倍クロック信号120が生成され、駆動信号生成部125に入力される。駆動信号生成部125は、逓倍クロック信号120と表示同期信号110を使用して、CMOSセンサ122を駆動する駆動信号121を生成する。
【0042】
本実施形態では、第1の実施形態で使用していた差動ドライバ126および差動信号受信部128に代えて、電光変換部202および光電変換部204が使用される。CMOSセンサ122から出力された画像信号123は、電光変換部202によって光信号203に変換され、画像処理プロセッサ101に出力される。画像処理プロセッサ101では、入力された光信号203が光電変換部204によって、再び電気信号である画像信号205に変換される。以降は第1の実施形態と同様に画像処理部130によって画像処理が実施され、モニタ103に画像が表示される。
【0043】
本実施形態では、光伝送による外乱ノイズに対する耐性の向上や、電磁波ノイズの低減が期待できる。また、クロック信号と表示同期信号を別系統で伝送することで、伝送に必要な信号線は増加するが、内視鏡スコープ100内の回路を簡単にすることができる。
【0044】
本実施形態では種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、画像処理プロセッサ101側で生成したクロック信号109および表示同期信号110を、絶縁素子127を介して内視鏡スコープ100に伝送しているが、絶縁素子127の挿入場所は第1の実施形態と同様の場所でもよい。ただし、光伝送はそれ自体で絶縁を実現できているので、画像データの伝送路に新たに絶縁素子を挿入する必要はない。なお、絶縁素子を通過するということは、信号品質に少なからず影響を及ぼすことになり、クロック信号が絶縁素子を通過する場合は信号品質の劣化がジッタとして現れる可能性がある。発振機能をどこに設けるかは、システムの安定動作の観点で決定すればよい。
【0045】
また、電光変換部202の搭載場所は、内視鏡スコープ100の内部であればよく、内視鏡スコープ100の先端部、内視鏡スコープ100と画像処理プロセッサ101の接続部、あるいは利用者が種々の操作を行う操作部のどこでもよい。ただし、先端部以外に電光変換部202を配置する場合は、先端部から電光変換部202までの間の伝送路では画像信号を差動信号で伝送する等の対策を講ずることが望ましい。
【0046】
また、本実施形態では、クロック信号と表示同期信号とを別々の信号線で伝送したが、第1の実施形態と同様に両者を重畳して1本の信号線で伝送してもよい。
【0047】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、撮像と表示との同期を確保することができる。また、画像信号を光信号で伝送することによって、外乱ノイズへの耐性向上や、電磁波ノイズの低減が期待できる。また、被検者の安全を確保するための絶縁処理が容易になる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。図4は、本実施形態による電子内視鏡装置の構成を示している。図4において、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と同一の機能を有する構成要素に関しては、同一の符号を付与するとともに説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、第1、第2の実施形態と同様に、位相制御部111が生成した制御信号112に従って撮像クロック生成部106を制御しているが、逓倍/分周部108が設けられておらず、位相制御部111が表示同期信号110との位相の比較に使用するクロックは、撮像クロック生成部106が生成した原振クロックであるクロック信号107である。第1、第2の実施形態のように原振クロックよりも高周波数のクロックと位相を比較する場合と比べると、本実施形態では粗い調整になるが、撮像側と表示側との位相のずれを防止するためには十分である。
【0050】
また、重畳部114は、クロック信号107に対して表示同期信号110を重畳し、クロック信号307を生成する。このクロック信号307が内視鏡スコープ100に送信される。内視鏡スコープ100では、クロック信号307に含まれるクロック信号117(クロック信号107に相当)と表示同期信号118(表示同期信号110に相当)が分離部116で分離される。
【0051】
また、本実施形態では、第1の実施形態で使用していた差動ドライバ126および差動信号受信部128に代えて、無線変調送信部300、無線復調受信部301、圧縮部302、伸長部303、アンテナ304、およびアンテナ305が使用される。圧縮部302は、CMOSセンサ122から出力された画像信号123を圧縮し、データ量を削減する。無線変調送信部300は圧縮データを、アンテナ304を介して無線データとして画像処理プロセッサ101に送信する。
【0052】
画像処理プロセッサ101では、アンテナ305を介して無線復調受信部301が無線データを受信し、S/P変換部129がパラレル変換を行った後、伸長部303が圧縮データを伸長し、元の画像データを復元する。S/P変換部129によるパラレル変換および伸長部303による伸長には、撮像クロック生成部106が生成したクロック信号107を逓倍部308が逓倍した逓倍クロック信号306が使用される。以降は第1の実施形態と同様に画像処理部130によって画像処理が実施され、モニタ103に画像が表示される。
【0053】
本実施形態では、クロック信号307を送信するための伝送路が必要であるため、内視鏡スコープ100と画像処理プロセッサ101間を完全に無線化することはできないが、データ伝送に必要な信号線を削減することで、内視鏡スコープ100の細径化が可能になる。また、第2の実施形態と同様に、無線伝送はそれ自体で絶縁が実現できているため、絶縁素子数を削減することができる。
【0054】
本実施形態では種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、無線データの送受信に圧縮・伸長の処理を加えたが、無線データの転送能力が十分に高い場合には、これらの処理はなくてもよい。逆に、第1、第2の実施形態に対して、本実施形態のような圧縮・伸長処理を追加してもよい。同様に、本実施形態では画像処理プロセッサ101は逓倍/分周部108を有していないが、第1、第2の実施形態においても本実施形態と同様に、逓倍/分周部108を有していない構成を採ることも可能である。
【0055】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、撮像と表示との同期を確保することができる。また、画像信号を無線信号で伝送することによって、データ伝送に必要な信号線数を削減することができ、内視鏡スコープの細径化が可能となる。また、被検者の安全を確保するための絶縁処理が容易になる。また、圧縮・伸長の処理を加えることによって、データ量を低減することができ、特に無線通信の安定動作を実現することができる。
【0056】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0057】
100・・・内視鏡スコープ、101・・・画像処理プロセッサ、102・・・表示クロック生成部、104・・・表示同期信号生成部、106・・・撮像クロック生成部、108・・・逓倍/分周部、111・・・位相制御部(制御部)、114・・・重畳部、116・・・分離部、119,308・・・逓倍部、122・・・ CMOSセンサ(固体撮像素子)、125・・・駆動信号生成部、126・・・差動ドライバ(変換部)、128・・・差動信号受信部(復調部)、129・・・ S/P変換部、130・・・画像処理部、202・・・電光変換部、204・・・光電変換部、300・・・無線変調送信部(無線送信部)、301・・・無線復調受信部(無線受信部)、302・・・圧縮部、303・・・伸長部、304,305・・・アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理プロセッサおよび内視鏡スコープを備える電子内視鏡装置であって、
前記画像処理プロセッサは、
表示クロックを生成する表示クロック生成部と、
前記表示クロックに基づいて表示同期信号を生成する表示同期信号生成部と、
固体撮像素子を駆動する元となる原振撮像クロックを生成する撮像クロック生成部と、
前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周した第1の撮像クロックと、前記原振撮像クロックを逓倍および/または分周した第2の撮像クロックとを生成する逓倍/分周部と、
前記表示同期信号と、前記第1の撮像クロックとの位相を比較し、比較結果に基づいて前記撮像クロック生成部の発振を制御する制御部と、
を備え、
前記内視鏡スコープは、
光学情報を電気信号に変換し、画像信号として出力する固体撮像素子と、
前記第2の撮像クロックを逓倍した逓倍撮像クロックを生成する逓倍部と、
前記逓倍撮像クロックに基づき、前記固体撮像素子を駆動する信号を生成する駆動信号生成部と、
を備えることを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
画像処理プロセッサおよび内視鏡スコープを備える電子内視鏡装置であって、
前記画像処理プロセッサは、
表示クロックを生成する表示クロック生成部と、
前記表示クロックに基づいて表示同期信号を生成する表示同期信号生成部と、
固体撮像素子を駆動する元となる原振撮像クロックを生成する撮像クロック生成部と、
前記表示同期信号と、前記原振撮像クロックとの位相を比較し、比較結果に基づいて前記撮像クロック生成部の発振を制御する制御部と、
を備え、
前記内視鏡スコープは、
光学情報を電気信号に変換し、画像信号として出力する固体撮像素子と、
前記原振撮像クロックを逓倍した逓倍撮像クロックを生成する逓倍部と、
前記逓倍撮像クロックに基づき、前記固体撮像素子を駆動する信号を生成する駆動信号生成部と、
を備えることを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記内視鏡スコープは、前記画像信号を光信号に変換する電光変換部を備え、
前記画像処理プロセッサは、前記光信号を前記画像信号に変換する光電変換部を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記内視鏡スコープは、前記画像信号を差動信号に変換する変換部を備え、
前記画像処理プロセッサは、前記差動信号を前記画像信号に復調する復調部を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項5】
前記内視鏡スコープは、前記画像信号を無線送信する無線送信部を備え、
前記画像処理プロセッサは、前記無線送信部によって無線送信された前記画像信号を受信する無線受信部を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項6】
前記画像処理プロセッサは、前記内視鏡スコープに前記表示同期信号を出力し、
前記駆動信号生成部は、前記逓倍撮像クロックおよび前記表示同期信号に基づき前記駆動信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項7】
前記表示同期信号は、前記第2の撮像クロックが伝送される伝送路と同一の伝送路に、前記第2の撮像クロックと重畳して送信されることを特徴とする請求項6に記載の電子内視鏡装置。
【請求項8】
前記画像処理プロセッサは、前記内視鏡スコープに前記表示同期信号を出力し、
前記駆動信号生成部は、前記逓倍撮像クロックおよび前記表示同期信号に基づき前記駆動信号を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項9】
前記表示同期信号は、前記原振撮像クロックが伝送される伝送路と同一の伝送路に、前記原振撮像クロックと重畳して送信されることを特徴とする請求項8に記載の電子内視鏡装置。
【請求項10】
前記内視鏡スコープは、前記画像信号を圧縮する圧縮部を備え、
前記画像処理プロセッサは、前記圧縮部によって圧縮された前記画像信号を伸長する伸長部を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−450(P2013−450A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136407(P2011−136407)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】