電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法、電子写真トナー用ポリエステル組成物及びその製造方法、電子写真トナー及びその製造方法、並びに、電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒
【課題】カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られた電子写真トナー用ポリエステル。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【解決手段】重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られた電子写真トナー用ポリエステル。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真トナーの結着樹脂として利用される電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法に関する。
また、本発明は、電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を利用した電子写真トナー用ポリエステル組成物及びその製造方法、並びに、電子写真トナー及びその製造方法に関する。
また、本発明は、電子写真トナー用ポリエステルの重合に利用される電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルとして代表的なPETなど高分子量ポリマーを重合する場合、テレフタル酸(以下、TPAと略)とメタノールなどのアルコールと一旦エステル化しておき、その後エチレングリコール(以下、EGと略)などとエステル交換による重縮合反応により分子量を増大させるDMT法と、TPAとEGを直接縮合させる直接エステル化法が存在する。
前者において一段階のエステル化に用いる触媒としてはZn2+、Co2+,Mn2+の酢酸塩が挙げられ、二段階目の重縮合反応においてはSb3+、Ge4+、Ti4+を触媒として用いることが一般的である。
後者の方法は、前者同様Sb3+,Ge4+,Ti4+を触媒として用いることが知られている。
【0003】
これに対して電子写真トナーなどに用いられる平均重量分子量10万以下の低分子量ポリエステルを重縮合する際は、分子量を抑制と経済性の観点から直接エステル化法が好ましい。使用される高活性触媒な有機スズ(Bu2SnO等)が古くから公知であり、またその触媒メカニズムについても解明が進んでいる(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。
また、高活性触媒としてはエステル化触媒も知られている(非特許文献2〜4参照)
【0004】
一方、古くから公知である有機スズは環境面の問題から近年使用が困難になっている。このため、例えば、高活性な有機スズに対して、環境負荷の低い二価の無機スズ(例えば(C7H15CO2)2Sn等)が見出されてきている(例えば、特許文献2〜4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−285642号公報
【特許文献2】特許第3597835号明細書
【特許文献3】特許第4202332号明細書
【特許文献4】特開2005−215271号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chem. Rev., 1993, 93, 1449.
【非特許文献2】Adv. Synth. Catal., 2004, 346, 1275.
【非特許文献3】J.Org.Chem., 1996, 61, 4196.
【非特許文献4】Macromolecules, 2000, 33, 3511.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、低分子量ポリエステルを得るために、PET合成の際に使用され、低環境負荷が期待される、Ge4+,Ti4+触媒(非特許文献1及び特許文献1参照)を本発明者が実際に検討した結果、高温における水の影響で触媒活性が著しく低下し、所望の分子量のポリエステルを得ることができなかった。これはPET合成にはEGを多量に用いるため水による触媒劣化の影響が低いのに対して、この低分子量ポリエステル合成は無溶媒中で行うために縮合の際に生成する水の影響で触媒劣化が著しいためであると考えている。
さらに、非特許文献3〜4に挙げられるようなエステル化触媒や、特許文献2〜4に挙げられてるような二価の無機スズ(例えば(C7H15CO2)2Sn等)も芳しい結果を与えなかった。
【0008】
一方で、このような耐水性が悪く触媒活性が低下してしまう触媒により得られたポリエステルを電子写真トナーの結着樹脂として用いると、得られる電子写真トナーは、カラートナーにおける混色性と耐オフセット性を両立することが困難であることが分かってきた。(特許番号2675948)
【0009】
そこで、本発明の課題は、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を提供することである。
また、他の本発明の課題は、上記電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を利用した、電子写真トナー用ポリエステル組成物及びその製造方法、並びに、電子写真トナー及びその製造方法を提供することである。
また、他の本発明の課題は、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステルの重合に利用される電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
スズには二価と四価が知られており、どちらも比較的安定であると謂われている。スズ(II)塩の水溶液及び非水溶液は有用な還元剤sであり、自発的かつ迅速に空気酸化されスズ(IV)塩に変化することが知られている。また四価の有機スズはエステル化能が高く、その触媒メカニズムが大寺らによって詳細に検討されている(非特許文献1)。大寺らによるとジスタノキサンの形成とスズ上の電子密度の影響が大きそうである。またこれとは違った形式ではあるがスズ上の電子密度を向上させることにより反応活性が著しく向上した野依らの報告例もある(特許文献1)。
そこで、本発明者らは、入手容易ではあるものの特許文献2〜4に記載の二価無機スズではなく、ジスタノキサンの形成が容易であると考えられる四価無機スズに着目し、さらにスズ上の電子密度を制御することで触媒活性を、配位子によっては耐水性も向上させることができるのではないかと考え鋭意検討した結果、特定の四価無機スズが高温(例えば200度以上の)下において耐水性を備える高触媒活性かつ低環境負荷触媒であり、これを用いることで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1>
重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られた電子写真トナー用ポリエステルである。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0012】
<2>
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される<1>に記載の電子写真トナー用ポリエステル。
【0013】
【化1】
【0014】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【0015】
【化2】
【0016】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【0017】
<3>
重合触媒として、下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合する工程を含む電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0018】
<4>
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される<3>に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【0019】
【化3】
【0020】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【0021】
【化4】
【0022】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【0023】
<5>
重合触媒として前記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、前記原料モノマーとして多価アルコールと多価カルボン酸化合物とを重合する工程を含む<3>又は<4>に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【0024】
<6>
<1>又は<2>に記載の電子写真トナー用ポリエステルと溶媒とを含む電子写真トナー用ポリエステル組成物。
【0025】
<7>
<3>〜<5>のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナー用ポリエステル組成物を製造する電子写真トナー用ポリエステル組成物の製造方法。
【0026】
<8>
<1>又は<2>に記載の電子写真トナー用ポリエステルを含む電子写真トナー。
【0027】
<9>
<3>〜<5>のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナーを製造する電子写真トナーの製造方法。
【0028】
<10>
下記一般式(1)で示される四価無機スズからなる電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0029】
<11>
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される<10>に記載の電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
【0030】
【化5】
【0031】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【0032】
【化6】
【0033】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を利用した、電子写真トナー用ポリエステル組成物及びその製造方法、並びに、電子写真トナー及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステルの重合に利用される電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例A1のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図2】実施例A2のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図3】実施例A3のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図4】実施例A4のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図5】実施例A5のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図6】比較例A1のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図7】比較例A2のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図8】比較例A3のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図9】比較例A4のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図10】比較例A5のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図11】比較例A6のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図12】比較例A7のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図13】比較例A8のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図14】比較例A9のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図15】比較例A10のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図16】比較例A11のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図17】比較例A12のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
本発明の電子写真トナー用ポリエステル(以下、ポリエステルと略記することがある)は、重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られたものである。
【0038】
本発明のポリエステルは重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズを用いて得られたポリエステルであることから、当該ポリエステルを含む電子写真トナーはカラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れたものとなる。
これは、上述したが、下記一般式(1)で示される四価無機スズが、高温(例えば200度以上の)下において耐水性を備える高触媒活性かつ低環境負荷触媒であると考えられることから、環境負荷を抑えつつ、高温でも高触媒活性を維持したままの状態の重合触媒存在下での合成により、分子量分布の整ったポリエステルが得られるためと考えられるためである。
【0039】
まず、重合触媒としての下記一般式(1)で示される四価無機スズについて説明する。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。
X2は、−OR、又は−OCORを表す。
Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。
nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。
X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0040】
一般式(1)中、X1が表す一価のアニオン性配位子としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、が挙げられる。
【0041】
更に詳しくは、一価のアニオン性配位子としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、が挙げられる。
【0042】
一般式(1)中、X2は−OR、又は−OCORを表すが、当該Rが表すアルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられる。更に詳しくは、当該アルキル基としては、直鎖アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。)が挙げられる。
また、Rが表すアリール基としては、置換又は無置換のアリール基が挙げられる。更に詳しくは、当該アリール基としては炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルが好ましい。
また、Rが表すアルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基が挙げられる。更に詳しくは、当該アルケニル基としてはアルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]が好ましい。
また、Rが表すヘテロ環基としては、(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基が挙げられる。更に詳しくは、当該ヘテロ環基としては、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)が好ましい。
【0043】
一般式(1)中、nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表すが、nは2又は4を表し、mは2又は0を表すことが好ましい。
【0044】
ここで、一般式(1)で示される四価無機スズとしては、
一般式(1)中、X1が、一価のアニオン性配位子としてハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アシル基、を表し、
X2が、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表し、
nが2〜4を表し、mが0〜2を表し、n+m=4である四価無機スズが好ましい。
【0045】
特に、一般式(1)で示される四価無機スズとしては、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択されることが好ましい。これは、下記一般式(2)〜(3)で示される四価無機スズは、電子供与性の配位子を用いてスズ上の電子密度を高め、かつ触媒耐久性を向上させるためにリジッドな配位子を設計した結果、触媒活性が向上すると考えられるためである。
【0046】
【化7】
【0047】
一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。
Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。
Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。
nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。
【0048】
一般式(2)中、X1が表す一価のアニオン性配位子としては、一般式(1)におけるX1が表す一価のアニオン性配位子と同様である。
【0049】
一般式(2)中、Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表すが、当該窒素原子に置換する置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、[アミノ基(アニリノ基を含む)、が挙げられる。更に詳しくは、当該置換基としては、アルキル基(直鎖アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。))、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)が挙げられる。
【0050】
一般式(2)中、Pが表す「結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、Pは炭素数2から30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基を介してOに連結され、Xと共に環を形成するのに必要な原子群である。
更に詳しくは、当該原子群としては、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]が好ましい。これらの組み合わせから例えば、アセチルアセトンなどを形成しても良い。芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。Pにより形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。Pにより形成される芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のRで挙げたものが適用できる。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基及び縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、前述のRとして挙げたものが適用できる。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0051】
一般式(2)中、nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表すが、nは2又は4を表し、mは2又は0を表すことが好ましい。
【0052】
一般式(2)で示される四価無機スズは、下記一般式(4)で示される四価無機スズであってもよい。
【0053】
【化8】
【0054】
一般式(4)中、X、X1、n、mは一般式(2)と同様である。R41、R42、及びR43は互いに連結して環を形成してもよい。
【0055】
一般式(4)中、R41、R42、及びR43は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0056】
更に詳しくは、R41、R42、及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホンアミド、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5,−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。またR41、R42、R43は更に置換基によって置換されていてもよい。
【0057】
一般式(4)中、R41、R42、R43として更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。
【0058】
一般式(4)中、R41、R42、R43が互いに連結して環を形成する場合、当該環は、芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。R41、R42、R43により形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。R41、R42、R43により形成される芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
R41、R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
R41、R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のRで挙げたものが適用できる。
R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基及び縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、前述のRとして挙げたものが適用できる。
R41、R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0059】
ここで、特に、一般式(2)で示される四価無機スズとしては、
一般式(2)中、X1が、一価のアニオン性配位子として、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、を表し、
Xが、酸素原子、又は置換された窒素原子を表し、
Pが、炭素数2から30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基等を介してOに連結され、Xと共に環を形成するのに必要な原子群を表し、
nが2〜4の整数を表し、mが0〜2の整数を表し、n+m=4である四価無機スズが好ましい。
【0060】
【化9】
【0061】
一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。
Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。
P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。
lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。
【0062】
一般式(3)中、X1が表す一価のアニオン性配位子としては、一般式(1)におけるX1が表す一価のアニオン性配位子と同様である。
【0063】
一般式(2)中、Pが表す「結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、一般式(2)におけるPが表す原子群と同様である。
【0064】
一般式(3)中、Qが表す「結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、Pと同様に炭素数2から30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基を介してOに連結され、Xと共に環を形成するのに必要な原子群が挙げられる。ここでPとQは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0065】
一般式(3)中、lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表すが、lは2を示し、mは0を表すことが好ましい。
【0066】
一般式(3)で示される四価無機スズは、下記一般式(5)で示される四価無機スズであってもよい。
【0067】
【化10】
【0068】
一般式(5)中、R41、R42、R43、X、X1、は一般式(4)と同様である。Q、l、mは一般式(3)と同様である。
【0069】
一般式(5)中、Qが表す「結合するN及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、炭素数2〜30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基を介してOに連結され、環を形成するのに必要な原子群が挙げられる。
【0070】
更に詳しくは、当該原子群としては、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]が好ましい。これらの組み合わせから例えば、アセチルアセトンなどを形成しても良い。芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。Qにより形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。Qにより形成される芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のRで挙げたものが適用できる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基及び縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、前述のRとして挙げたものが適用できる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0071】
ここで、特に、一般式(3)で示される四価無機スズとしては、
一般式(3)中、X1が、一価のアニオン性配位子として、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、を表し、
Xが、置換又は無置換の窒素原子を表し、
P及びQが、アルケニル基、芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環等の共役を介してOに連結され、その後炭素数1〜6の連結によりXと共に環を形成するのに必要な原子群を表し、
lが1〜2の整数を表し、mが0〜2の整数を表し、2l+m=4である四価無機スズが好ましい。
【0072】
以下、一般式(1)で示される四価無機スズうち、一般式(2)及び(3)で示される四価無機スズの具体例を示すが、これに限られるわけではない。
なお、具体例中、「Ac」は「アセチル基」、「tBu」は「t−ブチル基」を示す。
【0073】
【化11】
【0074】
また、以下、一般式(1)で示される四価無機スズうち、一般式(2)及び(3)で示される四価無機スズ以外の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
【0075】
【化12】
【0076】
上記具体例のうち、特に、高温(例えば200度以上の)下において耐水性を備える高触媒活性かつ低環境負荷触媒である点から、A−1、A−5、A−8、A−12が好ましい。
【0077】
次に、本発明のポリエステルをその製造方法と共に詳細に説明する。
本発明のポリエステルは、重合触媒として、一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合することで得られる。
具体的には、例えば、一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の重合触媒の存在下、原料モノマーとしてカルボン酸成分とアルコール成分とを、不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気中にて180〜250℃の温度で、必要に応じて減圧下で縮重合することにより得られる。
このポリエステルの製造は、原料モノマーをエステル交換による重縮合反応により分子量を増大させるDMT法、原料モノマーを直接縮合させる直接エステル化法のいずれを採用してもよいが、直接エステル化法を採用することがよい。
また、ポリエステルの製造は、無溶媒下で行ってもよいし、溶媒(例えば水系溶媒)の存在下で行ってもよい。
【0078】
重合触媒の使用量は、原料モノマー100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。一方で、得られるポリエステルにおける重合触媒の含有量も、ポリエステル100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。
なお、重合触媒としては、一般式(1)で示される四価無機スズ以外にも、従来より公知の重合触媒(例えば酸化ジブチル錫等の有機スズ等)を適宜併用してもよい。
【0079】
原料モノマーとしては、例えば、2価以上のアルコール成分として2価以上の多価アルコール)と2価以上のカルボン酸成分として2価以上の多価カルボン酸化合物とが主に挙げられる。なお、原料モノマーとして、少量の1価アルコール及び1価カルボン酸化合物を分子量調整や耐オフセット性向上の目的で、併用してもよい。
【0080】
2価のカルボン酸化合物としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
【0081】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
【0082】
2価の多価アルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1.5〜6)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0083】
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0084】
原料モノマーのなかでも、アルコール成分としては2価以上の2級アルコールが好ましく、カルボン酸成分としては2価以上の芳香族カルボン酸化合物が好ましい。2価以上の2級アルコールとしては、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール等が挙げられ、これらの中ではビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましく、2価以上の芳香族カルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びトリメリット酸が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
【0085】
2価以上の2級アルコール及び芳香族カルボン酸化合物の含有量は、いずれか一方が含有されている場合、アルコール成分又はカルボン酸成分中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%であり、両者が含有されている場合、全原料モノマー中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。2級アルコール及び芳香族カルボン酸化合物は、いずれか一方の使用でも好ましいが、両者が併用されているのがより好ましい。なお、本発明において、2価以上の2級アルコールとは、少なくとも1つの水酸基が第二級炭素に結合している2価以上のアルコールをいう。
【0086】
特に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とテレフタル酸とが併用されている場合は、両化合物に含まれるベンゼン環の共鳴効果により、電荷を安定に存在させることができるため好ましい。ただし、いずれかを原料モノマーとして用いて得られた樹脂を2種類を混合することによっても、このような両者の併用による効果は得られる。
【0087】
ここで、得られるポリエステルの軟化点は、90〜170℃が好ましく、95〜150℃がより好ましい。また、ガラス転移点は、50〜130℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
【0088】
(電子写真トナー用ポリエステル組成物)
本発明の電子写真トナー用ポリエステル組成物(以下、ポリエステル組成物)は、上記本発明のポリエステルを含んで構成される。本発明のポリエステル組成物は、例えば、ポリエステルを含むバルク状の組成物、ポリエステルを溶媒に乳化させた乳化物が挙げられる。
【0089】
ポリエステルを含むバルク状の組成物は、必要に応じて、電子写真トナーの添加物(例えば着色剤や離型剤等)を混練して得られる。バルク状の組成物は、例えば、乾式(例えば混練粉砕法)による電子写真トナーの製造に利用される。
【0090】
ポリエステルが溶媒に乳化された乳化物は、例えば、溶媒(例えば水系溶媒)中でポリエステルを合成し、そのまま乳化分散させて得られたものであってもよいし、得られたポリエステルを有機溶媒に溶解・分散した後、これを水系溶媒に添加して、機械的シェアや超音波などを付与して水系溶媒に乳化・分散させて得られたものであってもよい。乳化物は、例えば、湿式(例えば乳化転相法、乳化凝集法等)による電子写真トナーの製造に利用される。
【0091】
なお、ポリエステルを乳化させる溶媒としては、例えば、水系溶媒が挙げられ、例えば、水、低級アルコ−ル(メタノ−ル、エタノ−ル、ブタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、酢酸エチル、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。溶媒としては、水が最も好ましい。
【0092】
本発明のポリエステル組成物において、ポリエステルの含有量は、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。
【0093】
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステル以外の他の樹脂を含んでいてもよく、他の樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂等の付加重合系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0094】
なお、本発明のポリエステル組成物において、ポリエステルは、他の樹脂との混合によりポリエステル組成物中に含有されていてもよく、他の樹脂と部分的に化学結合したハイブリッド樹脂の樹脂成分として含有されていてもよい。このハイブリッド樹脂は、2種以上の樹脂を原料として得られたものであっても、1種の樹脂と他種の樹脂の原料モノマーから得られたものであっても、さらに2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものであってもよいが、効率よくハイブリッド樹脂を得るためには、2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものが好ましい。
【0095】
(電子写真トナー)
本発明の電子写真トナー(以下、トナーと略記することがある)は、結着樹脂として上記本発明のポリエステルを含んで構成される。
【0096】
本発明のトナーには、上記本発明のポリエステル以外に、結着樹脂として他の樹脂(他の樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂等の付加重合系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等)を含んでいてもよい。
【0097】
本発明のトナーには、結着樹脂以外に、その他添加剤(例えば着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等)が含まれていてもよい。
【0098】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられる。着色剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0099】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。
本発明のトナーの帯電性は正帯電性及び負帯電性のいずれであってもよく、正帯電性荷電制御剤と負帯電性荷電制御剤とが併用されていてもよい。
【0100】
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、アルコール系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して含有されていてもよい。
【0101】
本発明のトナーは、その表面に、さらに、外添剤(疎水性シリカ等の流動性向上剤等)が外添されていてもよい。
【0102】
本発明のトナーの製造方法は、混練粉砕法、乳化転相法、乳化凝集法、等の従来より公知のいずれの方法でもよい。
例えば、混練粉砕法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、着色剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して、トナーを製造することができる。
乳化転相法では、結着樹脂、着色剤等を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等により乳化(エマルジョン化)し、次いで分離、分級して、トナーを製造することができる。
乳化凝集法では、結着樹脂を乳化・分散させた乳化物(樹脂粒子分散液)、及び溶媒に着色剤を分散させた着色剤粒子分散液等を混合し、結着樹脂(樹脂粒子)及び着色剤等を凝集させた後、当該凝集粒子を加熱することで熱融合させて、トナーを製造することができる。
【0103】
なお、本発明のトナーの体積平均粒子径は、3〜15μmが好ましい。
【0104】
本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として使用し、磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明につき、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0106】
[実施例A]
(実施例A1〜A5、比較例A1〜A12)
下記スキーム1に従って、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(以下、BPA−POと略)200g(581mmol)とテレフタル酸(TPA)82g(494mmol)に、下記表1に従った触媒(4mmol)を加え、窒素雰囲気下、反応系を1時間かけて室温から230度まで上昇させた後、3時間の時点での平均重量分子量(及びその際のピークトップ)の値をそれぞれ求めた、これは触媒の活性を示す指標となる。さらに経時で反応を追跡し、触媒の耐久性を1から5までの5段階でランク付けした、その際反応速度の低い触媒は加温するなどして対応している。結果を、環境負荷の高・低・無と併せて表1に記載した。
ここで、触媒の耐久性のランク基準は以下の通りである。
・1:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが1000を超えない触媒
・2:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが2000を超えない触媒
・3:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが3000を超えない触媒
・4:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが4000を超えない触媒
・5:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが5000を超えない触媒
また、環境負荷の評価基準は以下の通りである。
・高:炭素−スズ結合を有する有機スズ触媒
・低:炭素−スズ結合を有さない無機スズ触媒
・無:上記以外の触媒
また、各例のポリエステル製造における反応時間(h)と重量平均分子量(Mw)の関係を図1〜図17にそれぞれ示す。
【0107】
【化13】
【0108】
以下、各例に用いる各触媒の調整例を示す。なお、調整例を示さない触媒は市販のものを用いた。
【0109】
−調製例1−
(C17H35CO2)4Snを文献(Wakashima, I. et. al., Chem. Lett., 1985., 395.)記載の方法で調製した。
【0110】
−調整例2−
例示触媒A−1を文献(.Anorg. Allg. Chem., 1992, 607, 177-182.)記載の方法で調整した。具体的には、下記スキーム2に従って、市販のSn(acac)2Cl2(東京化成社製)と2等量のo−アミノフェノールをトリエチルアミン存在下、メタノール中で加熱還流し、冷却した。析出した固体を濾過してA−1を得た。
【0111】
【化14】
【0112】
−調整例3−
下記スキーム3に従って、Sn(OH)4を文献(Arata, K. et. al., Chem. Lett., 1990., 1737.)記載の方法で調製した。
【0113】
【化15】
【0114】
【表1】
【0115】
上記反応結果から明らかであるように、一般的なPET重合触媒であるTi(比較例A5、A6)、Ge(比較例A7)のいずれも低活性であった。さらに非特許文献記載の高活性エステル化触媒であるZr、Sc、ボロン酸なども低活性であった。比較例A1に記載の有機スズがもっとも高活性であるが、高環境負荷であるために使用が難しい。もっとも現実的なものとして比較例A2に記載の二価無機スズが有望であるが、未だ触媒活性の観点で見劣りがする。
【0116】
これに対して本発明の一般式(1)で示される四価無機スズは配位子により活性・耐久性とも差が出るものの実施例A4、A5のように活性・耐久性ともに二価無機スズを凌ぐ値を示した。さらに環境負荷も二価無機スズと同様に低く、総合的に判断すると実用的触媒と言えることがわかる。
【0117】
[実施例B]
(ポリエステルの製造例)
−ポリエステル1の製造例−
実施例A5の上記触媒(A−12)5.0gを加えた、BPA−PO158g及びBPA−EO84gを、窒素雰囲気下、230℃で4時間かけ反応させた後、250℃に昇温して3時間反応させ、さらに60Torrにて1時間反応を行い、ポリエステル樹脂組成物1を得た。重量平均分子量170000、数平均分子量8600、分子量分布Mw/Mnは2.0である。ガラス転移温度は73℃であった。
なお、分子量の測定は、ポリエステルをTHFに溶解させ、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行った。分子量はポリスチレン換算で計算した。以下、同様である。
また。ガラス転移点は、示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定した際の、最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分から、ピークの頂点まで最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とする。以下、同様である。
【0118】
−ポリエステル2の製造例−
上記触媒(A−5)3.5gを加えた、BPA−PO203g、BPA−EO187g、テレフタル酸118g、及びドデセニルコハク酸94.6gを、窒素雰囲気下、230℃で7時間反応させた後、無水トリメリット酸16gを投入し、2時間反応させて、ポリエステル樹脂組成物2を得た。重量平均分子量24700、数平均分子量7400、分子量分布Mw/Mnは3.3である。ガラス転移温度は59.3℃であった。
【0119】
−ポリエステル3の製造例−
上記触媒(A−1)4.0gを加えた、BPA−PO333g、BPA−EO76.6g、テレフタル酸100g、及びドデセニルコハク酸64.5gを、窒素雰囲気下、230℃で4時間反応させた後、60Torrで1時間減圧した後、フマル酸42.1g及びハイドロキノン0.3gを投入し、3.5時間反応させて、ポリエステル樹脂組成物3を得た。重量平均分子量39500、数平均分子量6000、分子量分布Mw/Mnは6.6である。ガラス転移温度は59.8℃であった。
【0120】
−比較ポリエステル1の製造例−
触媒を2−エチルヘキサン酸スズ1.6gに替えた以外はポリエステル1の製造例と同様にしてポリエステル4を得た。重量平均分子量150000、数平均分子量7000、分子量分布Mw/Mnは2.1である。ガラス転移温度は72.5℃であった。
【0121】
−比較ポリエステル2の製造例−
触媒を2−エチルヘキサン酸スズ3.4gに替えた以外はポリエステル2の製造例と同様にしてポリエステル樹脂組成物5を得た。重量平均分子量23500、数平均分子量7000、分子量分布Mw/Mnは3.4である。ガラス転移温度は59.3℃であった。
【0122】
−比較リエステル3の製造例−
触媒を2−エチルヘキサン酸スズ3.3gに替えた以外はポリエステル3の製造例と同様にしてポリエステル樹脂組成物5を得た。重量平均分子量35000、数平均分子量5000、分子量分布Mw/Mnは7.0である。ガラス転移温度は59.1℃であった。
【0123】
(実施例B1)
−トナーの作製例−
・ポリエステル1: 100.0重量部
・下記構造式(1)を有する銅フタロシアニン系顔料(2置換体)4.0重量部
・3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム錯体 4.0重量部
【0124】
【化16】
【0125】
上記材料を十分ヘンシェルミキサーにより予備混合を行い、2軸押出し混練機で溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で40μm以下の粒径に微粉砕した。更に得られた微粉砕物を分級して、粒度分布における重量平均径が8.0μmになるように選択して分級品(シアンカラートナー)を得、流動性向上剤としてヘキサメチルジシランザンで処理した疎水性シリカ微粉末を分級品100重量部に0.8重量部外添添加しかつ酸化アルミ0.5重量部を外添添加してシアンカラートナーとした。
【0126】
このシアンカラートナー5重量部と、スチレン−メタクリル酸メチル(共重合体重量比65:35)を約0.35重量%コーティングしたCu−Zn−Fe系磁性フェライトキャリア95重量部とを混合し現像剤とした。現像剤中のトナー濃度は5重量%である。
【0127】
(評価)
−複写試験−
OPC感光ドラムを有したカラーレーザ電子写真複写機を用いて複写試験を行った。この電子写真複写機の定着装置は、芯金上に1mmの厚みを有したHTVシリコーンゴム層の単層を有する定着ローラと、表面が3mmのHTVシリコーンゴムを用いた加圧ローラーと、定着ローラに接触配置され、シリコーンオイルが含浸されているウェブと、が具備されたものである。
また、複写スピードは7枚(A4サイズ紙)/分、定着温度は150℃、シリコーンオイル含浸ウェブは1mm/10枚(A4サイズ紙)のスピードで移動させ、シリコーンオイルの含浸量は定着されたA4サイズ紙に約20mg/枚付着するように調整した。
【0128】
そして、面積比率5%の画像を、複写機内での搬送、現像剤濃度検知も良好で安定した画像濃度で、カブリのなくオリジナルを忠実に再現するトナー定着画像が得られる枚数(繰り返し複写枚数)を調べた。なお、繰り返し複写枚数は、9万枚まで行うこととした。
また、この繰り返し複写枚数を調べた後、定着ローラーへトナーが付着してるか否かを調べた。
【0129】
−高温オフセットトナー量−
上記複写試験に続き、電子写真複写機における定着装置の定着ローラを新品に交換し、シリコーンオイル含浸ウェブの駆動を止めた状態で面積率20%の画像を5000枚の繰り返し複写を行って、高温オフセットトナー量の調べた。
この高温オフセットトナー量は、ウェブに付着したトナーの付着量を測定することで求めた。そして、当該付着量は、定着ローラのトナー付着部分をマクベス反射濃度計で測定した値とした。
なお、高温オフセットトナー量が多ければ、定着ローラへのトナー付着部分のウェブの反射濃度値が高くなり、トナーの付着量が少なければ濃度が低くなる。
【0130】
−トナー帯電量−
低温低湿(15℃10%RH)、高温高湿(32.5℃85%RH)の各環境で、トナーの帯電量測定を行った。
【0131】
−画像グロス値−
画像表面のグロス(光沢度)を測定した。画像グロス値が高いほど画像表面か平滑でつやのある彩度の高いカラー品質と判断され、逆に画像グロス値が低いと、くすんだ彩度のとぼしい、画像表面があらわれたものと判断される。
【0132】
−耐オフセット性−
上記各評価から、以下の基準で耐オフセット性につき評価した。
○:マクベス反射濃度計で測定した値が0.5未満
△:マクベス反射濃度計で測定した値が1.0未満
×:マクベス反射濃度計で測定した値が1.0以上
【0133】
−トナー帯電特性−
上記各評価から、以下の基準でトナー帯電特性につき評価した。
○:低温低湿での帯電量/高温高湿での帯電量、の比が1.5未満
△:低温低湿での帯電量/高温高湿での帯電量、の比が1.7未満
×:低温低湿での帯電量/高温高湿での帯電量、の比が2.0以上
【0134】
−画像特性−
上記各評価から、以下の基準でトナー帯電特性につき評価した。
○:画像グロス値が15以上
△:画像グロス値が10未満
×:画像グロス値が5未満
【0135】
(実施例B2)
・ポリエステル2: 100.0重量部
・C.I.ピグメントレッド122: 5.0重量部
・3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム 4.0重量部
【0136】
上記材料で、実施例B1と同様にしてマゼンタトナーを得て、次いで現像剤を調製し、実施例Bと同様にして評価を行った。
【0137】
(実施例B3)
ポリエステル3を用いた以外は、実施例B1と同様にしてトナーを得て、次いで現像剤を調製し、実施例B1と同様にして評価を行った。
【0138】
(実施例B4)
ポリエステル1を用い、更に着色剤をC.I.ピグメントイエロー17(3.5重量部)に変えて実施例B1と同様にして調製したイエロートナー、実施例B2のマゼンタトナー及び実施例B1のシアントナーの3原色の各カラートナーを用いて、実施例B1と同様にして複写試験(但し、画像面積率35%とした)を行ったところ、カラー電子写真複写機を用い、フルカラーによる繰り返し複写を行った。8万枚以上の多数枚耐久性が認められた。定着ローラーへのトナー付着は実質的に認められなかった。
8万枚後のフルカラー複写画像においても、混色性の優れた彩度の高いものであった。3色重ね合わせによるベタ黒のグロス値は23%であった。
【0139】
(比較例B1〜B3)
比較ポリエステル1〜3をそれぞれ用いた以外は、実施例B1と同様にしてトナーを得て、次いで現像剤を調製し、実施例B1と同様にして評価を行った。
【0140】
以下、上記実施例B1〜B3、比較例B1〜B2の評価結果を表2に一覧にして示す。
【0141】
【表2】
【0142】
上記結果から、本実施例のトナーは、耐オフセット性、帯電特性、画像特性が共に優れた結果が得られることがわかる。
これらから、本発明のトナーは、分子量分布の狭い特殊なポリエステル樹脂を結着樹脂として使用することにより、熱定着時における混色性に優れ、なおかつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れるカラートナーを提供できることがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真トナーの結着樹脂として利用される電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法に関する。
また、本発明は、電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を利用した電子写真トナー用ポリエステル組成物及びその製造方法、並びに、電子写真トナー及びその製造方法に関する。
また、本発明は、電子写真トナー用ポリエステルの重合に利用される電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルとして代表的なPETなど高分子量ポリマーを重合する場合、テレフタル酸(以下、TPAと略)とメタノールなどのアルコールと一旦エステル化しておき、その後エチレングリコール(以下、EGと略)などとエステル交換による重縮合反応により分子量を増大させるDMT法と、TPAとEGを直接縮合させる直接エステル化法が存在する。
前者において一段階のエステル化に用いる触媒としてはZn2+、Co2+,Mn2+の酢酸塩が挙げられ、二段階目の重縮合反応においてはSb3+、Ge4+、Ti4+を触媒として用いることが一般的である。
後者の方法は、前者同様Sb3+,Ge4+,Ti4+を触媒として用いることが知られている。
【0003】
これに対して電子写真トナーなどに用いられる平均重量分子量10万以下の低分子量ポリエステルを重縮合する際は、分子量を抑制と経済性の観点から直接エステル化法が好ましい。使用される高活性触媒な有機スズ(Bu2SnO等)が古くから公知であり、またその触媒メカニズムについても解明が進んでいる(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。
また、高活性触媒としてはエステル化触媒も知られている(非特許文献2〜4参照)
【0004】
一方、古くから公知である有機スズは環境面の問題から近年使用が困難になっている。このため、例えば、高活性な有機スズに対して、環境負荷の低い二価の無機スズ(例えば(C7H15CO2)2Sn等)が見出されてきている(例えば、特許文献2〜4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−285642号公報
【特許文献2】特許第3597835号明細書
【特許文献3】特許第4202332号明細書
【特許文献4】特開2005−215271号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chem. Rev., 1993, 93, 1449.
【非特許文献2】Adv. Synth. Catal., 2004, 346, 1275.
【非特許文献3】J.Org.Chem., 1996, 61, 4196.
【非特許文献4】Macromolecules, 2000, 33, 3511.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、低分子量ポリエステルを得るために、PET合成の際に使用され、低環境負荷が期待される、Ge4+,Ti4+触媒(非特許文献1及び特許文献1参照)を本発明者が実際に検討した結果、高温における水の影響で触媒活性が著しく低下し、所望の分子量のポリエステルを得ることができなかった。これはPET合成にはEGを多量に用いるため水による触媒劣化の影響が低いのに対して、この低分子量ポリエステル合成は無溶媒中で行うために縮合の際に生成する水の影響で触媒劣化が著しいためであると考えている。
さらに、非特許文献3〜4に挙げられるようなエステル化触媒や、特許文献2〜4に挙げられてるような二価の無機スズ(例えば(C7H15CO2)2Sn等)も芳しい結果を与えなかった。
【0008】
一方で、このような耐水性が悪く触媒活性が低下してしまう触媒により得られたポリエステルを電子写真トナーの結着樹脂として用いると、得られる電子写真トナーは、カラートナーにおける混色性と耐オフセット性を両立することが困難であることが分かってきた。(特許番号2675948)
【0009】
そこで、本発明の課題は、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を提供することである。
また、他の本発明の課題は、上記電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を利用した、電子写真トナー用ポリエステル組成物及びその製造方法、並びに、電子写真トナー及びその製造方法を提供することである。
また、他の本発明の課題は、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステルの重合に利用される電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
スズには二価と四価が知られており、どちらも比較的安定であると謂われている。スズ(II)塩の水溶液及び非水溶液は有用な還元剤sであり、自発的かつ迅速に空気酸化されスズ(IV)塩に変化することが知られている。また四価の有機スズはエステル化能が高く、その触媒メカニズムが大寺らによって詳細に検討されている(非特許文献1)。大寺らによるとジスタノキサンの形成とスズ上の電子密度の影響が大きそうである。またこれとは違った形式ではあるがスズ上の電子密度を向上させることにより反応活性が著しく向上した野依らの報告例もある(特許文献1)。
そこで、本発明者らは、入手容易ではあるものの特許文献2〜4に記載の二価無機スズではなく、ジスタノキサンの形成が容易であると考えられる四価無機スズに着目し、さらにスズ上の電子密度を制御することで触媒活性を、配位子によっては耐水性も向上させることができるのではないかと考え鋭意検討した結果、特定の四価無機スズが高温(例えば200度以上の)下において耐水性を備える高触媒活性かつ低環境負荷触媒であり、これを用いることで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1>
重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られた電子写真トナー用ポリエステルである。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0012】
<2>
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される<1>に記載の電子写真トナー用ポリエステル。
【0013】
【化1】
【0014】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【0015】
【化2】
【0016】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【0017】
<3>
重合触媒として、下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合する工程を含む電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0018】
<4>
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される<3>に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【0019】
【化3】
【0020】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【0021】
【化4】
【0022】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【0023】
<5>
重合触媒として前記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、前記原料モノマーとして多価アルコールと多価カルボン酸化合物とを重合する工程を含む<3>又は<4>に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【0024】
<6>
<1>又は<2>に記載の電子写真トナー用ポリエステルと溶媒とを含む電子写真トナー用ポリエステル組成物。
【0025】
<7>
<3>〜<5>のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナー用ポリエステル組成物を製造する電子写真トナー用ポリエステル組成物の製造方法。
【0026】
<8>
<1>又は<2>に記載の電子写真トナー用ポリエステルを含む電子写真トナー。
【0027】
<9>
<3>〜<5>のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナーを製造する電子写真トナーの製造方法。
【0028】
<10>
下記一般式(1)で示される四価無機スズからなる電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0029】
<11>
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される<10>に記載の電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
【0030】
【化5】
【0031】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【0032】
【化6】
【0033】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記電子写真トナー用ポリエステル及びその製造方法を利用した、電子写真トナー用ポリエステル組成物及びその製造方法、並びに、電子写真トナー及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、カラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れた電子写真トナーが得られる電子写真トナー用ポリエステルの重合に利用される電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例A1のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図2】実施例A2のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図3】実施例A3のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図4】実施例A4のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図5】実施例A5のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図6】比較例A1のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図7】比較例A2のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図8】比較例A3のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図9】比較例A4のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図10】比較例A5のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図11】比較例A6のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図12】比較例A7のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図13】比較例A8のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図14】比較例A9のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図15】比較例A10のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図16】比較例A11のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【図17】比較例A12のポリエステル製造時における反応時間と重量平均分子量の関係を図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0037】
本発明の電子写真トナー用ポリエステル(以下、ポリエステルと略記することがある)は、重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られたものである。
【0038】
本発明のポリエステルは重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズを用いて得られたポリエステルであることから、当該ポリエステルを含む電子写真トナーはカラー画像の色再現性が高く、かつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れたものとなる。
これは、上述したが、下記一般式(1)で示される四価無機スズが、高温(例えば200度以上の)下において耐水性を備える高触媒活性かつ低環境負荷触媒であると考えられることから、環境負荷を抑えつつ、高温でも高触媒活性を維持したままの状態の重合触媒存在下での合成により、分子量分布の整ったポリエステルが得られるためと考えられるためである。
【0039】
まず、重合触媒としての下記一般式(1)で示される四価無機スズについて説明する。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。
X2は、−OR、又は−OCORを表す。
Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。
nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。
X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0040】
一般式(1)中、X1が表す一価のアニオン性配位子としては、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、が挙げられる。
【0041】
更に詳しくは、一価のアニオン性配位子としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、が挙げられる。
【0042】
一般式(1)中、X2は−OR、又は−OCORを表すが、当該Rが表すアルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられる。更に詳しくは、当該アルキル基としては、直鎖アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。)が挙げられる。
また、Rが表すアリール基としては、置換又は無置換のアリール基が挙げられる。更に詳しくは、当該アリール基としては炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルが好ましい。
また、Rが表すアルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基が挙げられる。更に詳しくは、当該アルケニル基としてはアルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]が好ましい。
また、Rが表すヘテロ環基としては、(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基が挙げられる。更に詳しくは、当該ヘテロ環基としては、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)が好ましい。
【0043】
一般式(1)中、nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表すが、nは2又は4を表し、mは2又は0を表すことが好ましい。
【0044】
ここで、一般式(1)で示される四価無機スズとしては、
一般式(1)中、X1が、一価のアニオン性配位子としてハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アシル基、を表し、
X2が、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表し、
nが2〜4を表し、mが0〜2を表し、n+m=4である四価無機スズが好ましい。
【0045】
特に、一般式(1)で示される四価無機スズとしては、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択されることが好ましい。これは、下記一般式(2)〜(3)で示される四価無機スズは、電子供与性の配位子を用いてスズ上の電子密度を高め、かつ触媒耐久性を向上させるためにリジッドな配位子を設計した結果、触媒活性が向上すると考えられるためである。
【0046】
【化7】
【0047】
一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。
Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。
Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。
nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。
【0048】
一般式(2)中、X1が表す一価のアニオン性配位子としては、一般式(1)におけるX1が表す一価のアニオン性配位子と同様である。
【0049】
一般式(2)中、Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表すが、当該窒素原子に置換する置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、[アミノ基(アニリノ基を含む)、が挙げられる。更に詳しくは、当該置換基としては、アルキル基(直鎖アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。))、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)が挙げられる。
【0050】
一般式(2)中、Pが表す「結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、Pは炭素数2から30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基を介してOに連結され、Xと共に環を形成するのに必要な原子群である。
更に詳しくは、当該原子群としては、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]が好ましい。これらの組み合わせから例えば、アセチルアセトンなどを形成しても良い。芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。Pにより形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。Pにより形成される芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のRで挙げたものが適用できる。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基及び縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、前述のRとして挙げたものが適用できる。
Pにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0051】
一般式(2)中、nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表すが、nは2又は4を表し、mは2又は0を表すことが好ましい。
【0052】
一般式(2)で示される四価無機スズは、下記一般式(4)で示される四価無機スズであってもよい。
【0053】
【化8】
【0054】
一般式(4)中、X、X1、n、mは一般式(2)と同様である。R41、R42、及びR43は互いに連結して環を形成してもよい。
【0055】
一般式(4)中、R41、R42、及びR43は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0056】
更に詳しくは、R41、R42、及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホンアミド、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5,−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。またR41、R42、R43は更に置換基によって置換されていてもよい。
【0057】
一般式(4)中、R41、R42、R43として更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。
【0058】
一般式(4)中、R41、R42、R43が互いに連結して環を形成する場合、当該環は、芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。R41、R42、R43により形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。R41、R42、R43により形成される芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
R41、R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
R41、R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のRで挙げたものが適用できる。
R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基及び縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、前述のRとして挙げたものが適用できる。
R41、R42、R43により形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0059】
ここで、特に、一般式(2)で示される四価無機スズとしては、
一般式(2)中、X1が、一価のアニオン性配位子として、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、を表し、
Xが、酸素原子、又は置換された窒素原子を表し、
Pが、炭素数2から30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基等を介してOに連結され、Xと共に環を形成するのに必要な原子群を表し、
nが2〜4の整数を表し、mが0〜2の整数を表し、n+m=4である四価無機スズが好ましい。
【0060】
【化9】
【0061】
一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。
Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。
P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。
lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。
【0062】
一般式(3)中、X1が表す一価のアニオン性配位子としては、一般式(1)におけるX1が表す一価のアニオン性配位子と同様である。
【0063】
一般式(2)中、Pが表す「結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、一般式(2)におけるPが表す原子群と同様である。
【0064】
一般式(3)中、Qが表す「結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、Pと同様に炭素数2から30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基を介してOに連結され、Xと共に環を形成するのに必要な原子群が挙げられる。ここでPとQは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0065】
一般式(3)中、lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表すが、lは2を示し、mは0を表すことが好ましい。
【0066】
一般式(3)で示される四価無機スズは、下記一般式(5)で示される四価無機スズであってもよい。
【0067】
【化10】
【0068】
一般式(5)中、R41、R42、R43、X、X1、は一般式(4)と同様である。Q、l、mは一般式(3)と同様である。
【0069】
一般式(5)中、Qが表す「結合するN及びOと共に環を形成するのに必要な原子群」としては、炭素数2〜30のアルケニル基、芳香族炭化水素環基又は芳香族へテロ環基を介してOに連結され、環を形成するのに必要な原子群が挙げられる。
【0070】
更に詳しくは、当該原子群としては、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]が好ましい。これらの組み合わせから例えば、アセチルアセトンなどを形成しても良い。芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環としては4〜10員環が好ましく、5〜7員環がより好ましく、5又は6員環がさらに好ましく、6員環が特に好ましい。Qにより形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子は特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、セレン、ケイ素、ゲルマニウム又はリンが好ましく、窒素、酸素又は硫黄がさらに好ましく、窒素が特に好ましい。Qにより形成される芳香族ヘテロ環ひとつに含有されるヘテロ原子数は特に限定されないが、1〜3が好ましい。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の具体例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述のRで挙げたものが適用できる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、縮合する環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。上記の置換基及び縮合環は、さらに置換基を有していてもよく、さらに他の環と縮合していてもよい。置換基としては、前述のRとして挙げたものが適用できる。
Qにより形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、フラン環、チオフェン環であり、より好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チオフェン環であり、特に好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0071】
ここで、特に、一般式(3)で示される四価無機スズとしては、
一般式(3)中、X1が、一価のアニオン性配位子として、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、を表し、
Xが、置換又は無置換の窒素原子を表し、
P及びQが、アルケニル基、芳香族炭化水素環又は芳香族へテロ環等の共役を介してOに連結され、その後炭素数1〜6の連結によりXと共に環を形成するのに必要な原子群を表し、
lが1〜2の整数を表し、mが0〜2の整数を表し、2l+m=4である四価無機スズが好ましい。
【0072】
以下、一般式(1)で示される四価無機スズうち、一般式(2)及び(3)で示される四価無機スズの具体例を示すが、これに限られるわけではない。
なお、具体例中、「Ac」は「アセチル基」、「tBu」は「t−ブチル基」を示す。
【0073】
【化11】
【0074】
また、以下、一般式(1)で示される四価無機スズうち、一般式(2)及び(3)で示される四価無機スズ以外の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
【0075】
【化12】
【0076】
上記具体例のうち、特に、高温(例えば200度以上の)下において耐水性を備える高触媒活性かつ低環境負荷触媒である点から、A−1、A−5、A−8、A−12が好ましい。
【0077】
次に、本発明のポリエステルをその製造方法と共に詳細に説明する。
本発明のポリエステルは、重合触媒として、一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合することで得られる。
具体的には、例えば、一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の重合触媒の存在下、原料モノマーとしてカルボン酸成分とアルコール成分とを、不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気中にて180〜250℃の温度で、必要に応じて減圧下で縮重合することにより得られる。
このポリエステルの製造は、原料モノマーをエステル交換による重縮合反応により分子量を増大させるDMT法、原料モノマーを直接縮合させる直接エステル化法のいずれを採用してもよいが、直接エステル化法を採用することがよい。
また、ポリエステルの製造は、無溶媒下で行ってもよいし、溶媒(例えば水系溶媒)の存在下で行ってもよい。
【0078】
重合触媒の使用量は、原料モノマー100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。一方で、得られるポリエステルにおける重合触媒の含有量も、ポリエステル100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。
なお、重合触媒としては、一般式(1)で示される四価無機スズ以外にも、従来より公知の重合触媒(例えば酸化ジブチル錫等の有機スズ等)を適宜併用してもよい。
【0079】
原料モノマーとしては、例えば、2価以上のアルコール成分として2価以上の多価アルコール)と2価以上のカルボン酸成分として2価以上の多価カルボン酸化合物とが主に挙げられる。なお、原料モノマーとして、少量の1価アルコール及び1価カルボン酸化合物を分子量調整や耐オフセット性向上の目的で、併用してもよい。
【0080】
2価のカルボン酸化合物としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
【0081】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体が挙げられる。
【0082】
2価の多価アルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1.5〜6)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0083】
3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0084】
原料モノマーのなかでも、アルコール成分としては2価以上の2級アルコールが好ましく、カルボン酸成分としては2価以上の芳香族カルボン酸化合物が好ましい。2価以上の2級アルコールとしては、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセロール等が挙げられ、これらの中ではビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましく、2価以上の芳香族カルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びトリメリット酸が好ましく、テレフタル酸及びトリメリット酸がより好ましい。
【0085】
2価以上の2級アルコール及び芳香族カルボン酸化合物の含有量は、いずれか一方が含有されている場合、アルコール成分又はカルボン酸成分中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%であり、両者が含有されている場合、全原料モノマー中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。2級アルコール及び芳香族カルボン酸化合物は、いずれか一方の使用でも好ましいが、両者が併用されているのがより好ましい。なお、本発明において、2価以上の2級アルコールとは、少なくとも1つの水酸基が第二級炭素に結合している2価以上のアルコールをいう。
【0086】
特に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とテレフタル酸とが併用されている場合は、両化合物に含まれるベンゼン環の共鳴効果により、電荷を安定に存在させることができるため好ましい。ただし、いずれかを原料モノマーとして用いて得られた樹脂を2種類を混合することによっても、このような両者の併用による効果は得られる。
【0087】
ここで、得られるポリエステルの軟化点は、90〜170℃が好ましく、95〜150℃がより好ましい。また、ガラス転移点は、50〜130℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
【0088】
(電子写真トナー用ポリエステル組成物)
本発明の電子写真トナー用ポリエステル組成物(以下、ポリエステル組成物)は、上記本発明のポリエステルを含んで構成される。本発明のポリエステル組成物は、例えば、ポリエステルを含むバルク状の組成物、ポリエステルを溶媒に乳化させた乳化物が挙げられる。
【0089】
ポリエステルを含むバルク状の組成物は、必要に応じて、電子写真トナーの添加物(例えば着色剤や離型剤等)を混練して得られる。バルク状の組成物は、例えば、乾式(例えば混練粉砕法)による電子写真トナーの製造に利用される。
【0090】
ポリエステルが溶媒に乳化された乳化物は、例えば、溶媒(例えば水系溶媒)中でポリエステルを合成し、そのまま乳化分散させて得られたものであってもよいし、得られたポリエステルを有機溶媒に溶解・分散した後、これを水系溶媒に添加して、機械的シェアや超音波などを付与して水系溶媒に乳化・分散させて得られたものであってもよい。乳化物は、例えば、湿式(例えば乳化転相法、乳化凝集法等)による電子写真トナーの製造に利用される。
【0091】
なお、ポリエステルを乳化させる溶媒としては、例えば、水系溶媒が挙げられ、例えば、水、低級アルコ−ル(メタノ−ル、エタノ−ル、ブタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、酢酸エチル、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。溶媒としては、水が最も好ましい。
【0092】
本発明のポリエステル組成物において、ポリエステルの含有量は、50〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。
【0093】
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステル以外の他の樹脂を含んでいてもよく、他の樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂等の付加重合系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0094】
なお、本発明のポリエステル組成物において、ポリエステルは、他の樹脂との混合によりポリエステル組成物中に含有されていてもよく、他の樹脂と部分的に化学結合したハイブリッド樹脂の樹脂成分として含有されていてもよい。このハイブリッド樹脂は、2種以上の樹脂を原料として得られたものであっても、1種の樹脂と他種の樹脂の原料モノマーから得られたものであっても、さらに2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものであってもよいが、効率よくハイブリッド樹脂を得るためには、2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものが好ましい。
【0095】
(電子写真トナー)
本発明の電子写真トナー(以下、トナーと略記することがある)は、結着樹脂として上記本発明のポリエステルを含んで構成される。
【0096】
本発明のトナーには、上記本発明のポリエステル以外に、結着樹脂として他の樹脂(他の樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂等の付加重合系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等)を含んでいてもよい。
【0097】
本発明のトナーには、結着樹脂以外に、その他添加剤(例えば着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等)が含まれていてもよい。
【0098】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられる。着色剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0099】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。
本発明のトナーの帯電性は正帯電性及び負帯電性のいずれであってもよく、正帯電性荷電制御剤と負帯電性荷電制御剤とが併用されていてもよい。
【0100】
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、アルコール系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して含有されていてもよい。
【0101】
本発明のトナーは、その表面に、さらに、外添剤(疎水性シリカ等の流動性向上剤等)が外添されていてもよい。
【0102】
本発明のトナーの製造方法は、混練粉砕法、乳化転相法、乳化凝集法、等の従来より公知のいずれの方法でもよい。
例えば、混練粉砕法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、着色剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して、トナーを製造することができる。
乳化転相法では、結着樹脂、着色剤等を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等により乳化(エマルジョン化)し、次いで分離、分級して、トナーを製造することができる。
乳化凝集法では、結着樹脂を乳化・分散させた乳化物(樹脂粒子分散液)、及び溶媒に着色剤を分散させた着色剤粒子分散液等を混合し、結着樹脂(樹脂粒子)及び着色剤等を凝集させた後、当該凝集粒子を加熱することで熱融合させて、トナーを製造することができる。
【0103】
なお、本発明のトナーの体積平均粒子径は、3〜15μmが好ましい。
【0104】
本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として使用し、磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明につき、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0106】
[実施例A]
(実施例A1〜A5、比較例A1〜A12)
下記スキーム1に従って、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(以下、BPA−POと略)200g(581mmol)とテレフタル酸(TPA)82g(494mmol)に、下記表1に従った触媒(4mmol)を加え、窒素雰囲気下、反応系を1時間かけて室温から230度まで上昇させた後、3時間の時点での平均重量分子量(及びその際のピークトップ)の値をそれぞれ求めた、これは触媒の活性を示す指標となる。さらに経時で反応を追跡し、触媒の耐久性を1から5までの5段階でランク付けした、その際反応速度の低い触媒は加温するなどして対応している。結果を、環境負荷の高・低・無と併せて表1に記載した。
ここで、触媒の耐久性のランク基準は以下の通りである。
・1:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが1000を超えない触媒
・2:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが2000を超えない触媒
・3:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが3000を超えない触媒
・4:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが4000を超えない触媒
・5:230℃以上の高温・長時間の加熱でもMwが5000を超えない触媒
また、環境負荷の評価基準は以下の通りである。
・高:炭素−スズ結合を有する有機スズ触媒
・低:炭素−スズ結合を有さない無機スズ触媒
・無:上記以外の触媒
また、各例のポリエステル製造における反応時間(h)と重量平均分子量(Mw)の関係を図1〜図17にそれぞれ示す。
【0107】
【化13】
【0108】
以下、各例に用いる各触媒の調整例を示す。なお、調整例を示さない触媒は市販のものを用いた。
【0109】
−調製例1−
(C17H35CO2)4Snを文献(Wakashima, I. et. al., Chem. Lett., 1985., 395.)記載の方法で調製した。
【0110】
−調整例2−
例示触媒A−1を文献(.Anorg. Allg. Chem., 1992, 607, 177-182.)記載の方法で調整した。具体的には、下記スキーム2に従って、市販のSn(acac)2Cl2(東京化成社製)と2等量のo−アミノフェノールをトリエチルアミン存在下、メタノール中で加熱還流し、冷却した。析出した固体を濾過してA−1を得た。
【0111】
【化14】
【0112】
−調整例3−
下記スキーム3に従って、Sn(OH)4を文献(Arata, K. et. al., Chem. Lett., 1990., 1737.)記載の方法で調製した。
【0113】
【化15】
【0114】
【表1】
【0115】
上記反応結果から明らかであるように、一般的なPET重合触媒であるTi(比較例A5、A6)、Ge(比較例A7)のいずれも低活性であった。さらに非特許文献記載の高活性エステル化触媒であるZr、Sc、ボロン酸なども低活性であった。比較例A1に記載の有機スズがもっとも高活性であるが、高環境負荷であるために使用が難しい。もっとも現実的なものとして比較例A2に記載の二価無機スズが有望であるが、未だ触媒活性の観点で見劣りがする。
【0116】
これに対して本発明の一般式(1)で示される四価無機スズは配位子により活性・耐久性とも差が出るものの実施例A4、A5のように活性・耐久性ともに二価無機スズを凌ぐ値を示した。さらに環境負荷も二価無機スズと同様に低く、総合的に判断すると実用的触媒と言えることがわかる。
【0117】
[実施例B]
(ポリエステルの製造例)
−ポリエステル1の製造例−
実施例A5の上記触媒(A−12)5.0gを加えた、BPA−PO158g及びBPA−EO84gを、窒素雰囲気下、230℃で4時間かけ反応させた後、250℃に昇温して3時間反応させ、さらに60Torrにて1時間反応を行い、ポリエステル樹脂組成物1を得た。重量平均分子量170000、数平均分子量8600、分子量分布Mw/Mnは2.0である。ガラス転移温度は73℃であった。
なお、分子量の測定は、ポリエステルをTHFに溶解させ、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行った。分子量はポリスチレン換算で計算した。以下、同様である。
また。ガラス転移点は、示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定した際の、最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分から、ピークの頂点まで最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とする。以下、同様である。
【0118】
−ポリエステル2の製造例−
上記触媒(A−5)3.5gを加えた、BPA−PO203g、BPA−EO187g、テレフタル酸118g、及びドデセニルコハク酸94.6gを、窒素雰囲気下、230℃で7時間反応させた後、無水トリメリット酸16gを投入し、2時間反応させて、ポリエステル樹脂組成物2を得た。重量平均分子量24700、数平均分子量7400、分子量分布Mw/Mnは3.3である。ガラス転移温度は59.3℃であった。
【0119】
−ポリエステル3の製造例−
上記触媒(A−1)4.0gを加えた、BPA−PO333g、BPA−EO76.6g、テレフタル酸100g、及びドデセニルコハク酸64.5gを、窒素雰囲気下、230℃で4時間反応させた後、60Torrで1時間減圧した後、フマル酸42.1g及びハイドロキノン0.3gを投入し、3.5時間反応させて、ポリエステル樹脂組成物3を得た。重量平均分子量39500、数平均分子量6000、分子量分布Mw/Mnは6.6である。ガラス転移温度は59.8℃であった。
【0120】
−比較ポリエステル1の製造例−
触媒を2−エチルヘキサン酸スズ1.6gに替えた以外はポリエステル1の製造例と同様にしてポリエステル4を得た。重量平均分子量150000、数平均分子量7000、分子量分布Mw/Mnは2.1である。ガラス転移温度は72.5℃であった。
【0121】
−比較ポリエステル2の製造例−
触媒を2−エチルヘキサン酸スズ3.4gに替えた以外はポリエステル2の製造例と同様にしてポリエステル樹脂組成物5を得た。重量平均分子量23500、数平均分子量7000、分子量分布Mw/Mnは3.4である。ガラス転移温度は59.3℃であった。
【0122】
−比較リエステル3の製造例−
触媒を2−エチルヘキサン酸スズ3.3gに替えた以外はポリエステル3の製造例と同様にしてポリエステル樹脂組成物5を得た。重量平均分子量35000、数平均分子量5000、分子量分布Mw/Mnは7.0である。ガラス転移温度は59.1℃であった。
【0123】
(実施例B1)
−トナーの作製例−
・ポリエステル1: 100.0重量部
・下記構造式(1)を有する銅フタロシアニン系顔料(2置換体)4.0重量部
・3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム錯体 4.0重量部
【0124】
【化16】
【0125】
上記材料を十分ヘンシェルミキサーにより予備混合を行い、2軸押出し混練機で溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で40μm以下の粒径に微粉砕した。更に得られた微粉砕物を分級して、粒度分布における重量平均径が8.0μmになるように選択して分級品(シアンカラートナー)を得、流動性向上剤としてヘキサメチルジシランザンで処理した疎水性シリカ微粉末を分級品100重量部に0.8重量部外添添加しかつ酸化アルミ0.5重量部を外添添加してシアンカラートナーとした。
【0126】
このシアンカラートナー5重量部と、スチレン−メタクリル酸メチル(共重合体重量比65:35)を約0.35重量%コーティングしたCu−Zn−Fe系磁性フェライトキャリア95重量部とを混合し現像剤とした。現像剤中のトナー濃度は5重量%である。
【0127】
(評価)
−複写試験−
OPC感光ドラムを有したカラーレーザ電子写真複写機を用いて複写試験を行った。この電子写真複写機の定着装置は、芯金上に1mmの厚みを有したHTVシリコーンゴム層の単層を有する定着ローラと、表面が3mmのHTVシリコーンゴムを用いた加圧ローラーと、定着ローラに接触配置され、シリコーンオイルが含浸されているウェブと、が具備されたものである。
また、複写スピードは7枚(A4サイズ紙)/分、定着温度は150℃、シリコーンオイル含浸ウェブは1mm/10枚(A4サイズ紙)のスピードで移動させ、シリコーンオイルの含浸量は定着されたA4サイズ紙に約20mg/枚付着するように調整した。
【0128】
そして、面積比率5%の画像を、複写機内での搬送、現像剤濃度検知も良好で安定した画像濃度で、カブリのなくオリジナルを忠実に再現するトナー定着画像が得られる枚数(繰り返し複写枚数)を調べた。なお、繰り返し複写枚数は、9万枚まで行うこととした。
また、この繰り返し複写枚数を調べた後、定着ローラーへトナーが付着してるか否かを調べた。
【0129】
−高温オフセットトナー量−
上記複写試験に続き、電子写真複写機における定着装置の定着ローラを新品に交換し、シリコーンオイル含浸ウェブの駆動を止めた状態で面積率20%の画像を5000枚の繰り返し複写を行って、高温オフセットトナー量の調べた。
この高温オフセットトナー量は、ウェブに付着したトナーの付着量を測定することで求めた。そして、当該付着量は、定着ローラのトナー付着部分をマクベス反射濃度計で測定した値とした。
なお、高温オフセットトナー量が多ければ、定着ローラへのトナー付着部分のウェブの反射濃度値が高くなり、トナーの付着量が少なければ濃度が低くなる。
【0130】
−トナー帯電量−
低温低湿(15℃10%RH)、高温高湿(32.5℃85%RH)の各環境で、トナーの帯電量測定を行った。
【0131】
−画像グロス値−
画像表面のグロス(光沢度)を測定した。画像グロス値が高いほど画像表面か平滑でつやのある彩度の高いカラー品質と判断され、逆に画像グロス値が低いと、くすんだ彩度のとぼしい、画像表面があらわれたものと判断される。
【0132】
−耐オフセット性−
上記各評価から、以下の基準で耐オフセット性につき評価した。
○:マクベス反射濃度計で測定した値が0.5未満
△:マクベス反射濃度計で測定した値が1.0未満
×:マクベス反射濃度計で測定した値が1.0以上
【0133】
−トナー帯電特性−
上記各評価から、以下の基準でトナー帯電特性につき評価した。
○:低温低湿での帯電量/高温高湿での帯電量、の比が1.5未満
△:低温低湿での帯電量/高温高湿での帯電量、の比が1.7未満
×:低温低湿での帯電量/高温高湿での帯電量、の比が2.0以上
【0134】
−画像特性−
上記各評価から、以下の基準でトナー帯電特性につき評価した。
○:画像グロス値が15以上
△:画像グロス値が10未満
×:画像グロス値が5未満
【0135】
(実施例B2)
・ポリエステル2: 100.0重量部
・C.I.ピグメントレッド122: 5.0重量部
・3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム 4.0重量部
【0136】
上記材料で、実施例B1と同様にしてマゼンタトナーを得て、次いで現像剤を調製し、実施例Bと同様にして評価を行った。
【0137】
(実施例B3)
ポリエステル3を用いた以外は、実施例B1と同様にしてトナーを得て、次いで現像剤を調製し、実施例B1と同様にして評価を行った。
【0138】
(実施例B4)
ポリエステル1を用い、更に着色剤をC.I.ピグメントイエロー17(3.5重量部)に変えて実施例B1と同様にして調製したイエロートナー、実施例B2のマゼンタトナー及び実施例B1のシアントナーの3原色の各カラートナーを用いて、実施例B1と同様にして複写試験(但し、画像面積率35%とした)を行ったところ、カラー電子写真複写機を用い、フルカラーによる繰り返し複写を行った。8万枚以上の多数枚耐久性が認められた。定着ローラーへのトナー付着は実質的に認められなかった。
8万枚後のフルカラー複写画像においても、混色性の優れた彩度の高いものであった。3色重ね合わせによるベタ黒のグロス値は23%であった。
【0139】
(比較例B1〜B3)
比較ポリエステル1〜3をそれぞれ用いた以外は、実施例B1と同様にしてトナーを得て、次いで現像剤を調製し、実施例B1と同様にして評価を行った。
【0140】
以下、上記実施例B1〜B3、比較例B1〜B2の評価結果を表2に一覧にして示す。
【0141】
【表2】
【0142】
上記結果から、本実施例のトナーは、耐オフセット性、帯電特性、画像特性が共に優れた結果が得られることがわかる。
これらから、本発明のトナーは、分子量分布の狭い特殊なポリエステル樹脂を結着樹脂として使用することにより、熱定着時における混色性に優れ、なおかつ定着ローラーへ付着しにくい耐オフセット性に優れるカラートナーを提供できることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られた電子写真トナー用ポリエステル。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される請求項1に記載の電子写真トナー用ポリエステル。
【化1】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【化2】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【請求項3】
重合触媒として、下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合する工程を含む電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項4】
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される請求項3に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【化3】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【化4】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【請求項5】
重合触媒として前記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、前記原料モノマーとして多価アルコールと多価カルボン酸化合物とを重合する工程を含む請求項3又は4に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電子写真トナー用ポリエステルと溶媒とを含む電子写真トナー用ポリエステル組成物。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナー用ポリエステル組成物を製造する電子写真トナー用ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の電子写真トナー用ポリエステルを含む電子写真トナー。
【請求項9】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナーを製造する電子写真トナーの製造方法。
【請求項10】
下記一般式(1)で示される四価無機スズからなる電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項11】
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される請求項10に記載の電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
【化5】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【化6】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【請求項1】
重合触媒として下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合して得られた電子写真トナー用ポリエステル。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される請求項1に記載の電子写真トナー用ポリエステル。
【化1】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【化2】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【請求項3】
重合触媒として、下記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、原料モノマーを重合する工程を含む電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項4】
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される請求項3に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【化3】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【化4】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【請求項5】
重合触媒として前記一般式(1)で示される四価無機スズの少なくとも1種の存在下で、前記原料モノマーとして多価アルコールと多価カルボン酸化合物とを重合する工程を含む請求項3又は4に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電子写真トナー用ポリエステルと溶媒とを含む電子写真トナー用ポリエステル組成物。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナー用ポリエステル組成物を製造する電子写真トナー用ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の電子写真トナー用ポリエステルを含む電子写真トナー。
【請求項9】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の電子写真トナー用ポリエステルの製造方法により得られる電子写真トナー用ポリエステルを用いて電子写真トナーを製造する電子写真トナーの製造方法。
【請求項10】
下記一般式(1)で示される四価無機スズからなる電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
一般式(1): Sn(X1)m(X2)n
(一般式(1)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。X2は、−OR、又は−OCORを表す。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。X1とX2同士、複数のX1同士、及び複数のX2同士は、互いに同じであっても異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項11】
前記一般式(1)で示される四価無機スズが、下記一般式(2)で示される四価無機スズ、及び下記一般式(3)で示される四価無機スズからなる群より選択される請求項10に記載の電子写真トナー用ポリエステルの重合触媒。
【化5】
(一般式(2)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、酸素原子、又は置換された窒素原子を表す。Pは、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。nは2〜4の整数を表し、mは0〜2の整数を表し、n+m=4である。)
【化6】
(一般式(3)中、X1は、一価のアニオン性配位子を表す。Xは、置換又は無置換の窒素原子を表す。P、及びQは、それぞれ独立に、結合するX及びOと共に環を形成するのに必要な原子群を表す。lは1〜2の整数を示し、mは0〜2の整数を表し、2l+m=4である。)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−75874(P2011−75874A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227866(P2009−227866)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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