説明

電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物及び電子写真トナー

【課題】 粉砕性に優れ、電子写真トナーを効率的に得る事ができ、また、得られる電子写真トナーも帯電安定性及び光沢性に優れる電子写真トナーとなるポリエステル樹脂組成物及びこれを含有する電子写真トナーを提供すること。
【解決手段】 多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)、モノエポキシ化合物(a3)、2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a4)及び5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)とを反応して得られるポリエステル樹脂(A)を含有する電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物、該電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物を含有する電子写真トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉砕性に優れ、電子写真トナーを効率的に得る事ができ、また、得られる電子写真トナーも帯電安定性及び光沢性に優れる電子写真トナーとなるポリエステル樹脂組成物及びこれを含有する電子写真トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法における現像方法としては多くの方法が有り、例えば、一成分現像法や二成分現像法等が知られている。このような電子写真法に用いられ、低温定着性や耐ホットオフセット性、粉砕性、耐環境画像安定性及び耐可塑剤移行性に優れる電子写真トナーとして、例えば、モノエポキシ化合物及び/又は2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物と多価アルコールと多塩基酸とを重合して得られる軟化点が90〜200℃のポリエステル樹脂を用いた電子写真トナーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1で開示された電子写真トナーは低温定着性、耐オフセット性に優れるものの帯電安定性が十分でなく、その結果、得られる画像にカブリ等が生じるという欠点がある。また、得られる画像の光沢も十分ではない。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−215962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は粉砕性に優れ、電子写真トナーを効率的に得る事ができ、また、得られる電子写真トナーも帯電安定性及び光沢性に優れる電子写真トナーとなるポリエステル樹脂組成物及びこれを含有する電子写真トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、前記特許文献1で開示された電子写真トナーを得る際に、更に、エポキシ基を5個以上有するポリエポキシ化合物を併用することにより、帯電安定性及び光沢性にも優れる電子写真トナーとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)、モノエポキシ化合物(a3)、2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a4)及び5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)とを反応して得られるポリエステル樹脂(A)を含有することを特徴とする電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物を含有することを特徴とする電子写真トナーを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は粉砕性が良好で、電子写真トナー用を効率良く得ることができる。また、本発明の組成物を用いて得られた電子写真トナーは帯電安定性及び光沢性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)は多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)、モノエポキシ化合物(a3)、2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a4)及び5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)とを反応して得られる。前記多塩基酸(a1)としては、例えば、該多塩基酸の酸無水物及びこれらの低級アルキルエステルも多塩基酸として使用することができる。多塩基酸(a1)としては、例えば、飽和多塩基酸や不飽和多塩基酸等が挙げられる。
【0011】
前記飽和多塩基酸、飽和多塩基酸及び飽和多塩基酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、無水コハク酸、炭素数8〜18個のアルキルコハク酸、アルキル無水コハク酸、アルケニルコハク酸、アルケニル無水コハク酸等の二塩基酸類;トリメリット酸、無水トリメリット酸、シアヌール酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等の多塩基酸類等が挙げられる。ここで言うアルキルは、例えば、炭素原子数8〜18のアルキルエステル等が挙げられる。
【0012】
前記不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。
【0013】
多塩基酸(a1)は単独で使用しても、2種以上のものを併用しても差し支えない。また、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸を必要に応じ使用しても良い。
【0014】
本発明で用いる多塩基酸(a1)の中でも耐オフセット性と低温定着性に優れるトナーが得られることから、2価の塩基酸、その無水物及びこれらの低級アルキルエステルからなる群から選ばれる一種以上の化合物を含有する多塩基酸が好ましく、該2価の塩基酸、その無水物及びこれらの低級アルキルエステルからなる群から選ばれる一種以上の化合物の中でもイソフタル酸とテレフタル酸がより好ましい。
【0015】
さらに、上記した多塩基酸(a1)は、そのカルボキシ基の一部または全部がアルケニルエステルまたはアリルエステルとなっているものも使用できる。
【0016】
本発明で用いる多価アルコール(a2)としては、例えば、2価のアルコール類や3価以上のアルコール類等が挙げられる。
【0017】
前記、2価のアルコール類としては、例えば、線状脂肪族ジオール、環式脂肪族ジオール等の脂肪族ジオール類や芳香族ジオール類等が挙げられる。前記線状脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0018】
環式脂肪族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0019】
前記芳香族ジオール類としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するジオール類等が挙げられる。ビスフェノール骨格を有するジオール類としては、例えば、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0020】
前記3価以上のアルコール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−メチルプロパントリオール等が挙げられる。
【0021】
本発明で用いる多価アルコール(a2)としては、粉砕性が良好な電子写真トナーが得られることから、側鎖に炭素原子数2〜12のアルキル基を有する多価アルコールが好ましい。このような多価アルコールとしては、例えば、2−エチル4−ブチルヘキサン字オール、ブチルエチルプロパンジオール、2,4−ジエチル3,5−ペンタジオールが挙げられる。
【0022】
また、本発明で用いる多価アルコール(a2)としては、帯電安定性が良好な電子写真トナーが得られることからビスフェノール骨格を有するジオールが好ましい。ビスフェノール骨格を有するジオールの中でも、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0023】
更に、本発明で用いる多価アルコールとしては、粉砕性が良好な電子写真トナー用樹脂組成物が得られることからビスフェノール骨格を有するジオールと脂肪族ジオールとの混合物が好ましい。前記脂肪族ジオールの中でもエチレングリコール、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる一種以上のアルコールが好ましい。
【0024】
多価アルコール(a2)は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、ステアリルアルコール等のモノアルコール類も本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて使用しても良い。
【0025】
本発明で用いるモノエポキシ化合物(a3)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステル等が好ましく挙げられる。
【0026】
アルキルフェニルグリシジルエーテルとしては、例えば、クレジルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル等が挙げられ、アルキルグリシジルエーテルとしては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0027】
また、アルキルグリシジルエステルとしては、例えば、下記一般式(1)
【0028】
【化1】

【0029】
(但し、Rは炭素原子数1〜25のアルキル基、好ましくは炭素原子数10〜15のアルキル基である。)で示される化合物等が挙げられる。
【0030】
更に、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルとしては、例えば、ブチルフェノール等の低級アルキルフェノールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテルが挙げられ、具体例としては、エチレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテルのグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノ(p−t−ブチル)フェニルエーテルのグリシジルエーテル、エチレングリコールモノノニルフェニルエーテルのグリシジルエーテル等がある。
【0031】
α−オレフィンオキサイドとしては、例えば、アルファオレフィンオキサイド−168[アデカア−ガス化学(株)製品]、アルファオレフィンオキサイド−124[アデカアーガス化学(株)製品]等のオレフィン類をオキシ化した化合物等が挙げられる。
【0032】
モノエポキシ脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、不飽和脂肪酸のアルコールエステルの不飽和基をエポキシ化した化合物で、例えばエポキシ化オレイン酸ブチルエステル、下記構造式(2)
【0033】
【化2】

【0034】
で示される化合物、エポキシ化オレイン酸オクチルエステル等が挙げられる。これらのモノエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用しても差し支えない。
【0035】
本発明で用いるモノエポキシ化合物(a3)の中でも、得られるポリエステル樹脂(A)がワックスとの親和性が良好となることから前記一般式(1)で表されるモノエポキシ化合物がより好ましい。
【0036】
本発明で用いる2〜4個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a4)としては、例えば、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いるポリエポキシ化合物(a4)の中でも、帯電安定性が良好な電子写真トナーが得られることから2価のエポキシ化合物が好ましく、2価のエポキシ化合物の中でも、耐可塑剤性が良好なことからビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0038】
前記2〜4個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a4)は2種以上を併用しても差し支えない。
【0039】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の中でも、前記2〜4個のエポキシ基を有する(a4)を、多価エポキシ化合物(a5)と多価アルコール(a2)と多塩基酸(a1)との合計100重量部に対して0.1〜30重量部用いて得られるポリエステル樹脂が粉砕性良好なトナー用ポリエステル樹脂組成物が得られ、且つ、帯電安定性、光沢が良好な電子写真トナーが得られることから好ましく、0.5〜10重量部用いて得られるポリエステル樹脂がより好ましい。
【0040】
本発明で用いる5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いるポリエポキシ化合物(a5)の中でも、粉砕性が良好な電子写真トナー用樹脂組成物が得られることからノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂の中でも、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物型ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物型ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型ノボラック型エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型ノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上のノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。更に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂がより望ましい。
【0042】
また、本発明で用いるポリエポキシ化合物(a5)としては、5〜15個のエポキシ基を有する化合物が好ましい。
【0043】
更に、ポリエポキシ化合物(a5)の中でも、帯電特性、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れる電子写真トナー用ポリエステル樹脂を得る為に、後述する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〔(Mw)/(Mn)〕が5〜70の範囲にあるポリエステル樹脂を得やすいことから、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0044】
前記ポリエポキシ化合物(a5)は2種以上を併用しても差し支えない。
【0045】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)としては、多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)、モノエポキシ化合物(a3)、2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a4)及び5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)を、(a1)〜(a5)の合計重量に対して、それぞれ15〜70重量部、20〜75重量部、0.1〜10重量部、0.5〜15重量部及び0.5〜15重量部用いて得られるポリエステル樹脂が、帯電安定性に優れ、得られる印刷物の光沢が良好な電子写真トナーが得られることから好ましく、(a1)〜(a5)の合計重量に対して、それぞれ20〜65重量部、30〜70重量部、0.1〜5重量部、0.5〜10重量部及び0.5〜10重量部用いて得られるポリエステル樹脂がより好ましい。
【0046】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の中でも、更に、複素環を含有し、且つ前記多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)、モノエポキシ化合物(a3)、ポリエポキシ化合物(a4)の化合物と反応しうる官能基を有する化合物(a6)を用いて得られるポリエステル樹脂が帯電安定性に優れるポリエステル樹脂となることから好ましい。化合物(a6)をポリエステル樹脂の原料として用いることで、電子写真トナーにおいてチャージした電子が放出されず分子内で保持されることにより帯電安定性が向上するものと本発明の発明者らは考えている。
【0047】
化合物(a6)としては、例えば、複素環を含有し、且つ前記多塩基酸(a1)と反応しうる官能基を有する化合物、複素環を含有し、且つ前記多価アルコール(a2)と反応しうる官能基を有する化合物、複素環を含有し、且つ前記モノエポキシ化合物(a3)やポリエポキシ化合物(a4)やポリエポキシ化合物(a5)と反応しうる官能基を有する化合物等が挙げられる。
【0048】
前記複素環を含有し、且つ前記多塩基酸(a1)と反応しうる官能基を有する化合物としては、例えば、トリスヒドロキシエチルイソシアヌル酸、トリスヒドロキシエチルトリアジン、トリスエポキシプロピルイソシアヌル酸、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、ヒダトインジエポキシド、グアナミン、メラミン等が挙げられる。
【0049】
前記複素環を含有し、且つ前記多価アルコール(a2)と反応しうる官能基を有する化合物としては、例えばトリスカルボキシエチルイソシアヌル酸レート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌル酸、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、トリアリルシアヌル酸、トリメタアリルイソシアヌル酸等が挙げられる。
【0050】
前記複素環を含有し、且つ前記モノエポキシ化合物(a3)やポリエポキシ化合物(a4)やポリエポキシ化合物(a5)と反応しうる官能基を有する化合物としては、例えば、トリスカルボキシエチルイソシアヌル酸、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌル酸、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、トリアリルシアヌル酸、トリメタアリルイソシアヌル酸等が挙げられる。
【0051】
本発明で用いる化合物(a6)としては、トリスヒドロキシエチルイソシアヌル酸、トリスエポキシプロピルイソシアヌル酸等のイソシアヌル環を有する化合物(イソシアヌル酸系化合物)及びトリスヒドロキシエチルトリアジン、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン等のトリアジン環を有するが好ましく、中でも、帯電安定性に優れる電子写真トナーが得られることからトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートまたはトリスヒドロキシエチルトリアジンが好ましい。また、化合物(a6)の使用量としては、化合物(a6)を前記化合物(a1)〜(a6)の合計100重量部に対して、0.1〜15重量部が好ましい分子量分布が得られる理由から好ましく、0.5〜5.0重量部がより好ましい。
【0052】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)は、既知の重縮合反応法により任意に製造される。例えば、エステル化触媒(錫化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等)の存在下やエステル交換触媒(鉛化合物、錫化合物、亜鉛化合物、チタン化合物等)の存在下に、ジカルボン酸メチルエステル等の低級アルキルエステル使用のエステル交換反応、常圧脱水反応、減圧および真空脱水反応、溶液重縮合法、固相重縮合反応等いずれの製造法にて実施してもよい。この時のポリエステル化反応の追跡は、酸価、水酸基価、粘度または軟化点を測定することにより行うことができる。
【0053】
この際使用される装置としては、例えば、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器の如き回分式の製造装置が好適に使用できるはか、脱気口を備えた押し出し機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、上記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することにより、エステル化反応を促進することもできる。
【0054】
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)を製造する際に、チタン化合物としてリン化合物が共有結合したチタン化合物および/またはリン化合物が配位結合したチタン化合物の存在下で重縮合すると、ポリエステル樹脂(A)が、着色を抑制した透明なポリエステル樹脂となることから好ましい。
【0055】
前記チタン化合物は、リン化合物が共有結合したチタン化合物とリン化合物が配位結合したチタン化合物である。リン化合物が共有結合したチタン化合物としては、例えば、リン化合物のエーテル結合を介してチタン化合物に結合した構造を有するチタン化合物等が挙げられる。リン化合物が配位結合したチタン化合物としては、例えば、リン化合物の非共有電子対を介してチタン化合物に結合した構造等を有するチタン化合物等が挙げられる。そして、このような化合物としては、例えば、ホスフェート系のチタン化合物、ホスファイト系のチタン化合物、ホスホン酸系チタン化合物、亜ホスホン酸系チタン化合物、ホスフィン酸系チタン化合物、亜ホスフィン酸系チタン化合物、ホスフィンオキサイド酸系チタン化合物、ホスフィン系チタン化合物等が挙げられる。
【0056】
前記ホスフェート系のチタン化合物としては、例えば、モノホスフェート系チタン化合物、ビスホスフェート系チタン化合物、トリスホスフェート系チタン化合物等が挙げられる。前記モノホスフェート系チタン化合物としては、例えば、トリイソプロポキシチタン・ジオクチルホスフェート、トリイソプロポキシチタン・ジオクチルピロホスフェート、トリブトキシチタン・ジオクチルホスフェート、トリブトキシチタン・ジオクチルピロホスフェート、トリー2−エチルヘキシルオキシチタン・ジオクチルホスフェート、トリー2−エチルヘキシルオキシチタン・ジオクチルピロホスフェート、トリステアロキシチタン・ジオクチルホスフェート、トリステアロキシチタン・ジオクチルピロホスフェート等が挙げられる。
【0057】
前記ビスホスフェート系チタン化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスフェート、ジイソプロポキシチタン・ビスジオクチルピロホスフェート、ジブトキシチタン・ビスジオクチルホスフェート、ジブトキシチタン・ビスジオクチルピロホスフェート、ジー2−エチルヘキシルオキシチタン・ビスジオクチルホスフェート、ジー2−エチルヘキシルオキシチタン・ビスジオクチルピロホスフェート、ジステアロキシチタン・ビスジオクチルホスフェート、ジステアロキシチタン・ビスジオクチルピロホスフェート、ビスジオクチルホスフェートエチレングリコラトチタン、ビスジオクチルピロホスフェート・エチレングリコラトチタン、チタニウム・ビスジオクチルピロホスフェートオキシアセテート、チタニウム・ビスジオクチルホスフェートオキシアセテート等が挙げられる。
【0058】
前記トリスホスフェート系チタン化合物としては、イソプロポキシチタン・トリスオクチルホスフェート、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルピロホスフェート、ブトキシチタン・トリスジオクチルホスフェート、ブトキシチタン・トリスジオクチルピロホスフェート、2−エチルヘキシルオキシチタン・トリスジオクチルホスフェート、2−エチルヘキシルオキシチタン・トリスジオクチルピロホスフェート、ステアロキシチタン・トリスジオクチルホスフェート、ステアロキシチタン・トリスジオクチルピロホスフェート等が挙げられる。
【0059】
前記ホスファイト系のチタン化合物としては、例えば、モノホスファイト系チタン化合物、ビスホスファイト系チタン化合物、トリスホスファイト系チタン化合物等が挙げられる。前記モノホスファイト系チタン化合物としては、例えば、トリイソプロポキシチタン・ジオクチルホスファイト、トリブトキシチタン・ジオクチルホスファイト、トリー2−エチルヘキシルオキシチタン・ジオクチルホスファイト、トリステアロキシチタン・ジオクチルホスファイト等が挙げられる。
【0060】
前記ビスホスファイト系チタン化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスファイト、ジブトキシチタン・ビスジオクチルホスファイト、ジー2−エチルヘキシルオキシチタン・ビスジオクチルホスファイト、ジステアロキシチタン・ビスジオクチルホスファイト、ビスジオクチルホスファイトエチレングリコラトチタン、チタニウム・ビスジオクチルホスファイトオキシアセテート、テトライソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスファイト等が挙げられる。
【0061】
前記トリスホスファイト系チタン化合物としては、例えば、イソプロポキシチタン・トリスオクチルホスファイト、ブトキシチタン・トリスジオクチルホスファイト、2−エチルヘキシルオキシチタン・トリスジオクチルホスファイト、ステアロキシチタン・トリスジオクチルホスファイト、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルホスファイト等が挙げられる。
【0062】
前記ホスホン酸系チタン化合物としては、例えば、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルホスホン酸、ビスジオクチルホスホン酸エチレングリコラトチタン、イソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスホン酸等が挙げられる。
【0063】
前記亜ホスホン酸系チタン化合物としては、例えば、イソプロポキシチタン・トリスジオクチル亜ホスホン酸、ビスジオクチル亜ホスホン酸エチレングリコラトチタン、イソプロポキシチタン・ビスジオクチル亜ホスホン酸等が挙げられる。
【0064】
前記ホスフィン酸系チタン化合物としては、例えば、イソプロポキシチタン・トリスオクチルホスフィン酸、ビスオクチルホスフィン酸エチレングリコラトチタン、イソプロポキシチタン・ビスオクチルホスフィン酸等が挙げられる。
【0065】
前記亜ホスフィン酸系チタン化合物としては、例えば、イソプロポキシチタン・トリスオクチル亜ホスフィン酸、ビスオクチル亜ホスフィン酸エチレングリコラトチタン、イソプロポキシチタン・ビスオクチル亜ホスフィン酸等が挙げられる。
【0066】
前記ホスフィンオキサイド酸系チタン化合物としては、例えば、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルホスフィンオキサイド、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルホスフィンオキサイド、ビスジオクチルホスフィンオキサイドエチレングリコラトチタン、ビスジオクチルホスフィンオキサイドエチレングリコラトチタン、イソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスフィンオキサイド、イソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
前記ホスフィン酸系チタン化合物としては、例えば、イソプロポキシチタン・トリスジオクチルホスフィン、イソプロポキシチタン・トリスジオクチル亜ホスフィン、ビスジオクチルホスフィンエチレングリコラトチタン、ビスジオクチルホスフィンエチレングリコラトチタン、イソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスフィン、イソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスフィン等が挙げられる。
【0068】
前記チタン化合物としては、より着色を抑制し、透明性の高いポリエステル樹脂となり、光沢性に優れた電子写真トナーが得られることからホスフェート系チタン化合物、ホスファイト系チタン化合物を用いて得られたポリエステル樹脂が好ましく、ビスホスフェート系チタン化合物、ビスホスファイト系チタン化合物を用いて得られたポリエステル樹脂がより好ましく、ピロホスフェート系チタン化合物を用いて得られたポリエステル樹脂が更に好ましい。
【0069】
また、本発明で用いるポリエステル樹脂(A)としては、リン化合物が共有結合したチタン化合物および/またはリン化合物が配位結合したチタン化合物として、アルキレンオキサイド鎖を有するチタン化合物を用いて得られるポリエステル樹脂が、光沢性が良好な印刷物が得られる電子写真トナーとなることから好ましい。前記アルキレンオキサイド鎖の中でも炭素原子数2〜22のアルキレンオキサイド鎖が好ましい。
【0070】
前記チタン化合物は、中でも、チタニウム・ビスジオクチルピロホスフェートオキシアセテート、ジイソプロポキシチタン・ビスジオクチルホスフェートがより好ましい。
【0071】
リン化合物が共有結合したチタン化合物および/またはリン化合物が配位結合したチタン化合物の使用量としては、ポリエステル樹脂(A)を構成する原料の合計重量に対して0.1〜100ppmとなるように用いるのが、反応効率も良好で、且つ、着色の少ないポリエステル樹脂となることから好ましく、1〜50ppmとなるように用いるのがより好ましく、5〜30ppmとなるように用いるのが更に好ましい。
【0072】
本発明で用いるポリエステル樹脂は低温定着性が更に良好で、また、印刷面の光沢も良好な電子写真トナーが得られることから、ガラス転移温度(Tg)が45〜90℃のポリエステル樹脂が好ましく、55〜85℃のポリエステル樹脂がより好ましい。また、更に良好なホットオフセット性が得られることから、軟化点が90〜210℃のポリエステル樹脂が好ましく、100〜180℃のポリエステル樹脂がより好ましい。
【0073】
従って、ガラス転移温度(Tg)が50〜90℃で、且つ、かつ、軟化点が90〜210℃のポリエステル樹脂が好ましく、ガラス転移温度(Tg)が55〜85℃で、且つ、かつ、軟化点が100〜180℃のポリエステル樹脂がより好ましい。
【0074】
前記ガラス転移温度は以下に示す条件で測定した値である。
測定機器:セイコー電子工業(株)製DSC220C
測定条件:10℃/min,試料:アルミ容器に試料を10mg程度入れ、ふたをする。
測定方法:DSC(示唆走査熱量分析)法
【0075】
前記軟化点は以下の条件により測定した。
測定機器:島津製作所(株)製CFT−500D
測定条件:昇温速度6℃/min、ノズル1.0mmΦ×10mm、荷重10kgf、試料量1.5g
ここで、軟化点とは高化式フロ−テスタ−〔島津製作所(株)製CFT−500D〕においてプランジャ−(ピストン)が流出開始から流出終了までの工程において中間点にきたときの温度(T1/2)をいう。
【0076】
本発明で用いるポリエステル樹脂は低温定着性と耐ホットオフセット性に優れるトナーが得られることから重量平均分子量(Mw)が20,000〜700,000のポリエステルが好ましく、40,000〜500,000のポリエステルがより好ましい。また、本発明で用いるポリエステル樹脂は良好なガラス転移温度を保持し、その結果、良好な貯蔵安定性トナーが得られることから数平均分子量(Mn)が2,000〜8,000のポリエステルが好ましく、2,500〜7,500のポリエステルがより好ましい。
【0077】
更に、本発明で用いるポリエステル樹脂はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、ホットオフセット性と低温定着性と帯電特性に優れることから(Mw/Mn)で3〜100のポリエステル樹脂が好ましく、5〜70がより好ましい。
【0078】
本発明におけるポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)はテトラヒドロフランにより溶解する成分をGPC法により以下に示す条件で測定した値である。
【0079】
分子量測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムHXL−H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC−8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4重量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0080】
また、本発明のポリエステル樹脂の軟化点は低温定着と耐オフセットと帯電安定性に優れることから90℃〜210℃が好ましく、100℃〜180℃がより好ましい。
【0081】
本発明の電子写真トナー用樹脂組成物は前記ポリエステル樹脂を含有すれば良いが、必要に応じて、離型剤、着色剤、帯電制御剤等を加えることができる。
【0082】
前記離型剤として、種々のワックス類が挙げられる。例えば、モンタンワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス等が使用できる。
【0083】
特にヒートローラ定着用途では、トナーのヒートローラ付着汚れ(オフセット)によるトラブル防止を目的として、離型剤を使用することができる。そのような離型剤として、種々のワックス類が挙げられる。例えば、モンタンワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の天然ワックス;ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス等が使用できる。好適なワックス類としては、例えば、合成ポリプロピレンワックスであるビスコール660P、ビスコール550P[三洋化成工業(株)製]等がある。
【0084】
本発明の電子写真用トナー用樹脂組成物中の離型剤の重量割合は特に制限されないが、通常トナー用樹脂組成物100重量部当たり、離型剤0.3〜15重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0085】
前記着色剤としては、非磁性の種々の有機顔料、無機顔料があり、例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルー、ランプブラック、ローズベンガラ、キナクリドンレッド、ウオッチングレッド等を挙げることができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0086】
本発明の電子写真用トナー用樹脂組成物中の着色剤との重量割合は特に制限されないが、通常トナー用樹脂組成物100重量部当たり、着色剤1〜60重量部、好ましくは3〜30重量部である。
【0087】
前記帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、トリメチルエタン系染料、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料等の重金属含有酸性染料等公知慣用の電荷制御剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
本発明の電子写真用トナー用樹脂組成物中の帯電制御剤との重量割合は特に制限されるものではないが、好ましくはトナー用樹脂組成物100重量部当たり、帯電制御剤0.5〜3重量部が望ましい。
【0089】
又、本発明の電子写真用トナー用樹脂組成物には本発明の効果を失わない範囲で、従来公知の樹脂、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、エポキシ樹脂、前記以外のポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等を適量配合することができる。その配合量は該ポリエステル樹脂100重量部に対して、通常1〜30重量部程度である。
【0090】
本発明の電子写真用トナー用樹脂組成物を用いて得られる電子写真トナーは、公知慣用の任意の製造方法に依って得ることができる。例えば、バインダー樹脂と着色剤とをバインダー樹脂の融点以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることができる。勿論、これ以外の方法で製造してもよい。
【0091】
本発明の電子写真用トナーを得るに当たっては、その製造の任意の工程において、更に、流動性向上剤等の各種助剤を加えることができる。流動性向上剤は、電子写真トナーの表面に付着させるのが有効である。
【0092】
本発明の電子写真用トナー用樹脂組成物を用いて得られる電子写真用トナーは、公知慣用の任意の製造方法に依って得ることができる。例えば、前記ポリエステル樹脂と着色剤とをポリエステル樹脂の融点以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることができる。勿論、これ以外の方法で製造してもよい。
【0093】
本発明で得られるトナー粉体は、このままでもトナーとして使用することができるが、シリカを外添することにより、より粉体流動性を向上させることができ実用上好適である。
【0094】
シリカとしては、比較的大きい平均粒子径を有するものと、比較的小さい平均粒子径を有するものがあり、これらは単独で用いても併用してもよい。シリカの外添量としては、帯電量が必要充分となり、感光体ドラムを傷つけたり、トナーの環境特性の悪化を招くこと等がないことから、トナー粒子100重量部に対し、0.1〜5.0重量部が実用上好敵である。
【0095】
本発明の電子写真トナーは帯電安定性に優れる。例えば、本発明の電子写真トナーは、例えば、帯電量が−30μC/g〜−70μC/gのものである。
【0096】
本発明では帯電量の測定は下記の条件に従って行った。
測定機器:トレックジャパン(株) 製 210HS-2A ブローオフ帯電量測定機器
測定条件:25℃/RH60%
測定方法:樹脂1.5gとフェライトキャリアMF-100(日本鉄粉社製)48.5gの混合物を50mlのポリ容器にて1分間、10分間、30分間、60分間ミキサーにて混合し帯電量測定機器によって測定した。
【実施例】
【0097】
以下に、合成例、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。例中「部」、「%」は特にことわりがない限り重量基準である。
【0098】
合成例1〔ポリエステル樹脂(A)の合成〕
エチレングリコール120g、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物180g、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物300g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:7.6)80g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)60g、ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:2)60gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸400gを加え、ジブチル錫オキサイド2.0gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で17時間反応させ取り出し、ポリエステル樹脂(A1)を得た。ポリエステル樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は145000、数平均分子量(Mn)は3900、ガラス転移点は65℃、軟化点は133℃であった。
【0099】
合成例2(同上)
エチレングリコール120g、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物180g、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物300g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:7.6)80g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)60g、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:2)60gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸400gを加え、ジブチル錫オキサイド2.0gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で17時間反応させ取り出し、ポリエステル樹脂(A2)を得た。ポリエステル樹脂(A2)の重量平均分子量(Mw)は130000、数平均分子量(Mn)は5000、ガラス転移点は68℃、軟化点は137℃であった。
【0100】
合成例3(同上)
ブチルエチルプロパンジオール60g、エチレングリコール60gビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物180g、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物300g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:7.6)20g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)120g、ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:2)60gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸400gを加え、ジブチル錫オキサイド2.0gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で20時間反応させ取り出し、ポリエステル樹脂(A3)を得た。ポリエステル樹脂(A3)の重量平均分子量(Mw)は133000、数平均分子量(Mn)は5500、ガラス転移点は63℃、軟化点は135℃であった。
【0101】
合成例4(同上)
エチレングリコール120g、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物180g、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物300g、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:6.1)80g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)60g、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:2)60gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸400gを加え、ジブチル錫オキサイド2.0gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で18時間反応させ取り出し、ポリエステル樹脂(A4)を得た。ポリエステル樹脂(A4)の重量平均分子量(Mw)は195000、数平均分子量(Mn)は5000、ガラス転移点は65℃、軟化点は133℃であった。
【0102】
合成例5(同上)
エチレングリコール120g、ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物180g、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物300g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:7.6)80g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)60g、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:2)60gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸400gを加え、チタニウム・ビスオクチルピロホスフェートオキシアセテート2.0gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で20時間反応させ取り出し、ポリエステル樹脂(A5)を得た。ポリエステル樹脂(A5)の重量平均分子量(Mw)は125000、数平均分子量(Mn)は5000、ガラス転移点は66℃、軟化点は136℃であった。
【0103】
合成例6(比較対照用ポリエステル樹脂の合成)
ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物315g、ネオデカン酸グリシジルエステル(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:1)130g、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂(一分子あたりのエポキシ基の平均の数:2)200gを5リットルの4つ口フラスコに入れ、加熱溶解させた後、テレフタル酸335gを加え、ジブチル錫オキサイド2.0gを投入し窒素気流下にて徐々に昇温させ255℃で19時間反応させ取り出し、比較対照用ポリエステル樹脂(a1)を得た。ポリエステル樹脂(a1)の重量平均分子量(Mw)は80000、数平均分子量(Mn)は5600、ガラス転移点は73℃、軟化点は138℃であった。
【0104】
実施例1
ポリエステル樹脂(A1)84部、カーボンブラックMA−11(三菱化学製)5部、ボントロンS34(オリエント化学製 帯電制御剤)1部及び分枝状結晶性ポリエステル(A1)10部をヘンシェルミキサ−で混合し、本発明の電子写真トナー用ポリステル樹脂組成物を得た後、2軸混練機で混練し、混練物を得た。このようにして得られた混練物を粉砕、分級した。シリカR972(日本アエロジル製)1部をヘンシェルミキサーで混合後、篩かけをして混合物を得た。得られた混合物5部とキャリア(シリコン樹脂被覆フェライトキャリア)95部を混合攪拌して電子写真用トナー1を調整した。トナー1について、低温定着性、耐ホットオフセット性及び光沢性を下記評価方法に従って評価した。また、トナー1の製造に用いたポリエステル樹脂(A1)の帯電量と帯電安定性について下記評価方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。また、本発明の電子写真トナー用ポリステル樹脂組成物の評価を下記基準に従って評価した。
【0105】
<低温定着性の評価>
熱ロールの設定温度を5℃きざみに120℃から140℃まで変化させ、ベタ印刷を行った。ベタ印刷部分に堅牢度試験を行い試験前後の画像濃度をマクベス濃度計(RD−918)で測定し、その試験前の値に対する剥離後の濃度値の比率を%で表示した場合に、その値が80%以上となる温度を定着開始温度とした。この温度が低いほど低温定着性の良好な電子写真用トナーである。低温定着性の評価基準は下記の通りとした。尚、堅牢度試験は学振型摩擦堅牢度試験機(荷重:200g、擦り操作:5ストローク)を用いて行った。
◎;定着開始温度が130℃未満の場合
○;定着開始温度が130℃以上、135℃未満の場合
△;定着開始温度が135℃以上、140℃未満の場合
×;定着開始温度が140℃以上の場合
【0106】
<耐ホットオフセット性の評価方法>
熱ロールの設定温度を5℃きざみに160℃から210℃まで変化させたときに、ベタ印刷部分が再び同じ用紙にオフセットし、目視で確認できる最低の温度で表示した。この温度が高いほど耐オフセット性が良好であることを示す。
◎;オフセット開始温度が210℃以上の場合
○;オフセット開始温度が180℃以上、210℃未満の場合
△;オフセット開始温度が160℃以上、180℃未満の場合
×;オフセット開始温度が160℃未満の場合
ただし、高温でオフセットしない場合でも、樹脂自体がワックスとして作用し印刷媒体への定着性が悪いものは×の評価とした。
【0107】
尚、定着開始温度、耐オフセット性の評価は、次のようなヒートローラー定着機条件で行った。
ロール材質:上;ポリテトラフルオロエチレン、下;シリコーン
上ロール荷重:7Kg/350mm
ニップ幅:4mm
紙通し速度:90mm/sec
【0108】
<帯電量及び帯電安定性の評価>
トレックジャパン(株)製210HSー2Aブローオフ帯電量測定機器を用い、ポリエステル樹脂(A1)1.5gとフェライトキャリアMF−100(日本鉄粉社製)48.5gの混合物を50mlのポリ容器にて1分間、10分間、30分間、60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し帯電量測定機器によって測定した。それらの平均値をとったものを帯電量とした。また、前記10分間、30分間及び60分間ターブラシェイカーミキサーにて混合し帯電量測定機器によって測定した帯電量において、最大帯電量と最小帯電量の差を求め、この値を帯電安定性の評価とした。この値が小さいほど帯電安定性に優れることを表す。
帯電量の評価基準
◎:−45μC/g以上
○:−40μC/g以上、−45μC/g未満
△:−35μC/g以上、−40μC/g未満
×:−30μC/g以上、−35μC/g未満
××:−30μC/g未満
【0109】
帯電安定性の評価基準
◎:最大帯電量と最小帯電量の差が−3μC/g未満
○:最大帯電量と最小帯電量の差が−3μC/g以上、−6μC/g未満
△:最大帯電量と最小帯電量の差が−6μC/g以上、−9μC/g未満
×:最大帯電量と最小帯電量の差が−9μC/g以上、−12μC/g未満
【0110】
<光沢性の評価>
市販の印刷機にてベタ印刷を行い印刷物を得た。印刷面の光沢を日本電色工業(株)製のグロスメーターを使用し投受光角60°で測定し、下記基準に従って評価した。
◎:数値が9以上
○:数値が7以上、9未満
△:数値が5以上、7未満
×:数値が3以上、5未満
【0111】
<粉砕性の評価>
ラボ用プラストミルでポリエステル樹脂(A1)65gを混練(135℃、125rpm、5min)する。混練したポリエステル樹脂(A1)を25g計りとり、1cm角に荒割りを行う。その後サンプルミルにて1分間粉砕したのちに、野中理化器製作所社製の篩(#42、65、100、200)を用いてフリッチュ社製電磁式篩振とう機A−3にて30分間振動を与える。各々篩に分けられた樹脂の重量を秤量し50wt%が通過する粒径を読み取り、下記基準に従い評価する。
◎:平均粒径が150μm未満
○:平均粒径が150μm以上、180μm未満
△:平均粒径が180μm以上、210μm未満
×:平均粒径が210μm以上、230μm未満
【0112】
実施例2〜5及び比較例1
ポリエステル樹脂(A2)〜ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(a1)を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真トナー2〜5及び比較対照用電子写真トナー1´を調製した。実施例1と同様にして評価を行い、評価結果を第1表に示す。
【0113】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)、モノエポキシ化合物(a3)、2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a4)及び5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)とを反応して得られるポリエステル樹脂(A)を含有することを特徴とする電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)が、5〜15個のエポキシ基を有するノボラック型エポキシ樹脂である請求項1記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ノボラック型エポキシ樹脂がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物型ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物型ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型ノボラック型エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型ノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上のノボラック型エポキシ樹脂である請求項1記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記モノエポキシ化合物(a3)が、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、α−オレフィンオキサイド、モノエポキシ脂肪酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上のモノエポキシ化合物である請求項3記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a4)がビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項1記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記多価アルコール(a2)が、側鎖に炭素原子数2〜12のアルキル基を有する多価アルコールである請求項1記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記多価アルコール(a2)が、ビスフェノール骨格を有するジオールである請求項1記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビスフェノール骨格を有するジオールが、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物である請求項7記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記多価アルコール(a2)がビスフェノール骨格を有するジオールと脂肪族ジオールとの混合物である請求項7記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
前記(a1)〜(a5)と共に、更に、複素環を含有し、且つ前記(a1)〜(a5)の化合物と反応しうる官能基を有する化合物(a6)反応させる請求項1記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂(A)が、多塩基酸(a1)、多価アルコール(a2)、モノエポキシ化合物(a3)、2〜4個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a4)及び5個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(a5)を、(a1)〜(a5)の合計重量に対して、それぞれ20〜65重量部、30〜70重量部、0.1〜5重量部、0.5〜10重量部及び0.5〜10重量部用いて得られるポリエステル樹脂である請求項1〜10のいずれか1項記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比〔(Mw)/(Mn)〕が5〜70である請求項1〜10のいずれか1項記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が40000〜500000である請求項1〜10のいずれか1項記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の電子写真トナー用ポリエステル樹脂組成物を含有することを特徴とする電子写真トナー。

【公開番号】特開2009−265580(P2009−265580A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118467(P2008−118467)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】