説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】高い耐久性と、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きい電子写真感光体を提供する。
【解決手段】基体2と、該基体2上に設けられ、炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有する最表面層6と、を有し、前記最表面層6の電荷移動度μ[cm/V・sec]と電場E[V/μm]とが、Aが0.10以下、Bが−4.0以上であるときに、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする電子写真感光体。
式(1)
logμ = A×E1/2 + B

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、一般的には次の如く構成、及びプロセスを有するものである。すなわち、電子写真感光体表面を帯電手段で所定の極性及び電位に帯電させ、帯電後の電子写真感光体表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させた後、現像手段で該静電潜像にトナーを付着させることにより、潜像をトナー像として現像し、トナー像を転写手段で被転写媒体に転写させることにより、画像形成物として排出させる。
【0003】
近年、電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザービームプリンター等の分野において著しく利用されている。これら画像形成装置において用いられる電子写真感光体として、従来からのセレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金、硫化カドミウム等無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占める様になってきている。
【0004】
前記感光体としては、樹脂を主成分とする保護層、電荷輸送ポリマーによる電荷輸送層、表面層への粒子の分散、表面層膜厚の増大等が検討されている(例えば、特許文献1参照)。また、フッ素系重合体を表面層に分散した感光体が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−202348号公報
【特許文献2】特開昭56−39552号公報
【特許文献3】特開平6−23059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐久性が高く、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きい電子写真感光体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
基体と、該基体上に設けられ、最表面層が炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有する感光層と、を有し、
前記感光層の電荷移動度μ[cm/V・sec]と電場E[V/μm]とが、Aが0以上0.10以下、かつBが−4.0以上であるときに、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする電子写真感光体である。
式(1)
logμ = A×E1/2 + B
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記最表面層が、下記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体である。
【化1】

(一般式(2)中、Arは1個以上の置換基を有するベンゼン環、置換基を有していてもよい縮合芳香環、置換基を有していてもよい複素環、及び置換基を有していてもよい縮合複素環からなる群から選択される何れかを表す。Arは置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよい縮合芳香環、置換基を有していてもよい複素環、及び置換基を有していてもよい縮合複素環からなる群から選択される何れかを表す。nは1以上3以下の整数を表す。)
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記最表面層が、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体を2種以上含有することを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記最表面層が、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体とは異なる電荷輸送材料を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の電子写真感光体である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記基体の直径が50mm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
請求項1〜5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存するトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項7に係る発明は、
請求項1〜5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
前記電子写真感光体の表面に残存するトナーを除去するトナー除去手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、耐久性が高く、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きい電子写真感光体が提供される。
請求項2に係る発明によれば、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体を含有していない場合に比べ、耐久性が高く、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きい、という効果が容易に得られる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体を2種以上含有していない場合に比べ、耐久性が高く、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きい、という効果がより容易に得られる。
請求項4に係る発明によれば、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体と他の電荷輸送材料を含有していない場合に比べ、耐久性が高く、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きい、という効果がより容易に得られる。
請求項5に係る発明によれば、基体の直径が50mm以下でない場合に比べ、より耐久性に優れる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、長期に渡り、濃度低下が抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、長期に渡り、濃度低下が抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す概略部分断面図である。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(電子写真感光体)
本実施形態に係る電子写真感光体(以下、「本実施形態に係る感光体」という場合がある)は、基体と、該基体上に設けられ、最表面層が炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有する感光層と、を有し、前記感光層の電荷移動度μ[cm/V・sec]と電場E[V/μm]とが、Aが0以上0.10以下、かつBが−4.0以上であるときに、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
式(1)
logμ = A×E1/2 + B
【0019】
上記式(1)の関係が、Aの値が0以上0.10以下のときに満たされていれば、電界強度依存が少なく、繰り返しでの低電界での光減衰カーブにおける白紙部電位の上がりの変化が抑えられる。一方、上記式(1)の関係が、Bの値が−4.0以上のときに満たされていれば、低温での感度変化が少なくなり、厚膜化が可能で、残留電位の上昇、初期表面電位の低下が抑えられる。その結果、上記両者を満たすことにより、耐久性が高く、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きい電子写真感光体が提供される。上記式(1)は、Aが0以上0.085以下、Bが−3.7以上のときに満たされていることが好ましく、Aが0以上0.070以下、Bが−3.5以上のときに満たされていることがより好ましい。
また、炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有することにより、耐久性が高く、電場の依存度が小さく、電荷の移動度が大きいという効果が顕著になる。
【0020】
また、上記式(1)がAが0以上0.10以下、Bが−4.0以上のときに満たされると、電荷移動層の膜厚を従来使用されている10μm以上20μm以下の膜厚より大巾に厚くしても(例えば、30μm以上50μm以下)、電気的特性が悪化しない、すなわち実用上問題ない水準にあり、耐久性の優れた感度の高い電子写真感光体が得られる。
【0021】
また、電荷移動層の膜厚を厚くすると感光体が長寿命化されるが、感光体を直径50mm以下の小径の基体上に形成する場合には、連続複写する場合に、感光体の同一部位への静電潜像形成の繰り返し周期が短くなるため、電荷移動層において電荷発生したキャリアがその短い時間内に除電光により除電されたもとの状態へ回復する必要がある。したがって、電荷移動層膜厚が厚くなるほど、また基体が小径になりプロセススピードが速くなり感光体の同一部位への静電潜像形成までの時間が短かくなるほど、その短い時間内に表面電荷を打ち消すに足る電荷移動層中のキャリアの速い移動スピードが望まれる。
【0022】
電荷移動層中のキャリアの速い移動スピードがない場合、次の帯電時にキャリアが電荷移動層中に残ってしまい、残留電位が上昇するという現象がおこる。この現象は低温になると、顕著に表われる。これは特に電荷移動層の膜厚を30μm以上とし、感光体の同一部位への静電潜像の形成周期が0.5sec以内の場合に顕著になる。しかし本実施形態に係る電子写真感光体は、Aが0以上0.10以下、Bが−4.0以上であるときに、前記式(1)の関係を満たす、つまり移動度を有することにより、耐久性の優れた感度の高い電子写真感光体が得られる。
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す模式断面図であり、電子写真感光体1を基体2及び感光層3の積層方向に沿って切断したものである。図1に示す電子写真感光体1はいずれも機能分離型感光体であり、各感光体が備える感光層3には電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられている。より詳しくは、図1に示した電子写真感光体1においては、基体2上に、下引き層4、電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順で積層されて感光層3が構成されている。尚、本実施形態において、感光層とは基体上に形成された全ての層を含む層を意味し、図1に示す電子写真感光体1では、下引き層4、電荷発生層5及び電荷輸送層6を含めて感光層という。
【0024】
<基体>
基体2としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルト、又は、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。尚、本実施形態における体積抵抗率は25℃における体積抵抗率とする。
【0025】
電子写真感光体1がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、基体2の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる場合があり、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が粗くなる場合がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基体2表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0026】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
また、他の粗面化の方法としては、基体2表面を粗面化することなく、又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。尚、本明細書において、「半導電性」とは体積抵抗率が10−6Ωcm以上10Ωcm以下であることをいう。
【0027】
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
【0028】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行われる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の他種に比べ被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0029】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向にある。
【0030】
また、基体2には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。
【0031】
処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、当該処理温度の範囲よりも低い場合に比べ一層速く、かつ厚い被膜が形成される。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0032】
<下引き層>
下引き層4は、例えば、結着樹脂に無機粒子を含有して構成される。
(無機粒子)
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)が10Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。これは下引き層4はリーク耐性、キャリアブロック性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要でるためである。なお、無機粒子の抵抗値が10Ω・cmよりも低いと十分なリーク耐性が得られない場合があり、1011Ω・cmよりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう場合がある。
【0033】
上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子を用いるのが望ましく、特に酸化亜鉛は望ましく用いられる。また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m/g以上のものが望ましく用いられる。比表面積値が10m/g未満のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
【0034】
(アクセプター性化合物)
下引き層4は、無機粒子と共にさらにアクセプター性化合物を含有させることで電気特性の長期安定性、キャリアブロック性に優れたものが得られる。アクセプター性化合物としては所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0035】
これらのアクセプター性化合物の含有量は、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性等の特性が良好に得られる範囲であれば任意に設定してもよいが、望ましくは無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下含有される。アクセプター性化合物の含有量は、さらに電荷蓄積防止と無機粒子の凝集を防止する観点から0.05質量%以上10質量%以下が望ましい。無機粒子の凝集は、導電路形成にバラツキが生じやすくなり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
【0036】
アクセプター化合物は、下引き層の塗布時に添加するだけでも良いし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0037】
乾式法にて下引き層に表面処理を施す場合には無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させたアクセプター化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによってバラツキが生じることなく処理される。添加又は噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、バラツキが生じることなく攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまいバラツキのない処理ができにくい欠点があり、望ましくない。添加又は噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。
【0038】
湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌又は分散したのち、溶剤除去することでバラツキが生じることなく処理される。溶剤除去方法はろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分が除去され、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0039】
また、無機粒子はアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引き層4に良好なブロッキング性を与えるため望ましく用いられる。
【0040】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いてもよいが、具体的例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いてもよいシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法又は湿式法を用いることがよい。また、アクセプター付与とカップリング剤等による表面処理を同時に行ってもよい。
【0043】
下引き層4中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定されるが分散性向上の観点から、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0044】
(結着樹脂)
下引き層4に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでもよいが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物や、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0045】
下引き層形成用塗布液中のアクセプター性を付与した金属酸化物とバインダー樹脂、又は無機粒子とバインダー樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
【0046】
(添加物)
下引き層4中には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いられる。シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いてもよい。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0048】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0049】
アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独に若しくは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いてもよい。
【0050】
(溶媒)
下引き層形成用塗布液を調製するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いられる。
【0051】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0052】
(分散方法)
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。さらにこの下引き層4を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を用い、基体上に下引き層4が成膜される。
【0053】
また、下引き層4は、ビッカース強度が35以上とされていることが望ましい。
さらに、下引き層4は、電気特性の耐リーク性、残留電位等が良好に得られるのであれば、いかなる厚さにも設定してもよいが、厚さが15μm以上が望ましく、15μm以上50μm以下であることがより望ましい。下引き層4の厚さが15μm未満であるときには、充分な耐リーク性能を得ることができない場合があり、また50μmを超えると長期使用した場合に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招く場合がある。
【0054】
また、下引き層4の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。表面粗さ調整のために下引き層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等を用いられる。
【0055】
また、表面粗さ調整のために下引き層を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等を用いられる。
以上のように塗布したものを乾燥させて下引き層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。
【0056】
<電荷発生層>
電荷発生層5は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
(電荷発生材料)
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより望ましい。
【0057】
(結着樹脂)
電荷発生層5に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、ここで、「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
【0058】
(溶剤)
電荷発生層5は、上記電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0059】
また、電荷発生物質及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いられる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化が防止される。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0060】
また、電荷発生層5を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
このようにして得られる電荷発生層5の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0061】
<電荷輸送層>
電荷輸送層6は、炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有し、更に電荷輸送材料、結着樹脂を含有して形成されることが好ましい。また、炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体、高分子電荷輸送材を含有して形成されることが好ましい。
本実施形態では、電荷輸送層(最表面層)6を含む感光層3の電荷移動度μ[cm/V・sec]と電場E[V/μm]が、Aが0以上0.10以下、かつBが−4.0以上であるときに、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
式(1)
logμ = A×E1/2 + B
【0062】
上記式(1)において、移動度(μ)は、NESAガラス上に本実施形態に係る感光体と同様の感光層を形成し、その上に金電極をスパッタリングして対向電極をつけ、25℃にてNESAガラス側より337(nm)の波長を有するパルス幅5nsecの窒素レーザーのパルスを照射し、タイムオブフライト法(TOF)信号からトランジットタイムを求めることにより得られる。具体的には、以下の計算式から算出される。
μ=L/(t×(E’/L))
L 感光層の膜厚(cm)
E’ 対抗電極の電圧(V)
t 電荷の到達時間(sec)
本実施形態においては、電場Eとして400[V/μm]、600[V/μm]、800[V/μm]、1,000[V/μm]、1,200[V/μm]、1,400[V/μm]の6ポイントにて上記測定を移動度μの対数値logμとE1/2との直線関係を求め、この直線の傾きをA、切片をBとした。
【0063】
(フッ素系重合体)
電荷輸送層6は、炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有する。本実施形態において、炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体とは、フッ素と結合しているアルキル基の炭素数が2以下であるアルキル基を有する重合体をいい、アルキレンオキサイド構造を有することが好ましい。また、アルキレンオキサイド構造を有することがより好ましい。具体的には、下記一般式(3)の構造が好ましい。
一般式(3)
−0−(CH−(CF−CF
一般式(3)中、kは1又は2を数、mは0又は1を表す。
【0064】
炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体におけるフッ素原子の含有量は、重合体全質量に対し、1質量%以上90質量%以下であることが好ましく、5質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。重合体全質量に対するフッ素原子の含有量が1質量%未満であると、感光体表面の離型性が発揮されにくくなる場合があり、90質量%を超えるとバインダー樹脂との相溶性が悪くなったり、アンカー効果が得られず、界面に移行しやすくなるため、磨耗時に効果が得られにくくなる場合がある。
【0065】
重合体全質量に対するフッ素原子の含有量を1質量%以上90質量%以下にするためには、フッ化アルキル基を主鎖末端よりも側鎖に含有させる方がフッ化アルキル基が多く含有され好ましい。炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体としては、下記一般式(4)で表される構造を有するものが好ましい。
【0066】
【化2】

【0067】
一般式(4)中、Rは−0−(CH−(CF−CFを表し、kは1又は2を、mは0又は1を、nは1以上50,000以下の整数を表す。以下に、一般式(4)で表される構造を有する重合体の具体例として、フッ素系重合体(1)乃至フッ素系重合体(14)を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0068】
【化3】

【0069】
【化4】

【0070】
【化5】

【0071】
炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体は、合成しても市販品を用いても良い。該市販品としては、例えば、AT−1005、AT−1046、AT−1084、AT−1085、AT−1116、PF−136A、F−151N、PF−156A、PF−636、PF−651、PF−652、PF−656、PF−3305、PF−3320、PF−3510、PF−6320、PF−6520(いずれもオムノバ社製)が好適に用いられる。
また、上記に挙げたフッ素系重合体は1種類、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体の含有量は、電荷輸送層全量に対して0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、特に0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましい。炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体の含有量が0.01質量%未満であると、耐久性が不十分となる場合があり、20質量%を超えると電荷トラップの原因となり、電気特性が悪化する場合がある。
また、本発明ではフッ素系樹脂粒子を有することにより、よりクリーニング性の優れた電子写真感光体が提供される。
【0073】
(フッ素系樹脂粒子)
電荷輸送層6はフッ素系樹脂粒子を含有することが好ましい。フッ素系樹脂粒子とはフッ素系樹脂を含む粒子である。ここで、フッ素系樹脂とはフッ素原子を含有する樹脂であり、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びこれらの共重合体が挙げられ、これらの中から1種を単独で又は2種以上を選択して使用することが望ましい。上記の中でも特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0074】
フッ素系樹脂粒子の一次粒径は、0.05μm以上1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。一次粒径が0.05μm未満であると、分散するときに凝集し易くなる傾向があり、他方、1μmを超えると画質欠陥が発生し易くなる傾向がある。
【0075】
フッ素含有樹脂粒子の含有量は、電荷輸送層6の固形分全量に対し、0.1質量%以上40質量%が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましい。フッ素含有樹脂粒子の含有量が0.1質量%未満ではフッ素含有樹脂粒子の分散による改質効果が不十分となる傾向があり、他方、40質量%を越えると光通過性が低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じる傾向がある。
【0076】
(電荷輸送材料)
上記のように、感光層3が、Aが0以上0.10以下、Bが−4.0以上であるときに、前記式(1)の関係を満たす方法として、電荷輸送材料として下記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体を用いる方法が挙げられる。
【0077】
【化6】

【0078】
一般式(2)中、Arは1個以上の置換基を有するベンゼン環、置換基を有していてもよい縮合芳香環、置換基を有していてもよい複素環、及び置換基を有していてもよい縮合複素環からなる群から選択される何れかを表す。Arは置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよい縮合芳香環、置換基を有していてもよい複素環、及び置換基を有していてもよい縮合複素環からなる群から選択される何れかを表す。nは1以上3以下の整数を表す。
【0079】
「1個以上の置換基を有するベンゼン環」
一般式(2)において、ベンゼン環を置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、エステル基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アリール基などが挙げられる。Arを構成するベンゼン環にこのような置換基が結合していると、電荷輸送物質としての特性が高いブタジエニルベンゼンアミン誘導体が得られる。
【0080】
アルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0081】
アルコキシ基としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブチトキシ基、tert−ブチトキシ基などが上げられる。
【0082】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。エステル基としては、特に限定されないが、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、iso−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、iso−ブトキシカルボニル基、sec−ブチトキシカルボニル基、ter
t−ブチトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0083】
アシル基としては、特に限定されないが、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、n−ブチリル基、iso−ブチリル基、バレリル基、iso−バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基などが挙げられる。
【0084】
アルキルアミノ基としては、特に限定されないが、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、iso−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、iso−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、iso−ペンチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、n−
ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基が挙げられる。
【0085】
アリール基としては、特に限定されないが、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。
【0086】
Arを構成するベンゼン環は、2以上の置換基が結合していてもよい。その場合には、2以上の置換基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
「置換基を有していてもよい縮合芳香環」
一般式(2)において、置換基を有していてもよい縮合芳香環としては、特に限定されないが、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。縮合芳香環を置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシ基、エステル基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アリール基などが挙げられる。
これらの置換基の具体例については、「1個以上の置換基を有するベンゼン環」におけるベンゼン環を置換する置換基と同様である。
【0088】
「置換基を有していてもよい複素環」
一般式(2)において、置換基を有していてもよい複素環としては、特に限定されないが、イミダゾール、ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、トリアゾール、チオフェン、ジチオール、チアゾール、チアジアゾールの1価の基が挙げられる。複素環を置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシ基、エステル基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アリール基などが挙げられる。これらの置換基の具体例については、「1個以上の置換基を有するベンゼン環」におけるベンゼン環を置換する置換基と同様である。
【0089】
「置換基を有していてもよい縮合複素環」
一般式(2)において、置換基を有していてもよい縮合複素環としては、特に限定されないが、カルバゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾアゾール、キノリン、キノキサリン、ベンゾチアジンの1価の基が挙げられる。縮合複素環を置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシ基、エステル基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アリール基などが挙げられる。これらの置換基の具体例については、「1個以上の置換基を有するベンゼン環」におけるベンゼン環を置換する置換基と同様である。
【0090】
前記Arの具体例としては、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニルなどのトリル基;2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニルなどのキシリル基;2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2−n−プロピルフェニル、4−n−プロピルフェニル、3−iso−プロピルフェニル、4−iso−プロピルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−n−ブチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−sec−ブチルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルなどの他のアルキルフェニル基;4−アミノフェニルなどのアミノフェニル基;2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−エトキシフェニル、4−エトキシフェニルなどのアルコキシフェニル基;ナフチル、フェナントリルなどの縮合芳香環の基;イミダゾリル、ピラゾイルなどの複素環の基;カルバゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリルなどの縮合複素環の基が挙げられる。ただし、Arは、これらに限定されない。
【0091】
また、溶解性を向上させる観点からは、好ましくはArは炭素数1以上6以下の低級アルキルフェニル基、および炭素数1以上6以下の低級アルコキシフェニル基である。
【0092】
一般式(2)において、Arは、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよい縮合芳香環、置換基を有していてもよい複素環、及び置換基を有していてもよい縮合複素環からなる群から選択される何れかを表す。Arは、それぞれ同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
【0093】
ベンゼン環を置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシ基、エステル基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アリール基などが挙げられる。これらの置換基の具体例については、これらの置換基の具体例については、前記「1個以上の置換基を有するベンゼン環」におけるベンゼン環を置換する置換基と同様である。
【0094】
Arにおける「置換基を有していてもよい縮合芳香環」、「置換基を有していてもよい複素環」、および「置換基を有していてもよい縮合複素環」は、Arおける「置換基を有していてもよい縮合芳香環」、「置換基を有していてもよい複素環」、および「置換基を有していてもよい縮合複素環」と同様である。
【0095】
前記Arの具体例としては、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニルなどのトリル基;2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニルなどのキシリル基;2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2−n−プロピルフェニル、4−n−プロピルフェニル、3−iso−プロピルフェニル、4−iso−プロピルフェニル、2−エチル−6−エチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−n−ブチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−sec−ブチルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルなどの他のアルキルフェニル基;4−アミノフェニルなどのアミノフェニル基;2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−エトキシフェニル、4−エトキシフェニルなどのアルコキシフェニル基;ナフチル、フェナントリルなどの縮合芳香環の基;イミダゾリル、ピラゾイルなどの複素環の基;カルバゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリルなどの縮合複素環の基が挙げられる。ただし、Arは、これらに限定されない。また、Arは、経済性の観点からフェニル基、炭素数1以上6以下のアルキルフェニル基、および炭素数1以上6以下のアルコキシフェニル基が好ましい。
【0096】
一般式(2)において、nは1以上3以下の整数を表す。nが1である場合には、一般式(2)で表される誘導体は、一般式(2)において[ ]で囲まれた部位が、Arに1つ結合しているブタジエニルベンゼンアミン誘導体である。nが2である場合には、[ ]で囲まれた部位が、Arに2つ結合しているブタジエニルベンゼンアミン誘導体であり、nが3である場合には、[ ]で囲まれた部位が、Arに3つ結合しているブタジエニルベンゼンアミン誘導体である。溶解性を向上させる観点からは、好ましくは、nは1である。
【0097】
一般式(2)において、ベンゼン環における窒素原子の結合部位は、特に限定されない。下記化学式における、2位において窒素原子と結合していてもよいし、3位において窒素原子と結合していてもよいし、4位において窒素原子と結合していてもよい。
【0098】
【化7】

【0099】
一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体の具体例として、以下に例示化合物1乃至例示化合物40を示すが、これらに限定されるわけではない。なお、下記表において、「結合位置」とは、ベンゼン環における窒素原子の結合位置を示す。
【0100】
【化8】

【0101】
【化9】

【0102】
【化10】

【0103】
【化11】

【0104】
前記最表面層(電荷輸送層6)における前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体の含有量(2種以上含有する場合は合計含有量)は、前記下記式(1)の関係がより容易に満たせる点で、10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0105】
また、電荷輸送層6は、前記下記式(1)の関係がより容易に満たせる点で、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体2種以上含有することが好ましい。
更に、電荷輸送層6は、前記下記式(1)の関係がより容易に満たせる点で、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体と共に、他の電荷輸送材料を含有することが好ましい。
電荷輸送層6は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して、又は高分子電荷輸送材を含有して形成される。
【0106】
他の電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
電荷輸送材料としては電荷移動度の観点から、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましく、下記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体がより望ましい。
【0108】
【化12】

【0109】
(構造式(a−1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。nは1又は2を示す。Ar及びArは各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C−C(R)=C(R10)(R11)、又は−C−CH=CH−CH=C(R12)(R13)を示し、R乃至R13はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。)
【0110】
【化13】

【0111】
(構造式(a−2)中、R14及びR14’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。R15、R15’、R16、及びR16’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R17)=C(R18)(R19)、又は−CH=CH−CH=C(R20)(R21)を示し、R17乃至R21は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表す。m及びnは各々独立に0以上2以下の整数を示す。)
【0112】
ここで、上記構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び上記構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C−CH=CH−CH=C(R12)(R13)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「−CH=CH−CH=C(R20)(R21)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度、保護層との接着性、前画像の履歴が残ることで生じる残像(以下、「ゴースト」という場合がある)などの観点で優れ望ましい。
【0113】
(無機粒子)
電荷輸送層6にはさらに無機粒子を含有させてもよい。無機粒子の材料としては、例えば、アルミナ、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸銅、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ニッケル、アンチモン、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化錫、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウムが挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を選択して用いられる。これらの中でもシリカが好ましい。
【0114】
シリカ粒子としては、化学炎CVD法により製造されるのが好ましく、具体例としてはクロルシランガスを酸素−水素混合ガス又は炭化水素−酸素混合ガスの高温火炎中で気相反応させてシリカ粒子を得る方法が好ましい。
【0115】
また、無機粒子としては、粒子表面を疎水化されたものが好ましい。疎水化処理剤としては、例えば、シロキサン化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等が用いられる。
【0116】
シロキサン化合物としては、ポリジメチルシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又、シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0117】
また、無機粒子の一次粒径は0.005μm以上2.0μm以下が好ましく、0.01μm以上1.0μm以下がより好ましい。無機粒子の一次粒径が0.005μm未満であると、感光体表面の十分な機械的強度が得られ難くなる傾向があり、また、分散時の凝集が進みやすくなる傾向がある。他方、2μmを超えると、感光体表面粗さが大きくなりクリーニングブレードが摩耗、損傷してクリーニング特性が悪化し、画像ボケが発生し易くなる傾向がある。
【0118】
無機粒子の含有量は、電荷輸送層6の全量に対し、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。無機粒子の含有量が1質量%未満では無機粒子の分散による改質効果が不十分となる傾向があり、他方、30質量%を越えると繰返し使用による残留電位の上昇が生じる傾向がある。
【0119】
(結着樹脂)
電荷輸送層6は、例えば、上述した各成分及び結着樹脂とを適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5上に塗布して乾燥することで形成される。電荷輸送層6は、例えば、上述した各成分及び結着樹脂とを適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層5上に塗布して乾燥することで形成される。
【0120】
結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることが可能である。
【0121】
電荷輸送層6の形成に使用される溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。また、これらの溶剤は。1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。また、電荷輸送層形成用塗布液における電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は、10:1乃至1:5が好ましい。
【0122】
電荷輸送層6中にフッ素系樹脂粒子、さらには無機粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液− 壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
【0123】
(添加剤)
以上説明した感光体において感光層3中には、電子写真装置中で発生するオゾンや窒素酸化物、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。また、表面の平滑性を向上させる目的で、支持体2から最も遠い側の層中にシリコーンオイル等のレベリング剤を添加してもよい。
【0124】
(分散方法)
電荷輸送層6を形成する塗布液の分散例としては、溶媒に溶解した結着樹脂、電荷輸送材料等の溶液中にフッ素系樹脂粒子や無機粒子を分散する方法が挙げられる。
電荷輸送層6を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いてもよい。
【0125】
電荷輸送層6の膜厚は、好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0126】
また、図1に示した電子写真感光体1は、電荷輸送層6が最表面層である場合について説明したが、電荷発生層5と電荷輸送層6との積層の順序は上記実施形態の場合と逆であってもよい。この場合は、最表面層である電荷発生層5が炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有し、感光層3の電荷移動度μ[cm/V・sec]と電場E[V/μm]が、Aが0以上0.10以下、Bが−4.0以上であるときに前記式(1)の関係を満たすことになる。また、電荷輸送層が2層以上ある構成でもよい。
【0127】
更に、図1に示す電子写真感光体1は、機能分離型感光体であるが、電荷発生物質及び電荷輸送性物質の双方を含む感光層(電荷発生/電荷輸送層:以下、単層型感光層と称する)を備えるものであってもよい。この場合は、最表面層である単層型感光層電が炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有し、感光層の電荷移動度μ[cm/V・sec]と電場E[V/μm]が、Aが0以上0.10以下、Bが−4.0以上であるときに前記式(1)の関係を満たすことになる。
【0128】
(画像形成装置/プロセスカートリッジ)
図2は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。画像形成装置100は、図2に示すように。電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置(静電潜像形成手段)9と、転写装置(転写手段)40と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0129】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置(帯電手段)8、現像装置(現像手段)11及びクリーニング装置(トナー除去手段)13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
【0130】
また、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは必要に応じて使用してもよい。
【0131】
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0132】
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、所望の像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0133】
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。
【0134】
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
本実施形態の画像形成装置に用いられるトナーは、高い現像性及び転写性並びに高画質を得る観点から、平均形状係数((ML2/A)×(π/4)×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上10μm以下であることがより望ましく、4μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。この平均形状係数及び体積平均粒子径を満たすトナーを用いることにより、現像性及び転写性が高まり、いわゆる写真画質と呼ばれる高画質の画像が得られる。
【0135】
トナーは、上記平均形状係数及び体積平均粒子径を満足する範囲のものであれば特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0136】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0137】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤からなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を含有して構成される。
【0138】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0139】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0140】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0141】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0142】
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0143】
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0144】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用される。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0145】
現像装置11に用いるトナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0146】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0147】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0148】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
【0149】
粒子径としては、個数平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。平均粒子径が、上記下限値未満であると、研磨能力に欠ける場合があり、他方、上記上限値を超えると、電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなる場合がある。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0150】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等の為、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更に付着力低減や帯電制御の為、それより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものが使用されるが、精密な帯電制御を行う為にはシリカと酸化チタンを併用することが望ましい。
【0151】
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなる。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも放電精製物を除去するために望ましい。
【0152】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、設定される。
【0153】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0154】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いられる。
【0155】
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0156】
図3は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略断面図である。画像形成装置120は、図3に示すように、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0157】
タンデム型の画像形成装置に本発明の電子写真感光体を用いた場合、4本の感光体の電気特性が安定することから、より長期に渡ってカラーバランスの優れた画質が得られる。
【実施例】
【0158】
以下、実施例によって本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0159】
<実施例1>
(下引層の作製)
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g):100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛:110質量部と500質量部のテトラヒドロフランとを攪拌混合し、アリザリン:0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行いアリザリン付与酸化亜鉛を得た。
【0160】
このアリザリン付与酸化亜鉛:60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート、スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製):15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液:38質量部と、メチルエチルケトン:25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
【0161】
得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
【0162】
(電荷発生層の作製)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を前記下引層上に浸漬塗布し、常温(25℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0163】
(電荷輸送層の作製)
次に、前記一般式(2)において、Arが4−メチルフェニル基、Arがフェニル基、nが1である、N,N−ビス−[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−メチルアニリン(化合物1):80質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量32,000):120質量部、及び前記フッ素系重合体(12)(商品名:PF−636、オムノバ社製):0.26質量部を、テトロヒドロフラン560質量部及びトルエン240質量部に十分に溶解混合した。その後、4フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL2、ダイキン工業(株)製):20質量部を加えて混合した。さらに、高圧ホモジナイザーにて分散し、電荷輸送層形成用塗布液を作製した。得られた塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して乾燥し、膜厚30μmの電荷輸送層を形成して、実施例1の感光体(電子写真感光体)を得た。
【0164】
<評価>
上記のようにして作製した感光体を富士ゼロックス社製、DocuCentre C6550iに装着し、28℃、85%RHの高温高湿環境下で、初期帯電電位(VH)を720(−V)、露光後電位(VL)を350(−V)となるように帯電と露光を調整し、A4サイズの用紙を用い、画像濃度50%のハーフトーン画像のプリント試験を行い、帯電電圧、露光後電位、除電後残留電位、画質及び耐久性を評価した。評価結果を表1に示す。なお、画質の判定基準は下記の通りである。
【0165】
(画像の濃度低下)
1枚目の画像と 5,000枚目の画像について、目視で画像の濃度を以下の基準で評価した。
A:画像の濃度低下がほとんど見られない。
B:若干の画像の濃度低下が見られる。
C:画質上問題となる画像の濃度低下が見られる。
【0166】
(最表面層の残膜率)
30,000枚の画像形成テストを行い、渦電流式膜厚測定装置を用いて、30,000枚の画像形成テスト前の最表面層の膜厚に対する30,000枚の画像形成テスト後の最表面層の膜厚の比率を測定し、それを百分率で表し、最表面層の残膜率(%)を算出した。
【0167】
別途、実施例1で作製した感光体の感光層の電荷移動度(μ)(cm/V・sec)を、既述の方法で測定し、前記式(1)におけるAおよびBを算出した。その結果を表1に示す。
【0168】
<実施例2及び3>
実施例1において、電荷輸送層の膜厚を、実施例2では40μm、実施例3では50μmに変更した他は実施例1と同様の方法で、実施例2及び3の電子写真感光体をそれぞれ作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0169】
<実施例4>
実施例1における電荷輸送層の作製において、N,N−ビス−[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−メチルアニリン(化合物1)を一般式(2)においてArが4−n−ブチルフェニル、Arがフェニル、nが1である、N,N−ビス−[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−n−ブチルアニリン(化合物2)に変更し、電荷輸送層の膜厚を40μmに変更した他は実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0170】
<実施例5>
実施例1における電荷輸送層の作製において、N,N−ビス−[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−メチルアニリン(化合物1)80質量部を、N,N−ビス−[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−メチルアニリン(化合物1)40質量部およびN,N−ビス−[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−n−ブチルアニリン(化合物2)40質量部に変更し、電荷輸送層の膜厚を40μmに変更した他は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0171】
<実施例6>
実施例1における電荷輸送層の作製において、N,N−ビスー[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−メチルアニリン(化合物1)80質量部をN,N−ビスー[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−メチルアニリン(化合物1)50質量部および下記式(A)のベンジジン系化合物30質量部(化合物3)に変更し、電荷輸送層の膜厚を40μmに変更した他は実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0172】
【化14】

【0173】
<比較例1、2、3>
実施例1における電荷輸送層の作製において、フッ素系重合体(12)をパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS、CF(CFSOK)に変更し、電荷輸送層の膜厚を比較例1では25μm、比較例2では30μm、比較例3では40μmに変更した他は実施例1と同様の方法で比較例1、2、3の感光体をそれぞれ作製し、実施例1と同様の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0174】
<比較例4、5、6>
実施例1における電荷輸送層の作製において、N,N−ビスー[4−(4−フェニル)−1,3−ブタジエニルフェニル]−4−メチルアニリン(化合物1)を、前記式(A)のベンジジン系化合物(化合物3):30質量部に変更し、電荷輸送層の膜厚を比較例4では25μm、比較例5では30μm、比較例6では40μmに変更した他は実施例1と同様の方法で比較例4、5、6の感光体をそれぞれ作製し、実施例1と同様の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0175】
【表1】

【符号の説明】
【0176】
1 電子写真感光体
2 基体
3 感光層
4 下引き層
5 電荷発生層
6 電荷輸送層
7 電子写真感光体
8 帯電装置
9 露光装置
11 現像装置
13 クリーニング装置
14 潤滑材
40 転写装置
50 中間転写体
100 画像形成装置
120 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体上に設けられ、最表面層が炭素数2以下のフッ化アルキル基を有する重合体を含有する感光層と、を有し、
前記感光層の電荷移動度μ[cm/V・sec]と電場E[V/μm]とが、Aが0以上0.10以下、かつBが−4.0以上であるときに、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする電子写真感光体。
式(1)
logμ = A×E1/2 + B
【請求項2】
前記最表面層が、下記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化1】


(一般式(2)中、Arは1個以上の置換基を有するベンゼン環、置換基を有していてもよい縮合芳香環、置換基を有していてもよい複素環、及び置換基を有していてもよい縮合複素環からなる群から選択される何れかを表す。Arは置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよい縮合芳香環、置換基を有していてもよい複素環、及び置換基を有していてもよい縮合複素環からなる群から選択される何れかを表す。nは1以上3以下の整数を表す。)
【請求項3】
前記最表面層が、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体を2種以上含有することを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記最表面層が、前記一般式(2)で表されるブタジエニルベンゼンアミン誘導体とは異なる電荷輸送材料を含有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記基体の直径が50mm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段、及び、前記電子写真感光体の表面に残存するトナーを除去するトナー除去手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
前記電子写真感光体の表面に残存するトナーを除去するトナー除去手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−185964(P2010−185964A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28827(P2009−28827)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】