説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性基材1と、前記導電性基材上に設けられ、金属酸化物粒子、反応性アクセプター物質、結着樹脂、及び電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素を含有する下引き層2と、前記下引き層上に設けられた感光層3と、を有する電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は高速でかつ高印字の品質が得られ、複写機およびレーザービームプリンター等の画像形成装置において利用されている。画像形成装置において用いられる感光体としては、有機の光導電性材料を用いた有機感光体が主流となっている。有機感光体を製造する場合、例えば、アルミニウム基材の上に下引き層(中間層と呼ばれる場合もある)を形成し、その後、感光層、特に電荷発生層および電荷輸送層からなる感光層を形成する場合が多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、導電性支持体上に中間層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該中間層が特定のポリアミド樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、感光体に形成されたトナー像を記録媒体に転写して画像を形成する画像形成装置において、前記感光体は、導電性基材と、前記導電性基材の周囲に形成された中間層と、前記中間層の周囲に形成された感光層と、を有し、前記中間層は、平均粒径が100nm以下の金属酸化物微粒子を結着樹脂中に含有することを特徴とする画像形成装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、導電性基体上に光導電層を設けた電子写真感光体において、導電性基体と光導電層との間に白色顔料と結着剤樹脂を主成分とし、かつ白色顔料と結着剤樹脂の使用割合が容量比で1/1〜3/1の範囲にある中間層を設けると共に、導電性基体と該中間層との間に結着剤樹脂による下引き層を設けたことを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0006】
特許文献4には、導電性基体と、該基体上に形成された中間層と、該中間層上に形成された感光層とを備える電子写真感光体であって、前記中間層が、金属酸化物微粒子及び結着樹脂を含有し、28℃、85%RHで106V/mの電場を印加したときの体積抵抗が108〜1013Ω・cmであり、且つ15℃、15%RHで106V/mの電場を印加したときの体積抵抗が28℃、85%RHで106V/mの電場を印可したときの体積抵抗の500倍以下であることを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【0007】
特許文献5には、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を備え、前記電子写真感光体の外周面を所定方向に移動させながら帯電、露光、現像及び転写を行う画像形成装置であって、帯電から現像までに要する時間が可変となるように、前記電子写真感光体の外周面の移動速度を制御する制御手段を更に備え、前記電子写真感光体が少なくとも下引き層と感光層を有し、前記下引き層が少なくとも金属酸化物微粒子と該金属酸化物微粒子と反応可能な基を有するアクセプター性化合物とを含有することを特徴とする画像形成装置が開示されている。
【0008】
特許文献6には、導電性支持体上に、金属酸化物粒子を含有する中間層、感光層を順次積層して有する電子写真感光体において、該金属酸化物粒子が350〜500nmの波長領域に吸収極大を有する色素で被覆されたことを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−11483号公報
【特許文献2】特開2002−123028号公報
【特許文献3】特開平5−80572号公報
【特許文献4】特開2003−186219号公報
【特許文献5】特開2006−30698号公報
【特許文献6】特開2010−243984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1に係る発明は、
導電性基材と、
前記導電性基材上に設けられ、金属酸化物粒子、反応性アクセプター物質、結着樹脂、及び電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素を含有する下引き層と、
前記下引き層上に設けられた感光層と、
を有する電子写真感光体。
請求項2に係る発明は、
前記色素の吸収波長域が、500nm以上800nm以下の範囲内にある請求項1に記載の電子写真感光体。
請求項3に係る発明は、
前記金属酸化物粒子が、少なくとも1種のカップリング剤で表面処理されている請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項4に係る発明は、
前記カップリング剤が、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の電子写真感光体。
請求項5に係る発明は、
前記金属酸化物粒子が、酸化錫、酸化チタン、及び酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
請求項6に係る発明は、
前記金属酸化物粒子の平均1次粒径が、100nm以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
請求項7に係る発明は、
前記反応性アクセプター物質が、アントラキノン誘導体である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電子写真感光体
請求項8に係る発明は、
前記アントラキノン誘導体が、下記一般式(1)で表される構造を有する請求項7に記載の電子写真感光体。
【化1】


(一般式(1)中、nは1以上3以下の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は炭素数1以上10以下のアルコシキ基を表す。)
請求項9に係る発明は、
前記下引き層の厚みが15μm以上である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
請求項10に係る発明は、
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
請求項11に係る発明は、
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像が前記記録媒体に転写された後、前記帯電手段により帯電される前に、前記電子写真感光体の表面に光を照射して除電する除電手段と、
を備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、下引き層が金属酸化物粒子、反応性アクセプター物質、結着樹脂、及び電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素を含有しない場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項2に係る発明によれば、前記色素の吸収波長域が前記範囲外にある場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項3に係る発明によれば、前記金属酸化物粒子がカップリング剤で表面処理されていない場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項4に係る発明によれば、前記カップリング剤が、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、又はアルミネート系カップリング剤でない場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項5に係る発明によれば、前記金属酸化物粒子が、酸化錫、酸化チタン、又は酸化亜鉛でない場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項6に係る発明によれば、前記金属酸化物粒子の平均1次粒径が、100nmを超える場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項7、8に係る発明によれば、前記反応性アクセプター物質が、アントラキノン誘導体でない場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項9に係る発明によれば、前記下引き層の厚みが、15μm未満である場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項10、11に係る発明によれば、電子写真感光体の下引き層が金属酸化物粒子、反応性アクセプター物質、結着樹脂、及び電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素を含有しない場合に比べ、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化が抑制されるプロセスカートリッジ、画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略図である。
【図5】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略図である。
【図7】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図8】他の本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図9】実施例においてプリントした画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
例えば、印刷市場向け電子写真感光体(適宜、感光体と記す)に対しては、画質安定性に関して特に要求が厳しく、1枚目と1000枚目の濃度に変化がないこと、前サイクルの履歴による濃度変化(いわゆるゴースト)、あるいは同じ画像を数千枚の単位で書き続けた場合に次サイクルの濃度変化(いわゆる焼きつき)をできるだけ小さくすることが要求される。そのためには、感光体として電位のサイクル変動や前サイクルの履歴をできるだけ小さくする必要がある。
【0015】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基材と、前記導電性基材上に設けられ、金属酸化物粒子、反応性アクセプター物質、結着樹脂、及び電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素を含有する下引き層と、前記下引き層上に設けられた感光層と、を有する。
【0016】
本発明者は、上記構成を有する電子写真感光体を用いることにより、連続して同じ画像を形成した後、次のサイクルの画像の濃度変化(焼き付き)が抑制されることを見出した。本実施形態に係る電子写真感光体を用いることで、焼き付きが抑制される理由は必ずしも明確ではないが、以下のように推察される。
【0017】
金属酸化物粒子を分散した下引き層の吸収波長は、その金属酸化物粒子に依存するが、主に用いられる酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等は、吸収端が400nm付近にあり、主に紫外線を吸収する。下引き層に反応性アクセプターを含有する場合には金属酸化物粒子の吸収に加えてアクセプターの吸収が加わる。材料によっては吸収波長が長波長側に移動して、露光レーザーの発振波長や、露光LEDあるいは除電光の波長も吸収するようになる場合がある。光による書き込みが同じ場所に続く場合、下引き層が光吸収することにより、色素増感現象が起こり、下引き層の抵抗が低下することがある。抵抗低下は金属酸化物粒子が吸収しないが、金属酸化物粒子の周りに存在する反応性アクセプターが光吸収し、金属酸化物粒子へ光キャリアが移動することにより抵抗が低下するものと考えられる。このような場合、下引き層が除電光を吸収する色素を含むことにより、反応性アクセプターに光吸収させない、あるいは光吸収を少なくすることで、金属酸化物粒子への光キャリア移動を制限して、下引き層の抵抗変動を小さくしているのではないかと考えられる。
【0018】
図1乃至図6は、本実施形態に係る感光体の層構成の例を示す概略図である。図1に示す感光体は、導電性基材1と、基材1の上に形成された下引き層2と、下引き層2の上に形成された感光層3と、から構成されている。
また、図2に示すように、感光層3は電荷発生層31と電荷輸送層32との2層構造でもよい。さらに、図3及び図4に示すように、感光層3上又は電荷輸送層32上に保護層5を設けてもよい。また、図5及び図6に示すように、下引き層2と感光層3との間又は下引き層2と電荷発生層31との間に中間層4を設けてもよい。
【0019】
(導電性基材)
導電性基材1としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケルなどの金属ドラムとしてもよいし、シート、紙、プラスチック又はガラス上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケルークロム、ステンレス鋼、銅、インジウム等の金属を蒸着したり酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着したものとしてもよいし、金属箔をラミネートしたり、或いは、カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、塗布することによって導電処理したもの等が用いられる。
また、導電性基材1の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。尚、導電性基材を金属パイプとした場合、表面は素管のままであってもよいし、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0020】
(下引き層)
下引き層2は、導電性基材上に設けられ、金属酸化物粒子、反応性アクセプター物質、結着樹脂、及び電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素を含有する。
【0021】
‐金属酸化物粒子‐
金属酸化物粒子としては、望ましくは粒径が100nm以下、特に10nm以上100nm以下の導電粉が望ましく用いられる。ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。金属酸化物粒子の平均1次粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)により観察し測定される値である。
金属酸化物粒子の粒径が10nm以下の場合、金属酸化物粒子の表面積が大きくなり、分散液の均一性が低下する可能性がある。一方、金属酸化物粒子の粒径が100nmを越える場合、2次粒子、あるいはそれ以上の高次粒子は1μm程度の粒径になると予想され、下引き層内で金属酸化物粒子の存在する部分と存在しない部分、いわゆる海島構造となりやすく、ハーフトーン濃度の不均一など画質欠陥が発生する可能性がある。
【0022】
下引き層2は、電子写真プロセス速度に対応した周波数で適切なインピーダンスを得ることが必要であり、そのため金属酸化物粒子としては10Ω・cm以上1010Ω・cm以下程度の粉体抵抗とすることが望ましい。中でも上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粒子を用いるのが望ましい。金属酸化物粒子の抵抗値が10Ω・cmよりも低いと、インピーダンスの粒子添加量依存性の傾きが大きすぎて、インピーダンスの制御が難しくなる可能性がある。一方、金属酸化物粒子の抵抗値が1010Ω・cmよりも高いと残留電位の上昇を引き起こす場合がある。
【0023】
金属酸化物粒子は、必要に応じて分散性等の諸特性の改善のため少なくとも1種のカップリング剤で表面処理されていることが望ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
具体的なカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルピロホフェート)、イソプロピルトリ(N―アミノエチルーアミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
これらの金属酸化物粒子は、上記カップリング剤で表面処理後、必要に応じて抵抗値の環境依存性等の改善のために熱処理を行ってもよい。熱処理温度は150℃以上300℃以下、処理時間は30分以上5時間以下が望ましい。
【0025】
下引き層における金属酸化物粒子の含有量は、電気特性維持の観点から、30質量%以上60質量%以下が望ましく、35質量%以上55質量%以下がより望ましい。
【0026】
金属酸化物粒子を分散させる方法としては公知の分散方法が用いられる。例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどが挙げられる。
【0027】
‐反応性アクセプター物質‐
反応性アクセプター物質とは、下引き層2に含有される金属酸化物粒子の表面と化学反応する材料、あるいは金属酸化物粒子の表面に吸着する材料を意味し、金属酸化物粒子の表面に選択的に存在し得る材料を指す。具体的な材料例としては、キノン系、アントラキノン系、クマリン系、フタロシアニン系、トリフェニルメタン系、アントシアニン系、フラボン系、フラーレン系、ルテニウム錯体、キサンテン系、ベンゾキサジン系、ポルフィリン系の材料が挙げられる。材料の安全性、入手性、電子輸送能力を考慮すると、アントラキノン系の材料(アントラキノン誘導体)が望ましく、特に下記一般式(1)で表される構造を有することが望ましい。
【0028】
【化2】

【0029】
一般式(1)中、nは1以上3以下の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は炭素数1以上10以下のアルコシキ基を表す。
【0030】
反応性アクセプター物質の添加量は、化学反応あるいは吸着する相手である金属酸化物粒子の金属酸化物粒子の表面積及び含有量と、各材料の電子輸送能力から決められるが、通常は0.01質量%以上20質量%以下の範囲で用いられる。より望ましくは0.1質量%以上10質量%以下の範囲で用いられる。反応性アクセプター物質の添加量が0.1質量%以下であるとアクセプター物質の効果が発現し難い可能性がある。逆に20質量%を越えると金属酸化物粒子同士の凝集を引き起こしやすくなり、金属酸化物粒子が下引き層内で分布が不均一になりやすく、良好な導電路を形成しにくくなる。そのため、残留電位を上昇させるだけでなく、黒点の発生、ハーフトーン濃度の不均一が発生する可能性がある。
本実施形態で用いられる反応性アクセプター物質の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
‐結着樹脂‐
結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物などが用いられる。
【0035】
金属酸化物粒子を予備混合あるいは予備分散したものを、結着樹脂に分散させて下引き層形成用塗布液が得られる。
下引き層形成用塗布液を得るために用いる溶剤としては前述した結着樹脂を溶解する公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系の溶剤が用いられる。これらの溶剤は単独あるいは2種類以上混合して用いてもよい。
【0036】
露光装置にレーザー等のコヒーレント光を用いた場合、モアレ像を防止する必要がある。そのためには下引き層の表面粗さを、使用する露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)以上1/2λ以下に調整する。下引き層中に樹脂ボールを添加して表面粗さを調整してもよい。樹脂ボールとしてはシリコーン樹脂、架橋型PMMA樹脂等が用いられる。
【0037】
‐色素‐
電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素(以下、「特定の色素」又は単に「色素」と称する場合がある。)は、公知の色素から、除電光を吸収するものを選択すればよい。前述のように光吸収により発生した光キャリアを金属酸化物粒子に移動させないように、金属酸化物粒子の表面と反応しない、あるいは、吸着しにくい特定の色素を選択する必要がある。望ましい色素は、画像形成装置において用いられる除電光の波長によって異なるが、例えば、680nmの除電光には青色の色素を用いることが有効である。
【0038】
なお、除電光の極大波長は電子写真感光体の感光層に感度がある波長であるが、下引き層に含まれる特定の色素の吸収極大波長は、除電光の上記極大波長に一致している必要はなく、除電光の極大波長が色素の吸収波長域に含まれていればよい。ただし、特定の色素の吸収極大波長は除電光の極大波長にできるだけ近いことが望ましく、除電光の極大波長が特定の色素の吸収極大波長の半値幅にあることが望ましい。
例えば、除電光の極大波長が600nm以上700nm以下の範囲にある場合には、下引き層に含まれる特定の色素の吸収波長域は、500nm以上800nm以下の範囲内にあることが望ましく、550nm以上750nm以下の範囲内にあることがより望ましい。
本実施形態で用いられる色素の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0039】
【化6】

【0040】
下引き層における特定の色素の含有量は、色素の種類にもよるが、除電光を効果的に吸収する観点から、1×10−6mol/g以上1×10−3mol/g以下が望ましく、より望ましくは、1×10−5mol/g以上1×10−4mol/g以下である。
【0041】
下引き層の塗布方法としては浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法など公知の塗布方法が用いられる。
【0042】
下引き層の厚みは、外来異物によるリーク防止の観点から、15μm以上が望ましく、15μm以上30μm以下であることがより望ましく、20μm以上25μm以下が更に望ましい。
【0043】
下引き層は、ビッカース強度が35以上50以下であることが望ましい。
【0044】
(中間層)
下引き層と感光層との間に、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために中間層4を設けてもよい。
中間層4を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などがある。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く、環境による電位変化が少なく、繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0045】
シリコン化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどである。これらのなかでも特に望ましく用いられるシリコン化合物は、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0046】
有機ジルコニウム化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0047】
有機チタン化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0048】
有機アルミニウム化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0049】
また、中間層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0050】
中間層4は上層の濡れ性改善の他に、電気的なブロキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす可能性がある。したがって、中間層4を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定されることが望ましい。
【0051】
(電荷発生層)
感光層の電荷発生層31は、電荷発生物質を真空蒸着して形成するか、電荷発生物質を、有機溶剤、結着樹脂、添加剤等とともに分散して塗布することにより形成される。
本実施形態において、電荷発生材料としては、公知の電荷発生物質を使用してよいが、特に優れた性能が得られ、望ましく使用される電荷発生物質として、フタロシアニン系顔料が用いられる。それにより、特に高感度で、繰り返し安定性の優れる電子写真感光体が得られる。また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いてもよい。特に望ましく用いられる電荷発生材料の具体例を以下に示す。
【0052】
電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.6゜、18.3゜、23.2゜、24.2゜、27.3゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.6゜、18.3゜、23.2゜、24.2゜、27.3゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶がよい。
【0053】
本実施形態に用いる電荷発生物質は、例えば、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造される。上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、さらには数種の混合系、水とこれら有機溶剤の混合系があげられる。
溶剤は、顔料結晶に対して、1部以上200部以下、望ましくは10部以上100部以下の範囲(質量比)で用いる。
処理温度は、0℃以上溶剤の沸点以下、望ましくは10℃以上60℃以下の範囲で行う。
【0054】
また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤が用いられる。磨砕助剤は顔料に対し0.5倍以上20倍以下、望ましくは1倍以上10倍以下用いればよい。
また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御される。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が望ましく、濃度70%以上100%以下、望ましくは95%以上100%以下のものが使用され、溶解温度は、−20℃以上100℃以下、望ましくは0℃以上60℃以下の範囲に設定される。濃硫酸の量は、顔料結晶の質量に対して、1倍以上100倍以下、望ましくは3倍以上50倍以下の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが望ましい。
【0055】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択される。ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
望ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。これらの中で特にポリビニルアセタール樹脂が望ましく用いられる。
【0056】
また、電荷発生物質と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1乃至1:10の範囲が望ましい。塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から選択してもよい。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす溶剤であれば、いかなるものでも使用してもよい。
【0057】
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法が用いられる。
分散の際、粒子を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。
【0058】
電荷発生層形成用塗布液には電気特性向上、画質向上などのために種々の添加剤を添加してもよい。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。
【0059】
シランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどである。
【0060】
ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0061】
チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0062】
アルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いられる。
【0063】
電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
電荷発生層の厚みは、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0064】
(電荷輸送層)
電荷輸送層に含有される電荷輸送物質としては、公知のものならいかなるものでも使用してよいが、下記に示すものが例示される。2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質、あるいは以上に示した化合物に由来する基を主鎖又は側鎖に有する重合体などがあげられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合せて使用される。
【0065】
電荷輸送層の結着樹脂は公知のものを使用してよいが、電気絶縁性のフィルムとして形成される樹脂が望ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリーN―カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
これらの結着樹脂は、単独又は2種類以上混合して用いられるが、特にポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送材との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れ望ましく用いられる。
結着樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は、いずれの場合も電気特性低下、膜強度低下に注意して設定すればよい。
【0067】
電荷輸送層の厚みは5μm以上50μm以下、望ましくは10μm以上35μm以下が適当である。
電荷輸送層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。塗布に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0068】
さらに、本実施形態の電子写真感光体には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
たとえば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0069】
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニルフォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われ、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果が得られる。
【0070】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
ベンゾフェノン系光安定剤として2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系系光安定剤として2−(−2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル−)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。その他の化合物として2,4,ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメートなどがある。
【0071】
また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめてもよい。本実施形態の感光体に使用される電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特によい。
【0072】
また、塗布液には、塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加してもよい。
【0073】
(保護層)
本実施形態の電子写真感光体は、必要に応じて感光層上に保護層5を設けてもよい。この保護層は、積層構造からなる感光体では帯電時の電荷輸送層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する為に用いられる。この保護層は、公知の保護層が用いられる。
【0074】
保護層の厚みは1μm以上20μm以下、望ましくは2μm以上10μm以下が適当である。
保護層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
塗布に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いてよいが、下層を溶解しにくい溶剤を用いることが望ましい。
【0075】
本実施形態の製造法により得られた感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの画像形成装置に用いられる。
【0076】
また、本実施形態に係る感光体は、一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いられる。また、本実施形態の製造法を用いて製造された感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式においても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0077】
<画像形成装置>
次に、本実施形態の画像形成装置について説明する。
図7は本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図7に示す画像形成装置100は、回転可能に設けられた本実施形態のドラム状(円筒状)の電子写真感光体7を備えている。電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の外周面の移動方向に沿って、帯電装置8、露光装置10、現像装置11、転写装置12、クリーニング装置13及び除電器(イレーズ装置)14がこの順で配置されている。
【0078】
−帯電装置−
帯電装置8は、コロナ帯電方式の帯電装置であり、電子写真感光体7を帯電させる。帯電装置8は、電源9に接続されている。帯電装置8としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。
【0079】
−露光装置−
露光装置10は、帯電した電子写真感光体7を露光して電子写真感光体7上に静電潜像を形成する。露光装置10としては、例えば、電子写真感光体7の表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体7の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザーの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよいが、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、露光装置10としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0080】
−現像装置−
現像装置11は、静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する。現像剤は、重合法により得られる体積平均粒子径3μm以上9μm以下のトナー粒子を含有することが望ましい。現像装置11は、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する容器内に、現像領域で電子写真感光体7に対向して配置された現像ロールが備えられた構成が挙げられる。
【0081】
−転写装置−
転写装置12は、電子写真感光体7上に現像されたトナー像を被転写媒体に転写する。転写装置12としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0082】
−クリーング装置−
クリーニング装置13は、転写後の電子写真感光体7上に残存するトナーを除去する。クリーニング装置13は、電子写真感光体7に対して線圧10g/cm以上150g/cm以下で接するブレード部材を有することが望ましい。クリーニング装置13は、例えば、筐体と、クリーニングブレードと、クリーニングブレードの電子写真感光体7回転方向下流側に配置されるクリーニングブラシと、を含んで構成される。また、クリーニングブラシには、例えば、固形状の潤滑剤が接触して配置される。
【0083】
−除電装置−
除電装置(イレーズ装置)14は、トナー像を転写した後の電子写真感光体7の表面に除電光を照射して、電子写真感光体の表面に残留する電位を除電する。除電装置14は、例えば、電子写真感光体7の軸方向幅方向全域にわたって除電光を照射して、電子写真感光体7の表面に生じた露光装置10による露光部と非露光部との電位差を除去する。
【0084】
そして、除電装置14は、極大波長に対する電子写真感光体7の表面層の吸光度が0.01以上0.020以下(望ましくは0.010以上0.015以下、より望ましくは0.010以上0.013以下)となるよう除電光を照射する。
【0085】
また、除電光の極大波長に対する電子写真感光体7の表面層の吸光度は、次のように求められる。まず、表面層を単層で作製し、その膜の可視から赤外波長の吸光度を分光光度計で測定する。また、膜厚を干渉膜厚計などで測定して、単位厚さあたりの吸光度に変換する。
【0086】
除電光の極大波長とは、光のスペクトルの中で山状に突出する波長で、電子写真感光体7の感光層(電荷発生層)に感度がある波長である。但し、当該極大波長が、除電光の最大のものである必要はない。
【0087】
除電光の極大波長に対する電子写真感光体7の表面層の吸光度を調整する手法としては、除電光の種類を選択する(極大波長を変える)手法や、電子写真感光体7の表面層の組成を調整する手法が挙げられる。
【0088】
除電装置14の光源としては、特に制限はなく、例えば、タングステンランプ(例えば白色光)、発光ダイオード(LED:例えば赤色光)等が挙げられる。
【0089】
除電装置14の除電光の極大波長は、電荷発生層での感度や表面層材料によって変わるが、550nm以上800nm以下の範囲であることが望ましく、600nm以上750nm以下の範囲であることがより望ましい。
また、除電光の強度は、露光装置10により照射する露光光の強度の3倍以上20倍以下の範囲、望ましくは6倍以上10倍以下であることがよい。
【0090】
−定着装置−
画像形成装置100は、転写工程後の被転写媒体にトナー像を定着させる定着装置15を備えている。定着装置としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
【0091】
図8は本実施形態の電子写真感光体を用いた接触帯電型画像形成装置の一例を示す概略図である。本実施形態に係る画像形成装置101では感光体7と接触する帯電用部材8が設けられている。
上記接触帯電用部材は、感光体表面に接触するように配置され、電圧を感光体に直接印加し、感光体表面を予め定めた電位に帯電させるものである。この接触帯電用部材にはアルミニウム、鉄、銅などの金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化けい素、金属酸化物などの金属酸化物粒子を分散したものなどが用いられる。
【0092】
接触帯電用部材に用いる金属酸化物の例としてはZO、SnO、TiO、In、MoO等、あるいはこれらの複合酸化物があげられる。また、エラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与しても良い。
【0093】
更に、表面に被覆層を設けることもよい。この被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が単独、あるいは併用して用いられる。また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いてもよい。これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させてもよい。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤または界面活性剤を含有させてもよい。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラー型、ブレード型、ベルト型、ブラシ型、などがあげられる。さらに、この接触帯電用部材の抵抗は、望ましくは10Ωcm以上1014Ωcm、さらに望ましくは10Ωcm以上1012Ωcm以下の範囲が良い。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、又は、直流+交流の形で印加してもよい。
【0094】
次に、本実施形態に係る画像形成装置100,101の動作について説明する。まず、電子写真感光体7が矢印Aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置8により負に帯電する。
【0095】
帯電装置8によって表面が負に帯電した電子写真感光体7は、露光装置10により露光され、表面に静電潜像が形成される。
【0096】
電子写真感光体7における静電潜像の形成された部分が現像装置11に近づくと、現像装置11により、静電潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
【0097】
トナー像が形成された電子写真感光体7が矢印Aに方向にさらに回転すると、転写装置12によりトナー像は記録紙Pに転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
【0098】
画像が形成された記録紙Pは、定着装置15でトナー像が定着される。
【0099】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、前記した本実施形態に係る電子写真感光体7を備えたプロセスカートリッジを画像形成装置に着脱させる形態であってもよい。
本実施形態に係るプロセスカートリッジの構成は、少なくとも、前記本実施形態に係る電子写真感光体7を備えてえればよく、電子写真感光体7のほかに、例えば、帯電装置8、露光装置10、現像装置11、転写装置12、及びクリーニング装置13、及び除電装置14から選択される少なくとも1つの構成部材を備えていてもよい。
【0100】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体7の周囲であって、転写装置12よりも電子写真感光体7の回転方向下流側でクリーニング装置13よりも電子写真感光体7の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、クリーニング装置13よりも電子写真感光体の回転方向下流側で帯電装置8よりも電子写真感光体7の回転方向上流側に、電子写真感光体7の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
【0101】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体7に形成したトナー像を中間転写体に転写した後、記録紙Pに転写する中間転写方式の画像形成装置を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
【0102】
なお、本実施形態に係る電子写真感光体は、除電装置を備えていない画像形成装置にも適用してもよい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
[表面処理例1]
酸化亜鉛(商品名:MZ−300、テイカ株式会社製)100質量部、シランカップリング剤としてN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランの10質量%のトルエン溶液を10質量部、トルエン200質量部を混合して攪拌を行い、2時間還流を行った。その後10mmHgにてトルエンを減圧留去し、135℃で2時間焼き付け処理を行った。
【0105】
[表面処理例2、3]
表1に示した条件以外は表面処理例1と同様にして表面処理を行った。
【0106】
【表1】

【0107】
[実施例1]
表面処理例1で表面処理した酸化亜鉛:33質量部、ブロック化イソシアネート スミジュール3175(住友バイエルンウレタン社製):6質量部、前記アクセプター「1−2」):1質量部、前記青色色素「2−1」(吸収波長域:530nm以上700nm以下):0.6質量部、メチルエチルケトン:25質量部を30分間混合し、その後ブチラール樹脂 BM−1(積水化学社製):5質量部、シリコーンボール トスパール120(東芝シリコーン社製):3質量部、レベリング剤 シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部を添加し、サンドミルにて3時間の分散を行い、分散液(下引き層形成用塗布液)を得た。
さらに、この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ357mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引き層を得た。
【0108】
次に、電荷発生材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用い、その15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製):10質量部およびn−ブチルアルコール:300質量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、上記下引き層上に浸漬塗布し、100℃、10分乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0109】
さらに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1、1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン:4部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量4万):6質量部とをテトラヒドロフラン:25質量部、クロルベンゼン:5質量部を加えて溶解した塗布液を電荷発生層上に形成し、130℃、40分の乾燥を行うことにより膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
【0110】
以上のようにして得られた感光体を富士ゼロックス社製複写機Docu Centre f 1100に搭載し、28℃/80%RHの高温高湿下において、図9に示すような画像をA4横送りで連続10万枚のプリントテストを行った。除電光の極大波長は660nmである。
プリントテスト後、ハーフトーン画像(40%濃度画像)をプリントし以下の評価基準によりハーフトーン画像の濃度ムラを確認したところ濃度ムラは確認されなかった。
○:濃度ムラなし
△:濃度ムラ発生するが、実使用上問題なし
×:濃度ムラ発生、使用に耐えられない
【0111】
[実施例2及び3]
下引き層の形成において表面処理例2、3で表面処理した金属酸化物粒子を用いた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0112】
[比較例1]
下引き層の形成において青色色素を加えなかった以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0113】
[比較例2]
下引き層の形成において酸化亜鉛としてMZ−300(テイカ社製:表面処理なし)を用い、青色色素を用いなかった以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0114】
[実施例4]
下引き層の形成において青色色素として前述の「2−2」(吸収波長域: 520nm以上690nm以下)を0.6質量部用いた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0115】
[実施例5]
下引き層の形成において青色色素として前述の「2−3」(吸収波長域:550nm以上700nm以下)を0.6質量部用いた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0116】
[実施例6]
下引き層の形成においてアクセプターとして前述の「1−9」を1質量部用いた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0117】
[実施例7]
下引き層の形成においてアクセプターとして前述の「1−14」を1.5質量部用いた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0118】
[実施例8]
下引き層の形成においてアクセプターとして前述の「1−21」を1質量部用いた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0119】
[実施例9]
下引き層の形成において、表面処理を実施していない金属酸化物粒子を用いた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0120】
[実施例10]
下引き層の形成において青色色素を0.3質量部加えた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。

【0121】
[比較例3]
下引き層の形成において下記に示す色素(吸収波長域:450nm以上、550nm以下)を加えた以外は実施例1と同様にして感光体を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0122】
【化7】

【0123】
【表2】

【符号の説明】
【0124】
1 導電性基材、2 下引き層、3 感光層、4 中間層、5 保護層、7 電子写真感光体、8 帯電装置(帯電手段の一例)、9 電源、10 露光装置(露光手段の一例)、11 現像装置(現像手段の一例)、12 転写装置(転写手段の一例)、13 クリーニング装置(クリーニング手段の一例)、14 除電装置(除電手段の一例)、15 定着装置(定着手段の一例)、31 電荷発生層、32 電荷輸送層、100,101 画像形成装置、P 記録紙(記録媒体の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と、
前記導電性基材上に設けられ、金属酸化物粒子、反応性アクセプター物質、結着樹脂、及び電子写真感光体の表面を除電するための除電光を吸収する色素を含有する下引き層と、
前記下引き層上に設けられた感光層と、
を有する電子写真感光体。
【請求項2】
前記色素の吸収波長域が、500nm以上800nm以下の範囲内にある請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子が、少なくとも1種のカップリング剤で表面処理されている請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記カップリング剤が、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミネート系カップリング剤から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子が、酸化錫、酸化チタン、及び酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子の平均1次粒径が、100nm以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記反応性アクセプター物質が、アントラキノン誘導体である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電子写真感光体
【請求項8】
前記アントラキノン誘導体が、下記一般式(1)で表される構造を有する請求項7に記載の電子写真感光体。
【化1】


(一般式(1)中、nは1以上3以下の整数を表し、Rは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又は炭素数1以上10以下のアルコシキ基を表す。)
【請求項9】
前記下引き層の厚みが15μm以上である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記トナー像が前記記録媒体に転写された後、前記帯電手段により帯電される前に、前記電子写真感光体の表面に光を照射して除電する除電手段と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83727(P2013−83727A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222245(P2011−222245)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】