説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置および電子写真感光体の製造方法

【課題】ゴーストの改善と黒ポチの抑制を高いレベルで両立された中間層を有する電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体、第一中間層、第二中間層、および感光層を順次積層した電子写真感光体において、第一中間層は、金属酸化物粒子と特定の構造のアミン化合物を含有し、第一中間層におけるアミン化合物の含有量は、第一中間層中の金属酸化物粒子に対して1質量%以上15質量%以下であり、第二中間層は、金属酸化物粒子を含有し、アミン化合物を含有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置および電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に搭載される電子写真感光体として、導電性支持体上に、中間層と、該中間層上に形成された有機系の電荷発生物質(有機光導電性物質)、および電荷輸送物質を含有する感光層とを有する有機電子写真感光体(以下、単に「電子写真感光体」という)がある。中間層は、電荷ブロッキング機能を有し、導電性支持体から感光層側への正孔注入を抑制させて、黒ポチなどの画像欠陥の発生を抑えるはたらきがある。特許文献1では、支持体と感光層の間に、アミン化合物を含有する中間層を有し、黒ポチの発生を抑制した電子写真感光体が提案されている。
【0003】
しかしながら、中間層の電気的抵抗が高過ぎると、感光層で発生した電子が感光層内部に滞留し、ゴーストの発生の原因になる。したがって、中間層の電気的抵抗値は、ある程度小さくする必要があり、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを両立させることが求められている。特に、近年、カラー化に代表される高画質化がすすんでおり、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とをより高いレベルで両立させることが求められている。
【0004】
このような、ゴーストの改善と黒ポチの抑制を両立させるため、複数の中間層に金属酸化物粒子やシランカップリング剤を含有させる方法が行われている。特許文献2では、導電性支持体上に、金属酸化物粒子を含有しない中間層と、金属酸化物粒子およびバインダー樹脂を含有する中間層を順次積層した電子写真感光体が提案されている。特許文献3では、金属酸化物粒子を含む中間層と感光層との間に、シランカップリング剤を中間層よりも高濃度で含有するシランカップリング剤含有層が設けられた電子写真感光体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−283571号公報
【特許文献2】特開2006−221152号公報
【特許文献3】特開2008−065171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のいずれのアミン化合物、金属酸化物粒子やシランカップリング剤を用いた中間層においても、ゴーストの改善と黒ポチの抑制を高いレベルで両立できていなかった。
【0007】
本発明の目的は、ゴーストの改善と黒ポチの抑制を高いレベルで両立された中間層を有する電子写真感光体を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。
すなわち、本発明は、導電性支持体、該導電性支持体上に形成された第一中間層、該第一中間層上に形成された第二中間層、該第二中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該第一中間層は、金属酸化物粒子とアミン化合物を含有し、
該アミン化合物は、下記式(1)で示される化合物、下記式(2)で示される化合物および下記式(2)で示される化合物の重合体の少なくとも一種であり、
該第一中間層における該アミン化合物の含有量は、該第一中間層中の金属酸化物粒子に対して1質量%以上15質量%以下であり、
該第二中間層は、金属酸化物粒子を含有し、該アミン化合物を含有しないことを特徴とする電子写真感光体に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、X11、X12、X13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が2以上4以下のアルキル基、または炭素数が2以上4以下のヒドロキシアルキル基を示し、X11、X12、X13のうち少なくとも1つは炭素数が2以上4以下のアルキル基、または炭素数が2以上4以下のヒドロキシアルキル基である。式(2)中、R21、R24は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、またはエチル基を示す。R22、R23は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示す。式(2)中の炭素数は2以上4以下である。
【0012】
また、本発明は、前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0013】
また、本発明は、前記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置に関する。
【0014】
また、本発明は、前記電子写真感光体の製造方法であって、前記金属酸化物粒子と前記アミン化合物とを含む第一中間層用塗布液を前記導電性支持体上に塗布して、これを乾燥させて前記第一中間層を形成する第一の工程と、前記金属酸化物粒子を含み、前記アミン化合物を含まない第二中間層塗布液を前記第一中間層上に塗布して、これを乾燥させて前記第二中間層を形成する第二の工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを高いレベルで両立した電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。また、本発明によれば、前記電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の層構成を説明するための図である。
【図3】ゴースト画像評価の際に用いるゴースト評価用印字を説明するための図である。
【図4】1ドット桂馬パターンの画像パターンを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に用いる電子写真感光体の層構成は、導電性支持体、該導電性支持体上に形成された第一中間層、該第一中間層上に形成された第二中間層、および該第二中間層上に形成された感光層という構成である。
【0018】
本発明の電子写真感光体は、金属酸化物粒子と上述のアミン化合物とを含む第一中間層用塗布液と、金属酸化物粒子を含み、上述のアミン化合物を含まない第二中間層用塗布液を用いて製造される。そして、導電性支持体上に第一中間層用塗布液を塗布して、これを乾燥させて第一中間層を形成する第一の工程と、第一中間層上に第二中間層用塗布液を塗布して、これを乾燥させて第二中間層を形成する第二の工程により、本発明の電子写真感光体が製造できる。
【0019】
また、感光層は、主に、正孔輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と正孔輸送物質を含有する正孔輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層とが挙げられる。本発明においては、積層型感光層が好ましい。
【0020】
本発明における電子写真感光体の好ましい構成の概略が図2に示される。図2に示される電子写真感光体においては、導電性支持体21上に第一中間層22、第一中間層上に第二中間層23、第二中間層上に電荷発生層24、電荷発生層上に正孔輸送層25が積層されている。また、必要に応じて正孔輸送層上に保護層を設けてもよい。
【0021】
本発明の第一中間層、第二中間層は、導電性支持体と感光層の間に設けられる。第一中間層および第二中間層は、以下の構成を有することにより、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを高いレベルで両立することができる。
【0022】
第一中間層は、金属酸化物粒子とアミン化合物を含有し、該アミン化合物は、式(1)または式(2)で示される化合物、または式(2)で示される化合物の重合体の少なくとも一種である。該アミン化合物の含有量は、第一中間層中の金属酸化物粒子に対して1質量%以上15質量%以下である。第二中間層は、金属酸化物粒子を含有し、該アミン化合物を含有しない。
【0023】
本発明者らは、本発明の電子写真感光体が、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを高いレベルで両立させる理由を以下のように推測している。
【0024】
ゴーストは電界強度と感光層(電荷発生層)中の残留電荷量が関係していると考えられる。感光体が露光されて表面電位が低くなっている明部においては、感光体内部の電界強度が弱くなり、感光層(電荷発生層)内の残留電荷が多くなる。そして、次の帯電時その影響が無視できなくなったときに、ゴースト現象が発生する。また黒ポチにおいては、電界強度が強い場合に導電性支持体側から感光層(電荷発生層)まで正孔注入が起きることが原因であると考えられる。
【0025】
本発明のアミン化合物を第一中間層に含有させ、第二中間層に含有しないことにより、電荷(正孔、電子)移動を調整することができる。つまり、金属酸化物粒子を含有しアミン化合物を含有しない第二中間層では、感光層から導電性支持体側への電子移動が起こりやすく、感光層の残留電荷を低減することができる。一方、アミン化合物を含有する第一中間層では、アミン化合物により導電性支持体から感光層側への正孔注入をブロックし、黒ポチの発生を抑制する。さらに、第一中間層におけるアミン化合物を、第一中間層中の金属酸化物粒子に対して、1質量%以上15質量%以下含有させる。これにより、第一中間層中、ならびに第一中間層と第二中間層との界面での残留電荷を低減し、導電性支持体側からの正孔注入のブロックを両立させていると考えられる。このことにより、ゴーストの改善と黒ポチの抑制との両立に優れた効果を奏すると考えられる。
【0026】
また、第二中間層にアミン化合物を含有させた場合には、感光層から導電性支持体側への電子移動をブロックして、感光層に残留電荷が多くなることにより、ゴースト改善効果が十分に得られないと考えられる。第一中間層にアミン化合物を含有させない場合では、導電性支持体から感光層側への正孔注入がブロックされず、黒ポチの抑制効果が十分に得られないと考えられる。
【0027】
本発明において、第一中間層におけるアミン化合物の含有量は、第一中間層中の金属酸化物粒子に対して1質量%以上15質量%以下である。1質量%以上であれば、導電性支持体から感光層側への正孔注入を十分にブロックすることができ、黒ポチの抑制効果が十分に得られる。一方、感光層との間に第二中間層が存在する第一中間層の場合、アミン化合物の量が15質量%までであれば、アミン化合物を含有させたことによる電子移動のブロックは抑えられ、残留電荷が抑えられ、ゴーストの改善効果が得られる。
【0028】
前記アミン化合物の含有量は、第一中間層中の金属酸化物粒子に対して3質量%以上5質量%以下であると、優れたゴーストの改善効果が得られるため、より好ましい。
【0029】
本発明のアミン化合物について説明する。本発明のアミン化合物は、下記式(1)で示される化合物、下記式(2)で示される化合物および下記式(2)で示される化合物の重合体の少なくとも一種である。
【0030】
【化2】

【0031】
式(1)中、X11、X12、X13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が2以上4以下のアルキル基、または炭素数が2以上4以下のヒドロキシアルキル基を示し、X11、X12、X13のうち少なくとも1つは炭素数が2以上4以下のアルキル基、または炭素数が2以上4以下のヒドロキシアルキル基である。式(2)中、R21、R24は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、またはエチル基を示す。R22、R23は、それぞれ独立に水素原子、またはメチル基を示す。式(2)中の炭素数は2以上4以下である。
【0032】
式(1)で示される化合物は、正孔をブロックするために塩基性の強いものが望ましいため、第二級アミンまたは第三級アミンであることが好ましい。さらに好ましくは、トリエタノールアミンである。
【0033】
以下に、上記式(1)または上記式(2)で示される化合物の具体例を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
次に、上記式(2)で示される化合物の重合体の具体例を示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2において、ポリエチレンイミンは、例示化合物(2−1)のエチレンイミンの重合体、ポリプロピレンイミンは、例示化合物(2−2)のプロピレンイミンの重合体、ポリブチレンイミンは、例示化合物(2−3)の1,2−ブチレンイミンの重合体である。これらのなかでも、ポリエチレンイミンが好ましい。
【0038】
本発明において、感光層から導電性支持体への電子移動を効果的に行うため、第一中間層および第二中間層に炭素数が5以上の官能基を有するアミン化合物を含有させないことが好ましい。
【0039】
本発明における第一中間層、および第二中間層は、金属酸化物粒子を含有する。金属酸化物粒子としては、酸化スズ(SnO)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、または酸化アルミニウム(Al)の粒子が挙げられる。これらのうち、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛の粒子を用いることが好ましい。
【0040】
本発明において第二中間層が含有する金属酸化物粒子の体積平均粒径は、1nm以上9nm以下であると好ましい。9nm以下であると、第二中間層の感光層界面側で金属酸化物粒子の表面積が増加し感光層からの電子を第二中間層が受け取りやすく、かつ第二中間層内での電子の移動度が十分に確保されることにより、ゴースト改善の効果がより得られ、好ましい。本発明において、第二中間層が含有する金属酸化物粒子の体積平均粒径の測定方法は以下のとおりである。
【0041】
SEM(走査型顕微鏡)により100,000倍に拡大撮影した第二中間層層の断面写真の1nm〜100nmの金属酸化物粒子と、SEMに付属させたXMA(X線マイクロアナライザ)などの元素分析手段によって金属酸化物粒子の元素でマッピングされた断面写真を対照する。次に、金属酸化物粒子100個の一次粒子の投影面積を測定し、測定された各金属酸化物粒子の投影面積に等しい円の相当径を、各金属酸化物粒子径として求めた。その結果に基づいて、金属酸化物粒子の体積平均粒径の算出を行なった。
【0042】
本発明において、第一中間層に用いられる樹脂は、本発明のアミン化合物を第二中間層に混入させないために、第二中間層の塗布溶剤に不溶な樹脂が用いることが好ましい。特に、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
本発明において、第二中間層に用いられる樹脂は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アルキド樹脂、アルキド−メラミン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0044】
本発明において、第一中間層を形成するための第一中間層用塗布液は、金属酸化物粒子、本発明のアミン化合物を樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる。本発明の電子写真感光体の第一中間層は、この方法で得られた第一中間層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0045】
第一中間層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
【0046】
また、本発明の電子写真感光体の第一中間層には、必要に応じて、有機樹脂微粒子、レベリング剤を含有させてもよい。第一中間層の膜厚は、0.5μm以上40μm以下であることが好ましく、更に導電性支持体の表面欠陥を被覆するため観点から、5μm以上40μm以下が好ましい。特には10μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明において、第二中間層を形成するための第二中間層用塗布液は、金属酸化物粒子を、樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる。あるいは、金属酸化物粒子のゾル溶液に、樹脂を溶解させた液を加えて得られる液を第二中間層用塗布液としてもよい。本発明の電子写真感光体の第二中間層は、これらの方法で得られた第二中間層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0048】
第二中間層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
【0049】
また、本発明の電子写真感光体の第二中間層には、必要に応じて、有機樹脂微粒子、レベリング剤を含有させてもよい。第二中間層の膜厚は、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、特には0.6μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明のアミン化合物は、第一中間層形成時に膜中に有するよう、乾燥条件を適宜選択する必要がある。すなわち、アミン化合物の沸点未満の乾燥温度で第一中間層を形成することが好ましい。
【0051】
〔導電性支持体〕
本発明に用いられる導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、金、ステンレスなどの金属または合金などが挙げられる。また、ポリエステル、ポリカーボネートの絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金などの金属あるいは、酸化インジウム、酸化スズなどの導電材料の薄膜を形成したものが挙げられる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子のような導電性粒子を樹脂などに含浸した支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。導電性支持体の形状としては、円筒状、ベルト状が挙げられるが、円筒状が好ましい。
【0052】
また、干渉縞を抑制するために導電性支持体はその表面を適度に荒らしておくことが好ましい。具体的には、上記導電性支持体をホーニング、ブラスト、切削、電界研磨等の処理をした導電性支持体を用いることが好ましい。
【0053】
〔感光層〕
本発明の電子写真感光体において、第二中間層上には感光層が形成される。感光層は、上述の単層型感光層、積層型感光層のどちらでもよく、本発明において好ましくは積層型感光層である。積層型感光層においては、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して電荷発生層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液を第二中間層上に塗布し、これを乾燥させることによって電荷発生層を形成することができる。さらに、正孔輸送物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して正孔輸送層用塗布液を調製し、正孔輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、これを乾燥させることによって正孔輸送層を形成することができる。
【0054】
本発明の電子写真感光体の感光層および電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、アントアントロン顔料、ピラントロン顔料、キサンテン色素、キノンイミン色素、スチリル色素などの有機光導電性物質が挙げられる。これら電荷発生物質の中でも、感度の観点から、フタロシアニン顔料やアゾ顔料が好ましい。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0055】
積層型感光層において、本発明の電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、ポリアクリレート、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリブタジエン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられる。より好ましくは、ブチラール樹脂である。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0056】
電荷発生層の膜厚は0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、特には0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
【0057】
分散方法としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、電荷発生物質1質量部に対して、結着樹脂が0.3質量部以上4質量部以下が好ましい。
【0058】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
【0059】
本発明の電子写真感光体の感光層および正孔輸送層に用いられる正孔輸送物質は、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物、チアゾール系化合物などが挙げられる。正孔輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0060】
積層型感光層において、正孔輸送層に用いられる結着樹脂としては、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂などが挙げられる。特には、ポリアリレート、ポリカーボネートが好ましい。これらは、単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0061】
正孔輸送物質と結着樹脂との割合は、結着樹脂1質量部に対して、正孔輸送物質が0.3質量部以上10質量部以下が好ましい。また、正孔輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、フッ素原子含有樹脂やシリコーン含有樹脂、これらの樹脂により構成される微粒子を含有してもよい。また、金属酸化物粒子や無機微粒子を含有してもよい。
【0062】
正孔輸送層の膜厚は5μm以上40μm以下であることが好ましく、特には10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
【0063】
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0064】
〔電子写真装置〕
図1に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0065】
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度をもって回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、回転過程において帯電手段3により、負の所定電位に均一に帯電される。次いで、原稿からの反射光であるスリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。帯電手段3に印加する電圧は、直流成分に交流成分を重畳した電圧、又は直流成分のみの電圧のどちらでもよい。
【0066】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーで反転現像により現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段6からの転写バイアスによって転写材Pに順次転写されていく。転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送される。また、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ搬送される。
【0067】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段7によって転写残りの現像剤(転写残トナー)の除去を受けて清浄面化される。さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光11により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、転写手段として、ベルト状やドラム状などの中間転写体を用いた中間転写方式の転写手段を採用してもよい。
【0068】
本発明においては、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7などの構成要件の中から複数のものを選択し、これらを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持して構成してもよい。そして、このプロセスカートリッジを、複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9とすることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0070】
(実施例1)
直径30mm、長さ260.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003)を導電性支持体とした。
【0071】
次に、以下の方法で第一中間層を形成した。酸化亜鉛(商品名:MZ−150、テイカ(株)製)60部、トリエタノールアミン1.8部、ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部、ブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)10部、及びメチルエチルケトン90部を混合した。次に、この溶液57部に対して、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散処理した。得られた分散液100部に、触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.005部添加し、第一中間層用塗布液を調製した。この第一中間層用塗布液を導電性支持体上に浸漬塗布し、これを170℃で40分の乾燥させることによって、膜厚が15μmの第一中間層を形成した。
【0072】
次に、以下の方法で第二中間層を形成した。塩化第二スズ五水和物0.2モル(56部)を200mlの水に溶解し、撹拌しながら28質量%のアンモニア水を添加することでpH1.5の白色酸化スズ微粒子含有スラリーを得た。得られた酸化スズ微粒子含有スラリーを温度70℃まで加熱した後、温度50℃前後まで自然冷却し、純水を加え1Lの酸化スズ微粒子含有スラリーとし、遠心分離機を用いて固液分離を行った。この含水固形分に800mlの純水を加えて、ホモジナイザーにより分散させた後、遠心分離機を用いて固液分離を行なうことで洗浄を行った。洗浄後の含水固形分に純水を75ml加えて酸化スズ微粒子含有スラリーを調製した。得られた酸化スズ微粒子含有スラリーに、分散安定剤としてアンモニア水溶液0.5部を加え撹拌し、透明になったところで温度を70℃まで昇温した後、自然冷却することで固形分濃度20質量%の酸化スズゾル溶液を得た。ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部、ブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)10部、及びメチルエチルケトン90部、前記酸化スズゾル溶液を十分に混合した。そこで得られた混合液100部に、触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.005部添加し、第二中間層用塗布液を調製した。この第二中間層用塗布液を、前記第一中間層の上に浸漬塗布し、170℃で40分間乾燥させ、膜厚1μmの第二中間層を形成した。
【0073】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10部を用意した。それに、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散処理した。分散処理後、酢酸エチル250部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、前記第二中間層の上に浸漬塗布し、これを100℃で10分間乾燥させることによって、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
【0074】
次に、下記式(4)で示される構造を有するアミン化合物8部、下記式(5)で示される構造を有するアミン化合物1部、及び下記式(6)で示される構造単位を有するポリアリレート(重量平均分子量Mw:110000)10部を、最終重量比率でモノクロルベンゼン:ジメトキシメタンが7:3になる溶剤に溶解させることによって、正孔輸送用塗布液を調製した。この正孔輸送用塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、温度120℃で1時間乾燥することによって、膜厚18μmの正孔輸送層を形成した。このようにして、第一中間層、第二中間層、電荷発生層、および正孔輸送層を有する電子写真感光体を2本製造した。
【0075】
【化3】

【0076】
【化4】

【0077】
【化5】

【0078】
1本の電子写真感光体は、第二中間層の断面写真をSEMにより撮影し、金属酸化物粒子の一次粒子を100個以上測定して体積平均粒径を求めた。その結果、体積平均粒径は9nmであった。
【0079】
(実施例2〜12)
実施例1において、第一中間層用塗布液中のアミン化合物、および金属酸化物粒子の種類と含有量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。金属酸化物粒子の種類としては、酸化スズ(NanoTek SnO、シーアイ化成製)、または酸化チタン(CREL、石原産業製)である。
【0080】
(実施例13〜17)
実施例1において、第一中間層塗布液中のアミン化合物、および金属酸化物粒子の種類と含有量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0081】
(実施例18〜29)
実施例1において、第一中間層塗布液中のアミン化合物、および金属酸化物粒子の種類と含有量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0082】
(実施例30〜59)
実施例1において、第一中間層塗布液中のアミン化合物、および金属酸化物粒子の種類と含有量を表4に示すように変更した。次に、第二中間層用塗布液を、酸化亜鉛(商品名:MZ−150、テイカ製)60部、ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部、ブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)10部、及びメチルエチルケトン120部を混合した。次に、この混合溶液57部に対して、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散処理をした。得られた分散液100部に触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.005部添加し、第二中間層用塗布液を調製した。この第二中間層用塗布液を、第一中間層上に浸漬塗布し、170℃で40分間乾燥させることにより、膜厚1μmの第二中間層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。第二中間層の断面写真をSEMにより撮影し、金属酸化物粒子の一次粒子を100個以上測定して体積平均粒径を求めた。その結果、体積平均粒径は35nmであった。
【0083】
(比較例1)
第一中間層にアミン化合物を含有させなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0084】
(比較例2)
第一中間層に例示化合物(1−4)を第一中間層中の金属酸化物粒子に対して、0.1質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0085】
(比較例3)
第一中間層に例示化合物(1−4)を第一中間層中の金属酸化物粒子に対して、16質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0086】
(比較例4)
第一中間層に例示化合物(1−4)を第一中間層中の金属酸化物粒子に対して、25質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0087】
(比較例5)
第一中間層にアミン化合物を含有させず、第二中間層に例示化合物(1−4)を第二中間層中の金属酸化物粒子に対して、5質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0088】
(比較例6〕
第一中間層に例示化合物(1−4)を第一中間層中の金属酸化物粒子に対して、3質量%含有させ、第二中間層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0089】
(比較例7〜10)
第一中間層に、比較例7ではメチルアミン、比較例8ではペンチルアミン、比較例9では1,1−ペンチルイミン、比較例10ではポリペンチレンイミンを、それぞれ第一中間層中の金属酸化物粒子に対して、3質量%含有させた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。なお、メチルアミン、ペンチルアミン、1,1−ペンチルイミン、ポリペンチレンイミンは、本発明の式(1)または式(2)で示されないアミン化合物である。
【0090】
(比較例11)
第一中間層を設けず、導電性支持体上に第二中間層を設けた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0091】
【表3】

【0092】
表3、4中、例示化合物の含有量は、第一中間層中の金属酸化物粒子に対する含有比率(質量%)を表す。
【0093】
【表4】

【0094】
(評価)
実施例1〜59及び比較例1〜10の電子写真感光体の評価方法については、以下の通りである。
【0095】
評価装置としては、ヒューレットパッカード製のレーザービームプリンタ LaserJet4700を用いた。温度22.5℃、湿度50%RHの環境下にて、シアン色用のプロセスカートリッジに製造した電子写真感光体を装着して、シアンのプロセスカートリッジのステーションに装着し、初期と5000枚通紙耐久後の画像の評価を行った。ドラム表面電位は、初期暗部電位が−500V、初期明部電位が−170Vになるように設定した。電子写真感光体の表面電位の測定は、カートリッジを改造し、現像位置に電位プローブ(model6000B−8、トレック・ジャパン社製)を装着し、ドラム中央部の電位を表面電位計(model344、トレック・ジャパン社製)を使用して測定した。通紙時は各色の印字率2%の文字画像において、レター紙にて20秒毎に1枚出力する間欠モードでフルカラープリント操作を行い、前露光を点灯せずに5000枚の画像出力を行った。そして、評価開始時と5000枚終了時に、1枚目にベタ白画像を1枚出力した後、ゴースト評価用印字(図3に示すように、画像の先頭部に、白地(白画像)中に四角のベタ画像を出した後、図4に示す1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像を作製。図3中、「ゴースト」と記載されている部分は、ベタ画像起因のゴーストの出現の有無を評価するゴースト部である。ゴーストが出現する場合は図3中の「ゴースト」に出現する。)を連続5枚出力した。
【0096】
(黒ポチ画像の評価)
黒ポチ評価は、前記ベタ白画像を用い、直径(φ)0.3mm以下の黒ポチの数の確認を電子写真感光体1周分に換算して行ない、以下の基準で評価を行い、結果を表5,6に示す。Aは黒ポチが0個、Bは黒ポチが1個以上3個以下、Cは黒ポチが3個以上4個以下、Dは黒ポチが5個以上存在するものである。本発明において、A、B、およびCが本発明の効果が得られているレベルであり、その中でもAは優れているレベルであると判断した。一方、Dは本発明が得られていないレベルと判断した。
【0097】
(ゴースト画像の評価)
ゴースト評価は、ゴースト評価用印字において、1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像濃度とゴースト部の画像濃度との濃度差を、分光濃度計(商品名:X−Rite504/508、X−Rite(株)製)で測定した。1枚のゴースト評価用印字で10点測定し、それら10点の平均を算出し1枚の結果とし、前述の5枚のゴースト評価用印字すべてを同様に測定した。それらの平均値を求めた。ハーフトーン画像濃度とゴースト部の画像濃度との濃度差をゴースト画像濃度差とし、ゴースト画像濃度差の値が小さいほど、ゴースト特性が良好であることを意味する。以下の基準で評価を行い、結果を表5,6に示す。Aはゴースト画像濃度差が0.01未満、Bはゴースト画像濃度差0.01以上0.02未満、Cはゴースト画像濃度差0.02以上0.03未満、Dはゴースト画像濃度差0.03以上0.04未満、Eはゴースト画像濃度差が0.04以上の濃度差である。本発明において、A、B、およびCが本発明の効果が得られているレベルであり、その中でもAは優れているレベルであると判断した。一方、D、Eは本発明の効果が得られていないレベルと判断した。
【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
表5、表6の結果より、本発明の電子写真感光体は、初期ゴースト、5000枚後ゴースト、および初期黒ポチのいずれについても良好な結果が得られ、ゴーストの改善と黒ポチの抑制を高いレベルで両立することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段(一次帯電手段)
4 露光光(画像露光光)
5 現像手段
6 転写手段(転写ローラー)
7 クリーニング手段(クリーニングブレード)
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
11 前露光光
P 転写材(紙など)
21 導電性支持体
22 第一中間層
23 第二中間層
24 電荷発生層
25 正孔輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体、該導電性支持体上に形成された第一中間層、該第一中間層上に形成された第二中間層、該第二中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該第一中間層は、金属酸化物粒子とアミン化合物を含有し、
該アミン化合物は、下記式(1)で示される化合物、下記式(2)で示される化合物および下記式(2)で示される化合物の重合体の少なくとも一種であり、
該第一中間層における該アミン化合物の含有量は、該第一中間層中の金属酸化物粒子に対して1質量%以上15質量%以下であり、
該第二中間層は、金属酸化物粒子を含有し、該アミン化合物を含有しないことを特徴とする電子写真感光体。
【化1】


(式(1)中、X11、X12、X13は、それぞれ独立に水素原子、炭素数が2以上4以下のアルキル基、または炭素数が2以上4以下のヒドロキシアルキル基を示し、X11、X12、X13のうち少なくとも1つは炭素数が2以上4以下のアルキル基、または炭素数が2以上4以下のヒドロキシアルキル基である。式(2)中、R21、R24は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、またはエチル基を示す。R22、R23は、それぞれ独立に水素原子、またはメチル基を示す。式(2)中の炭素数は2以上4以下である。)
【請求項2】
前記アミン化合物の含有量が、第一中間層中の金属酸化物粒子に対して3質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記式(1)で示される化合物が、第二級アミンまたは第三級アミンであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記式(1)で示される化合物が、トリエタノールアミンであることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記式(2)で示される化合物の重合体が、ポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記第二中間層が含有する金属酸化物粒子の体積平均粒径が、1nm以上9nm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法であって、前記金属酸化物粒子と前記アミン化合物とを含む第一中間層用塗布液を前記導電性支持体上に塗布して、これを乾燥させて前記第一中間層を形成する第一の工程と、
前記金属酸化物粒子を含み、前記アミン化合物を含まない第二中間層用塗布液を前記第一中間層上に塗布して、これを乾燥させて前記第二中間層を形成する第二の工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150351(P2012−150351A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10048(P2011−10048)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】