説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】帯電むらに起因した画像欠陥を抑制し、かつ膜の剥がれやクラックの無い、膜の状態が優れた導電層を有する電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に、体積平均粒径が0.1μm以上の導電性粒子を含有する導電層、中間層および感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体であって、前記導電層が特定の繰り返し構造単位を特定の割合で含むポリオレフィン樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気特性、光学特性および画像欠陥がない高品位な画質が要求される。画像欠陥の代表的なものとしては、画像スジ、白地部分の黒点、黒字部分の白点、白地部分の地カブリが挙げられる。さらには、デジタル複写機やレーザービームプリンターのレーザーダイオードを光源として露光を行う場合には、支持体の表面形状や感光体の膜厚ムラの要因によって発生する干渉縞が挙げられる。前記の画像欠陥を抑制する方法として、感光層と支持体の間に層を設ける方法がある。感光層と支持体の間の層には、電子写真感光体に電圧を印加したとき支持体から電荷注入が起こらないように電気的ブロッキング機能が要求される。これは支持体から電荷注入があると、帯電能の低下、画像コントラストの低下、反転現像方式の場合は先述の白地に黒点や地カブリの原因になり画質を低下させる。
【0003】
一方、感光層と支持体の間の層の電気的抵抗が高すぎると、感光層で発生した電荷が感光層内部に滞留し、結果として残留電位の上昇や繰り返し使用による電位変動の原因になる。したがって、電気的ブロッキング機能以外にも、感光層と支持体の間の層の電気的抵抗値をある程度小さくする必要がある。感光層と支持体の間の層の電気抵抗値を小さくする手段として、層中に金属酸化物を分散させる方法がある。特許文献1、2および3には、感光層と支持体の間の層にアナターゼ型酸化チタンを含有させることによって層の抵抗値を下げて導電性を確保し、かつ電気的ブロッキング機能も有する層が開示されている。
しかしながら、支持体と感光層の間の層には、導電性、電気的バリア性の他に、支持体の欠陥を隠蔽させる隠蔽性の機能も要求される場合がある。それらの特性を達成する手段として、支持体上に導電性材料を含有した層を厚く設けた上に、電気的ブロッキング機能を有し導電性材料を含有しない樹脂層を薄く設ける積層タイプの層が知られている。
【0004】
一般的に、感光層と支持体の間の層のうち、上記の導電性材料を含有した層は導電層と呼ばれ、導電性材料を含有しない層は中間層、下引き層またはバリア層と呼ばれる。導電層には、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂といった熱で硬化させる樹脂が用いられる。その他、導電層に用いる樹脂として、誘電特性に優れるポリオレフィン樹脂を用いることも検討されたが、溶解性が悪く安定した導電層用の塗布液を調製することが容易では無く、ポリオレフィン樹脂を導電層の樹脂として用いることは困難であった。
【0005】
また、電子写真感光体に接触配置した帯電部材(接触帯電部材)に電圧を印加し、電子写真感光体を帯電する接触帯電方式を採用した電子写真装置が広く普及している。このうち、ローラー形状の接触帯電部材を電子写真感光体の表面に接触させ、これに直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することにより電子写真感光体の帯電を行う方式がAC/DC接触帯電方式である。また、接触帯電部材に直流電圧のみの電圧を印加することにより電子写真感光体の帯電を行う方式がDC接触帯電方式である。
【0006】
しかしながら、上述の接触帯電方式の課題として、帯電の不均一性、直接電圧を印加することによる感光体の放電絶縁破壊の発生が挙げられ、帯電の不均一性は特にDC接触帯電方式において顕著なものとなる。帯電の不均一性は、感光体表面の各部に均一な帯電がなされず、被帯電面の移動方向に対して直角な方向にスジ状の帯電むら(帯電スジ)を生じてしまうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−077976号公報
【特許文献2】特開2005−010591号公報
【特許文献3】特開2005−017470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述のDC接触帯電方式に用いられた場合でも、帯電むらに起因した画像欠陥を抑制し、膜の状態が優れた導電層を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明から、以下の電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置が提供される。
導電性支持体上に、体積平均粒径が0.1μm以上の導電性粒子を含有する導電層、中間層および感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体であって、
前記導電層が下記(A1)、(A2)および(A3)を有するポリオレフィン樹脂を含有し、
前記ポリオレフィン樹脂は、(A1)、(A2)および(A3)の質量比率(%)が下記式(1)を満たす
ことを特徴とする電子写真感光体。
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦30 式(1)
(A1):下記式(11)で示される繰り返し構造単位
【化1】

(式(11)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基を示す。)(A2):下記式(21)または(22)で示される繰り返し構造単位
【化2】

(式(21)および(22)中、R21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基または−Y21COOH(式中、Y21は、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される1価の基を示し、R25およびR26は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはフェニル基を示し、X21は、−Y22COOCOY23−(式中、Y22およびY23は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される2価の基を示す。ただし、R21〜R24のうち少なくとも1つは−Y21COOHで示される1価の基である。)
(A3):下記式(31)、(32)、(33)または(34)で示される繰り返し構造単位
【化3】

(式(31)〜(34)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、R41〜R43は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R51〜R53は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
【0010】
前記電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段およびトナー像を転写材に転写した後の前記電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0011】
前記電子写真感光体、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を行って前記電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えた電子写真装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、帯電むらに起因した画像欠陥を抑制し、かつ膜の状態が非常に優れた導電層を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジあるいは電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の層構成の一例を概略する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に導電層、中間層および感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体である。そして、導電層は、体積平均粒径が0.1μm以上の導電性粒子と特定の構造を持つポリオレフィン樹脂を含有する。
【0015】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は、上記(A1)、(A2)および(A3)を有し、かつ(A1)、(A2)および(A3)の質量比率(%)が下記式(1)を満たす。
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦30 式(1)
【0016】
上記式(1)は、(A1)〜(A3)の総量に対する、(A2)の質量比率を表しており、(A2)の質量比率(%)が0.01質量%未満の場合は、当該ポリオレフィン樹脂を含有した導電層用塗布液を用い、導電性支持体上に導電層用塗布液を塗布して導電層を形成した場合に、導電性支持体からの剥がれが発生し、良好な導電層を得ることが困難になる。一方、(A2)の質量比率(%)が、30質量%より大きい場合は、導電層に起因して電子写真感光体の誘電特性が変化し、前述のDC帯電装置と組み合わせて電子写真プロセスとして用いた場合に、帯電ムラに端を発するスジ画像が発生しやすい。
【0017】
上記ポリオレフィン樹脂における(A2)は、カルボン酸基およびカルボン酸無水物基のいずれか一方または両方を有する。当該カルボン酸基およびカルボン酸無水物基の少なくとも一方を有する(A2)を構成するためのモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドが挙げられる。
【0018】
中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。カルボン酸基およびカルボン酸無水物基の少なくとも一方を有する(A2)は、ポリオレフィン樹脂中では共重合体として存在する。当該共重合体の形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。
したがって、上記(A2)の式(21)中、R21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、または−Y21COOH(式中、Y21は、単結合、炭素数1〜7のアルキレン基、または、アリーレン基を示す。)で示される1価の基であることが好ましく、R21〜R24のうち少なくとも1つは−Y21COOHで示される1価の基であることが好ましい。また、R21〜R24のうち3つが水素原子で、1つが−COOHである場合、R21〜R24のうち2つが水素原子で、1つがメチル基で、1つが−COOHである場合、および、R21〜R24のうち2つが水素原子で、2つが−COOHである場合がより好ましい。
また、上記(A2)の式(22)中、R25およびR26は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基またはフェニル基であることが好ましく、X21は、−Y22COOCOY23−(式中、Y22およびY23は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1〜7のアルキレン基、または、アリーレン基を示す。)で示される2価の基であることが好ましい。また、R25およびR26は水素であり、X21は、−COOCO−であることがより好ましい。
【0019】
なお、上記無水マレイン酸のような不飽和カルボン酸無水物は、樹脂の乾燥状態では隣接するカルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成している。しかしながら、例えば、塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。また、本発明において、樹脂のカルボキシル基量を基準としてカルボン酸基またはカルボン酸無水物基を有する化合物の量を規定する場合には、樹脂中のカルボン酸無水物基はすべて開環してカルボキシル基をなしていると仮定して算出する。
【0020】
さらに、本発明に用いるポリオレフィン樹脂は、(A1)、(A2)および(A3)の質量比率(%)が下記式(2)および下記式(3)を満たすことがより好ましい。
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦10 式(2)
(A1)/(A3)=55/45〜99/1 式(3)
【0021】
さらに、(A1)、(A2)および(A3)の質量比率(%)が下記式(4)を満たすことがより好ましい。
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦5 式(4)
ポリオレフィン樹脂が上記式(2)および(3)を満たすことで、本発明の効果が向上するため、好ましい。また、上記式(4)を満たすことで、本発明の効果がさらに向上するため、より好ましい。
【0022】
また、上記(A1)/(A3)は、60/39≦(A1)/(A3)≦93/1を満たすことによっても、本発明の効果が向上し、より好ましい。なお、上記ポリオレフィン樹脂における、上記(A1)、(A2)および(A3)の総量の質量比率(%)は、ポリオレフィン樹脂中の他の成分の影響により本発明の効果が阻害されないよう、90%〜100質量%であることが好ましい。
【0023】
上記(A1)を構成するためのモノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンのようなアルケンが挙げられ、上記ポリオレフィン樹脂中において(A1)は、これらのモノマーを共重合させて得られる共重合体として含有される。上記アルケンは単独または混合物として用いることもできる。これらの中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンのような炭素数2から4のアルケンがより好ましく、エチレンが特に好ましい。
したがって、上記(A1)の式(11)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、R11〜R14はすべて水素であることがより好ましい。
【0024】
また、上記(A3)を構成するためのモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。また、上記ポリオレフィン樹脂中において(A3)は、これらのモノマーを共重合させて得られる共重合体として含有される。
式(31):(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル酸エステル類。
式(32):マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルのようなマレイン酸エステル類。
式(33):(メタ)アクリル酸アミド類。
式(34):メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル類、ビニルエステル類を塩基性化合物でようなケン化して得られるビニルアルコール。
これらモノマーは単独または混合物として用いることが可能である。これらの中で、式(31)で示される(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、あるいは(メタ)アクリル酸エチルが特に好ましい。
したがって、式(31)〜(34)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、R41〜R43は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R51〜R53は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示すが、上記(A3)中(31)であって、R41は、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
【0025】
本発明において、上記ポリオレフィン樹脂は、エチレンと、(メタ)アクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸エチルと、無水マレイン酸とをそれぞれモノマーとして共重合して得られる三元共重合体を含むことが特に好ましい。当該三元共重合体の具体例として、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体が挙げられる。当該アクリル酸エステル構造単位は、樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸構造単位に変化することがあるが、そのような場合には、それらの変化を加味した各構造単位の比率が規定の範囲にあればよい。
【0026】
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂には、上述の(A1)〜(A3)以外の他の成
分が、本発明の効果を阻害しない程度に、共重合体に含有されていてもよい。(A1)〜(A3)以外の成分を構成するモノマーの具体例として、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化炭素が挙げられる。
【0027】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂の分子量は特に限定されないが、通常分子量が10,000〜50,000のものが用いられ、好ましくは20,000〜30,000である。また、その合成法も特に限定されない。上記ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂を構成するためのモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得ることが可能である。
【0028】
上記ポリオレフィン樹脂は、水性媒体に分散もしくは溶解されていることが好ましい。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体からなる媒体であり、水溶性の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコールなどが挙げられ、水性媒体中10〜40質量%含有することが好ましい。
【0029】
本発明に用いられる導電層は、体積平均粒径が0.1μm以上の導電性粒子を含有する。当該導電性粒子としては、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子を用いることができるが、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズのような導電性金属酸化物を用いることが好ましい。さらには、酸素欠損型の酸化スズで酸化チタンをコートしたタイプの金属酸化物がより好ましい。導電性粒子の体積平均粒径が0.1μm未満の場合には、導電層の抵抗が高くなることによって帯電ムラに端を発するスジ画像が発生しやすくなり、本発明の効果を奏しない。また、上記導電性粒子の体積平均粒径は0.1〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.6μmであることがより好ましい。さらに、導電層における、上記導電性粒子の質量比率は、50〜80質量%であることが好ましく、67〜75質量%であることがより好ましい。また、導電層における、上記ポリオレフィン樹脂の質量比率(%)は、20%〜50%であることが好ましい。
【0030】
本発明において、上記体積平均粒径の測定方法は以下のとおりである。
分散粒子は導電性粒子のみの組成の導電層用塗布液を液相沈降法にて測定した。具体的には、導電層用塗布液をそれに用いた溶剤で希釈して、(株)堀場製作所製の超遠心式自動粒度分布測定装置(CAPA700)を用いて体積平均粒径を測定した。
【0031】
本発明において、導電層用塗布液は、上記導電性粒子を下記有機溶剤とともに分散処理し、得られた分散液を前述のポリオレフィン樹脂水性分散体と混合し攪拌することによって得られる。そして、当該方法で得られた導電層用塗布液を導電性支持体上に塗布し、これを乾燥させることによって導電層を形成する。
【0032】
上記導電性粒子の分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機などを用いた方法が挙げられる。
【0033】
上記導電層用塗布液に用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコールや、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノンのようなケトンや、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテルや、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステルや、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素が挙げられる。
【0034】
本発明においては、先述のとおり、有機溶剤で分散された導電性粒子と、ポリオレフィン樹脂を混合させることによって導電層用塗布液を調製する。導電層用塗布液中の有機溶
剤量は、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合があるため、安定性が低下しない程度に有機溶剤を含有させる必要がある。つまり、塗布する導電層の膜厚を考慮した塗布液粘度と分散体の安定性を考慮し、導電性粒子を分散処理した分散液の固形分比、ポリオレフィン樹脂水性分散液の固形分比・有機溶剤混合比、両者の混合比を選択する。
【0035】
導電層には、上記ポリオレフィン樹脂に加えて、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂のような硬化性樹脂を、特性を満足する範囲で混合して用いることができる。また、導電層の表面で反射した光が干渉して出力画像に干渉縞が発生することを抑制するために、導電層に、導電層の表面を粗面化するための表面粗し付与材を添加することも可能である。
【0036】
表面粗し付与材としては、平均粒径1〜6μmの樹脂粒子が好ましい。例えば、硬化性ゴム、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル−メラミン樹脂のような硬化性樹脂の粒子が挙げられる。これらの中でも、凝集しにくいシリコーン樹脂の粒子が好ましい。また、導電層の表面性を高めるために、公知のレベリング剤を添加してもよい。
【0037】
また、導電性支持体の表面欠陥を隠蔽するという観点から、導電層の膜厚は10〜35μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましい。なお、本発明において、導電層を含む電子写真感光体の各層の膜厚は、(株)フィッシャーインストルメンツ社製のFISHERSCOPE mmsで測定した。
【0038】
本発明において、導電層から感光層への電荷注入を阻止するために、電気的バリア性を有する中間層を導電層と感光層の間に設ける必要があるが、中間層の体積抵抗率は1×10〜1×1013Ω・cmであることが好ましい。中間層の体積抵抗率が小さすぎると、電気的バリア性が乏しくなり、導電層からの電荷注入に起因するポチやカブリの発生が顕著になる傾向にある。一方、中間層の体積抵抗率が大きすぎると、画像形成時に電荷(キャリア)の流れが滞り、残留電位の上昇(電位安定性の欠如)が顕著になる傾向にある。中間層の膜厚は0.05〜10μmであることが好ましく、特には0.3〜5μmであることがより好ましい。なお、中間層の構成および製造方法は、上記パラメータを参考に、公知の構成および製造方法を用いることができる。
【0039】
本発明の電子写真感光体は、上記中間層上に設けられた感光層を有する。上記感光層は、特に限定されず、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層であってもよい。電子写真特性の観点からは積層型感光層が好ましい。また、積層型感光層には、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層と、導電性支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層があるが、電子写真特性の観点からは順層型感光層が好ましい。
【0040】
本発明における電子写真感光体の好ましい構成の概略が図2に示される。図2の電子写真感光体においては、導電性支持体21上に、導電層22、中間層23、そして後述の電荷発生層24および電荷輸送層25が積層されている。
【0041】
上記導電性支持体としては、導電性を有するものであれば、その材質は特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスのような金属製(合金製)の支持体を用いることができる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金を真空蒸着によって被膜形成した層を有する上記金属製支持体やプラスチック製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子のような導電性粒子を適当な結着樹脂とともにプラスチックや紙に含浸した
支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチック製の支持体などを用いることもできる。
【0042】
上記電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾのようなアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンのようなフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴのようなインジゴ顔料や、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドのようなペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノン、ジベンズピレンキノンのような多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩およびチアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素や、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコンのような無機物質や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、キノシアニンのようなシアニン染料や、アントアントロン顔料や、ピラントロン顔料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素や、硫化カドミウムや、酸化亜鉛が挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0043】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられる。特には、ブチラール樹脂などが好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0044】
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライターまたは液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:0.3〜1:4(質量比)の範囲が好ましい。
【0045】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としては、例えば、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
【0046】
上記電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物およびチアゾール系化合物が挙げられる。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。電荷輸送層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜35μmであることがより好ましい。
【0047】
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。また、フッ素原子含有樹脂やシリコーン含有樹脂などを含有させてもよい。また前記樹脂により構成される微粒子を含有してもよい。また、金属酸化物微粒子や無機微粒子を含有してもよい。ただし、電荷輸送層を電子写真感光体の表面層として用いる場合は、その帯電列の位置に影響を及ぼさない範囲でそれらを含有させることができる。
【0048】
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、ス
プレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法のような塗布方法を用いることができる。
【0049】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電する帯電手段、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段およびトナー像を転写材に転写した後の電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0050】
本発明の電子写真装置は、本発明の電子写真感光体、電子写真感光体を帯電する帯電手段、帯電された電子写真感光体に対して露光を行って電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段および電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えた電子写真装置である。
【0051】
次に、図1に本発明の電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0052】
図1において、1はドラム状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の周面は、帯電手段3(一次帯電手段)により、負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光のような露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。帯電手段3に印加する電圧は、直流成分に交流成分を重畳した電圧、直流成分のみの電圧のどちらでもよいが、本発明においては直流成分のみを印加する帯電手段を用いた。
【0053】
電子写真感光体1の周面(表面)に形成された静電潜像は、現像手段5のトナーにより現像されてトナー画像となる。次いで、電子写真感光体1の周面に形成担持されているトナー画像が、転写手段6(転写ローラー)からの転写バイアスによって順次転写されていく。転写材P(紙など)は、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6の間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0054】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段7(クリーニングブレード)によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光11により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、転写手段として、例えば、ベルト状やドラム状の中間転写体を用いた中間転写方式の転写手段を採用してもよい。
【0055】
図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールのような案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の「部」は「質量部」を意味する。
【0057】
<製造例1:ポリオレフィン樹脂O1>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75部のポリオレフィン樹脂(ボンダインHX−8290、住友化学工業(株)製)、90部のイソプロパノール、樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.2倍当量のトリエチルアミンおよび200部の蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこで、この状態を保ちつつ、15分後にヒーターの電源を入れて加熱した。そして、系内温度を145℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(温度約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、固形分濃度が20質量%の、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
【0058】
このポリオレフィン樹脂O1は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/2.00/18.00(質量%)であった。
【0059】
<実施例1>
樹脂の特性は、以下の方法によって測定または評価した。
(1)ポリオレフィン樹脂中の(A2)の含有量
ポリオレフィン樹脂の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量(グラフト率)を次式から求めた。
(A2)の含有量(質量%)=(グラフトした不飽和カルボン酸の質量)/(原料ポリオレフィン樹脂の質量)×100
(2)(A2)以外の樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にてH−NMR、13C−NMR分析(バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド社製、300MHz)を行って求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。ポリオレフィン樹脂の合成方法は、製造例1に限定されず、「新高分子実験学2 高分子の合成・反応(1)」の第1〜4章(共立出版株式会社)、特開2003−105145号公報、特開2003―147028号公報などに記述された公知の方法を用いて合成することができる
【0060】
撹拌機を備えた、ヒーター付の密閉できる耐圧1リットルガラス容器に、60.0部のポリオレフィン樹脂O1、30.0部のエタノール、3.9部のN,N−ジメチルエタノールアミンおよび206.1部の蒸留水を仕込んだ。次いで、得られた混合物を、撹拌機の撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこで、この状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れて加熱した。そして、系内温度を140℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(温度約25℃)まで冷却した。300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
【0061】
次に、酸素欠損型SnOを被覆したTiO粒子(粉体抵抗率100Ω・cm、SnOの被覆率(質量比率)は35%)80部、溶剤としてのメタノール15部、メトキシプロパノール15部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散処理して、分散液を調製した。この分散液における、酸素欠損型SnOを被覆したTiO粒子の平均粒径は0.30μmであった。この分散液に、表面粗し付与材としてのシリコ
ーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製、平均粒径2.0μm)3.9部、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.001部を添加して攪拌し、導電性粒子分散液を調製した。次に、上記ポリオレフィン樹脂水性分散体を145部、導電性粒子分散液110部を容器内で十分に攪拌し、電子写真感光体の導電層用塗布液を調製した。
【0062】
押し出し・引き抜き工程により製造された、長さ260.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を電子写真感光体の支持体として用意した。その上に、上記導電層用塗布液を浸漬塗布し、10分間100℃で乾燥させることによって30μmの導電層を形成した。ただし、後述の導電層の剥がれを確認することができるように、導電層の塗布端部が以下の中間層、電荷発生層、電荷輸送層の各端部より支持体の端部に近くなるよう塗布した。なお、上記のように形成した導電層中のポリオレフィン共重合体の組成を分析した結果、ポリオレフィン樹脂水性分散体を作製する前の(A1)、(A2)および(A3)に係るポリオレフィン樹脂原材料の質量組成比率と同じであることが確認できた。
【0063】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学産業(株)製)4.5部および共重合ナイロン樹脂(アミランCM8000、東レ(株)製)1.5部を、メタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した。得られた中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.8μmの中間層を形成した。
【0064】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部を用意した。それに、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散処理した。次に、酢酸エチル250部を分散液に加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
【0065】
次に、下記構造式(1)で示される構造を有するアミン化合物8部、下記構造式(2)で示される構造を有するアミン化合物1部、および、下記構造式(3)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂(Mw:110,000)10部を、最終質量比率でモノクロルベンゼン:ジメトキシメタンが7:3である混合溶媒に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、1時間120℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。
【0066】
【化4】

【0067】
【化5】

【0068】
【化6】

【0069】
作製した電子写真感光体を、温度15℃、湿度10%RHの環境下にて、ヒューレットパッカード製LaserJet4700に装着し、初期、並びに、5,000枚および10,000枚通紙耐久後の画像の評価を行った。
詳しくは、シアン色用のプロセスカートリッジに作製した電子写真感光体を装着して、シアンのプロセスカートリッジのステーションに装着し、評価を行った。また、プロセスカートリッジの現像ローラーと電子写真感光体間の距離を制御する目的で、電子写真感光体端部に当たるようにつきあてコロがプロセスカートリッジに設けられているが、そのつきあてコロが導電層端部に接するように改造を行った。
通紙時は各色の印字率2%の文字画像をレター紙にて20秒毎に1枚出力する間欠モードでフルカラープリント操作を行い、5,000枚および10,000枚の画像出力を行った。そして、評価開始時と5,000枚終了時、10,000枚終了時に5枚(1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像)の画像評価用のサンプルを出力した。
【0070】
帯電スジは、サンプル画像から、AからEまでランク分けを行った。Aは帯電スジが全く無く、B、Cと順次帯電スジが悪化し、Eは著しい帯電スジが発生している画像である。実用上、ランクCまでは問題無いレベルである。
【0071】
別途、導電層の評価を行った。導電層のクラックの有無は、導電層を設けた後に光学顕微鏡(1,000倍)にて導電層の表面の観察を実施し、A、B、C、Dのランク分けを行った。Aはクラックが見られず非常に良好な膜であり、Bは膜の一部に点状の凹みが観察されるものの、問題無いレベルである。Cは、膜全面に点状の凹みがあり、Dは膜全面にクラックが発生している。
【0072】
導電層の剥がれに関しては、上記10,000枚耐久終了後、導電層塗布端部の剥がれを確認した。Aは剥がれが生じておらず、Bは微小な剥がれが生じているものの問題無いレベルであり、Cは剥がれが生じている。
【0073】
<実施例2>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO2に変更した。O2は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、メタクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/2.00/18.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0074】
<実施例3>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO3に変更した。O3は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=91.99/0.01/8.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0075】
<実施例4>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO4に変更した。O4は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=90.00/5.00/5.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0076】
<実施例5>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO5に変更した。O5は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、マレイン酸ジエチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/2.00/18.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0077】
<実施例6>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO6に変更した。O6は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸アミドを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/2.00/18.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0078】
<実施例7>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO7に変更した。O7は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、ビニルエチルエーテルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/2.00/18.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0079】
<実施例8>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO8に変更した。O8は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、アクリル酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/2.00/18.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0080】
<実施例9>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO9に変更した。O9は、ブテンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/2.00/18.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0081】
<実施例10>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO10に変更した。O10は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=80.00/10.00/10.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0082】
<実施例11>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO11に変更した。O11は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=49.50/10.00/40.50(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0083】
<実施例12>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO12に変更した。O12は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=89.10/10.00/0.90(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0084】
<実施例13>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO13に変更した。O13は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=43.00/10.00/47.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0085】
<実施例14>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO14に変更した。O14は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=89.20/10.00/0.80(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0086】
<実施例15>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO15に変更した。O15は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=81.00/15.00/4.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0087】
<実施例16>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO16に変更した。O16は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=65.00/30.00/5.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0088】
<実施例17>
実施例1において、以下のように導電層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価を行った。ポリオレフィン樹脂水性分散体O1を100部、導電性粒子分散液110部、および、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、メタノール溶液、樹脂固形分60%)17部を容器内で1時間攪拌した。このようにして得られた導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、140℃で30分間乾燥させることによって30μmの導電層を形成した。
【0089】
<実施例18>
実施例1において、導電性粒子としてビニルトリエトキシシランで表面処理したアナターゼ型TiOを用いて分散処理した(分散後粒径0.28μm)以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0090】
<比較例1>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO17に変更した。O17は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、無水マレイン酸を共重合させて得られる(A2)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A2)/(A3)=62.00/33.00/5.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0091】
<比較例2>
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂をO18に変更した。O18は、エチレンを共重合させて得られる(A1)、アクリル酸エチルを共重合させて得られる(A3)から構成され、(A1)/(A3)=91.00/9.00(質量%)であった。それ以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。評価は、実施例1と同様に行った。
【0092】
<比較例3>
実施例1において、ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いずに、以下のように導電層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価を行った。導電性粒子分散液110部にメラミン樹脂30部、メタノール30部を混合し、1時間攪拌した。このようにして得られた導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、140℃で30分間乾燥させることによって30μmの導電層を形成した。
【0093】
【表1】

【符号の説明】
【0094】
1 電子写真感光体
3 帯電手段(一次帯電手段)
4 露光光(画像露光光)
5 現像手段
7 クリーニング手段(クリーニングブレード)
9 プロセスカートリッジ
21 導電性支持体
22 導電層
23 中間層
24 電荷発生層
25 電荷輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、体積平均粒径が0.1μm以上の導電性粒子を含有する導電層、中間層および感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体であって、
前記導電層が下記(A1)、(A2)および(A3)を有するポリオレフィン樹脂を含有し、
前記ポリオレフィン樹脂における(A1)、(A2)および(A3)の質量比率(%)が下記式(1)を満たす
ことを特徴とする電子写真感光体。
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦30 式(1)
(A1):下記式(11)で示される繰り返し構造単位
【化1】

(式(11)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基を示す。)(A2):下記式(21)または(22)で示される繰り返し構造単位
【化2】

(式(21)および(22)中、R21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基または−Y21COOH(式中、Y21は、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される1価の基を示し、R25およびR26は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはフェニル基を示し、X21は、−Y22COOCOY23−(式中、Y22およびY23は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される2価の基を示す。ただし、R21〜R24のうち少なくとも1つは−Y21COOHで示される1価の基である。)
(A3):下記式(31)、(32)、(33)または(34)で示される繰り返し構造単位
【化3】

(式(31)〜(34)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル
基を示し、R41〜R43は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R51〜R53は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂における、(A1)、(A2)および(A3)の質量比率(%)が下記式(2)および式(3)を満たす請求項1に記載の電子写真感光体。
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦10 式(2)
(A1)/(A3)=55/45〜99/1 式(3)
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂における、(A1)、(A2)および(A3)の質量比率(%)が、下記式(4)を満たす請求項1または2に記載の電子写真感光体。
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦5 式(4)
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂が、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、または、エチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段およびトナー像を転写材に転写した後の前記電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を行って前記電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えた電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−95668(P2011−95668A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252119(P2009−252119)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】