説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】 導電性支持体、該導電性支持体上に形成された中間層、及び該中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを高いレベルで両立できる電子写真感光体を提供することにある。
【解決手段】 導電性支持体、該導電性支持体上に形成された中間層、及び該中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該中間層及び該感光層の少なくとも一方の層が下記式(1)で示される化合物を含有する電子写真感光体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術分野においては、カラー化に代表される高画質化がすすんでいる。従来、出力画像は文字中心の白黒画像が主であったが、カラー化により、写真に代表されるハーフトーン画像やベタ画像が多くなっており、それらの画像品質に対する要求が高まっている。例えば、反転現像方式の電子写真装置において、画像1枚の中で光が照射された部分が次回転目にハーフトーン画像になる画像形成を行った場合、光照射部分のみの画像濃度が濃くなる現象(ポジゴースト現象)が、発生しやすくなってきている。
【0003】
電子写真感光体には、フタロシアニン顔料などの電荷発生物質を含む電荷発生層と、トリアリールアミン化合物などの正孔輸送物質を含む正孔輸送層とが導電性支持体上に設けられている電子写真感光体がある。また、電荷発生物質と正孔輸送物質とを共に含有する感光層(単層型感光層)が導電性支持体上に設けられている電子写真感光体もある。
【0004】
導電性支持体上にこれらの感光層を設けるだけでは、電子写真感光体に電圧を印加したときに導電性支持体から感光層への正孔注入が発生することがある。導電性支持体から正孔注入があると、黒点状の画像欠陥(黒ポチ)の原因になり、画質が著しく低下する。
【0005】
上記の問題を解決するため、電気的ブロッキング機能を有する中間層と呼ばれる層が感光層と導電性支持体との間に設けられていることが多い。
【0006】
しかしながら、中間層の電気的抵抗が高過ぎると、電荷発生層で発生した電子が感光層内部に滞留し、ゴースト現象の発生の原因となる。したがって、中間層の電気的抵抗値は、ある程度は小さくする必要があり、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを両立することが求められている。
【0007】
そこで、感光層内部での電子の滞留を導電性支持体に流すために、表面処理を行った金属酸化物粒子を中間層に含有させ、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを両立した電子写真感光体とすることがよく行われている。特許文献1では、有機チタン化合物によって表面処理された金属酸化物粒子を中間層に含有させる提案がなされている。特許文献2では、硫黄原子を含む反応性有機化合物によって表面処理された金属酸化物粒子を中間層に含有させる提案がなされている。また、特許文献3では電子輸送物質を用いて感光層内部での電子の滞留を導電性支持体に流すことも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−013957号公報
【特許文献2】特開2005−292821号公報
【特許文献3】特開平9−151157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のいずれの表面処理された金属酸化物粒子や、電子輸送物質を用いても、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とが高いレベルで両立できているとはいえなかった。
【0010】
本発明の目的は、導電性支持体、該導電性支持体上に形成された中間層及び該中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを高いレベルで両立できる電子写真感光体を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。
【0012】
すなわち、本発明は、導電性支持体、該導電性支持体上に形成された中間層及び該中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該中間層及び該感光層の少なくとも一方の層が下記式(1)で示される構造を有する化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体に関する。
【0013】
【化1】

【0014】
式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかである。Xは下記式(X1)または下記式(X2)で示される共役不飽和環構造を有する。
【0015】
【化2】

【0016】
式(X1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1から4のアルキル基、ハロゲン原子、メトキシ基のいずれかである。また、R〜Rは隣り合ったR同士が連結して芳香環を形成してもよい。その場合、芳香環が有しても良い置換基は、ハロゲン原子、炭素数が1から4のアルキル基、炭素数が1から4のハロゲン化アルキル基、ニトロ基である。
【0017】
【化3】

【0018】
式(X2)中、R〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1から4のアルキル基、ハロゲン原子、メトキシ基、ニトロ基、炭素数が1から4のハロゲン化アルキル基である。また、R〜R12は隣り合ったR同士が連結して芳香環を形成してもよい。
【0019】
また、本発明は、前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0020】
また、本発明は、前記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子写真感光体の中間層及び感光層の少なくとも一方の層に式(1)で示される構造を有する化合物を含有させることによって、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを高いレベルで両立した電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体の層構成を説明するための図である。
【図3】ゴースト画像評価の際に用いるゴースト評価用印字を説明するための図である。
【図4】1ドット桂馬パターンの画像パターンを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に用いる電子写真感光体の層構成は、導電性支持体、該導電性支持体上に形成された中間層及び該中間層上に形成された感光層という構成である。
【0024】
本発明においては、導電性支持体の傷や突起などを被覆したり、干渉縞(モアレ)を抑制したりすることを目的として、導電性支持体と中間層の間に導電性微粒子を含有する導電層を設けてもよい。
【0025】
また、感光層は、主に、正孔輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と正孔輸送物質を含有する正孔輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層とが挙げられる。本発明においては、積層型(機能分離型)感光層が好ましい。
【0026】
本発明における電子写真感光体の好ましい構成の概略が図2に示される。図2に示される電子写真感光体においては、導電性支持体21上に、後述の導電層22、導電層上に中間層23、中間層上に電荷発生層24、電荷発生層上に正孔輸送層25が積層されている。また、必要に応じて正孔輸送層上に保護層を設けてもよい。
【0027】
中間層は、導電性支持体から感光層への正孔注入の抑制を目的として、導電性支持体と感光層との間に設けられる。該中間層は、電子輸送能をもつ上記式(1)で示される構造を有する化合物を含有させることにより、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを、高いレベルで両立することができる。
【0028】
本発明者らは、本発明の電子写真感光体が、ゴーストの改善と黒ポチの抑制とを、高いレベルで両立できる理由を以下のように推測している。
【0029】
ゴースト現象は電界強度と感光層(電荷発生層)中の残留電荷量が関係していると考えられる。感光体が露光されて表面電位が低くなっている明部においては、感光体内部の電界強度が弱くなり、感光層(電荷発生層)内の残留電荷が多くなる。そして、次の帯電時その影響が無視できなくなったときに、ゴースト現象が発生する。また黒ポチにおいては、電界強度が強い場合に導電性支持体側から感光層(電荷輸送層)まで正孔注入が起きることが原因であると考えられる。
【0030】
本発明の式(1)で示される構造を有する化合物は、ピリミジントリオン骨格部位の電子吸引性が高いこと、また、二重結合で共役不飽和環構造を連結し電荷をより安定化できることで、電子注入性と電子輸送性をより良く発揮できるものと考えている。したがって、ピリミジントリオン骨格のみの場合、もしくは二重結合を有さずに単結合で共役不飽和環構造を連結している場合においては、電子注入性と電子輸送性は両立しないものと考えられる。また、電子吸引性の高い構造を有しているためイオン化ポテンシャルが大きいと想定され、そのため、正孔阻止能が高いと考えられる。感光層(電荷発生層)に本化合物を導入した場合、電荷移動に不利な電界強度が弱い状況にあっても感光層(電荷発生層)中の本化合物が電子を受取り導電性支持体側へ輸送することで残留電荷を低減することができると考えられる。また、中間層に本化合物を導入した場合、本化合物の電子を受け取り易い構造のため中間層と感光層(電荷発生層)との界面で、電子を受け取り易く導電性支持体側へ電子を輸送し、導電性支持体側からの正孔の注入を抑えると考えられる。このことにより、ゴーストの改善と黒ポチの抑制との両立に優れた効果を奏すると考えられる。
【0031】
本発明において、上記式(1)で示される構造を有する化合物は、感光層、中間層のいずれか、若しくは感光層と中間層の両方に含有させることができる。さらには、感光層は、電荷発生層、該電荷発生層上に形成された正孔輸送層から構成される積層型感光層が好ましく、この場合、上記式(1)で示される構造を有する化合物は、中間層及び電荷発生層の少なくとも一方の層に含有する。
【0032】
〔式(1)で示される構造を有する化合物〕
本発明の下記式(1)で示される構造を有する化合物は、電子写真感光体の中間層及び感光層の少なくとも一方の層に含有する。
【0033】
【化4】

【0034】
式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかである。Xは下記式(X1)または下記式(X2)で示される共役不飽和環構造を有する。
【0035】
【化5】

【0036】
式(X1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1から4のアルキル基、ハロゲン原子、メトキシ基のいずれかである。また、R〜Rは隣り合ったR同士が連結して芳香環を形成してもよい。その場合、芳香環が有しても良い置換基は、ハロゲン原子、炭素数が1から4のアルキル基、炭素数が1から4のハロゲン化アルキル基、ニトロ基である。
【0037】
〜Rに関して、隣り合ったR同士が連結して形成される芳香環(芳香族環構造)としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ピリジンが挙げられる。
【0038】
【化6】

【0039】
式(X2)中、R〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1から4のアルキル基、ハロゲン原子、メトキシ基、ニトロ基、炭素数が1から4のハロゲン化アルキル基である。また、R〜R12は隣り合ったR同士が連結して芳香環を形成してもよい。
【0040】
〜R12に関して、隣り合ったR同士が連結して形成される芳香環(芳香族環構造)としては、ベンゼンが挙げられる。
【0041】
以下、表1、2に上記式(1)で示される構造を有する化合物の例を示す。勿論、本発明は、上記式(1)の構造及びその定義に包含されるものであれば、下記の例示化合物に限定されるものではない。
【0042】
これらの例示化合物は、公知例(Indian Journal of Chemistry,Section B:Organic Chemistry Including Medicinal CHemistry,44B,6,pp.1252,2005)のように合成することができる。上記式(1)示される構造を有する化合物は、各種のピリミジントリオン誘導体と各種のジオン誘導体とを反応させることで得られる。ピリミジントリオン誘導体としては、バルビツール酸(2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオン)、1−メチル−2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオン、1,3−ジメチル−2,4,6(1H,3H,5H)−ピリミジントリオン等が挙げられる。ジオン誘導体としては、9,10−フェナントレンキノン、ピレン−4,5−ジオン、4−ニトロ−9,10−フェナントレンジオン、2−ニトロフェナントレンキノン、11,12−ジヒドロクリセン−11,12−ジオン、4,5,9,10−ピレンテトラロン、1−イソプロピル−7−メチル−9,10−フェナントレンキノン、4,5−ジニトロ−9,10−フェナントレンキノン、ジベンゾ[A,H]アントラセン−5,6−ジオン、アセナフトキノン、3−メチルアセナフトキノン、アセアントレンキノン、5,6−ジニトロ−アセナフチレン−1,2−ジオン、1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン、3,5−ジ−Tert−ブチル−o−ベンゾキノン、3,6−ジ−Tert−ブチルベンゾ−1,2−キノン、3,4,5,6−テトラクロロ−1,2−ベンゾキノン、3,4,5,6−テトラブロモー1,2−ベンゾキノン等が挙げられる。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
〔中間層〕
本発明の電子写真感光体の中間層に用いられる樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アルキドーメラミン樹脂、ウレタン樹脂、アミロース、アミロペクチン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シリコーン樹脂などが挙げられる。ゴーストの改善の効果の観点から、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアミド、アルキド−メラミン樹脂、ウレタン樹脂である。また、それぞれの樹脂の共重合体でも良く、1種もしくは2種以上の樹脂を混合して用いることができる。
【0046】
上記式(1)で示される構造を有する化合物を中間層に含有させる場合、上記式(1)で示される構造を有する化合物の含有量は、式(1)で示される構造を有する化合物と樹脂との合計質量(中間層の全質量)に対して、30質量%以上80質量%以下が好ましい。より好ましくは50質量%以上75質量%以下である。30質量%以上80質量%以下であると、塗工性や塗布液の液安定性が十分に得られ、かつ、優れたゴースト改善効果が十分に得られる。中間層の膜厚は、0.01〜15μmが好ましく、さらには0.1〜5μmが好ましい。
【0047】
また、中間層に金属酸化物粒子を上記式(1)で示される構造を有する化合物と共に含有させてもよい。中間層に含有させる金属酸化物粒子としては酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化インジウム(In)の粒子が好ましい。また、金属酸化物粒子は、金属酸化物の表面が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムやシランカップリング剤などの表面処理剤で処理されている粒子であってもよい。金属酸化物粒子と上記式(1)で示される化合物との合計の含有量は、樹脂1質量部に対して、0.5質量部以上28質量部以下が好ましく、より好ましくは1.6質量部以上28質量部以下である。
【0048】
本発明の式(1)で示される構造を有する化合物を中間層に含有させる場合、中間層用塗布液を調製し、導電性支持体に塗布することで中間層を形成することができる。また、導電性支持体上に導電層を形成した上に上記と同様に、中間層用塗布液を塗布して中間層を形成することもできる。中間層用塗布液の調製方法は次の通りである。
【0049】
上記式(1)で示される構造を有する化合物と樹脂とを溶剤に溶解または分散して中間層用塗布液を調製する。
【0050】
分散方法は、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、ホモミキサ、液衝突型高速分散機等を用いた方法が挙げられる。
【0051】
中間層用塗布液に用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、メチラール、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセルソルブ、メトキシプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、水などが挙げられる。その中でも酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、メチラール、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メトキシプロパノール、水が好ましい。
【0052】
〔感光層〕
上記式(1)で示される構造を有する化合物を積層型感光層の電荷発生層に含有させる場合、上記式(1)で示される構造を有する化合物の含有量は、積層型感光層においては、電荷発生物質の含有量に対して、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、さらには、1質量%以上30質量%以下がより好ましい。0.1質量%以上50質量%以下であると、塗工性や塗布液の液安定性が十分に得られ、かつ、優れたゴースト改善効果が十分に得られる。
【0053】
積層型感光層において、本発明の式(1)で示される構造を有する化合物を電荷発生層に含有させる場合、上記と同様に上記式(1)で示される構造を有する化合物と電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して電荷発生層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液を中間層上に塗布し、これを乾燥させることによって電荷発生層を形成することができる。
【0054】
本発明の電子写真感光体の感光層及び電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、アントアントロン顔料、ピラントロン顔料、キサンテン色素、キノンイミン色素、スチリル色素、などの有機光導電性物質が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン顔料である。
【0055】
上記フタロシアニン顔料としては、非金属フタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン、ヒドロキシフタロシアニン、クロロガリウムなどのハロゲン化ガリウムフタロシアニンなどが挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0056】
積層型感光層において、本発明の電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、ポリアクリレート、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリブタジエン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。より好ましくは、ブチラール樹脂である。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0057】
電荷発生層の膜厚は0.1〜5μmであることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0058】
分散方法としては、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、ホモミキサ、液衝突型高速分散機等を用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、電荷発生物質1質量部に対して、結着樹脂が0.3質量部以上4質量部以下が好ましい。
【0059】
〔導電性支持体〕
本発明に用いられる導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄、ステンレス等の金属または合金等が挙げられる。また、ポリエステル、ポリカーボネート、ガラス等の絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金等の金属あるいは、酸化インジウム、酸化スズ等の導電材料の薄膜を形成したもの、カーボンや導電性フィラーを樹脂中に分散し導電層を設けたもの等が挙げられる。導電性支持体の形状は、円筒状及びフィルム状のものが用いられる。
【0060】
また、単一波長のレーザー光などを用いたプリンターに本発明の電子写真感光体を用いる場合には、干渉縞を抑制するために導電性支持体の表面を適度に荒らしておくことが好ましい。具体的には、上記導電性支持体表面をホーニング、ブラスト、切削、電界研磨等の処理をした導電性支持体、もしくはアルミニウム、アルミニウム合金上に導電性微粒子及び結着樹脂を含む導電層を有する支持体を用いることが好ましい。導電層表面で反射した光が干渉して出力画像に干渉縞が発生することを抑制するために、導電層に、導電層表面を粗面化するための表面粗し付与材を添加することも可能である。
【0061】
導電性微粒子および結着樹脂を含む導電層を導電性支持体上に形成する方法では、導電層中に導電性微粒子を含む粉体が含有される。この方法では導電性微粒子を分散させることでレーザー光を乱反射させ干渉縞を抑えると共に、塗布前の導電性支持体の傷や突起などを被覆する効果もある。導電性微粒子として酸化チタン、硫酸バリウムなどが用いられる。必要に応じて、この導電性微粒子に酸化スズ等で導電性被覆層を設けることにより、フィラーとして適切な比抵抗としている。導電性微粒子粉体の比抵抗は0.1〜1000Ωcmが好ましく、さらには1〜1000Ωcmが好ましい。フィラーの含有量は、導電層に対して1〜90質量%であることが好ましく、さらには5〜80質量%であることが好ましい。
【0062】
導電層に用いられる結着樹脂としては、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステルが挙げられる。これらの樹脂は単独でも、二種以上を組合せて用いても良い。これらの樹脂の中でも、フェノール樹脂、ポリウレタン、およびポリアミド酸が特に好ましい。これらの樹脂を用いた場合は、導電性支持体に対する接着性が良好であると共に、フィラーの分散性を向上させ、かつ成膜後の耐溶剤性が良好となる。
【0063】
レーザー光の乱反射による干渉縞抑制効果を向上させるために導電層に表面粗し付与材を用いても良い。表面粗し付与材としては、平均粒径1〜6μmの樹脂粒子が好ましい。具体的には、硬化性ゴム、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル−メラミン樹脂などの硬化性樹脂の粒子などが挙げられる。これらの中でも、凝集しにくいシリコーン樹脂の粒子が好ましい。また、導電層の表面性を高めるために、公知のレベリング剤を添加してもよい。
【0064】
導電層は浸漬塗布、あるいはマイヤーバー等による溶剤塗布で形成することができる。導電層の膜厚は0.1〜35μmであることが好ましく、さらには5〜30μmであることが好ましい。
【0065】
本発明の電子写真感光体の感光層及び正孔輸送層に用いられる正孔輸送物質は、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物及びチアゾール系化合物などが挙げられる。これらの正孔輸送材料は1種のみ用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0066】
積層型感光層において、正孔輸送層に用いられる結着樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリスチレンなどが挙げられる。これらの中で、ポリカーボネートやポリアリレートが特に好ましい。これらの樹脂は単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0067】
正孔輸送層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜35μmであることがより好ましい。また、正孔輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、フッ素原子含有樹脂やシリコーン含有樹脂などを含有させても良い。また前記樹脂により構成される微粒子、金属酸化物微粒子や無機微粒子を含有してもよい。
【0068】
本発明の電子写真感光体における感光層上には必要に応じて保護層を設けてもよい。保護層は、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート(ポリカーボネートZや変性ポリカーボネート等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、フェノール、スチレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー又はスチレン−アクリロニトリルコポリマー等の樹脂を適当な有機溶剤によって溶解し、感光層上に塗布乾燥して形成される。保護層の膜厚は0.05〜20μmであることが好ましい。また、保護層中に導電性微粒子や紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0069】
上記各層の塗布液を塗布する際には、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0070】
〈電子写真装置〉
次に、図1に本発明の電子写真感光体及びプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成を示す。
【0071】
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度をもって回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、回転過程において帯電手段3により、負の所定電位に均一に帯電される。次いで、原稿からの反射光であるスリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。帯電手段3に印加する電圧は、直流成分に交流成分を重畳した電圧、又は直流成分のみの電圧のどちらでもよいが、本発明においては直流成分のみを印加する帯電手段を用いた。
【0072】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーで反転現像により現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段6からの転写バイアスによって転写材Pに順次転写されていく。転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送される。また、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ搬送される。
【0073】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段7によって転写残りの現像剤(転写残トナー)の除去を受けて清浄面化される。さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光11により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、転写手段として、ベルト状やドラム状などの中間転写体を用いた中間転写方式の転写手段を採用してもよい。
【0074】
本発明においては、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7などの構成要件の中から複数のものを選択し、これらを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持して構成してもよい。そして、このプロセスカートリッジを、複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9とすることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0076】
本発明で用いる式(1)で示される構造を有する化合物は、公知例(Indian Journal of Chemistry,Section B:Organic Chemistry Including Medicinal Chemistry,44B,6,pp.1252,2005)の記載を参考にして合成を行うことができる。
【0077】
(合成例1:例示化合物E−1)
反応容器にバルビツール酸(Barbituric acid、シグマアルドリッチ社製)1.28質量部と、9,10−フェンナントレンキノン(9,10−Phenathorenequinone、シグマアルドリッチ社製)2.08質量部とを混合し、さらにエタノール160質量部、テトラヒドロフラン(THF)16質量部とを加え、窒素気流下で9時間、加熱還流させた。反応終了後、溶媒を吸引ろ過にて取り除き、ろ過残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、分取濃縮後、エタノール−クロロホルム(1:3)にて再結晶させ、目的の例示化合物E−1 1.22質量部を得た。質量分析(MALDI−TOF MS、ブルカー・ダルトニクス社製)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準:フラーレンC60)で分子量を測定したところ、ピークトップ値として318が得られ、目的の例示化合物E−1であることを確認した。
【0078】
(合成例2:例示化合物E−5)
反応容器にバルビツール酸(Barbituric acid、シグマアルドリッチ社製)1.28質量部と、アセナフトキノン(Acenaphthenequinone、シグマアルドリッチ社製)1.82質量部とを混合し、さらにエタノール160質量部、テトラヒドロフラン(THF)16質量部とを加え、窒素気流下で9時間、加熱還流させた。反応終了後、溶媒を吸引ろ過にて取り除き、ろ過残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、分取濃縮後、エタノール−クロロホルム(1:3)にて再結晶させ、目的の例示化合物E−5 1.1質量部を得た。質量分析(MALDI−TOF MS、ブルカー・ダルトニクス社製)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準:フラーレンC60)で分子量を測定したところ、ピークトップ値として292が得られ、目的の例示化合物E−5であることを確認した。
【0079】
なお、上記以外の例示化合物についても同様の手法で合成し、その原材料であるピリミジントリオン誘導体とジケトン誘導体を下記表3,4に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
(実施例1)
長さ257mm、直径24mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を準備した。酸素欠損型酸化スズを被覆した酸化チタン粒子(粉体抵抗率120Ω・cm、SnOの被覆率(質量比率)40%)50質量部、結着樹脂としてフェノール樹脂(プライオーフェンJ−325、DIC株式会社社製、樹脂固形分60%)40質量部、溶剤としてメトキシプロパノール40質量部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で3時間分散して、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を上記アルミニウムシリンダー上に浸漬塗布し、温度145℃で30分間加熱硬化させることにより、膜厚が15μmの導電層を形成した。この導電層用塗布液における酸素欠損型酸化スズを被覆した酸化チタン粒子の個数平均粒径を堀場製作所製粒度分布計CAPA700を用いて測定した。テトラヒロドフラン(THF)を分散媒とし、回転数5000rpmにて遠心沈降法で測定したところ、この酸化チタン粒子の個数平均粒径は0.32μmであった。
【0083】
本発明の電子写真感光体の中間層に用いるポリオレフィンは、下記に示す方法で合成される。ポリオレフィンの合成方法は、「新高分子実験学2 高分子の合成・反応(1)」の第4章(共立出版株式会社)、特開2003−105145公報、特開2003−147028公報などに記述された方法で合成される。
【0084】
ヒーター付の密閉できる耐圧1Lガラス容器を備えた撹拌機を用いて、以下のように攪拌を行なった。80.0質量部のポリオレフィン(商品名:ボンダインHX8290、住友化学工業社製)、30.0質量部のエタノール、3.9質量部のN,N−ジメチルエタノールアミン及び206.1質量部の蒸留水をガラス容器内に入れた。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ち、さらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、固形分25%の乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
【0085】
次に、上記ポリオレフィン樹脂水性分散体を5.3質量部、例示化合物E−1 2.7質量部、イソプロパノール40質量部、水40質量部を直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで12時間分散処理して、電子写真感光体に使用する中間層用塗布液を調製した。次いで、上記の導電性支持体上に中間層用塗布液を浸漬塗布し、120℃で10分間乾燥させ、膜厚1μmの中間層を形成した。
【0086】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(HOGaPc)10質量部を用意した。それに、ポリビニルブチラール(エスレックBX−1、積水化学工業社製)5質量部およびシクロヘキサノン260質量部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1.5時間分散処理した。分散処理後、酢酸エチル240質量部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬塗布し、これを温度100℃で10分間乾燥させることによって、膜厚が0.17μmの電荷発生層を形成した。
【0087】
次に、下記式(2)で示される構造を有するアミン化合物6質量部、下記式(3)で示される構造を有するアミン化合物2質量部及び下記式(4)で示される構造単位を有するポリアリレート10質量部(重量平均分子量[Mw]100,000)を、モノクロルベンゼン:ジメトキシメタンが最終重量比率で7:3になる溶剤に溶解させることによって、正孔輸送層用塗布液を調製した。前記ポリアリレートの重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製ゲルパーミテーションクロマトグラフィー「HLC−8120」で測定し、ポリスチレン換算で計算した。
【0088】
【化7】

【0089】
【化8】

【0090】
【化9】

【0091】
この正孔輸送層用塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、温度120℃で1時間乾燥することによって、膜厚16μmの正孔輸送層を形成した。このようにして、導電層、中間層、電荷発生層及び正孔輸送層を有する実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0092】
(実施例2〜14)
実施例1において、中間層用塗布液中の式(1)で示される構造を有する化合物の種類及び含有量を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0093】
(実施例15)
実施例1において、中間層用塗布液を次のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。中間層用塗布液は、ポリアミド(アミランCM8000、東レ社製)1質量部、例示化合物E−1 2質量部、ブタノール20質量部、メタノール40質量部を直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで10時間分散して調製した。
【0094】
(実施例16)
実施例1において、中間層用塗布液を次のように替え、浸漬塗布後の乾燥温度を150℃、20分に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。中間層用塗布液は、アルキド樹脂(ベッコライトM−6401−50、DIC株式会社製)0.6質量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、DIC株式会社製)0.4質量部、例示化合物E−1 2質量部、2−ブタノン60質量部を直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで12時間分散して調製した。
【0095】
(実施例17)
実施例1において、中間層用塗布液を次のように替え、浸漬塗布後の乾燥温度を170℃、20分に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。中間層用塗布液は、ブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住化バイエルンウレタン株式会社製)0.57質量部、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学工業社製)0.43質量部、例示化合物E−1 2質量部、2−ブタノン48質量部、n−ヘキサン12質量部を直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで12時間分散して調製した。この分散液100質量部に触媒としてジオクチルラウレート0.005質量部を添加し、中間層用塗布液を調製した。
【0096】
(実施例18)
実施例1において、中間層用塗布液を次のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。例示化合物E−1 2.1質量部と酸化スズ粒子19質量部、実施例1中のポリオレフィン樹脂水性分散体4質量部とをイソプロパノール110質量部、水110質量部中に入れ、直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで16時間分散して、電子写真感光体に使用する中間層用塗布液を調製した。
【0097】
(実施例19、20)
実施例18において、中間層用塗布液中の式(1)で示される構造を有する化合物、金属酸化物粒子の種類及び含有量を表5に示すようにした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0098】
(実施例21)
実施例1において、中間層用塗布液と電荷発生層用塗布液を次のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。中間層用塗布液は、ポリアミド(アミランCM8000、東レ社製)3質量部、ブタノール20質量部、メタノール40質量部を直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで10時間分散して調製した。次に、電荷発生層用塗布液は、実施例1中のヒドロキシガリウムフタロシアニン10質量部を用意した。それに、例示化合物E−1 3質量部、ポリビニルブチラール(エスレックBX−1、積水化学工業社製)5質量部及びシクロヘキサノン260質量部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1.5時間分散した。次に、酢酸エチル240質量部を分散液に加えて電荷発生層用塗布液を調製した。
【0099】
(実施例22〜28)
実施例21において、電荷発生層用塗布液中の式(1)で示される構造を有する化合物の種類及び含有量を表5,6に示すようにした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0100】
(実施例29)
実施例1における中間層用塗布液と、実施例21における電荷発生層用塗布液とを用いた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0101】
(実施例30〜31)
実施例29において、中間層用塗布液中の式(1)で示される構造を有する化合物の種類及び含有量を表6に示すようにした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0102】
(実施例32)
実施例29において、中間層用塗布液を次のように変更した以外は、実施例29と同様にして電子写真感光体を作成した。例示化合物E−4 2.1質量部と酸化スズ粒子19質量部、実施例1中のポリオレフィン樹脂水性分散体4質量部とをイソプロパノール110質量部、水110質量部中に入れ、直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで16時間分散して、電子写真感光体に使用する中間層用塗布液を調製した。
【0103】
(実施例33)
実施例29において、中間層用塗布液を次のように変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。中間層用塗布液は、酸化亜鉛(体積平均粒子径:70nm テイカ社製)100質量部をTHF500質量部中で撹拌し、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン (KBM603、信越化学社製)1.25質量部を添加しさらに2時間撹拌し、分散液を調製した。得られた分散液を、減圧留去し、120℃、3時間焼成してシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を作製した。例示化合物E−1 1.5質量部と得られたシランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子15質量部、実施例1中のポリオレフィン樹脂水性分散体4質量部とをイソプロパノール110質量部、水110質量部中に入れ、直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで16時間分散して、電子写真感光体に使用する中間層用塗布液を調製した。
【0104】
(比較例)
(比較例1)
実施例1において、中間層用塗布液を次のように変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。例示化合物を用いず、実施例1中のポリオレフィン水性分散体5.3質量部をイソプロパノール230質量部、水230質量部で希釈し、電子写真感光体に使用する中間層用塗布液を調製した。
【0105】
(比較例2)
実施例1において、例示化合物E−1を下記構造式で示される比較化合物C−1に変更した以外は同様にして、中間層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0106】
【化10】

【0107】
(比較例3)
実施例1において、例示化合物E−1を下記構造式で示される比較化合物C−2に変更した以外は同様にして、中間層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0108】
【化11】

【0109】
(比較例4)
実施例1において、例示化合物E−1を下記構造式で示される比較化合物C−3に変更した以外は同様にして、中間層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0110】
【化12】

【0111】
(比較例5)
実施例1において、例示化合物E−1を下記式構造式で示される比較化合物C−4に変更した以外は同様にして、中間層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0112】
【化13】

【0113】
(比較例6)
実施例1において、例示化合物E−1を下記構造式で示される比較化合物C−5に変更した以外は同様にして、中間層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作成した。
【0114】
【化14】

【0115】
(比較例7)
実施例18において、中間層用塗布液を次のように変更した以外は実施例18と同様にして、電子写真感光体を作製した。例示化合物を用いず、酸化スズ粒子21質量部、実施例1中のポリオレフィン樹脂水性分散体4質量部とをイソプロパノール110質量部、水110質量部中に入れ、直径1mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカーで16時間分散して、電子写真感光体に使用する中間層用塗布液を調製した。
【0116】
(比較例8,9)
比較例6において、中間層用塗布液中の金属酸化物粒子の種類及び含有量を表6に示すようにした以外は、比較例6と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0117】
(比較例10)
実施例21において、例示化合物E−1を比較化合物C−1に変更した以外は同様にして、中間層用塗布液を調製し、実施例21と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷発生層用塗布液の組成は表6に示す。
【0118】
(比較例11)
実施例22において、例示化合物E−1を比較化合物C−2に変更した以外は同様にして、中間層用塗布液を調製し、実施例22と同様にして電子写真感光体を作製した。電荷発生層用塗布液の組成は表6に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
【表6】

【0121】
表5及び6中の数値は、中間層用塗布液又は電荷発生層用塗布液における各材料の含有量[質量部]である。
【0122】
(評価)
実施例1〜33及び比較例1〜11の電子写真感光体の評価方法については、以下の通りである。
【0123】
評価装置としては、ヒューレットパッカード製のレーザービームプリンタ LaserJet3550を用いた。温度15℃、湿度10%RHの環境下にて、シアン色用のプロセスカートリッジに作製した電子写真感光体を装着して、シアンのプロセスカートリッジのステーションに装着し、5000枚通紙耐久後の画像の評価を行った。ドラム表面電位は、初期暗部電位が−500V、初期明部電位が−170Vになるように設定した。電子写真感光体の表面電位の測定は、カートリッジを改造し、現像位置に電位プローブ(model6000B−8、トレック・ジャパン社製)を装着し、ドラム中央部の電位を表面電位計(model344、トレック・ジャパン社製)を使用して測定した。通紙時は各色の印字比率1%の文字画像において、A4サイズの普通紙でフルカラープリント操作を行い、前露光を点灯せずに5000枚の画像出力を行った。そして、評価開始時と5000枚終了時に、1枚目にベタ白画像をとり、ゴースト評価用印字(図3に示すように、画像の先頭部に、白地(白画像)中に四角のベタ画像を出した後、図4に示す1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像を作製。図3中、「ゴースト」と記載されている部分は、ベタ画像起因のゴーストの出現の有無を評価するゴースト部である。ゴーストが出現する場合は図3中の「ゴースト」に出現する。)を連続5枚とった。次に、ベタ黒画像を1枚とった後に再度ゴースト評価用印字を5枚とった。
【0124】
(ゴースト画像の評価)
ゴースト画像の評価は、ゴースト評価用印字において、1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像濃度とゴースト部の画像濃度との濃度差を、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite社製)で測定した。1枚のゴースト画像で10点測定し、それら10点の平均を算出して1枚の結果とし、前述の10枚のゴースト画像すべてを同様に測定した。そして10枚の結果から平均値を求めた。ハーフトーン画像濃度とゴースト部の画像濃度との濃度差の値が小さいほど、ゴースト特性が良好であることを意味する。得られた結果を表7に示す。
【0125】
(黒ポチ画像の評価)
黒ポチ画像の評価は、光沢紙にベタ白画像を出力し、何も印刷していない光沢紙とベタ白画像を印刷した光沢紙との画像濃度差を反射濃度計(DENSITOMETER TC−6DS、東京電色工業社製)で測定した。画像濃度差を10点測定し、それらの平均値を求めた。何も印刷していない光沢紙とベタ白画像を印刷した光沢紙との画像濃度差の値が小さいほど、黒ポチが少なく良好であることを示す。得られた結果を表7に示した。
【0126】
【表7】

【符号の説明】
【0127】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段(一次帯電手段)
4 露光光(画像露光光)
5 現像手段
6 転写手段(転写ローラー)
7 クリーニング手段(クリーニングブレード)
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
11 前露光光
P 転写材(紙など)
21 導電性支持体
22 導電層
23 中間層
24 電荷発生層
25 正孔輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体、該導電性支持体上に形成された中間層、及び該中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該中間層及び該感光層の少なくとも一方の層が下記式(1)で示される化合物を含有する電子写真感光体。
【化1】


(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかである。Xは下記式(X1)または下記式(X2)で示される共役不飽和環構造を有する。)
【化2】


(式(X1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1から4のアルキル基、ハロゲン原子、メトキシ基のいずれかである。また、R〜Rは隣り合ったR同士が連結して芳香環を形成してもよい。その場合、芳香環が有しても良い置換基は、ハロゲン原子、炭素数が1から4のアルキル基、炭素数が1から4のハロゲン化アルキル基、ニトロ基である。)
【化3】


(式(X2)中、R〜R12はそれぞれ独立に水素原子、炭素数が1から4のアルキル基、ハロゲン原子、メトキシ基、ニトロ基、炭素数が1から4のハロゲン化アルキル基である。また、R〜R12は隣り合ったR同士が連結して芳香環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記感光層が、電荷発生層及び該電荷発生層上に形成された正孔輸送層から構成され、前記中間層及び該電荷発生層の少なくとも一方の層が前記式(1)で示される化合物を含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記中間層が金属酸化物粒子を含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−93640(P2012−93640A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242462(P2010−242462)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】