説明

電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生することが抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体4と、前記導電性支持体上に配置されており、結着樹脂、金属酸化物粒子、及び電子受容性物質を含有する下引層1と、前記下引層上に配置された感光層6と、を有し、前記下引層と前記感光層との界面に前記電子受容性物質が存在している電子写真感光体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置は高速でかつ高品質の印字が得られることから、複写機、レーザービームプリンター等において利用されている。
静電潜像及びトナー像が形成される電子写真感光体は、最近、有機の光導電性材料を用いた有機感光体が主流となってきている。また、感光層の構成は単層型から機能分離型の感光体へと変遷しつつある。
【0003】
例えば、特許文献1には、基体と、必要に応じてブロッキング層と、必要に応じて熱可塑性接着剤中間層と、薄い電荷発生層と、電荷輸送層と、を含む電子写真画像形成部材であって、前記薄い電荷発生層が、中に電子受容/伝達化合物が溶解している又は分子的に分散しているフィルム形成ポリマーバインダー中に分散した顔料粒子を含み、前記電荷発生層が、該電荷発生層の全重量に対して約1%と約20%の間の重量パーセントの前記電子受容/伝達化合物を含む、ことを特徴とする電子写真画像形成部材が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、導電性支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層及び表面層を有する電子写真感光体において、表面層がポリアリレートと重合性官能基を有する化合物又は該化合物から形成された重合体とを含有することを特徴とする電子写真感光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−281463号公報
【特許文献2】特開2003−302780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生することが抑制される電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1の発明は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置されており、結着樹脂、金属酸化物粒子、及び電子受容性物質を含有する下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を有し、前記下引層と前記感光層との界面に前記電子受容性物質が存在している電子写真感光体。
請求項2の発明は、前記金属酸化物粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の電子写真感光体。
請求項3の発明は、前記電子受容性物質が、ヒドロキシアントラキノン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
請求項5の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電された前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、前記電子写真感光体に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写装置と、を備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、下引層に含まれる電子受容性物質が下引層と感光層との界面にも存在しない電子写真感光体に比べ、繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生することが抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項2の発明によれば、下引層に含まれる金属酸化物粒子が前記したもの以外である場合に比べ、繰り返し使用時における画像濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項3の発明によれば、電子受容性物質がヒドロキシアントラキノン系化合物ではない場合に比べ、繰り返し使用時における画像濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項4の発明によれば、下引層に含まれる電子受容性物質が下引層と感光層との界面には存在しない電子写真感光体を備えている場合に比べ、繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生することが抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
請求項5の発明によれば、下引層に含まれる電子受容性物質が下引層と感光層との界面には存在しない電子写真感光体を備えている場合に比べ、繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生することが抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しがら、本発明の一例である実施形態について説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は適宜省略する。
電気特性、画質安定性等を向上させるために、下引層に酸化亜鉛粒子や酸化アルミニウム粒子等の金属酸化物粒子、あるいは、カップリング剤等で表面処理された金属酸化物粒子を使用する場合がある。これらの金属酸化物粒子を用いた下引層は、電荷発生層との界面でのブロッキング(電荷注入制御)機能の確保に寄与し、カブリの抑制や電気特性の安定化に効果を奏する。しかしながら、金属酸化物粒子の表面処理状態によっては電気特性上の繰り返し安定性の悪化を招く場合があり、特に感光層中に残留した残留電位、特に露光部と非露光部の電位差が履歴として残り、次の画像形成時に画像濃度ムラとして現れることがあり、特に低温低湿環境において顕著となり易い。
【0011】
このような画像濃度ムラの改善方法として、露光部に残留する電位が下引層に円滑に流入して、非露光部との電位差を小さくすることが挙げられる。例えば、下引層と電荷発生層のイオン化ポテンシャルを近づけることが考えられる。しかし、下引層と電荷発生層のイオン化ポテンシャル差を小さくすると、ブロッキング性の低下による電荷注入によって発生するカブリと同様の現象が起こり易く、ある程度のイオン化ポテンシャル差が必要である。
【0012】
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、金属酸化物粒子及び電子受容性物質を含む下引層を有する電子写真感光体において、下引層中の電子受容性物質を下引層の上層に位置する感光層との界面に溶出して存在させることによって繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生する現象が抑制されることを見出した。
【0013】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体(適宜、感光体と略記する。)は、導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置されており、結着樹脂、金属酸化物粒子、及び電子受容性物質を含有する下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を有し、前記下引層と前記感光層との界面に前記電子受容性物質が存在している。
すなわち、本実施形態における電子写真感光体は、下引層が金属酸化物粒子及び電子受容性物質を含有し、下引層と感光層との間に中間層といった下引層又は感光層とは別の層を設けることなく、下引層に含まれている電子受容性物質と同種の電子受容性物質が、下引層と感光層との界面、すなわち、下引層と感光層とを機械的に剥離したときの下引層側又は感光層側の剥離面に存在している。下引層と感光層との界面における電子受容性物質の存在は、下引層と感光層とを剥離し、感光層側の剥離面を赤外分光吸収スペクトル測定機によって分析することで確認される。
【0014】
このような構成を有する電子写真感光体であれば、下引層と感光層とのイオン化ポテンシャル差が保たれつつ、下引層と感光層との界面に存在する電子受容物質によって下引層と感光層との界面に電荷が溜まり難くなり、露光部における電荷の残留が大きく減少し、露光部と非露光部との電位差が抑制されることで、繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生することが抑制されると考えられる。
【0015】
図1に示す感光体10Aは、電荷発生層2と電荷輸送層3とが別個に設けられたいわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)である。導電性支持体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、及び電荷輸送層3が順次形成されている。感光体10Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層6が構成されている。
また、図2に示す感光体10Bは、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同じ感光層7(単層型感光層7と称する)に含有したものである。支持体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層7が形成されている。
【0016】
なお、いずれの形態においても最表面層として保護層を形成してもよい。例えば、図1に示す感光体10Aにおいて、電荷輸送層3は感光体10Aにおける表面層(支持体4から最も遠い側に配置される層)であるが、電荷輸送層3上に最表面層として保護層を設けてもよい。
以下、図1に示す機能分離型の感光体10Aを代表例として各要素について説明する。
【0017】
‐導電性支持体‐
導電性支持体4としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、あるいはアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、あるいは導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。なお、「導電性」とは、例えば体積抵抗率が1013Ω・cm以下を意味する。
導電性支持体4の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0018】
導電性支持体4として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0019】
‐下引層‐
下引層1は、導電性支持体4の表面における光反射の防止、支持体4から感光層6への不要なキャリアの流入の防止などの目的で設けられる。本実施形態における下引層1は、結着樹脂、金属酸化物粒子、及び電子受容性物質を含んで構成されている。
【0020】
下引層1に含まれる金属酸化物粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化インジウムなどの粒子が挙げられ、特に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、又は酸化ジルコニウムが望ましい。
金属酸化物粒子は2種以上混合して用いてもよい。さらに、金属酸化物粒子へカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体抵抗を制御して用いてもよい。
【0021】
金属酸化物粒子の平均粒子径は、50nm以上200nm以下であることが望ましく、60nm以上150nm以下であることがより望ましく、70nm以上100nm以下であることが更に望ましい。
【0022】
下引層1中の金属酸化物粒子の含有量は、所望する電子写真感光体の特性が得られる範囲で任意に設定すればよいが、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0023】
下引層に含まれる電子受容性物質としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。特に、ヒドロキシアントラキノン系化合物が望ましい。
具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。中でも、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が望ましい。
【0024】
電子受容性物質の含有量は、その種類にもよるが、望ましくは金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下含有される。さらに0.05質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0025】
電子受容性物質は、金属酸化物粒子と別個に下引層に含まれていてもよいし、金属酸化物粒子の表面にあらかじめ付着させておいて、下引層に含まれていてもよい。
電子受容性物質を、金属酸化物粒子と別個に下引層に含ませるには、下引層を形成するための下引層用塗布液に、電子受容性物質と、金属酸化物粒子とをそれぞれ添加すればよい。表面に電子受容性物質が付着した金属酸化物粒子を下引層に含ませるには、金属酸化物粒子表面に電子受容性物質を付着させた後、下引層用塗布液に、表面に電子受容性物質が付着した金属酸化物粒子を添加すればよい。
金属酸化物粒子表面に電子受容性物質を付着させる方法(以下、単に「付着処理」という)としては、乾式法、または、湿式法が挙げられる。
【0026】
乾式法にて付着処理を施す場合には金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接または有機溶媒に溶解させた電子受容性物質を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって処理される。添加または噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。添加または噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間については任意の範囲で実施される。
【0027】
湿式法としては、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌し、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、電子受容性物質を添加し攪拌または分散したのち、溶剤除去することで処理される。溶剤除去方法はろ過または蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間については任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に金属酸化物粒子含有水分を除去してもよく、その例として付着処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0028】
また、金属酸化物粒子は、表面に電子受容性物質を付着する前に、予め表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤も望ましく用いられる。
【0029】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用し得るが、乾式法または湿式法を用いることがよい。また、電子受容性物質の付与とカップリング剤等による表面処理とを並行して行ってもよい。
【0030】
下引層中の金属酸化物粒子に対するシランカップリング剤の量は、任意に設定されるが、金属酸化物粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0031】
また、例えば、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料等の電子受容性物質が上記の金属酸化物粒子と共に混合/分散して使用される。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料が電子受容性が高いので望ましく使用され、特にヒドロキシアントラキノン骨格を持つものが望ましい。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷受容性を制御する目的で上記カップリング剤や、結着樹脂などで表面処理しても良い。
【0032】
下引層1に含まれる結着樹脂としては、公知の材料から選択すればよく、例えばポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂などが望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0033】
下引層中には種々の添加剤を用いてもよい。添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。シランカップリング剤は金属酸化物粒子の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに下引層形成用塗布液に添加して用いてもよい。
下引層1には、表面粗さ調整および干渉縞防止のために下引層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等が挙げられる。
下引層1には、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を含んでもよい。
【0034】
下引層1は、結着樹脂、金属酸化物粒子、及び電子受容性物質、さらに必要に応じて他の添加剤を溶媒に加えた下引層形成用塗布液を導電性支持体上に塗布して乾燥させることで形成される。
下引層形成用塗布液に含まれる溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、などの有機溶剤が挙げられる。
これらの溶剤は単独又は2種以上混合して用いられる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶解するものを使用する。
【0035】
下引層形成用塗布液中に金属酸化物粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0036】
下引層形成用塗布液を基材(導電性支持体)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0037】
基材4上に塗布された下引層1のビッカース強度は35以上が望ましい。
下引層の膜厚は15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
【0038】
また、表面粗さ調整のために下引層1の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0039】
下引層形成用塗布液を導電性支持体4上に塗布した後、乾燥して硬化させることで下引層1を形成するが、本実施形態では下引層に含まれている電子受容性物質が表面に溶出して下引層と感光層(本実施形態では電荷発生層)との界面に存在するように下引層及び電荷発生層を形成する。下引層に含まれている電子受容性物質を下引層と電荷発生層との界面にも存在させる方法は特に限定されないが、例えば、以下の(1)乃至(4)の方法が挙げられる。
【0040】
(1)下引層形成用塗布液に含まれる固形分中の電子受容性物質の割合を調整する。
下引層形成用塗布液中の電子受容性物質の含有量が多いほど、乾燥して硬化させるときに電子受容性物質が下引層の表面に溶出し易くなる。電子受容性物質、結着樹脂の種類等にもよるが、具体的には、下引層形成用塗布液に含まれる固形分中の電子受容性物質の含有量を0.5質量%以上にすることが望ましく、2質量%以上にすることがより望ましい。ただし、下引層に含まれる電子受容性物質の含有量が多過ぎると、電荷発生層中でトラップサイトとなるため、塗布液に含まれる固形分中の電子受容性物質の含有量は5質量%以下であることが望ましい。
【0041】
(2)下引層を形成する際の乾燥温度又は乾燥時間を調整する。
導電性支持体上に下引層形成用塗布液を塗布した後、加熱乾燥すると、電子受容性物質は結着樹脂に取り込まれることになるが、乾燥温度が低いほど、あるいは、乾燥時間が短いほど、電子受容物質の一部が結着樹脂に取り込まれずに、下引層の表面に溶出し易い。結着樹脂や溶剤の種類等にもよるが、乾燥温度を例えば180℃以下に設定する。ただし、下引層の乾燥が不十分のまま下引層上に電荷発生層形成用塗布液を塗布すると、下引層に含まれている電子受容性物質だけでなく、金属酸化物粒子や結着樹脂など他の成分も溶出して電荷発生層に混入し易くなる。そのため、乾燥温度は160℃以上に設定することが望ましく、170℃以上にすることがより望ましい。
【0042】
(3)電荷発生層形成用塗布液によって下引層の表面を溶解させる。
電荷発生層形成用塗布液に含まれる溶剤としては、通常、下引層に含まれる結着樹脂を溶解しないものを選択するが、下引層に含まれる結着樹脂をわずかに溶解させる溶剤を含む電荷発生層形成用塗布液を用いることで下引層上に電荷発生層を形成したときにこれらの層の界面に電子受容性物質が溶出し易くなる。この場合、電荷発生層形成用塗布液の溶剤は下引層に含まれる結着樹脂の種類に応じて選択すればよい。
【0043】
(4)電荷発生層形成用塗布液を塗布する前に下引層の表面を溶解させる。
下引層に含まれる結着樹脂をわずかに溶解させる溶剤を塗布して下引層の表面に電子受容性物質を溶出させた後、下引層に含まれる結着樹脂を溶解しない溶剤を含む電荷発生層形成用塗布液を塗布する。このような方法でも、下引層と電荷発生層との界面に下引層に含まれていた電子受容性物質が存在することになる。
【0044】
なお、上記(1)乃至(4)の方法うち、2つ以上の方法を組み合わせてもよい。例えば、下引層形成用塗布液に含まれる電子受容性物質の含有量を比較的多くするとともに、乾燥温度を比較的低めに設定して乾燥させることで、下引層と電荷発生層との界面に電子受容性物質がより確実に存在することになる。
【0045】
‐電荷発生層‐
下引層上の電荷発生層2は、電荷発生材料を結着樹脂中に分散して形成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が使用される。特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が使用される。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が使用される。これらの電荷発生材料は、単独または2種以上を混合して使用される。
【0046】
電荷発生層における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、10:1から1:10の範囲が望ましい。
【0047】
電荷発生層2の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた塗布液が使用される。かかる溶剤としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いられる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として電荷発生層を構成する結着樹脂を溶解するものを使用する。
【0048】
電荷発生材料を樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0049】
塗布液を下引層1上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0050】
‐電荷輸送層‐
電荷発生層2上の電荷輸送層3は、電荷輸送層3としての本来的機能を発現させるための電荷輸送材料、さらには結着樹脂を含む。かかる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0051】
また、電荷輸送層3における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これ等の結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いられる。
電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は10:1から1:5の範囲が望ましい。
【0052】
電荷輸送層3は、上記成分を溶剤に加えた塗布液を用いて形成される。電荷輸送層の形成に使用される溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いられる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として電荷輸送層3を構成する結着樹脂を溶解するものを用いる。
【0053】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層2上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
電荷輸送層の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
【0054】
画像形成装置内で発生するオゾンや窒素酸化物、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層6を構成する各層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
【0055】
‐保護層‐
電荷輸送層3上に保護層を形成してもよい。表面層となる保護層を形成する場合、保護層は、例えば、導電性材料と結着樹脂とを含んで構成される。また、保護層は、例えば、重合性官能基を有する電荷輸送性材料の硬化膜で構成されていてもよい。硬化膜は、必要に応じて、他の樹脂を含んでいてもよい。
保護層の膜厚は、例えば、3μm以上10μm以下に設定される。
【0056】
感光体の表面層となる層(例えば、保護層、保護層を備えない感光体である場合には、電荷輸送層等)は、更に、感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、フッ素系樹脂粒子を含んでいてもよい。フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン、3フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂粒子や「第8回ポリマー材料フォ−ラム講演予稿集 p89」に示される、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーとを共重合させた樹脂粒子が挙げられる。特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂の粒子が望ましい。
フッ素系樹脂粒子の一次粒径は0.05μm以上1μm以下が望ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより望ましい。
また、表面の平滑性を向上させる目的で、表面層中にシリコーンオイル等のレベリング剤を添加してもよい。
【0057】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置について説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を概略的に示している。本実施形態に係る画像形成装置100は、前記した本実施形態に係る電子写真感光体10を備え、その周囲に、電子写真感光体10を帯電する帯電装置52と、帯電装置52により帯電された電子写真感光体10に静電潜像を形成する静電潜像形成装置54と、静電潜像形成装置54により形成した静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置56と、現像装置56により形成したトナー像を記録媒体Pに転写する転写装置58と、転写後の電子写真感光体10の表面の残留トナーや紙粉等の付着物を除去する除去部材62を有する除去装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、転写装置58により記録媒体Pに転写されたトナー像を定着する定着装置40を備えている。
【0058】
帯電装置52としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置52としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。
【0059】
静電潜像形成装置54としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザー光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザーの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0060】
現像装置56は、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤、またはトナーを含む1成分現像剤を収容し、該現像剤に含まれるトナーを、電子写真感光体10の表面に供給することで、電子写真感光体10上に形成された静電潜像をトナーによって現像してトナー像を形成する。
【0061】
転写装置58としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0062】
除去装置60は、除去部材62を含んで構成されており、この除去部材62によって電子写真感光体10上の付着物を除去する。この除去部材62としては、板状部材(所謂、クリーニングブレード)が挙げられる。
【0063】
また、転写後に感光体に残留する電荷を除去するための除電装置を設けてもよい。除電装置は、トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、感光体の電位を除去するものであればよい。例えば、感光体に対し、電圧を調節して印加して除電する装置であってもよいし、感光体に対して光除電を行う光除電装置であってもよい。
【0064】
なお、本実施形態に係る画像形成装置100は、上記構成に限られず、例えば、中間転写体を利用した中間転写方式の画像形成装置、各色のトナー像を形成する画像形成ユニットを並列配置させた所謂タンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0065】
次に、本実施形態に係る画像形成装置100の動作について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置100では、電子写真感光体10が回転(図3中、矢印a方向)される。そして、電子写真感光体10の帯電装置52によって帯電された電子写真感光体10の表面には、静電潜像形成装置54によって静電潜像が形成される。そして、この静電潜像の形成された領域が、電子写真感光体10の回転によって現像装置56の設けられた位置まで達すると、現像装置56から供給されたトナーによって静電潜像が現像されて、トナー像が形成される。さらに、この電子写真感光体10のトナー像の形成された領域が、電子写真感光体10の回転によって転写装置58の設けられた位置に達すると、転写装置58によって、図示を省略した搬送装置によって搬送された記録媒体Pに、電子写真感光体10上のトナー像が転写される。トナー像を転写された記録媒体Pは、図示を省略する搬送装置によって搬送されて定着装置40の設けられている位置にまで達すると、該定着装置40によって定着されて、記録媒体P上に画像が形成される。
【0066】
電子写真感光体10上に残留したトナーや、付着したキャリアや、紙粉等は、除去装置60の除去部材62によって除去される。
【0067】
そして、本実施形態の画像形成装置100は、下引層と電荷発生層との界面に下引層に含まれている電子受容性物質が存在している電子写真感光体を備えていることで、繰り返し使用時に前画像の履歴が次画像形成時に画像濃度ムラとして発生する現象が抑制される。
【0068】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態では、前記した本実施形態に係る電子写真感光体を有し、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジとして構成してもよい。
例えば、図4に示すように、露光のための開口部24A及び取り付けレール24Cが備えられた筐体24内に、電子写真感光体10、帯電装置52、現像装置56、及び除去装置60を一体に収容させたプロセスカートリッジ102を備えた形態が挙げられる。このプロセスカートリッジ102は、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置100に着脱させるものである。
なお、プロセスカートリッジ102の構成は、これに限られず、例えば、少なくとも本実施形態に係る電子写真感光体10を有する構成であればよく、他の部材や装置は必要に応じて備えた構成とすればよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0070】
(実施例1)
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤としてのシラン(KBM603、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、150℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0071】
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、プルプリン3質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)12質量部とを、メチルエチルケトン88質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径0.2mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて24時間の分散を行い分散液を得た。
【0072】
得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布用液を得た。
この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、25分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
【0073】
次に、電荷発生材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用い、その15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイド社製)質量部及びn−ブチルアルコール300重量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散して電荷発生層用塗布液を得た。
この電荷発生層用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0074】
次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6質量部、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1質量部とを混合してテトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合溶解し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を電荷発生層上に塗布して135℃で35分間乾燥し、膜厚が25μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体を得た。
【0075】
この電子写真感光体を富士ゼロックス社製カラー複合機 DocuCentre−IV C2260の改造機に装着し、高温高湿(28℃85%RH)/常温常湿(20℃40%RH)/低温低湿(10℃15%RH)においてプリントテストを行った。
プリントテストでは、濃度100%のパッチを印刷したのち、全面濃度40%のハーフトーンサンプルの画像を印刷し、画像濃度ムラの発生状況を調べた。結果を表1に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
○…濃度ムラ未発生
△…軽微な濃度ムラ発生
×…重度な濃度ムラ発生
【0076】
また、上記プリントテスト後、電子写真感光体の下引層と電荷発生層との界面及び電荷発生層と電荷輸送層との界面で剥離した。次いで、赤外分光吸収スペクトル測定機(日立ハイテク社製、Nicolet6700)を用いて、電荷発生層の下引層側及び電荷輸送層側をそれぞれ測定した。その差スペクトルにより電子受容性物質(プルプリン)に起因するピークが約3400cm−1に検出された。これにより、下引層に含まれるはずの電子受容性物質の一部が下引層と電荷発生層との界面に存在することが確認された。
【0077】
(実施例2)
下引層を形成する際、実施例1における酸化亜鉛に代えて酸化錫(S1:三菱マテリアル社製)を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に下引層と電荷発生層との界面における電子受容性物質の存在確認および画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例3)
下引層を形成する際、実施例1における酸化亜鉛に代えて酸化チタン(平均粒子径:36nm、シーアイ化成社製、比表面積値:45m/g)を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に下引層と電荷発生層との界面における電子受容性物質の存在確認および画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例4)
下引層を形成する際、実施例1におけるプルプリン3質量部に代えてアリザリン3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に下引層と電荷発生層との界面における電子受容性物質の存在確認および画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例1)
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤としてのシラン(KBM603、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、150℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0081】
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、アントラキノン0.5質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)10質量部とを、メチルエチルケトン90質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、直径0.2mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて24時間の分散を行い分散液を得た。
【0082】
得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部とを添加し、下引層形成用塗布用液を得た。
この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、25分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
電荷発生層、電荷輸送層は実施例1と同様に形成して目的の電子写真感光体を作製し、実施例1と同様に下引層と電荷発生層との界面における電子受容性物質の存在確認および画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例2)
下引層を形成する際、比較例1における酸化亜鉛に代えて酸化錫(S1:三菱マテリアル社製)を用いた以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に下引層と電荷発生層との界面における電子受容性物質の存在確認および画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例3)
下引層を形成する際、比較例1における酸化亜鉛に代えて酸化チタン(体積平均粒子径:36nm、シーアイ化成社製、比表面積値:45m/g)を用いた以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に下引層と電荷発生層との界面における電子受容性物質の存在確認および画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(比較例4)
下引層を形成する際、比較例1におけるアントラキノン0.5質量部に代えてプルプリン0.5質量部を用いた以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に下引層と電荷発生層との界面における電子受容性物質の存在確認および画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【符号の説明】
【0087】
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性支持体、6 感光層(機能分離型)、7 感光層(単層型)、10A,10B,10 電子写真感光体、24 筐体、30 露光装置、40 定着装置、52 帯電装置、54 静電潜像形成装置、56 現像装置、58 転写装置、60 除去装置、62 除去部材、100 画像形成装置、102 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、
前記導電性支持体上に配置されており、結着樹脂、金属酸化物粒子及び電子受容性物質を含有する下引層と、
前記下引層上に配置された感光層と、を有し、
前記下引層と前記感光層との界面に前記電子受容性物質が存在している電子写真感光体。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電子受容性物質が、ヒドロキシアントラキノン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写装置と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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