説明

電子写真感光体、画像形成装置

【課題】高トナー消費量の画像(例えば、べた画像)を連続してプリントを行ってもスジ状の画像欠陥、雨だれ状の画像欠陥が無く高品質のプリント画像が得られる電子写真感光体及び画像形成装置の提供。
【解決手段】導電性支持体の表面に感光層と保護層をこの順に設けた電子写真感光体において、該保護層が無機微粒子を含み、該保護層の表面における軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が1.5〜5.0であることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、及び該電子写真感光体を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に使用される電子写真感光体(以下、簡単に感光体ともいう)の表面では、帯電、露光、現像、転写、クリーニングといった一連の工程により画像形成が行われている。電子写真感光体は、かつてはセレン化合物等の無機化合物を用いた無機感光体が用いられていたが、近年では、各種波長光に対応可能な材料を開発し易く環境への影響が少ない有機化合物を用いる有機感光体が広く使用される様になっている。
【0003】
当初、有機感光体は電気的、機械的な外力や化学的作用に対する耐久性に難点を有していた。具体的には、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段等との摩擦による摩耗やキズの発生、コロナ帯電時に発生するオゾン等の活性酸素や窒素酸化物による表面劣化等が発生し易いものであった。
【0004】
そこで、有機感光体表面の耐久性を向上させるための検討がこれまで多く試みられてきた。一例を挙げると、感光体表面の物理的強度を上げるために電荷輸送層を複層化する試みがなされ、また、最表面層にシリカ粒子を含有させて感光体表面の機械的強度を高める等の検討がこれまで行われてきた(たとえば、特許文献1、2参照)。この様な研究者の努力の結果、最近では有機感光体の耐久性は以前よりも格段に向上したものになった。
【0005】
ところで、耐久性を向上させる手段としては、表面硬度を上げて感光体表面の耐摩耗性を高める手法が一般的である。しかしながら、この方法では感光体の表面性が却って低下し易くなってしまうという問題が発生する様になった。画像形成にともない感光体表面ではトナー等の付着やオゾン等による化学変化による反応物の付着が起こるが、安定した画質を維持するには、これらの異物を効果的に除去することが必要であることがわかってきた。すなわち、耐摩耗性が低い従来の感光体では、表面が適度に削れるとこれらの異物もいっしょに除去することができたが、感光体表面が摩耗しにくくなると、これら異物の除去が行いにくくなり、その結果、感光体表面の性能低下を招くことになったのである。
【0006】
一方、現在電子写真技術を採用した画像形成装置は種々の改良が加えられ、高速で高品質のプリント画像が得られるようになった。これにより軽印刷分野にも電子写真を採用した画像形成装置が活躍するようになってきている。
【0007】
軽印刷分野では、通常のオフィスと異なり、べた画像の上に文字画像を印刷する(例えば、青色の背景に黄色い文字画像の印刷)ことがしばしばあり、トナーが大量に消費されることが多い。
【0008】
上記の画像形成装置を用い、トナー消費量が多い画像(例えば、べた画像)を連続してプリントを行うと、プリント画像上に雨だれ状の画像欠陥(汚れ)が発生するという問題が出ていた。
【0009】
ここで、雨だれ状の画像欠陥とは、クリーニング装置によって本来掻き取られるべきトナー微粒子やトナー外添剤が、クリーニング装置をすり抜けて感光体表面に巾2〜200μm、長さ10μm〜2cmの塊状に付着し、付着した部分がプリント画像上に雨だれ状画像欠陥となって顕在化する現象をいう。
【0010】
また、クリーニング性を向上することを目的とした、感光体表面に滑剤塗布手段より滑剤を塗布する手段を設けた画像形成装置が提案されている。(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平2−160247号公報
【特許文献2】特開平7−333881号公報
【特許文献3】特開2003−58009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、スジ状の画像欠陥が無く、また高トナー消費量の画像(例えば、べた画像)を連続してプリントを行っても雨だれ状の画像欠陥が無く、高品質のプリント画像が得られる電子写真感光体及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記構成を採ることにより達成される。
【0013】
1.導電性支持体の表面に感光層と保護層をこの順に設けた電子写真感光体において、
該保護層が無機微粒子を含み、
該保護層の表面における軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が1.5〜5.0であることを特徴とする電子写真感光体。
【0014】
2.前記保護層が無機微粒子を3〜20質量%含有していることを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体。
【0015】
3.前記無機微粒子が疎水化シリカ微粒子であることを特徴とする前記1または2に記載の電子写真感光体。
【0016】
4.帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、電子写真感光体及び滑剤塗布手段を備える画像形成装置において、
該電子写真感光体が導電性支持体と感光層と保護層をこの順に設けたもので、
該保護層が無機微粒子を含み、
該保護層の表面における軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が1.5〜5.0であることを特徴とする画像形成装置。
【0017】
5.前記保護層が無機微粒子を3〜20質量%含有していることを特徴とする前記4に記載の画像形成装置。
【0018】
6.前記無機微粒子が疎水化シリカ微粒子であることを特徴とする前記4または5に記載の画像形成装置。
【0019】
7.前記現像手段に用いるトナーのガラス転移点(Tg)が、20〜45℃であることを特徴とする前記4〜6の何れかに記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子写真感光体及び画像形成装置は、スジ状の画像欠陥が無く、また高トナー消費量の画像(例えば、べた画像)を連続してプリントを行っても雨だれ状の画像欠陥が無く、高品質のプリント画像が得られる優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者等は、トナー消費量が多い画像(感光体表面へトナーの付着量が多い画像)を連続してプリントを行うと、プリント画像上に雨だれ状の画像欠陥が発生するという問題に対して、その発生原因について検討を行った。
【0022】
検討の結果、保護層に無機微粒子を添加した感光体を用いてプリントを行うと、プリント開始から1万枚程度までは雨だれ状の画像欠陥の発生が認められたが、それ以降は雨だれ状の画像欠陥が発生しなくなることが確認できた。
【0023】
これは、未使用の保護層の表面は、無機微粒子が樹脂に覆われて露出しておらず、表面が平滑であるために、プリント開始直後は雨だれ状の画像欠陥が発生するのではと推察している。
【0024】
1万枚程度プリントを行うと、プリント画像上に雨だれ状の画像欠陥が発生しなくなるのは、おそらく、保護層の表面近傍の無機微粒子が抜けて脱落し、抜けた穴により表面がマットになり、その穴に滑剤が捕獲され、プリント時に感光体表面に効果的に滑剤が補充されことで、常に感光体表面に滑剤が存在し、雨だれの原因となる外添剤やトナー微粒子の付着を防ぐことができるようになったことによると推察している。
【0025】
本発明者等は、感光体の使用開始後、無機微粒子が抜けて穴ができるまでに発生する雨だれ状の画像欠陥を無くす検討を行った。
【0026】
保護層の表面に特定形状の凹部を設けると、この凹部に滑剤が取り込まれ、長期間保持することができるようになり、雨だれ状の画像欠陥の発生を防止できるのではと考えた。
【0027】
このことを検証するために、本発明者等は、無機微粒子を含有しない保護層に、無機微粒子が抜けてできたと同じ程度に凹部を付けた感光体を試作し、プリントを行ってみた。その結果、この感光体を用いると1万枚程度のプリントまでは雨だれ状の画像欠陥が発生しないが、その後プリントを続けると雨だれ状の画像欠陥が発生することが確認できた。
【0028】
これは、あらかじめ感光体表面に形成された凹部に滑剤が捕獲され、保持されることでプリント開始直後は雨だれ状の画像欠陥が発生を防止できることが判った。しかし、1万枚以上プリントを続けると、保護層の表面に形成された凹部が現像手段やクリーニング手段により研磨されて無くなり、滑剤の捕獲ができなくなり、雨だれ状の画像欠陥が発生してしまうことが判った。
【0029】
この結果から、保護層の表面に滑剤を捕獲するためには保護層の凹部の形状が重要であることが判った。
【0030】
このような知見から、発明者等は、表面保護層の表面形状と滑剤の捕獲(取り込み性)とその持続性との関係について検討を行った。
【0031】
種々検討の結果、保護層の表面における軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が特定の値を有する感光体を用いると、上記問題を解決できることを見いだした。
【0032】
本発明の感光体は、軸方向に設けた多数の凹部に対し、周方向に設けた少数の凹部が交差して形成された表面を有していることを特徴としている。
【0033】
この感光体は、高トナー消費量の画像(例えば、べた画像)を連続してプリントを行っても、雨だれ状の画像欠陥(短い線状キズ)が発生し難く、クリーニング性に優れた効果を有する。
【0034】
特に滑剤を供給するシステムを有するプロセスや低温定着現像剤を用いたプロセスにおいては特段の効果を有する。
【0035】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0036】
先ず、感光体の表面特性について説明する。
【0037】
《感光体の表面特性》
本発明の感光体は、導電性支持体と感光層と無機微粒子を含有する保護層を有し、
該感光体の軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が1.5〜5.0、好ましくは1.8〜3.5のものである。
【0038】
上記表面を有する感光体は、初期画像においてスジ状欠陥が無く、またプリント時にトナー粒子が表面の粗さ部に入り込まず、滑剤のみが捕獲され、長期間保持されることで、感光体の表面に滑剤が一定量固着させることができるという効果が得られる。
【0039】
本発明に係わる画像形成装置は、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、感光体及び滑剤塗布手段を備えるもので、軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が1.5〜5.0、好ましくは1.8〜3.5である感光体を搭載したものである。
【0040】
尚、軸方向のRzJISは、0.08〜0.60μmが好ましい。
【0041】
具体例で示すと、軸方向のRzJISが0.3であると、周方向のRzJISが0.06〜0.2となる。
【0042】
本発明で云う十点平均粗さ「RzJIS」とは、JIS B0601−2001の付属書に記載されている表記であるが、JIS B0601:1994におけるRzのことである。
【0043】
RzJISとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、もっとも低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0044】
【数1】

【0045】
(RzJISの測定)
図1は、感光体の軸方向のRzJISと周方向のRzJISを測定する場所を示す。
【0046】
図1において、(a)は感光体の軸方向のRzJISと周方向のRzJISを測定する方向を示す。(b)は測定する場所を示し、A〜Eの5点を測定し、その平均値を軸方向のRzJISと周方向のRzJISとする。
【0047】
感光体の表面(具体的には保護層表面)1点における軸方向のRzJISと周方向のRzJISは、下記の方法で測定する。
【0048】
測定機:キーエンス社製「VK−8510」
対物レンズ:100倍
オプチカルズーム:2倍
測定ピッチ:0.01μm
カットオフ:0.08mm
ダークカット:結線レベル2
以上の条件で得られた高低像において、軸方向と周方向にあたる線粗さをランダムに5本ずつ測定して、そのRzJISの平均値をその測定箇所のRzJISとする。
【0049】
次に、感光体の構成と作製について説明する。
【0050】
《感光体の構成と作製》
本発明の感光体は、導電性支持の上に感光層を、その上に無機微粒子を含有する保護層を設けたものである。
【0051】
具体的には、以下に示すような構成のものが挙げられる。
【0052】
1.導電性支持体上に感光層として電荷発生層と電荷輸送層をこの順で積層し、その上に保護層を積層した構成;
2.導電性支持体上に中間層を形成し、その上に感光層として電荷発生層と電荷輸送層をこの順に積層し、その上に保護層を積層した構成;
3.導電性支持体上に中間層を形成し、その上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層の感光層を形成し、その上に保護層を積層した構成; 本発明では上記2)の構成が好ましく用いられる。
【0053】
以下に、上記2)の構成の感光体について具体的に説明する。
【0054】
〈導電性支持体〉
本発明で用いる導電性支持体としては、シート状又は円筒状支持体が用いられるが、画像形成装置の設計の容易さからは円筒状支持体が好ましい。円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、円筒度が5〜40μmが好ましく、7〜30μmがより好ましい。
【0055】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗が1×10Ωcm以下のものが好ましい。
【0056】
〈中間層〉
本発明においては円筒状導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0057】
又、本発明に好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0058】
又、本発明に好ましく用いられる中間層は無機微粒子をバインダー樹脂中に分散した中間層が挙げられる。無機微粒子の平均粒径は0.01〜1μmが好ましい。特に、表面処理をしたN型半導性微粒子をバインダー中に分散した中間層が好ましい。例えばシリカ・アルミナ処理及びシラン化合物で表面処理した平均粒径が0.01〜1μmの酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散した中間層が挙げられる。このような中間層の膜厚は、1〜20μmが好ましい。
【0059】
〈電荷発生層〉
電荷発生層は、電荷発生物質と必要に応じバインダー樹脂とから構成される。
【0060】
電荷発生物質(CGM)としてはフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを単独或いは併用して用いることができる。
【0061】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0062】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)とバインダー樹脂とから構成される。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0063】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることが好ましい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0064】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0065】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し電荷輸送物質50〜200質量部が好ましい。
【0066】
〈保護層〉
保護層は、バインダー樹脂に無機微粒子を添加して調製した塗布液を電荷輸送層の上に塗布して形成し、その後研磨加工して特定のRzJISの値を有する表面としたものである。なお、保護層には酸化防止剤を含有させることができる。
【0067】
保護層は、その層中に3〜20質量%の無機微粒子を含有していることが好ましい。
【0068】
無機微粒子の数平均一次粒径は、1〜300nmのものが好ましく、5〜100nmが特に好ましい。
【0069】
無機微粒子の数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出して得られた値である。
【0070】
無機微粒子としては、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン(チタニア)、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を好ましく用いることができる。特に疎水化シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタンが好ましく、これらの中では疎水化シリカが特に好ましい。
【0071】
本発明で用いる疎水化シリカは疎水化度が50以上に疎水化処理されたものが好ましい。
【0072】
尚、疎水化度(メタノールウェッタビリティ)とはメタノールに対する濡れ性の尺度で示される。即ち、以下のように定義される。
【0073】
疎水化度(メタノールウェッタビリティ)=(a/(a+50))×100
疎水化度の測定方法を以下に記す。
【0074】
内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の金属酸化物粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で金属酸化物粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。この金属酸化物粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、上記式により疎水化度が算出される。
【0075】
シリカ微粒子の表面を疎水化するには、例えばトリメチルシリル化剤を用いてシリカ微粒子の表面を処理することで作製することができる。
【0076】
表面処理方法としては、シリカ微粒子とトリメチルシリル化剤とを、水蒸気の存在下で反応させることが好ましい。かかる反応に際して、該水蒸気の分圧を4〜20kPa、好適には5〜15kPaで表面処理を行うことが好ましい。
【0077】
ここで、水蒸気分圧が4kPaより小さいと疎水化度が上がらず、かつ疎水化度の分布も広がる。一方、水蒸気分圧が20kPaより大きくなっても、疎水化度の分布が広がり、その均一性が損なわれやすい。
【0078】
また、上記シリカ微粒子とトリメチルシリル化剤との反応は、短い反応時間でより疎水化度の高いシリカを得る場合には、トリメチルシリル化剤の気相の分圧が50〜200kPa、好適には80〜150kPaになるような条件下で行うのが好ましい。
【0079】
保護層に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0080】
次に、保護層表面に特定のRzJISを付与する方法について説明する。
【0081】
(研磨加工)
保護層表面に特定のRzJISを付与する方法は、特に限定されないが、保護層用塗布液を塗布・乾燥して形成した塗膜を、研磨材を用いて研磨加工する方法が好ましい。
【0082】
具体的には、以下に示すような方法で保護層表面を、研磨材を用いて研磨加工することより、特定形状の粗さ曲線プロフィールを表面に形成する方法が好ましい。
【0083】
本発明では、立体形状の部位を規則的に配列させた研磨面を有し、この立体形状の部位内部に粒子を含有させたシート状の研磨部材を用いて保護層表面を研磨する方法が好ましい。このような、研摩方法を用いることで、感光体表面の全面に均一にムラ無く軸方向と周方向に特定のRzJISを形成できる。
【0084】
図2は、感光体表面を研磨する際の様子を示す概要図である。
【0085】
図2に示す様に、感光体表面の研磨作業は感光体を回転させた状態にして、シート状の研磨部材を感光体表面に接触させて行うものである。
【0086】
図2に示す研磨方法はいずれも公知の方法で、図2(a)はバックアップロール押付方式と呼ばれるもので、シート状の研磨部材10の背後に配置されたローラ2により研磨部材10を押しつけ感光体1の表面を研磨するものである。また、図2(b)はガイドロール近接方式と呼ばれるもので、シート状の研磨部材10の背後に配置された複数のローラ2により研磨部材に張力を加え感光体表面の研磨を行うものである。本発明では、シート状の研磨部材10の背後に配置されたローラ2により研磨部材10を押しつけ感光体1の表面を研磨する方法が好ましい。
【0087】
本発明では、特定のRzJISを形成できる研磨部材を選択して用いる。好ましい研磨部材としては、変形が可能な可撓性の材質の上に砥粒子を主成分とする膜をもうけたものを挙げることができる。
【0088】
次に、本発明で用いられるシート状の研磨部材について説明する。本発明で用いられるシート状の研磨部材は、感光体表面を研磨する面、すなわち、研磨面に立体形状の部位を有し、立体形状の部位に砥粒子と呼ばれる粒子が含有されてなるものである。
【0089】
本発明では、シート状の研磨部材を構成する立体形状の部位の断面形状が三角形の形状を有するもので、かつ、砥粒子が立体形状の部位の内部に含有されるものが好ましい。また、シート状の研磨部材を構成する立体形状の部位内部に含有される砥粒子としてはダイヤモンドが特に好ましいものである。
【0090】
尚、軸方向のRzJISと周方向のRzJISは、保護層表面の研磨条件(シート状の研磨部材、感光体の回転数、送り速度等)により制御することができる。
【0091】
軸方向のRzJISと周方向のRzJISを特定の値に制御することで、保護層の表面における軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値を本発明で規定している範囲にすることができる。
【0092】
次に、本発明の感光体が好ましく用いられる画像形成装置について説明する。
【0093】
《画像形成装置》
本発明で用いられる画像形成装置は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、感光体、及び滑剤塗布手段を備えたものである。
【0094】
図3は、本発明の感光体が好ましく用いられるカラー画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【0095】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段(定着工程でもある)24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0096】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程でもある)2Y、露光手段(LD光を用いた露光工程でもある)3Y、現像手段(現像工程でもある)4Y、一次転写手段(一次転写工程でもある)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段(クリーニング工程でもある)6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラ5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0097】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0098】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体としての用紙Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段(二次転写工程でもある)としての二次転写ローラ5Aに搬送され、用紙P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された用紙Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0099】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5Aにより用紙Pにカラー画像を転写した後、用紙Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0100】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0101】
二次転写ローラ5Aは、ここを用紙Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
【0102】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0103】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0104】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5K、及びクリーニング手段6Aとから成る。
【0105】
本発明の画像形成装置は、感光体の表面に滑剤を供給する滑剤付与手段を有することを特徴とする。滑剤付与手段は感光体周辺の適当な位置に設置することができるが、設置空間を有効利用するには、図3記載の帯電手段、現像手段、クリーニング手段の一部を利用して、設置しても良い。以下、クリーニング手段に滑剤付与手段を併用した例を挙げる。
【0106】
図4は、滑剤付与手段を併用したクリーニング手段の一例を示す構成図である。
【0107】
該クリーニング手段は図3の6Y、6M、6C、6K等のクリーニング手段として用いられる。図4のクリーニングブレード66Aが支持部材66Bに取り付けられている。該クリーニングブレードの材質としてはゴム弾性体が用いられ、その材料としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が知られているが、これらの内、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。
【0108】
一方、支持部材66Bは板状の金属部材やプラスチック部材で構成される。金属部材としてはステンレス鋼板、アルミ板、或いは制震鋼板等が好ましい。
【0109】
本発明において、感光体表面に圧接するクリーニングブレードの先端部は、感光体の回転方向と反対方向(カウンター方向)に向けて負荷をかけた状態で圧接することが好ましい。図4に示すようにクリーニングブレードの先端部は感光体と圧接するときに、圧接面を形成することが好ましい。
【0110】
クリーニングブレードの感光体への当接荷重P、当接角θの好ましい値としては、P=5〜40N/m、θ=5〜35°である。
【0111】
当接荷重Pはクリーニングブレード66Aを感光体ドラム1に当接させたときの圧接力P′の法線方向ベクトル値である。
【0112】
当接角θは感光体の当接点Aにおける接線Xと変形前のブレード(図面では点線で示した)とのなす角を表す。66Eは支持部材を回転可能にする回転軸であり、66Gは荷重バネを示す。
【0113】
又、前記クリーニングブレードの自由長Lは図4に示すように支持部材66Bの端部Bの位置から変形前のブレードの先端点の長さを表す。該自由長の好ましい値としてはL=6〜15mm、である。クリーニングブレードの厚さtは0.5〜10mmが好ましい。ここで、本発明で用いられるクリーニングブレードの厚さとは図4に示すように支持部材66Bの接着面に対して垂直な方向を示す。
【0114】
図4のクリーニング手段には滑剤付与手段を兼ねたブラシロール66Cが用いられている。該ブラシロールは感光体1に付着したトナーの除去、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーの回収機能と共に、滑剤を感光体に供給する滑剤付与手段としての機能を有する。即ち該ブラシロールは感光体1と接触し、その接触部においては感光体と進行方向が同方向に回転し、感光体上のトナーや紙粉を除去すると共に、クリーニングブレード66Aで除去されたトナーを搬送し、搬送スクリュー66Jに回収する。この間の経路はブラシロール66Cに除去手段としてのフリッカ66Iを当接させることにより、感光体1からブラシロール66Cに転移したトナー等の除去物を除去することが好ましい。更にこのフリッカに付着したトナーをスクレーパ66Dで除去し、トナーを搬送スクリュー66Jに回収する。回収されたトナーは廃棄物として外部に取り出されるか、或いはトナーリサイクル用のリサイクルパイプ(図示せず)を経由して現像器に搬送され再利用される。フリッカ66Iの材料としてはステンレス、アルミニウム等の金属管が好ましく用いられる。一方、スクレーパ66Dとしては、リン青銅板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板等の弾性板が用いられ、先端がフリッカの回転方向に対し鋭角を形成するカウンター方式で当接させるのが好ましい。
【0115】
又、滑剤(ステアリン酸亜鉛等の固形素材)66Kはブラシロールにバネ荷重66Sで押圧されて取り付けられており、ブラシは回転しながら、該滑剤を擦過して、感光体の表面に滑剤を供給する。
【0116】
ブラシロール66Cとしては導電性又は半導電性体のブラシロールが用いられる。
【0117】
本発明で用いられるブラシロールのブラシ構成素材は、任意のものを用いることができるが、疎水性で、かつ誘電率が高い繊維形成性高分子重合体を用いるのが好ましい。このような高分子重合体としては、例えばレーヨン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル酸樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール)等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は単独であるいは2種以上の混合物として用いることができる。特に、好ましくはレーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリプロピレンである。
【0118】
また、前記ブラシは、導電性又は反導電性のものが用いられ、構成素材にカーボン等の低抵抗物質を含有させ、任意の比抵抗に調整したものが使用できる。
【0119】
ブラシロールのブラシ毛の比抵抗は、常温常湿(26℃、50%RH)で、長さ10cmの1本のブラシ毛の両端に500Vの電圧を印加した状態で測定して、10Ωcm〜10Ωcmの範囲内のものが好ましい。
【0120】
即ち、ブラシロールはステンレス等の芯材1×10Ωcm〜1×10Ωcmの比抵抗を持つ導電性又は半導電性のブラシ毛を用いることが好ましい。1×10Ωcmよりも比抵抗が低いと、放電によるバンディング等が発生しやすくなる。また、1×10Ωcmよりも高いと、感光体との電位差が低くなって、クリーニング不良が発生しやすくなる。
【0121】
ブラシロールに用いるブラシ毛1本の太さは、5〜20デニールが好ましい。5デニールに満たないと、十分な擦過力が無いため表面付着物を除去できない。また、20デニールより大きいと、ブラシが剛直になるため感光体の表面を傷つける上に摩耗を進行させ、感光体の寿命を低下させる。
【0122】
ここでいう「デニール」とは、前記ブラシを構成するブラシ毛(繊維)の長さ9000mの質量をg(グラム)単位で測定した数値である。
【0123】
前記ブラシのブラシ毛密度は、4.5×10/cm〜2.0×10/cm1平方センチあたりのブラシ毛数)である。4.5×10/cmに満たないと、剛直度が低く擦過力が弱い上に、擦過にムラができ、付着物を均一に除去することができない。2.0×10/cmより大きいと、剛直になって擦過力が強くなるために感光体を摩耗させ、感度低下によるカブリや傷による黒スジ等の不良画像が発生する。
【0124】
本発明で用いられるブラシロールの感光体に対する食い込み量は0.4〜1.5mmに設定されるのが好ましい。この食い込み量は、感光体ドラムとブラシロールの相対運動によって発生するブラシにかかる負荷を意味する。この負荷は、感光体ドラムから見れば、ブラシから受ける擦過力に相当し、その範囲を規定することは、感光体が適度な力で擦過されることが必要であることを意味する。
【0125】
この食い込み量とはブラシを感光体に当接したとき、ブラシ毛が感光体表面で曲がらずに、直線的に内部に進入したと仮定した時の内部への食い込み長さを云う。
【0126】
滑剤が供給された感光体ではブラシによる感光体表面の擦過力が小さいため、食い込み量が、0.4mmより小さいと、トナーや紙粉などの感光体表面へのフィルミングを抑制することができず、画像上でムラなどの不良が発生する。一方、1.5mmより大きいと、ブラシによる感光体表面の擦過力が大きすぎるために、感光体の摩耗量が大きくなり、感度低下によるカブリが発生したり、感光体表面に傷が発生し、画像上にスジ故障が発生したりして問題である。
【0127】
ブラシロールに用いられるロール部の芯材としては、主としてステンレス、アルミニウム等の金属、紙、プラスチック等が用いられるが、これらにより限定されるものではない。
【0128】
本発明で用いられるブラシロールは円柱状の芯材の表面に接着層を介してブラシを設置した構成であることが好ましい。
【0129】
ブラシロールは、その当接部分が感光体の表面と同方向に移動するように回転するのが好ましい。該当接部分が逆方向に移動すると、感光体の表面に過剰なトナーが存在した場合に、ブラシロールにより除去されたトナーがこぼれて記録紙や装置を汚す場合がある。
【0130】
感光体とブラシロールとが前記のように、同方向に移動する場合に、両者の表面速度比は1対1.1〜1対2の範囲内の値であることが好ましい。ブラシロールの回転速度が感光体よりも遅いとブラシロールのトナー除去能力が低下するためにクリーニング不良が発生しやすく、感光体よりも速いとトナー除去能力が過剰となってブレードバウンディングやめくれが発生しやすくなる。
【0131】
本発明では上記のような中間転写体を有する画像形成装置において、滑剤を感光体表面に付与するため、感光体の表面に当接して、滑剤付与手段を設けることが好ましい。
【0132】
(滑剤)
滑剤としては、感光体の表面の接触角(純水に対する接触角)を1°以上増加させる材料であれば、脂肪酸金属塩或いはフッ素系樹脂等の材料に限定されない。
【0133】
本発明で用いられる滑剤としては、感光体表面への延展性及び均一な膜形成性能を有する材料として脂肪酸金属塩が好ましい。該脂肪酸金属塩は、炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩が好ましい。具体的には、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸亜鉛である。
【0134】
上記脂肪酸金属塩の中でも特にフローテスターの流出速度が高い脂肪酸金属塩は劈開性が高く、感光体表面でより効果的に脂肪酸金属塩の層を形成することができる。流出速度の範囲としては1×10−7以上1×10−1以下が好ましい。フローテスターの流出速度の測定は島津フローテスター「CFT−500」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0135】
又、上記滑剤の他の例としてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末が好ましい。これらの滑剤は必要に応じて圧力をかけ、板状或いは棒状にして用いることが好ましい。
【0136】
次に、本発明で用いられるトナーについて説明する。
【0137】
《トナー》
本発明に係わる画像形成装置で用いられるトナーは、ガラス転移点が20〜45℃と高速でプリントしても消費電力が少なくて済む低温定着特性を有し、高品質のプリント画像を得るためその粒径が個数基準メディアン径D50で3.0〜8.0μmのものが好ましい。
【0138】
トナーのガラス転移点は、「DSC−7示差走査カロリメーター」(パーキンエルマー製)、「TAC7/DX熱分析装置コントローラー」(パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。
【0139】
測定手順としては、トナー4.5mg〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パン(KITNo.0219−0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行った。
【0140】
ガラス転移点は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点として示す。
【0141】
トナーの個数基準メディアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター社製)を用いて測定することができる。
【0142】
上記トナーの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法で作製することができるが、低温定着特性と高画質特性を満足するトナーは、多段重合法によって得られる複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程を経る方法が好ましい。
【0143】
好ましいトナーの製造方法の一例について詳細に説明する。
【0144】
この製造方法は、
1.重合性単量体をラジカル重合性単量体に溶解或いは分散する溶解/分散工程
2.樹脂微粒子の分散液を調製するための重合工程
3.水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を融着させてトナー母体粒子を得る融着工程
4.着色粒子の分散液を冷却する冷却工程
5.冷却された着色粒子の分散液から当該着色粒子を固液分離し、当該着色粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程
6.洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
必要に応じ
7.乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する工程が含まれていてもよい。
【0145】
尚、ガラス転移点が異なるトナーは重合性単量体の種類と配合量を調整することにより作製できる。個数基準メディアン径(D50)は樹脂微粒子と着色剤粒子を融着させてトナー母体粒子を得る融着工程を制御することで調整することができる。
【0146】
本発明において、トナーとはトナー粒子の総称、トナー粒子はトナー母体粒子に外添剤を付着させて得られたものを云う。
【実施例】
【0147】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。
【0148】
《感光体の作製》
感光体は以下のようにして作製した。
【0149】
〈研磨部材の準備〉
研磨部材として下記の「研磨部材1〜5」を準備した。研磨部材は、市販の厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム基体上に砥粒子(材質、平均粒径)と結着樹脂(市販のレゾールフェノール樹脂)で形成してなるものである。これらはいずれも立体形状の部位を規則的に配列させた研磨面を有するシート状の研磨部材である。
【0150】
研磨部材1:砥粒子(ダイヤモンド、平均粒径2.5μm)
研磨部材2:砥粒子(ダイヤモンド、平均粒径2.5±0.2μm)
研磨部材3:砥粒子(ダイヤモンド、平均粒径10μm)
研磨部材4:砥粒子(アルミナ、平均粒径3.5μm)
研磨部材5:砥粒子(アルミナ、平均粒径10μm)
〈無機微粒子の準備〉
無機微粒子として下記の「無機微粒子1〜7」を準備した。
【0151】
無機微粒子1:疎水化シリカ微粒子(疎水化度68、数平均一次粒径40nm)
無機微粒子2:疎水化シリカ微粒子(疎水化度68、数平均一次粒径7nm)
無機微粒子3:疎水化シリカ微粒子(疎水化度68、数平均一次粒径80nm)
無機微粒子4:アルミナ微粒子(数平均一次粒径10nm)
無機微粒子5:チタニア微粒子(数平均一次粒径40nm)
無機微粒子6:チタニア微粒子(数平均一次粒径5nm)
無機微粒子7:チタニア微粒子(数平均一次粒径100nm)
〈感光体1の作製〉
(導電性支持体の準備)
導電性支持体として、洗浄済みの表面粗さRzJISを0.92μmに切削加工により調整した円筒状アルミニウム支持体を「基体」として準備した。
【0152】
(中間層の作製)
中間層分散液の作製
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製) 1質量部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 3質量部
メタノール 10質量部
をバッチ式サンドミル分散機で分散時間を10時間分散して、中間層分散液を作製した。
【0153】
中間層塗布液の作製
中間層分散液を同じ混合溶媒を用いて2倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5μm、圧力;5×10Pa)し、「中間層塗布液」を作製した。
【0154】
上記中間層塗布液を、「基体」の表面に浸漬塗布装置を用いて塗布し、乾燥膜厚2μmの「中間層」を形成した。
【0155】
(電荷発生層の形成)
下記塗布液を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を「中間層」の上に浸漬塗布装置を用いて塗布し、乾燥膜厚0.3μmの「電荷発生層」を形成した。
【0156】
電荷発生層塗布液
Y型オキシチタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折の最大ピーク角度が2θで27.3) 20質量部
シリコーン樹脂(KR−5240:信越化学工業社製) 10質量部
酢酸t−ブチル 700質量部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送物質(4,4′−ジメチル−4″−(β−フェニルスチリル)トリフェニルアミン) 225質量部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6質量部
ジクロロメタン 2000質量部
シリコンオイル(KF−54:信越化学工業社製) 1質量部
を混合・溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布装置を用いて塗布し、110℃で70分乾燥を行い、乾燥膜厚18.0μmの「電荷輸送層」を形成した。
【0157】
(保護層の形成)
次に、保護層用の塗布液を下記のようにして作製した。
【0158】
(第1の混合液の調製)
無機微粒子1(疎水化シリカ微粒子(疎水化度68、数平均一次粒径40nm))3質量部とテトラヒドロフラン/トルエン54質量部/18質量部を混合し、「UH600MC」((株)エスエムテー社製)分散機を用い、分散液の循環をさせながら、機械的撹拌及び超音波分散(35KHz、600W)を30分間行った。
【0159】
(結着樹脂溶液の調製)
結着樹脂(ポリカーボネート、Z300:三菱ガス化学社製)15質量部とテトラヒドロフラン/トルエン48質量部/12質量部を混合し、結着樹脂溶液を調製した。
【0160】
(第2の混合液の調製)
第1の混合液に上記結着樹脂溶液を添加して第2の混合液を調製した。この第2の混合液を上記「UH600MC」の分散機を用い、分散液の循環をさせながら、機械的撹拌及び超音波分散(35KHz、600W)を30分間行った。その後、該第2の混合液に、電荷輸送物質(4,4′−ジメチル−4″−(β−フェニルスチリル)トリフェニルアミン)20質量部を添加して溶解し、保護層塗布液を得た。
【0161】
次に、電荷輸送層の上に、上記保護層塗布液を、円形スライド型塗布装置を用いて塗布し、110℃で70分の乾燥を行い、乾燥膜厚6.0μmの「保護層」を作製した。
【0162】
(保護層の表面研磨加工)
次に、図2(a)に示す方式の研磨装置に「研磨部材1」をセットして前記で作製した「保護層」の表面研磨を行こない「感光体1」を作製した。研磨は、感光体の回転速度、研磨部材のくり出し速度、軸方向へのずらし速度、切込量(押し込み量)を任意の値に設定して行った。
【0163】
得られた感光体1の表面のRzJISを測定したところ、軸方向のRzJISが0.23μm、周方向のRzJISが0.09μm、軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が2.5であった。尚、RzJISの測定は、前記の方法で行った。
【0164】
〈感光体2〜14の作製〉
感光体1の作製において用いた無機微粒子、保護層の表面加工を表1のように変更した以外は同様にして、「感光体2〜14」を作製した。
【0165】
表1に、感光体の作製で用いた無機微粒子、保護層の表面加工、表面粗さプロフィール等を示す。
【0166】
【表1】

【0167】
《トナーの作製》
トナーは、以下のようにして作製した。
【0168】
〈コア用樹脂粒子の作製〉
(コア用樹脂粒子1の作製)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器中に、下記化合物を添加して混合し、
スチレン 110.9質量部
n−ブチルアクリレート 52.8質量部
メタクリル酸 12.3質量部
当該混合液に、
パラフィンワックス(HNP−57:日本精鑞社製) 93.8質量部
を添加した後、80℃に加温して溶解させることにより、重合性単量体溶液とした。
【0169】
一方、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2.9質量部をイオン交換水1340質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。当該界面活性剤溶液を80℃に加熱した後、上記重合性単量体溶液を投入し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エム・テクニック社製)」により、上記重合性単量体溶液を2時間混合分散させた。そして、平均粒径が245nmの乳化粒子(油滴)の分散液を調製した。
【0170】
次いで、イオン交換水1460質量部を添加した後、重合開始剤(過硫酸カリウム)6質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた開始剤溶液と、n−オクチルメルカプタン1.8質量部とを添加し、温度を80℃とした。この系を80℃にて3時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を作製した。これを「樹脂粒子C1」とする。
【0171】
(2)第2段重合(外層の形成)
上記「樹脂粒子C1」に、過硫酸カリウム5.1質量部をイオン交換水197質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に下記重合性単量体を混合してなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。単量体混合液は、
スチレン 282.2質量部
n−ブチルアクリレート 134.4質量部
メタクリル酸 31.4質量部
n−オクチルメルカプタン 4.9質量部
からなり、滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って第2段重合(外層の形成)を行った。その後、28℃まで冷却し、「コア用樹脂粒子1」を得た。
【0172】
尚、形成された「コア用樹脂粒子1」の重量平均分子量は21,300、質量平均粒径は180nm、ガラス転移点は39℃であった。
【0173】
(コア用樹脂粒子2の調製)
「コア用樹脂粒子1」の調製において、第1段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 90.8質量部
n−ブチルアクリレート 72.7質量部
メタクリル酸 12.3質量部
に変更し、第2段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 274.1質量部
n−ブチルアクリレート 168.6質量部
メタクリル酸 5.2質量部
に変更する他は同様にして「コア用樹脂粒子2」を作製した。「コア用樹脂粒子2」の重量平均分子量は22,000、質量平均粒径は180nm、ガラス転移点は20.1℃であった。
【0174】
(コア用樹脂粒子3の調製)
「コア用樹脂粒子1」の調製において、第1段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 115.3質量部
n−ブチルアクリレート 48.4質量部
メタクリル酸 12.3質量部
に変更し、第2段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 293.4質量部
n−ブチルアクリレート 123.2質量部
メタクリル酸 31.4質量部
に変更する他は同様にして「コア用樹脂粒子3」を作製した。「コア用樹脂粒子3」の重量平均分子量は22,500、質量平均粒径は180nm、ガラス転移点は44.0℃であった。
【0175】
(コア用樹脂粒子4の調製)
「コア用樹脂粒子1」の調製において、第1段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 103.5質量部
n−ブチルアクリレート 70.4質量部
メタクリル酸 2.1質量部
に変更し、第2段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 263.4質量部
n−ブチルアクリレート 179.2質量部
メタクリル酸 5.4質量部
に変更する他は同様にして「コア用樹脂粒子4」を作製した。「コア用樹脂粒子4」の重量平均分子量は22,500、質量平均粒径は180nm、ガラス転移点は18.0℃であった。
【0176】
(コア用樹脂粒子5の調製)
「コア用樹脂粒子1」の調製において、第1段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 119.7質量部
n−ブチルアクリレート 44.0質量部
メタクリル酸 12.3質量部に変更し、第2段重合における重合性単量体の添加量を、
スチレン 304.6質量部
n−ブチルアクリレート 112.0質量部
メタクリル酸 31.4質量部
に変更する他は同様にして「コア用樹脂粒子5」を作製した。「コア用樹脂粒子5」の重量平均分子量は22,500、質量平均粒径は180nm、ガラス転移点は49.0℃であった。
【0177】
〈シェル用樹脂粒子の調製〉
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を付けた反応容器にポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2.0質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0178】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、下記化合物を混合してなる重合性単量体混合溶液を3時間かけて滴下した。尚、重合性単量体混合溶液は、
スチレン 528質量部
n−ブチルアクリレート 176質量部
メタクリル酸 120質量部
n−オクチルメルカプタン 22質量部
からなる。当該重合性単量体混合液を滴下後、この系を80℃にて1時間にわたり加熱、撹拌して重合を行い、樹脂粒子を調製した。これを「シェル用樹脂粒子」とする。
【0179】
尚、「シェル用樹脂粒子」の重量平均分子量は12,000、質量平均粒径は120nm、ガラス転移点は53℃であった。
【0180】
〈着色剤分散液の作製〉
(着色剤分散液Bk1の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム10質量%の水溶液900質量部を撹拌しながら、着色剤「リーガル330R」(キャボット社製)100質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製した。これを、「着色剤分散液Bk1」とする。この着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、150nmであった。
【0181】
(着色剤分散液C1の作製)
着色剤分散液Bk1の作製で用いた着色剤「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を「C.I.ピグメントブルー15:3」の210質量部に変更した以外は同様にして着色剤粒子の分散液を調製した。これを、「着色剤分散液C1」とする。この着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、150nmであった。
【0182】
(着色剤分散液M1の作製)
着色剤分散液Bk1の作製で用いた着色剤「リーガル330R」(キャボット社製)の420質量部を「C.I.ピグメントレッド122」の357質量部に変更した以外は同様にして着色剤粒子の分散液を調製した。これを、「着色剤分散液M1」とする。この着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、150nmであった。
【0183】
(着色剤分散液Y1の作製)
着色剤分散液Bk1の作製で用いた着色剤「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を「C.I.ピグメントイエロー74」の378質量部に変更した以外は同様にして着色剤粒子の分散液を調製した。これを、「着色剤分散液Y1」とする。この着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、150nmであった。
【0184】
〈着色粒子Bk1の作製〉
(塩析/融着(会合・融着)工程)(コア部の形成)
420.7質量部(固形分換算)の「コア用樹脂粒子1」とイオン交換水900質量部と「着色剤粒子分散液Bk1」200質量部とを、温度センサ、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整した。
【0185】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、粒子の体積基準におけるメディアン系(D50)が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、更に熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、「コア部1」を形成した。
【0186】
「コア部1」の円形度を「FPIA2100」(システックス社製)にて測定したところ0.930であった。
【0187】
(シェル層の形成(シェリング操作))
次いで、65℃において「シェル用樹脂粒子」を50質量部(固形分換算)添加し、更に塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した後、70℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、「コア部1」の表面に「シェル用樹脂粒子」の粒子を融着させた。その後、75℃で20分熟成処理を行い、シェル層を形成した。
【0188】
ここで、塩化ナトリウム40.2質量部を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、「着色粒子を含有する水溶液」を得た。
【0189】
(洗浄、乾燥工程)
着色粒子を含有する水溶液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×
40」(松本機械社製)で固液分離し、着色粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで水洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「着色粒子Bk1」を作製した。得られた着色粒子Bk1は、コア・シェル構造を有する体積基準におけるメディアン径(D50)が6.0μm、Tgが39.5℃の粒子であった。
【0190】
〈着色粒子Bk2の作製〉
着色粒子Bk1の作製において、コア部の形成工程に用いるコア用樹脂粒子を「コア用樹脂粒子2」に変更する他は同様にして、「着色粒子Bk2」を作製した。この粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)は6.0μm、Tgは20.5℃であった。
【0191】
〈着色粒子Bk3の作製〉
着色粒子Bk1の作製において、コア部の形成工程に用いるコア用樹脂粒子を「コア用樹脂粒子3」に変更する他は同様にして、「着色粒子Bk3」を作製した。この粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)は6.0μm、Tgは44.5℃であった。
【0192】
〈着色粒子Bk4の作製〉
着色粒子Bk1の作製において、コア部の形成工程に用いるコア用樹脂粒子を「コア用樹脂粒子4」に変更する他は同様にして、「着色粒子Bk4」を作製した。この粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)は6.3μm、Tgは19.0℃であった。
【0193】
〈着色粒子Bk5の作製〉
着色粒子Bk1の作製において、コア部の形成工程に用いるコア用樹脂粒子を「コア用樹脂粒子5」に変更する他は同様にして、「着色粒子Bk5」を作製した。この粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)は6.1μm、Tgは49.5℃であった。
【0194】
〈トナーBk1の作製〉
上記で作製した「着色粒子Bk1」100質量部に対し、疎水性シリカ微粒子(数平均一次粒子径=80nm)を3.5質量%、疎水性チタニア微粒子(数平均一次粒子径=10nm)を0.6質量%添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工社製)を用いて、周速35m/secで25分間混合して、「トナーBk1」を作製した。尚、トナーBk1のガラス転移点は着色粒子1と同じ39.5℃であった。
【0195】
〈トナーBk2の作製〉
トナーBk1の作製で用いた着色粒子Bk1を、「着色粒子2」に変更した以外は同様にして「トナーBk2」を作製した。尚、トナーBk2のガラス転移点は着色粒子2と同じ20.5℃であった。
【0196】
〈トナーBk3の作製〉
トナーBk1の作製で用いた着色粒子Bk1を、「着色粒子3」に変更した以外は同様にして「トナーBk3」を作製した。尚、トナーBk3のガラス転移点は着色粒子3と同じ44.5℃であった。
【0197】
〈トナーBk4の作製〉
トナーBk1の作製で用いた着色粒子Bk1を、「着色粒子4」に変更した以外は同様にして「トナーBk4」を作製した。尚、トナーBk4のガラス転移点は着色粒子4と同じ18.8℃であった。
【0198】
〈トナーBk5の作製〉
トナーBk1の作製で用いた着色粒子Bk1を、「着色粒子5」に変更した以外は同様にして「トナーBk5」を作製した。尚、トナーBk5のガラス転移点は着色粒子5と同じ49.5℃であった。
【0199】
〈トナーC1〜トナーC5の作製〉
「トナーBk1〜トナーBk5」の作製で用いた着色剤分散液Bk1〜着色剤分散液Bk5を「着色剤分散液C1〜着色剤分散液C5」に変更した以外は同様にして「トナーC1〜トナーC5」を作製した。
【0200】
〈トナーM1〜トナーM5の作製〉
「トナーBk1〜トナーBk5」の作製で用いた着色剤分散液Bk1〜着色剤分散液Bk5を「着色剤分散液M1〜着色剤分散液M5」に変更した以外は同様にして「トナーM1〜トナーM5」を作製した。
【0201】
〈トナーY1〜トナーY5の作製〉
「トナーBk1〜トナーBk5」の作製で用いた着色剤分散液Bk1〜着色剤分散液Bk5を「着色剤分散液Y1〜着色剤分散液Y5」に変更した以外は同様にして「トナーY1〜トナーY5」を作製した。
【0202】
尚、「トナーC1〜トナーC5」、「トナーM1〜トナーM5」及び「トナーY1〜トナーY5」のTgは、「トナーBk1〜トナーBk5」の測定結果と同じであったので記載を省略する。
【0203】
《現像剤の調製》
上記で作製した各トナーの各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積基準メディアン径60μmのフェライトキャリアを、前記トナーの濃度が6質量%になるよう混合して「現像剤Bk1〜Bk5」、「現像剤C1〜C5」、「現像剤M1〜M5」「現像剤Y1〜Y5」を調製した。
【0204】
《評価》
画像の評価機として、図3の構成を有するデジタル複写機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を準備した。このデジタル複写機に上記で作製した「感光体1〜14」と「トナー1〜5」及び「現像剤1〜5」を順次搭載してプリントを行い、感光体の評価を行った。プリントは、常温常湿(20℃60%RH)で、カバレッジ各色20%のベタ画像を用いて2万枚のプリントを行い、評価は、得られたプリントの画像欠陥の発生程度で行なった。
【0205】
次に、準備したデジタル複写機から滑剤塗布装置を取り除き、上記で作製した「感光体1」と「トナー1」及び「現像剤1」を搭載してプリントを行い、感光体の評価を行った。
【0206】
〈スジ欠陥〉
スジ欠陥は、スタート時、A3判のハーフトーン画像(画像濃度0.4)をプリントし、ハーフトーン画像を目視で評価して、感光体周方向のスジ状の欠陥(スジ欠陥)の程度で評価した。
【0207】
評価基準
◎:スジ欠陥なし(良好)
○:不明瞭なスジが見える(実用上問題なし)
×:鋭いスジが見える(実用上問題あり)。
【0208】
〈雨だれ状の画像欠陥(汚れ)〉
雨だれ状の画像欠陥は、スタート時、1000枚毎に、A3判のハーフトーン画像(画像濃度0.4)をプリントし、周期性が感光体の周期と一致し、長さ1mm以上の雨だれ状の画像欠陥が、感光体の一回転あたり何個あるかで判定した。
【0209】
評価基準
◎:雨だれ状の画像欠陥が、0〜2個(良好)
○:雨だれ状の画像欠陥が、3個〜10個(実用上問題なし)
×:雨だれ状の画像欠陥が、11個以上発生(実用上問題有り)。
【0210】
表2に、評価結果を示す。
【0211】
【表2】

【0212】
表2より明らかなように、「実施例1〜13」は、スジ状の画像欠陥、雨だれ状の画像欠陥に問題が無く良好なプリントが2万枚まで継続して得られた。一方「比較例1〜6」は、2万枚プリント中に評価項目の何れかに問題が有ることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】感光体のRzJISを測定する場所を示す。
【図2】感光体表面を研磨する際の様子を示す概要図である。
【図3】本発明の感光体が好ましく用いられるカラー画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【図4】滑剤付与手段を併用したクリーニング手段の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0214】
1Y、1M、1C、1K 感光体
2Y、2M、2C、2K 帯電手段
3Y、3M、3C、3K 露光手段
4Y、4M、4C、4K 現像手段
5A 二次転写ローラ(二次転写手段)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ローラ(一次転写手段)
6、6A、6Y、6M、6C、6K クリーニング手段
7 無端ベルト状中間転写体ユニット
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
61 ブレード
62 ブラケット
63 支軸
70 無端ベルト状中間転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体の表面に感光層と保護層をこの順に設けた電子写真感光体において、
該保護層が無機微粒子を含み、
該保護層の表面における軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が1.5〜5.0であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記保護層が無機微粒子を3〜20質量%含有していることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記無機微粒子が疎水化シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、電子写真感光体及び滑剤塗布手段を備える画像形成装置において、
該電子写真感光体が導電性支持体と感光層と保護層をこの順に設けたもので、
該保護層が無機微粒子を含み、
該保護層の表面における軸方向のRzJISを周方向のRzJISで除した値が1.5〜5.0であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記保護層が無機微粒子を3〜20質量%含有していることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無機微粒子が疎水化シリカ微粒子であることを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像手段に用いるトナーのガラス転移点(Tg)が、20〜45℃であることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate