説明

電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ

【課題】電子写真感光体を長期間使用した場合であっても露光部電位の上昇を引き起こすことなく、帯電性低下、地汚れ、及び帯電不良を抑制することが可能な電子写真感光体の提供。
【解決手段】支持体と、支持体上に、整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有し、整流層が下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有する電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスの省スペース化、ビジネスオポチュニティの拡大等の観点から、電子写真装置に対して、高速化、小型化、カラー化、更には、高画質化、易メンテナンス性が求められている。これらの中でも、易メンテナンス性は、電子写真装置の使用を容易にすることから強く求められている。
【0003】
電子写真感光体の交換頻度の低減による易メンテナンス性は、電子写真感光体の特性の向上、耐久性の向上等が関係していることから、電子写真感光体の開発により解決すべき課題と位置付けられている。
電子写真感光体の交換頻度の低減を実現するには、電子写真感光体由来の画像欠陥を、長期に亘って可能な限り少なくする必要があり、これは、電子写真感光体の長寿命化に他ならない。また、長期に亘る出力画像の高画質化にも関連するため、近年、電子写真感光体の長寿命化に関する開発が多く報告されている。
【0004】
電子写真感光体の長寿命化を達成するためには、画像形成プロセスから電子写真感光体が受ける種々のハザードに対する耐久性の向上が重要な課題となる。ここで言うところのハザードのうち、重要なものとして、電気的ハザードがある。
【0005】
電気的ハザードについて説明する。通常の画像形成プロセスにおいては、電子写真感光体表面に電荷を付与し、所定の電位まで帯電した後に、電子写真感光体への露光によって電子写真感光体を経由して表面に付与した電荷を除去する。この際に電子写真感光体の各層(例えば、表面層・電荷発生層・電荷輸送層・中間層)を電荷が通過することによって、電子写真感光体に静電ストレスが負荷される。現在、広く普及している電子写真感光体は、有機材料からなるものが大部分を占めており、繰り返し帯電、除電を繰り返すような現在の電子写真プロセスにおいては、電子写真感光体を構成する有機材料が静電ハザードによって徐々に変質し、層中での電荷トラップの発生や、帯電性の変化等に挙げられるような電子写真特性の低下が生じる。特に、帯電性の低下は、出力画像の画質への影響が大きく、画像濃度の低下、地汚れ、連続出力時の画像の均質性等の重大な問題を引き起こすことが知られている。
【0006】
電子写真感光体の帯電性低下の要因としては、導電性支持体からの逆極性電荷(電子写真感光体の帯電極性と逆極性の電荷)の感光層への注入が挙げられる。
通常、導電性支持体からの逆極性電荷を感光層に注入させないために抵抗層が適用されている。この抵抗層は、導電性支持体から感光層への「逆極性電荷注入阻止機能」と、感光層で発生した電荷のうち、電子写真感光体の帯電極性電荷を導電性支持体へ輸送する「帯電極性電荷輸送機能」とを有することが好ましい。
例えば、導電性支持体から感光層への逆極性電荷注入阻止機能が不十分な場合、電子写真感光体を帯電させる際に、電子写真感光体の帯電極性と逆極性の電荷が導電性支持体から感光層に注入し、電子写真感光体表面の電荷を消去しやすくなるため、所望の帯電を得にくいといった現象が発生する。
また、感光層で発生した電荷のうち、電子写真感光体の帯電極性と同極性電荷の導電性支持体への輸送機能が不十分な場合、抵抗層近傍に電荷が蓄積され、結果として電荷発生効率の低下による露光部電位上昇や、中間層中の電荷トラップによる帯電不良が発生しやすい。
さらに、非常に長時間に亘って電子写真感光体を使用した場合、電子写真感光体が帯電しにくくなる現象が見られるようになるが、この現象については前述の抵抗層近傍における電荷蓄積が一因と推測することができる。
【0007】
前述の二つの機能の両立及び維持に関する種々の技術が開発されているが、これらの機能は相反則の関係を取りやすく、両機能の両立及び維持は非常に難しい。
例えば、現在広く用いられている抵抗層は、有機樹脂からなるバインダー中に無機微粒子を分散させた形態を取るものとなっている。このような構成を取る場合には、バインダーと無機微粒子の配合比率を変更することによる抵抗調整をすることが可能であり、また、両極性導電を示すため、一時的に前記二機能の両立は可能と考えられるが、静電ハザード付与による前記抵抗層の構成成分の劣化により、抵抗の変化や深い電荷トラップサイトなどが形成されるため、前記二機能を長期に亘って両立させることは非常に困難と考えられる。
【0008】
そこで、抵抗層に所望の極性電荷の伝導性を付与することを目的に、抵抗層に有機半導体材料を含有させる技術が提案されている(特許文献1)。具体的には電子写真感光体表面を負帯電させる画像形成プロセスにおいて、その電子写真感光体の抵抗層に電子輸送材料を配合する技術である。この技術は、電子写真感光体表面の逆極性電荷(この場合は正電荷)が導電性支持体から感光層に注入されにくくするとともに、電荷発生層で発生した負電荷を導電性支持体へ輸送することが可能となり、抵抗層の前記二機能を充足するものとして提案されている。
この提案の技術の電子写真感光体は、初期的には非常に良好な電子写真特性を示す。しかし、優れた電子移動特性を示す電子輸送材料が少ないこと、繰り返しの静電ハザードによって中間層を構成する有機材料が劣化しやすいこと、更に電子輸送材料が大気中の酸素の影響を受けることによって深いトラップ順位を形成しやすいことなどの理由から、繰り返しの静電ハザードによって電子写真特性の低下が生じやすく、また逆極性電荷注入阻止機能との両立のために抵抗層の厚みを厚くした場合にはその現象が顕在化しやすいことなどが新たな問題となっている。
【0009】
また、例えば、抵抗層の構成層として高絶縁層を適用することによって電荷注入阻止の機能向上を達成する技術が提案されている(特許文献2、及び3)。この技術を電子写真感光体に用いた場合、電子写真感光体の帯電性低下に由来して発現する地汚れなどの画像欠陥は極めて少なくなり、繰り返し使用によっても極めて良好な出力画像を維持することが報告されている。
しかし、これら提案の技術では、抵抗層の担うべきもう一つの機能である、電荷発生材料から導電性支持体への電荷輸送という機能は不十分であり、露光部電位上昇や中間層近傍における電荷蓄積による帯電不良、画像欠陥などが顕在化しやすいという問題がある。
【0010】
したがって、電子写真感光体を長期間使用した場合であっても露光部電位の上昇を引き起こすことなく、帯電性低下、地汚れ、及び帯電不良を抑制することが可能な電子写真感光体、並びに前記電子写真感光体の製造方法、前記電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジが求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、電子写真感光体を長期間使用した場合であっても露光部電位の上昇を引き起こすことなく、帯電性低下、地汚れ、及び帯電不良を抑制することが可能な電子写真感光体、並びに前記電子写真感光体の製造方法、前記電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有し、
前記整流層が少なくとも下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基を表す。前記残基Aは、1つ以上のヘテロ原子でn個の置換基Eに結合している。前記ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選ばれ、前記残基Aの一部を形成している。前記置換基Eは、それぞれ独立に、水素原子、及び下記の基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す(ただし、前記置換基Eの少なくとも一つは、−C(=O)−O−Rである。)。nは、1から10の整数のいずれかを表す。
<2> 一般式(I)のAが、下記一般式(II)で表される化合物の残基である前記<1>に記載の電子写真感光体である。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Bはアゾ化合物の主骨格を表す。Cpはカップラー成分残基を表す。mは、2及び3の整数のいずれかを表す。
<3> 一般式(II)のBが、下記一般式(III)〜一般式(VI)で表される基のいずれかである前記<2>に記載の電子写真感光体である。
【化3】

ただし、前記一般式(III)中、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化4】

ただし、前記一般式(IV)中、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化5】

ただし、前記一般式(V)中、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化6】

ただし、前記一般式(VI)中、R20、及びR21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
<4> 支持体と、該支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有し、
前記整流層が、前記整流層を形成した後に、前記整流層に含有される下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段の少なくともいずれかを用いて脱カルボエステル化して得られる下記一般式(XI)で表されるアゾ化合物を少なくとも含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【化7】

ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基を表す。前記残基Aは、1つ以上のヘテロ原子でn個の置換基Eに結合している。前記ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選ばれ、前記残基Aの一部を形成している。前記置換基Eは、それぞれ独立に、水素原子、及び下記の基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す(ただし、前記置換基Eの少なくとも一つは、−C(=O)−O−Rである。)。nは、1から10の整数のいずれかを表す。
【化8】

ただし、前記一般式(XI)中、A及びnは、それぞれ、前記一般式(I)におけるA及びnと同じである。Hは、水素原子である。
<5> 感光層が、電荷発生層と電荷輸送層とを積層した積層型感光層である前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<6> 支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に積層する電子写真感光体の製造方法であって、
前記整流層を形成した後に、前記整流層に含有される下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段の少なくともいずれかを用いて脱カルボエステル化して下記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変換する工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【化9】

ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基を表す。前記残基Aは、1つ以上のヘテロ原子でn個の置換基Eに結合している。前記ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選ばれ、前記残基Aの一部を形成している。前記置換基Eは、それぞれ独立に、水素原子、及び下記の基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す(ただし、前記置換基Eの少なくとも一つは、−C(=O)−O−Rである。)。nは、1から10の整数のいずれかを表す。
【化10】

ただし、前記一般式(XI)中、A及びnは、それぞれ、前記一般式(I)におけるA及びnと同じである。Hは、水素原子である。
<7> 電子写真感光体を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法である。
<8> 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
<9> 電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有するプロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、電子写真感光体を長期間使用した場合であっても露光部電位の上昇を引き起こすことなく、帯電性低下、地汚れ、及び帯電不良を抑制することが可能な電子写真感光体、並びに前記電子写真感光体の製造方法、前記電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の電子写真感光体の一例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の電子写真感光体の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の電子写真感光体の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の電子写真感光体の他の一例を示す概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】図6は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図7】図7は、チタニルフタロシアニン粉末のX線回折チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の層を有する。
【0016】
本発明の電子写真感光体においては、感光層で形成された電荷を電子写真感光体内部に残留させることなく支持体に輸送する機能を有すると共に、支持体から感光層への不要な電荷の注入を阻止する機能を有する整流層を支持体と感光層との間に適用し、加えて可干渉性の高いレーザー光を散乱する機能を有するモアレ防止層も併せて積層することによって、長期に亘って帯電性低下や光減衰機能の低下が生じにくく、モアレ由来の画像欠陥が生じない優れた電子写真感光体を得ることができる。
【0017】
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗値が1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着若しくはスパッタリングにより、フィルム状若しくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などが挙げられる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0018】
その他、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。
前記結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられる。
【0019】
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、支持体として良好に用いることができる。
【0020】
<整流層>
前記整流層は、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物、及び、後述する一般式(XI)で表されるアゾ化合物の少なくともいずれかを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記整流層としては、前記支持体から前記感光層への不要な電荷(電子写真感光体の帯電極性と逆極性の電荷)の注入を抑制する機能と、前記感光層で形成された電荷のうち、前記電子写真感光体の帯電極性と同極性の電荷を輸送する機能とを兼ね備えていることが好ましい。
【0021】
−一般式(I)で表されるアゾ化合物−
【化11】

ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基を表す。前記残基Aは、1つ以上のヘテロ原子でn個の置換基Eに結合している。前記ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選ばれ、前記残基Aの一部を形成している。前記置換基Eは、それぞれ独立に、水素原子、及び下記の基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す(ただし、前記置換基Eの少なくとも一つは、−C(=O)−O−Rである。)。nは、1から10の整数のいずれかを表す。
【0022】
前記一般式(I)のAとしては、下記一般式(II)で表される化合物の残基であることが、光電子発生効率の点から好ましい。
【化12】

ただし、前記一般式(II)中、Bはアゾ化合物の主骨格を表す。Cpはカップラー成分残基を表す。mは、2及び3の整数のいずれかを表す。
【0023】
前記一般式(II)で表されるアゾ化合物の残基のCpで表されるカップラー成分としては、例えば、フェノール類、ナフトール類などの水酸基を有する芳香族炭化水素化合物及び複素環式化合物、アミノ基を有する芳香族炭化水素化合物、アミノ基を有する複素環式化合物、アミノナフトール類などの水素基及びアミノ基を有する芳香族炭化水素化合物及び複素環式化合物、並びに脂肪族又は芳香族のエノール性ケトン基を有する化合物(活性メチレン基を有する化合物)などが挙げられる。
【0024】
前記一般式(II)で表される化合物の残基としては、カップラー成分残基(−Cp)が下記一般式(1)〜(14)で表される基であることが、光電子発生効率の点から好ましい。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0025】
前記一般式(1)〜(4)中、X、Y、Z、m、及びnは、それぞれ以下のものを表す。
X:−OH、−N(R)(R)、及び−NHSO−Rのいずれか。
(R、及びRは、水素原子、及び置換又は無置換のアルキル基のいずれかを表す。Rは、置換又は無置換のアルキル基、及び置換又は無置換のアリール基のいずれかを表す。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換又は無置換のスルファモイル基、及び−CON(R)(Y)のいずれか[ただし、Rは、水素原子、アルキル基、アルキル基の置換体、フェニル基、及びフェニル基の置換体のいずれかを表す。Yは、炭化水素環基、炭化水素環基の置換体、複素環基、複素環基の置換体、及び−N=C(R)(R)のいずれか(ただし、Rは、炭化水素環基、炭化水素環基の置換体、複素環基、複素環基の置換体、スチリル基、及びスチリル基の置換体のいずれかを表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルキル基の置換体、フェニル基、フェニル基の置換体を表す。または、R及びRは、それらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を表す。]。
Z:炭化水素環、炭化水素環の置換体、複素環、及び複素環の置換体のいずれか。
n:1及び2の整数のいずれか。
m:1及び2の整数のいずれか。
【化17】

ただし、前記一般式(5)中、Rは、置換又は無置換の炭化水素基を表す。Xは、前記と同じである。
【化18】

ただし、前記一般式(6)中、Aは、芳香族炭化水素の2価基、及び窒素原子を環内に含む複素環の2価基のいずれかを表す(これらの基は置換又は無置換でもよい。)。Xは、前記と同じである。
【化19】

ただし、前記一般式(7)中、Rは、アルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基、及びカルボキシ基のエステルのいずれかを表す。Arは、炭化水素環基、及び炭化水素環基の置換体のいずれかを表す。Xは、前記と同じである。
【化20】

【化21】

ただし、前記一般式(8)及び一般式(9)中、Rは、水素原子、及び置換又は無置換の炭化水素基のいずれかを表す。Arは、炭化水素環基、及び炭化水素環基の置換体のいずれかを表す。Xは、前記と同じである。
【0026】
前記一般式(2)、(3)及び(4)のZの炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。前記Zの複素環(置換基を持っていてもよい)としては、例えば、インドール環、カルバゾール環、ベンゾラン環、ジベンゾフラン環などが挙げられる。前記Zの環における置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
前記Y及びRにおける炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などが挙げられる。複素環基としては、ピリジル基、チエニル基、フリル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基などが挙げられる。更に、R及びRが結合して形成する環としては、例えば、フルオレン環などが挙げられる。また、Y及びRの炭化水素環基及び複素環基、並びにR及びRによって形成される環における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;トリフルオロメチル基等のハロメチル基;ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基又はそのエステル、水酸基、−SONa等のスルホン酸塩基などが挙げられる。
前記Rのフェニル基の置換体としては、例えば、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
【0027】
前記一般式(5)のR及びRにおける炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基などのアリール基又はこれらの置換体が挙げられる。また、前記R及びRの炭化水素基における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基、ニトロ基などが挙げられる。
【0028】
前記一般式(7)〜(9)のAr及びArにおける炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。またこれらの基における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;ニトロ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基などが挙げられる。また、Xとしては、特に水酸基が好ましい。
【0029】
前記カップラー成分残基の中でも、前記一般式(2)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)で表される基が好ましい。これらの中でも前記一般式におけるXが水酸基のものがより好ましい。また、これらの中でも特に下記般式(10)で表される基が好ましく、下記一般式(11)で表される基がより好ましい。
【化22】

ただし、前記一般式(10)中、Y、及びZは、前記と同じである。
【化23】

ただし、前記一般式(11)中、Z、Y、及びRは前記と同じである。
【0030】
さらに、前記好ましいカップラー成分残基の中でも、下記一般式(12)、(13)、(14)で表される基が特に好ましい。
【化24】

【化25】

ただし、前記一般式(12)及び一般式(13)中、Z、R、R、及びRは、前記と同じである。R10としては、前記Yの置換基が例示できる。
【化26】

ただし、前記一般式(14)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、及びハロゲン原子のいずれかを表す。nは、それぞれ、1〜4の整数のいずれかを表す。
【0031】
前記R11としては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子、弗素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。
【0032】
前記一般式(II)中のBとしては、下記一般式(III)〜一般式(VI)で表される基が良好な電子輸送性を示すため好ましい。
【化27】

ただし、前記一般式(III)中、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化28】

ただし、前記一般式(IV)中、R、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化29】

ただし、前記一般式(V)中、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化30】

ただし、前記一般式(VI)中、R20、及びR21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【0033】
また、前記一般式(II)中のBとしては、例えば、前記一般式(III)〜一般式(VI)で表される基のほかに、下記一般式(VII)〜一般式(X)で表される基が挙げられる。
これらは後述する電荷発生材料、電荷輸送材料の種類や電子写真感光体の層構成などを考慮して選択することができる。
【化31】

ただし、前記一般式(VII)中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化32】

ただし、前記一般式(VIII)中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化33】

ただし、前記一般式(IX)中、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。R13は、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化34】

ただし、前記一般式(X)中、R17、R18、R19は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【0034】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(III)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(III−1)〜一般式(III−14)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化35】


【化36】


【化37】


ただし、前記一般式(III−1)〜一般式(III−14)中、Eは、前記と同じである。
【0035】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(IV)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(IV−1)〜一般式(IV−5)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化38】


【化39】


ただし、前記一般式(IV−1)〜一般式(IV−5)中、Eは、前記と同じである。
【0036】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(V)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(V−1)〜一般式(V−5)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化40】


【化41】

ただし、前記一般式(V−1)〜一般式(V−5)中、Eは、前記と同じである。
【0037】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(VI)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(VI−1)〜一般式(VI−6)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化42】

ただし、前記一般式(VI−1)〜一般式(VI−6)中、Eは、前記と同じである。
【0038】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(VII)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(VII−1)〜一般式(VII−5)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化43】

【化44】

ただし、前記一般式(VII−1)〜一般式(VII−5)中、Eは、前記と同じである。
【0039】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(VIII)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(VIII−1)〜一般式(VIII−8)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化45】

【化46】

ただし、前記一般式(VIII−1)〜一般式(VIII−8)中、Eは、前記と同じである。
【0040】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(IX)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(IX−1)〜一般式(IX−7)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化47】

【化48】

ただし、前記一般式(IX−1)〜一般式(IX−7)中、Eは、前記と同じである。
【0041】
アゾ化合物の主骨格が前記一般式(X)で表される基であるアゾ化合物としては、例えば、下記一般式(X−1)〜一般式(X−4)で表されるアゾ化合物が挙げられる。
【化49】

ただし、前記一般式(X−1)〜一般式(X−4)中、Eは、前記と同じである。
【0042】
−−一般式(I)で表されるアゾ化合物の製造方法−−
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物は、例えば、特開2009−7523号公報、欧州特許第648770号、欧州特許第648817号、特表2001−513119などに記載されている方法によりに製造できる。
例えば、非プロトン性有機溶剤中、触媒として塩基の存在下、0℃〜150℃、好ましくは10℃〜100℃の温度で30分間から20時間、前記一般式(II)で表される化合物(B−(N=N−Cp)m)と、下記式で表されるピロ炭酸ジエステルとを、適切なモル比で反応させることにより合成できる。
【化50】

ただし、前記式中、Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。
【0043】
前記反応により、一般式(II)のカプラー成分残基(−Cp)におけるN又はOに、E(−C(=O)−OR)が結合する。
【0044】
反応させる際のモル比は、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物に導入させる前記置換基Eの数に応じて適宜選択することができるが、ピロ炭酸ジエステルをモル比で少し過剰に用いるのが適している。
【0045】
前記非プロトン性有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリン、キノリンなどが挙げられる。これらの中でも、ピリジン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0046】
前記触媒としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩;ナトリウムアミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミド類;水素化リチウム等の水素化アルカリ金属類などが挙げられる。また、有機脂肪族、芳香族又はヘテロ環式N−塩基類などが挙げられる。
好ましい触媒としては、有機N−塩基類が挙げられ、この中でも、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジンがより好ましい。
【0047】
下記式で表されるピロ炭酸ジエステルは、一般に知られている方法で製造できる。また商業的にも入手できる。
【化51】

Rは、前記と同じである。
Rとしては、溶解性の点から分岐のアルキル基が好ましい。
【0048】
前記一般式(I)表されるアゾ化合物(A(E)n)は、前記反応の終了後、通常の方法で単離可能である。前記一般式(I)表されるアゾ化合物は溶解性が優れているので、再結晶、カラムクロマトグラム等による精製が容易である。純度向上のために、反応終了後には精製することが好ましい。
【0049】
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物、及び後述する一般式(XI)で表されるアゾ化合物の前記整流層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記整流層100質量部に対して、5質量部〜100質量部が好ましく、20質量部〜100質量部がより好ましい。前記含有量が、5質量部未満であると、前記整流層の電子輸送機能が小さくなることがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲であると、長期の使用による静電疲労後においても残像が発生せず、極めて良好な画像が得られる。
【0050】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、例えば、バインダー樹脂が挙げられる。
【0051】
−−バインダー樹脂−−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述するモアレ防止層や感光層を整流層上に塗布する場合を考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂が好ましい。このようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記整流層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)で表されるアゾ化合物、及び必要に応じて前記バインダー樹脂を、適宜選択された有機溶媒に溶解・希釈して整流層用塗工液を作製し、適当な塗工方法を用いて塗布形成する方法が挙げられる。
【0053】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系有機溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系有機溶媒などが挙げられる。
これら有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記整流層を形成する際の塗工方法としては、特に制限はなく、塗工液の粘性、所望とする整流層の膜厚などに応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、リングコート法などが挙げられる。
前記整流層用塗工液を塗布し整流層を形成した後、外部から熱エネルギーを与える(所謂乾燥プロセス)ことにより、塗工液に用いた有機溶媒を整流層から取り除くとよい。
乾燥温度は、使用する有機溶媒、前記アゾ化合物、前記バインダー樹脂などを考慮した上で適宜選択することができる。
【0055】
また、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物は、後述するように熱エネルギーの付与により脱カルボエステル化することが可能であり、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物の電子輸送機能が脱カルボエステル化することによって良好に機能するのであれば、前記乾燥プロセスによって所望の熱エネルギーを付与することが好ましい。
【0056】
前記整流層の平均厚みとしては、特に制限はなく、所望とする電子写真感光体の電気特性や寿命に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜4μmが好ましく、0.3μm〜2μmがより好ましい。前記平均厚みが、0.1μm未満であると、電子写真感光体表面の帯電極性と逆極性の電荷が支持体から感光層中に流れ込むことによって、帯電性不良に起因する地汚れ状の画像欠陥が生じることがあり、4μmを超えると、残留電位の上昇などの光減衰機能が低下したり、繰り返し安定性が低下したりするなどの欠陥が生じることがある。前記平均厚みが、前記より好ましい範囲であると、長期の使用による静電疲労後においても残像や地汚れが発生せず、極めて良好な画像が得られる。
【0057】
−脱カルボエステル化−
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物は、適当な化学的手段、熱的手段、及び光分解手段の少なくともいずれかを用いて脱カルボエステル化することにより、下記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変換することができる。
【化52】

ただし、前記一般式(XI)中、A及びnは、それぞれ、前記一般式(I)におけるA及びnと同じである。Hは、水素原子である。
【0058】
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物は、主骨格(一般式中のA)の特性を強く示し、電荷輸送性を有するが、電気特性(LUMO準位やHOMO準位等)や結晶性の有無、有機溶媒への溶解性などが異なるため、整流層に付与したい機能に応じて、適宜脱カルボエステル化をするなどして、適用する形態を選択するとよい。
通常、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物は、有機溶媒に対して溶解性を有することから、脱カルボエステル化が必要な場合には、例えば、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有する整流層用塗工液を用いて、整流層を形成した後に、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段の少なくともいずれかの手段による脱カルボエステル化により、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変換することができる。
【0059】
−−化学的手段−−
前記化学的手段(化学的方法)としては、酸、塩基などの触媒を用いて前記一般式(I)で表されるアゾ化合物から前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物へ変換する方法が挙げられる。
前記触媒としては、酸が好ましい。前記酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、安息香酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0060】
前記触媒を、前記整流層用塗工液に添加する、又は前記整流層に塗布・乾燥することによって前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物へと変換することができる。
前記整流層用塗工液に前記触媒を予め添加する場合における前記触媒の添加量は、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物の構造等によって適宜選択することができるが、前記整流層100質量部に対して0.01質量部〜5質量部であることが好ましい。前記添加量が、0.01質量部未満であると、触媒としての機能が不足し、変換が不十分となる場合があり、5質量部を超えると、整流層の導電性に影響を及ぼし、地汚れなどの画像欠陥や残留電位などの異常画像発生を引き起こすことがある。
【0061】
−−熱的手段−−
前記熱的手段(熱的方法)としては、例えば、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有する前記整流層用塗工液を用いて、前記整流層を形成した後に、加熱によりにより、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を、前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変換する方法が挙げられる。
加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜300℃が好ましく、70℃〜250℃がより好ましい。
加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、大気圧雰囲気において30分間〜20時間であることが好ましい。
なお、前記加熱の際には、前記整流層には前記整流層用塗工液に含有される有機溶剤が残存していても、なんら問題はない。そのため、前記加熱は、前記整流層用塗工液を塗布した後の加熱と兼用することができる。
【0062】
−−光分解手段−−
前記光分解手段(光分解方法)は、光照射により、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変化するする方法である。
前記光としては、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物が吸収を有する光であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記光照射の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、タングステンランプ、LEDランプ、レーザー光源などが挙げられる。
前記光分解手段としては、例えば、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有する前記整流層用塗工液を用いて前記整流層を形成した後に、適宜選択された光源を用いて前記整流層に光照射することによって、前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物が含有された整流層を得ることが挙げられる。
【0063】
前記化学的手段、熱的手段、及び光分解手段は、単独で整流層形成プロセスに適用してもよいが、併用することによってさらに効率的に変換することが可能である。特に化学的手段と熱的手段を組み合わせることにより短時間で効率よく変換することができる。
【0064】
前述のとおり、前記整流層としては、前記支持体から前記感光層への不要な電荷(電子写真感光体の帯電極性と逆極性の電荷)の注入を抑制する機能と、前記感光層で形成された電荷のうち、前記電子写真感光体の帯電極性と同極性の電荷を輸送する機能とを兼ね備えていることが好ましい。
例えば、画像形成プロセスにおいて電子写真感光体を負帯電させる必要がある場合には、前記整流層としては、前記支持体から前記感光層への正孔注入阻止機能(ホールブロッキング性)と、前記感光層から前記支持体への電子輸送機能(エレクトロン輸送性)とを兼ね備える必要がある。なお、長寿命の電子写真感光体を獲得するためには、その特性が繰り返しの静電ハザードによっても変化しにくいことが重要である。
【0065】
前記電子写真感光体においては、電子輸送性を有する、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物及び前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物の少なくともいずれかを前記整流層が含有することによって、前記支持体から前記感光層への正孔注入性を阻止するとともに、前記整流層の電子輸送機能が高くなっている。そのため、前記電子写真感光体は、特に電子写真感光体を負極性に帯電させる電子写真プロセスに用いられる高静電安定性の電子写真感光体に好適に適用できる。
【0066】
電子写真感光体における整流層としては、前記記載の電気特性を有するほかに、電子写真感光体に代表されるような比較的大面積のデバイス内における電気特性の面内ばらつきを考慮した場合には、整流層が均質であることが好ましい。そのためには、電子輸送性を有する有機材料を単独で用いる均質層を形成するか、またはバインダー樹脂中に均一に分散することができる電子輸送性を有する有機材料を選定するとともに、電子写真感光体製造工程において、整流層の成分が他の層に溶出することの無い材料を選定することが重要である。
これら特性を満足する前記整流層を形成するためには、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物及び前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物の少なくともいずれかの整流層への適用が有効であることが本願発明者らによって確認され、高静電高安定性の電子写真感光体を獲得することができることが判明した。
【0067】
<モアレ防止層>
前記モアレ防止層は、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に、感光層内部での光干渉によるモアレ像の発生を防止する機能を有する層である。
前記電子写真感光体においては、前記整流層と前記感光層との間に前記モアレ防止層を積層することでモアレ像の発生防止を最大限に発揮することが可能となる。
前記モアレ防止層は、前記機能を発現するため、屈折率の大きな材料を含有することが好ましく、一般的には、バインダー樹脂と、無機材料とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0068】
−無機材料−
前記無機材料としては、前記バインダー樹脂中に書込光を十分散乱することが可能な大きさであって、前記バインダー樹脂と十分に屈折率の異なる無機材料が好ましい。
前記無機材料としては、電子写真感光体内の残留電荷低減の点から、金属酸化物などの電子輸送性を有する無機材料が好ましい。前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどが挙げられる。
【0069】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、形成した前記モアレ防止層の表面に感光層を溶媒を用いて塗工する場合を考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂が好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0070】
前記無機材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記モアレ防止層100質量部に対して、30質量部〜90質量部が好ましく、50質量部〜90質量部がより好ましい。前記好ましい範囲であれば、モアレ防止機能に優れ、前記より好ましい範囲であれば、モアレ防止機能に加えて、電子輸送機能が付与され長期使用による静電疲労後においてもハーフトーン濃度低下が見られない点で有利である。
【0071】
前記モアレ防止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記無機材料、有機溶媒、及び必要に応じて前記バインダー樹脂を含有するモアレ防止層用塗工液を塗工する方法が挙げられる。
【0072】
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系などが挙げられる。
これら有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記モアレ防止層用塗工液における前記無機材料の分散方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボールミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散などを用いた分散方法が挙げられる。
【0074】
前記モアレ防止層を形成する際の塗工方法としては、特に制限はなく、塗工液の粘性、所望とする整流層の膜厚などに応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、リングコート法などが挙げられる。
前記モアレ防止層用塗工液を塗布後、外部から熱エネルギーを与える(所謂乾燥プロセス)ことにより、塗工液に用いた有機溶媒をモアレ防止層から取り除くとよい。
乾燥温度は、使用する有機溶媒、前記無機材料、前記バインダー樹脂などを考慮した上で適宜選択することができる。
【0075】
前記モアレ防止層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜12μmが好ましく、2μm〜5μmがより好ましい。前記平均厚みが、0.5μm未満であると、モアレ防止機能が十分発現されず、用いる書込光の種類・波長によってはモアレ由来の画像欠陥が発生することがあり、12μmを越えると、モアレ防止層の抵抗由来の残留電位増加が生じる他、長期の使用による残留電位の上昇が生じることがある。前記平均厚みが、前記より好ましい範囲であると、モアレ由来の画像欠陥がなく、モアレ防止層の抵抗由来の残留電位増加が生じることもなく、また長期の使用による残留電位の上昇が生じることもなく、極めて良好な画像が得られる。
【0076】
<感光層>
前記感光層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電荷発生物質と電荷輸送物質を混在させた単層型感光層、電荷発生層と電荷輸送層とを積層した積層型感光層が挙げられる。
前記積層型感光層としては、例えば、前記支持体側から電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する積層型感光層、前記支持体側から電荷輸送層と電荷発生層とをこの順に有する積層型感光層が挙げられる。これらの中でも、前記支持体側から電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する積層型感光層が好ましい。
【0077】
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、電荷発生物質を少なくとも含有し、更に必要に応じて、樹脂などのその他の成分を含有する。
【0078】
−−電荷発生物質−−
前記電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系電荷発生物質、有機系電荷発生物質が挙げられる。
【0079】
前記無機系電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコンなどが挙げられる。前記アモルファスシリコンとしては、ダングリングボンドを水素原子又はハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子などをドープしたものが挙げられる。
【0080】
前記有機系電荷発生物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料等のアゾ系顔料;アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
−−樹脂−−
前記電荷発生層に必要に応じて用いられる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷発生物質100質量部に対し、500質量部以下が好ましく、10質量部〜300質量部がより好ましい。
【0082】
前記電荷発生層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空薄膜作製法、キャスティング法などが挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法などが挙げられる。
前記キャスティング法としては、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などが挙げられる。
前記キャスティング法においては、通常、塗工液が用いられる。
前記塗工液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電荷発生物質を必要に応じて前記樹脂と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル、超音波等の公知の分散方法を用いて溶剤中に分散した塗工液が挙げられる。なお、前記樹脂の添加は、前記電荷発生物質の分散前及び分散後のどちらでも構わない。前記塗工液は、電荷発生物質、溶媒及び樹脂を主成分とするが、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の添加剤が含まれていてもよい。場合によっては、電荷発生層に後述の電荷輸送物質を添加することも可能である。
【0083】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロインなどの一般に用いられる有機溶剤が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を使用することが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記電荷発生層は、前記塗工液を用いて前記支持体上又は下引き層等の上に塗工し、乾燥することにより形成される。塗工方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。塗工後にはオーブン等を用いて加熱乾燥してもよい。乾燥温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜160℃が好ましく、80℃〜140℃がより好ましい。
【0085】
前記電荷発生層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがより好ましい。電荷発生層の平均厚みを大きくすると残留電位の低減や高感度化に有利である。一方、帯電電荷の保持性や空間電荷の形成などの帯電性の低下を起こすことがある。前記好ましい範囲であると、これらのバランスがとれる点から有利であり、前記より好ましい範囲であると、前記効果が顕著となる。
【0086】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、レベリング剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷発生物質100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。レベリング剤の場合には、前記電荷発生物質100質量部に対して、0.001質量部〜0.1質量部が好ましい。前記含有量が、前記下限値未満であると、感度劣化を起こすことがある。
【0087】
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質を少なくとも含有し、更に必要に応じて、樹脂などのその他の成分を含有する。
【0088】
−−電荷輸送物質−−
前記電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送物質、正孔輸送物質などが挙げられる。
【0089】
前記電子輸送物質としては、例えば、非対称ジフェノキノン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタルイミド誘導体等の電子受容性物質、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開2001−330973号公報の一般式(1)〜一般式(6)に例示される芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
前記電子輸送物質のうち、重合体型の電子輸送物質は、架橋樹脂層を前記電荷輸送層上に積層した際に、電荷輸送層の成分の架橋樹脂層への滲みだしが少なく、架橋樹脂層の硬化不良を防止するのに適当な材料である。また、耐熱性にも優れるため、架橋樹脂層を成膜する際の硬化熱による劣化が少ない点で有利である。
【0091】
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
前記電荷輸送物質の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷輸送層100質量部に対して、20質量部〜80質量部が好ましく、30質量部〜70質量部がより好ましい。前記含有量が、20質量部未満であると、電荷輸送層の電荷輸送性が小さくなることにより所望の光減衰特性が得られないことがあり、80質量%を超えると、電子写真プロセスから電子写真感光体が受ける各種ハザードによって必要以上に磨耗することがある。前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、所望の光減衰性が得られるとともに、使用によっても磨耗量が少ない電子写真感光体を得ることができる点で有利である。
【0093】
−−樹脂−−
前記電荷輸送層に必要に応じて用いられる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル・共重合体)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、エポキシアクリレート等の光硬化樹脂等の樹脂がある。これらの中でも、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が、電荷移動特性が良好となる点で好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、分子量の異なった樹脂を混合して用いた場合には、硬度や耐摩耗性を改善できる点で好ましい。また、機械的、化学的及び電気的安定性、密着性などの他に電荷輸送物質との相溶性が重要である。
【0094】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、レベリング剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記電荷輸送物質100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。レベリング剤の場合には、前記電荷輸送物質100質量部に対して、0.001質量部〜0.1質量部が好ましい。前記含有量が、前記下限値未満であると、感度劣化を起こすことがある。
【0095】
前記電荷輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常の場合、電荷輸送物質及び添加剤を樹脂とともに溶媒に分散又は溶解した塗工液を、前記電荷発生層上に塗工し、乾燥させる方法などが好適である。
【0096】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール、ジメトキシエタン、ジオキサン、ジオキソラン、アニソール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が特に好ましい。
【0097】
前記電荷輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、解像度及び応答性の点から、5μm〜50μmが好ましく、15μm〜45μmがより好ましい。
【0098】
<その他の構成>
前記その他の構成としては、例えば、保護層、中間層などが挙げられる。
【0099】
−保護層−
前記電子写真感光体においては、前記感光層保護の目的で前記保護層を設けることができる。
前記保護層の材料としては、例えば、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。これらの中でも、フィラーの分散性、残留電位、塗膜欠陥の点から、ポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。
また、前記保護層には、耐摩耗性を向上する目的でフィラー材料を添加することができる。
【0100】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコートなどが挙げられる。これらの中でも、塗膜の均一性の点からスプレーコートが好ましい。
【0101】
−中間層−
前記電子写真感光体においては、前記感光層と前記保護層との間に中間層を設けることも可能である。中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
前記中間層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコートなどが挙げられる
前記中間層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜2μmが好ましい。
【0102】
本発明の電子写真感光体の構成例について、図を用いて説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体の一例の概略断面図である。図1の電子写真感光体は、感光層が単層型感光層の場合の例であり、この電子写真感光体では、支持体31上に整流層32、及びモアレ防止層33が順次設けられ、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層36がさらに積層されている。
図2及び図3は、本発明の電子写真感光体の他の一例の概略断面図である。図2及び図3の電子写真感光体は、感光層が積層型感光層の場合の例であり、この電子写真感光体では、支持体31上に、整流層32、及びモアレ防止層33が順次設けられ、前記モアレ防止層33上に電荷発生機能を担う電荷発生層34、及び電荷輸送機能を担う電荷輸送層35が積層されている。図示するとおり、電荷発生層と電荷輸送層の積層順番は、特に限定されることはなく、用途に応じて適宜選択される。
図4は、本発明の電子写真感光体の他の一例の概略断面図である。図4の電子写真感光体は、感光層表面に摩耗耐久性を有する保護層が積層されている場合の例であり、この電子写真感光体では、支持体31上に、整流層32、モアレ防止層33、電荷発生層34、電荷輸送層35、保護層37が順次積層されている。本発明の目的である電子写真感光体の長寿命化においては本態様をとることが好ましく、電子写真各種プロセスで電子写真感光体に付与される機械的ハザード、静電ハザードのいずれに対しても高い耐久性を有し、長寿命が見込める。なお、機械的ハザードの一例としては、画像形成プロセスの転写後に電子写真感光体上に残留するトナーを除去(所謂トナークリーニングプロセス)する手段の一つであるブレードクリーニング由来の機械的ハザードが挙げられる。
【0103】
(電子写真感光体の製造方法)
本発明の電子写真感光体の製造方法は、支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に積層する電子写真感光体の製造方法であって、前記整流層を形成した後に、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段の少なくともいずれかを用いて脱カルボエステル化して前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変換する工程(「変換工程」と称することがある。)を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0104】
前記電子写真感光体の前記整流層に前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物を含有させたい場合には、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物が有機溶媒に対して良好な溶解性を有することから、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有する整流層用塗工液を用いて整流層を形成した後に、所望のプロセス(化学的手段、熱的手段、及び光分解手段)による脱カルボエステル化により、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変換することが、容易に前記整流層に前記一般式(XI)で表されるアゾ化合物を含有させることができる点で好ましい。
【0105】
<変換工程>
前記変換工程の際の、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段は、本発明の前記電子写真感光体の説明において前述した、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段と同様の手段である。
【0106】
前記変換工程は、前記整流層を形成した後であれば、前記電子写真感光体の製造におけるどの時点で行ってもよい。例えば、前記整流層を形成した後であって前記モアレ防止層を形成する前に行ってもよく、前記整流層及び前記モアレ防止層を形成した後であって前記感光層を形成する前に行ってもよく、前記整流層、前記モアレ防止層、及び前記感光層を形成した後に行ってもよい。中でも、前記整流層を形成した後であって前記モアレ防止層を形成する前に行うことが、モアレ防止層、及び感光層への熱の影響が抑制でき、デバイス特性の長期安定性の点から好ましい。
なお、前記整流層用塗工液を塗布して前記整流層を形成する場合において、前記整流層を形成した後であって前記モアレ防止層を形成する前に、前記熱的手段により前記変換工程を行なうときには、前記整流層用塗工液を塗布し加熱を行う際の加熱を前記熱的手段と兼用することができる。
【0107】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。なお、帯電工程と、露光工程とを合わせて静電潜像形成工程と称することもある。
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
この場合、少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する画像形成要素が複数配列されたタンデム型であってもよい。
【0108】
本発明で用いられる画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記露光工程は前記露光手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0109】
<電子写真感光体>
前記電子写真感光体としては、本発明の前記電子写真感光体を用いることができる。
【0110】
<帯電工程及び帯電手段>
前記帯電工程は、電子写真感光体表面を帯電させる工程であり、帯電手段により行われる。
前記帯電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器(電子写真感光体表面と帯電器との間に100μm以下の空隙を有する近接方式の非接触帯電器を含む)、などが挙げられる。
【0111】
<露光工程及び露光手段>
前記露光(書き込み)は、例えば、前記露光手段を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
前記光源としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。
【0112】
<現像工程及び現像手段>
前記現像工程は、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する工程である。前記トナーは、電子写真感光体の帯電極性と同極性のトナーを用いられ、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像をトナーを用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記現像剤を収容し、前記静電潜像に該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適である。
【0113】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有するものなどが好適に挙げられる。
【0114】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0115】
<転写工程及び転写手段>
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、電子写真感光体表面から記録媒体に可視像を直接転写する方法と、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する方法がある。いずれの態様も良好に使用することができるが、高画質化に際して転写による悪影響が大きいような場合には、転写回数が少ない前者(直接転写)の方法が好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。なお、転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写手段の中から適宜選択することができ、例えば記録媒体の搬送も同時に行うことのできる転写搬送ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写帯電器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写帯電器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
また、転写帯電器は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが好ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより好ましい。このような転写手段は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
【0116】
<その他の工程及びその他の手段>
−定着工程及び定着手段−
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程である。
また、前記定着手段は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる手段である。
前記定着は、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0117】
−除電工程及び除電手段−
前記除電工程は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程である。
また、前記除電手段は、前記電子写真感光体に対し上電バイアスを印加して除電を行う手段である。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0118】
−クリーニング工程及びクリーニング手段−
前記クリーニング工程は、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する工程である。
また、前記クリーニング手段は、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する手段である。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0119】
−リサイクル工程及びリサイクル手段−
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程である
また、前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる手段である。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0120】
−制御工程及び制御手段−
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程である。
また、前記制御手段は、前記各手段を制御する手段である。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0121】
ここで、本発明の画像形成装置の一の態様について、図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図である。
図5において、電子写真感光体1は、ドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0122】
帯電器3には、ワイヤー方式の帯電器やローラ形状の帯電器が用いられる。高速帯電が必要とされる場合にはスコロトロン方式の帯電器が良好に使用され、コンパクト化や後述する感光体を複数使用するタンデム方式の画像形成装置においては、酸性ガス(NOx、SOx等)やオゾン発生量の少ないローラ形状の帯電器が有効に使用される。
【0123】
また、画像露光部5には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。
【0124】
現像手段である現像ユニット6は、少なくとも1つの現像スリーブを有する。現像ユニット6では、感光体の帯電極性と同極性のトナーが使用され、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。先の画像露光部に使用する光源によっても異なるが、近年使用するデジタル光源の場合には、一般的に画像面積率が低いことに対応して、書込部分にトナー現像を行う反転現像方式が光源の寿命等を考慮すると有利である。また、トナーのみで現像を行う1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
【0125】
また、転写チャージャ10は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが好ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより好ましい。特に、転写手段に電荷を供給する電源供給用部材(高圧電源)から出力された電流のうち、転写手段に関連する部分に流れ、電子写真感光体に流れ込まない電流を差し引くことにより、電子写真感光体への電流値を制御する方法が好ましい。
【0126】
また、電子写真感光体上の形成されたトナー像は、転写紙に転写されることで転写紙上の画像となるものであるが、この際、2つの方法がある。1つは、図5に示すような電子写真感光体表面に現像されたトナー像を転写紙に直接転写する方法と、もう1つは、一端感光体から中間転写体にトナー像が転写され、これを転写紙に転写する方法である。いずれの場合にも本発明において用いることができる。
このような転写手段は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
また、前述のように転写電流を制御することで、転写後の感光体表面電位(書き込み光の未露光部)を低下させておくことは、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量を低減することができ、本発明においては有効に使用される。
【0127】
除電ランプ2等の光源には、前記電子写真感光体に対し除電を行うことができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等が好適に挙げられる。特に、前記電子写真感光体の中間層に含有される金属酸化物が吸収しない波長を有する光源を使用することは、本発明の効果を一層顕著なものとし、有益に使用できる。
図5中、8はレジストローラ、10は転写チャージャ、11は分離チャージャ、12は分離爪である。
また、現像ユニット6により電子写真感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、電子写真感光体1上に残存するトナーが生じた場合、ファーブラシ14及びブレード15により、電子写真感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行われることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0128】
以上説明した画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、以下のプロセスカートリッジの形で画像形成装置本体内に着脱可能に組み込まれてもよい。
【0129】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
前記電子写真感光体として、本発明の前記電子写真感光体を用いる。
【0130】
前記現像手段としては、前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、現像剤担持体に担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
また、前記帯電手段、露光手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段としては、上述した画像形成装置と同様なものを適宜選択して用いることができる。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置、ファクシミリ、プリンターに着脱可能に備えさせることができ、本発明の前記画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが特に好ましい。
【0131】
ここで、前記プロセスカートリッジは、例えば、図6に示すように、電子写真感光体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図8中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
次に、図8に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、電子写真感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の電子写真感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0133】
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物は、例えば、特開2009−7523号公報に記載の方法で合成することができる。なお、実施例に用いた前記一般式(I)で表されるアゾ化合物のいくつかの合成例を以下に示した。
【0134】
(合成例1)
<化合物III−2の合成例>
化合物(III−2)の前駆体〔前記一般式(III−2)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕1.61g、及びピロ炭酸ジ−tert−ブチルエステル4.3g(前記前駆体の10倍モル)を、脱水ピリジン50mL、及び脱水N、N−ジメチルホルムアミド200mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約100mLを加え2.24g(収率:93%)の赤色の粉末(化合物III−2)を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表1に示す。なお、表1中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(III−2)(すべてのEがCであるとし、化学式をC686313Clとする。)であるとして算出したものである。
【0135】
【表1】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0136】
(合成例2)
<化合物III−3の合成例>
化合物(III−3)の前駆体〔前記一般式(III−3)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕0.83g、及びピロ炭酸ジ−tert−ブチルエステル2.6g(前記前駆体の12倍モル)を脱水ピリジン150mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し30分間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mLを加え1.18g(収率:95.3%)の赤色の粉末を得た。これをさらにカラムクロマトグラム(シリカゲル/クロロホルム)で精製を行ない、化合物III−3を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表2に示す。なお、表2中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(III−3)(すべてのEがCであるとし、化学式をC676013l2とする。)であるとして算出したものである。
【0137】
【表2】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0138】
(合成例3)
<化合物III−4の合成例>
化合物(III−4)の前駆体〔前記一般式(III−4)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕0.79g、及びピロ炭酸ジ−tert−ブチルエステル2.6g(前記前駆体の12倍モル)を脱水ピリジン150mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し30分間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mLを加え1.02g(収率:85.6%)の赤色の粉末(化合物III−4)を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表3に示す。なお、表3中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(III−4)(すべてのEがCであるとし、化学式をC696613とする。)であるとして算出したものである。
【0139】
【表3】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0140】
(合成例4)
<化合物IV−1の合成例>
化合物(IV−1)の前駆体〔前記一般式(IV−1)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕0.94g、及びピロ炭酸ジ−tert−ブチルエステル2.6g(前記前駆体の12倍モル)を脱水ピリジン150mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mLを加えて、1.11g(収率:83.2%)の赤色の粉末(化合物IV−1)を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表4に示す。なお、表4中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(IV−1)(すべてのEがCであるとし、化学式をC686014Brとする。)であるとして算出したものである。
【0141】
【表4】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0142】
(合成例5)
<化合物V−5の合成例>
化合物(V−5)の前駆体〔前記一般式(V−5)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕0.81g、及びピロ炭酸ジ−tert−アミルエステル2.7g(前記前駆体の12倍モル)を脱水ピリジン150mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mLを加えて、1.1g(収率:86.6%)の赤色の粉末(化合物V−5)を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表5に示す。なお、表5中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(V−5)(すべてのEがCであるとし、化学式をC757213とする。)であるとして算出したものである。
【0143】
【表5】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0144】
(合成例6)
<化合物VI−1の合成例>
化合物(VI−1)の前駆体〔前記一般式(VI−1)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕0.16g、及びピロ炭酸ジ−tert−ブチルエステル0.52g(前記前駆体の12倍モル)を脱水ピリジン30mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、赤橙色の沈澱が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mLを加えて、0.16g(収率:80%)の赤色の粉末(化合物VI−1)を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表6に示す。なお、表6中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(VI−1)(すべてのEがCであるとし、化学式をC645311とする。)であるとして算出したものである。
【0145】
【表6】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0146】
(合成例7)
<化合物VII−1の合成例>
化合物(VII−1)の前駆体〔前記一般式(VII−1)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕2.93g、及びピロ炭酸ジ−tert−ブチルエステル6.5g(前記前駆体の15倍モル)を脱水ピリジン250mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約40℃に加温し、40分間反応させた。徐々に赤紫色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、シクロヘキサン約100mLを加えて、2.91g(収率:71%)の赤色の粉末(化合物VII−1)を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表7に示す。なお、表7中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(VII−1)(すべてのEがCであるとし、化学式をC1231171318とする。)であるとして算出したものである。
【0147】
【表7】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0148】
(合成例8)
<化合物VIII−1の合成例>
化合物(VIII−1)の前駆体〔前記一般式(VIII−1)中の置換基Eの全てがH(水素原子)である化合物〕0.92g、及びピロ炭酸ジ−tert−ブチルエステル2.6g(前記前駆体の12倍モル)を脱水ピリジン150mLに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、40分間反応させた。徐々に橙赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mLを加えて、1.16g(収率:88.0%)の赤色の粉末(化合物VIII−1)を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を表8に示す。なお、表8中の各元素の計算値(%)は、生成物が化合物(VIII−1)(すべてのEがCであるとし、化学式をC696613とする。)であるとして算出したものである。
【0149】
【表8】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)よるに分析の結果、置換基に由来する吸収、即ち、2,980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、及び1,765cm−1にカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0150】
(合成例9)
<チタニルフタロシアニン顔料の合成例>
特開2001−19871号公報に準じて、チタニルフタロシアニン顔料を作製した。すなわち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mLを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下した。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8であった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。
上記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒のウェットケーキに対する質量比は33倍である。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、かつ26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。そのX線回折の結果を図7に示す。
【0151】
(X線回折スペクトル測定条件)
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
【0152】
(合成例10)
<ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成例>
1,3−ジイミノイソインドリン3質量部、3塩化ガリウム9.1質量部、及びキノリン230質量部を混合し、200℃において3時間攪拌・反応させた後、生成物を濾別、洗浄、乾燥することによって28質量部のクロロガリウムフタロシアニン結晶を得た。この結晶を濃硫酸によってアシッドペーストとし、蒸留水に滴下することにより、再結晶顔料を得た。その後、蒸留水及び希アンモニア水等で洗浄、乾燥を行うことによって得たヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶0.5質量部とジメチルホルムアミド15質量部とを混合し、直径2mmのジルコニアビーズ30質量部を用いて24時間のミリング処理を行った。ミリング処理後に結晶を分離し、メタノール洗浄、乾燥を行うことによって、ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶粉末を得た。
【0153】
(実施例1)
前記化合物(III−2)を用いて下記組成の整流層用塗工液1を作製し、直径30mmのアルミニウムシリンダーに前記整流層用塗工液1を塗布、170℃の雰囲気で30分間乾燥・加熱することにより、平均厚み0.6μmの整流層を作製後、下記組成のモアレ防止層用塗工液1を作製し、前記方法で作製した整流層上にモアレ防止層を塗布、130℃雰囲気で20分間乾燥することにより、平均厚み2.0μmのモアレ防止層を作製した。
〔整流層用塗工液1〕
・前記化合物(III−2) 2.5質量部
・メチルエチルケトン 100質量部
〔モアレ防止層用塗工液1〕
・アルキッド樹脂 12質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製、屈折率1.53)
・メラミン樹脂 8質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製、屈折率1.54)
・酸化チタン 80質量部
(CR−EL、石原産業社製、屈折率2.69、平均粒径300nm)
・メチルエチルケトン 250質量部
【0154】
次に、下記組成をビーズミル分散機(メディアとして直径0.2mmのジルコニア製ボールを使用)で70分間ボールミル分散を行い調製した電荷発生層用塗工液1を、前記モアレ防止層表面に塗布し、その後、95℃の雰囲気で20分間乾燥することにより、平均厚み0.21μmの電荷発生層を形成した。
〔電荷発生層用塗工液1〕
・合成例9で作製したチタニルフタロシア二ン顔料 12質量部
・ポリビニルブチラール 8質量部
(積水化学社製、エスレックBX−1)
・シクロヘキサノン 266質量部
なお、電荷発生層用塗工液1中でのチタニルフタロシアニンの平均粒子サイズを堀場製作所製CAPA−700で測定したところ0.29μmであった。
【0155】
次いで、下記組成の電荷輸送層用塗工液1を前記電荷発生層表面に塗布、乾燥することにより平均厚み23μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、支持体/整流層/モアレ防止層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液1〕
・ビスフェノールZポリカーボネート 10質量部
(パンライトTS−2050、帝人化成社製)
・下記構造式で表される正孔輸送物質 7質量部
・テトラヒドロフラン 100質量部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1質量部
(KF50−100CS、信越化学工業社製)
【化53】

【0156】
(実施例2)
実施例1において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を、化合物(III−3)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0157】
(実施例3)
実施例1において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を、化合物(III−4)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0158】
(実施例4)
実施例1において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を、化合物(IV−1)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0159】
(実施例5)
実施例1において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を、化合物(V−5)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
なお、化合物(V−5)は、前記一般式(V−5)で表されるアゾ化合物において、置換基Eの全てが、次式で表される基(−C(=O)−O−C(CH)であるアゾ化合物である。
【0160】
(実施例6)
実施例1において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を、化合物(VI−1)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0161】
(実施例7)
実施例1において、整流層用塗工液の塗布した後の乾燥・加熱温度及び時間を170℃で30分から130℃で20分間に代え、かつモアレ防止層用塗工液を下記組成のモアレ防止層用塗工液2に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔モアレ防止層用塗工液2〕
・アルコール可溶性ナイロン 3質量部
(アミランCM8000、東レ社製、屈折率1.57)
・酸化チタン 12質量部
(CR−EL、石原産業社製、屈折率2.69、平均粒径300nm)
・メタノール 70質量部
・n−ブタノール 30質量部
【0162】
(実施例8)
実施例2において、整流層用塗工液の塗布した後の乾燥・加熱温度及び時間を170℃で30分から130℃で20分間に代え、かつモアレ防止層用塗工液を前記モアレ防止層用塗工液2に代えた以外は、実施例2と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0163】
(実施例9)
実施例3において、整流層用塗工液の塗布した後の乾燥・加熱温度及び時間を170℃で30分から130℃で20分間に代え、かつモアレ防止層用塗工液を前記モアレ防止層用塗工液2に代えた以外は、実施例3と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0164】
(実施例10)
実施例1において、整流層用塗工液を下記組成の整流層用塗工液2に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔整流層用塗工液2〕
・アルキッド樹脂 9質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製)
・メラミン樹脂 6質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製)
・前記化合物(III−2) 5質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0165】
(実施例11)
実施例10において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(III−3)に代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0166】
(実施例12)
実施例10において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(III−4)に代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0167】
(実施例13)
実施例10において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(IV−1)に代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0168】
(実施例14)
実施例10において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(V−5)に代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0169】
(実施例15)
実施例10において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(VI−1)に代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0170】
(実施例16)
実施例10において、整流層用塗工液を塗布した後の乾燥・加熱温度及び時間を170℃で30分間から130℃で20分間に代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0171】
(実施例17)
実施例11において、整流層用塗工液を塗布した後の乾燥・加熱温度及び時間を170℃で30分間から130℃で20分間に代えた以外は、実施例11と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0172】
(実施例18)
実施例12において、整流層用塗工液を塗布した後の乾燥・加熱温度及び時間を170℃で30分間から130℃で20分間に代えた以外は、実施例12と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0173】
(実施例19)
実施例1において、整流層用塗工液を下記組成の整流層用塗工液3に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔整流層用塗工液3〕
・アルキッド樹脂 27質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製)
・メラミン樹脂 18質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製)
・前記化合物(III−2) 5質量部
・メチルエチルケトン 600質量部
【0174】
(実施例20)
実施例19において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(III−3)に代えた以外は、実施例19と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0175】
(実施例21)
実施例19において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(III−4)に代えた以外は、実施例19と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0176】
(実施例22)
実施例1において、整流層用塗工液を下記組成の整流層用塗工液4に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔整流層用塗工液4〕
・アルキッド樹脂 6質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製)
・メラミン樹脂 4質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製)
・前記化合物(III−2) 10質量部
・メチルエチルケトン 200質量部
【0177】
(実施例23)
実施例22において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(III−3)に代えた以外は、実施例22と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0178】
(実施例24)
実施例22において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を化合物(III−4)に代えた以外は、実施例22と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0179】
(実施例25)
実施例7において、整流層用塗工液を下記組成の整流層用塗工液5に代えた以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔整流層用塗工液5〕
・前記化合物(III−2) 2.5質量部
・トリフルオロ酢酸 5質量部
・メチルエチルケトン 150質量部
【0180】
(実施例26)
実施例7において、整流層用塗工液を下記組成の整流層用塗工液6に代えた以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔整流層用塗工液6〕
・アルキッド樹脂 9質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製)
・メラミン樹脂 6質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製)
・前記化合物(III−2) 5質量部
・トリフルオロ酢酸 5質量部
・メチルエチルケトン 300質量部
【0181】
(実施例27)
実施例1において、整流層の平均厚みを0.1μmに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0182】
(実施例28)
実施例10において、整流層の平均厚みを0.1μmに代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0183】
(実施例29)
実施例1において、整流層の平均厚みを2.0μmに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0184】
(実施例30)
実施例10において、整流層の平均厚みを2.0μmに代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0185】
(実施例31)
実施例1において、整流層の平均厚みを4.0μmに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0186】
(実施例32)
実施例10において、整流層の平均厚みを4.0μmに代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0187】
(実施例33)
実施例1において、モアレ防止層の平均厚みを0.5μmに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0188】
(実施例34)
実施例1において、モアレ防止層の平均厚みを4.0μmに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0189】
(実施例35)
実施例1において、モアレ防止層の平均厚みを12.0μmに代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0190】
(実施例36)
実施例1において、モアレ防止層用塗工液を下記組成のモアレ防止層用塗工液3に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔モアレ防止層用塗工液3〕
・アルキッド樹脂 48質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製、屈折率1.53)
・メラミン樹脂 32質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製、屈折率1.54)
・酸化チタン 20質量部
(CR−EL、石原産業社製、屈折率2.69、平均粒径300nm)
・メチルエチルケトン 250質量部
【0191】
(実施例37)
実施例1において、モアレ防止層用塗工液を下記組成のモアレ防止層用塗工液4に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔モアレ防止層用塗工液4〕
・アルキッド樹脂 36質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製、屈折率1.53)
・メラミン樹脂 24質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製、屈折率1.54)
・酸化チタン 40質量部
(CR−EL、石原産業社製、屈折率2.69、平均粒径300nm)
・メチルエチルケトン 250質量部
【0192】
(実施例38)
実施例1において、電荷発生層用塗工液を下記組成の電荷発生層用塗工液2に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔電荷発生層用塗工液2〕
・合成例10で作製したヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料 12質量部
・ポリビニルブチラール 8質量部
(積水化学社製、エスレックBX−1)
・シクロヘキサノン 266質量部
電荷発生層用塗工液中でのヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒子サイズを堀場製作所製CAPA−700で測定したところ0.41μmであった。
【0193】
(実施例39)
実施例1において、電荷輸送層用塗工液を下記組成の電荷輸送層用塗工液2に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液2〕
・ビスフェノールZポリカーボネート 10質量部
(パンライトTS−2050、帝人化成社製)
・下記構造式で表される正孔輸送物質 7質量部
・テトラヒドロフラン 100質量部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1質量部
(KF50−100CS、信越化学工業社製)
【化54】

【0194】
(実施例40)
実施例1において、電荷発生層用塗工液を下記組成の電荷発生層用塗工液3に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔電荷発生層用塗工液3〕
・下記構造式で表されるビスアゾ顔料 2.5質量部
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.5質量部
・シクロヘキサノン 200質量部
・メチルエチルケトン 80質量部
【化55】

【0195】
(実施例41〜50)
実施例1において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を下記表9に記載の化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0196】
【表9】

なお、これら化合物は、同じ符号の前記一般式で表されるアゾ化合物において、置換基Eの全てが、次式で表される基(−C(=O)−O−C(CH)であるアゾ化合物である。
【0197】
(実施例51〜60)
実施例10において、整流層用塗工液に用いた化合物(III−2)を下記表10に記載の化合物に代えた以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0198】
【表10】

なお、これら化合物は、同じ符号の前記一般式で表されるアゾ化合物において、置換基Eの全てが、次式で表される基(−C(=O)−O−C(CH)であるアゾ化合物である。
【0199】
(比較例1)
実施例1において、整流層及びモアレ防止層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、支持体/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0200】
(比較例2)
実施例1において、モアレ防止層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0201】
(比較例3)
実施例2において、モアレ防止層を形成しない以外は、実施例2と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0202】
(比較例4)
実施例3において、モアレ防止層を形成しない以外は、実施例3と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0203】
(比較例5)
実施例11において、モアレ防止層を形成しない以外は、実施例11と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0204】
(比較例6)
実施例12において、モアレ防止層を形成しない以外は、実施例12と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0205】
(比較例7)
実施例13において、モアレ防止層を形成しない以外は、実施例13と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0206】
(比較例8)
実施例1において、整流層用塗工液を下記組成の整流層用塗工液7に代え、かつモアレ防止層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
〔整流層用塗工液7〕
・アルキッド樹脂 6質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、DIC社製)
・メラミン樹脂 4質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、DIC社製)
・メチルエチルケトン 100質量部
【0207】
(比較例9)
実施例1において、整流層用塗工液を下記組成の整流層用塗工液8に代え、かつモアレ防止層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、支持体/整流層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
〔整流層用塗工液8〕
・アルコール可溶性ナイロン 3質量部
(アミランCM8000、東レ社製)
・メタノール 70質量部
・n−ブタノール 30質量部
【0208】
(比較例10)
実施例1において、整流層用塗工液を前記整流層用塗工液7に代えた以外は、実施例1と同様にして、支持体/整流層/モアレ防止層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0209】
(比較例11)
実施例1において、整流層用塗工液を前記整流層用塗工液8に代えた以外は、実施例1と同様にして、支持体/整流層/モアレ防止層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0210】
(比較例12)
実施例1において、整流層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、支持体/モアレ防止層/電荷発生層/電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0211】
<評価>
−静電疲労後の静電特性評価−
株式会社リコー製Imagio Neo 271の感光体ユニットから帯電ユニットを除く部材(クリーニングブレード等)を取り除いたユニットをランニング試験に用いた。実施例、比較例で作製した各電子写真感光体を取り付けた改造感光体ユニットをImagio Neo 271改造機にセットし、通紙を行わず帯電、現像のみを繰り返し実施できるようにした。帯電条件としては、帯電ローラーを用い、直流電圧に交流電圧を重畳させた交番電圧を印加し、交流電圧のピークツーピーク電圧Vppは約1.9[kV]、周波数fは約900[Hz]、直流電圧は−850[V]、電子写真感光体の回転速度は125mm/secに設定した。
現像条件としては、電荷発生材料としてフタロシアニン顔料を用いた実施例1〜39及び比較例1〜12については、780nmのレーザーダイオード(LD)を用い、電荷発生材料としてジスアゾ顔料を用いた実施例40については655nmのLDを用い、書き込みパターンを100%書き込みパターン(全ベタ)とした。
本条件で10万枚のランニング(5%テストパターン/帯電−露光電位差750V/電子写真感光体静電容量110pF/cm)と同等の静電疲労を電子写真感光体に負荷するためには、約2時間のランニングによって達成できることが通過電荷量計算から示される。本評価ではランニング10万枚相当の静電疲労試験を上述の改造機を用いて実施し、以下に示す評価機を用いて画像評価を実施した。
【0212】
−画像評価−
画像評価には、静電疲労試験時と同様に、電荷発生材料としてフタロシアニン顔料を用いた実施例1〜39及び比較例1〜12については、780nmのLDを組み付けた株式会社リコー社製IPSiO ColorCX9000改造機を用い、電荷発生材料としてジスアゾ顔料を用いた実施例40については、655nmのLDを組み付けたIPSiO ColorCX9000改造機を用いた。また、いずれの装置においても、画像出力時の初期空転プロセスをなくすように改造した。トナーとしてはImagioトナータイプ27を用い、用紙としてはNBSリコー社製MyPaper(A4サイズ)を用いた。スタート時の感光体表面電位は−800Vとし、前記静電疲労前後における機内電位(帯電後電位及び露光部電位)の評価を行った。出力画像としては、は全面白地出力を5枚連続で行い、地汚れの評価を行った。また、残像の評価は3cm×3cmの×形状パターンを有する画像を3枚連続で出力した後に、ハーフトーン出力を3枚連続で行い、残像発生有無を目視で確認した。
機内電位の測定結果及び、画像評価結果を表11−1から表11−5に示す。
【0213】
【表11−1】

ここで、表11−1から表11−5において、(※1)〜(※3)、及び「モアレ」はそれぞれ以下の意味である。
(※1) 静電疲労後に僅かに残像発生
(※2) 静電疲労後に僅かに地汚れ発生
(※3) 初期から僅かにモアレ発生
ここで、残像とは、繰り返し帯電/露光/現像を行った場合に1回前の作像プロセスで形成された画像が次の画像に重なって顕れる現象で、特に中間調画像で顕在化しやすい。地汚れとは、本来現像されない部分(白地)に粒状画像が現像される現象である。モアレとは、書込光と反射光との干渉によって濃淡の画像が顕れる現象で、特に中間調画像で顕在化しやすい。
【0214】
【表11−2】

【0215】
【表11−3】

【0216】
【表11−4】

【0217】
【表11−5】

【0218】
表11−1から表11−5の結果から、実施例の電子写真感光体はいずれも比較例の電子写真感光体と比較して静電安定性が高く、静電疲労前後においても画像欠陥の発生が極めて少ないことが示された。
【0219】
前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を単独で用いて作製した電子写真感光体(実施例1〜9)は初期から明部電位(露光部電位)が比較的低く、静電疲労後においても暗部電位、明部電位共に変化が小さく、高い静電安定性を示すことが示された。特に170℃30分の加熱により前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を脱カルボエステル化した実施例1〜6の電子写真感光体は、初期から明部電位が低く、良好な特性を示した。これは酸触媒により前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を脱カルボエステル化(トリフルオロ酢酸使用)した実施例25〜26においても同様な結果となっており、脱カルボエステル化をすることによる効果であると考えられる。加熱条件が130℃20分であって、十分には脱カルボエステル化が行われていない電子写真感光体(例えば、実施例7〜9)では、若干明部電位が上昇した。この理由は明確に判明していないが、整流層の成分が他の層に移行することによるものと推測できる。
なお、脱カルボエステル化がされたかどうかは、赤外線吸収スペクトルにおいて、アゾ化合物の2,980cm−1の飽和炭化水素による吸収、1760cm−1のカルボネートのC=Oの伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0220】
バインダー樹脂と前記一般式(I)で表されるアゾ化合物とを併用して作製した電子写真感光体(実施例10〜18)については、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物単独で用いて作製した電子写真感光体(実施例1〜6)と比較して、僅かに明部電位が高くなるもの、静電疲労による変動は小さく、実施例1〜9と同様に高い静電安定性を示した。また、バインダー樹脂中に含有させる前記一般式(I)で表されるアゾ化合物の配合量を低減した電子写真感光体(実施例19〜21;アゾ化合物の含有量は整流層100質量部に対して10質量部)については初期から残留電位が高くなるものの、その安定性は実施例10〜18と同等であった。また、配合量を増加させた電子写真感光体(実施例22〜24;アゾ化合物の含有量は整流層100質量部に対して50質量部)については、明部電位、暗部電位の静電疲労による変動量は実施例10〜18と同等以下であり、同じく高い静電安定性を示す電子写真感光体であることが示された。
【0221】
整流層の厚みを変化させた整流層を有する電子写真感光体(実施例27〜32)の結果を実施例27〜32に示した。整流層の平均厚みが0.1μmの電子写真感光体(実施例27〜28)を用いた場合には、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を単独又はバインダー樹脂と併用した場合のいずれであっても静電疲労後に僅かに地汚れが発生するが、電気特性やその他の画像欠陥は一切見られなかった。整流層の平均厚みが2.0μmの場合(実施例29〜30)には、画像欠陥の発生は生じなかったが、初期から明部電位が若干高い数値を示した。さらに整流層の平均厚みが4.0μmの場合(実施例31〜32)には初期明部電位上昇以外に静電疲労後に僅かに残像が発生したが、明部電位、暗部電位共に静電疲労による変動は小さく、優れた静電安定性を有することが示された。
【0222】
モアレ防止層の平均厚みを変化させて作製した電子写真感光体の結果を実施例33〜35に示した。モアレ防止層が0.5μmの場合(実施例33)には、若干のモアレ発生はあるものの、高い静電安定性を示した。モアレ防止層が5.0μmの電子写真感光体(実施例34)を用いた場合には、静電疲労後であっても画像欠陥が発生しないすぐれた電子写真感光体であることが示された。モアレ防止層が12.0μmの場合(実施例35)も5.0μmの場合と同様に画像欠陥の発生のない優れた電子写真感光体であることが示された。但し、モアレ防止層が厚くなるに従って初期の明部電位が上昇しており、モアレ防止に十分な膜厚におさえることが明部電位が小さく、また静電疲労によってもその変動が小さい優れた電子写真感光体となることが示唆されている。
【0223】
モアレ防止層が含有する金属酸化物の量を低減した電子写真感光体を用いた場合の評価結果を実施例36〜37に示した。結果、金属酸化物の含有比率を非常に小さく(モアレ防止層100質量部に対して20質量部)した場合にはモアレ防止効果が発現しにくくなると共に、明部電位が初期から大きくなることが示されている。しかしながら金属酸化物の含有比率をモアレ防止層100質量部に対して40質量部とした場合にはモアレ防止効果が適正に発現しており、初期明部電位が若干高いものの、高い静電安定性を示す電子写真感光体が得られていることが示されている。これらの結果から、モアレ防止層に含有させる金属酸化物の量としては適正量以上の含有が必要であることが示唆されている。
【0224】
電荷発生層に用いる電荷発生材料として、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はジスアゾ化合物を適用した電子写真感光体(実施例38、40)を用いた場合にも高い静電安定性を示しており、電荷発生材料の種類にかかわらず本願発明の整流層の効果による高い静電安定性が発現した結果と考えることができる。
【0225】
一方で、比較例1には整流層及びモアレ防止層を有しない電子写真感光体を、比較例2〜9にはモアレ防止層を有しない電子写真感光体の評価結果を示したが、いずれの電子写真感光体を用いた場合であっても、初期からモアレ由来の画像欠陥が発生しており、使用に耐え得るものではないことが判明した。
ただし、比較例2〜7の電子写真感光体は、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有する整流層を有しているため、高い静電安定性を示していることが明部電位、暗部電位の測定結果から示されており、整流層の効果を確認することができる。前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を用いないで整流層を形成した電子写真感光体を用いた場合(比較例8〜9)では、静電疲労による明部電位の上昇、フォトメモリの発生、及び画像濃度変調が発生している。
さらに、比較例10〜12では、前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を用いないで整流層を形成した電子写真感光体、又は整流層を設けない電子写真感光体の評価結果を示している。前記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有しない整流層を用いた場合(比較例10〜11)には、比較例8〜9の結果と同じく、静電疲労によって明部電位の変動が大きいと共に、フォトメモリの発生も確認されており、静電安定性を有しない電子写真感光体であることがわかる。
整流層を有しない電子写真感光体(比較例12)では、初期から地汚れが発生するだけではなく、静電疲労による暗部電位の低下及び明部電位の上昇が大きくなっており、静電安定性を有しない電子写真感光体であることが示された。
【0226】
以上の結果から、本願発明に電子写真感光体は、長期間の使用によっても露光部電位の上昇を引き起こすことなく、帯電性低下、地汚れ、及び帯電不良を抑制することが可能な電子写真感光体であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0227】
本発明の電子写真感光体は、長期間の使用によっても露光部電位の上昇を引き起こすことなく、帯電性低下、地汚れ、及び帯電不良を抑制することが可能なであることから、易メンテナンス性が求められる電子写真方式の画像形成に好適に使用される。
【符号の説明】
【0228】
1 電子写真感光体
2 除電ランプ
3 帯電器
5 画像露光部
6 現像ユニット
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 支持体
32 整流層
33 モアレ防止層
34 電荷発生層
35 電荷輸送層
36 感光層
37 保護層
101 電子写真感光体
102 帯電手段
103 露光
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0229】
【特許文献1】特開2006−259141号公報
【特許文献2】特開平3−45962号公報
【特許文献3】特開平7−281463号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有し、
前記整流層が少なくとも下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基を表す。前記残基Aは、1つ以上のヘテロ原子でn個の置換基Eに結合している。前記ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選ばれ、前記残基Aの一部を形成している。前記置換基Eは、それぞれ独立に、水素原子、及び下記の基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す(ただし、前記置換基Eの少なくとも一つは、−C(=O)−O−Rである。)。nは、1から10の整数のいずれかを表す。
【請求項2】
一般式(I)のAが、下記一般式(II)で表される化合物の残基である請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Bはアゾ化合物の主骨格を表す。Cpはカップラー成分残基を表す。mは、2及び3の整数のいずれかを表す。
【請求項3】
一般式(II)のBが、下記一般式(III)〜一般式(VI)で表される基のいずれかである請求項2に記載の電子写真感光体。
【化3】

ただし、前記一般式(III)中、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化4】

ただし、前記一般式(IV)中、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化5】

ただし、前記一般式(V)中、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【化6】

ただし、前記一般式(VI)中、R20、及びR21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルのいずれかを表す。
【請求項4】
支持体と、該支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に有し、
前記整流層が、前記整流層を形成した後に、前記整流層に含有される下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段の少なくともいずれかを用いて脱カルボエステル化して得られる下記一般式(XI)で表されるアゾ化合物を少なくとも含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化7】

ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基を表す。前記残基Aは、1つ以上のヘテロ原子でn個の置換基Eに結合している。前記ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選ばれ、前記残基Aの一部を形成している。前記置換基Eは、それぞれ独立に、水素原子、及び下記の基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す(ただし、前記置換基Eの少なくとも一つは、−C(=O)−O−Rである。)。nは、1から10の整数のいずれかを表す。
【化8】

ただし、前記一般式(XI)中、A及びnは、それぞれ、前記一般式(I)におけるA及びnと同じである。Hは、水素原子である。
【請求項5】
感光層が、電荷発生層と電荷輸送層とを積層した積層型感光層である請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
支持体上に、少なくとも整流層、モアレ防止層、及び感光層をこの順に積層する電子写真感光体の製造方法であって、
前記整流層を形成した後に、前記整流層に含有される下記一般式(I)で表されるアゾ化合物を、化学的手段、熱的手段、及び光分解手段の少なくともいずれかを用いて脱カルボエステル化して下記一般式(XI)で表されるアゾ化合物に変換する工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【化9】

ただし、前記一般式(I)中、Aは、アゾ化合物の残基を表す。前記残基Aは、1つ以上のヘテロ原子でn個の置換基Eに結合している。前記ヘテロ原子は、N及びOからなる群から選ばれ、前記残基Aの一部を形成している。前記置換基Eは、それぞれ独立に、水素原子、及び下記の基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換又は非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアラルキル基のいずれかを表す。)のいずれかを表す(ただし、前記置換基Eの少なくとも一つは、−C(=O)−O−Rである。)。nは、1から10の整数のいずれかを表す。
【化10】

ただし、前記一般式(XI)中、A及びnは、それぞれ、前記一般式(I)におけるA及びnと同じである。Hは、水素原子である。
【請求項7】
電子写真感光体を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が、請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも1つの手段とを有するプロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体が、請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。


【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−108308(P2012−108308A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256949(P2010−256949)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】