説明

電子写真感光体の層剥離方法、再生用電子写真感光体、再生導電性基体、再生電子写真感光体

【課題】本願発明の目的は、製造時の不良品もしくは使用済みの電子写真感光体から、基体を損傷させずに感光層(電荷発生層や電荷輸送層)のみを簡単に膨潤・剥離でき、作業工程が容易で且つ安価な電子写真感光体の感光層の層剥離方法を提供することであり、その結果得られる再生用電子写真感光体、再生導電性基体、再生電子写真感光体を提供することである。
【解決手段】導電性基体上に少なくとも中間層、電荷発生層、バインダー樹脂を含有する電荷輸送層を順次積層した層構成を有する電子写真感光体の層剥離方法において、該電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤するが、溶解しない剥離液に電子写真感光体を浸漬し、該剥離液に圧縮気体を供給して、電荷輸送層を膨潤剥離することを特徴とする電子写真感光体の層剥離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の層剥離方法及び該剥離方法を用いて得られる再生用電子写真感光体、再生導電性基体、再生電子写真感光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置に用いられる電子写真感光体についても、資源の再活用の観点から、電子写真感光体の製造時の不良品もしくは使用済みの電子写真感光体から、電子写真感光体用の導電性基体の再生方法やこれら再生された導電性基体を用いて、電子写真感光体を再生する方法が検討されている。
【0003】
電子写真感光体用の基体再生に関する公知技術として、基体上に少なくとも下引き層及び感光層等の積層物を有する感光体から、前記積層物を剥離液で一度に膨潤・剥離させるか又は上層の前記感光層を溶解除去させた後、下引き層を前記剥離液で膨潤・剥離させるかして、基体表面を露出させた後、洗浄液を含浸する部材で摺擦処理する感光体用基体の再生方法が、特許文献1に記載されている。
【0004】
また、導電性基体上に有機系機能材料膜を形成して製造される有機系電子写真用感光体の製造、検査工程で発生する機能材料成膜の不良品、仕損品、または使用済の寿命品から導電性基体を再生する方法において、前記不良品、仕損品または寿命品を、水分含有率x質量%および浴温y℃が次式、y>3x+25で表される関係を満たすN−メチルピロリドン浴中に浸漬し、超音波かける或いはバブリングすることにより、導電性基体から有機系機能材料膜を剥離、溶解除去することが、特許文献2に記載されている。
【0005】
又、特許文献3には、無機フィラーを含む層を有する電子写真感光体の感光層の剥離を、有機溶媒に電子写真感光体を浸漬し、同時に超音波をかけながら、剥離する方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、これら従来の電子写真感光体の感光層の剥離方法では、感光層の均一な剥離ができない、或いは感光層の剥離時に導電性基体を傷つけて、そのまま、電子写真感光体の再生用の導電性基体として、利用できないと云った問題が残っている。
【0007】
即ち、電子写真感光体のバインダー樹脂を溶解する剥離液を用いると、剥離液に溶け込んだ樹脂が導電性基体上に再付着する問題がある。また、剥離液は繰り返しの使用に耐えられず、再生コストを低くおさえることは困難である。
【0008】
一方、超音波では、キャビテーション(空洞現象)が発生し易くなり、超音波による基体表面への衝撃力が増加して導電性基体の表面を侵蝕するおそれがある。また、洗浄力を強くすると洗浄液中に浸漬した導電性基体の軸方向に沿って一定間隔毎に超音波よるリング状の節が発生し易くなり、その部分では洗浄液の振動がほとんどないため他の部分との間で洗浄力に差が生じてしまい、結果的に導電性基体の表面に洗浄ムラが出てしまう問題がある。
【0009】
又、ブラシによる摺擦洗浄では、ブラシの刷毛の隙間に入り込んだ感光層成分が原因となってブラシ状の部材と基体表面との間で滑りが生じ、感光層の剥離効率が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−221704号公報
【特許文献2】特開2000−275867号公報
【特許文献3】特開2003−98694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本願発明の目的は、製造時の不良品もしくは使用済みの電子写真感光体から、基体を損傷させずに感光層(電荷発生層や電荷輸送層)のみを簡単に膨潤・剥離でき、作業工程が容易で且つ安価な電子写真感光体の感光層の層剥離方法を提供することであり、その結果得られる再生用電子写真感光体、再生導電性基体、再生電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者等は、上記課題について、詳細に検討した結果、バインダー樹脂を主成分とする電荷輸送層を有する電子写真感光体を、電荷輸送層のバインダーを膨潤するが溶解しない剥離液中で、膨潤させ、その膨潤した電荷輸送層を気泡バブルで剥がすことにより、電荷輸送層のみを均一に剥がすことができることを見出し、本願発明を達成した。即ち、本願発明は以下のような構成を有することにより達成される。
【0013】
1.導電性基体上に少なくとも中間層、電荷発生層、バインダー樹脂を含有する電荷輸送層を順次積層した層構成を有する電子写真感光体の層剥離方法において、該電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤するが、溶解しない剥離液に該電子写真感光体を浸漬し、該剥離液に圧縮気体を供給して、該電荷輸送層を膨潤剥離することを特徴とする電子写真感光体の層剥離方法。
【0014】
2.前記電荷輸送層のバインダー樹脂が少なくともポリカーボネート樹脂を含有していることを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体の層剥離方法。
【0015】
3.前記導電性基体が円筒状のアルミニウム基体であることを特徴とする前記1又は2に記載の電子写真感光体の層剥離方法。
【0016】
4.前記電荷輸送層を膨潤剥離した後、電子写真感光体に残存する電荷発生層及び中間層等の全層をブラシ摺擦により剥離し、再生導電性基体を得ることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の層剥離方法。
【0017】
5.前記1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の層剥離方法により得られる導電性基体上に中間層及び電荷発生層が残存したことを特徴とする再生用電子写真感光体。
【0018】
6.前記5に記載の再生用電子写真感光体の中間層及び電荷発生層の上に、電荷輸送層を積層して得られることを特徴とする再生電子写真感光体。
【0019】
7.前記4に記載の電子写真感光体の層剥離方法により得られることを特徴とする再生導電性基体。
【0020】
8.前記7に記載の再生導電性基体上に少なくとも中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層して得られたことを特徴とする再生電子写真感光体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電子写真感光体の層剥離方法を用いることにより、剥離ムラや基体の損傷のない均一な電荷発生層が残存した再生用電子写真感光体や、全層を剥離した再生導電性基体を得ることができ、これら再生導電性基体を用いた再生電子写真感光体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電子写真感光体の層剥離方法を実施するための第一の層剥離装置の断面図である。
【図2】すすぎ槽の断面図である。
【図3】第二の層剥離装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本願発明の電子写真感光体の層剥離方法は、導電性基体上に少なくとも中間層、電荷発生層、バインダー樹脂を含有する電荷輸送層を順次積層した層構成を有する電子写真感光体の層剥離方法であり、該電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤するが、溶解しない剥離液に電子写真感光体を浸漬し、該剥離液に圧縮気体を供給して、電荷輸送層を膨潤剥離することを特徴とする。
【0025】
本願発明の上記電子写真感光体の層剥離方法を用いることにより、剥離ムラや基体の損傷のない均一な電荷発生層が残存した再生用電子写真感光体や、全層が剥離した再生導電性基体を得ることができ、これら再生用電子写真感光体や再生導電性基体を用いた再生電子写真感光体を得ることができる。
【0026】
先ず、本願発明の電子写真感光体の感光層剥離方法に用いる電子写真感光体について、記載する。
【0027】
本願発明に係わる導電性基体とは、電子写真感光体の導電性支持体である。これら導電性基体は、シート状、円筒状等の形状のものが一般的に用いられているが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状の導電性基体の方が好ましい。
【0028】
円筒状の導電性基体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の導電性基体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の基体が好ましい。
【0029】
導電性基体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができるが、本発明に係わる導電性基体としては、アルミニウム基体が最も好ましい。該アルミニウム基体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものもが好ましく用いられる。
【0030】
本願発明に係わる中間層とは、導電性基体と感光層(電荷発生層や電荷輸送層)の間に設けられた層であり、導電性基体と感光層の接着性や電荷ブロキング性を改良する為の層である。2層以上の層構成を有してもよい。
【0031】
本願発明に係わる再生用電子写真感光体とは、導電性基体上に少なくとも1層以上の電荷発生層を有するが、尚、実用的な電子写真特性(帯電電位や感度等の特性)が不十分な電子写真感光体を云い、例えば、電荷輸送層が積層されていない電子写真感光体を云う。
【0032】
本願発明に係わる再生導電性基体とは、製造時の不良品もしくは使用済みの電子写真感光体から、再生された導電性基体を意味する。
【0033】
本願発明に係わる再生電子写真感光体とは、前記再生導電性基体或いは再生用電子写真感光体を用いて再生された電子写真感光体を意味する。
【0034】
本願発明の電子写真感光体は導電性基体上にバインダー樹脂を含有する電荷輸送層を有する。即ち、少なくとも、電荷輸送層が、バインダー樹脂を含有している。
【0035】
バインダー樹脂とは、電荷発生層や電荷輸送層の膜構造を形成する樹脂であり、電荷発生層では、ブチラール樹脂やポリカーボネート樹脂、電荷輸送層では、ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂がこのバインダー樹脂として用いられている(但し、電荷発生層にはバインダー樹脂を用いなくてもよい)。
【0036】
又、電子写真感光体には、上記電荷発生層や電荷輸送層の他に、中間層(下引層)や保護層を必要により有している。中間層には、ポリアミド樹脂がよく使用され、保護層には、電子写真感光体の摩耗傷への耐性を高めるため、耐摩耗特性に優れた、3次元架橋の硬化性樹脂やフィラー入りの樹脂が保護層に用いられている。
【0037】
本願発明の層剥離方法に係わる、電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤はするが、溶解しない剥離液について以下に説明する。
【0038】
(電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤はするが、溶解しない剥離液)
本発明において、電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤はするが、溶解しない剥離液の例としては、電荷輸送層のバインダーがポリカーボネートの場合は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、キシレン、四塩化炭素等が挙げられる。
【0039】
本発明の剥離液は、ポリカーボネート樹脂を溶解する特定の有機溶剤に、ポリカーボネート樹脂を溶解しない有機溶剤あるいは水を添加することによって、溶解性を弱めたものでもよい。この場合、得られる溶液が均一系となり、ポリカーボネート樹脂を溶解しないで膨潤はするものであることが必要である。
【0040】
ポリカーボネート樹脂を溶解する有機溶剤と、溶解しない溶剤あるいは水の含有量は、前者が全組成物に対して20質量%以上95質量%未満、後者が5質量%以上80質量%未満であることが好ましい。最適な含有量は溶剤ごとに異なるが、ポリカーボネート樹脂を溶解する有機溶剤の含有量が20質量%未満の場合には、液自体の溶解力が不足し、感光層の十分な剥離が困難である。また95質量%を越えると、溶解力が強くなりすぎ、ポリカーボネート樹脂を含む感光層が剥離液中へ溶け出し、液汚れが起こる。
【0041】
ポリカーボネート樹脂を溶解する特定の有機溶剤としては、環状エーテル系溶剤、環状エステル系溶剤、アミド系溶剤、酢酸グリコールエーテル系溶剤、アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤が挙げられる。
【0042】
環状エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
環状エステル系溶剤では、γ−ブチロラクトンが好ましい。環状エステル系溶剤としてはこれに限定されるわけではない。
【0044】
アミド系溶剤としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N,N′,N′−テトラメチル尿素、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
酢酸グリコールエーテル系溶剤としては、例えば酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸3−メトキシブチルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0046】
アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤としてはエチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0047】
グリコールモノエーテル系溶剤として例えばヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2エチルヘキシルグリコール、2エチルヘキシルジグリコール、フェニルグリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、フェニルプロピレングリコールが挙げられるがこれらに限定されない。
【0048】
ポリカーボネート樹脂を溶解しない有機溶剤としては、均一系の剥離液を得るためにポリカーボネート樹脂を溶解させ得る有機溶剤と相溶性であることが好ましく、アルコール類、直鎖状炭化水素系溶剤、アミノアルコール等が例示される。アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、等が挙げられ、さらに多価アルコールとして、プロピレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ヘキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。直鎖状炭化水素系有機溶剤として、デカン、ドデカン等が挙げられるが、これらに限定されない。アミノアルコールとしては例えば、2−アミノエタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミンなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0049】
本発明の剥離液において、ポリカーボネート樹脂を溶解する有機溶剤と、溶解しない溶剤あるいは水の含有量は、前者が全組成物に対して20質量%以上95質量%未満、後者が5質量%以上80質量%未満であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂を溶解する有機溶剤の含有量が20質量%未満の場合には、液自体の溶解力が不足し、感光層の十分な剥離が困難である。また95質量%を越えると、溶解力が強くなりすぎ、ポリカーボネート樹脂を含む感光層が剥離液中へ溶け出し、液汚れが起こる。
【0050】
本願発明に係わる電子写真感光体は、前記したように、導電性基体上に、少なくとも中間層、電荷発生層、バインダー樹脂を含有する電荷輸送層等の構成を有するが、この電子写真感光体の層構成を説明する為に、以下、具体例を挙げて説明する。
【0051】
以下に、本発明の実施例及び比較例での剥離評価に使用する電子写真体の製造例を説明する。
【0052】
(導電性基体)
外径60.5mmのアルミニウム製円筒体を旋盤に取り付け、切削加工を行い、厚さ0.75mm、十点平均表面粗さRz=0.4μmの導電性基体を得た。このアルミニウム製基体を界面活性剤を含有させた洗浄槽に浸漬し、超音波を照射して洗浄を行ったのち、純水で充分にすすぎ洗浄を行い、導電性基体を得た。
【0053】
〈中間層〉
下記組成の中間層塗布液を作製した。
ポリアミド樹脂X1010(ダイセルデグサ株式会社製) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 1.1部
エタノール 20部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0054】
上記塗布液を用いて前記導電性基体上に、110℃で20分乾燥後の膜厚2μmとなるよう浸漬塗布、乾燥した。
【0055】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で、少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)
20部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10部
酢酸t−ブチル 700部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0056】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質:CTM(下記化合物A) 150部
バインダー:ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
トルエン/テトラヒドロフラン=1/9体積% 2000部
シリコーンオイル(KF−50:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法を用いて、110℃で60分乾燥後膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体Aを得た。
【0057】
【化1】

【0058】
次に、本願発明の電子写真感光体の層剥離方法を実施するための第一の層剥離装置の断面図を図1に示す。図1において、1は第一の層剥離槽、2は電子写真感光体、3は電子写真感光体の内部に取り付けられた上下動或いは回転運動の為のシャフト、4は圧縮気体の発生装置及びクリーン装置、5圧縮気体の吹き出しノズル、6はノズルから発生した気泡を示す。
【0059】
図1に示すように、気体aは圧縮気体発生装置4を通過して、圧縮気体にされ、ノズル6から気泡6を発生する。大小の気泡6が電子写真感光体2に接触し、電子写真感光体の既に剥離液で膨潤している電荷輸送層を剥離する。この時、電子写真感光体に回転運動を与えてもよい。電荷輸送層の剥離は電子写真感光体全面に亘り、均一に進行し、導電性基体上に中間層と電荷発生層の均一な膜が残存した再生用電子写真感光体が得られる。
【0060】
圧縮気体の気泡の吐出圧力は0.04〜0.5MPaとし、また圧縮エアーの流量は40〜200NL/minとした条件にて気泡を吐出し層剥離を行うことにより、良好な再生用電子写真感光体が得られる。圧縮気体としては、空気、窒素ガス等が用いられるが、コスト的にも、空気が好ましい。
【0061】
剥離槽1内よりオーバーフローした剥離液は、それぞれ配管7、7’からフィルター8、8’を経てポンプ9、9’により循環される。該フィルターによって、剥離した膜状の感光層等の浮遊物および不純物が捕捉されるため、液は長期にわたって清浄な状態に保たれる。
【0062】
このようにして電荷輸送層を剥離した感光体は図2のすすぎ槽11に移される。すすぎ槽11では、側壁部に設置されたノズル12より剥離層1内と同一の剥離液をシャワーしてすすぐ。すすぎ後の液は排出ドレン13により排出される。
【0063】
図3は第二の層剥離装置の断面図である。図3において、15は第二の層剥離槽、2は電子写真感光体、3は電子写真感光体の内部に取り付けられた上下動或いは回転運動の為のシャフト、16はブラシ、17はブラシのシャフト、18はブラシシャフトの回転手段を示す。
【0064】
第二の剥離槽に用いる溶媒も基本的に第一の剥離槽に用いる溶媒と同じ溶媒を用いることができるが、基本的には中間層のバインダーを溶解する溶媒が好ましい。例えば、中間層のバインダーがポリアミドの場合は、エタノールやプロパノール等のアルコール系溶媒が好ましい。
【0065】
図3に示すように、ブラシ16を電子写真感光体2に接触させ、電子写真感光体2及びブラシ16を回転させて導電性基体上に残存する中間層と電荷発生層を剥離除去する。
【0066】
ブラシの素材としては各種の樹脂或いは金属等が挙げられるが、好ましくはナイロン、レーヨン、ポリエステル或いはカーボン繊維等であり、より好ましくはナイロン繊維である。繊維太さは2.5〜30デニールが好ましく、繊維の長さは5〜50mmが好ましく、繊維密度は100〜20000本/cmが好ましい。
【0067】
第二の剥離装置で電荷発生層、中間層を剥離した導電性基体も又、図2と同様のすすぎ槽に移され、第二の剥離槽で用いた溶媒と同じ溶媒で導電性基体をすすぎ、再生導電性基体を得ることが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により更に詳しく説明する。
【0069】
前記で例示した電子写真感光体Aを用いて、本願発明の感光層剥離試験を行った。
【0070】
電子写真感光体Aを図1に記載の第1の層剥離装置に取り付け、第1の層剥離装置の溶媒や圧縮気体(空気の圧縮気体)の条件(条件1〜8)を表1に記載のように設定して、感光体を浸漬、回転させて、層剥離試験を行った。その結果、電荷輸送層を剥離した。その後各条件で剥離された感光体を図2で示したすすぎ槽11に移した。すすぎ槽11では、側壁部に設置されたノズル12より剥離層1内と同一の剥離液をシャワーしてすすぎ、再生用電子写真感光体:感光体1a〜感光体8aを得た。
【0071】
これら感光体1a〜感光体8aの電荷輸送層の剥離状態を目視で評価し、評価結果を表1に示した。
【0072】
表1から明らかなように、電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤するが、溶解しない剥離液に圧縮気体を供給し、電子写真感光体を浸漬することにより、電荷輸送層を膨潤剥離した、条件1〜6で得られた感光体1a〜6aは、電荷輸送層の剥離状態が良好であり、均一な表面の電荷発生層と中間層が残った再生用電子写真感光体を得ている。一方、剥離液がバインダー樹脂を溶解する条件7では、溶解した電荷輸送層のバインダーが表面に再付着した感光体7aが得られ、圧縮気体の代わりに、超音波をかけた条件8では、電荷発生層も一部剥離した感光体8aが得られた。
【0073】
これら感光体1a〜感光体8aの各感光体に前記した電荷輸送層を塗布、乾燥し、再生電子写真感光体、感光体1b〜感光体8bを得た。
【0074】
感光体1b〜感光体8bの評価結果を表1に示す。
【0075】
尚、感光体1b〜感光体8bの評価はこれらの各感光体を市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)に搭載し、ハーフトーン画像を含む画だしを行って評価した。
【0076】
感光体1b〜感光体6bは均一でむらのないハーフトーン画像が得られているのに対し、感光体7b及び感光体8bでは、ハーフトーンに濃度むらが発生している。
【0077】
【表1】

【0078】
次に、前記の剥離条件で得られた感光体1a〜感光体6aを、図3の第2の層剥離装置に取り付け、ブラシによる層剥離を行った。
【0079】
第二の剥離槽に用いた溶媒:エタノール
ブラシ:ブラシはパイル長さ30mm、太さ8デニール、密度200本/cmのナイロン製のブラシ
図3に示すように、感光体1a〜感光体6aの各感光体2をブラシ16に接触させ、感光体2及びブラシ16を回転させて導電性基体上に残存する中間層と電荷発生層を剥離除去した。
【0080】
続いて、図2と同様のすすぎ槽11に移した。すすぎ槽11では、側壁部に設置されたノズル12よりエタノールをシャワーしてすすぎ、再生導電性基体1c〜6cを得た。
【0081】
その結果、表面に剥離傷や異物付着等は全く発生していない、良好な再生導電性基体1c〜6cを得た。
【0082】
該再生導電性基体1c〜6cに前記した、中間層、電荷発生層及び電荷輸送層を塗布し、再生電子写真感光体、感光体1d〜感光体6dを得た。
【0083】
これら感光体1d〜感光体6dを前記した市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)でハーフトーン画像を含む画出しを行い、評価を行った。その結果、これら感光体1d〜感光体6dは全て、鮮鋭性が良好で、なめらかな電子写真画像を作製できた。
【符号の説明】
【0084】
1 第一の層剥離槽
2 電子写真感光体
3 電子写真感光体の内部に取り付けられた上下動或いは回転運動の為のシャフト
4 圧縮気体の発生装置及びクリーン装置
5 圧縮気体の吹き出しノズル
6 ノズルから発生した気泡
11 すすぎ槽
15 第二の層剥離槽
16 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に少なくとも中間層、電荷発生層、バインダー樹脂を含有する電荷輸送層を順次積層した層構成を有する電子写真感光体の層剥離方法において、該電荷輸送層のバインダー樹脂を膨潤するが、溶解しない剥離液に該電子写真感光体を浸漬し、該剥離液に圧縮気体を供給して、該電荷輸送層を膨潤剥離することを特徴とする電子写真感光体の層剥離方法。
【請求項2】
前記電荷輸送層のバインダー樹脂が少なくともポリカーボネート樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の層剥離方法。
【請求項3】
前記導電性基体が円筒状のアルミニウム基体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体の層剥離方法。
【請求項4】
前記電荷輸送層を膨潤剥離した後、電子写真感光体に残存する電荷発生層及び中間層等の全層をブラシ摺擦により剥離し、再生導電性基体を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の層剥離方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の層剥離方法により得られる導電性基体上に中間層及び電荷発生層が残存したことを特徴とする再生用電子写真感光体。
【請求項6】
請求項5に記載の再生用電子写真感光体の中間層及び電荷発生層の上に、電荷輸送層を積層して得られることを特徴とする再生電子写真感光体。
【請求項7】
請求項4に記載の電子写真感光体の層剥離方法により得られることを特徴とする再生導電性基体。
【請求項8】
請求項7に記載の再生導電性基体上に少なくとも中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層して得られたことを特徴とする再生電子写真感光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−160394(P2010−160394A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3330(P2009−3330)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】