説明

電子写真感光体の製造方法

【課題】 低湿環境下における数万枚におよぶ繰り返し使用時の明部電位と帯電電位の変動が抑制された電子写真感光体を製造する方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に中間層および感光層をこの順に形成して電子写真感光体を製造する方法において、
下記条件を満たすシリカ被覆酸化チタン粒子と、樹脂と、溶剤とを用いて中間層用塗布液を調製し、該中間層用塗布液を用いて該中間層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法:
(条件)シリカ被覆酸化チタン粒子の2.5質量%の水分散液の電気伝導度が、50μS/cm以上200μS/cm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(電子写真装置)に利用される電子写真感光体は、主として、帯電および露光により静電潜像を形成するための感光層と、その感光層を支持するための支持体(支持部材)からなる。
【0003】
また、支持体の直上に感光層を形成した場合、支持体の表面の汚れ、支持体の形状の不均一性などによって、感光層のムラや欠陥が生じやすくなる。その結果、形成される画像には、濃度ムラや、感光層の部分的リークによるポチなどの画像欠陥が発生したり、支持体から感光層が剥離したりすることがある。そのため、支持体との密着性確保、感光層の部分的リークの抑制などを目的として、支持体と感光層の間に中間層を設けることが一般的に行われている。この中間層は、アルコール可溶性のポリアミドなどの吸湿性を示す樹脂を用いて形成されることが多い。
【0004】
ところが、このような吸湿性を示す樹脂を用いて形成された中間層の電気伝導は、イオン性伝導による電気伝導が主であるため、低湿環境下においては、中間層の体積抵抗率が増大しやすい。そのため、支持体と中間層の界面や、中間層と感光層の界面に電荷が蓄積されやすいという課題を有することが多い。それゆえ、低湿環境下において連続的に画像を出力する際に、明部電位や残留電位が上昇し、画像濃度低下などの不具合が発生する場合がある。
【0005】
特に近年は、電子写真装置の高画質化および高速化が進む中で、電子写真感光体の品質に対する要求もさらに厳しくなっており、使用環境の変動や繰り返し使用時においても電位変動が小さい電子写真感光体が強く望まれてきている。
【0006】
従来、上記の不具合を抑制するために、中間層に酸化チタンなどの金属酸化物を含有させる方法が提案されている。特許文献1には、酸化チタンに含まれるイオン性不純物を低減させる目的で、pHが5以上6以下で、かつ、純度が99%以上の酸化チタンを含有させた電子写真感光体が記載されている。また、特許文献2には、表面がラウリン酸処理された酸化チタンを中間層に含有させた電子写真感光体が記載されている。また、特許文献3には、ケイ素原子を特定割合で含有する金属酸化物を中間層に含有させた電子写真感光体が記載されている。これらの従来技術は、酸化チタンなどの金属酸化物に含有されるプロトンや水酸基などのイオン性物質を低減し、低湿環境下における明部電位の上昇を抑制しつつ、ポチ画像欠陥を抑制することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3773099号公報
【特許文献2】特許第3688925号公報
【特許文献3】特開2005−10591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年は、数万枚におよぶ繰り返し使用時の画像の安定化が求められており、電位の十分なコントラストを長期的に維持するために、明部電位の変動だけでなく、帯電電位(暗部電位)の変動も抑制する必要が生じている。従来の電子写真感光体では、数万枚におよぶ繰り返し使用時の明部電位の変動に関してはある程度抑制されるものの、帯電電位の変動に関しては十分な改善がなされていないのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、低湿環境下における数万枚におよぶ繰り返し使用時の明部電位と帯電電位の変動が抑制された電子写真感光体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、無機シリカで被覆した酸化チタン粒子(以下「シリカ被覆酸化チタン粒子」ともいう。)を電子写真感光体の中間層に含有させる場合、中間層の形成に用いるシリカ被覆酸化チタン粒子の電気伝導度が特定の範囲内にあるときに、明部電位および帯電電位の変動が顕著に抑制された電子写真感光体が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、支持体上に中間層および感光層をこの順に形成して電子写真感光体を製造する方法において、
下記条件を満たすシリカ被覆酸化チタン粒子と、樹脂と、溶剤とを用いて中間層用塗布液を調製し、該中間層用塗布液を用いて該中間層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法である:
(条件)シリカ被覆酸化チタン粒子の2.5質量%の水分散液における電気伝導度が、50μS/cm以上200μS/cm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低湿環境下における数万枚におよぶ繰り返し使用時の明部電位と帯電電位の変動が抑制された電子写真感光体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】感光層の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の形態をさらに詳細に述べる。
【0015】
本発明の電子写真感光体の製造方法は、特定のシリカ被覆酸化チタン粒子と、樹脂と、溶剤(分散媒)とを用いて中間層用塗布液を調製し、該中間層用塗布液を用いて中間層を形成することを特徴としている。
【0016】
特定のシリカ被覆酸化チタン粒子とは、電気伝導度が特定範囲にあるシリカ被覆酸化チタン粒子である。
【0017】
本発明において、シリカ被覆酸化チタン粒子の電気伝導度とは、シリカ被覆酸化チタン粒子2.5質量部に純水97.5質量部を加えて攪拌し、該シリカ被覆酸化チタン粒子を該純水に分散させた状態(水分散液の状態)で測定される電気伝導度を意味する。以下、このようにして測定される電気伝導度を単に「電気伝導度」ともいう。本発明において、純水とは、電気伝導度が1μS/cm以下の水を意味する。測定の詳細は、後述の実施例の<電気伝導度測定条件>に記載のとおりである。
【0018】
本発明において、シリカ被覆酸化チタン粒子の電気伝導度は、50μS/cm以上200μS/cm以下の範囲にある必要があるが、好ましくは、50μS/cm以上100μS/cm以下の範囲である。
【0019】
シリカ被覆酸化チタン粒子は、伝導帯を利用したバンド型伝導だけでなく、シリカ被覆酸化チタン粒子に含有されるイオン成分を利用したイオン性伝導も生じる。シリカ被覆酸化チタン粒子の上記測定方法による電気伝導度は、バンド型伝導およびイオン性伝導のうち、イオン性伝導による電気伝導度の程度をみる指標である。本発明者らは、鋭意検討した結果、低湿環境下における数万枚におよぶ繰り返し使用時の明部電位と帯電電位の変動は、シリカ被覆酸化チタン粒子が有するバンド型伝導およびイオン性伝導の中でも、イオン性伝導による電気伝導度の程度に大きく影響されることがわかった。これは、中間層の電気伝導が、通常、イオン性伝導によるものが主であるからであると考えられる。
【0020】
シリカ被覆酸化チタン粒子の電気伝導度が50よりも小さいと、シリカ被覆酸化チタン粒子を含有させた中間層の体積抵抗率が低湿環境下において増大するため、低湿環境下において電子写真感光体を繰り返し使用したときに明部電位が上昇しやすくなる。一方、200μS/cmを超えると、シリカ被覆酸化チタン粒子中のイオン成分が多いということであるため、中間層の体積抵抗率が下がり、支持体からの電荷注入を阻止する能力が低下し、帯電性が低下し、帯電電位(暗部電位)が低下しやすくなる。
【0021】
特に、シリカ被覆酸化チタン粒子の場合、表面積が大きいため、感光層(電荷発生層)中の電荷発生物質との電荷の授受が容易になる反面、被覆しているシリカの表面にイオン成分が残留していることが多い。そのため、シリカ被覆酸化チタン粒子の電気伝導度を50μS/cm以上200μS/cm以下とするためには、中間層用塗布液の調製に供する前に、シリカ被覆酸化チタン粒子に適度な洗浄処理を施す必要がある。洗浄処理を施して上記の電気伝導度のシリカ被覆酸化チタン粒子にしておくことで、シリカ被覆酸化チタン粒子中のイオン成分が適量になる。また、シリカ被覆酸化チタン粒子と電荷発生物質との電荷の授受も向上するため、結果として、帯電電位や明部電位の変動を効果的に抑制することができるようになる。
【0022】
また、本発明に用いられるシリカ被覆酸化チタン粒子の酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型などのいずれでもよいが、電子写真感光体が負帯電用電子写真感光体である場合は、中間層における電荷輸送性の点でN型半導体としての整流特性に優れるアナターゼ型であることが好ましい。
【0023】
本発明において、シリカ被覆酸化チタン粒子としては、酸化チタン粒子にシリカ処理を施してシリカを被覆したものでもよいし、シリカ・アルミナ混合処理を施してシリカおよびアルミナを被覆したものでもよい。特に好ましくは、アルミナでは被覆されていないシリカ被覆酸化チタン粒子である。
【0024】
シリカ被覆酸化チタン粒子は、例えば、酸化チタン粒子をケイ酸ナトリウム水溶液に攪拌分散させ、濾過して水溶液(分散媒)を除去した後、100℃以上300℃以下で加熱するというシリカ処理(無機シリカ処理)によって得られる。アルコキシシランなどの有機ケイ素化合物で酸化チタン粒子を被覆処理した後、500℃以上で加熱するというシリカ処理(有機シリカ処理)によってもシリカ被覆酸化チタン粒子を得ることができる。ただし、この有機シリカ処理では、アルコキシシラン由来の分解生成物が中間層の体積抵抗率を増大させる場合があるため、上述の無機シリカ処理の方が好ましい。シリカ処理が優れている理由としては、他の表面処理と比較して、粒子表面に微細な凹凸が生じやすく、結果として酸化チタン粒子(シリカ被覆酸化チタン粒子)の表面積が増大するからであると、本発明者らは推測している。酸化チタン粒子(シリカ被覆酸化チタン粒子)の表面積が増大すれば、電荷発生物質との電荷の授受が容易になり、電荷の蓄積を防ぎ、帯電電位と明部電位の変動を効果的に抑制される。
【0025】
次に、本発明の電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0026】
本発明において、電子写真感光体は、支持体上に中間層および感光層をこの順に形成して製造される。感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層(図1(a))であってもよいし、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型感光層(図1(b))であってもよい。電子写真特性の観点からは、積層型感光層が好ましい。なお、図1(a)および(b)中、101は支持体、102は中間層、103は感光層、104は電荷発生層、105は電荷輸送層を示す。
【0027】
以下、積層型感光層を含有する電子写真感光体について詳細に述べる。
【0028】
支持体は、導電性を有するもの(導電性支持体)であればよい。例えば、アルミニウム、ステンレスおよびニッケルなどの金属、または、表面に導電性皮膜を設けた金属、プラスチックおよび紙などが挙げられ、形状としては円筒状およびフィルム状などが挙げられる。特に円筒状のアルミニウム製の支持体が、機械強度、電子写真特性およびコストの点で優れている。これらの支持体は、素管のまま用いてもよいが、切削およびホーニングなどの物理処理、陽極酸化処理または酸などを用いた化学処理を施したものを用いてよい。切削またはホーニングなどの物理処理を行い、表面粗さをRz値で0.1μm以上3.0μm以下に処理することで、干渉縞防止機能を持たせることもできる。
【0029】
支持体と中間層との間には、導電層(図1中不図示)を設けることもできる。導電層は、支持体自体に干渉縞防止機能を持たせた場合は必ずしも必要ではないが、支持体を素管のまま用い、この上に導電層を形成することで、干渉縞防止機能を付与することもできる。導電層は、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、硫酸バリウムなどの無機粒子をレゾール系フェノール樹脂などの硬化性樹脂とともに適当な溶剤に分散させて導電層用塗布液を調製し、これを支持体上に塗布した後、加熱して乾燥させることによって形成することができる。
【0030】
導電層の膜厚は、干渉縞防止能、支持体上の欠陥の被覆といった観点から、1μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明においては、支持体上または導電層上には、支持体もしくは導電層との密着性確保、感光層の電気的破壊の保護、感光層のキャリア注入性改良などのために中間層が設けられる。
【0032】
中間層は、下記条件を満たすシリカ被覆酸化チタン粒子と、樹脂と、溶剤とを用いて中間層用塗布液(分散液)を調製し、これを支持体または導電層上に塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
(条件)シリカ被覆酸化チタン粒子の2.5質量%の水分散液の電気伝導度が、50μS/cm以上200μS/cm以下である。
【0033】
中間層に用いられる樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール、ポリビニルホルマール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース、メラミン樹脂、アミロース、アミロペクチン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、シリコーン樹脂などの有機樹脂が挙げられる。これらの中でも、中間層上に電荷発生層を浸漬塗布して形成する際に、電荷発生層用塗布液の溶剤に溶解しにくい樹脂であることが好ましく、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミドが好ましい。特には、ポリアミドが好ましく、中間層用塗布液の溶剤としてアルコールを用いる場合は、アルコール可溶性のポリアミドが好ましい。また、上述の樹脂の1種または2種以上のものを混合して用いることもできる。
【0034】
中間層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。特には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶剤が好ましい。その他に、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなども好適に用いられる。これらは、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0035】
シリカ被覆酸化チタン粒子と樹脂とを溶剤中に分散させる分散方法としては、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、ミキサー、撹拌機、ロールミル、乳化分散機などの分散装置を用いて分散する方法が挙げられる。
【0036】
中間層用塗布液を調製する際に用いられるシリカ被覆酸化チタン粒子の質量(P)と樹脂の質量(B)との質量比(P/B)は、中間層用塗布液の液安定性と中間層用塗布液を用いて形成された中間層を有する電子写真感光体を繰り返し使用したときの電位変動の抑制効果を考慮して決定することが好ましい。具体的には、質量比(P/B)は、1/10以上10/1以下であることが好ましく、1/5以上5/1以下であることがより好ましい。
【0037】
中間層用塗布液の固形分は、中間層用塗布液の安定性や塗工性を考慮して決定することが好ましい。具体的には、中間層用塗布液中の固形分は、中間層用塗布液全質量に対して1.0質量%以上30.0%質量以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
中間層の膜厚は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0039】
感光層が積層型感光層の場合、電荷発生層は、中間層上に電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることで形成することができる。
【0040】
電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾおよびテトラキスアゾなどのアゾ顔料や、ガリウムフタロシアニンおよびチタニルフタロシアニンなどのフタロシアニン顔料や、ペリレン顔料などが挙げられる。これらの中でも、環境変動時の特性安定性の観点から、ガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。さらには、高感度の観点から、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ=7.4°±0.3°および2θ=28.2°±0.3°の位置に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶がより好ましい。
【0041】
電荷発生層用塗布液は、電荷発生物質を溶剤(分散媒)中に分散させることによって調製することができる。溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、メチルセルソルブ、アセトン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0042】
また、電荷発生層用塗布液には、結着樹脂を電荷発生物質および溶剤と一緒に加えてもよいし、電荷発生物質と溶剤だけであらかじめ分散処理した後、結着樹脂を加えてもよい。
【0043】
電荷発生層用の結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択でき、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリビニルポレンなどの有機光導電性ポリマーからも選択できる。好ましくは、ポリビニルブチラール、ポリアリレート(ビスフェノールAとフタル酸の縮重合体など)、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。また、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの絶縁性樹脂も挙げることができる。
【0044】
電荷発生層は上述の電荷発生層用塗布液を中間層上に塗布後、加熱乾燥することによって形成され、その膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.05μm以上1μm以下が好ましい。
【0045】
感光層が積層型感光層である場合、電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂とを溶剤に溶解させて得られる電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0046】
電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物などが挙げられる。
【0047】
電荷輸送層用塗布液は、電荷輸送物質を溶剤に溶解させた後、これに結着樹脂を加えて調製してもよい。また、結着樹脂としては、電荷発生層用の結着樹脂と同様のものを用いることができる。
【0048】
電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0049】
感光層が単層型感光層である場合も、上述したような電荷発生物質や電荷輸送物質や結着樹脂を用いて同様に形成することができる。
【0050】
単層型感光層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0051】
また、本発明においては、電荷輸送層上に、耐久性、転写性およびクリーニング性の向上などを目的として、保護層を設けてもよい(図1中不図示)。
【0052】
保護層は、樹脂を有機溶剤によって溶解させて得られる保護層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマーおよびスチレン−アクリロニトリルコポリマーなどが挙げられる。
【0053】
また、保護層に電荷輸送能を併せ持たせるために、電荷輸送能を有するモノマー材料や高分子型の電荷輸送物質を種々の架橋反応を用いて硬化させることによって保護層を形成してもよい。硬化させる反応としては、ラジカル重合、イオン重合、熱重合、光重合、放射線重合(電子線重合)、プラズマCVD法、光CVD法などが挙げられる。
【0054】
さらに、保護層中に導電性粒子や紫外線吸収剤、および耐摩耗性改良剤などを含有させてもよい。導電性粒子としては、例えば、酸化スズ粒子などの金属酸化物が好ましい。耐摩耗性改良剤としては、例えば、フッ素原子含有樹脂粒子(PTFEなど)、アルミナ、シリカなどが好ましい。
【0055】
保護層の膜厚は、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0056】
これら各種層用の塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬塗布法(ディッピング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法およびビームコーティング法などが挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらにのみ限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、「質量部」を意味する。
【0058】
まず、本発明の電子写真感光体の製造に使用する、中間層用塗布液(分散液)の調製例について述べる。
【0059】
<中間層用塗布液調製例1>
・超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製
10%シリカ被覆酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:TKP−101)2.0部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)50.0部に入れ、これに10分間超音波を印加した。超音波印加後、この液を濾過して、超音波処理済み(洗浄処理済み)のシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を得た。超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1の電気伝導度は190μS/cmであった。
【0060】
電気伝導度の測定に用いた機器と、その測定条件の詳細を以下に示す。
【0061】
<電気伝導度測定条件>
電気伝導度の測定は、下記(1)〜(3)のとおりに行った。
(1)電気伝導度が1μS/cm以下の純水中に、測定対象のシリカ被覆酸化チタン粒子を2.5質量%となるように添加して混合液とする。
(2)超音波装置(シャープ(株)製、商品名:UT−205)を用いて、(1)の混合液に10分間超音波を印加して分散処理し、分散処理後、液温が25℃になるまで、静置する。
(3)電気伝導度計(横河電機(株)製、商品名:パーソナルSCメータ、SC72)を用いて、(2)の超音波処理混合液の電気伝導度を測定する。
【0062】
・中間層用塗布液の調製
N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)製、重合度420、メトキシメチル化率36.8%)1.5部、メタノール(キシダ化学(株)製、特級)25.0部、および、n−ブタノール(キシダ化学(株)製、特級)6.5部を混合し、攪拌しながら50℃に加熱してN−メトキシメチル化6ナイロン樹脂を溶解させて、放冷させた。放冷後、これに上記超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を2.0部と、直径0.8mmのガラスビーズを25部とを加えて混合液とした。この混合液を、ペイントシェーカーで16時間分散処理することによって、中間層用塗布液1を得た。N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂は、アルコール可溶性のポリアミドの一種である。
【0063】
<中間層用塗布液調製例2〜6>
中間層用塗布液調製例1において、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製における10%シリカ被覆酸化チタン粒子に対しての超音波印加時間を10分間から、それぞれ、30分間、60分間、120分間、180分間、600分間に変更し、それ以外は同様にして超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−2、T−3、T−4、T−5、T−6を得た。超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−2、T−3、T−4、T−5、T−6の電気伝導度は、それぞれ、160μS/cm、130μS/cm、110μS/cm、100μS/cm、50μS/cmであった。
【0064】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を、それぞれ、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−2、T−3、T−4、T−5、T−6に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液2、3、4、5、6を得た。
【0065】
<中間層用塗布液調製例7>
特開2002−159865号公報の実施例1を参考にして、表面未処理の酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:AMT−100、アナターゼ型)を用い、シリカ被覆量が15%である15%シリカ被覆酸化チタン粒子を作製した。さらに、この15%シリカ被覆酸化チタン粒子2.0部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)50.0部に入れ、これに10分間超音波を印加した。超音波印加後、この液を濾過して、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−7を得た。この超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−7の電気伝導度は140μS/cmであった。
【0066】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−7に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液7を得た。
【0067】
<中間層用塗布液調製例8>
中間層用塗布液調製例7において、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製における15%シリカ被覆酸化チタン粒子に対しての超音波印加時間を10分間から60分間に変更し、それ以外は同様にして超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−8を得た。超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−8の電気伝導度は、100μS/cmであった。
【0068】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−8に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液8を得た。
【0069】
<中間層用塗布液調製例9>
中間層用塗布液調製例7において、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製におけるアナターゼ型の表面未処理の酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:AMT−100)を、ルチル型の表面未処理の酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:MT150A)に変更し、シリカ処理量を15%から10%に変更した以外は、中間層用塗布液調製例7と同様にして、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−9を得た。この超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−9の電気伝導度は60μS/cmであった。
【0070】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−9に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液9を得た。
【0071】
<中間層用塗布液調製例10>
中間層用塗布液調製例1において、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製における10%シリカ被覆酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:TKP101)を10%アルミナ/シリカ被覆酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:MT500SA、ルチル型)を変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−10を得た。この超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−10の電気伝導度は55μS/cmであった。
【0072】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−10に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液10を得た。
【0073】
<中間層用塗布液調製例11>
10%アルミナ/シリカ被覆酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:MT500SA、ルチル型)2.0部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)95.0部および酢酸(キシダ化学(株)製、特級)5.0部の混合液に入れ、これに10分間超音波を印加した。超音波印加後、この液を濾過し、残渣(濾物)を1時間100℃で加熱して、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−11を得た。この超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−11の電気伝導度は200μS/cmであった。
【0074】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−11に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液11を得た。
【0075】
<中間層用塗布液調製例21>
中間層用塗布液調製例1において、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製における10%シリカ被覆酸化チタン粒子に対しての超音波印加を行わなかった以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液21を得た。超音波印加を行わなかった10%シリカ被覆酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:TKP−101)をシリカ酸化チタン粒子T−21と称する。シリカ酸化チタン粒子T−21の電気伝導度は250μS/cmであった。
【0076】
<中間層用塗布液調製例22>
中間層用塗布液調製例1において、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製における10%シリカ被覆酸化チタン粒子に対しての超音波印加時間を10分間から780分間に変更し、それ以外は同様にして超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−22を得た。この超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−22の電気伝導度は40μS/cmであった。
【0077】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−22に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液22を得た。
【0078】
<中間層用塗布液調製例23>
中間層用塗布液調製例1において、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子の作製における10%シリカ被覆酸化チタン粒子を表面未処理の酸化チタン粒子(テイカ(株)製、商品名:AMT−100、アナターゼ型)に変更し、それ以外は同様にして超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−23を得た。この超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−23の電気伝導度は55μS/cmであった。
【0079】
また、超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−1を超音波処理済みのシリカ被覆酸化チタン粒子T−23に変更した以外は、中間層用塗布液調製例1と同様にして、中間層用塗布液23を得た。
【0080】
次に、電子写真感光体の製造方法の例(実施例)について述べる。
【0081】
<実施例1>
酸化スズで被覆した酸化チタン粒子(チタン工業(株)製、商品名:クロノスECT−62)67.5部、レゾール型フェノール樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:プライオーフェンJ325、アンモニア触媒、固形分70%)36.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(キシダ化学(株)製、1級)20部、球状シリコーン樹脂粒子(東芝シリコーン社製、商品名:トスパール120)1.8部、メタノール(キシダ化学(株)製、特級)5部、および、シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量:3000)0.002部を混合し、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で3時間分散処理して、導電層用塗布液を調製した。
【0082】
この導電層用塗布液を、支持体としてのアルミニウムシリンダー(直径30mm、引き抜き管)上に浸漬塗布し、これを30分間140℃で乾燥させることによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0083】
次に、導電層上に上記中間層用塗布液1を浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が1.5μmの中間層を形成した。
【0084】
次に、下記構造式で示されるヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶(電荷発生物質)10部、
【0085】
【化1】

【0086】
下記構造式で示される化合物0.1部、
【0087】
【化2】

【0088】
および、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製、商品名:エスレックBX−1)5部をシクロヘキサノン(キシダ化学(株)製、特級)250部に添加し、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で3時間分散処理した。この分散処理によって、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°の位置に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の分散液を得た。これにシクロヘキサノン100部と酢酸エチル450部をさらに加えて希釈することによって、電荷発生層用塗布液を得た。
【0089】
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.18μmの電荷発生層を形成した。
【0090】
次に、下記構造式で示される化合物(電荷輸送物質)10部、
【0091】
【化3】

【0092】
および、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロンZ−200)10部をモノクロロベンゼン70部に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を得た。
【0093】
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間110℃で乾燥させることによって、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0094】
次に、下記構造式で示される化合物36部、
【0095】
【化4】

【0096】
および、ポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子(ダイキン工業(株)製、商品名:ルブロンL−2)4部をn−プロピルアルコール60部に混合した後、超高圧分散機にて分散混合し、保護層用塗布液を得た。
【0097】
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、これに窒素中において加速電圧60kV、線量8000Gyの条件で電子線を照射した後、引き続いて電子線の被照射体の温度が150℃になる条件で1分間加熱処理を行った。このときの酸素濃度は20ppmであった。さらに、電子線の被照射体を大気中、120℃で1時間加熱処理を行って、膜厚が5μmの保護層を形成した。
【0098】
このようにして、支持体、導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層を有する電子写真感光体D−1を作製した。
【0099】
<実施例2〜11>
実施例1において、中間層用塗布液1を、それぞれ、上記中間層用塗布液2〜11に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体D−2〜D−11を作製した。
【0100】
<比較例1〜3>
実施例1において、中間層用塗布液1を、それぞれ、上記中間層用塗布液21〜23に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体D−21〜D−23を作製した。
【0101】
<電子写真感光体の特性評価>
電子写真感光体D−1を、評価機であるキヤノン(株)製の複写機(商品名:GP−40)の改造機(光源を光量が可変可能な778nmの半導体レーザーに、前露光を光量が可変可能な赤色LEDに、および、プロセススピードが可変可能なモーターにそれぞれ変更)に搭載して、繰り返し使用時の電位変動に関して評価した。
【0102】
評価手法は、上記評価機本体から現像器ユニットを取り外し、代わりに電位測定用プローブを現像位置に固定することにより測定を行った。なお、その際に転写ユニットは電子写真感光体に非接触、紙は非通紙とした。
【0103】
まず、電子写真感光体D−1を上記評価機とともに、23℃/5%RHの常温低湿環境下で3日間放置した。その後、プロセススピードは320mm/secになるように評価機のモーターを調整し、同環境下で初期の帯電電位Vd1を−750Vに、初期の明部電位Vl1を−200Vになるように帯電条件、および、画像露光用のLED光量をそれぞれ調整した。前露光は−750Vの表面電位を−200Vに減衰するLED光量の3倍の光量になるようにNDフィルター用いて調整した。その後、帯電条件、画像露光用LED光量、および、前露光量は初期の設定に固定した状態で、連続5万回転のVl耐久試験(全画面黒画像モード)を行った。5万回転目の帯電電位Vd2、明部電位Vl2の測定を行ったところ、Vd2=−735V、Vl2=−205Vであった。したがって、それぞれの初期値からの変化量、ΔVd、ΔVlを算出したところ、ΔVd=−15(V)、ΔVl=+5(V)で、それぞれ帯電電位は15V低下、明部電位は5V上昇したことを意味する。評価結果を表1に示す。
【0104】
また、電子写真感光体D−2〜D−11およびD−21〜D−24にに関しても、電子写真感光体D−1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例から、中間層用塗布液の調製に用いるシリカ被覆酸化チタン粒子の電気伝導度が50〜200μS/cmの場合に、作製された電子写真感光体の繰り返し使用時における帯電電位の変動(ΔVd)および明部電位の変動(ΔVl)が抑制されることがわかる。特に、電気伝導度が50〜100μS/cmの場合に、帯電電位の変動(ΔVd)が顕著に抑制されていることがわかる。
【0107】
また、実施例6、実施例9、実施例10から、シリカ被覆酸化チタン粒子が、アナターゼ型酸化チタンの粒子をシリカで被覆してなる粒子である場合、また、アルミナでは被覆されていない場合に、帯電電位の変動(ΔVd)および明部電位の変動(ΔVl)がより抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0108】
101 支持体
102 中間層
103 感光層
104 電荷発生層
105 電荷輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に中間層および感光層をこの順に形成して電子写真感光体を製造する方法において、
下記条件を満たすシリカ被覆酸化チタン粒子と、樹脂と、溶剤とを用いて中間層用塗布液を調製し、該中間層用塗布液を用いて該中間層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法:
(条件)シリカ被覆酸化チタン粒子の2.5質量%の水分散液の電気伝導度が、50μS/cm以上200μS/cm以下である。
【請求項2】
前記シリカ被覆酸化チタン粒子が、アルミナでは被覆されていないシリカ被覆酸化チタン粒子である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
前記シリカ被覆酸化チタン粒子が、アナターゼ型酸化チタンの粒子をシリカで被覆してなる粒子である請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項4】
前記電気伝導度が、50μS/cm以上100μS/cm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が、アルコール可溶性のポリアミドである請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−107615(P2011−107615A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265228(P2009−265228)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】