説明

電子写真感光体の製造方法

【課題】 堆積膜の軸方向の特性のムラが抑制された電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】 (i)円筒状基体を含む柱状電極が内部に設置され、柱状電極に離間して対向する対向電極を内部に含む減圧可能な反応容器の内部に、堆積膜形成用の原料ガスを導入する工程と、(ii)電源から柱状電極に電力を供給することで、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を対向電極と柱状電極の間に印加して、原料ガスを分解し、円筒状基体上に堆積膜を形成する工程と、を有するプラズマCVD法によって電子写真感光体を製造する方法において、工程(ii)において、柱状電極の一方の端部領域を経由する電力の供給と他方の端部領域を経由する電力の供給との切り替えを少なくとも1回行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD(plasma chemical vapor deposition)法によって電子写真感光体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アモルファスシリコン(以下「a−Si」とも表記する。)を用いた電子写真感光体は、円筒状基体上に光導電層などの堆積膜を形成することにより製造されている。堆積膜の形成方法としては、RF帯の高周波を用いたグロー放電により堆積膜形成用の原料ガスを分解し、その分解生成物を円筒状基体に被着させる方法、いわゆるRFプラズマCVD法が広く採用されている。
【0003】
近年、電子写真装置の高画質化が強く要求されるようになってきており、これに対応して、堆積膜の均一性(堆積膜の膜厚および膜質の均一性)の改善が強く要求されている。
【0004】
従来のRFプラズマCVD法では、周波数が高いため、波長に応じた定在波が生じてプラズマ中に電界の小さい部分ができたり、用いるプラズマCVD装置のインピーダンスの影響による伝搬ムラのためにプラズマが不均一になったりする場合があり、堆積膜の均一性を向上させるうえでの課題となっていた。
【0005】
特許文献1には、300kHz以下の周波数で正および負のいずれか一方のみの極性の矩形波の電圧を用いる技術が開示されている。特許文献1によれば、300kHz以下の低周波数とすることで、堆積膜の均一性が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/134781
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、堆積膜の軸方向(円筒状基体の軸方向)の特性のムラに関しては、特許文献1に開示されている技術では、まだ改善の余地が残されているのが現状である。
【0008】
図2は、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の電圧を柱状電極206と対向電極204との間に印加して、円筒状基体202A、202B上に堆積膜を形成するためのプラズマCVD装置の例を示す模式図である。柱状電極206は、円筒状基体202A、202Bおよび基体ホルダー203A、203Bからなっている。図2(a)は縦断面図であり、図2(b)は横断面図である。
【0009】
電源218から電力供給端子211を経由して柱状電極206に電力を供給し、柱状電極206と接地された対向電極204との間に放電を生起させる。この放電により、ガスブロック222から導入された堆積膜形成用の原料ガスを分解して堆積膜の形成を行う。
【0010】
このような方法で堆積膜の形成を行った場合、形成される堆積膜の軸方向の特性のムラに改善の余地がある。
【0011】
本発明の目的は、堆積膜の軸方向の特性のムラが抑制された電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、堆積膜の軸方向の特性のムラを改善するために鋭意検討を行った。その結果、柱状電極206の電力供給端子211が接続されている端部領域(端部)の反対側の端部領域(端部)が電力の反射面として作用し、入射波とこの反射面からの反射波とが合成されることによる電力分布が、堆積膜の軸方向の特性のムラの原因であることをつきとめた。
【0013】
例えば、図2に示すプラズマCVD装置において、電力供給端子211が接続されている端部領域(端部)の反対側の端部領域(端部)は開放端になっており、電磁波を強く反射する。入射波とこの開放端からの反射波とによる合成波が、堆積膜の軸方向の特性のムラの原因となるのである。
【0014】
本発明者らは、例えば図2に示すプラズマCVD装置においては、電力供給端子211が接続されている端部領域(端部)の反対側の端部領域(端部)にも電力供給端子を設置し、柱状電極206の両方の端部領域(端部)に電力を交互に供給することで、堆積膜の軸方向の特性のムラが改善されることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、
(i)円筒状基体を含む柱状電極が内部に設置され、前記柱状電極に離間して対向する対向電極を内部に含む減圧可能な反応容器の内部に、堆積膜形成用の原料ガスを導入する工程と、
(ii)電源から前記柱状電極に電力を供給することで、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を前記対向電極と前記柱状電極との間に印加して、前記原料ガスを分解し、前記円筒状基体上に堆積膜を形成する工程と、
を有するプラズマCVD法によって電子写真感光体を製造する方法において、
前記工程(ii)において、前記柱状電極の一方の端部領域を経由する電力の供給と他方の端部領域を経由する電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、
(i)柱状電極を内部に含み、前記柱状電極に離間して対向する円筒状基体を含む対向電極が内部に設置された減圧可能な反応容器の内部に、堆積膜形成用の原料ガスを導入する工程と、
(ii)電源から前記柱状電極に電力を供給することで、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を前記対向電極と前記柱状電極との間に印加して、前記原料ガスを分解し、前記円筒状基体上に堆積膜を形成する工程と、
を有するプラズマCVD法によって電子写真感光体を製造する方法において、
前記工程(ii)において、前記柱状電極の一方の端部領域を経由する電力の供給と他方の端部領域を経由する電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子写真感光体の製造方法を用いることで、堆積膜の軸方向の特性のムラが抑制された電子写真感光体が製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するための製造装置(プラズマCVD装置)の例を示す模式図である。
【図2】従来の電子写真感光体の製造方法で使用される製造装置(プラズマCVD装置)の例を示す模式図である。
【図3】堆積膜の軸方向の膜厚のムラの例を示す図である。
【図4】矩形波の交播電圧を説明するための図である。
【図5】放電開始電圧および放電維持電圧の測定方法を説明するための図である。
【図6】本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するための製造装置(プラズマCVD装置)の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するための製造装置(プラズマCVD装置)の例を示す模式図である。図1(a)は縦断面図であり、図1(b)は横断面図である。
【0020】
周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の電圧を、円筒状基体102A、102Bおよび基体ホルダー103A、103Bを含む柱状電極106と、柱状電極106に離間して対向している対向電極104との間に印加して、円筒状基体102A、102B上に堆積膜を形成する。
【0021】
電源118から、電力供給経路切り替え部119ならびに電力供給端子111Aもしくは電力供給端子111Bを経由して、柱状電極106に電力を供給し、柱状電極106と接地された対向電極104との間に放電を生起させる。
【0022】
本発明において、電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給と、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給との切り替えは、制御部121によって制御され、電力供給経路切り替え部119によって行われる。また、堆積膜を形成する工程(上記工程(ii))において、少なくとも1回は、電力供給経路の切り替えが行われる。
【0023】
電力供給端子111Aを経由して柱状電極106に電力の供給を行った場合においては、電力供給経路切り替え部119内の切り替え端子120Bが開放端となり、電力の反射面として作用する。入射波とこの反射面からの反射波とが合成されることによる電力分布が、堆積膜の軸方向の特性のムラを生じさせる。
【0024】
図3(a)は、電力供給端子111Aを経由して柱状電極106に電力の供給を行って堆積膜の形成を行った場合の、円筒状基体102A、102B上に形成された堆積膜の軸方向の特性(膜厚)のムラの例を示す図である。
【0025】
電力供給端子111Bを経由して柱状電極106に電力の供給を行った場合においては、電力供給経路切り替え部119内の切り替え端子120Aが開放端となり、電力の反射面として作用する。入射波とこの反射面からの反射波とが合成されることによる電力分布が、堆積膜の軸方向の特性のムラを生じさせる。
【0026】
図3(b)は、電力供給端子111Bを経由して柱状電極106に電力の供給を行って堆積膜の形成を行った場合の、円筒状基体102A、102B上に形成された堆積膜の軸方向の特性(膜厚)のムラの例を示す図である。
【0027】
図3(a)および(b)からわかるように、電力供給経路を逆にすると、堆積膜の軸方向の特性(膜厚)のムラの形状も逆転する。したがって、堆積膜を形成する工程において、少なくとも1回電力供給経路を切り替えることで、円筒状基体上に形成される堆積膜の軸方向の特性のムラを抑制し、堆積膜の軸方向の均一性を向上させることができる。
【0028】
本発明において、矩形波の交播電圧の周波数は、VLF帯からLF帯となる3kHz以上300kHz以下の範囲内にする。周波数が低くなりすぎると、アークやスパークなどの異常放電が発生しやすくなり、堆積膜の特性が局所的に低下しやすくなる。また、アークやスパークなどの異常放電が発生すると、微小な堆積膜の剥がれ(以下「膜剥がれ」とも表記する。)が生じやすくなる。堆積膜の特性が局所的に低下したり、微小な膜剥がれが生じたりすると、その部分は、電子写真感光体を電子写真装置に用いた際に画像欠陥として現れる。ここでいう画像欠陥とは、ベタ黒(黒色以外のトナーを用いた場合も、便宜上「ベタ黒」と表記する。)画像上に白い点となって現れるものや、ベタ白画像上に黒い点(黒色以外のトナーを用いた場合も、便宜上「黒い点」と表記する。)となって現れるものであり、いわゆる「ポチ」と呼ばれるものである。また、微小な膜剥がれが円筒状基体の近傍で生じた場合であっても、剥がれた膜片が円筒状基体に付着し、それが起点となって円筒状基体上で形成される堆積膜において膜欠陥を生じさせてしまい、やはり画像欠陥(ポチ)に繋がってしまう場合がある。ここでいう膜欠陥とは、微小なスパークによる電気的なダメージによって堆積膜の特性が局所的に低下した部分や、微小なスパークによって円筒状基体上に形成された堆積膜の微小な膜剥がれ部分や、剥がれた膜片が円筒状基体に付着することで生じる突起のことである。
【0029】
一方、周波数が高くなりすぎると、波長に応じた定在波が生じてプラズマ中に電界の小さい部分ができたり、プラズマCVD装置のインピーダンスの影響による伝搬ムラのためにプラズマが不均一になったりして、堆積膜の均一性が低下しやすくなる。
【0030】
本発明においては、電源118から柱状電極106に電力を供給することで、対向電極104に対する柱状電極106の電位が交互に正と負になるように、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を対向電極104と柱状電極106との間に印加することが好ましい。
【0031】
正および負のいずれか一方の極性のみの矩形波の交播電圧を印加した場合、円筒状基体には主に正および負のいずれか一方の極性の荷電粒子のみが到達し、円筒状基体がチャージアップしてしまう場合がある。円筒状基体のチャージアップとは、より具体的には、堆積膜が形成された円筒状基体の表面(≒堆積膜の表面)のチャージアップである。このような円筒状基体のチャージアップは、円筒状基体の全体にわたって生じるものであるが、堆積膜の特性や堆積膜の表面形状の微小な差に起因して、チャージアップの程度は場所によって異なる。このため、円筒状基体では、チャージアップの程度の違いに起因した電界の違いが生じ、微小なスパークが発生しやすくなる。そのスパークの際の電気的なダメージによって、堆積膜の特性が局所的に低下したり、微小な膜剥れが生じたりする。微小な膜剥がれが生じた場合、その部分は、電子写真感光体を電子写真装置に用いた際に画像欠陥となって現れる。
【0032】
また、本発明においては、対向電極に対する柱状電極の電位が正になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値および対向電極に対する柱状電極の電位が負になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値の一方が放電維持電圧の絶対値未満の値であって、他方が放電開始電圧の絶対値以上の値であることが好ましい。
【0033】
対向電極に対する柱状電極の電位が正になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値および負になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値がともに放電開始電圧の絶対値以上の値であると、プラズマ中の荷電粒子(イオンや電子)が電界によって往復運動し、その往復運動の間に他の荷電粒子や中性活性種や原料ガスと二次反応を起こし、粉体状の物質となることがある。この粉体状の物質が堆積膜中に取り込まれてしまうと、堆積膜の特性を向上させるうえでの問題となることがある。
【0034】
図4AおよびBは、矩形波の交播電圧を説明するための図である。
図4Aは、対向電極の電位をアース電位で一定とし、対向電極の電位に対する柱状電極(円筒状基体を含む柱状電極)の電位が交互に正と負になるように矩形波の交播電圧を対向電極と柱状電極との間に印加した場合の柱状電極の電位の変化を示す図である。図4Aの例では、対向電極の電位に対する柱状電極の電位が正になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値が放電維持電圧の絶対値未満の値(V1)となっており、負になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値が放電開始電圧の絶対値以上の値(V2)となっている。図4Aの例では、対向電極の電位を一定としているため、柱状電極の電位が図4Aに示すように矩形状に変化する。
【0035】
図4A中のTは、矩形波の周期を表しており、矩形波の周波数(パルス周波数)によって決まる。本発明では、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波が用いられ、好ましくは、周波数10kHz以上100kHz以下の矩形波が用いられる。また、図4A中のt1は、上記対向電極と柱状電極の電位差の絶対値がV1となっている時間(期間)を表しており、t2は、上記対向電極と柱状電極の電位差の絶対値がV2となっている時間(期間)を表している。また、本発明では、t2をTで除した値(t2/T)をDuty比(%)と定義する。
図4Aの例では、Duty比を30%としている。
【0036】
このような矩形波の交播電圧は、対向電極の電位に対する柱状電極の電位が正になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値がV1となる電圧、および、対向電極の電位に対する柱状電極の電位が負になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値がV2となる電圧を、DC電源から発生させて、スイッチ素子をON/OFF制御し、DC電源からの電圧を時分割パルス状にすることによって得ることができる。スイッチ素子としては、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラートランジスター)、MOSFETなどの半導体スイッチ素子を用いたものがある。これらのスイッチ素子によれば、Duty比や周波数を変化させることもできる。
【0037】
図4A中のt2の期間では、対向電極104と柱状電極106の電位差の絶対値が放電開始電圧の絶対値以上の値(V2)となっているため、対向電極104と柱状電極106との間に放電が生起し、プラズマが生成される。プラズマ中の中性活性種および陽イオンが柱状電極106に到達し、柱状電極106に含まれる円筒状基体102A、102B上に堆積膜が形成される。この過程において、陽イオンが持つ正の電荷により、柱状電極106に含まれる円筒状基体102A、102Bは正電位にチャージアップする。なお、「プラズマが生成される」とは、対向電極と柱状電極との間に放電が生起し、原料ガスが電離して、荷電粒子(イオンや電子)が生成されることを意味している。
【0038】
次に、t1の期間になると、対向電極104と柱状電極106の電位差の絶対値が放電維持電圧の絶対値未満になるため、放電が消滅し、プラズマは維持できなくなる。しかしながら、t2の期間で生成された荷電粒子(イオンや電子)は、瞬時には消滅せずにt1の期間において徐々に減衰しながらしばらくの間は残存する。この状態は、一般にアフターグローと呼ばれ、新たに荷電粒子(イオンや電子)は生成されない。このアフターグローの寿命は、数十μ秒から数m秒程度である。アフターグローの寿命は、圧力によって変化する。圧力が高くなるほど、ガス分子などに衝突しやすくなるため、アフターグローの寿命は短くなる傾向である。
【0039】
本例においては、アフターグローの状態で対向電極104の電位に対する柱状電極106の電位が正になるため、アフターグロー中の負の荷電粒子、すなわち電子および陰イオンが柱状電極106に到達する。この過程において、電子および陰イオンが持つ負の電荷により、柱状電極106に含まれる円筒状基体102A、102Bの正電位のチャージアップは緩和されることとなる。その結果、微小なスパークが抑制され、画像欠陥が抑制される。
【0040】
また、対向電極および柱状電極の一方の電位に対する他方の電位の差の絶対値が放電開始電圧の絶対値以上の値であるときに、柱状電極の一方の端部領域(端部)を経由する柱状電極への電力の供給(図1に示すプラズマCVD装置であれば、電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給)と、柱状電極の他方の端部領域(端部)を経由する柱状電極への電力の供給(図1に示すプラズマCVD装置であれば、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給)との切り替えを行うことが好ましい。対向電極および柱状電極の一方の電位に対する他方の電位の差の絶対値が放電維持電圧の絶対値未満の値であるときに切り替えを行うということは、例えばアフターグローの状態で切り替えを行うということである。例えば、図1に示すプラズマCVD装置において、アフターグローの状態で切り替えを行った場合、柱状電極106に含まされる円筒状基体102A、102Bのチャージアップが十分に緩和されない場合がある。それは、切り替えが始まってから終わるまでの間、対向電極104と柱状電極106との間に電圧がかからないためである。その結果、微小なスパークは抑制されず、画像欠陥を十分に抑制することができない場合がある。
【0041】
また、図4Aにおいては、完全な矩形波を示しているが、一般的な市販電源では、矩形波のエッジ部になまりが生じたり、オーバーシュートによって若干鋭角状となったり、V1やV2になるときにリンギングが生じたりすることもある。このような場合でも、本発明の効果は得られる。
【0042】
次に、放電開始電圧および放電維持電圧について詳細に述べる。
対向電極と柱状電極との間の放電は、対向電極と柱状電極との間にわずかながら存在している電子が電界によって正電位側に運ばれ、その途中でガス分子に衝突してこれを電離させて、電子とイオンを生成するα作用が継続することによって始まる。この電離を生じさせるためには、衝突時の電子のエネルギーが、ガス分子の電離エネルギー以上であることが必要となる。電子がガス分子に衝突する際のエネルギーは、電界が大きくなるほど、すなわち、対向電極と柱状電極との間に印加する電圧が大きくなるほど大きくなる。対向電極と柱状電極との間に印加する電圧を徐々に上げていき、電子がガス分子に衝突する際のエネルギーがガス分子の電離エネルギーに達すると、ガス分子の電離によって対向電極と柱状電極との間に存在する電子が増加して、衝突によるガス分子の電離が継続して起こることで放電が始まる。この放電が始まる時点の電圧を放電開始電圧という。
【0043】
また、放電が開始した状態から、対向電極と柱状電極との間に印加する電圧を下げていくと、ある電圧よりも小さくなった時点で放電が維持できなくなる。放電が維持できる最低電圧を放電維持電圧という。放電維持電圧は、通常、放電開始電圧よりも低い。これは、放電が生起した状態では、放電が生起していない状態と比べて放電空間内の電子の数が多く、対向電極と柱状電極との間の印加電圧の絶対値が放電開始電圧の絶対値未満になっても、放電維持電圧の絶対値以上であれば、ガス分子を電離可能なエネルギーを持った電子が放電維持に必要な数以上存在するためである。
【0044】
また、γ作用と呼ばれる現象も、放電維持電圧が放電開始電圧よりも低くなる理由の1つとなっている。γ作用とは、ガス分子が電離して生じたイオンが対向電極や柱状電極に衝突する際、それらから二次電子が放出される現象である。放電が生起した後は、このγ作用によって生じた電子もガス分子の電離に寄与するので、放電開始電圧よりも低い電圧で放電が維持可能となる。
【0045】
このように、放電開始電圧および放電維持電圧は、ガス分子の電離電圧および電子がガス分子に衝突するときのエネルギーが支配的な要素となる。ガス分子の電離電圧は、ガス種が決まれば決定される。また、ガス分子に衝突するときの電子のエネルギーは、電界強度および電子がガス分子に衝突するまでの移動距離の関数となる。言い換えれば、印加電圧、対向電極と柱状電極との間の距離および電子がガス分子に衝突するまでの移動距離の関数となる。また、電子がガス分子に衝突するまでの移動距離は、ガスの密度の関数、言い換えれば、圧力の関数となる。
【0046】
なお、複数のガス種からなる混合ガスを用いる場合、各々のガスの電離電圧とともに、ガスの混合比率も、放電開始電圧および放電維持電圧を決定付ける要素となる。
【0047】
これら以外に放電開始電圧および放電維持電圧に影響を及ぼすものとしては、対向電極および柱状電極の表面材質、形状および温度などがあるが、これらは電離電圧、印加電圧、対向電極と柱状電極との間の距離および圧力に比べて影響度は小さい。
【0048】
このように、放電開始電圧および放電維持電圧は、ガス種、ガスの混合比率、対向電極と柱状電極との間の距離および圧力によって異なるため、使用するガス条件およびプラズマCVD装置の構成によって固有の値を持つこととなる。すなわち、使用するプラズマCVD装置と使用するガス条件が決まれば、放電開始電圧および放電維持電圧は一意に決まる。
【0049】
本発明においては、放電開始電圧および放電維持電圧の値そのものよりも、正および負のいずれか一方の電界で放電を生起させ、続いて、それとは逆極性の電界で放電が維持しないレベルにすることが効果を得るために重要である。そのため、使用するガス条件およびプラズマCVD装置の構成によって放電開始電圧および放電維持電圧の値そのものは変わるものの、本発明の条件を満たせば、本発明の効果を得ることができる。例えば、シランガスおよび水素ガスの混合ガスを用いた場合と、シランガスおよび水素ガスおよびメタンガスの混合ガスを用いた場合では、放電開始電圧および放電維持電圧は異なる。しかしながら、どちらの場合においても、本発明の条件を満たすことによって、本発明の効果を得ることができる。
【0050】
また、放電開始電圧の絶対値以上の値(V2)が大きいほど、柱状電極に含まれる円筒状基体のチャージアップの量は多くなるが、アフターグロー中の荷電粒子(イオンや電子)の密度も高くなるため、放電開始電圧の絶対値以上の値(V2)の大きさによらず、同様の効果を得ることができる。
【0051】
一方、放電維持電圧の絶対値未満の値(V1)は、チャージアップの抑制の観点から、放電開始電圧の絶対値以上の値(V2)に対して20%以上の値であることが好ましい。これは、放電維持電圧の絶対値未満の値(V1)を大きくしていくと、アフターグロー中の荷電粒子(イオンや電子)を柱状電極に到達させる力が大きくなり、柱状電極に含まれる円筒状基体のチャージアップを抑制するための単位時間当たりの電荷の入射密度が高まるためと考えられる。ただし、20%以上の条件では、チャージアップを抑制する効果はわずかにしか向上しない。これは、アフターグロー中の荷電粒子(イオンや電子)の量が限られるため、荷電粒子を柱状電極に到達させる力を高めても、t1の期間に柱状電極に到達する荷電粒子の総量に大きな差が生じないためと考えられる。
【0052】
また、放電維持電圧の絶対値未満の値(V1)は、本発明の効果を安定して得る観点から、放電維持電圧の絶対値に対して95%以下であることが好ましい。95%以下とすることで、電源出力の変動や、プラズマCVD装置の反応容器の内壁面からの付着物の剥落による放電空間内の一時的な電界変動が生じても、放電維持電圧の絶対値未満の状態を維持することができるので、本発明の効果を安定して得やすくなる。
【0053】
放電が開始したか否か、および、放電が維持されているか否かは、例えば、電圧−電流特性から判断する方法や、プラズマ発光を検知して判断する方法などがある。
【0054】
図5AおよびBは、放電開始電圧および放電維持電圧の測定方法を説明するための図である。図5Aは、図1に示すプラズマCVD装置を用いて、対向電極と柱状電極との間に電圧を印加し、放電開始電圧を求めたときの電圧−電流特性を示す図である。図5Bは、図5Aと同様、図1に示すプラズマCVD装置を用いて、放電維持電圧を求めたときの電圧−電流特性を示す図である。このような電圧−電流特性から、放電が開始したか否か、および、放電が維持されているか否かを判断し、放電開始電圧および放電維持電圧を求めることができる。
【0055】
対向電極の電位に対する柱状電極の電位が負になったときに放電を生起させて電子写真感光体を製造しようとする場合には、図5Aの例のように負電位の放電開始電圧と、図5Bの例のように正電位の放電維持電圧を求めることになる。
【0056】
まず、図1に示すプラズマCVD装置の制御部121で、電圧を0Vと設定電圧を繰り返す矩形波の電圧(パルス電圧)として、周波数25kHzおよびDuty比30%の条件で出力波形を制御した。そして、設定電圧を0Vから負の方向に10V刻みで大きくしていき(0V→−10V→−20V…)、そのときの電流変化を測定した。図5Aに示すように、設定電圧を0Vから徐々に負の方向に大きくしていくと、電流が急に増加する点が観測される。そのときの電圧が放電開始電圧である。なお、放電開始電圧に至るまでも、若干の電流が計測されているが、その電流は放電に伴うものではなく、対向電極と柱状電極との間に存在した荷電粒子が動くことによる暗流と、プラズマCVD装置内での漏れ電流である。なお、図5Aにおいては、設定電圧が−650Vの際の電流を100%として示している。
【0057】
次に、図5Bに示すように、設定電圧を+650Vまで上げて対向電極と柱状電極との間に放電を生起させる。この状態から設定電圧を0Vの方向に10V刻みで小さくしていくと(+650V→+640V→+630V…)、電流が急に減少する点が観測される。電流が急に減少する直前の電圧を放電維持電圧である。なお、図5Bにおいては、設定電圧が+650Vの際の電流を100%として示している。
【0058】
また、本発明においては、切り替えられる2つの電力供給経路の長さおよび/またはインピーダンスは、等しいことが好ましい。
【0059】
また、矩形波のDuty比は、生産性とチャージアップの抑制とを両立させる観点から、20%以上80%以下であることが好ましい。Duty比が大きくなるほど、原料ガスを電離させるt2の期間の比率が大きくなり、生産性が向上する傾向にある。一方、Duty比が小さくなるほど、柱状電極に含まれる円筒状基体のチャージアップを緩和するt1の期間の比率が大きくなり、チャージアップを抑制するレベルが大きくなる傾向にある。ただし、アフターグローには寿命があり、アフターグロー中の荷電粒子(イオンや電子)の量にも限りがあるため、Duty比を小さくしてt1の期間を長くしていっても、ある程度の長さでチャージアップを抑制するレベルは変わらなくなる。
【0060】
なお、周波数3kHzのときは、周期Tが333μ秒強となる。このような周波数の低い条件において、Duty比が小さくなり、t1の期間が長くなると、t1の期間の途中でアフターグローが消滅する場合があるが、t1の期間が長い分、t2の期間は短くなり、t2の期間における柱状電極に含まれる円筒状基体のチャージアップの量が小さくなるため、アフターグローの寿命の間で十分にチャージアップを緩和することができる。また、周波数300kHzのときは、周期Tが3.3μ秒強となる。このような周波数が高い条件において、Duty比が大きくなると、t1の期間は短くなるが、周波数が低い場合に比べればt2の期間が短く、t2の期間における柱状電極に含まれる円筒状基体のチャージアップの量が小さいため、十分にチャージアップを緩和することができる。
【0061】
以上、主として、対向電極の電位をアース電位で一定とし、対向電極の電位に対する円筒状基体を含む柱状電極の電位が交互に正と負になるように矩形波の交播電圧を対向電極と柱状電極との間に印加し、対向電極の電位に対する柱状電極の電位が正になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値が放電維持電圧の絶対値未満の値(V1)となり、負になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値が放電開始電圧の絶対値以上の値(V2)となる場合を例にとって、本発明を説明したが、その他の場合も、本発明の条件を満たせば、本発明の効果を得ることができる。その他の場合として、例えば、対向電極の電位をアース電位以外の電位で一定としてもよいし、柱状電極の電位をアース電位またはそれ以外の電位で一定としてもよいし、対向電極の電位および柱状電極の電位のどちらも一定でないようにしてもよい。また、上記正になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値が放電開始電圧の絶対値以上の値(V2)となり、上記負になるときの対向電極と柱状電極の電位差の絶対値が放電維持電圧の絶対値未満の値(V1)となるようにしてもよい。また、柱状電極ではなく、対向電極に円筒状基体が含まれるようにしてもよい。
【0062】
本発明では、円筒状基体上(円筒状基体の外周面)に、プラズマCVD法によって堆積膜を形成して電子写真感光体を製造する。堆積膜としては、例えば、下部電荷注入阻止層、光導電層、上部電荷注入阻止層、表面層などが挙げられ、これらの層を円筒状基体側から順次積層して電子写真感光体を製造することが一般的である。
【0063】
下部電荷注入阻止層は、円筒状基体から光導電層への電荷の注入を抑制(阻止)するための層であり、例えばa−Si系材料により形成される。
【0064】
光導電層は、電子写真感光体にレーザー光などの像露光光を照射することによって電荷を発生させるための層であり、例えばa−Si系材料により形成される。光導電層の膜厚は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上60μm以下であることがより好ましい。
【0065】
上部電荷注入阻止層は、電子写真感光体の表面を帯電した際の電子写真感光体の表面の電荷が光導電層に注入することを抑制(阻止)するための層であり、例えばa−Si系材料により形成される。また、上部電荷注入阻止層の材料は、a−Siに炭素(C)、ホウ素(B)、窒素(N)または酸素(O)を含有させたものが好ましい。上部電荷注入阻止層の膜厚は、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0066】
表面層は、電子写真感光体の表面を摩耗などから保護するための層であり、例えば(水素化)アモルファスシリコンカーバイドや、(水素化)アモルファスシリコンナイトライドや、(水素化)アモルファスカーボンなどにより形成される。表面層は、電子写真感光体に照射される像露光光が吸収されることのないように、像露光光に対して十分広い光学バンドギャップを有していることが好ましい。また、静電潜像を十分に保持しうる抵抗値(好適には1011Ω・cm以上)を有していることが好ましい。
【0067】
電子写真感光体は、例えば、図1に示すプラズマCVD装置を用いることによって製造することができる。
【0068】
図1に示すプラズマCVD装置は、プラズマ処理によって円筒状基体102A、102B上に堆積膜を形成するための円筒状の反応容器101を備えている。また、円筒状基体102A、102Bを保持する基体ホルダー103A、103B、反応容器101の内部に堆積膜形成用の原料ガスを供給するためのガスブロック122を備えている。ガスブロック122は、対向電極104から取り外し可能(着脱可能)な構造となっている。
【0069】
ガスブロック122とガス供給系との接続は、継ぎ手部材(不図示)を介して接続されている。このような構成とすることで、ガスブロックのみを入れ替えて品種ごとの製造に対応した構成の反応容器に段取り換えができる。
【0070】
ガスブロック122は、反応容器101に取り付けられた状態で対向電極104の一部となる。ガスブロック122は、対向電極104の他の部分と同電位になるように反応容器101に取り付けられることが好ましい。このことにより、ガスブロック122を含めた反応容器101内の側壁面全体が電極となり、より均一なプラズマを生成することができる。ガスブロック122の材質は、導電性の金属であることが好ましく、加工の容易性やコストの観点から、アルミニウム、ステンレス鋼がより好ましい。
【0071】
また、ガスブロック122の取り付け方法としては、例えば、導電性のネジで固定する方法が挙げられる。
ガスブロック122の形状に関しては、対向電極104の他の部分の内面との段差が少なくなる形状が好ましい。また、対向電極104の他の部分の内面と同じ面をなすガスブロック122の面(ガス放出孔側の面)は平面でもよいが、対向電極104のその他の内面が曲面である場合、それと同じ曲率を持つ曲面であることが好ましい。
【0072】
ガスブロック122のガス放出孔の直径は、0.5〜2.0mmの範囲であることが好ましい。さらに、各ガス放出孔の精度は、直径の±20%以内の精度であることが好ましい。ガス放出孔の精度によっては、堆積膜の軸方向の特性のムラのみならず、円筒状基体を回転させながら堆積膜を形成する場合、堆積膜の周方向の特性のムラを引き起こす場合もある。
【0073】
ガスブロック122のガス放出孔の近傍の材質には、絶縁性セラミックを使用することもできるが好ましい。堆積膜形成条件によっては、ガスの流れ(突出圧力)の影響で、ガス放出孔の近傍にプラズマが集中しやすい状態になる場合があるため、これを抑制するうえで絶縁性セラミックの使用は効果的である。ガスブロック122を対向電極104から取り外しが可能(脱着可能)な構造とすることにより、ガスブロック単体で加工が行えるので、管状のセラミック部品をガス放出孔の近傍に埋め込む加工も容易に行える。セラミックス材料として、例えば、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コージェライト、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが好ましく、コストおよび加工性の観点から、アルミナがより好ましい。
【0074】
反応容器101内には、対向電極104、ベースプレート108および上蓋109により減圧可能な空間(放電空間)が形成されている。対向電極104は、一定の電圧にすることが好ましく、アース電位にする(接地する)ことがより好ましい。対向電極104を一定の電位とすることで、対向電極104と反応容器101中の他の部分との電位差を一定に保つことができるため、製造する電子写真感光体の特性の再現性が向上する。さらに、対向電極104を接地することで、プラズマCVD装置の取り扱いが容易になる。なお、ベースプレート108、上蓋109を接地しない場合には、対向電極104とベースプレート108、上蓋109との間に絶縁性の部材を設けることが好ましい。図1に示すプラズマCVD装置においては、対向電極104、ベースプレート108および上蓋109のいずれも接地した。
【0075】
また、図1に示すプラズマCVD装置は、原料ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラー(不図示)を内包する原料ガス混合装置114と原料ガス流入バルブ113を備えている。
【0076】
円筒状基体102A、102Bを保持する基体ホルダー103A、103Bは回転可能に支持されている。この回転支持機構は、回転支軸を兼ねた電力供給端子111Bと、電力供給端子111Bと歯車で接続されたモーター110とを有している。
【0077】
図1に示すプラズマCVD装置は、排気系として、反応容器101の排気口に連通された排気配管115と、排気メインバルブ116と、真空ポンプ117とを有している。真空ポンプとしては、例えば、ロータリーポンプ、メカニカルブースターポンプなどが挙げられる。この排気系により、反応容器101に設けられた真空計112を見ながら、反応容器101内を所定の圧力に維持することができる。
【0078】
電源118および電力供給経路切り替え部119は、制御部121によってその動作が制御される。制御部121は、電源118を制御することにより、柱状電極106と対向電極104との間に周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を印加可能に構成されている。また、制御部121は、電力供給経路切り替え部119を制御することにより、電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給と、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給とを切り替え可能に構成されている。
【0079】
図1に示すプラズマCVD装置において、柱状電極106は、円筒状基体102A、102Bおよび基体ホルダー103A、103Bによって構成されており、柱状電極106は、電力供給端子111A、111Bを経由して電源118と接続されている。また、電力供給端子111A、111Bは、絶縁部材105A、105Bによって上蓋109およびベースプレート108から絶縁されている。
【0080】
円筒状基体102A、102Bに対して堆積膜を形成するための放電空間は、接地された対向電極104および接地されたベースプレート108に取り付けた絶縁板107Bと、接地された上蓋109に取り付けた絶縁板107Aとによって規定されている。
【0081】
以下、図1に示すプラズマCVD装置を用いた電子写真感光体の製造方法の一例について説明する。
旋盤などを用いて表面に鏡面加工を施した円筒状基体102A、102Bを、基体ホルダー103A、103Bに装着し、反応容器101内の円筒状基体加熱用のヒーター(不図示)を包含するように取り付ける。円筒状基体102A、102Bおよび基体ホルダー103A、103Bによって柱状電極106が構成される。
【0082】
次に、ガス供給装置内の排気を兼ねて、原料ガス流入バルブ113を開き、排気メインバルブ116を開いて、反応容器101およびガスブロック122内を排気する。真空計112の読みが所定の圧力(例えば0.67Pa以下)になった時点で、加熱用の不活性ガス(例えばアルゴンガス)をガスブロック122から反応容器101に導入する。そして、反応容器101内が所定の圧力になるように加熱用の不活性ガスの流量、排気メインバルブ116の開口、真空ポンプ117の排気速度などを調整する。その後、温度コントローラー(不図示)を作動させて、円筒状基体102A、102Bを円筒状基体加熱用のヒーター(不図示)により加熱し、円筒状基体102A、102Bの温度を所定の温度(例えば20〜500℃)に制御する。円筒状基体102A、102Bが所定の温度に加熱されたところで、不活性ガスを徐々に止める。これと並行して、堆積膜(アモルファス膜)形成用の原料ガス(例えば、SiH、Siなどの水素化ケイ素ガスや、CH、Cなどの炭化水素ガスなど。少なくとも1種は水素化ケイ素ガスあることが好ましい。)を、また、ドーピングガス(例えば、B、PHなど)を、原料ガス混合装置114より混合した後に、反応容器101内に徐々に導入する。次に、原料ガス混合装置114内のマスフローコントローラー(不図示)によって、各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器101内が所定の圧力(例えば1〜100Pa)に維持されるように真空計112を見ながら、排気メインバルブ116の開口、真空ポンプ117の排気速度などを調整する。
【0083】
以上の手順によって堆積膜形成の準備を完了した後、円筒状基体102A、102B上に堆積膜の形成を行う。具体的には、反応容器101内の圧力(反応容器内の圧力を、以下単に「内圧」とも表記する。)が安定したのを確認した後、電源118を所定の電圧に設定して、制御部121で所定の周波数およびDuty比に設定する。これにより、電力供給端子111Aまたは電力供給端子111Bを経由して柱状電極106と対向電極104との間に矩形波の電圧を印加して、グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器101内に導入した各原料ガスが分解され、円筒状基体102A、102B上に所定の堆積膜が形成される。そして、堆積膜形成中、少なくとも1回は、制御部121によって電力供給経路切り替え部119を制御し、電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給と、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給との切り替えを行う。また、堆積膜の形成を行っている間は、円筒状基体102A、102Bをモーター110によって所定の速度で回転させてもよい。
【0084】
所望の膜厚の堆積膜の形成を行った後、交播電圧の印加を止め、反応容器101への各原料ガスの流入を止めて、反応容器内を一旦高真空になるように排気する。上記のような操作を繰り返し行うことによって、電子写真感光体を製造することができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0086】
〈実施例1および比較例1〉
実施例1および比較例1では、波形が図4に示す矩形波であり、周波数が60kHzであり、Duty比が50%である交播電圧を使用し、光導電層の堆積膜の形成時の電力供給経路の切り替えに対する電子写真特性の依存性を調べた。
【0087】
図1に示すプラズマCVD装置を用いて、円筒状基体(直径84mm、長さ381mm、厚さ3mmの鏡面加工を施したアルミニウム製の円筒状基体)上に表1に示す条件で堆積膜を形成し、電子写真感光体を製造した。その際、下部注入阻止層、光導電層、上部注入阻止層、表面層の順に堆積膜の形成を行った。放電開始電圧および放電維持電圧は、表1に示すとおりであった。
【0088】
表1における電力供給経路切り替え回数とは、供給経路切り替え部119により、電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給と、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給との切り替えが行われた回数である。また、電力供給経路の切り替えは、等分間隔となるタイミングで、対向電極104と柱状電極106の電位差が放電維持電圧の絶対値以上であるときに行った。
【0089】
各層の堆積膜形成時の電力供給経路の切り替え回数については、表2に示す条件とした。
1例当たり1バッチ、1バッチ当たり2本の電子写真感光体を、5バッチ(5例)で計40本製造した。
【0090】
放電開始電圧(負電位)および放電維持電圧(正電位)は、あらかじめ、それぞれの層の堆積膜を形成する際の反応容器内の圧力およびガス条件で、前述した方法により測定した値である。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
実施例1および比較例1で製造したそれぞれ10本の電子写真感光体を以下の方法で評価した。評価結果を表3に示す。
【0094】
(膜厚均一性)
電子写真感光体の膜厚を以下の測定点で測定した。
電子写真感光体の軸方向の中央部位置を0cm位置とし、両側それぞれ2cm間隔で各9点(±2cm、±4cm、±6cm、±8cm、±10cm、±12cm、±14cm、±16cm、±18cm)、0cm位置を含めて計19点とし、各軸方向位置において周方向に30°間隔で12点、計228点を測定位置とした。各測定点の膜厚の最大値と最小値の差分を平均膜厚で除した値を膜厚均一性とした。
【0095】
測定は、HELMUTFISCHER社製のFISCHERSCOPEmms(商品名)にプローブETA3.3Hを装着して、渦電流法で行った。値が小さいほど、膜厚均一性が良好である。
【0096】
なお、各実施例および比較例の膜厚均一性の値は、それぞれ10本の電子写真感光体の値の平均値を採用した。
膜厚均一性が2.0%以上では、膜厚ムラが大きく、本発明の効果が得られていないと判断した。
【0097】
(画像欠陥)
画像欠陥については、以下のように評価した。
【0098】
製造した電子写真感光体をマイナス帯電、反転現像方式に改造したキヤノン株式会社製の複写機(商品名:iRC6800)の改造機に設置した。また、この複写機の黒色用現像器を外し、表面電位計(Trek社製の表面電位計(商品名:Model344)およびプローブ(商品名:Model555−P))を設置して、電子写真感光体の表面電位の測定を行った。
【0099】
まず、ベタ白画像(静電潜像形成用レーザー非露光)を出力し、電子写真感光体の表面の暗部電位を測定し、一次帯電器の一次電流とグリッド電圧を調整して、電子写真感光体の表面の暗部電位が−450Vになるように調整した。
【0100】
画像欠陥を厳しく評価するために、ポチが出やすくなる条件で画像を出力した。具体的には、シアン色の現像条件のDCバイアス条件を調整して、かぶり(現像操作によって本来非画像部となるべき部分にトナーが付着する現象)が生じている画像を出力した。画像出力の際の現像は、シアントナーを用いた現像器のみでの現像とした。
【0101】
以下の手順により、かぶり濃度の測定を行い、かぶり濃度が0.4〜0.8%の範囲になる現像条件で出力したものを評価用画像とした。評価用画像の反射率を測定し、さらに未使用の紙の反射率を測定した。評価用画像の反射率の値を未使用の紙の反射率の値から引いてかぶり濃度とした。反射率は、東京電色製の白色光度計(商品名:TC−6DS)にアンバーのフィルターを装着して測定した。
【0102】
画像出力は、温度23℃/湿度60%RHの常温常湿環境下で行った。以下も同様である。
出力紙としてキヤノンマーケティングジャパン株式会社の紙A3用紙(商品名:CS−814(81.4g/m))を用い、連続して10枚のベタ白画像(静電潜像形成用レーザー非露光)を出力して、最後の2枚を用いて評価を行った。
【0103】
画像の電子写真感光体の1周分(=紙の搬送方向の先端から約264mm)×画像領域幅292mmの域内にある直径0.05mmの円以上の大きさ(0.05mmの円を重ねたときに円からはみ出る部分があるもの)のポチ(シアン色のポチ)の個数を数えた。
【0104】
評価は、各実施例および比較例のそれぞれ10本の電子写真感光体について、それぞれ2枚の出力画像についてポチの個数を数え、評価数4枚の平均値を計算し、小数点以下は切り上げて整数の値で示した。
【0105】
(光メモリー)
光メモリーについては、以下のように評価した。
製造した電子写真感光体を上記改造機に設置し、電子写真感光体の表面電位の測定を行った。
【0106】
まず、ベタ白画像(静電潜像形成用レーザー非露光)出力動作を行いながら電子写真感光体の表面の暗部電位を測定し、一次帯電器の一次電流とグリッド電圧を調整して、電子写真感光体の表面の暗部電位が−450Vになるように調整した。
【0107】
次に、ベタ黒画像(静電潜像形成用レーザー露光)出力動作を行いながら電子写真感光体の表面の明部電位を測定し、静電潜像形成用レーザーの光量を調整して、電子写真感光体の表面の明部電位が−100Vになるように調整した。
【0108】
上記の帯電設定およびレーザー露光設定に固定し、A3サイズのベタ白画像10枚、A3サイズの電子写真感光体1周分のベタ黒画像(A3の263mm分がベタ黒、それ以外がベタ白の画像)1枚、A3サイズのベタ白画像1枚、計12枚の連続出力動作を行い、その間の表面電位の測定を行った。電子写真感光体の表面電位の測定は、電子写真感光体の軸方向7点(電子写真感光体の軸方向中心を0mmとして±50mm、±100mm、±150mm)で測定した。なお、電子写真感光体の周方向は9°間隔40点のデータを取得した。
【0109】
表面電位の測定の後、各軸方向位置でベタ黒画像出力動作の1周前の暗部電位とベタ黒画像部出力動作の1周後の暗部電位の電子写真感光体の同一周方向位置の電位差を求めた。
【0110】
次いで、各軸方向位置での電位差の平均値を算出し、最も電位差が大きい値を光メモリーと定義した。なお、各実施例および比較例の値は、それぞれ10本の電子写真感光体の値の平均値を採用した。
【0111】
【表3】

【0112】
表3の評価結果からわかるように、電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給と、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことによって、堆積膜の均一性に優れた良好な特性の電子写真感光体を得ることができる。
【0113】
〈実施例2および比較例2〉
図1に示すプラズマCVD装置を図6に示すプラズマCVD装置に変更し、表1に示す条件を表4に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。放電開始電圧および放電維持電圧は、表4に示すとおりであった。光導電層の堆積膜形成時の電力供給経路の切り替え回数については、表5に示す条件とした。
【0114】
製造した各条件10本ずつ、合計40本の電子写真感光体は、実施例1と同様に評価した。評価結果を表6に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
表6の評価結果からわかるように、電力供給端子611Aを経由した柱状電極606への電力の供給と、電力供給端子611Bを経由した柱状電極606への電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことによって、堆積膜の均一性に優れた良好な特性の電子写真感光体を得ることができる。
【0119】
〈実施例3〉
電力供給経路の切り替えを放電開始電圧の絶対値未満であるときに行った以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。下部注入阻止層、上部注入阻止層および表面層の堆積膜形成時の電力供給経路の切り替え回数を1回とし、光導電層の堆積膜形成時の電力供給経路の切り替え回数を10回とした。
製造した10本の電子写真感光体は、実施例1と同様に評価した。評価結果を表7に示す。
【0120】
【表7】

【0121】
〈実施例4〉
電力供給経路の切り替えを放電開始電圧の絶対値未満であるときに行った以外は、実施例2と同様にして電子写真感光体を製造した。下部注入阻止層、上部注入阻止層および表面層の堆積膜形成時の電力供給経路の切り替え回数を1回とし、光導電層の堆積膜形成時の電力供給経路の切り替え回数を10回とした。
製造した10本の電子写真感光体は、実施例1と同様に評価した。評価結果を表8に示す。
【0122】
【表8】

【0123】
表3、表6、表7および表8の評価結果から次のことがわかる。電力供給端子111A、611Aを経由した柱状電極106、606への電力の供給と、電力供給端子111B、611Bを経由した柱状電極106、606への電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことで、堆積膜の均一性に優れた良好な特性の電子写真感光体を得ることができる。また、電力供給経路の切り替えを、対向電極104、604と柱状電極106、606の電位差が放電維持電圧の絶対値以上であるときに行うことにより、画像欠陥が特に少なく、良好な特性の電子写真感光体を得ることができる。
【0124】
〈実施例5〉
表1に示す条件を表9に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。電力供給経路の切り替えは、対向電極104に対する柱状電極106の電位がV2であるときに行った。
【0125】
【表9】

【0126】
表9中のV1は放電維持電圧の絶対値以上の値であるため、正確にはV1ではないが、他の実施例のV1と比較する値であるため、便宜上「V1」と表記している。
製造した10本の電子写真感光体は、実施例1と同様に評価した。評価結果を表10に示す。
【0127】
【表10】

【0128】
〈実施例6〉
表1に示す条件を表11に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。電力供給経路の切り替えは、対向電極104に対する柱状電極106の電位がV2であるときに行った。
【0129】
【表11】

【0130】
表11中のV1は0Vであり、対向電極の電位に対する柱状電極の電位が正にも負にもなっていないため、正確にはV1ではないが、他の実施例のV1と比較する値であるため、便宜上「V1」と表記している。
製造した10本の電子写真感光体は、実施例1と同様に評価した。評価結果を表12に示す。
【0131】
【表12】

【0132】
表3、表10および表12の評価結果から次のことがわかる。電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給と、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことによって、堆積膜の均一性に優れた良好な特性の電子写真感光体を得ることができる。また、対向電極104に対する柱状電極106の電位が交互に正と負になり、対向電極104に対する柱状電極106の電位が正になるときの両者の電位差および負になるときの両者の電位差の一方を放電維持電圧の絶対値未満の値とし、他方を放電開始電圧の絶対値以上の値とすることにより、画像欠陥が特に少なく、良好な特性の電子写真感光体が得られる。
【0133】
〈実施例7〉
表1に示す条件を表13に示す条件に変更し、周波数を表14に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。
【0134】
【表13】

【0135】
【表14】

【0136】
製造した各条件10本ずつ、合計30本の電子写真感光体は、実施例1と同様に評価した。評価結果を表15に示す。
【0137】
【表15】

【0138】
表15の評価結果から次のことがわかる。電力供給端子111Aを経由した柱状電極106への電力の供給と、電力供給端子111Bを経由した柱状電極106への電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことによって、いずれの周波数においても、堆積膜の均一性に優れた良好な特性の電子写真感光体を得ることができる。
【符号の説明】
【0139】
V1 放電維持電圧の絶対値未満の値
V2 放電開始電圧の絶対値以上の値
t1 電極と円筒状基体の電位差の絶対値がV1となっている時間(期間)
t2 電極と円筒状基体の電位差の絶対値がV2となっている時間(期間)
T 矩形波の周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)円筒状基体を含む柱状電極が内部に設置され、前記柱状電極に離間して対向する対向電極を内部に含む減圧可能な反応容器の内部に、堆積膜形成用の原料ガスを導入する工程と、
(ii)電源から前記柱状電極に電力を供給することで、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を前記対向電極と前記柱状電極との間に印加して、前記原料ガスを分解し、前記円筒状基体上に堆積膜を形成する工程と、
を有するプラズマCVD法によって電子写真感光体を製造する方法において、
前記工程(ii)において、前記柱状電極の一方の端部領域を経由する電力の供給と他方の端部領域を経由する電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項2】
(i)柱状電極を内部に含み、前記柱状電極に離間して対向する円筒状基体を含む対向電極が内部に設置された減圧可能な反応容器の内部に、堆積膜形成用の原料ガスを導入する工程と、
(ii)電源から前記柱状電極に電力を供給することで、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を前記対向電極と前記柱状電極との間に印加して、前記原料ガスを分解し、前記円筒状基体上に堆積膜を形成する工程と、
を有するプラズマCVD法によって電子写真感光体を製造する方法において、
前記工程(ii)において、前記柱状電極の一方の端部領域を経由する電力の供給と他方の端部領域を経由する電力の供給との切り替えを少なくとも1回行うことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(ii)において、前記電源から前記柱状電極に電力を供給することで、前記対向電極に対する前記柱状電極の電位が交互に正と負になるように、周波数3kHz以上300kHz以下の矩形波の交播電圧を前記対向電極と前記柱状電極との間に印加し、
前記正になるときの前記対向電極と前記柱状電極の電位差の絶対値および前記負になるときの前記対向電極と前記柱状電極の電位差の絶対値の一方が放電維持電圧の絶対値未満の値であって、他方が放電開始電圧の絶対値以上の値であり、
前記切り替えを前記対向電極および前記柱状電極の一方の電位に対する他方の電位の差の絶対値が放電開始電圧の絶対値以上の値であるときに行う
請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109148(P2013−109148A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253962(P2011−253962)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】