説明

電子写真感光体の製造方法

【課題】支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチが発生しにくい電子写真感光体を提供する。
【解決手段】溶剤、結着材料および下記関係式(i)を満足する金属酸化物粒子を用いて調製された導電層用塗布液を用いて導電層を形成する。金属酸化物粒子が、リンがドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子である。 45≦A×ρ×D≦65・・・(i) A:金属酸化物粒子の単位質量当たりの表面積[m/g] D:金属酸化物粒子の個数平均粒径[μm] ρ:金属酸化物粒子の密度[g/cm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体(有機電子写真感光体)の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
電子写真感光体は、基本的には、支持体と、該支持体上に形成された感光層とから構成される。しかしながら、現状は、支持体の表面の欠陥の隠蔽、感光層の電気的破壊に対する保護、帯電性の向上、支持体から感光層への電荷注入阻止性の改良などのために、支持体と感光層との間には、各種の層が設けられることが多い。
【0004】
支持体と感光層との間に設けられる層の中でも、支持体の表面の欠陥の隠蔽を目的として設けられる層としては、金属酸化物粒子を含有する層が知られている。金属酸化物粒子を含有する層は、一般的に、金属酸化物粒子を含有しない層に比べて導電性が高く(例えば、体積抵抗率で1.0×10〜5.0×1012Ω・cm)、層の膜厚を厚くしても、画像形成時の残留電位の上昇が生じにくい。そのため、支持体の表面の欠陥を被覆することが容易である。このような導電性の高い層(以下「導電層」という。)を支持体と感光層との間に設けて支持体の表面の欠陥を隠蔽することにより、支持体の表面の欠陥の許容範囲は大きくなる。その結果、支持体の使用許容範囲が大幅に広がるため、電子写真感光体の生産性の向上が図れるという利点がある。
【0005】
特許文献1には、支持体と光導電層との間の中間層にリンがドープされている酸化スズ粒子を用いる技術が開示されている。また、特許文献2には、感光層上の保護層にタングステンがドープされている酸化スズ粒子を用いる技術が開示されている。また、特許文献3には、支持体と感光層との間の導電層に酸素欠損型の酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子を用いる技術が開示されている。また、特許文献4には、支持体と感光層との間の中間層に酸化スズで被覆されている硫酸バリウム粒子を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−222600号公報
【特許文献2】特開2003−316059号公報
【特許文献3】特開2007−47736号公報
【特許文献4】特開平06−208238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、上記のような金属酸化物粒子を含有する層を導電層として採用した電子写真感光体を用いて高温高湿環境下で繰り返して画像形成を行うと、支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチが発生しやすくなることが判明した。
【0008】
本発明の目的は、金属酸化物粒子を含有する層を導電層として採用した電子写真感光体であっても、支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチが発生しにくい電子写真感光体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、支持体上に体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下の導電層を形成する工程、および、該導電層上に感光層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法において、
該導電層を形成する工程が、溶剤、結着材料および下記関係式(i)を満足する金属酸化物粒子を用いて導電層用塗布液を調製し、該導電層用塗布液を用いて該導電層を形成する工程であり、
該金属酸化物粒子が、リンがドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子である
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【0010】
45≦A×ρ×D≦65 ・・・(i)
A:該金属酸化物粒子の単位質量当たりの表面積[m/g]
D:該金属酸化物粒子の個数平均粒径[μm]
ρ:該金属酸化物粒子の密度[g/cm
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属酸化物粒子を含有する層を導電層として採用した電子写真感光体であっても、上記関係式(i)を満足する特定な金属酸化物粒子を用いることにより、支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチが発生しにくい電子写真感光体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための図(上面図)である。
【図3】導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法により製造される電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された導電層、該導電層上に形成された感光層を有する電子写真感光体である。感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質を単一の層に含有させた単層型感光層であってもよいし、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光層であってもよい。また、必要に応じて、支持体上に形成される導電層と感光層との間に下引き層を設けてもよい。
【0014】
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属で形成されている金属製支持体を用いることができる。アルミニウムやアルミニウム合金を用いる場合は、押し出し工程および引き抜き工程を含む製造方法により製造されるアルミニウム管や、押し出し工程およびしごき工程を含む製造方法により製造されるアルミニウム管を用いることができる。このようなアルミニウム管は、表面を切削することなく良好な寸法精度や表面平滑性が得られるうえ、コスト的にも有利である。しかしながら、無切削のアルミニウム管の表面にはササクレ状の凸状欠陥が生じやすいため、導電層を設けることが特に有効である。
【0015】
本発明においては、支持体の表面の欠陥の隠蔽を目的として、支持体上には、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下の導電層が設けられる。支持体の表面の欠陥を隠蔽するための層として、体積抵抗率が5.0×1012Ω・cmを超える層を支持体上に設けると、画像形成時に電荷の流れが滞りやすくなり、残留電位が上昇しやすくなる。一方、導電層の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm未満であると、導電層中を流れる電荷の量が多くなりすぎて、支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチが発生しやすくなる。
【0016】
図2および図3を用いて、電子写真感光体の導電層の体積抵抗率を測定する方法を説明する。図2は、導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための上面図であり、図3は、導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための断面図である。
【0017】
導電層の体積抵抗率は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において測定する。導電層202の表面に銅製テープ203(住友スリーエム(株)製、型番No.1181)を貼り、これを導電層202の表面側の電極とする。また、支持体201を導電層202の裏面側の電極とする。銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加するための電源206、および、銅製テープ203と支持体201との間を流れる電流を測定するための電流測定機器207をそれぞれ設置する。また、銅製テープ203に電圧を印加するため、銅製テープ203の上に銅線204を載せ、銅線204が銅製テープ203からはみ出さないように銅線204の上から銅製テープ203と同様の銅製テープ205を貼り、銅製テープ203に銅線204を固定する。銅製テープ203には、銅線204を用いて電圧を印加する。
【0018】
銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加しないときのバックグラウンド電流値をI[A]とし、直流成分のみの電圧を−1V印加したときの電流値をI[A]とし、導電層202の膜厚d[cm]、導電層202の表面側の電極(銅製テープ203)の面積をS[cm]とするとき、下記数式(1)で表される値を導電層202の体積抵抗率ρ[Ω・cm]とする。
ρ=1/(I−I)×S/d[Ω・cm] ・・・(1)
この測定では、絶対値で1×10−6A以下という微小な電流量を測定するため、電流測定機器207としては、微小電流の測定が可能な機器を用いて行うことが好ましい。そのような機器としては、例えば、横河ヒューレットパッカード社製のpAメーター(商品名:4140B)などが挙げられる。
【0019】
なお、導電層の体積抵抗率は、支持体上に導電層のみを形成した状態で測定しても、電子写真感光体から導電層上の各層(感光層など)を剥離して支持体上に導電層のみを残した状態で測定しても、同様の値を示す。
【0020】
本発明において、導電層の形成には、溶剤、結着材料および下記関係式(i)を満足する金属酸化物粒子を用いて調製された導電層用塗布液が用いられる。
45≦A×ρ×D≦65 ・・・(i)
A:該金属酸化物粒子の単位質量当たりの表面積[m/g]
D:該金属酸化物粒子の個数平均粒径[μm]
ρ:該金属酸化物粒子の密度[g/cm
【0021】
導電層用塗布液は、上記関係式(i)を満足する金属酸化物粒子を結着材料とともに溶剤に分散させることによって調製することができる。分散方法としては、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。導電層は、上記のように調製された導電層用塗布液を支持体上に塗布し、これを乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0022】
また、本発明においては、上記金属酸化物粒子として、異元素であるリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(リンドープ酸化スズ被覆酸化チタン粒子)が用いられる。この粒子は、酸化チタン(TiO)粒子を被覆している酸化スズ(SnO)に異元素であるリン(P)がドープされていることにより、粒子の抵抗が制御されている。一般的には、酸化スズ(SnO)にリン(P)をドープすることにより、ドープしていないものに比べて、粒子の抵抗(粉体抵抗率など)を低くすることができる。
【0023】
本発明者らは、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子が、芯材粒子や被覆層が異なる他の金属酸化物粒子(酸素欠損型の酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子や、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている硫酸バリウム(BaSO)粒子など)と比べて、表面が細かく凸凹していることを見出した。その理由の詳細は不明であるが、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子が製造される際、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)の結晶が芯材粒子である酸化チタン(TiO)粒子上において成長していく過程が、他のものとは異なるためと推測される。
【0024】
そして、本発明者らは、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の表面の凸凹に関して、鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の単位質量当たりの比表面積をA[m/g]とし、密度をρ[g/cm]、個数平均粒径をD[μm]としたとき、それらの積であるA×ρ×Dが45以上65以下の範囲にあるものを用いて導電層用塗布液を調製し、この導電層用塗布液を用いて導電層を形成することで、支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチの発生を抑制することができることを見出した。
【0025】
A×ρ×Dが45以上65以下の範囲である場合に、支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチを抑制することができる理由の詳細は不明であるが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0026】
まず、A×ρ×Dの表す意味について説明する。
本発明者らは、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の表面が、他の金属酸化物粒子の表面と比べて、細かく凸凹していることに着目し、この凸凹具合を意味する指標値としてA×ρ×Dを導入した。
【0027】
粒子の密度をρ[g/cm]とし、単位質量当たりの比表面積をA[m/g]とし、個数平均粒径をD[μm]とすると、粒子の単位体積当たりの比表面積は、以下のように求められる。
単位体積当たりの比表面積[m/cm]=単位質量当たりの比表面積A[m/g]×密度ρ[g/cm] ・・・(a)
【0028】
粒子の単位体積当たりの比表面積は、その粒径に反比例する。したがって、上記式(a)にさらに個数平均粒径D[μm]を乗じたA×ρ×Dは、粒子の大きさや密度を考慮したうえでの表面の凸凹具合を表す指標値とみることができる。粒子が真球である場合、A×ρ×Dを求めると必ず6となる。そして、粒子のA×ρ×Dが6より大きな数字であるほど、該球状物体(粒子)は真球に比べてその表面が細かく凸凹していることを表すことになる。
【0029】
金属酸化物粒子を含有する層を導電層として採用した場合、出力画像上の黒ポチの発生メカニズムとしては、画像形成中、導電層中の金属酸化物粒子間を通って電流が流れる際に、局所的な電流の集中が起こり、その部分が出力画像上の黒ポチとなって現れると考えられる。表面の凸凹が細かい金属酸化物粒子を用いて形成された導電層の場合、金属酸化物粒子間を通って電流が流れていく際に、平滑な表面の金属酸化物粒子を用いて形成された導電層の場合に比べて、その凸凹による表面積の増大に応じて導電パスが増大する。その結果、局所的な電流の集中を抑制する効果が発現し、出力画像上の黒ポチの発生が抑制されるものと推測される。
【0030】
本発明に用いられる、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子は、芯材粒子である酸化チタン(TiO)粒子上に、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)の結晶が細かく成長して、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)の被覆層をなしている。そのため、表面の凹凸が細かくなっている粒子が得られやすい。それに比べて、酸素欠損型の酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子や、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている硫酸バリウム粒子では、芯材粒子上に酸化スズ(SnO)の結晶が細かく成長しにくいため、それら粒子の表面の凹凸は、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の表面に比べて粗くなる。
【0031】
以上のとおり、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子は、他の金属酸化物粒子の表面と比べて表面が細かく凸凹している粒子である。ただし、支持体から感光層への局所的な電荷注入による出力画像上の黒ポチの発生を抑制するためには、そのようなリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の中でも、特に表面が細かく凸凹しているものを用いる必要がある。具体的には、凸凹具合を意味するA×ρ×Dで表したときに、45以上のもの(45≦A×ρ×D)を用いる必要がある。
【0032】
一方、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の中でも、A×ρ×Dが65より大きいものを用いた場合、粒子の表面の凹凸が細かすぎて、その表面の凹凸が導電層用塗布液の調製の際において維持されにくくなる。その結果、芯材粒子上のリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で形成されている被覆層が破壊されたり、導電層用塗布液における粒子の分散状態が不安定になったりするため、黒ポチの発生を抑制する効果が不十分となるため、A×ρ×Dが65以下(A×ρ×D≦65)のものを用いる必要がある。特に、A×ρ×Dが55以下(A×ρ×D≦55)のものが好ましい。
【0033】
リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子のA×ρ×Dを制御するためには、例えば、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子における酸化スズ(SnO)の割合(被覆率、被覆層の厚さ)や、個数平均粒径Dや、焼成条件を調整すればよい。被覆率とは、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子における酸化スズ(SnO)の割合である。被覆層の厚さとは、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)の被覆層の厚さである。また、焼成条件としては、焼成温度、焼成時間が挙げられる。被覆率、被覆層の厚さが大きくなるほど、酸化チタン(TiO)(芯材粒子)の表面に形成される被覆層中の酸化スズ(SnO)が重なり合い、粒子の表面の凸凹がより細かくなるため、A×ρ×Dが大きくなる。また、焼成温度が低いほど、粒子の表面の凸凹が細かくなりやすいため、A×ρ×Dが大きくなり、逆に、焼成温度が高いほど、A×ρ×Dが小さくなる。また、焼成時間が短いほど、粒子の表面の凸凹が細かくなりやすいため、A×ρ×Dが大きくなり、逆に、焼成時間が長いほど、A×ρ×Dが小さくなる。
【0034】
酸化スズ(SnO)の被覆率、被覆層の厚さを制御するためには、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子を製造するときに、酸化スズ(SnO)を生成するのに必要なスズ原材料を配合する必要がある。例えば、スズ原材料として塩化スズ(SnCl)を用いる場合、塩化スズ(SnCl)から生成される酸化スズ(SnO)の量を考慮した仕込みである必要がある。なお、本発明においては、酸化スズ(SnO)にリン(P)がドープされているが、被覆率は、酸化スズ(SnO)にドープされているリン(P)の質量を考慮に入れず、酸化スズ(SnO)と酸化チタン(TiO)の合計質量に対する酸化スズ(SnO)の質量により計算した値とする。被覆率は、10〜60質量%であることが好ましい。酸化スズ(SnO)の被覆率が10質量%より小さい場合、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で酸化チタン(TiO)粒子(芯材粒子)の表面の全体を被覆しにくくなる。被覆率が60質量%より大きい場合、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)による酸化チタン(TiO)粒子(芯材粒子)の被覆が不均一になりやすく、また、高コストになりやすい。被覆層の厚さは、5〜40nmであることが好ましい。
【0035】
酸化スズ(SnO)にドープされるリン(P)の量は、酸化スズ(SnO)(リン(P)を含まない質量)に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。酸化スズ(SnO)にドープされるリン(P)の量が0.1質量%より少ない場合、粒子の粉体抵抗率を十分に下げることが難しくなり、導電層の体積抵抗率を5.0×1012Ω・cm以下に調整しにくくなる。酸化スズ(SnO)にドープされるリン(P)の量が10質量%より多い場合、酸化スズ(SnO)の結晶性が低下する傾向にある。一般的には、酸化スズ(SnO)にリン(P)をドープすることにより、ドープしていないものに比べて、粒子の粉体抵抗率を低くすることができる。
【0036】
なお、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の製造方法は、特開平06−207118号公報、特開2004−349167号公報、WO2005/008685号公報にも開示されている。
【0037】
リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の個数平均粒径D[μm]は、0.10μm以上0.30μm以下(0.10≦D≦0.30)であることが好ましく、0.13μm以上0.25μm以下(0.13≦D≦0.25)であることがより好ましい。個数平均粒径D[μm]が小さすぎると、導電層用塗布液においてリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の再凝集が起こり、導電層用塗布液の安定性が悪化したり、形成される導電層の表面にクラックが発生したりすることがある。一方、個数平均粒径D[μm]が大きすぎると、形成される導電層の表面が粗くなりやすくなる。
【0038】
本発明において、金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)の個数平均粒径D[μm]は、走査型電子顕微鏡を用いて、以下のようにして求めた。(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡(商品名:S−4800)を用いて測定対象の粒子を観察し、観察して得られた画像から、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子100個の個々の粒径を測定し、それらの算術平均を算出して個数平均粒径D[μm]とした。個々の粒径は、一次粒子の最長辺をaとし、最短辺をbとしたときの(a+b)/2とした。
【0039】
本発明において、金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)の単位質量当たりの比表面積A[m/g]は、BET法を用いて、以下のようにして求めた。(株)島津製作所製の比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375Ver.5.0)を用いて測定対象の粒子の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて、単位質量当たりの比表面積(BET比表面積)A[m/g]を算出した。
【0040】
本発明において、金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)の密度ρ[g/cm]は、乾式自動密度計を用いて、以下のようにして求めた。(株)島津製作所製の乾式自動密度計(商品名:Accupyc1330)を用い、容積10cmの容器を用い、測定対象の粒子の前処理としてヘリウムガスパージを最高圧19.5psigで10回行った。この後、容器内圧力が平衡に達したか否かの圧力平衡判定値として、試料室内の圧力の振れが0.0050psig/minを目安とし、この値以下であれば平衡状態とみなして測定を開始し、密度ρ[g/cm]を自動測定した。
【0041】
導電層用塗布液の調製に用いられる結着材料としては、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステルなどの樹脂が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。また、これらの樹脂の中でも、他層へのマイグレーション(溶け込み)の抑制、支持体への密着性、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の分散性・分散安定性、層形成後の耐溶剤性などの観点から、硬化性樹脂が好ましく、さらに、熱硬化性樹脂がより好ましい。また、熱硬化性樹脂の中でも、熱硬化性のフェノール樹脂、熱硬化性のポリウレタンが好ましい。導電層の結着材料として硬化性樹脂を用いる場合、導電層用塗布液に含有させる結着材料は、該硬化性樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとなる。
【0042】
導電層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールや、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノンなどのケトンや、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルや、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステルや、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
【0043】
また、本発明において、導電層用塗布液における金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)(P)と結着材料(B)の質量比(P/B)は、1.5/1.0以上3.5/1.0以下であることが好ましい。金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)(P)と結着材料(B)の質量比(P/B)が1.5/1.0未満である場合、導電層の体積抵抗率を5.0×1012Ω・cm以下に調整しにくくなる。金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)(P)と結着材料(B)の質量比(P/B)が3.5/1.0を超える場合、導電層の体積抵抗率を1.0×10Ω・cm以上に調整しにくくなり、また、金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)の結着が難しくなり、導電層にクラックが発生しやすくなる。
【0044】
導電層の膜厚は、支持体の表面の欠陥を隠蔽するという観点から、10μm以上40μm以下であることが好ましく、15μm以上35μm以下であることがより好ましい。
【0045】
なお、本発明においては、導電層を含む電子写真感光体の各層の膜厚の測定装置として、(株)フィッシャーインストルメンツ製のFISCHERSCOPE MMSを用いた。
【0046】
また、導電層の表面で反射した光が干渉して出力画像に干渉縞が発生することを抑制するため、導電層用塗布液には、導電層の表面を粗面化するための表面粗し付与材を含有させてもよい。表面粗し付与材としては、平均粒径が1μm以上5μm以下の樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子としては、例えば、硬化性ゴム、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル−メラミン樹脂などの硬化性樹脂の粒子が挙げられる。これらの中でも、凝集しにくいシリコーン樹脂の粒子が好ましい。樹脂粒子の比重(0.5〜2)は、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子の比重(4〜7)に比べて小さいため、導電層形成時に効率的に導電層の表面を粗面化することができる。ただし、導電層中の表面粗し付与材の含有量が多いほど、導電層の体積抵抗率が上昇する傾向にあるため、導電層の体積抵抗率を5.0×1012Ω・cm以下に調整するためには、導電層用塗布液における表面粗し付与材の含有量は、導電層用塗布液中の結着材料に対して1〜80質量%であることが好ましい。
【0047】
また、導電層用塗布液には、導電層の表面性を高めるためのレベリング剤を含有させてもよい。また、導電層用塗布液には、導電層の隠蔽性を向上させるための顔料粒子を含有させてもよい。
【0048】
導電層と感光層との間には、導電層から感光層への電荷注入を阻止するために、電気的バリア性を有する下引き層(バリア層)を設けてもよい。
【0049】
下引き層は、樹脂(結着樹脂)を含有する下引き層用塗布液を導電層上に塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0050】
下引き層に用いられる樹脂(結着樹脂)としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリグルタミン酸、カゼイン、でんぷんなどの水溶性樹脂や、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリグルタミン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、下引き層の電気的バリア性を効果的に発現させるためには、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の中でも、熱可塑性のポリアミドが好ましい。ポリアミドとしては、共重合ナイロンが好ましい。
【0051】
下引き層の膜厚は、0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。
【0052】
また、下引き層において電荷の流れが滞らないようにするために、下引き層には、電子輸送物質(アクセプターなどの電子受容性物質)を含有させてもよい。電子輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質や、これらの電子吸引性物質を高分子化したものなども挙げられる。
【0053】
導電層(下引き層)上には、感光層が設けられる。
【0054】
感光層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料や、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドなどのペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノンなどの多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩およびチアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、シアニン染料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素などが挙げられる。これらの中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンが好ましい。
【0055】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂とともに溶剤に分散させることによって得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いた方法が挙げられる。
【0056】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ブチラール樹脂、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン、スチレン−ブタジエン共重合体、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらは、単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0057】
電荷発生物質と結着樹脂との割合(電荷発生物質:結着樹脂)は、10:1〜1:10(質量比)の範囲が好ましく、5:1〜1:1(質量比)の範囲がより好ましい。
【0058】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などが挙げられる。
【0059】
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0060】
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質(アクセプターなどの電子受容性物質)を含有させてもよい。電子輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質や、これらの電子吸引性物質を高分子化したものなども挙げられる。
【0061】
感光層に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリルメタン化合物などが挙げられる。
【0062】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0063】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリフェニレンオキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アルキド樹脂、不飽和樹脂などが挙げられる。これらは、単独、混合物または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0064】
電荷輸送物質と結着樹脂との割合(電荷輸送物質:結着樹脂)は、2:1〜1:2(質量比)の範囲が好ましい。
【0065】
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンや、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステルや、ジメトキシメタン、ジメトキシエタンなどのエーテルや、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン原子で置換された炭化水素などが挙げられる。
【0066】
電荷輸送層の膜厚は、帯電均一性や画像再現性の観点から、3μm以上40μm以下であることが好ましく、4μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0067】
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
【0068】
感光層が単層型の感光層である場合、単層型の感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂および溶剤を含有する単層型の感光層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂および溶剤は、例えば、上記の各種のものを用いることができる。
【0069】
また、感光層上には、感光層を保護することを目的として、保護層を設けてもよい。
【0070】
保護層は、樹脂(結着樹脂)を含有する保護層用塗布液を塗布し、これを乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0071】
保護層の膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上8μm以下であることがより好ましい。
【0072】
上記各層用の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0073】
図1に、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0074】
図1において、1はドラム状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0075】
回転駆動される電子写真感光体1の周面は、帯電手段(一次帯電手段、帯電ローラーなど)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。帯電手段3に印加する電圧は、直流電圧のみであってもよいし、交流電圧を重畳した直流電圧であってもよい。
【0076】
電子写真感光体1の周面に形成された静電潜像は、現像手段5のトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の周面に形成されたトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに転写される。転写材Pは、電子写真感光体1の回転と同期して転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送されてくる。
【0077】
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0078】
トナー像転写後の電子写真感光体1の周面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りのトナーの除去を受ける。さらに、電子写真感光体1の周面は、前露光手段(不図示)からの前露光光11により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が帯電ローラーなどの接触帯電手段である場合には、前露光は必ずしも必要ではない。
【0079】
上述の電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などから選択される少なくとも1つの構成要素とを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持し、このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。また、電子写真装置は、上述の電子写真感光体1、ならびに、帯電手段3、露光手段、現像手段5および転写手段6を有する構成としてもよい。
【実施例】
【0080】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。実施例中で使用したリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子中の酸化チタン(TiO)粒子(芯材粒子)は、すべて球状のものである。
【0081】
〈導電層用塗布液の調製例〉
導電層用塗布液1〜81では、被覆率が10〜60質量%の、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子を用いた。
【0082】
(導電層用塗布液1の調製例)
金属酸化物粒子としてのリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(被覆率:30質量%、単位質量当たりの表面積A:87.5m/g、個数平均粒径D:0.10μm、密度ρ:4.7g/cm、A×ρ×D=41)220部、結着材料としてのフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)122部、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:3時間の条件で分散処理を行い、分散液を得た。
【0083】
この分散液からメッシュでガラスビーズを取り除いた後、分散液に表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(旧・GE東芝シリコーン(株))製、平均粒径:2μm)13.8部、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)(旧・東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))製)0.014部、メタノール6部、および、1−メトキシ−2−プロパノール6部を添加して攪拌することによって、導電層用塗布液1を調製した。
【0084】
(導電層用塗布液2〜81およびC1〜C60の調製例)
導電層用塗布液の調製の際に用いた金属酸化物粒子の種類および量ならびに結着材料としてのフェノール樹脂の量を、それぞれ表1〜5に示すようにした以外は、導電層用塗布液1の調製例と同様の操作で、導電層用塗布液2〜81およびC1〜C60を調製した。
【0085】
〈電子写真感光体の製造例〉
(電子写真感光体1の製造例)
押し出し工程および引き抜き工程を含む製造方法にて製造された、長さ246mm、直径24mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体とした。
【0086】
常温常湿(23℃/60%RH)環境下で、導電層用塗布液1を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間140℃で乾燥および熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層1を形成した。導電層1の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、1.0×10Ω・cmであった。
【0087】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)(旧・帝国化学産業(株))製)4.5部および共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)1.5部を、メタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶剤に溶解させることによって、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを6分間70℃で乾燥させることによって、膜厚が0.85μmの下引き層を形成した。
【0088】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)10部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、分散処理時間:3時間の条件で分散処理を行い、次に、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.12μmの電荷発生層を形成した。
【0089】
次に、下記式(CT−1)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)4.8部および下記式(CT−2)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)3.2部、
【化1】

【化2】

ならびに、ポリカーボネート(商品名:Z200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部を、ジメトキシメタン30部/クロロベンゼン70部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを30分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が8.0μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして、電子写真感光体1を製造した。
【0090】
(電子写真感光体2〜81およびC1〜C60の製造例)
電子写真感光体の製造の際に用いた導電層用塗布液を、導電層用塗布液1から、それぞれ導電層用塗布液2〜81、C1〜C60に変更した以外は、電子写真感光体1の製造例と同様の操作で、電子写真感光体2〜81およびC1〜C60を製造した。なお、電子写真感光体2〜81およびC1〜C60の導電層の体積抵抗率に関しても、電子写真感光体1の導電層と同様、前述の方法で測定した。その結果を表1〜5に示す。表1〜5中、酸化スズは「SnO」であり、酸化チタンは「TiO」である。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【0096】
(実施例1〜63、参考例1〜18および比較例1〜60)
電子写真感光体1〜81およびC1〜C60を、それぞれヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンター(商品名:Laserjet P1006)に装着して、高温高湿(32.5℃/80%RH)環境下にて通紙耐久試験を行い、画像の評価を行った。通紙耐久試験では、印字率2%の文字画像をレター紙にて1枚ずつ出力する間欠モードでプリント操作を行い、2200枚の画像出力を行った。その後、本レーザービームプリンター用のトナーを補給し、さらに1100枚の画像出力(合計3300枚)を行った。
【0097】
そして、通紙耐久試験開始時、ならびに、700枚画像出力終了時、1400枚画像出力終了時、2200枚画像出力終了後および3300枚画像出力終了後に各1枚の画像評価用のサンプル(1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像)を出力した。
【0098】
出力されたハーフトーン画像から、電子写真感光体1回転分に相当する画像上の欠陥(黒ポチ)の個数および大きさを肉眼およびルーペで確認し、確認された黒ポチの個数および大きさに基づいて、以下のような基準で画像の評価を行った。結果を表6〜10に示す。
A:黒ポチの数が0個。
B:直径0.4mm未満の黒ポチが1〜3個かつ直径0.4mm以上の黒ポチが0個。
C:直径0.4mm未満の黒ポチが4〜7個。または、直径0.4mm未満の黒ポチが0〜3個かつ直径0.4mm以上の黒ポチが1個。
D:直径0.4mm未満の黒ポチが8個以上。または、直径0.4mm未満の黒ポチが0〜7個かつ直径0.4mm以上の黒ポチが2個以上。
【0099】
また、上記の通紙耐久試験を行った電子写真感光体1〜81およびC1〜C60とは別に、もう1つずつ電子写真感光体1〜81およびC1〜C60を用意し、低温低湿(15℃/10%RH)環境下にて上記と同様の通紙耐久試験を行い、通紙耐久試験開始時ならびに2200枚画像出力終了後に、帯電電位(暗部電位)と露光時の電位(明部電位)を測定した。電位測定は、白ベタ画像と黒ベタ画像を各1枚ずつ用いて行った。初期(通紙耐久試験開始時)の暗部電位をVd、初期(通紙耐久試験開始時)の明部電位をVlとした。2200枚画像出力終了後の暗部電位をVd’、2200枚画像出力終了後の明部電位をVl’とした。2200枚画像出力終了後の暗部電位をVd’と初期の暗部電位Vdとの差である暗部電位変動量△Vd(=|Vd’|−|Vd|)と、2200枚画像出力終了後の明部電位をVl’と初期の明部電位Vlとの差である明部電位変動量△Vl(=|Vl’|−|Vl|)とをそれぞれ求めた。結果を表6〜10に示す。
【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
【表8】

【0103】
【表9】

【0104】
【表10】

【符号の説明】
【0105】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段(一次帯電手段)
4 露光光(画像露光光)
5 現像手段
6 転写手段(転写ローラーなど)
7 クリーニング手段(クリーニングブレードなど)
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
11 前露光光
P 転写材(紙など)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下の導電層を形成する工程、および、該導電層上に感光層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法において、
該導電層を形成する工程が、溶剤、結着材料および下記関係式(i)を満足する金属酸化物粒子を用いて導電層用塗布液を調製し、該導電層用塗布液を用いて該導電層を形成する工程であり、
該金属酸化物粒子が、リンがドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子である
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
45≦A×ρ×D≦65 ・・・(i)
A:該金属酸化物粒子の単位質量当たりの表面積[m/g]
D:該金属酸化物粒子の個数平均粒径[μm]
ρ:該金属酸化物粒子の密度[g/cm
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が、0.13≦D≦0.25を満足する請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子が、45≦A×ρ×D≦55を満足する請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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