説明

電子写真感光体用塗布液の検査方法、管理方法および電子写真感光体の製造方法

【課題】電子写真感光体用塗布液の固形分濃度や混合溶媒の混合比率を、リアルタイムでかつ正確に測定できる電子写真感光体用塗布液の検査方法と、電子写真感光体用塗布液を所定の組成に調整、管理することのできる管理方法と、かかる電子写真感光体形成用塗布液の検査方法および管理方法を用いた電子写真感光体の製造方法と、を提供すること。
【解決手段】少なくとも2種以上の溶媒と、固形分とからなる電子写真感光体用塗布液の粘度および密度を、インライン分析により測定し、上記塗布液の粘度および密度の測定値に基づいて、上記塗布液の組成を検査し、さらに、かかる検査方法により得られた粘度および密度の測定値に基づいて、上記塗布液の組成を調整、管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体形成用塗布液の検査方法および管理方法と、その検査方法および管理方法により検査および管理された電子写真感光体用塗布液を用いる電子写真感光体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電式複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンタおよびこれらの機能を複合化したデジタル画像複合機などの電子写真装置に用いられる電子写真感光体(以下、単に「感光体」という場合がある。)は、有機材料を使用する有機感光体が主流である。
有機感光体は、一般に、導電性基体上に、下引き層、感光層、保護層などの各種の層を備えており、これらの層は、通常、各層に必要な成分が適切な溶媒に溶解または分散された塗布液を、導電性基体上に順次塗布し、乾燥させることにより、形成されている。
【0003】
また、近年、有機感光体の製造方法としては、上記塗布液が収容された塗布槽に導電性基体を浸漬し、乾燥させることにより、導電性基体上に感光層などの層を形成する、いわゆる浸漬塗布法が、採用されつつある。
しかし、浸漬塗布法では、導電性基体を浸漬させるために、上記塗布液を収容する塗布槽が開放系であることから、上記塗布液からの溶媒の揮散によって、経時的に上記塗布液の組成変化を生じることがある。また、上記塗布液の組成変化に伴って、導電性基体上に形成される感光層などの物性(例えば、厚み、硬さ、含有成分の濃度など。)にムラが生じ、有機感光体の品質が低下するおそれがある。
【0004】
一方、特許文献1には、熱分解ガスクロマトグラフィにより塗布液中の分析対象成分のピーク面積比を求め、成分比率および水分含有量が既知である塗布液中の分析対象成分のピーク面積比と比較して、上記塗布液中の分析対象成分の比率および/または水分含有量を求めることを特徴とする、電子写真感光体用塗布液の検査方法が記載されている。
特許文献2には、基体を塗料液中に浸漬することにより、基体上に皮膜を形成する電子写真感光体の製造方法において、塗料液の粘度を随時測定し、その測定値と設定値との偏差値に応じて塗料液の溶媒を添加し、塗料液の粘度を所定値に制御する方法が記載されており、塗料液の粘度の測定機器として、回転式粘度計、落球式粘度計、ねじれ式粘度計などのオンライン計測用機器が記載されている。
【0005】
特許文献3には、塗布液に被塗布物を浸漬し、薄膜を形成する薄膜形成装置において、塗布液貯蔵タンク内での塗布液の濃度変化を比重計により検出する液濃度検出手段が記載されている。
また、特許文献4には、塗工槽中に導電性支持体を浸漬し、光導電性塗料を塗布する電子写真感光体の製造装置において、塗工槽に供給される直前の光導電性塗料の不揮発分を測定し、その測定値を基に不揮発分を一定に制御する密度演算機能付き質量流量計が記載されている。
【特許文献1】特開2001−013122号公報
【特許文献2】特開平2−131241号公報
【特許文献3】特公昭57−41986号公報
【特許文献4】特開平7−209884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検査方法は、電子写真感光体用塗布液を連続的に検査できるものの、分析対象成分の分析が、塗布槽からの採取、熱分解ガスクロマトグラフィへの導入を経て行われるオンライン分析であり、しかも、熱分解ガスクロマトグラフィが、分析に長時間を要する分析方法であることから、塗布液の組成をリアルタイムで検査することが困難である。
【0007】
また、例えば、電子写真感光体用塗布液の一例としての感光層形成用塗布液では、電荷発生剤、電荷輸送剤、バインダ樹脂などの不揮発性の固形分を、十分に溶解または分散させつつ、感光層形成時にある程度の溶媒が早期に揮散されることが求められるため、一般には、溶媒として、2種以上の揮発性溶媒の混合溶媒が用いられている。しかし、このような場合において、特許文献2〜4に記載されているように、単に、上記塗布液の比重(密度)または粘度のいずれか一方の測定値のみに基づいて、上記固形分の含有比率や上記混合溶媒の混合比率を検査したのでは、上記塗布液の組成変化を正確に検査し、管理することは困難である。
【0008】
本発明の目的は、電子写真感光体用塗布液の固形分濃度や、混合溶媒における1の溶媒の含有比率を、リアルタイムでかつ正確に測定することのできる電子写真感光体用塗布液の検査方法と、上記検査方法による検査結果に基づいて、電子写真感光体用塗布液を所定の組成に調整し、管理することのできる管理方法と、を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、浸漬塗布法により、品質が一定な電子写真感光体を製造することのできる電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法は、2種以上の溶媒と、固形分とを含む電子写真感光体用塗布液の粘度および密度を、インライン分析により測定し、上記電子写真感光体用塗布液の粘度および密度の測定値に基づいて、上記電子写真感光体用塗布液の組成を検査することを特徴としている。
本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法によれば、上記電子写真感光体用塗布液の粘度および密度を、リアルタイムで測定することができ、かつ、上記電子写真感光体用塗布液の溶媒の揮散に伴う組成変化が生じたときに、上記粘度および密度の測定値に基づいて、上記電子写真感光体用塗布液の組成を、正確に検査することができる。
【0010】
本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法では、上記2種以上の溶媒が、互いに非共沸混合溶媒を組成する溶媒の組合せであることが好適であり、また、上記2種以上の溶媒が、互いに、25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する溶媒の組合せであることが好適である。
2種以上の溶媒が、互いに非共沸混合溶媒を組成する溶媒の組合せであるときや、2種以上の溶媒の密度差が、互いに、25℃で0.030g/cm3以上であるときは、電子写真感光体用塗布液中での2種以上の溶媒の含有比率を、より一層正確に求めることができる。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の電子写真感光体用塗布液の管理方法は、本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法により測定された粘度および密度の測定値に基づいて、上記電子写真感光体用塗布液の組成を調整し、管理することを特徴としている。
本発明の第1の電子写真感光体用塗布液の管理方法によれば、上記本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法により、電子写真感光体用塗布液の粘度および密度を、リアルタイムで測定することができ、かつ、上記溶媒および固形分について、個々の含有比率を正確に求めることができることから、かかる検査方法により求められた上記成分の含有比率のデータに基づくことで、電子写真感光体用塗布液の組成を正確に調整、管理することができ、一定の組成を維持させることができる。
【0012】
また、本発明の第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法は、上記本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法により測定された電子写真感光体用塗布液の粘度の測定値および電子写真感光体用塗布液の粘度の予設定閾値を対比する、粘度対比工程と、前記粘度対比工程において、前記電子写真感光体用塗布液の粘度の測定値が、電子写真感光体用塗布液の粘度の予設定閾値と対応したときにのみ、前記電子写真感光体用塗布液に対し、前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒を配合する、第1の溶媒配合工程と、前記第1の溶媒配合工程において前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒を配合したとき、および、前記粘度対比工程において前記電子写真感光体用塗布液の粘度の測定値が電子写真感光体塗布液の粘度の予設定閾値と対応しなかったときに、上記本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法により測定された電子写真感光体用塗布液の密度の測定値と電子写真感光体用塗布液の密度の予設定閾値とを対比する、密度対比工程と、前記密度対比工程において、前記電子写真感光体用塗布液の密度の測定値が電子写真感光体塗布液の密度の予設定閾値と対応したときにのみ、前記電子写真感光体用塗布液に対し、前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒であって、前記第1の溶媒配合工程で配合された溶媒とは異なる溶媒を配合する、第2の溶媒配合工程と、前記第2の溶媒配合工程において前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒であって、前記第1の溶媒配合工程で配合された溶媒とは異なる溶媒を配合したとき、および、前記密度対比工程において前記電子写真感光体用塗布液の密度の測定値が電子写真感光体塗布液の密度の予設定閾値と対応しなかったときに、電子写真感光体用塗布液の液量を測定する、液量測定工程と、前記液量測定工程において、電子写真感光体用塗布液の液量の測定値が電子写真感光体用塗布液の液量の予設定閾値と対応したときにのみ、粘度および密度が各前記予設定閾値に合わせて予め調製された電子写真感光体用塗布液の補充液を配合する、補充液配合工程と、を備え、各前記工程を経ることにより、前記電子写真感光体用塗布液の組成を調整、管理することを特徴としている。
【0013】
上記第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法によれば、上記本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法により、リアルタイムで測定された電子写真感光体用塗布液の粘度および密度の測定値を用いて、上記2種以上の溶媒の混合比率や、固形分の含有割合について、効率よくかつ正確に調整、管理することができ、電子写真感光体用塗布液について、一定の組成を維持させることができる。
【0014】
本発明の電子写真感光体の製造方法は、本発明の第1または第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法により管理された電子写真感光体用塗布液を用いて、浸漬塗布法により、電子写真感光体を製造することを特徴としている。
本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、本発明に係る上記第1または第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法によって、その組成が一定となるように維持された電子写真感光体用塗布液が用いられることから、導電性基体上に形成される感光層などの層の物性(例えば、層の厚み、硬さ、層中の含有成分の濃度など。)が均一で、品質が一定な電子写真感光体を、浸漬塗布法により製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法および管理方法によれば、電子写真感光体用塗布液の粘度や密度をリアルタイムで測定し、その測定結果に基づいて、電子写真感光体用塗布液の組成を正確に検査し、かつ、正確に調整、管理することができる。
また、上記の検査方法および管理方法により検査および管理された電子写真感光体用塗布液を用いた本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、浸漬塗布法により、高品質の電子写真感光体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、電子写真感光体用塗布液を塗布するための浸漬型塗布装置の一例を示す概略装置構成図である。
浸漬塗布法による電子写真感光体の製造には、例えば、図1に示す浸漬型塗布装置10が用いられる。
浸漬型塗布装置10は、下引き層、感光層、保護層などの、電子写真感光体を形成する各種の層に対応する電子写真感光体用塗布液(以下、単に「塗布液」という場合がある。)11を収容する塗布槽12と、塗布液11を貯留する攪拌槽13と、オーバーフローにより塗布槽12から流出した塗布液11を回収し、攪拌槽13へ流入させる流出液回収路14と、攪拌槽13で攪拌された塗布液11を、再び塗布槽12へ流入させるためのポンプ15および再流入路16と、を備えている。
【0017】
また、塗布槽12は、その内部に、塗布槽12内での塗布液11の組成をリアルタイムで検査するための、インライン分析が可能な粘度計(プローブ)17および密度計(プローブ)18を備えている。
攪拌槽13は、塗布液11を攪拌するための攪拌翼19を備えており、さらに、攪拌槽13に対し塗布液11の第1の溶媒を補充するための第1の溶媒補充経路20と、塗布液11の第2の溶媒を補充するための第2の溶媒補充経路21と、別途調製された塗布液11を補充するための塗布液補充経路22とを備えている。
【0018】
第1の溶媒補充経路20および第2の溶媒補充経路21から攪拌槽13への第1および第2の溶媒の補充は、粘度計17および密度計18での測定結果に基づいて、制御部23において制御され、また、別途調製された塗布液11の攪拌槽13への補充は、粘度計17および密度計18による測定結果や、塗布槽12および攪拌槽13中での塗布液11の液量に基づいて、制御部23において制御される。
【0019】
制御部23は、例えば、図示しないCPU、ROM、RAMなどを備えている。制御部23のROMは、例えば、第1の溶媒補充経路20から攪拌槽13への塗布液11の溶媒の補充処理、第2の溶媒補充経路21から攪拌槽13への塗布液11の溶媒の補充処理、塗布液補充経路22から攪拌槽13への塗布液11の補充処理などを制御するためのプログラムを格納するための装置である。制御部23のRAMは、上記ROMに格納されたプログラムを実行するために、粘度計17および密度計18により測定された測定結果を一時的に格納する装置である。また、制御部23のCPUは、上記RAMに格納された測定結果に基づいて、第1の溶媒補充経路20から攪拌槽13への塗布液11の溶媒の補充処理、第2の溶媒補充経路21から攪拌槽13への塗布液11の溶媒の補充処理、塗布液補充経路22から攪拌槽13への塗布液11の補充処理などの実行条件を決定し、上記ROMに格納された制御プログラムを実行して、各上記処理を制御させる。
【0020】
図1に示す浸漬型塗布装置10を用いて、下引き層、感光層、保護層などの層を形成するには、例えば、図1に示す円筒状の導電性基体24を、塗布槽12中の塗布液11に浸漬して引き上げ、導電性基体24の表面に付着した塗布液11を乾燥させればよい。
塗布液11の粘度をインライン分析により測定するための粘度計17としては、例えば、ねじれ振動式粘度計、音叉振動式粘度計などの振動式粘度計や、例えば、回転式粘度計などが挙げられるが、なかでも、好ましくは、バイパスラインを経ることなく、浸漬槽12中の塗布液11の粘度を直接に測定可能な、ねじれ振動式粘度計や音叉振動式粘度計が挙げられる。
【0021】
ねじれ振動式粘度計は、測定の対象となる液体中に浸漬された双方向振動子(例えば、圧電型加速度センサなど。)により、液体の粘度を振動の変化で感知する粘度計であって、具体的には、例えば、CBCマテリアルズ(株)製のねじれ振動式粘度計(型式「FVM−80A」)などが挙げられる。
音叉振動式粘度計は、測定の対象となる液体中に浸漬された音叉形状(略U字形状)の振動子を一定振幅にて共振させ、粘性抵抗により異なる駆動電流値に基づいて粘度を算出する粘度計であって、具体的には、例えば、(株)エー・アンド・デイ製の振動式(音叉型振動式)粘度計(型式「SV」シリーズ)などが挙げられる。
【0022】
塗布液11の密度をインライン分析により測定するための密度計18としては、例えば、回転振動式密度計、細管振動式密度計、コリオリ式質量流量計、ガンマ線透過型密度計などが挙げられ、なかでも、好ましくは、バイパスラインを経ることなく、浸漬槽12中の塗布液11の密度を直接に測定可能な、回転振動式密度計が挙げられる。
回転振動式密度計は、例えば、ロッド(トーションバー)と、上記ロッドを軸として回転振動可能な、上記ロッドの軸方向に伸びる蓮根状の複数の空洞を有する検出部(慣性マス)と、を備えるプローブを、測定の対象となる液体中に浸漬して、上記検出部を共振周波数で回転振動させ、上記液体の密度に応じて変化する上記検出部(慣性マス)の重量に応じて、液体の密度を算出する密度計である。具体的には、例えば、CBCマテリアルズ(株)のインライン型振動式密度計(型式「FDM50A」)などが挙げられる。
【0023】
本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法は、上述のとおり、少なくとも2種以上の溶媒と、固形分とからなる電子写真感光体用塗布液(塗布液)の粘度および密度を、インライン分析により測定し、塗布液の粘度および密度の測定値に基づいて、塗布液の組成を検査することを特徴としている。
上記検査方法が適用される塗布液としては、電子写真感光体の導電性基体上に形成される層に応じて、例えば、下引き層用塗布液、感光層用塗布液、保護層用塗布液などが挙げられる。
【0024】
下引き層用塗布液は、電子写真感光体の任意の層である下引き層を形成するための塗布液であって、上記検査方法が適用される下引き層用塗布液としては、例えば、少なくとも2種以上の溶媒と、固形分としての樹脂と、必要に応じて、金属酸化物の微粉末などを含有する塗布液が挙げられる。
下引き層用塗布液の溶媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジメトキシメタンなどのエーテル類、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテートなどのグリコール類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、例えば、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族系炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、例えば、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0025】
下引き層用塗布液の溶媒には、例えば、上記例示の溶媒から選択される2種以上の溶媒からなる混合溶媒、好ましくは、2種の溶媒からなる混合溶媒が用いられる。
上記混合溶媒を形成する2種以上の溶媒は、粘度および密度の測定値に基づいて、混合溶媒の組成、すなわち、2種以上の溶媒の混合比率にどのような変化が生じたのかを正確に検査するためにも、互いに非共沸混合溶媒を組成する溶媒の組合せであることが好適である。2種以上の溶媒が、互いに非共沸混合溶媒を組成する場合は、溶媒の自然蒸発、揮散により、混合溶媒の組成に変化が生じることから、粘度および密度の測定値を用いることで、2種以上の溶媒の混合比率の調整が容易になる。
【0026】
なお、混合溶媒が、3種以上の溶媒から形成されるときは、3種以上の溶媒全てが、相互に比共沸混合溶媒を組成する溶媒であることが好ましい。
上記例示の溶媒のうち、互いに非共沸混合溶媒を組成する2種以上の溶媒の組合せとしては、例えば、THFとPGMとの組合せ、メタノールとブタノールとの組み合わせ、メタノールと1−プロパノールとの組み合わせ、THFとトルエンとの組み合わせ、1,3−ジオキソランとトルエンとの組合せなどが挙げられる。
【0027】
また、上記混合溶媒を形成する2種以上の溶媒は、溶媒の自然蒸発、揮散による密度変化を検知する上で、互いに25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する2種以上の溶媒の組合せであることが好適である。
上記例示の溶媒のうち、互いに25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する2種以上の溶媒の組合せとしては、例えば、THF(密度(25℃)0.889g/cm3)とPGM(密度(25℃)0.922g/cm3)との組合せ、THFと1,3−ジオキソラン(密度(25℃)1.06g/cm3)との組み合わせ、トルエン(密度(25℃)0.865g/cm3)と1,3−ジオキソランとの組合せなどが挙げられる。
【0028】
下引き層用塗布液の固形分としての樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール類、カゼイン類、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、例えば、共重合ナイロン類、メトキシメチル化ナイロン類のアルコール可溶性樹脂、例えば、ポリウレタン類、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、アルキド−メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂などの、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独で、または2種以上混合して用いられる。また、下引き層の表面には、感光層用塗布液の塗布によって感光層が形成されることから、上記例示の樹脂のなかでも、特に、感光層用塗布液の溶媒に対する耐性に優れた樹脂であることが望ましい。
【0029】
下引き層用塗布液の固形分としての金属酸化物の微粉末は、下引き層へのモアレ模様の発生の防止、電子写真感光体の残留電位の低減などを目的として配合される成分であって、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどの微粉末が挙げられる。これら金属酸化物の微粉末は、単独で、または、2種以上混合して用いられる。
【0030】
感光層用塗布液は、電子写真感光体の必須の層である感光層を形成するための塗布液であって、上記検査方法が適用される感光層用塗布液としては、例えば、少なくとも2種以上の溶媒と、固形分としてのバインダ樹脂、感光性材料などを含有する塗布液が挙げられる。
感光層用塗布液の溶媒としては、下引き層用塗布液の溶媒として例示したのと同じ溶媒が挙げられる。
【0031】
また、感光層用塗布液の溶媒には、例えば、上記例示の溶媒から選択される2種以上の溶媒からなる混合溶媒、好ましくは、2種の溶媒からなる混合溶媒が用いられる。
上記混合溶媒を形成する2種以上の溶媒は、互いに非共沸混合溶媒を組成する2種以上の溶媒の組合せ、および/または、互いに25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する2種以上の溶媒の組合せであることが好適である。互いに非共沸混合溶媒を組成する2種以上の溶媒の組合せや、互いに25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する2種以上の溶媒の組合せとしては、上記した組合せと同じ組合せが挙げられる。
【0032】
上記感光層用塗布液の固形分としてのバインダ樹脂や感光性材料は、感光層の種類に合わせて適宜選択される。また、感光性材料としては、例えば、単層型感光層用塗布液では、電荷発生剤および電荷輸送剤が挙げられ、電荷発生層用塗布液では、電荷発生剤が挙げられ、電荷輸送層用塗布液では、電荷輸送剤(正孔輸送剤および/または電子輸送剤)が挙げられる。
【0033】
バインダ樹脂としては、上記した感光層の種類に合わせて、適宜選択されるが、一般的には、例えば、ポリアミド類、ポリウレタン類、エポキシ系樹脂、ポリケトン類、ポリカーボネート類、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール類、ポリビニルアセタール類、ポリビニルホルマール類、ポリビニルケトン類、ポリスチレン類、ポリスルホン類、ポリ−N−ビニルカルバゾール類、ポリアクリルアミド類、ポリビニルベンザール類、ポリエステル類、フェノキシ系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリ酢酸ビニル類、ポリフェニレンオキシド類、ポリビニルピリジン類、セルロース系樹脂、カゼイン類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらバインダ樹脂は、単独で、または、2種以上を混合して用いられる。
【0034】
電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、例えば、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン系顔料、ナフトキノン系顔料、シアニン系顔料、アゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、ジチオケトピロロピロール系顔料、スクアライン系顔料、トリスアゾ系顔料、インジゴ系顔料、アズレニウム系顔料、シアニン系顔料、ピリリウム塩類、アンサンスロン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料などが挙げられる。これら電荷発生剤は、単独で、または、2種以上を混合して用いられる。
【0035】
電荷輸送剤のうち、正孔輸送剤としては、例えば、トリアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン系化合物、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど。)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど。)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾールなど。)、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど。)、有機ポリシラン化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ポリ−N−ビニルカルバゾール系化合物などが挙げられる。これら正孔輸送剤は、単独で、または、2種以上を混合して用いられる。
【0036】
電荷輸送剤のうち、電子輸送剤としては、例えば、ベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、ジナフトキノン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド系化合物、フルオレノン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、ニトロアントアラキノン系化合物、ジニトロアントラキノン系化合物、アゾキノン系化合物などが挙げられる。これら電子輸送剤は、単独で、または、2種以上を混合して用いられる。
【0037】
また、感光層用塗布液には、固形分として、さらに、増感剤、分散剤などの、種々の配合剤を含有していてもよい。
保護層用塗布液は、電子写真感光体の任意の層である保護層を形成するための塗布液であって、上記検査方法が適用される保護層用塗布液としては、例えば、少なくとも2種以上の溶媒と、固形分としての樹脂と、必要に応じて、例えば、フィラー、ヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両構造を有する化合物などを含有する塗布液が挙げられる。
【0038】
保護層用塗布液の溶媒としては、下引き層用塗布液の溶媒として例示したのと同じ溶媒が挙げられる。
また、保護層用塗布液の溶媒には、例えば、上記例示の溶媒から選択される2種以上の溶媒からなる混合溶媒、好ましくは、2種の溶媒からなる混合溶媒が用いられる。
上記混合溶媒を形成する2種以上の溶媒は、互いに非共沸混合溶媒を組成する2種以上の溶媒の組合せ、および/または、互いに25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する2種以上の溶媒の組合せであることが好適である。互いに非共沸混合溶媒を組成する2種以上の溶媒の組合せや、互いに25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する2種以上の溶媒の組合せとしては、上記した組合せと同じ組合せが挙げられる。
【0039】
保護層用塗布液の固形分としての樹脂は、例えば、ポリカーボネート類、ポリアリレート類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂(ACS樹脂)、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル類、アリール系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアセタール類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリアクリレート類、ポリアリルスルホン類、ポリブチレン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン類、ポリオレフィン類、アクリル系樹脂、ポリフェニレンオキシド類、ポリスルホン類、ポリスチレン類、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独で、または、2種以上混合して用いられる。
【0040】
保護層用塗布液の固形分としての充填剤は、例えば、有機系充填剤と無機系充填剤とに分類される。有機系充填剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂粉末、例えば、シリコ−ン系樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられ、無機系充填剤としては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、例えば、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウムなどの金属酸化物の粉末、例えば、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウムなどの金属フッ化物の粉末、例えば、チタン酸カリウム、窒化ホウ素などの粉末などが挙げられる。
【0041】
また、保護層用塗布液の固形分には、さらに他の成分として、オゾンなどの活性ガスによる劣化の抑制、耐摩耗性の向上などを目的として配合される、ヒンダードアミン構造とヒンダードフェノール構造の両構造を有する化合物が挙げられる。
本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法、および、本発明の第1の電子写真感光体用塗布液の管理方法において、インライン分析により測定された、少なくとも2種以上の溶媒と、固形分とからなる電子写真感光体用塗布液(塗布液)の粘度および密度の測定値に基づいて、上記塗布液の組成を検査し、管理するには、例えば、下記の手順に従えばよい。
【0042】
まず、固形分濃度や2種以上の溶媒の含有割合が既知である数種の塗布液サンプルを調製して、予め、2種以上の溶媒の混合比率ごとに、固形分濃度と粘度との関係や固形分濃度と密度との関係を示す検量線を作成する。
次いで、組成の検査対象である塗布液に対し、上記2種以上の溶媒のうち、いずれか1種の溶媒を配合(補充)して、塗布液の粘度変化および密度変化を観察し、上記検量線を用いて、塗布液の組成、具体的には、塗布液の固形分濃度や2種以上の溶媒の混合比率を推定する。
【0043】
かかる推定により、塗布液の組成が検査され、さらに、この検査結果に基づき、上記塗布液に対して、上記溶媒や上記固形分を適宜配合することにより、上記塗布液の組成が調整、管理される。
以下、第1の電子写真感光体用塗布液の管理方法による塗布液組成の調整、管理についての具体的手順を、電荷発生層用塗布液の調製、管理を例に挙げて、説明する。
【0044】
電荷発生層用塗布液には、固形分として、チタニルフタロシアニン(電荷発生剤)およびポリビニルアセタール樹脂(バインダ樹脂)を含有し、溶媒として、テトラヒドロフラン(THF、密度(25℃)0.889g/cm3)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM、密度(25℃)0.922g/cm3)との混合溶媒を含有する塗布液を使用した。
【0045】
この電荷発生層用塗布液について、混合溶媒の混合比率を、THFの含有割合で50重量%、66.7重量%、75重量%、85重量%および90重量%の5段階に設定し、それぞれの混合比率において、電荷発生層用塗布液中での固形分濃度を変化させたときの粘度および密度の変化を測定した。その結果を、固形分濃度と粘度との関係を示す検量線として、図2に示し、固形分濃度と密度との関係を示す検量線として、図3に示す。なお、図2および図3中、「THF50%」、「THF66.7%」などの凡例は、混合溶媒の混合比率(重量%)を示している。
【0046】
上記の電荷発生層用塗布液について、固形分濃度や2種の溶媒の混合比率の推定と、かかる推定による電荷発生層用塗布液の組成の検査については、例えば、図4のフローチャートに示す手順に従って行うことができる。
すなわち、まず、電荷発生層用塗布液(以下、図4のフローチャートに示す手順の説明において、単に「塗布液」という。)の粘度η(mPa・s)と、密度ρ(g/cm3)とを測定する(ステップS1)。
【0047】
次いで、塗布液中の固形分濃度D(g/cm3)を仮定し(ステップS2)、ステップS1で得られた塗布液の粘度ηおよび密度ρの測定値と、予め作成しておいた、固形分濃度と粘度との関係を示す検量線(図2参照)および固形分濃度と密度との関係を示す検量線(図3参照)とに基づいて、塗布液の粘度ηおよび密度ρを推定する(ステップS3)。
【0048】
さらに、塗布液中に、所定量のTHFを配合して(ステップS4)、THF配合後の塗布液の粘度ηを測定し(ステップS5)、ステップS1で測定された塗布液の粘度ηとの対比により、THFの含有比率の変動に伴う塗布液の粘度ηの変動を観察する。
次に、こうして観察された塗布液の粘度ηの変動を、上記検量線と照らし合わせることにより、ステップS3で推定された塗布液の粘度の推定値ηp(mPa・s)が、実測値ηm(mPa・s)と近似しているか否かを判定する(ステップS6)。推定値ηpと実測値ηmとの近似、非近似は、例えば、推定値ηpの実測値ηmに対する誤差が、一定の範囲内(例えば、数%以内など。)であるか否かにより、判定できる。
【0049】
ここで、推定値ηpと実測値ηmとが、近似していないと判定されたとき(ステップS6でNO)には、ステップS2(塗布液中の固形分濃度Dの仮定)に戻り、あらためて塗布液中の固形分濃度Dを仮定する。
一方、推定値ηpと実測値ηmとが、近似していると判定されたとき(ステップS6でYES)には、THF配合後の塗布液の密度ρを測定し(ステップS7)、ステップS1で測定された塗布液の密度ρとの対比により、THFの含有比率の変動に伴う塗布液の密度ρの変動を観察する。
【0050】
さらに、こうして観察された塗布液の密度ρの変動を、上記検量線と照らし合わせることにより、ステップS3で推定された塗布液の密度の推定値ρp(g/cm3)が、実測値ρm(g/cm3)と近似しているか否かを判定する(ステップS8)。推定値ρpと実測値ρmとの近似、非近似は、上記と同様に、例えば、推定値ρpの実測値ρmに対する誤差が、一定の範囲内(例えば、数%以内など。)であるか否かにより、判定できる。
【0051】
ここで、推定値ρpと実測値ρmとが、近似していないと判定されたとき(ステップS8でNO)には、ステップS2(塗布液中の固形分濃度Dの仮定)に戻り、あらためて塗布液中の固形分濃度Dを仮定する。
一方、推定値ρpと実測値ρmとが、近似していると判定されたとき(ステップS8でYES)には、塗布液中の固形分濃度Dを、ステップS2で仮定された値で確定できることから(ステップS9)、その確定された固形分濃度Dに基づいて、塗布液を所望の組成に調整するために必要なTHFおよび/またはPGMの配合量を算定し、さらに、算定された配合量に従って、塗布液に対し、THFおよび/またはPGMを配合する(ステップS10)。
【0052】
こうして、ステップS10により、塗布液の組成を調整、管理することができるが、さらに、任意的に、ステップS11において、塗布液全体の液量を測定し、次いで、ステップS11で測定された塗布液の液量が、その液量の予設定値(例えば、浸漬型塗布装置での塗布液の予設定収容量未満)と対応しているか否かを判定してもよい(ステップS12)。塗布液の密度ρが予設定閾値と対応しているとき(例えば、上記予設定収容量未満であるとき;ステップS12でNO)には、上記予設定収容量に対する塗布液の液量の不足分に合わせて、別途調製された塗布液を配合し(ステップS13)、一連の工程を終了する。また、ステップS11で測定された塗布液の液量が、その液量の予設定値と対応していないとき(例えば、上記予設定収容量以上であるとき;ステップS12でYES)には、ステップS13を省略して、一連の工程を終了する。
【0053】
なお、図4に示す一連の手順において、ステップS6でNOであった場合に、ステップS2に戻り、あらためて塗布液中の固形分濃度Dを仮定したときには、その後のステップS3、S4およびS5を省略して、ステップS6における判定を実行してもよい。
また、ステップS8でNOであった場合に、ステップS2に戻り、あらためて塗布液中の固形分濃度Dを仮定したときには、その後のステップS3、S4およびS5を省略して、ステップS6における判定を実行し、さらに、ステップS6でYESとなったときに、その後のステップS7を省略して、ステップS8における判定を実行してもよい。
【0054】
また、図4に示す一連の手順において、ステップS5は、ステップS7と入れ替えてもよく、この場合には、ステップS6が、ステップS8と入れ替えられる。すなわち、塗布液の粘度ηの測定(ステップS5)および粘度の推定値ηpと実測値ηmとの近似・非近似の判定(ステップS6)の実行と、塗布液の密度ρの測定(ステップS7)および密度の推定値ρpと実測値ρmとの近似・非近似の判定(ステップS8)の実行との先後は、特に限定されないが、混合溶媒の混合比率の変動に伴う物性値の変化が大きい方について、その測定、および判定を先に実行することが、塗布液の組成の検査および管理の精度を向上させる上で、好適である。
【0055】
また、図4に示す一連の手順において、ステップS4においては、THFに代えて、PGMを配合してもよい。すなわち、混合溶媒を形成する2種(または2種以上)の溶媒のうち、いずれの溶媒をステップS4において配合するかは、特に限定されないが、揮散・蒸発の程度が大きい方の溶媒をステップS4において配合することが、塗布液の組成の検査および管理の精度を向上させる上で、好適である。
【0056】
一方、本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法、および、本発明の第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法において、インライン分析により測定された、少なくとも2種以上の溶媒と、固形分とからなる電子写真感光体用塗布液(塗布液)の粘度および密度の測定値に基づいて、上記塗布液の組成を検査し、管理するには、例えば、下記の手順に従えばよい。
【0057】
まず、塗布液の粘度の測定値と、塗布液の粘度の予設定閾値とを対比する(粘度対比工程)。
次いで、上記粘度対比工程において、塗布液の粘度の測定値がその予設定閾値と対応したときにのみ、塗布液に対し、2種以上の溶媒のいずれか1種を配合する(第1の溶媒配合工程)。
【0058】
また、上記第1の溶媒配合工程において2種以上の溶媒のいずれか1種を配合したとき、および、上記粘度対比工程において、塗布液の粘度の測定値がその予設定閾値と対応しなかったときに、塗布液の密度の測定値と、塗布液の密度の予設定閾値とを対比する(密度対比工程)。
次に、上記密度対比工程において、塗布液の密度の測定値がその予設定閾値と対応したときにのみ、塗布液に対し、2種以上の溶媒のいずれか1種であって、上記第1の溶媒配合工程で配合された溶媒とは異なる溶媒を配合する(第2の溶媒配合工程)。
【0059】
また、上記第2の溶媒配合工程において2種以上の溶媒のいずれか1種であって、上記第1の溶媒配合工程で配合された溶媒とは異なる溶媒を配合したとき、および、上記密度対比工程において、塗布液の密度の測定値がその予設定閾値と対応しなかったときに、塗布液の液量を測定する(液量測定工程)。
さらに、上記液量測定工程において、塗布液の液量の測定値がその予設定閾値と対応したときにのみ、粘度および密度がそれぞれの予設定閾値に合わせて予め調製された塗布液の補充液を配合する(補充液配合工程)。
【0060】
こうして、上記した工程を経ることにより、塗布液の組成が調整、管理される。
以下、第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法による塗布液組成の調整、管理についての具体的手順を、電荷発生層用塗布液の調製、管理を例に挙げて、説明する。
図5は、第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法による塗布液組成の調整、管理についての手順の一例を示すフローチャートである。電荷発生層用塗布液についての組成の検査、管理は、例えば、図5のフローチャートに示す手順に従って行うことができる。
【0061】
なお、以下のフローチャートに示す手順においては、電荷発生層用塗布液として、固形分としてのチタニルフタロシアニン(電荷発生剤)およびポリビニルアセタール樹脂(バインダ樹脂)を含有し、THF(密度(25℃)0.889g/cm3)とPGM(密度(25℃)0.922g/cm3)との混合溶媒を含有する塗布液を想定した。
まず、経過時間Tを計時するためのタイマをリセットして、経過時間Tの計時を開始する(ステップT1)。次いで、経過時間Tが所定時間(例えば、30分)に達しているか否かを判定し(ステップT2)、経過時間Tが所定時間に達しているとき(ステップT2でYES;例えば、Tが30分以上であるとき。)には、電荷発生層用塗布液(以下、図5のフローチャートに示す手順の説明において、単に「塗布液」という。)の粘度η(mPa・s)を測定する(ステップT3)。一方、経過時間Tが30分に達していないとき(ステップT2でNO)には、経過時間Tが所定時間に達するまで、ステップT2を繰り返す。
【0062】
次に、塗布液の粘度ηが、その粘度の予設定閾値(例えば、7.0mPa・s以上)と対応しているか否かを判定し(ステップT4)、塗布液の粘度ηが予設定閾値と対応しているとき(ステップT4でYES;例えば、ηが7.0mPa・s以上であるとき。)には、下記式により、測定された塗布液の粘度ηm(mPa・s)に応じたTHFの配合量(g)を算定し、下記式により求められた量のTHFを塗布液中に配合する(ステップT5)。
【0063】
THFの配合量/g=A×[(ηm/mPa・s)+B]
上記式中の係数Aや定数項Bは、例えば、塗布液を形成する混合溶媒および固形分の種類、混合溶媒についての所望の混合比率、塗布液の所望の粘度および密度などにあわせて設定される値である。それゆえ、特に限定されないが、例えば、固形分として、チタニルフタロシアニン(電荷発生剤)とポリビニルアセタール樹脂(バインダ樹脂)を含有し、溶媒として、THFとPGMとの混合溶媒(THFの混合比率66.7重量%)が用いられ、塗布液についての所望の粘度(25℃)が7.0mPa・s、密度(25℃)が0.900g・cm3である場合には、係数Aとして「3.5」が、定数項Bとして「−7.0」が用いられる。
【0064】
一方、ステップT4において、塗布液の粘度ηが予設定閾値と対応していないとき(ステップT4でNO;例えば、ηが7.0mPa・s未満であるとき。)には、ステップT5を省略して、後述するステップT6へ移行する。
ステップT6では、塗布液の密度ρ(g・cm3)を測定し、次いで、ステップT7において、塗布液の密度ρが、その密度の予設定値(例えば、0.900g・cm3以上)と対応しているか否かを判定する。塗布液の密度ρが予設定閾値と対応しているとき(ステップT7でYES;例えば、ρが0.900g・cm3以上であるとき。)には、密度ρの測定値如何に関わらず、塗布液に対し、PGMを所定量配合する(ステップT8)。
【0065】
一方、塗布液の密度ρが予設定閾値と対応していないとき(ステップT7でNO;例えば、ρが0.889g・cm3未満であるとき。)には、ステップT8を省略する。
こうして、塗布液の組成を調整、管理することができるが、さらに、任意的に、ステップT9において、塗布液全体の液量を測定し、次いで、ステップT10において、ステップT9で測定された塗布液の液量が、その液量の予設定値(例えば、浸漬型塗布装置での塗布液の予設定収容量未満)と対応しているか否かを判定してもよい。塗布液の密度ρが予設定閾値と対応しているとき(例えば、上記予設定収容量未満であるとき;ステップT10でNO)には、上記予設定収容量に対する塗布液の液量の不足分に合わせて、別途調製された塗布液を配合し(ステップT11)、一連の工程を終了する。また、ステップT9で測定された塗布液の液量が、その液量の予設定値と対応していないとき(例えば、上記予設定収容量以上であるとき;ステップT10でYES)には、ステップT11を省略して、一連の工程を終了する。
【0066】
なお、図5のステップT8においては、密度ρの測定値に合わせて、PGMの配合量を適宜算出し、設定してもよい。
また、図5に示す一連の手順において、ステップT3、T4およびT5に代えて、順に、塗布液の密度ρの測定、塗布液の密度ρの測定値と予設定閾値との対比、および、PGMの配合量の算定とPGMの配合を実行してもよく、この場合には、ステップT6、T7およびT8において、塗布液の粘度ηの測定、塗布液の粘度ηの測定値と予設定閾値との対比、および、THFの配合(または、THFの配合量の算定およびTHFの配合)が実行される。すなわち、塗布液の粘度ηの測定、対比および調整の実行と、塗布液の密度ρの測定、対比および調整の実行との先後は、特に限定されないが、混合溶媒の混合比率の変動に伴う物性値の変化が大きい方について、その測定、対比および調整を先に実行することが、塗布液の組成の検査および管理の精度を向上させる上で、好適である。
【0067】
本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法や、第1および第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法によれば、電子写真感光体用塗布液の固形分濃度や混合溶媒の混合比率を、リアルタイムでかつ正確に測定することができ、また、かかる測定データに基づいて、電子写真感光体用塗布液を、所定の組成にかつ正確に調整、管理することができる。それゆえ、本発明の電子写真感光体用塗布液の検査方法および管理方法は、品質が一定な電子写真感光体を得るための方法として、好適である。
【0068】
本発明の電子写真感光体の製造方法は、上述のとおり、本発明の第1または第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法により管理された電子写真感光体用塗布液を用いて、浸漬塗布法により、電子写真感光体を製造することを特徴としている。
浸漬塗布法による電子写真感光体の製造では、例えば、電子写真感光体の導電性基体上に形成される下引き層、感光層、保護層などの層のいずれかが、例えば、図1に示す浸漬形塗布装置10を用いて、上記第1または第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法により管理された電子写真感光体用塗布液(具体的には、下引き層用塗布液、感光層用塗布液、保護層用塗布液など。)を用いて形成されればよい。なかでも、電子写真感光体の感光層を、上記第1または第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法により管理された感光層用塗布液を用いて形成することが好適である。
【0069】
浸漬塗布法による電子写真感光体の製造(下引き層、感光層、保護層などの層形成)の具体的手法については、特に限定されず、常法に従えばよい。
本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、電子写真感光体用塗布液が、所定の組成となるように、正確に調整、管理されることから、品質が一定な電子写真感光体を製造することができる。
【実施例】
【0070】
次に、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
(1) 電荷発生層用塗布液(塗布液)の調製
チタニルフタロシアニン(電荷発生剤)と、ポリビニルアセタール樹脂(バインダ樹脂、品名「エスレックKS−5」、積水化学工業(株)製)とを、重量比が1:1となるように混合した。得られた混合物に、THFとPGMとの混合溶媒(THFの含有割合66.7重量%)を配合して、ロールミルで24時間練り合わせ、上記混合物を上記混合溶媒で十分に湿潤させた後、さらに、上記混合溶媒を配合し、ビーズミルで4時間攪拌して、上記混合物の濃度(固形分濃度)が3.20重量%である電荷発生層用塗布液(以下、実施例において、単に「塗布液」という。)10kgを得た。
【0071】
なお、THFは、粘度(25℃)が、0.51mPa・sであり、密度(25℃)が、0.889g/cm3である。また、PGMは、粘度(25℃)が、1.9mPa・sであり、密度(25℃)が、0.922g/cm3である。THFとPGMとの25℃での密度差は、0.033g/cm3であり、また、THFとPGMは、互いに非共沸混合溶媒を組成する溶媒である。
【0072】
また、上記塗布液は、調製直後において、粘度(25℃)が、7.83mPa・sであり、密度(25℃)が、0.900g/cm3であった。
(2) 塗布液の粘度および密度の測定
まず、上記塗布液を、図1に示す浸漬型塗布装置10の塗布槽12および攪拌槽13に投入し、流出液回収路14、ポンプ15および再流入路16を用いて、常時循環させた。浸漬型塗布装置10は、塗布槽12の天面において、大気に開放されている。
【0073】
塗布槽12および攪拌槽13への投入後、塗布液11を0.5時間循環したところで、塗布液11の粘度および密度を、塗布槽12内に備えられた粘度計(ねじれ振動式粘度計、型式「FVM−80A」、CBCマテリアルズ(株)製)17および密度計(回転振動式密度計、型式「FDM−50A」、CBCマテリアルズ(株)製のインライン型振動式密度計)18で測定した。この時の塗布液11の粘度(25℃)は、6.80mPa・s、密度(25℃)は、0.900g/cm3であって、調製直後と比べて粘度が低下していた。これは、浸漬型塗布装置10の洗浄に使用したTHFが、浸漬型塗布装置10に残留し、塗布液11に混入することで、その粘度を低下させたものと推察される。
【0074】
なお、塗布液11の粘度の測定値は、粘度計17を用いて、6秒間隔で計10回測定された測定値の算術平均値として示した。また、塗布液11の密度の測定値は、密度計18を用いて、10秒間隔で計6回測定された測定値の算術平均値として示した。
(3) 塗布液の検査および管理
(a) 塗布液の粘度および密度の経時変化の観察
塗布槽12および攪拌槽13への塗布液11の投入後、24時間が経過するまでの間、浸漬型塗布装置10内で塗布液11を常時循環させつつ、塗布槽12内での塗布液11の粘度および密度を、0.5時間ごとに、上記と同様にして測定し、検査した。
【0075】
その結果、図6に示すように、塗布槽12および攪拌槽13への塗布液11の投入直後に、上記した理由により、塗布液11の粘度が低下したものの、その後は、概ね一定の速度で、塗布液11の粘度が上昇した。これは、塗布液11の溶媒のうち、主として、揮発性の高いTHFが揮散したことによると推察される。
また、塗布槽12および攪拌槽13への塗布液11の投入から24時間(1日間)経過後において、塗布液11の粘度(25℃)は、9.75mPa・sであり、密度(25℃)は、0.902g/cm3であった。すなわち、浸漬型塗布装置10内で、単に塗布液11が循環されていた時間帯(図6中、符号(i)で示す。)には、塗布液11については、溶媒の揮散に起因すると考えられる、固形分濃度の上昇と、粘度の上昇とが観察された。
【0076】
(b) THFの配合による塗布液の組成の調整、管理
次に、図6中、符号(ii)で示す時点において、塗布液11中に、THF1.5kgを投入し、さらに、その後の時間帯(図6中、符号(iii)で示す。)においては、塗布液11の粘度を7.0±0.2mPa・sの範囲で安定させるために、塗布液11の粘度の予設定閾値を7.0mPa・s(図6および図7中、符号(iv)で示す。)とし、粘度計17による測定値が、この予設定閾値と対応する度に、塗布液11中にTHFのみを配合した。こうして、さらに、塗布液11を14日間循環させた。なお、塗布液11の粘度は、6.80mPa・s(図6および図7中、符号(v)で示すライン)を下回らないように調整した。
【0077】
14日間経過後において、塗布液11の粘度は、図6および図7に示すように、7.0±0.2mPa・sの範囲に調整することができた。しかしながら、塗布液11の密度については、図8に示すように、塗布液11の調製後、14日間経過するまでの間(図8中、符号(vi)で示す。)に、経時的に低下した。
これは、塗布液11の粘度のみを検査し、調製していたため、混合溶媒中でのTHFの混合比率が経時的に高くなったことに起因すると考えられる。
【0078】
また、この結果より明らかなように、塗布液11の粘度のみに着目した場合には、塗布液11の混合溶媒の混合比率を調整、管理することができなかった。
(c) THFおよびPGMの配合による塗布液の組成の調整、管理
さらに、塗布液11の最初の調製および浸漬型塗布装置10への投入後、14日を経過して(15日目)から、塗布液11の粘度を7.0±0.2mPa・sの範囲で安定させるための上記と同様の調整、管理に加えて、塗布液11の密度の調整、管理を行った。
【0079】
具体的には、塗布液11の密度の予設定閾値を0.900g/cm3とし、密度計18による測定値が、この予設定閾値と対応する度に、塗布液11中にPGMを配合した。
こうして、さらに、15日間、塗布液11を循環させた結果、15日目からの時間帯(図8中、符号(vii)で示す。)においては、図8に示すように、塗布液11の粘度を、概ね、7.00〜7.20mPa・sの範囲で、塗布液11の密度を、概ね、0.898〜0.901g/cm3の範囲で、それぞれ、安定して調整することができた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、電子写真感光体用塗布液を塗布するための浸漬型塗布装置の一例を示す概略装置構成図である。
【図2】電荷発生層用塗布液の固形分濃度と粘度との関係を示す検量線である。
【図3】電荷発生層用塗布液の固形分濃度と密度との関係を示す検量線である。
【図4】第1の電子写真感光体用塗布液の管理方法による塗布液組成の調整、管理についての手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】第2の電子写真感光体用塗布液の管理方法による塗布液組成の調整、管理についての手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施例における電荷発生層用塗布液の粘度の経時変化を示すグラフである。
【図7】実施例における電荷発生層用塗布液の粘度の経時変化を示すグラフである。
【図8】実施例における電荷発生層用塗布液の密度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
11 塗布液(電子写真感光体用塗布液)
17 粘度計
18 密度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の溶媒と、固形分とを含む電子写真感光体用塗布液の粘度および密度を、インライン分析により測定し、前記電子写真感光体用塗布液の粘度および密度の測定値に基づいて、前記電子写真感光体用塗布液の組成を検査することを特徴とする、電子写真感光体用塗布液の検査方法。
【請求項2】
前記2種以上の溶媒が、互いに非共沸混合溶媒を組成する溶媒の組合せであることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体用塗布液の検査方法。
【請求項3】
前記2種以上の溶媒が、互いに、25℃で0.030g/cm3以上の密度差を有する溶媒の組合せであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子写真感光体用塗布液の検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体用塗布液の検査方法により測定された粘度および密度の測定値に基づいて、前記電子写真感光体用塗布液の組成を調整し、管理することを特徴とする、電子写真感光体用塗布液の管理方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体用塗布液の検査方法により測定された電子写真感光体用塗布液の粘度の測定値および電子写真感光体用塗布液の粘度の予設定閾値を対比する、粘度対比工程と、
前記粘度対比工程において、前記電子写真感光体用塗布液の粘度の測定値が、電子写真感光体用塗布液の粘度の予設定閾値と対応したときにのみ、前記電子写真感光体用塗布液に対し、前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒を配合する、第1の溶媒配合工程と、
前記第1の溶媒配合工程において前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒を配合したとき、および、前記粘度対比工程において前記電子写真感光体用塗布液の粘度の測定値が電子写真感光体塗布液の粘度の予設定閾値と対応しなかったときに、請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体用塗布液の検査方法により測定された電子写真感光体用塗布液の密度の測定値と電子写真感光体用塗布液の密度の予設定閾値とを対比する、密度対比工程と、
前記密度対比工程において、前記電子写真感光体用塗布液の密度の測定値が電子写真感光体塗布液の密度の予設定閾値と対応したときにのみ、前記電子写真感光体用塗布液に対し、前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒であって、前記第1の溶媒配合工程で配合された溶媒とは異なる溶媒を配合する、第2の溶媒配合工程と、
前記第2の溶媒配合工程において前記2種以上の溶媒のいずれか1の溶媒であって、前記第1の溶媒配合工程で配合された溶媒とは異なる溶媒を配合したとき、および、前記密度対比工程において前記電子写真感光体用塗布液の密度の測定値が電子写真感光体塗布液の密度の予設定閾値と対応しなかったときに、電子写真感光体用塗布液の液量を測定する、液量測定工程と、
前記液量測定工程において、電子写真感光体用塗布液の液量の測定値が電子写真感光体用塗布液の液量の予設定閾値と対応したときにのみ、粘度および密度が各前記予設定閾値に合わせて予め調整された電子写真感光体用塗布液の補充液を配合する、補充液配合工程と、を備え、
各前記工程を経ることにより、前記電子写真感光体用塗布液の組成を調整、管理することを特徴とする、電子写真感光体用塗布液の管理方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電子写真感光体用塗布液の管理方法により管理された電子写真感光体用塗布液を用いて、浸漬塗布法により、電子写真感光体を製造することを特徴とする、電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−263622(P2007−263622A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86438(P2006−86438)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】