説明

電子写真機器に用いられる、導電性組成物、導電性組成物の架橋体、帯電ロール、及び帯電ロールの製造方法

【課題】表面にコーティング等によるコート層を形成せずに良好な画像を得ることが可能な、導電性組成物、導電性組成物の架橋体、帯電ロール、及び帯電ロールの製造方法を提供する。
【解決手段】イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する導電性組成物をロール状に成形し、加熱してゴム弾性層31を形成した後、ロール表面に紫外線を照射して表面層32を形成して導電性弾性層3を有する電子写真機器用帯電ロール1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器に用いられる、導電性組成物、導電性組成物の架橋体、帯電ロール、及び帯電ロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器において、像担持体面となる感光ドラム等の感光体に接触或いは近接して該感光体を帯電させるために、半導電性のゴムローラ型の帯電ロールが用いられている。この帯電ロールは、感光ドラム等に対して均一な帯電を行うために、密着性を向上させ、表面の電気抵抗を調整することを目的として、金属製芯金の外周面上にゴムの組成物からなる導電性弾性層が設けられている。
【0003】
帯電ロールの導電性弾性層は、該層を構成するゴムの組成物には各種の添加剤が配合されている。そのため帯電ロールを使用している間に、帯電ロールの表面に上記添加剤が滲み出して(ブリードして)来る。これらの帯電ロール表面にブリードした添加剤は、被帯電体となる感光ドラム等に付着して、画像に悪影響を及ぼす。このような欠点を解消するために、導電性弾性層の表面に、イソシアネート化合物による硬化処理が施された帯電ロールが公知である(例えば特許文献1参照)。また、導電性弾性層の表面に移行防止用のコート層が形成された帯電ロールが公知である(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3444391号公報
【特許文献2】特開2002−310136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の帯電ロールのように、導電性弾性層の表面をイソシアネート化合物等で硬化処理を行う方法では、ゴム中の可塑剤、加硫剤等の添加剤の溶出を十分抑制することができない。また硬化処理液に漬けたり、硬化処理液を乾燥硬化する装置が必要であり、設備費用のコストがかかるといった問題がある。また、設備費用を抑制するために、表面処理を行わないと、ゴムからの添加剤の移行が更に多くなり、画像に悪影響を与えてしまうばかりか、感光ドラムの表面を溶かし、クラックの発生等を引き起こしてしまう。
【0006】
帯電ロールにおいて、表面に導電性弾性層から添加剤が滲み出すのを効果的に防止するためには、上記特許文献2に記載されているように、帯電ロールの表面に、添加剤等の移行を防止するためのコート層を厚く形成する必要がある。しかしながら、均一なコート層を形成するためには、コーティング工程が必要であり、工程が増えると共に、コーティング装置が必要となり、設備コストや製造コストが上昇する。また、コーティングから硬化までの間に、未硬化のコート層に埃が付着しやすいといった問題がある。またコーティング液の粘度管理や、コーティングの状態を管理する必要があり、製造が煩わしいといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、表面にコーティング等によるコート層を形成せずに良好な画像を得ることが可能な、導電性組成物、導電性組成物の架橋体、帯電ロール、及び帯電ロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決するためになされたものであり、導電性弾性層の表面に硬化処理やコート層を形成せずに各種のゴム添加剤のブリードを防止する手段を検討したところ、イオン導電性ゴムポリマーを含有する導電性組成物にアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を配合することにより、後工程で表面コート層等の塗工を行うことなく、効果的に導電性弾性層のゴム添加剤等のブリードを防止できることを見い出したものである。
【0009】
本発明の導電性組成物は、イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有することを要旨とする。
【0010】
本発明の導電性組成物において、前記アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量が、前記イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して、5〜200質量部の範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明の電子写真機器用導電性架橋体は、イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する電子写真機器用導電性組成物が架橋されてなることを要旨とする。
【0012】
本発明の電子写真機器用導電性架橋体において、前記アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量が、前記イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して、5〜200質量部の範囲であることが好ましい。
【0013】
本発明の電子写真機器用帯電ロールは、軸体の外周に、イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する導電性組成物の架橋体からなる導電性弾性層が設けられていることを要旨とする。
【0014】
本発明の電子写真機器用帯電ロールにおいて、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量が、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して、5〜200質量部の範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の電子写真機器用帯電ロールにおいて、前記導電性弾性層が、イオン導電性ゴムポリマー及びアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが架橋されたゴム弾性層と、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが架橋された表面層とから構成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の電子写真機器用帯電ロールにおいて、前記ゴム弾性層が加熱により架橋されたものであり、前記表面層が紫外線照射により架橋されたものであることが好ましい。
【0017】
本発明の電子写真機器用帯電ロールの製造方法は、
イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イ オン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する導電性組成物をロール状に成形するロール成形工程と、
ロールの内部側に存在するイオン導電性ゴムポリマー及びアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートを架橋してゴム弾性層を形成するゴム弾性層架橋工程と、
ロールの表面のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートを架橋して表面層を形成する表面層架橋工程とを有することを要旨とする。
【0018】
本発明の電子写真機器用帯電ロールの製造方法において、前記ゴム弾性層架橋工程を成形用金型内で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する導電性組成物を用いるので、前記導電性組成物のイオン導電性ゴムポリマーを架橋させる際に加熱を行うと、導電性組成物に添加しているラジカル重合開始剤によって、イオン導電性ゴムポリマーの架橋と一緒に、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの一部が硬化し、イオン導電性ゴムポリマーと共にゴム弾性層を構成する。その結果、得られた架橋体のゴム弾性層は、イオン導電性ゴムポリマーによる均一な帯電性に加えて、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの硬化物の導電性により、架橋体のゴム弾性層の電気抵抗が低下して、良好な帯電性が得られる。
【0020】
更に上記組成物を成形しゴム弾性層を架橋した状態では、ゴム弾性層の内部には未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが残っている。この未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、光重合開始剤等の添加剤と共にゴム弾性層の表面に滲み出る。未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが存在するゴム弾性層表面に紫外線を照射すると、光重合開始剤が添加されているゴム弾性層表面のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが完全に硬化して、ゴム弾性層の表面にアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの硬化物からなる薄い表面層が形成される。この表面層は、ゴム弾性層中の各種のゴム添加剤等が、ゴム弾性層の表面に移行してくるのを防止する効果を有する。そのため本発明は、従来は必須であった、ゴム弾性層の表面にイソシアネート化合物による硬化処理を施すことや、コーティングによるコート層等を後工程により形成することが不要である。
【0021】
このように本発明は、ゴム弾性層を形成した後は、紫外線照射工程だけでよいので、従来のように硬化処理やコーティングによるコート層形成工程が不要であり、単に紫外線を照射する工程を追加するだけで良い。紫外線の照射装置は、従来の硬化処理液を漬けたり、硬化処理液を乾燥硬化する装置や、コーティング装置等が大規模な装置であるのに対し、比較的小規模な装置で済むことから、設備費用を大きく低減することができる。
【0022】
更に本発明によれば、導電性弾性層を形成した後に、硬化処理液に漬ける作業や、コーティングの作業が不要となるから、これらの処理に付随するコーティング液の管理や、コーティング工程の管理等の煩わしさがなく、製造が容易あり、作業性が優れ、製造コストを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の電子写真機器用帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。図1に示す電子写真機器用帯電ロール1(以下、単に帯電ロールという)は、中空円筒状の軸体2の外周に導電性組成物の架橋体からなりロール状に形成された導電性弾性層3のみが設けられている。この導電性弾性層3は、軸体2側となる内部側のゴム弾性層31と、該ゴム弾性層31の表面に形成されている表面層32とから構成されている。そして導電性弾性層3の内部側の前記ゴム弾性層31は、イオン導電性ゴムポリマー及びアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが加熱により架橋されてなり、前記表面層32は、前記ゴム弾性層31表面に滲み出た未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが紫外線照射により架橋されてなるものである。前記表面層32は、ゴム弾性層31内部からの添加剤等のブリードやブルームを防止する機能を有する。
【0024】
軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、又はこれらにめっきが施された導電性シャフト等が用いられる。また必要に応じ、軸体2表面に接着剤、プライマー等を塗布しても良い。上記接着剤、プライマー等には、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0025】
導電性弾性層3は、少なくともイオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する導電性組成物から形成される。以下、導電性組成物について説明する。
【0026】
導電性組成物に用いられるイオン導電性ゴムポリマーは、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、又はエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性を有するゴムが用いられる。上記エピクロルヒドリンゴムは、具体的には、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体(ECO)、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GCO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GECO)等のエピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらは1種単独で使用しても、或いは2種以上混合して使用してもよい。上記のイオン導電性ゴムポリマーを用いることにより、導電性組成物の架橋体は、低へたり性、導電性、柔軟性等の優れた特性を備える。
【0027】
導電性組成物に用いられるアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、少なくとも分子構造中に(メタ)アクリレート単位、及び−(C2n−O)−で示されるアルキレンオキシド単位を含むものである。本発明において(メタ)アクリレートという場合、アクリレート及びメタクリレートを包含するという意味である。アルキレンオキシド単位は、エチレンオキシド単位(n=2)又はプロピレンオキシド単位(n=3)等が挙げられ、上記mは1〜30の範囲である。
【0028】
アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、アルキレンオキシド単位を含有することで、硬化物の電気抵抗が低くなる。アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシド単位の含有量は、好ましくは、1〜98質量%の範囲内、より好ましくは、20〜98質量%の範囲内、更に好ましくは、40〜98質量%の範囲内である。アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシド単位の含有量は、NMR(核磁気共鳴装置)等を用いて測定することができる。
【0029】
アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートを組成物に配合することで、イオン導電性ゴムの架橋体は、更に低電気抵抗に形成される。その結果、イオン導電剤の配合量を減らすことができる。アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、イオン導電剤と比較して安価であるから、イオン導電剤の配合量が少なくなると、組成物のコストが下がる。このような点から、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、それ自体の硬化物の体積固有抵抗が1×10Ω・cm以下であるのが好ましい。
【0030】
アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、アルキレンオキシド単位以外にも、他の単位が1種又は2種以上、分子構造中に導入されていても良い。上記他の単位としては、、トリメチロールプロパン単位、ペンタエリスリトール単位、エチルヘキシルカルビトール単位、グリセリン単位、ノニルフェノール単位、パラクミルフェノール単位、ビスフェノールA単位、スチレンオキシド単位、イソシアヌル酸単位、ビスフェノールF単位、フタル酸単位、フェノキシ単位、シリコーン単位、フッ素単位、ウレタン単位、水酸基単位、アミド単位、リン酸単位、テトラメチレングリコール単位、脂肪族単位、ブタジエン単位等が挙げられる。
【0031】
上記(1)式のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有しているモノ(メタ)アクリレートであるが、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を2個有しているジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を3個以上有している多官能(メタ)アクリレート等を用いることができる。アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、要求される帯電ロールの特性や紫外線照射工程における作業時の硬化性等に応じて、適宜選択することができる。
【0032】
上記モノアクリレートのアルキレンオキシド変性アクリレートとしては、例えばフェノキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2エチルヘキシルEO変性アクリレート、ブトキシEO変性アクリレート、EO変性クレゾールアクリレート等が挙げられる。上記EO変性は、エチレンオキシド変性を略記したものである。
【0033】
ジアクリレートのアルキレンオキシド変性アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、PO/EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。上記PO変性は、プロピレンオキシド変性を略記したものである。
【0034】
多官能アクリレートのアルキレンオキシド変性アクリレートとしては、例えばPO変性グリセリントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0035】
モノメタクリレートのアルキレンオキシド変性メタクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
ジメタクリレートのアルキレンオキシド変性メタクリレートとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0037】
多官能メタクリレートのアルキレンオキシド変性メタクリレートとしては、例えばEO変性トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。
【0038】
上記アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、1種単独で使用しても、或いは2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
導電性組成物のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量は、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して5〜200質量部の範囲であることが好ましい。アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量が5質量部以上であれば、ロールの表面に十分滲み出して表面層32を確実に形成することができ、配合量が200質量部以下であれば、イオン導電性ゴムポリマーのゴム弾性が確実に得られる。上記と同様の理由より、更に好ましいアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量は、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して10〜50質量部の範囲である。
【0040】
導電性組成物に配合されるイオン導電剤は、特に限定されることなく、電子写真機器分野で使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。上記イオン導電剤としては、例えばテトラブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルオクタデシルアンモニウムパークロレート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩等が用いられる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0041】
導電性組成物中のイオン導電剤の配合量は、下限値が、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、更により好ましくは、1質量部以上であると良い。イオン導電剤の含有量の上限値は、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0042】
導電性組成物にはイオン導電剤以外の導電剤を添加しても良い。このような導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO
、c−ZnO、c−SnO等(c−は導電性を意味する。)が挙げられる。
【0043】
導電性組成物に配合されるラジカル重合開始剤は、熱分解によりラジカルを発生し、イオン導電性ゴムポリマーを架橋可能なものであれば用いることができる。ラジカル重合開始剤は、有機過酸化物系重合開始剤が、取り扱い易く、揮発性が低いことなどから、好ましく用いられる。有機過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル4,4’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ−α−クミルペルオキシド(DCPO)、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,4(又は1,3)−ビス〔(t−ブチルペルオキシ)イソプロピル〕ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−α−クミルペルオキシド等が挙げられる。
【0044】
導電性組成物中のラジカル重合開始剤の配合量はイオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲が、架橋度とブルーム抑制の2つの理由から好ましく、更に好ましくは、0.5〜5質量部の範囲である。
【0045】
導電性組成物に配合される光重合開始剤は、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートを紫外線等の光により光重合して硬化させることが可能なものであれば、特に限定されることなく、使用することができる。
【0046】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2−メチルベンゾイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジアセチル、エオシン、チオニン、ミヒラーケトン、アントラセン、アントラキノン、アセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピルαヒドロキシイソブチルフェノン、α・α´ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルベンゾイルフォルメイト、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]・2・モルフォリノ−プロペン、チオキサントン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキシド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−イル)チタニウム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビスアシルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、(η5
−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)等を例示することができる。これらは単独で使用しても或いは2種以上併用しても良い。
【0047】
導電性組成物中の光重合開始剤の配合量はイオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し、0.1〜50質量部の範囲が、表面における硬化反応のしやすさという点から好ましく、更に好ましくは、1〜10質量部の範囲である。
【0048】
導電性組成物には、上記成分以外に、必要に応じて他の成分を添加しても良い。他の成分としては例えば、上記アルキレンオキシド変性アクリレート以外の光重合成分、光重合促進剤、粗さ形成用粒子、増量剤、補強剤、粘度調整剤、老化防止剤、加工助剤、硬化剤、架橋助剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、オイル、難燃剤、滑剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤等の各種添加剤を1種又は2種以上含有していても良い。
【0049】
上記の光重合成分とは、例えば、分子構造中にアルキレンオキシド単位が導入されていない(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。このような(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的には、ヘキサジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、イソシアヌル酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシフェニルモノアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ヒドロキシエチルモノアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が使用できる。これらは1種又は2種以上混合して用いても良い。
【0050】
導電性組成物が、粗さ形成用粒子を含んでいると、上記導電性組成物の架橋体の表面に凹凸が形成されやすくなり、帯電の均一化、帯電量の向上に寄与する。上記粗さ形成用粒子としては、例えば、ウレタン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、アクリル粒子、尿素樹脂粒子、アミド粒子等の樹脂粒子、ゴム粒子、シリカ粒子等が挙げられる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。上記粗さ形成用粒子の平均粒径は、通常、0.1〜30μm程度であり、好ましくは、1〜20μm、更に好ましくは、5〜15μmである。
【0051】
以下、帯電ロールの製造方法について説明する。図2(a1)〜(c2)は帯電ロールの製造方法の一例を示す工程図であり、同図(b1)、(b2)はロール成形工程及びゴム弾性層架橋工程を示し、同図(c1)、(c2)は表面層架橋工程を示している。。尚、同図(a1)、(b1)、(c1)は帯電ロールの周方向の断面を示し、(a2)、(b2)、(c2)は夫々、前記(a1)、(b1)、(c1)の軸方向断面を示すものである。
【0052】
本発明の帯電ロールの製造方法は、先ず、上記導電性組成物の各成分をニーダー等の混練機で混練し、導電性組成物を準備する。また図2(a1)、(a2)に示すように、軸体2を準備する。次いで、図2(b1)、(b2)に示すように、ロール成形工程では、金型11内に前記軸体2を設置し、軸体2の外周に上記導電性組成物を注入して成形し、ロール31aを設ける。このロール31aを成形する際の注入温度は、組成物の粘度を下げつつ、かつ架橋が進まないように50℃〜100℃で行う。
【0053】
次いでゴム弾性層架橋工程では、図2(b1)、(b2)に示すように金型11内からロール31aを取り出さず、ロール31aが金型11の内部にあり、ロール31aの表面が金型11内と接触している状態で、該ロール31aを加熱して、イオン導電性ゴムポリマーを架橋してゴム弾性層を形成する。ロール31aを加熱するとラジカル重合開始剤がラジカルを発生し、イオン導電性ゴムポリマーを架橋してロール形状のゴム弾性層31が形成される。このときの加熱により、ロール31a中のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの一部もイオン導電性ゴムポリマーと架橋して硬化する。このときゴム弾性層31を形成するための加熱だけでは、ゴム弾性層31内部のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは完全に硬化せず、未硬化物が残る。またゴム弾性層31の表面にも、未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが光重合開始剤と共に存在している。またゴム弾性層31内部の未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートは、光重合開始剤等の添加剤等と共にゴム弾性層31の表面に滲み出て来る。上記の理由から、導電性組成物のロール状成形物を加熱して架橋しゴム弾性層31を形成した状態では、図3(c1)、(c2)に示すように、ゴム弾性層31の表面に、未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート層32aが存在する状態となっている。
【0054】
尚、ゴム弾性層架橋工程において、ロール31aを加熱して架橋する場合、ロール31aを金型の外に出して加熱を行っても良いが、図2(b1)、(b2)に示すように成形用金型11内で加熱を行って架橋するのが好ましい。ロール31aの表面が金型面に接触して酸素が遮断された状態で加熱を行うと、ロール31aの表面のラジカル重合開始剤が酸素により失活することがないので、イオン導電性ゴムポリマーの架橋反応が阻害されず、弾性層31の表面の架橋が不十分となる不具合を防止できる。
【0055】
次に表面層架橋工程では、図2(c1)、(c2)に示すように、ゴム弾性層31を形成したロールを金型11から取り出して、紫外線照射装置12を用いて、ゴム弾性層31の表面全体に紫外線13を照射する。ゴム弾性層31の表面に存在する未硬化のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート32aが、紫外線の照射により完全に硬化して、ゴム弾性層31の表面にアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの硬化物からなる表面層32が形成される。なお図2(c1)、(c2)では、ロールの一部に紫外線が照射されているが、実際はロールを回転させながら照射を行っておりロールの外周面の全体に紫外線が照射される。
【0056】
紫外線照射装置12としては、水銀灯、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の紫外線光源を備えた装置を用いることができる。
【0057】
紫外線照射により形成したアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの硬化物からなる表面層32は、帯電ロール1の最表面に位置し、帯電ロール1の表面を保護すると共に、下層のゴム弾性層31からのゴム添加剤等が表面にブリードやブルームするのを効果的に防止する機能を有する。そのため、表面層32の上に更に保護層等を形成する必要がない。したがって、軸体2の外周に導電性弾性層3のみを形成した状態で、帯電ロール1を構成することができる。その結果、帯電ロール1を製造する場合、コーティング等の後工程が不要である。
【0058】
導電性弾性層3を所定形状に成形する場合、上記したロール成形用金型11を用いる方法以外に、軸体2の表面に導電性組成物を直接押出成形する方法(押出法)を用いることができるが、上記したように金型を用いた成形法が好ましい。その理由は以下の通りである。
【0059】
上述したように、金型を用いると、ロール31aを加熱して架橋する場合、表面が金型面に接触し酸素との接触を遮断した状態で加熱を行うことができるので、イオン導電性ゴムポリマーの表面の架橋が不十分となる不具合を防止できる。更に、金型を用いると、柔軟な導電性弾性層を備える帯電ロールを容易に製造することができる。押出法で柔軟な導電性弾性層3のロールを成形しようとすると、ロール表面に波打ちが発生してしまい、表面が平坦なロールを製造するのが極めて困難である。帯電ロールは、感光ドラムを帯電させる場合、感光ドラムと直接接触して使用される。帯電ロールが硬いと、感光ドラムと帯電ロールとの接触が不均一かつ不十分となり安定した帯電性能を発揮できなくなる。帯電性能を安定して発揮させるためには、柔らかい帯電ロールの方が、感光ドラムとの接触部分を大きくできるため好ましい。
【0060】
導電性弾性層3のゴム弾性層31の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1〜10mm、より好ましくは、1〜5mmの範囲内から選択することができる。
【0061】
また導電性弾性層3の表面層32の厚さは、使用する導電性組成物に配合されるアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの種類や配合量、ゴム弾性層31の成形から紫外線照射までの時間等により、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートがゴム弾性層の表面へ滲み出す量を調節して、所定の表面層32の厚さとすることができる。表面層32の厚さは、0.5〜20μmに形成するのが好ましい。
【0062】
帯電ロール1において、導電性弾性層3の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1010Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cm、更により好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内から選択することができる。
【0063】
また帯電ロール1の導電性弾性層3は、複数層から構成することもできるが、図1に示す様な単層構成とすることが、製造が容易であり、帯電ロール1を最も安価に得ることができることから好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
〔導電性組成物の調製〕
表1に示す配合組成で各成分を配合し、ロールを用いて混練して、実施例1〜3、比較例1〜3、参考例2の導電性組成物を調製した。尚、参考例1の組成物は、実施例1と同じ組成物を用いた。また参考例2の組成物はアクリレート成分及び光重合開始剤を添加しなかった。表1の※1〜※3のEO変性アクリレート及びポリエステルアクリレートは、以下の構造のものを用いた。
【0065】
※1[EO変性アクリレートA]
化学名:ポリエチレングリコールジアクリレート
商品名:東亞合成製、アロニックスM245
化学式:CH=CHCOO(CO)−COCH=CH
体積固有抵抗率:1.0×10Ω・cm
【0066】
※2[EO変性アクリレートB]
化学名:ノニルフェノールEO変性アクリレート
商品名:共栄社化学製、ライトアクリレートNP4EA
化学式:CH=CHCOO(CO)−C−C19
体積固有抵抗率:1.0×10Ω・cm
【0067】
※3[ポリエステルアクリレート]
商品名:東亞合成製、アロニックスM−8060
体積固有抵抗率:1.0×1013Ω・cm
【0068】
〔帯電ロールの作製〕
実施例1〜3、比較例1〜3
軸体として直径6mmの芯金外周面に接着剤を塗布した後、該芯金を所定の金型内に装填し、金型内の中空部に上記導電性組成物を注型した。更に金型を閉じて、加熱(160℃、60分)した後金型から脱型して、芯金の外周面にゴム弾性層(厚さ2mm)が形成されたロールを得た。次に紫外線照射装置を用いて、前記ロールのゴム弾性層外周面に紫外線を30秒間照射して帯電ロールを得た。
【0069】
参考例1
参考例1は、実施例1の組成物を用いて実施例1と同様に金型で成形して加熱してゴム弾性層を形成したが、紫外線照射を行わなずに帯電ロールとした。
【0070】
参考例2
参考例2は、実施例2の組成物においてEO変性アクリレート及び光重合開始剤を配合しなかった組成物を用い、実施例2と同様に金型で成形して加熱した後脱型して芯金の外周面にゴム弾性層が形成されたロールとした。次いで、このロールのゴム弾性層の外周面に下記の保護層組成物をコーティングした後、紫外線を照射して硬化させ表面保護層(厚さ5μm)を形成して参考例2の帯電ロールを得た。
【0071】
[参考例2の保護層組成物]
・アロニックスM245 50質量部
・ライトアクリレートNP4EA 50質量部
・ダロキュア1173 2質量部
・4級アンモニウム塩 1質量部
【0072】
このようにして得られた実施例1〜3、比較例1〜3、参考例1、2の帯電ロールについて、感光ドラム汚れ、画像、ドラム帯電性、ロールへたり性、耐久後の画像について評価を行った。試験結果を表1に合わせて示す。これらの試験方法及び評価基準は以下の通りである。
【0073】
〔感光ドラム汚れ試験方法〕
感光ドラムに対する付着物を下記の方法で評価した。感光ドラムと帯電ロールを荷重1000gをかけて接触させ、40℃90%環境に1週間保管後、目視にて感光ドラム表面を確認、付着物があるものを×、付着物がないものを○とした。
【0074】
〔画像試験方法〕
帯電ロールを市販A4サイズカラーレーザープリンタ(リコー社製、IPSIO CX3000)に組み込んで、23℃53%環境にて24時間養生後にシアン色でハーフトーン画像を印刷し、入力画像と同等のハーフトーン画像が出力され、感光ドラムと帯電ロールが最初に接触していた部分にスジがないものを○、入力画像と同等のハーフトーン画像が出力され、感光ドラムと帯電ロールが最初に接触していた部分に若干のスジが認められるものを△、ハーフトーン画像と著しく色が異なるか、感光ドラムと帯電ロールが最初に接触していた部分にはっきりとスジが認められるものを×とした。
【0075】
〔耐久後の画像試験方法〕
帯電ロールを組み込んで画像の試験を行った市販A4サイズカラーレーザープリンタを用いて、文字文書10000枚印刷を実施した後、評価対象画像を印刷して画像の評価を行った。耐久後の画像試験方法において、画像の印刷及び評価は、前述の画像試験と同様の方法・基準で行った。
【0076】
〔ドラム帯電性試験方法〕
帯電ロールを組み込んだ市販A4サイズカラーレーザープリンタを用い、プリンターカートリッジの帯電ロールの芯金にDC−1200Vの電圧を印加して感光ドラムを帯電させた際のドラムの表面電位を表面電位計で測定してドラム帯電性を評価した。ドラム帯電性の評価基準は、ドラム表面電位が、−540V以下であるものを○、−540V超であるものを×として評価した。
【0077】
〔ロールへたり性試験方法〕
帯電ロールに1000gの荷重を加えた状態で、40℃90%環境に1週間載置した後、ロールヘタリ量(外径変化量)を測定し、ヘタリ量が5μm以下の場合を○とし、5μm超〜10μm以下の場合を△とし、10μm超の場合を×として評価した。
【0078】
【表1】





【0079】
表1に示すように、本発明の実施例1〜3の帯電ロールは、画像及び通電耐久性のいずれの評価も良好なものであった。これに対し、イオン導電性ゴムの代わりにEPDMを用いた比較例1は、画像(初期及び耐久後)とドラム帯電性が不良であった。またEO変性アクリレートを用いずにポリエステルアクリレートを用いた比較例2は、画像(初期及び耐久後)とドラム帯電性が不良であった。またラジカル重合開始剤及び光重合開始剤を用いずに、硫黄加硫を行った比較例3は感光ドラム汚れ、画像(初期及び耐久後)、ロールへたり性等が不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。
【図2】本発明の帯電ロールの製造方法の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0081】
1 帯電ロール
2 軸体
3 導電性弾性層
31 ゴム弾性層
32 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有することを特徴とする電子写真機器用導電性組成物。
【請求項2】
前記アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量が、前記イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して、5〜200質量部の範囲であることを特徴とする請求項1記載の電子写真機器用導電性組成物。
【請求項3】
イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する電子写真機器用導電性組成物が架橋されてなることを特徴とする電子写真機器用導電性架橋体。
【請求項4】
前記アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量が、前記イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して、5〜200質量部の範囲であることを特徴とする請求項3記載の電子写真機器用導電性架橋体。
【請求項5】
軸体の外周に、イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する導電性組成物の架橋体からなる導電性弾性層が設けられていることを特徴とする電子写真機器用帯電ロール。
【請求項6】
アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートの配合量が、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して、5〜200質量部の範囲であることを特徴とする請求項5記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項7】
前記導電性弾性層が、イオン導電性ゴムポリマー及びアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが架橋されたゴム弾性層と、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートが架橋された表面層とから構成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項8】
前記ゴム弾性層が加熱により架橋されたものであり、前記表面層が紫外線照射により架橋されたものであることを特徴とする請求項7記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項9】
イオン導電性ゴムポリマー、アルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イオン導電剤、ラジカル重合開始剤、及び光重合開始剤を含有する導電性組成物をロール状に成形するロール成形工程と、
ロールの内部側に存在するイオン導電性ゴムポリマー及びアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートを架橋してゴム弾性層を形成するゴム弾性層架橋工程と、
ロールの表面のアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートを架橋して表面層を形成する表面層架橋工程とを有することを特徴とする電子写真機器用帯電ロールの製造方法。
【請求項10】
前記ゴム弾性層架橋工程を成形用金型内で行うことを特徴とする請求項9記載の電子写真機器用帯電ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−80218(P2009−80218A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248389(P2007−248389)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】