説明

電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物およびそれを用いた電子写真機器用導電性ロール

【課題】乾燥工程を必要とせず、短時間でロールを製造することができ、特性のばらつき、へたり、汚染といったロール品質の問題を解消できる電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物およびそれを用いた電子写真機器用導電性ロールを提供する。
【解決手段】ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とし、光カチオン重合開始剤を含有する、電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物とする。そして、軸体1と、その外周に形成される単数ないし複数の構成層2,3とを備えた電子写真機器用導電性ロールであって、上記構成層のうちの少なくとも一層が、上記樹脂組成物の紫外線硬化体からなる層である電子写真機器用導電性ロールとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物およびそれを用いた電子写真機器用導電性ロールに関するものであり、詳しくは、主に、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器の帯電ロールや現像ロール等の導電性ロールの材料として用いられる樹脂組成物およびそれを用いた電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、接触帯電方式の電子写真複写機における画像形成は、次のようにして行われる。すなわち、まず、感光ドラムに帯電ロールを圧接して感光ドラム表面を一様に帯電させ、光学系を介して感光ドラム表面に原稿像を投射し、光が投射された部分の帯電を打ち消すことにより、静電潜像を形成する。つぎに、現像ロール表面に均一にトナーを担持させ、このトナーを上記静電潜像に付着させてトナー像を形成した後、このトナー像を複写紙に転写する。このようにして、複写画像を得ることができる。
【0003】
上記のような、帯電ロール、現像ロール等といった電子写真機器用導電性ロールは、一般に、軸体となる芯金の外周に、導電性ゴム組成物からなるベース層(基層)が所定の厚さで形成され、構成されている。また、上記ベース層の外周面上には、必要に応じて、導電性ゴム材料からなる軟化材移行防止層や、半導電性ゴム材料及び導電性樹脂組成物からなる抵抗調整層、表層(保護層)等が、順次、積層形成される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−256335公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電子写真機器用導電性ロールにおいて、例えばベース層の上に表層を形成する場合、芯金と基層とからなるベースロールを、溶剤系もしくは水系の塗工液(表層材料)中に含浸させたり、上記ベースロールに上記塗工液をスプレーしたりし、その後に、上記ベースロール外周面の塗工液を、熱または熱風で乾燥硬化することにより、上記表層が形成される。この場合、長時間の乾燥が必要なため、量産には大規模な乾燥ラインが必要である。
【0005】
さらに、上記塗工液からなる塗膜層には、その機能から、微妙な導電性および表面状態が要求されるが、上記乾燥ライン内の温度分布や風量等にばらつきがあると、上記塗膜層の性能に大きく影響するため、ロールの品質の点で問題を生じるおそれがある。
【0006】
一方、電子写真機器用導電性ロールは、感光ドラムに当接させた状態で使用されるため、そのベース層は、低硬度でへたり難く、かつ、可塑剤のブリードにより感光ドラムを汚染させることのないもの(非汚染性のもの)であることが要求される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、乾燥工程を必要とせず、短時間でロールを製造することができ、特性のばらつき、へたり、汚染といったロール品質の問題を解消できる電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物およびそれを用いた電子写真機器用導電性ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とし、光カチオン重合開始剤を含有する、電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、軸体と、その外周に形成される単数ないし複数の構成層とを備えた電子写真機器用導電性ロールであって、上記構成層のうちの少なくとも一層が、上記第1の要旨の樹脂組成物の紫外線硬化体からなる層である電子写真機器用導電性ロールを第2の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ね、その研究の過程で、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とし、光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物を、電子写真機器用導電性ロールの用途に用いることを想起した。上記樹脂組成物は、導電性を有するとともに、紫外線照射により、短時間で架橋率の高い硬化物を形成でき、しかも、その硬化に乾燥工程を必要としない。そのため、乾燥条件のばらつき(温度分布や風量等のばらつき)に起因する塗膜層の性能への悪影響もない。しかも、光カチオン重合は、酸素による表面硬化阻害などの問題が生じず、硬化収縮が小さいため、特に薄膜形成性に優れ、特性のばらつきも生じ難い。さらに、紫外線照射後も未硬化成分の硬化が暗反応として進行するため、未反応分のブリードの心配がない。また、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルは、主鎖にポリオキシテトラメチレン構造をとるエポキシ化合物であり、ゴムのような高弾性を発現するため、耐へたり性にも優れている。これらのことから、本発明者らは、上記樹脂組成物を、電子写真機器用導電性ロールの表層やベース層等の材料として用いることにより、優れた特性が発揮できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明の電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物は、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とし、光カチオン重合開始剤を含有するものである。そのため、紫外線照射により、乾燥工程を必要とせず、短時間で、架橋率の高い構成層を備えた導電性ロールを製造することができる。また、上記のように乾燥工程が不要となるため、乾燥条件のばらつきに起因するロール性能への悪影響も解消される。
【0012】
そして、表層やベース層等として上記のような構成層を備えた本発明の電子写真機器用導電性ロールは、上記構成層がゴムのような高弾性を発現するため、耐へたり性に優れ、また、ブリードによる汚染を生じずに済み、さらに、上記構成層の硬化収縮も小さいため、ロール特性のばらつきも小さくすることができる。したがって、帯電ロール、現像ロール等として優れた性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明の電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と略す)は、先に述べたように、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とし、光カチオン重合開始剤を含有する樹脂組成物である。ここで「主成分」とは、組成物の特性に大きな影響を与えるもののことであり、通常は、全体の50重量%以上を意味する。そして、本発明の電子写真機器用導電性ロール(以下、「導電性ロール」と略す)は、その構成層として、上記樹脂組成物の紫外線硬化体からなる層を備えている。
【0015】
上記樹脂組成物の主成分であるポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルは、その数平均分子量(Mn)が130〜6000の範囲内のものが好ましく、特に好ましくは、数平均分子量(Mn)400〜3000のものである。すなわち、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルの数平均分子量(Mn)が上記数平均分子量(Mn)が130未満であると、硬度が低下し難く、ロールの耐へたり性が得られ難いからであり、逆に、6000を超えると、常温で高粘度もしくはワックス状態になるため、加工性が悪くなるおそれがある。
【0016】
上記ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルとともに用いられる光カチオン重合開始剤としては、紫外線照射によりカチオンを発生し、上記ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルの重合を開始させる作用を有するものが用いられ、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン等が用いられる。上記ヨードニウム塩としては、4−メチルフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート等があげられる。また、上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート等があげられる。また、上記ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート等があげられる。また、上記フェロセンとしては、η5 −シクロペンタジエニル−η5 −クメニル−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、η5 −シクロペンタジエニル−η5 −クメニル−鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、η5 −シクロペンタジエニル−η5 −クメニル−鉄(II)テトラフルオロボレート等があげられる。そして、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0017】
そして、上記光カチオン重合開始剤の含有割合は、上記ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル100重量部(以下、「部」と略す)に対して、0.01〜10部の範囲内に設定することが好ましく、特に好ましくは、0.1〜5部の範囲内である。すなわち、上記光カチオン重合開始剤の含有割合が0.01部未満であると、紫外線照射による架橋が充分になされないからであり、逆に、上記光カチオン重合開始剤の含有割合が10部を超えると、重合開始剤がブリードするからである。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、このように、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とし、光カチオン重合開始剤を含有するものであるが、必要に応じ、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の導電剤や、充填剤、着色剤、硬化剤、硬化促進剤等が、適宜に添加される。
【0019】
ところで、本発明の樹脂組成物は、例えば、その各成分を、攪拌羽根を有する攪拌機等により混合することにより、調製される。
【0020】
そして、本発明の樹脂組成物は、帯電ロール、現像ロール等の電子写真機器用導電性ロールにおける各層の材料組成物として用いることができ、特に、低硬度性が要求されるベース層(基層)や、微妙な導電性および表面状態が要求される表層の材料組成物として好ましく用いられる。
【0021】
本発明の導電性ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0022】
〔本発明の樹脂組成物を表層の材料として用いる場合〕
図1に示すように、軸体1の外周面に沿ってベース層2が形成され、その外周面に表層3が形成されて、構成されている導電性ロールにおいて、その表層3の材料として、本発明の樹脂組成物を用いる場合について説明する。すなわち、まず、シリコーンゴム等のゴムに導電剤等を添加し、混練することにより、ベース層2用材料を調製する。また、前述のように、攪拌羽根を有する攪拌機等により調製した本発明の樹脂組成物を、表層3用材料として準備する。つぎに、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体1をセットし、上記円筒状金型と軸体1との空隙部に、上記ベース層2用材料を注型した後、金型に蓋をし、加熱架橋して、ベース層2用材料を架橋させる。その後、上記円筒状金型から脱型することにより、軸体1の外周面にベース層2が形成されてなるベースロールを得る。なお、上記脱型後のベースロールのベース層2外周面には、表層3の接着性をより高めるため、コロナ放電等による表面処理を適宜施す。そして、上記ベースロールの外周に、上記表層3用材料を塗工する。この塗工法は、例えば、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の方法が適用できる。そして、上記塗工後、このロールを回転させながら、上記表層3用材料からなる塗膜を紫外線照射により硬化させる。これにより、目的とする導電性ロールを製造することができる(図1参照)。なお、上記紫外線照射は、紫外線照射機(例えば、アイグラフィック社製のUB031−2A/BM)により行うことができ、その紫外線照射機の紫外線ランプと塗膜との距離は100〜300mmで、30秒〜30分間紫外線照射することにより行われる。
【0023】
〔本発明の樹脂組成物をベース層の材料として用いる場合〕
図1に示すように、軸体1の外周面に沿ってベース層2が形成され、その外周面に表層3が形成されて、構成されている導電性ロールにおいて、そのベース層2の材料として、本発明の樹脂組成物を用いる場合について説明する。すなわち、まず、前述のように、攪拌羽根を有する攪拌機等により調製した本発明の樹脂組成物を、ベース層2用材料として準備する。また、N−メトキシメチル化ナイロン等に導電剤等を添加し、これらを有機溶剤に溶解し、攪拌羽根を有する攪拌機等により攪拌することにより、表層3用材料(塗工液)を調製する。つぎに、ガラス製のロール成形用型の中空部に、金属製の軸体1をセットし、上記ロール成形用型と軸体1との空隙部に、上記ベース層2用材料を注型した後、上記ロール成形用型の外側から紫外線を照射することにより、組成物を硬化させる。その後、上記ロール成形用型から脱型することにより、軸体1の外周面にベース層2が形成されてなるベースロールを得る。なお、本発明の樹脂組成物をベース層2の材料としてベースロールを作製する方法は、その他にも、例えば、接着剤、プライマーなどを任意に塗布した金属製の軸体に対し、本発明の樹脂組成物を、ロールコート法、ディッピング法、スプレー法により塗工し、紫外線を照射するといった操作を複数回繰り返す方法がある。このようにすることにより、任意の厚さのベース層を作製することができる。上記紫外線照射は、紫外線照射機(例えば、アイグラフィック社製のUB031−2A/BM)により行うことができ、その紫外線照射機の紫外線ランプと塗膜との距離は100〜300mmで、30秒〜30分間紫外線照射することにより行われる。そして、上記のようにして得られたベースロールのベース層2外周面に、上記表層3用材料(塗工液)を塗工する。この塗工法は、例えば、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の方法が適用できる。そして、上記塗工後、乾燥および加熱(120〜200℃で20〜90分)を行うことにより、表層3を形成する。これにより、目的とする導電性ロールを製造することができる(図1参照)。
【0024】
上記のように、本発明の樹脂組成物を、表層やベース層といったロール構成層の材料として用いた場合、その構成層の形成の際に、従来のような乾燥や加熱を必要とせず、短時間で製造することができる。
【0025】
なお、本発明の樹脂組成物の硬化体がポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルの架橋体であるという判定は13C−NMR、 1H−NMR、IR、ガスクロマトグラフィーなどの分析機器を併用することにより、分析することができる。
【0026】
そして、上記樹脂組成物を用いて形成された本発明の導電性ロールは、耐へたり性に優れ、また、ブリードによる汚染を生じずに済み、さらに、上記樹脂組成物からなる構成層の硬化収縮も小さいため、ロール特性のばらつきも小さくすることができる。したがって、帯電ロール、現像ロール等として優れた性能を発揮することができる。
【0027】
なお、この導電性ロールにおいて、ベース層2の厚みは、0.5〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは、厚み1〜6mmの範囲である。また、表層3の厚みは、3〜100μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは、厚み5〜50μmの範囲である。
【0028】
また、本発明の導電性ロールの例として、図1に示すような二層構造のものをあげたが、例えば、ロールの用途等に応じ、単層構造としてもよく、また、ベース層2と表層3との間に中間層を介在させてもよい。そして、本発明の樹脂組成物は、これら各層の材料として適用することができる。
【0029】
つぎに、実施例について比較例等と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
まず、実施例、比較例等に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0031】
〔エポキシ化合物a〕
ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(数平均分子量:950)(四日市合成社製、エポゴーセーPT)
〔エポキシ化合物b〕
ポリブタジエンエポキシド(ダイセル化学工業社製、エポリードPB3600)
〔エポキシ化合物c〕
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX−931)
〔エポキシ化合物d〕
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダイセル・サイテック社製、セロキサイド2021P)
〔エポキシ化合物e〕
εカプロラクトン変性3,4エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2081)
【0032】
〔光カチオン重合開始剤a〕
芳香族スルホニウム塩(サンアプロ社製、CPI−100P)
〔光カチオン重合開始剤b〕
芳香族ヨードニウム塩(チバ・ジャパン社製、IRGACURE250)
【0033】
〔硬化剤〕
トリエチレンテトラミン(東ソー社製、TETA)
【0034】
〔実施例1〜2、比較例1〜5〕
つぎに、上記材料を、下記の表1に示す割合で配合し、攪拌羽根を有する攪拌機により混合することにより、樹脂組成物A〜G(実施例1〜2、比較例1〜5)を調製した。
【0035】
【表1】

【0036】
このようにして得られた樹脂組成物A〜Gを用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表2に併せて示した。
【0037】
〔デュロメータ硬度〕
直経28mm×高さ12mmの円筒形状のガラス製成形型に、攪拌羽根を有する攪拌機により混合した組成物(樹脂組成物A〜Fのいずれか)を注型し、上記成形型の外側から紫外線を照射することにより、組成物を硬化させ、その後、脱型し、測定試料(サンプル)を得た。上記紫外線照射の際、紫外線照射機(アイグラフィック社製、UB031−2A/BM)の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)と成形型内の組成物との距離は200mmとし、3分間の照射(紫外線の積算光量360mW/cm2 )とした。また、樹脂組成物Gに関しては、直経28mm×高さ12mmの円筒形状の金型に、その組成物を注型し、上記金型を加熱(70℃で2時間の加熱後、さらに110℃で1時間の加熱)することにより、組成物を硬化させ、その後、脱型し、サンプルを得た。このようにして得られたサンプルについて、JIS−K−6253に記載の方法に準拠し、デュロメータ硬度(タイプA)を測定した。なお、この値が65以下であれば、低硬度性に優れていることを示す。
【0038】
〔反発弾性率〕
直経28mm×高さ12mmの円筒形状のガラス製成形型に、攪拌羽根を有する攪拌機により混合した組成物(樹脂組成物A〜Fのいずれか)を注型し、上記成形型の外側から紫外線を照射することにより、組成物を硬化させ、その後、脱型し、測定試料(サンプル)を得た。上記紫外線照射の際、紫外線照射機(アイグラフィック社製、UB031−2A/BM)の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)と成形型内の組成物との距離は200mmとし、3分間の照射(紫外線の積算光量360mW/cm2 )とした。また、樹脂組成物Gに関しては、直経28mm×高さ12mmの円筒形状の金型に、その組成物を注型し、上記金型を加熱(70℃で2時間の加熱後、さらに110℃で1時間の加熱)することにより、組成物を硬化させ、その後、脱型し、サンプルを得た。このようにして得られたサンプルについて、JIS−K−6255に記載の方法に準拠し、反発弾性率(%)を測定した。なお、この値が65以上であれば、弾性に優れていることを示す。
【0039】
〔硬化時間〕
上記「反発弾性率」試験を行うために作製した円筒状の硬化物(サンプル)の作製手順に従い、紫外線照射時間や加熱時間を変えながら、サンプルを製造した。そして、その紫外線照射時間や加熱時間に対するサンプルのブリード性を目視観察し、サンプルにブリードが観察されなくなった時間を硬化時間とした。
【0040】
〔ブリード性〕
攪拌羽根を有する攪拌機により混合した組成物(樹脂組成物A〜Fのいずれか)を、バーコート法によりガラス板上に塗工し、紫外線を照射し、厚み約100μm、縦100mm、横100mmの成形体(サンプル)を作製した。上記紫外線照射の際、紫外線照射機(アイグラフィック社製、UB031−2A/BM)の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)と塗工した組成物との距離は200mmとし、1分間の照射(紫外線の積算光量120mW/cm2 )とした。また、樹脂組成物Gに関しては、紫外線照射に代えて、加熱(70℃で2時間の加熱後、さらに110℃で1時間の加熱)することにより、組成物を硬化させ、上記と同様のサンプルを得た。そして、50℃×95%RH環境下にサンプルを2週間放置し、その表面のブリード性をマイクロスコープ観察にて目視評価した。すなわち、ブリードが目視で確認されないものを○と評価した。
【0041】
【表2】

【0042】
上記表の結果より、実施例品は、硬化速度が速く、低硬度性および高弾性に優れ、しかも、ブリードレスであることがわかる。これに対し、比較例1〜4品は、低硬度性と高弾性との両立がなされていない。また、比較例5品は、低硬度性と高弾性との両立がなされているが、硬化速度が非常に遅い。
【0043】
〔実施例3〜4、比較例6〜9〕
上記樹脂組成物A〜Fを、ベース層の材料として用い、導電性ロールを作製した。すなわち、まず、直経12mmのステンレス製の芯金を組み込んだガラス製のロール成形用型に、攪拌羽根を有する攪拌機により混合したベース層用材料(樹脂組成物A〜Fのいずれか。後記の表3参照)を注型し、上記ロール成形用型の外側から紫外線を照射することにより、組成物を硬化させ、その後、脱型することにより、芯金の外周にベース層(厚み2mm)が形成されてなるベースロールを得た。上記紫外線照射の際、紫外線照射機(アイグラフィック社製、UB031−2A/BM)の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とロール成形用型内の組成物との距離は200mmとし、3分間の照射(紫外線の紫外線の積算光量360mW/cm2 )とした。つぎに、N−メトキシメチル化ナイロン100部と、導電性酸化スズ60部と、クエン酸1部とを、メタノール−トルエン混合溶液(メタノール:トルエン=7:3)500部に溶解し、攪拌羽根を有する攪拌機により攪拌することにより、塗工液を調製した。そして、上記ベースロールを、このように調製した塗工液中に浸漬して引き上げた後(ディッピング法)、185℃×60分のオーブン加熱加硫を行い、表層(厚み6μm)を形成した。このような工程を経て、2層構造の導電性ロールを得た。
【0044】
〔参考例1〕
上記樹脂組成物Gを、ベース層の材料として用いた。そして、これを成形用金型に注型し、70℃で2時間の加熱後、さらに110℃で1時間加熱して熱硬化させることにより、ベースロールを作製した。それ以外は、実施例3〜4および比較例6〜9と同様にして、2層構造の導電性ロールを得た。
【0045】
〔実施例5〜6、比較例10〜13〕
上記樹脂組成物A〜Fを、表層の材料として用い、導電性ロールを作製した。すなわち、まず、ベース層用材料として、シリコーンゴム(信越化学工業社製、X34−270A/B)100部に、アセチレンブラック(電気化学工業社裂、デンカブラックHS100)10部を分散したものを調製し、これを、直径12mmのステンレス製の芯金を組み込んだロール成形用金型に注入した後、150℃で45分間オーブンキュアーを行った。その後、脱型することにより、芯金の外周にベース層(厚み2mm)が形成されてなるベースロールを得た。つぎに、このベースロールのベース層外周面にコロナ放電(0.3kWで20秒間のコロナ放電)による表面処理を施し、さらに、攪拌羽根を有する攪拌機により混合した表層用材料(樹脂組成物A〜Fのいずれか。後記の表4参照)をロールコート法により塗工した。次いで、このロールを100rpmで回転させながら、上記塗工液の塗膜を紫外線照射により硬化させ、表層(厚み6μm)を形成した。上記紫外線照射の際、紫外線照射機(アイグラフィック社製、UB031−2A/BM)の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)と塗膜との距離は200mmとし、1分間の照射(紫外線の積算光量120mW/cm2 )とした。このような工程を経て、2層構造の導電性ロールを得た。
【0046】
〔参考例2〕
上記樹脂組成物Gを、表層の材料として用いた。そして、これを、上記のようにコロナ放電処理したベースロールの外周面に、ロールコート法により塗工し、120℃で180分間熱硬化させることにより、表層の形成を行った。それ以外は、実施例5〜6および比較例10〜13と同様にして、2層構造の導電性ロールを得た。
【0047】
このようにして得られた実施例3〜6、比較例6〜13、参考例1〜2の導電性ロールを用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表3および表4に併せて示した。
【0048】
〔帯電ロールへたり評価〕
上記作製したロールを、直径30mmの金属棒に押し付け(ロールの片端に対し4.9Nの荷重となるよう、ロール両端に荷重をかけて押し付け)、40℃×95%RH環境に1週間放置した。そして、上記放置後、ロールを取り外して、これを、プリンター(ヒューレット・パッカード社製、LASERJET 4700)の帯電ロールとしてセットし、画出し評価を行った。このとき圧接痕がプリント画像に発生しないものを○、プリント画像に圧接痕が発生するものを×として評価した。
【0049】
〔帯電ロール画像評価、帯電ロール耐久評価〕
上記作製したロールを、帯電ロールとしてプリンター(ヒューレット・パッカード社製、LASERJET 4700)にセットし、文字チャート10000枚の画出し(耐久試験)を行った。そして、「帯電ロール画像評価」として、初期および耐久後のプリント画像を目視で確認し、画像にむらの無いものを○、画像にむらがわずかに見られるものを△、画像むらが多いものを×と評価した。また、「帯電ロール耐久評価」として、上記耐久試験後のロール汚れむら、および、感光体表面汚れを目視評価した。すなわち、「ロール汚れむら」評価として、上記帯電ロールを目視で確認し、ロール汚れむらの無いものを○、汚れむらが多いものを×と評価した。また、「感光体表面汚れ」評価として、上記耐久試験後のプリンターの感光ドラムを目視で確認し、感光ドラムの汚れが見られないものを○、感光ドラムの汚れが多く見られるものを×と評価した。
【0050】
〔現像ロール評価〕
上記作製したロールを、現像ロールとしてプリンター(ヒューレット・パッカード社製、LASERJET 3600)にセットし、32.5℃×80%RH環境にて印字率5%の文字チャート10000枚の画出し(耐久試験)を行った。そして、耐久後のプリント画像にかぶりが見られないものを○、かぶりが顕著に見られるものを×と評価した。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
上記表の結果より、実施例品は、帯電ロールとして用いたとき、へたりがなく、耐久後であっても良好なプリント画像が得られ、ロール汚れむらや感光体汚染も生じないことがわかる。また、現像ロールとして用いたときも、耐久後のプリント画像にかぶりが見られなかった。
【0054】
これに対し、比較例6〜13品は、へたり易く、耐久後では良好なプリント画像が得られないことがわかる。また、これらの比較例品は、耐久後のロール汚れむらや感光体汚染も顕著にみられた。なお、参考例1〜2品は、この評価においては良好な結果が得られたが、その製造の過程において、熱または熱風により層を乾燥硬化させて形成していることから、長時間の熱乾燥や乾燥ライン等が必要になるうえ、乾燥ライン内の温度分布や風量等に起因するロールの品質低下を解消しなければならないといった課題が残る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のゴム組成物は、帯電ロール、現像ロール等の電子写真機器用導電性ロールにおける各層の材料組成物として用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】導電性ロールの一例を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とし、光カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする電子写真機器の導電性ロール用樹脂組成物。
【請求項2】
軸体と、その外周に形成される単数ないし複数の構成層とを備えた電子写真機器用導電性ロールであって、上記構成層のうちの少なくとも一層が、請求項1記載の樹脂組成物の紫外線硬化体からなる層であることを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。

【図1】
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【公開番号】特開2009−237358(P2009−237358A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84577(P2008−84577)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】