説明

電子写真機器用導電性組成物、電子写真機器用導電性架橋体および電子写真機器用導電性部材

【課題】低抵抗で、イオン導電剤のブルームが抑制された電子写真機器用導電性部材を形成する電子写真機器用導電性組成物を提供すること。
【解決手段】ヒドリンゴムなどのゴムポリマーと、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤と、イオン導電剤とを含有する組成物とする。ラジカル重合性モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類や、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類が良い。ゴムポリマー100質量部に対して、ラジカル重合性モノマーを1〜50質量部、イオン導電剤を0.1〜10質量部含有すると良い。当該導電性組成物は、軸体12の外周にベース層14と表層16とがこの順で積層されてなる現像ロールや帯電ロールなどの電子写真機器用導電性ロール10のベース層材料に好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性組成物、電子写真機器用導電性架橋体および電子写真機器用導電性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されるようになってきている。電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれており、その周囲には、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが配設されている。
【0003】
電子写真機器では、一般に、帯電ロールにより感光ドラムの表面に静電荷を与え、その上に画像を露光して静電潜像を形成し、現像ロールによりトナーを静電潜像に付着させて現像し、そのトナー像を記録紙に転写し、トナー像が転写された記録紙を加熱加圧してトナーを記録紙上に定着させることによって画像形成を行なっている。
【0004】
電子写真機器による画像形成において、高精度な画像を得るためには、導電性ロールには、均一で安定した電気特性が要求される。すなわち、導電性ロールには、電気的に低抵抗であることや、ロール全体における電気抵抗値のばらつきが小さい(電気抵抗が均一である)ことなどが要求される。
【0005】
導電性ロールには、導電性を調整するために、必要に応じて、導電剤が添加される。導電剤には、カーボンブラックなどの電子導電剤や、四級アンモニウム塩などのイオン導電剤があり、必要に応じて使い分けられている。
【0006】
電子導電剤を添加する場合、ロールを形成するゴムの電気抵抗を下げやすく、低抵抗の導電性ロールが得られやすい。その反面、ロールを構成するゴムへの電子導電剤の分散は、練り状態の影響などを受けやすく、加工履歴により電気抵抗値が変化しやすい不安定さを有する。
【0007】
これに対し、イオン導電剤を添加する場合には、イオン導電剤は、ロールを構成するゴム中に分子レベルで分散されうるため、イオン導電剤が添加された導電性ロールの電気抵抗値は、加工履歴への依存性が少なく、比較的安定している。
【0008】
例えば、特許文献1には、軸体の外周に形成されたベースゴム層がイオン導電剤を含有している現像ロールが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−15404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
イオン導電剤を添加する場合には、ロールを形成するゴムの電気抵抗が下がりにくい。そのため、導電性ロールの低抵抗化を図るためには、イオン導電剤の添加量を多くする必要がある。
【0011】
しかしながら、イオン導電剤は、それ自体が元々ゴムなどのポリマーに溶けにくいため、イオン導電剤の添加量を多くすると、ゴムに溶けずに(イオン化せずに)、塩の状態のままゴムマトリックスからブルームアウトしてしまい、電気抵抗が所望の抵抗値まで下がらないという問題があった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、低抵抗で、イオン導電剤のブルームが抑制された電子写真機器用導電性部材を形成する電子写真機器用導電性組成物を提供することにある。また、他の課題としては、低抵抗で、イオン導電剤のブルームが抑制された電子写真機器用導電性部材を形成する電子写真機器用導電性架橋体を提供することにある。さらに、低抵抗で、イオン導電剤のブルームが抑制された電子写真機器用導電性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用導電性組成物は、ゴムポリマーと、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤と、イオン導電剤とを含有することを要旨とする。
【0014】
このとき、前記ラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリルアミド類、および、(メタ)アクリル酸エステル類から選択される1種または2種以上であることが望ましい。
【0015】
そして、前記ラジカル重合性モノマーは、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、および、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートから選択される1種または2種以上であると良い。
【0016】
また、前記ゴムポリマーは、極性基を有するゴムポリマーであると良い。
【0017】
このとき、前記ゴムポリマー100質量部に対して、前記ラジカル重合性モノマーを1〜50質量部含有することが望ましい。
【0018】
また、前記ゴムポリマー100質量部に対して、前記イオン導電剤を0.1〜10質量部含有することが望ましい。
【0019】
さらに、前記イオン導電剤に対する前記ラジカル重合性モノマーの質量比は、0.1〜100の範囲内にあることが望ましい。
【0020】
そして、本発明に係る電子写真機器用導電性架橋体は、ゴムポリマー間が、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーで共架橋され、かつ、イオン導電剤を含有してなることを要旨とする。
【0021】
また、本発明に係る電子写真機器用導電性架橋体は、上記導電性組成物が共架橋されてなることを要旨とする。
【0022】
そして、本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、上記導電性架橋体を用いたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電子写真機器用導電性組成物は、ゴムポリマーを共架橋するラジカル重合性モノマーに三級アミン基を有している。そのため、イオン導電剤をブルームさせることなくイオン導電剤の添加量を多くすることができる。これにより、この導電性組成物を架橋させた導電性架橋体は、低抵抗であり、イオン導電剤のブルームは抑制される。
【0024】
これは、イオン導電剤のイオンが配位できるイオン性ユニットの三級アミン基を、ゴムポリマー外部からゴムポリマー中へ導入し、架橋構造に取り込むことにより、イオン配位能の高いポリマーマトリックスが形成されたためと推察される。すなわち、ポリマーマトリックスのイオン配位能が高められたことにより、イオン導電剤のイオン化効率が上がり(イオン導電剤の溶解性が向上し)、ポリマーマトリックス中にイオン導電剤が保持されて安定化されるため、低抵抗でありながら、イオン導電剤のブルームが抑制されたと推察される。
【0025】
このとき、前記ラジカル重合性モノマーが、(メタ)アクリルアミド類、および、(メタ)アクリル酸エステル類から選択される1種または2種以上であると、上記効果に優れる。
【0026】
そして、前記ラジカル重合性モノマーが、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、および、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートから選択される1種または2種以上であると、特に、上記効果に優れる。
【0027】
さらに、前記ゴムポリマーが、極性基を有するゴムポリマーであると、より一層、イオン導電剤のブルームが抑制され、低抵抗化を図ることができる。
【0028】
このとき、前記ゴムポリマー100質量部に対して、前記ラジカル重合性モノマーを1〜50質量部含有すると、電気抵抗と、硬度とのバランスに優れる。
【0029】
また、前記ゴムポリマー100質量部に対して、前記イオン導電剤を0.1〜10質量部含有すると、電気抵抗と、ブルーム抑制効果とのバランスに優れる。
【0030】
さらに、前記イオン導電剤に対する前記ラジカル重合性モノマーの質量比が、0.1〜100の範囲内にあると、効果的に、イオン導電剤のブルームを抑制することができる。
【0031】
一方、本発明に係る電子写真機器用導電性架橋体は、ゴムポリマー間が、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーで共架橋され、前記ゴムポリマー中にイオン導電剤を含有してなる。また、上記導電性組成物が共架橋されてなる。したがって、これを用いれば、低抵抗で、イオン導電剤のブルームが抑制された電子写真機器用導電性部材を形成することができる。
【0032】
そして、本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、上記導電性架橋体を用いている。そのため、低抵抗であり、イオン導電剤のブルームが抑制されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施形態に係る電子写真機器用導電性組成物について詳細に説明する。
【0034】
本発明に係る電子写真機器用導電性組成物(以下、導電性組成物ということがある。)は、ゴムポリマーと、ラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤と、イオン導電剤とを含有している。
【0035】
ゴムポリマーは、固形ゴムであっても良いし、液状ゴムであっても良い。また、極性基を有するゴムポリマーであっても良いし、極性基を有しないゴムポリマーであっても良い。このうち、極性基を有するゴムポリマーは、極性基を有することにより、イオン導電剤をイオンに解離させて溶解させやすくするなどの観点から、より好ましい。極性基を有するゴムポリマーは、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、アルキレンオキサイド基などの極性基を有するポリマーであり、ゴム弾性を有するものが好ましい。
【0036】
ゴムポリマーとしては、具体的には、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などのヒドリン系ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)などのニトリル系ゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム、天然ゴム(NR)、などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。より好ましくは、極性基を有するゴムポリマーのヒドリン系ゴム、ニトリル系ゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム(CR)である。
【0037】
極性基を有するゴムポリマーは、上述するように、極性基を有することにより、イオン導電剤の分子レベルでの分散に寄与することができる。この観点から言えば、極性基をより多く含むものが好ましいと言える。一方で、極性基が多くなると、ゴムポリマー自体の結晶性が上がるので、ポリマー粘度や架橋後のゴムの硬度の上昇や、圧縮永久歪の悪化につながりやすい。したがって、ゴムポリマー自体の結晶性が高くなりすぎない程度に、極性基を有することが好ましい。
【0038】
上記理由より、例えば、極性基を有するゴムポリマーが、ヒドリン系ゴムである場合には、ヒドリン系ゴムにおけるエチレンオキサイド(EO)含有量は、30〜75モル%の範囲内にあることが好ましい。また、極性基を有するゴムポリマーが、ニトリル系ゴムである場合には、ニトリル系ゴムにおけるニトリル(AN)含有量は、18〜50モル%の範囲内にあることが好ましい。
【0039】
ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合開始剤の存在下で、上記ゴムポリマー間を共架橋するものである。ラジカル重合性モノマーは、ラジカル反応性を有する炭素−炭素不飽和結合を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、(メタ)アクリルアミド基を有する化合物((メタ)アクリルアミド類)などが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル類などを示すことができる。
【0040】
ラジカル重合性モノマーは、三級アミン基を有している。三級アミン基は、イオン導電剤をイオンに解離させやすくして、ポリマーマトリックス中にイオン導電剤を溶解させやすくする機能を有すると考えられる。三級アミン基は、ラジカル重合性モノマーの末端にあっても良いし、内部骨格にあっても良い。
【0041】
例えば、ラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリルアミド類である場合には、アミド部位が三級アミン基となっていても良いし、アミド部位より誘導されるアミノアルキル基などの置換基が三級アミン基となっていても良い。また、例えば、ラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリル酸エステル類である場合には、エステル基中に、三級アミン基を含有していれば良い。すなわち、ラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリル酸エステル類である場合には、分子中にアミノアルキルエステル基を有していれば良い。
【0042】
三級アミン基は、窒素原子が、ラジカル重合性モノマー骨格と結合する他に、アルキル基2個と結合している。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基などを例示することができる。2個のアルキル基は、同種のアルキル基であっても良いし、異種のアルキル基であっても良い。
【0043】
ラジカル重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAEA)などを好適に示すことができる。
【0044】
ラジカル重合性モノマーは、上記ゴムポリマー100質量部に対して、1〜50質量部含有することが好ましい。ラジカル重合性モノマーの含有量が1質量部未満では、(硬化物)架橋体の電気抵抗が高くなり、低抵抗化が図りにくくなる。一方、ラジカル重合性モノマーの含有量が50質量部を超えると、架橋体の硬度が高くなり、例えば、電子写真機器用導電性ロールの弾性層として用いたときに、画像が悪化しやすい。
【0045】
ラジカル重合性モノマーの含有量の下限値は、ゴムポリマー100質量部に対し、より好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上であると良い。一方、ラジカル重合性モノマーの含有量の上限値は、ゴムポリマー100質量部に対し、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下であると良い。
【0046】
導電性組成物に含有されるラジカル重合開始剤としては、過酸化物やアゾ化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0047】
過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)−3−ヘキセン、ジ−tert−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、p−クロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどを例示することができる。
【0048】
アゾ化合物としては、例えば、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンテン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2−シアノ−2−プロピラゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシ−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などを例示することができる。
【0049】
ラジカル重合開始剤の含有量の下限値は、極性基を有するポリマー100質量部に対し、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上であると良い。一方、ラジカル重合開始剤の含有量の上限値は、極性基を有するポリマー100質量部に対し、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下であると良い。
【0050】
イオン導電剤は、導電性組成物の架橋体の電気抵抗の調整を図る機能を有する。イオン導電剤は、ポリマーマトリックス中でイオンに解離されてイオンの状態にされると、ポリマーマトリックス中に溶解して、分子レベルでの分散が可能になる。したがって、カーボンブラックなどの電子導電剤と比較して、練り状態などによるバラツキなどの加工履歴への依存性が少なく、分散性が良好になりやすい。そのため、抵抗ムラも比較的発生しにくくする。
【0051】
イオン導電剤としては、特に限定されることなく、電子写真機器分野で使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0052】
イオン導電剤としては、例えば、下記式(1)で表される4級アンモニウム塩、下記式(2)で表されるホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0053】
下記式(1)において、R1、R2、R3、R4は、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基などを示し、Xn−はn価の陰イオンを示し、nは1〜6の整数を示す。n価の陰イオンとしては、ハロゲンイオン、ClO、BF、SO2−、HSO、CSOなどが挙げられる。
【0054】
また、下記式(2)において、R1、R2、R3、R4は、炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基などを示し、Mn+はアルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンであり、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどを示し、nは1〜2の整数を示す。
【0055】
【化1】

【0056】
【化2】

【0057】
イオン導電剤は、上記ゴムポリマー100質量部に対して、0.1〜10質量部含有することが好ましい。イオン導電剤の含有量が0.1質量部未満では、(硬化物)架橋体の電気抵抗が高くなり、低抵抗化が図りにくくなる。一方、イオン導電剤の含有量が10質量部を超えても、架橋体の電気抵抗を低下させる効果が向上しにくく、反対に、ブルーム抑制効果が低下しやすい。
【0058】
イオン導電剤の含有量の下限値は、ゴムポリマー100質量部に対し、より好ましくは、0.3質量部以上、さらに好ましくは、0.5質量部以上であると良い。一方、イオン導電剤の含有量の上限値は、ゴムポリマー100質量部に対し、より好ましくは、8質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下であると良い。
【0059】
ラジカル重合性モノマーは、三級アミン基により、イオン導電剤をイオンに解離させやすくして、ポリマーマトリックス中にイオン導電剤を溶解させやすくすると考えられる。そのため、イオン導電剤に対するラジカル重合性モノマーの質量比は、0.1〜100の範囲内にあることが好ましい。質量比が0.1未満では、ポリマーマトリックス中にイオン導電剤を溶解させやすくする効果が低下しやすい。一方、質量比が100を超えると、イオン導電剤による、ポリマーマトリックスの低電気抵抗化の効果が向上しにくく、ラジカル重合性モノマーによる共架橋点が多くなって、架橋体の硬度が高くなりやすい。
【0060】
質量比の下限値は、より好ましくは、1以上、さらに好ましくは、2以上である。一方、質量比の上限値は、より好ましくは、50以下、さらに好ましくは、20以下である。
【0061】
本発明に係る導電性組成物は、他にも、必要に応じて、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0062】
本発明に係る導電性組成物は、共架橋させて、電子写真機器用導電性部材に用いられる。電子写真機器用導電性部材としては、例えば、電子写真機器に用いられる帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどのロール状の導電性部材(導電性ロール)や、電子写真機器に用いられる転写ベルトなどのベルト状の導電性部材(導電性ベルト)などが挙げられる。特に、帯電ロールに対する感光ドラム、現像ロールに対する現像ブレードのように一定の荷重で圧接された状態で使用される導電性ロールに好適に用いられる。本発明に係る導電性組成物は、導電性部材のベース層材料に用いると良い。
【0063】
次に、本発明に係る電子写真機器用導電性架橋体について説明する。
【0064】
本発明に係る電子写真機器用導電性架橋体(以下、導電性架橋体ということがある。)は、ゴムポリマー間が、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーで共架橋され、かつ、イオン導電剤を含有してなる。ゴムポリマー、ラジカル重合性モノマー、イオン導電剤の種類および含有量は、上記するものであれば良い。
【0065】
本発明に係る導電性架橋体は、ゴムポリマー間が、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーで共架橋され、かつ、イオン導電剤を含有していれば良く、共架橋する方法は特に限定されるものではない。共架橋する方法としては、好ましくは、ラジカル反応を利用して行なう方法が良い。この場合には、導電性架橋体を形成する導電性組成物中に、ラジカル重合開始剤を含有させると良い。ラジカル重合開始剤の種類および含有量は、上記する種類および含有量であれば良い。
【0066】
また、導電性架橋体を形成する導電性組成物中には、さらに、必要に応じて、上記する各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0067】
次に、本発明に係る電子写真機器用導電性部材について説明する。本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、上記電子写真機器用導電性架橋体を用いて形成される。
【0068】
電子写真機器用導電性部材としては、上述するように、電子写真機器に用いられる帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどのロール状の導電性部材(導電性ロール)や、電子写真機器に用いられる転写ベルトなどのベルト状の導電性部材(導電性ベルト)などが挙げられる。特に、帯電ロールに対する感光ドラム、現像ロールに対する現像ブレードのように一定の荷重で圧接された状態で使用される導電性ロールに好適である。
【0069】
図1および図2に、本発明に係る電子写真機器用導電性部材としての導電性ロールの一例を示す。図1および図2は、本発明に係る導電性ロールの一例を示す周方向断面図である。
【0070】
図1に示す導電性ロール10は、軸体12の外周に、ベース層14と、表層16とがこの順に積層された積層構造を有している。一方、図2に示す導電性ロール10は、軸体12の外周に、ベース層14と、中間層18と、表層16とがこの順に積層された積層構造を有している。なお、導電性ロールの構成としては、図1および図2に示す構成に限定されるものではない。
【0071】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0072】
ベース層14を形成する主材料には、ゴムポリマーを用いる。ゴムポリマーは、上記したゴムポリマーを用いれば良い。主材料となるゴムポリマー間を共架橋させるため、ベース層14を形成する組成物は、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーを含有している。ラジカル重合性モノマーは、上記する種類および含有量であれば良い。共架橋する方法は、特に限定されないが、ラジカル反応により共架橋する場合には、ベース層14を形成する組成物中にラジカル重合開始剤を含有させると良い。ラジカル重合開始剤の種類および含有量は、上記する種類および含有量であれば良い。
【0073】
ベース層14を形成する組成物には、さらに、イオン導電剤を含有している。イオン導電剤の種類および含有量は、上記する種類および含有量であれば良い。さらに、必要に応じて、上記する各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0074】
ベース層14を形成する組成物としては、好ましくは、上述した導電性組成物を用いると良い。また、さらに導電性を向上させるために、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(cは、導電性を意味する。)などの公知の導電剤や、発泡剤、軟化剤などを適宜添加した導電性組成物を用いても良い。
【0075】
ベース層14は、軸体12をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、ベース層形成用の組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する(注入法)、軸体12の表面にベース層形成用の組成物を押出成形する(押出法)などをすれば良い。ベース層14を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰返し行なえば良い。
【0076】
ベース層14の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1〜10mm、より好ましくは、1〜5mmの範囲内にあると良い。また、ベース層14の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1010Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cm、さらに好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内にあると良い。
【0077】
中間層18は、抵抗調整層として機能し得るものである。中間層18を形成する主材料としては、ゴム弾性材料を好適に用いることができる。ゴム弾性材料としては、例えば、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などのヒドリンゴムや、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、ウレタン系エラストマー、フッ素ゴム、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0078】
上記ゴム弾性材料としては、電気抵抗制御性、耐ヘタリ性などの観点から、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ヒドリンゴム、ウレタン系エラストマーなどが好ましい。
【0079】
中間層18には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、軟化剤(オイル)等を適宜添加しても良い。
【0080】
ベース層14の外周に中間層18を形成するには、ベース層14を形成した軸体12をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、中間層形成用組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する(注入法)、ベース層14の表面に中間層形成用の組成物を押出成形する(押出法)、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種塗工方法により、ベース層14の表面に中間層形成用組成物を塗工する、などをすれば良い。中間層18を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰返し行なえば良い。
【0081】
中間層18の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.001〜2mm、より好ましくは、0.01〜0.5mmの範囲内にあると良い。また、中間層18の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1010Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cm、さらに好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内にあると良い。
【0082】
表層16は、ロール表面の保護層として機能し得る。表層16を形成する主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタアクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキサイド(変性ポリフェニレンエーテル)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアリルエーテルニトリル、ニトリルゴム、ウレタンゴム、これらを架橋した樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。とりわけ、耐摩耗性に優れるなどの観点から、架橋ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタンゴム、ポリアミドなどを好適に用いることができる。
【0083】
表層16には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。
【0084】
表層16を形成する組成物は、他にも、必要に応じて、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0085】
表層16を形成する組成物は、取り扱い性が良好であるなどの観点から、粘度(25℃)が100000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは、10000mPa・s以下であると良い。塗工性に優れるなどの観点から、さらに好ましくは、5000mPa・s以下であると良い。
【0086】
表層16を形成する組成物は、上記範囲内に粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。また、無溶剤であっても良い。
【0087】
表層16を形成する組成物は、各種材料を所望の配合となるように秤量し、これらを攪拌機、サンドミルなどの混合手段により混合するなどして調製することができる。混合中や混合後に、脱泡処理などを行なっても良い。
【0088】
ベース層14の外周、または、中間層18の外周に表層16を形成するには、ベース層14または中間層18の表面に、表層16を形成する組成物を塗工すると良い。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。塗工された表層16には、必要に応じて、紫外線照射や熱処理を行なっても良い。
【0089】
表層16の厚みは、特に限定されるものではないが、電気抵抗を上昇させにくい、ロール硬度の上昇を抑制するなどの観点から、好ましくは、0.01〜100μm、より好ましくは、0.1〜20μm、さらに好ましくは、0.3〜10μmの範囲内にあると良い。また、表層16の体積抵抗率は、ロールの電気抵抗制御性などの観点から、好ましくは、10〜10Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内にあると良い。
【0090】
中間層18または表層16には、ロール表面に凹凸形状を付与して適度な表面粗さを形成するために、粗さ形成用粒子を含有していても良い。より好ましくは、耐摩耗性、長寿命化などの観点から、中間層18に粗さ形成用粒子を含有させると良い。
【0091】
粗さ形成用粒子は、表面粗さの均一化などの観点から、中間層18または表層16の厚み方向に実質的に積み重なっていない、つまり、粗さ形成用粒子がほぼ同一面上に存在していることが好ましい。
【0092】
粗さ形成用粒子としては、例えば、ウレタン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、アクリル粒子、尿素樹脂粒子、アミド粒子などの樹脂粒子、ゴム粒子、シリカ粒子などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0093】
粗さ形成用粒子の平均粒径は、特に限定されるものではなく、中間層18や表層16の厚みなどに応じて適宜選択することができる。好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、5〜30μmの範囲内である。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0095】
<導電性組成物の調製>
表1または表2に示す配合割合(単位は質量部)となるように各種材料を秤量し、これらを攪拌機により撹拌、混合して、実施例、比較例に係る導電性組成物を調製した。
【0096】
この際、使用した各種材料は、以下の通りである。
・ヒドリン系ゴム(GECO)[日本ゼオン(株)製、「Gechron 3101」]
・アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)[日本ゼオン(株)製、「Nipol DN202」]
・ジメチルアミノプロピルアクリルアミド[(株)興人製、「DMAPAA」]
・ジメチルアミノエチルアクリレート[(株)興人製、「DMAEA」]
・ジメチルアクリルアミド[(株)興人製、「DMAA」]
・ジエチルアクリルアミド[(株)興人製、「DEAA」]
・イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート)
・ラジカル重合開始剤[日本油脂(株)製、「パークミルD40」]
・滑剤(ステアリン酸)
・加硫促進剤(亜鉛華)
【0097】
<材料評価>
各導電性組成物の材料評価を、以下のようにして行なった。
【0098】
<シート作製条件>
2.5mm厚に分出し成形した未加硫ゴム材料をプレス型(上型、下型)に挟み、170℃、30分間プレス成形することで2mm厚のゴムシートサンプルを作製した。
【0099】
(シート体積抵抗率)
2mm厚のプレスシート外表面上に銀ペーストで10mm四方の電極を描き(ガード電極付)、一方、シートの反対側の面に対抗電極を設け、電極間をJIS K 6911に記載の方法に準じて100V印加したときの体積抵抗率を測定した。
【0100】
(リング硬度)
170℃30分プレス成形で、直径28mm×高さ12mmの円筒形状にした測定試料を作製し、従来法に従いデュロメータ硬さ(タイプA)(JIS−K−6253)を測定した。
【0101】
(ブルーム性)
50℃95%RH環境下にシートサンプルを7日間放置し、シート表面にブルームが発生するか、マイクロスコープ観察にて目視で評価した。ブルーム物が目視で確認されない場合を「○」、ブルーム物が目視で確認される場合を「×」とした。
【0102】
<導電性ロールの作製>
(ベース層の形成)
直径12mmの円筒状の穴のあいた金型に、直径6mmの芯金をセットし、金型と芯金の間隙に上記導電性組成物を注入した後、金型両端を密閉し、170℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚み2mmのベース層を形成した。
【0103】
(表層の形成)
N−メトキシメチル化ナイロン100質量部と、c−SnO60質量部と、クエン酸1質量部と、メタノール300質量部とを混合して、表層形成用組成物を調製した。次いで、ベース層の表面に表層形成用組成物をロールコートし、120℃で50分加熱して、ベース層の外周に、厚み10μmの表層を形成した。これにより、実施例、比較例に係る導電性ロールを作製した。
【0104】
<導電性ロールの特性評価>
(帯電ロールとしての画像評価)
作製した各導電性ロールを、リコーCX3000機にセットして、文字チャートを10000枚画像出しを行なった。耐久後のハーフトーン画像にてかぶりのないものを「○」、かぶりのあるものを「×」とした。
【0105】
(ロールのブリード性試験)
作製した各導電性ロールを、直径30mmの金属棒に軸平行の状態で接触させ、ロールの芯金の両端に各々500gの荷重をかけて(総荷重1kg)、金属棒に押し当て、50℃×95%RH環境下に1週間放置した。放置後、荷重を取り外して金属棒との接地面を目視にて観察した。このとき、接地面に各導電性ロールからのブリード成分が見られなかったものを「○」、ブリード成分が見られたものを「×」とした。
【0106】
(現像ロールとしての画像評価)
作製した各導電性ロールをCANON LBP−2510機にセットして画像出しを行なった。ハーフトーン画像にてかぶりのないものを「○」、かぶりのあるものを「×」とした。
【0107】
表1および表2に、各導電性ロールのベース層形成用組成物の配合組成と、評価結果をまとめたものを示す。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
比較例1および比較例4では、ベース層形成用組成物中に、イオン導電剤を含有しているが、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーを含有していない。そのため、組成物を架橋させた材料の体積抵抗率が高めになっている。その結果、これをベース層材料として用いた帯電ロールによる耐久後の画像、および、これをベース層材料として用いた現像ロールによる画像が悪化している。
【0111】
比較例2では、ベース層形成用組成物中に、イオン導電剤を含有していない。そのため、組成物を架橋させた材料の体積抵抗率が高くなっている。その結果、これをベース層材料として用いた帯電ロールによる耐久後の画像、および、これをベース層材料として用いた現像ロールによる画像が悪化している。
【0112】
比較例3では、ベース層形成用組成物中に、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーを含有していない。また、比較例1よりもイオン導電剤を多く含有している。その結果、組成物を架橋させた材料の体積抵抗率は低いものの、イオン導電剤がブルームした。
【0113】
これらに対し実施例では、ベース層形成用組成物中に、イオン導電剤と、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーを含有している。そのため、組成物を架橋させた材料は低抵抗であり、これをベース層材料として用いた帯電ロールによる耐久後の画像、および、これをベース層材料として用いた現像ロールによる画像は、ともに良好であった。また、組成物を架橋させた材料からはイオン導電剤のブルームが確認されず、ブルーム性も良好であった。
【0114】
特に、実施例1〜3と比較例1とを比較すれば、イオン導電剤の添加量が同じでも、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーを含有させることにより電気抵抗を下げることができることが確認できた。また、実施例10と比較例4とを比較しても、同様に、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーを含有させることにより電気抵抗を下げることができることが分かる。
【0115】
したがって、実施例に係る導電性組成物を用いれば、低抵抗で、イオン導電剤のブルームが抑制された電子写真機器用導電性部材を形成することができる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールを表す周方向断面図である。
【図2】一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールを表す周方向断面図である。
【符号の説明】
【0118】
10 電子写真機器用導電性ロール
12 軸体
14 ベース層
16 表層
18 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムポリマーと、
三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーと、
ラジカル重合開始剤と、
イオン導電剤とを含有することを特徴とする電子写真機器用導電性組成物。
【請求項2】
前記ラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリルアミド類、および、(メタ)アクリル酸エステル類から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用導電性組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合性モノマーは、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、および、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートから選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性組成物。
【請求項4】
前記ゴムポリマーは、極性基を有するゴムポリマーであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子写真機器用導電性組成物。
【請求項5】
前記ゴムポリマー100質量部に対して、前記ラジカル重合性モノマーを1〜50質量部含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子写真機器用導電性組成物。
【請求項6】
前記ゴムポリマー100質量部に対して、前記イオン導電剤を0.1〜10質量部含有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子写真機器用導電性組成物。
【請求項7】
前記イオン導電剤に対する前記ラジカル重合性モノマーの質量比は、0.1〜100の範囲内にあることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子写真機器用導電性組成物。
【請求項8】
ゴムポリマー間が、三級アミン基を有するラジカル重合性モノマーで共架橋され、かつ、イオン導電剤を含有してなることを特徴とする電子写真機器用導電性架橋体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の組成物が共架橋されてなることを特徴とする電子写真機器用導電性架橋体。
【請求項10】
請求項8または9に記載の架橋体を用いたことを特徴とする電子写真機器用導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−75435(P2009−75435A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245426(P2007−245426)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】