説明

電子写真機器用帯電ロール

【課題】電子写真機器の高速化に対応可能であり、うなり音を良好に抑制可能な帯電ロールを提供する。
【解決手段】軸体2、導電性弾性層3、抵抗調整層1(41)、抵抗調整層2(42)、保護層5が順次形成され、抵抗調整層1(41)が形成された状態のロール1bの表面のMD−1表面硬度(A)が、65°〜85°であり、MD−1表面硬度(B)と抵抗調整層2(42)が形成された状態のロール1bの表面のMD−1表面硬度(B)との表面硬度比(B/A)が0.6〜0.95の範囲内となるように形成して、帯電ロール1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用して画像を形成する複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器に用いられる帯電ロールに関するものであり、更に詳しくは直流電圧と交流電圧を重ね合わせて印加して感光体ドラム等の像担持体を帯電させるために用いられる帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真機器において、像坦持体面となる感光体に接触或いは近接して該感光体を帯電させるために、半導電性のゴムローラ型の帯電ロールが用いられている。この帯電ロールは、表面の電気抵抗の調整等を目的として、金属製芯金等からなる軸体の外周面上に導電性弾性層からなる抵抗調整層が設けられて構成されている。
【0003】
帯電ロールにおいて、直流電圧と交流電圧を重ね合わせて印加して感光体(ドラム)等の像担持体を帯電させる方法は、像担持体表面の帯電が安定化するという利点がある。しかし、この場合、交流電界により帯電ロールと像担持体が振動し、帯電音と呼ばれる騒音が発生するという問題があった。従来、帯電音の発生を防止することを目的とした帯電ロールが公知である(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
上記特許文献に記載の帯電ロールは、ロール全体を低硬度化することや、抵抗調整層を高硬度化したり、抵抗調整層をイオン導電層と電子導電層との2層化する等の手段で、帯電音を防止したものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−258524号公報
【特許文献2】特開2000−275930号公報
【特許文献3】特開2007−263340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリンター等の電子写真機器は、年々、印刷速度が上昇し、それに伴い、帯電ロールの回転速度も速くなっている。そのため感光体と帯電ロールとの接触時間が短くなる。感光体と帯電ロールの接触時間が短くなると、十分な電荷付与を行うために、帯電ロールに対して電圧印加条件を高周波にする必要がある。しかしながら、電圧印加条件が2000Hz以上の高周波になると、帯電音の発生にとっては不利な条件となりやすいという問題があった。
【0007】
例えば上記特許文献1に記載の帯電ロールは、周波数が2000Hz以下の交流電圧の印加では、帯電音の抑制が可能であっても、場合によっては2000Hzを超える高周波になると帯電音が発生し易くなる可能性がある。
【0008】
ところで、本発明者が上記帯電音発生のメカニズムについて検討したところ、帯電音は『絶対音』と『うなり音』に分けられることが判明した。帯電音発生のメカニズムは以下のように推測される。交流電圧印加により、帯電ロール表面が微少に振動し、この振動により帯電ロールが感光体表面を叩くことにより帯電音が発生する。帯電ロール表面と感光体表面との接触状態が短時間内に大きく変化すると、帯電音も大きくなったり小さくなったりする。
【0009】
帯電ロールが1周する時間程度の短時間内に、帯電音が大きくなったり小さくなったりして変化すると、それが帯電ロールの回転周期に応じたうなり音となって聞こえることになる。そして上記帯電ロールの回転の1周期における帯電音の音量の最大値と最低値との差が大きくなるほど、うなり音は大きくなることが判った。すなわち、帯電ロールから発生する帯電音の音量の最大値を帯電音の『絶対音』の指標とすると、帯電音のロール回転周期に応じた周期的な音の大小の差は『うなり音』の指標とすることができる。これに対し、上記特許文献2及び3に記載の帯電ロールを評価したところ、帯電音の絶対音を抑制することが可能であるが、その構成では、うなり音を抑制できないという問題があることが判った。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、電子写真機器の高速化に対応可能であり、うなり音を良好に抑制可能な帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、
軸体の外周に導電性弾性層及び抵抗調整層が設けられている電子写真機器用帯電ロールにおいて、
前記抵抗調整層が、内層側に形成された抵抗調整層1と外層側に形成された抵抗調整層2とからなる2層構成であり、
前記抵抗調整層1が形成されたロール表面のMD−1表面硬度(A)が65°〜85°であり、
前記抵抗調整層2が形成されたロール表面のMD−1表面硬度(B)と前記MD−1表面硬度(A)との比である表面硬度比(B/A)が0.6〜0.95であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、直流電圧に交流電圧を重ねて印加して像担持体を帯電させるために用いる際に、帯電ロールの回転数が上昇して交流電圧の周波数が高くなった場合でも、帯電音の絶対音を悪化させずに、うなり音の発生を良好に抑制することが可能であり、電子写真機器の高速化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る帯電ロールについて詳細に説明する。図1は本発明の電子写真機器用帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。図1に示す電子写真機器用帯電ロール1(以下、単に帯電ロールという)は、中実円筒状の導電性を有する軸体2の外周に沿って導電性弾性層3が形成され、該導電性弾性層3の外周に沿って内層側の抵抗調整層1(41)と外層側の抵抗調整層2(42)との2層からなる抵抗調整層4が形成され、さらに該抵抗調整層4の外周に沿って保護層5が、帯電ロール1の最表面に形成されている。
【0014】
本発明帯電ロール1は、抵抗調整層1(41)が形成された状態のロール1a〔図3(a)参照〕の表面のMD−1表面硬度(A)が、65°〜85°の範囲に形成されている。更に、帯電ロール1は、抵抗調整層2(42)が形成された状態のロール1b〔図3(b)参照〕の表面のMD−1表面硬度(B)が、抵抗調整層1(41)のMD−1表面硬度(A)よりも低くなるようにし、更にMD−1表面硬度(B)とMD−1表面硬度(A)との比である表面硬度比(B/A)が0.6〜0.95の範囲内となるように形成されている。
【0015】
抵抗調整層1(41)が形成された状態のロール1bの表面のMD−1表面硬度(A)が、65°未満であると、ロール表面が柔軟になりすぎて、感光体に対する接触帯電時に、帯電ロールの感光体との接触幅が大きくなり、帯電音の絶対音を低減させる効果が得られなくなる。また、上記MD−1表面硬度(A)が85°を超えると、ロール表面が硬くなりすぎて、帯電ロールの感光体との接触状態が悪化して、帯電音のうなり音を低減させる効果が得られなくなる。尚、上記帯電音の定義、測定方法については、実施例のところで述べる。
【0016】
抵抗調整層2(42)が設けられた状態のロール1bの表面が、抵抗調整層1(41)のみが設けられた状態のロール1aの表面よりも低硬度に形成されていることにより、帯電ロール1を感光体に接触・回転させる時の接触状態の変化を最小に抑え、帯電ロールと感光体との接触状態を良好に維持し、うなり音を低減できる。また、抵抗調整層1(41)の硬度は抵抗調整層2(42)よりも高い状態にあるので、交流電圧によりロール外周面の振動が発生し、帯電ロールが感光ドラム表面を叩くことによる帯電音の絶対音が悪化することを防止できる。
【0017】
抵抗調整層を一層だけで構成した場合、表面硬度を低硬度にすれば、接地性が向上して、うなり音を低減することができる。しかし表面硬度が低硬度になると、帯電音の絶対音が大きくなってしまう。つまり、帯電音の絶対音とうなり音は、いずれか一方を改良しようとすると他方の特性が低下してしまい、トレードオフの関係にある。そのため、抵抗調整層を設けたロール表面の表面硬度を規定するだけでは、帯電音の絶対音とうなり音の両方を満足させることは不可能である。
【0018】
これに対し、本発明では、抵抗調整層を2層構成とし、内層側の抵抗調整層1(41)のロールの表面硬度を所定の範囲内とし、外層側の抵抗調整層2(42)を設けたロールの表面硬度1bが、抵抗調整層1(41)を設けたロール1aの表面硬度よりも低い、所定の範囲内となるように形成することで、帯電音の絶対音とうなり音の両方の帯電音特性を同時に満足させることができた。
【0019】
抵抗調整層2(42)が形成された状態のロール1bの表面のMD−1表面硬度(B)が低くなって、上記表面硬度比(B/A)が0.6未満になると、抵抗調整層2が低硬度になりすぎて、帯電音の絶対音を悪化させる。またMD−1表面硬度(B)が高くなって、上記表面硬度比(B/A)が0.95を超えると、抵抗調整層2の低硬度による接地性向上効果が不十分で、帯電音のうなり音の低減効果が十分得られない。
【0020】
抵抗調整層2(42)が形成された状態のロール1bの表面のMD−1表面硬度(B)は45°以上であることが、帯電音の絶対音を確実に低下させることができる点から好ましい。
【0021】
上記のMD−1表面硬度は以下の測定方法により測定される。MD−1型表面硬さ試験機(マイクロゴム硬度計)〔高分子計器(株)製〕を用い、Vブロックにて面長が支持された状態で水平に保持された帯電ロールの軸方向中央部の表面に対して、かかる表面硬さ試験機の押針の先端を接触させ、針押込み直後の値を読み取ることにより、測定された値である。なおMD−1型表面硬さ試験機は、押針形状が直径0.16mmの円柱形状であり、加圧面からの該押針の突出高さが0.5mmであり、目盛り0度におけるバネ荷重が2.24gf、目盛り100度におけるバネ荷重が33.85gfの片持ち梁形板ばね式の荷重方式のスプリング式硬さ試験機である。
【0022】
抵抗調整層4の内層側の抵抗調整層1(41)、及び抵抗調整層4の外層側の抵抗調整層2(42)は、配合組成及び/又は厚みを適宜選択することで、上記の特定の表面硬度に形成することができる。柔軟な材料の配合組成の場合は、厚みを厚くすると、表面硬度を低下させることができる。また、硬い材料の配合組成の場合は、厚みが厚くなると表面硬度も高くなる。厚みを増減することで、抵抗調整層が形成された状態のロールの表面硬度を高くしたり、低くしたり、所望の表面硬度になるように、適宜調節することができる。
【0023】
抵抗調整層1(41)及び抵抗調整層2(42)は、イオン導電性ポリマーを主成分とする抵抗調整層組成物を用いて、ソリッド体(非発泡体)として形成されている。抵抗調整層組成物には、上記成分以外に、導電剤(電子導電剤及び/又はイオン導電剤)、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、オイル、滑剤、助剤、界面活性剤などの各種添加剤を1種又は2種以上含有していても良い。
【0024】
抵抗調整層4の上記イオン導電性ポリマーとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、又はエピクロルヒドリンゴムを用いる。上記エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体(ECO)、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GCO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GECO)等が挙げられる。これらのイオン導電性ゴムは単独で使用しても、あるいは2種以上混合して使用しても良い。抵抗調整層4は、主成分として上記のイオン導電性ゴムを用いることにより、低へたり性、導電性、柔軟性などの優れた特性が得られる。
【0025】
内層側の抵抗調整層1(41)の厚みは、200〜700μmに形成するのが好ましい。外層側の抵抗調整層2(42)の厚みは、10〜500μmに形成するのが好ましい。
【0026】
抵抗調整層4の内層側の抵抗調整層1(41)及び外側の抵抗調整層2(42)を形成するには、例えば上記の各成分をニーダー等の混練機で混練りし、抵抗調整層組成物を準備し、該組成物を導電性弾性層3を形成したロールの外周に押出した後、加熱して架橋・硬化させて抵抗調整層4を形成する。また抵抗調整層1、2は上記抵抗調整層組成物を有機溶剤等の溶剤中に溶解・分散してなる抵抗調整層コーティング液を調製し、塗工し、乾燥、硬化させることで形成することができる。また、抵抗調整層1及び/又は抵抗調整層2の加熱硬化は、内層側の導電性弾性層3の加熱硬化と一緒に行っても良い。
【0027】
上記抵抗調整層コーティング液の調製に用いる有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。こららは混合して使用しても良い。抵抗調整層コーティング液のコーティング方法としては、例えば、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0028】
軸体2は、アルミニウム、ステンレスなどの金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、又はこれらにめっきが施された導電性シャフト等が用いられる。また必要に応じ、軸体2表面に接着剤、プライマー等を塗布しても良い。上記接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0029】
導電性弾性層3は、導電性及び弾性を有するものであればよく、非発泡体(ソリッド状)又は発泡体(スポンジ状)のいずれでも良いが、硬度が低くなることで接地が安定し、うなり音を低下させる効果がある点から発泡体が好ましい。また導電性弾性層3は複数層から構成しても良い。導電性弾性層3の厚みは、特に限定されないが、通常、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは1〜5mmの範囲に形成することができる。
【0030】
導電性弾性層3は、例えば主成分として、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)等のゴム成分が用いられる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0031】
導電性弾性層3には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO、c−ZnO、c−SnO、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の公知の導電剤を、上記材料中に適宜添加することができる。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加しても良い。
【0032】
軸体2の外周表面に導電性弾性層3を形成するには、押出成形、金型成形等を用いることができる。具体的には、上記導電性弾性層3の各成分をニーダー等の混練機で混練りし、導電性弾性層組成物を準備し、軸体2の表面に導電性弾性層組成物を押出成形する。また、軸体2をロール成形用円筒状金型の中空部に同軸的に設置し、上記円筒状金型と軸体2との間の空隙部に導電性弾性層組成物を注入した後、加熱・硬化させてゴム成分を架橋させ、その後、上記金型から脱型する。導電性弾性層3を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰り返し行う。
【0033】
保護層5は、帯電ロール1の最表面に位置し、表面保護のために形成されるものであり、主成分となるポリマー、或いはポリマーを構成するモノマー及び/又はオリゴマー等の成分を含む保護層組成物により形成される。
【0034】
保護層5の厚みは、帯電ロール1の導電性及び耐摩耗性等に応じて、適宜選択することができる。保護層5の厚みの上限は、抵抗調整層の電気抵抗を低く維持できる観点から、25μm以下とするのが好ましく、より好ましくは20μm以下である。一方、保護層5の厚みの下限は、耐摩耗性の観点から、1μm以上とするのが好ましく、より好ましくは3μm以上である。尚、保護層5の厚みが上記程度であれば、抵抗調整層2が設けられた状態のロール表面の表面硬度に対し、保護層5が設けられた帯電ロール1の表面硬度は大きく変化することはなく、帯電音の影響を与えない。
【0035】
保護層5の上記ポリマーとしては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム等のゴム、これらをシリコーン、フッ素等で変性した変性物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上含まれていても良い。
【0036】
上記保護層組成物中には、導電剤(カーボンブラックなどの電子系導電剤、及び/又は、第4級アンモニウム塩などのイオン系導電剤)、離型剤、硬化剤などの添加剤が1種又は2種以上含まれていても良い。
【0037】
保護層5は、有機溶剤等の溶剤中に上記保護層組成物を溶解・分散させてなる保護層コーティング液を塗工し、乾燥或いは加熱・硬化させることで形成することができる。保護層コーティング液に用いられる上記有機溶媒は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。こららは混合して使用しても良い。上記コーティング方法としては、例えば、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0038】
なお本発明の帯電ロール1は、図1に示す態様の帯電ロールの層構造に限定されず、少なくとも軸体2と導電性弾性層3、抵抗調整層1(41)及び抵抗調整層2(42)の2層からなる抵抗調整層4を備えるものであれば良い。
【実施例】
【0039】
以下、実施例、比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0040】
実施例1
〔導電性シャフト〕
外径6mm、長さ252.5mmの鉄製で、表面にNiめっきが施されている中実円柱状の導電性シャフトを準備した。
【0041】
〔導電性発泡体層のゴム配合物の調整〕
EPDM(三井化学社製、「EPT4045」)100質量部(以下、質量部を単に部と略記する。)と、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC)20部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸1部と、プロセスオイル(出光化学社製、「ダイアナプロセスPW380」)30部と、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤)15部と、硫黄1部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(架橋促進剤)2部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(架橋促進剤)1部とを配合し、導電性発泡体層に用いるゴム配合物を調製した
【0042】
〔抵抗調整層1の形成材料の調製〕
エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合体(ダイソー社製、「エピクロマーCG102」)100部と、トリオクタデシルアンモニウムパークロレート1部と、シリカ(東ソー・シリカ社製、「ニプシールVN3」)50部と、酸化亜鉛(三井金属工業社製)5部と、ステアリン酸(花王社製、「ルナックS−30」)1部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーDM」)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーTT」)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーTRA」)0.5部とを配合し、ロールを用いて混練りすることにより、抵抗調整層の形成材料を調製した。
【0043】
〔抵抗調整層2のコーティング液の調製〕
エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合体(ダイソー社製、「エピクロマーCG102」)100部と、トリオクタデシルアンモニウムパークロレート1部と、酸化亜鉛(三井金属化学社製)5部と、ステアリン酸(花王社製、「ルナックS−30」)1部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーDM」)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーTT」)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーTRA」)0.5部とを配合し、ロールを用いて混練りすることにより、抵抗調整層2の形成材料を調製した。その後、この混練りした形成材料をMEKへ溶解し、所定粘度に調製して抵抗調整層2のコーティング液とした。
【0044】
〔保護層のコーティング液の調製〕
フッ素化ポリオレフィン系樹脂(アトフィナジャパン社製、「カイナーSL」)100部と、導電性酸化チタン(石原テクノ社製、「タイペークET−300W」)100部とを、MEK200部に溶解し、これらをサンドミルを用いて分散し、保護層のコーティング液とした。
【0045】
〔帯電ロールの作製〕
上記導電性シャフトの外周に接着剤を塗布した後、この表面に、上記導電性発泡体層用のゴム配合物及び抵抗調整層1用のゴム配合物とを押出機を用いて押出成形した。そして、これを金型内で同時架橋し、発泡させた。これにより芯金の外周に導電性発泡体層(厚み2.5mm)が形成されるとともに、この導電性発泡体層の外周に、抵抗調整層1(厚み0.5mm)が形成されたロールを作製した。この抵抗調整層1が形成された状態のMD−1表面硬度(A)を測定したところ65°であった。
【0046】
次いで、このロールにおける抵抗調整層1の外周面に、所定粘度に調製した上記抵抗調整層2のコーティング液を塗工し乾燥した後に、160℃で30分間、加熱処理を行い抵抗調整層2(厚み50μm)を形成した。この抵抗調整層2が形成された状態のMD−1表面硬度(B)は61.8°であり、表面硬度比(B/A)は0.95であった。
【0047】
次いで、このロールにおける抵抗調整層2の外周面に、上記保護層のコーティング液をロールコーティング法により塗布し、乾燥させた後、150℃×60分の条件で加熱架橋を行って保護層(厚み15μm)を形成し、実施例1の帯電ロールを得た。
【0048】
比較例1
実施例1において、抵抗調整層2を設けなかった。それ以外は、実施例1と同様な手順で帯電ロールを作製した。
【0049】
実施例2 〜5
実施例1における抵抗調整層2を塗工する際に、塗工条件を変更して、抵抗調整層2の厚みを、表1に示すように、100μm(実施例2)、150μm(実施例3)、200μm(実施例4)、250μm(実施例5)にそれぞれ形成した。それ以外については、実施例1と同様な手順で帯電ロールを作製した。表1に示すように、抵抗調整層2が設けられた状態のロールのMD−1表面硬度(B)は、57.9°〜39.0°であり、表面硬度比(B/A)は、0.89〜0.60であった。
【0050】
比較例2
実施例1における抵抗調整層2を塗工する際に、塗工条件を変更して、抵抗調整層2の厚みを、表1に示すように、280μmに形成した。それ以外については、実施例1と同様な手順で帯電ロールを作製した。表1に示すように、抵抗調整層2が設けられた状態のロールのMD−1表面硬度は、34.1°であり、表面硬度比(B/A)は0.53であった。
【0051】
実施例6
実施例1における抵抗調整層1の材料の代わりに下記の材料を使用した。
ニトリルゴム(日本ゼオン社製、「ニポールDN3335」)100部と、FEFカーボンブラック(東海カーボン社製、「シーストSO」)45部と、シリカ(東ソー・シリカ社製、「ニプシールVN3」)50部と、酸化亜鉛(三井金属工業社製)5部と、ステアリン酸(花王社製、「ルナックS−30」)1部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーDM」)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーTT」)0.5部と、加硫促進剤(大内新興化学工業社製、「ノクセラーTRA」)0.5部とを配合し、ロールを用いて混練りすることにより、抵抗調整層1の形成材料を調製し、抵抗調整層2の厚みを25μmに形成した。それ以外については、実施例1と同様な手順で帯電ロールを作製した。抵抗調整層1が形成された状態のMD−1表面硬度(A)は85.2°であり、抵抗調整層2が形成された状態のMD−1表面硬度(B)は81.0°であり、表面硬度比(B/A)は0.95であった。
【0052】
比較例3
実施例6において、抵抗調整層2を設けなかった。それ以外は、実施例6と同様な手順で帯電ロールを作製した。
【0053】
実施例7〜10
実施例6における抵抗調整層2を塗工する際に、塗工条件を変更して、抵抗調整層2の厚みを、表2に示すように、50μm(実施例7)、100μm(実施例8)、150μm(実施例9)、200μm(実施例10)にそれぞれ形成した。それ以外については、実施例6と同様な手順で帯電ロールを作製した。表1に示すように、抵抗調整層2が設けられた状態のロールのMD−1表面硬度(B)は、76.8°〜51.0°であり、表面硬度比(B/A)は、0.90〜0.60であった。
【0054】
比較例4
実施例6における抵抗調整層2を塗工する際に、塗工条件を変更して、抵抗調整層2の厚みを、表2に示すように、250μmに形成した。それ以外については、実施例6と同様な手順で帯電ロールを作製した。表1に示すように、抵抗調整層2が設けられた状態のロールのMD−1表面硬度(B)は、44.2°であり、表面硬度比(B/A)は、0.52であった。
【0055】
実施例11
実施例6で用いた抵抗調整層2の材料である実施例1の抵抗調整層2の材料の代わりに、実施例1の〔抵抗調整層2のコーティング液の調製〕の配合材料へ、シリカ(東ソー・シリカ社製、「ニプシールVN3」)10部を配合して、実例1のコーティング液と同様の操作で実施例11の抵抗調整層2のコーティング液を調製した。このコーティング液を用いて、抵抗調整層2の厚みを250μmに形成した。それ以外については、実施例6と同様な手順で帯電ロールを作製した。抵抗調整層2が形成された状態のMD−1表面硬度(B)は57.0°であり、表面硬度比(B/A)は0.67であった。
【0056】
実施例1〜11及び比較例1〜4の帯電ロールについて、帯電音を測定した、その結果を表1、表2に示す。帯電音の測定方法、及び評価基準は以下の通りである。
【0057】
〔帯電音の測定〕
図2に示すような帯電音測定用治具を用いて、帯電ロール11から感光ドラム12に帯電させる際の帯電音の測定(音圧測定)を行なった。先ず、感光ドラム12(直径:30mm)を、45rpmにて、図中矢印a方向に回転させ、それと連れ回るように帯電ロール11を回転させた(図中矢印b方向)。それと同時に、帯電ロール11に対して、高圧電源13により、2000Hz、2kVpp、DC−600Vの電圧を印加した。そして、帯電ロール11と感光ドラム12との接触部から距離Dが30cm離れた地点において、騒音計14(株式会社小野測器製、高感度精密騒音計)を用いて、帯電音(db)の測定を行なった。測定におけるデータ採取は20ポイント/ロール1周の頻度で行い、ロール1周分の中での最大値を『絶対音(dB)』とし、最大値と最小値との差を『うなり音(dB)』とした。そして、絶対音の評価は、上記絶対音の数値が、抵抗調整層2を設けない場合と比較して(実施例1〜5及び比較例2は比較例1と比較、実施例6〜10、比較例4は比較例3と比較)、同じか或いは低い場合は悪化しないと評価して○とし、高くなった場合は悪化したと評価して×とした。また、うなり音の評価は、上記うなり音が1.5dB以下の場合を○とし、うなり音が1.5dBを超える場合を×とした。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表1及び表2に示すように、本発明の実施例1〜5、6〜11は、いずれも帯電音の絶対音及びうなり音の両方の評価が良好なものであった。これに対し、比較例1〜4は、絶対音又はうなり音のいずれかが不良であった。なお、表1及び表2に実施例、比較例の帯電ロール全体の500g荷重におけるAsker−C硬度を示したが、このAsker−C硬度を規定するだけでは、絶対音とうなり音の両方の帯電音の特性を満足することができないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。
【図2】実施例の帯電音測定方法を模式的に示す説明図である。
【図3】帯電ロールの表面硬度の測定に用いるロールの説明図であり、(a)は抵抗調整層1が形成された状態のロールを示し、(b)は抵抗調整層2が形成された状態のロールを示す。
【符号の説明】
【0062】
1 帯電ロール
2 軸体
3 導電性弾性層
4 抵抗調整層
41 抵抗調整層1
42 抵抗調整層2
5 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周に導電性弾性層及び抵抗調整層が設けられている電子写真機器用帯電ロールにおいて、
前記抵抗調整層が、内層側に形成された抵抗調整層1と外層側に形成された抵抗調整層2とからなる2層構成であり、
前記抵抗調整層1が形成されたロール表面のMD−1表面硬度(A)が65°〜85°であり、
前記抵抗調整層2が形成されたロール表面のMD−1表面硬度(B)と前記MD−1表面硬度(A)との比である表面硬度比(B/A)が0.6〜0.95であることを特徴とする帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−186770(P2009−186770A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26749(P2008−26749)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】