説明

電子写真機器用帯電ロール

【課題】帯電性能を維持しつつ、トナーや外添剤に対する耐付着性に優れた電子写真機器用帯電ロールを提供すること。
【解決手段】その表層が、(A)分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている、単官能の(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ウレタン(メタ)アクリレートと、を含有する紫外線硬化型導電性組成物の硬化物よりなる電子写真機器用帯電ロールとする。(A)成分/前記(B)成分(質量比)は、20/80〜80/20の範囲内にあると良い。(B)ウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、6個以上であると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されている。この種の電子写真機器では、静電潜像を形成するに先立ち、予め帯電ロールにより感光ドラム表面を帯電させる。
【0003】
帯電ロールの帯電方式としては、電源の低電圧化による省エネ化、低価格化を図りやすいDC帯電方式と、高速化、高画質化を目指して安定した帯電を得やすいAC・DC重畳帯電方式とが知られている。
【0004】
AC・DC重畳帯電方式は、2方式の電源が必要になったり、電源容量が大きくなったりする問題や、交流波による帯電音発生の問題などがあることから、最近では、高速・高画質向けの帯電ロールにも、DC帯電方式を採用する場合が増えてきている。
【0005】
帯電ロールとしては、例えば、軸体の外周に、イオン導電性のゴムベース層を形成し、このゴムベース層の外周に、トナーや外添剤の付着を防ぐため、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂などによる高離型性の表層を形成したものなどが知られている。
【0006】
また、近年では、低VOC化、省エネ化などの要求から、溶剤を極力抑え、熱処理による溶剤除去を行うことなく、紫外線硬化樹脂などにより表層を形成することも行われるようになってきている。
【0007】
例えば、特許文献1には、軸体としての芯金の外周に、導電性シリコーンゴムよりなるベース層を形成し、このベース層の外周に、紫外線硬化型導電性組成物を紫外線硬化させて表層を形成した帯電ロールが記載されている。
【0008】
上記組成物としては、具体的には、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート50重量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート50重量部、イオン導電剤3重量部、および、光開始剤1重量部を含有する組成物が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−274242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来知られる帯電ロールは、以下の点で改良の余地があった。
【0011】
最近、OA機器の低価格化によるDC電源化や、プリントコスト低減につながるカートリッジのロングライフ化などに伴い、OA機器には、高画質を今まで以上に長期間維持することが求められている。そしてこれに伴い、OA機器に組み込まれる帯電ロールにも、これに対応することが要求されている。
【0012】
しかしながら、特許文献1の帯電ロールは、表層のタック性(粘性)が比較的高めである。そのため、帯電ロールの使用時に、感光ドラム上に残ったトナーや外添剤がロール表面に付着してしまい(フィルミング)、長期にわたって安定した帯電性能を維持することが困難な場合があることが判明した。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、帯電性能を維持しつつ、トナーや外添剤に対する耐付着性に優れた電子写真機器用帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、表層が、(A)分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている、単官能の(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ウレタン(メタ)アクリレートとを含有する紫外線硬化型導電性組成物の硬化物よりなることを要旨とする。
【0015】
ここで、上記(A)成分/(B)成分(質量比)は、20/80〜80/20の範囲内にあると良い。
【0016】
また、上記(B)ウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、6個以上であると良い。
【0017】
また、上記紫外線硬化型導電性組成物は、(C)イオン導電剤を含有していると良い。
【0018】
また、上記帯電ロールのロール構成としては、軸体と、軸体の外周に形成されたベース層と、ベース層の外周に形成された上記表層とを有する構成、または、軸体と、軸体の外周に形成されたベース層と、ベース層の外周に形成された中間層と、中間層の外周に形成された上記表層とを有する構成などが好ましい。
【0019】
この際、上記表層は、粗さ形成用粒子を含んでいると良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、その表層が、特定の成分(A)および成分(B)を含有する紫外線硬化型導電性組成物の硬化物よりなっている。
【0021】
すなわち、(A)成分を用いることで、硬化物の電気抵抗値を低くしやすくなり、帯電性能を確保するのに有利となる。そして、さらに、(B)成分を用いることで、硬化物の硬度が相対的に高くなり、摩擦係数が小さくなってタック性が低下する。そのため、トナーや外添剤に対する耐付着性が向上し、帯電性を長期にわたって維持しやすくなる。
【0022】
したがって、本発明に係る帯電ロールによれば、これが組み込まれるプリンタや複写機などのOA機器の画質を、長期間高画質に維持することが可能になる。
【0023】
ここで、上記(A)成分/(B)成分(質量比)が特定の範囲内にある場合には、表層の電気抵抗、耐付着性のバランスに優れる。
【0024】
また、(B)成分のウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数が6個以上である場合には、良好な耐付着性を確保しやすくなる。
【0025】
また、紫外線硬化型導電性組成物が(C)イオン導電剤を含有する場合には、硬化物の電気抵抗の調整を図りやすくなる。また、抵抗ムラも比較的発生し難くなる。
【0026】
また、上記表層中に粗さ形成用粒子を含んでいる場合には、微小ギャップが増加し、放電部分が増加するため、帯電の均一化、帯電量の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本実施形態に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、「本帯電ロール」ということがある。)について説明する。
【0028】
図1は、本帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。例えば、図1に示すように、本帯電ロール10は、軸体12の外周に、ベース層14と、表層16とがこの順に積層された積層構造を有している。
【0029】
図2は、本帯電ロールの他の例を示す周方向断面図である。本帯電ロール10は、図1に示す態様に限定されるものではなく、図2に示すように、ベース層14と表層16との間に、中間層18が任意に積層されていても良い。
【0030】
ベース層、表層、中間層は、それぞれ、単層から構成されていても良いし、複数層から構成されていても良い。好ましくは、積層構造の簡略化、ロール生産性の向上などの観点から、ベース層、表層、中間層は、単層から構成されていることが好ましい。
【0031】
軸体は、導電性を有するものであれば、何れのものでも使用し得る。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。また必要に応じ、軸体の表面には、接着剤、プライマーなどを塗布してもよい。上記接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0032】
ベース層は、非発泡体(ソリッド状)または発泡体(スポンジ状)の何れの形態であっても良い。ベース層を形成する主材料としては、ゴム弾性材料を好適に用いることができる。ゴム弾性材料としては、具体的には、例えば、ヒドリンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0033】
上記ゴム弾性材料としては、電気抵抗制御性、加工性などの観点から、ヒドリンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが好ましい。
【0034】
ベース層には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO 、c−ZnO、c−SnO (c−は導電性を意味する。)、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)などの従来公知の導電剤を、上記材料中に適宜添加することができる。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、軟化剤(オイル)等を適宜添加しても良い。
【0035】
なお、軸体の外周にベース層を形成するには、軸体をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、ベース層形成用組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する(注型法)、軸体の表面にベース層形成用組成物を押出成形する(押出法)などすれば良い。また、ベース層を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰り返し行えば良い。
【0036】
ベース層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1〜10mm、より好ましくは、1〜5mmの範囲内から選択することができる。
【0037】
また、ベース層の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1010Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cm、さらにより好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内から選択することができる。
【0038】
本帯電ロールにおいて、表層は、特定の成分を含む未硬化の紫外線硬化型導電性組成物(以下、単に「導電性組成物」ということがある。)の硬化物より形成されている。この表層は、ロール表面の保護層として機能し得る。
【0039】
ここで、上記導電性組成物は、特定の成分として、(A)単官能の(メタ)アクリレートモノマーと、(B)ウレタン(メタ)アクリレートとを含有している。
【0040】
なお、本発明において、単官能とは、(メタ)アクリレートモノマー1分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有していることをいう。また、多官能とは、光重合反応に関与する(メタ)アクリロイル基などの官能基を2個以上有していることをいう。
【0041】
(A)単官能の(メタ)アクリレートモノマーは、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている。このエチレンオキシド単位は、導電性組成物中に含まれることがあるイオン導電剤との相溶性の向上に寄与する。
【0042】
分子構造中に導入されているエチレンオキシド単位の含有量としては、硬化物の電気抵抗を低くしやすくなるなどの観点から、好ましくは、1〜98質量%の範囲内、より好ましくは、20〜98質量%の範囲内、さらに好ましくは、40〜98質量%の範囲内にあると良い。
【0043】
なお、エチレンオキシド単位の含有量は、例えば、NMR(核磁気共鳴装置)などを用いて測定することができる。
【0044】
(A)単官能の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド単位以外にも、他の単位が1種または2種以上、分子構造中に導入されていても良い。
【0045】
上記他の単位としては、例えば、炭素数3〜20のアルキレンオキシド単位、トリメチロールプロパン単位、ペンタエリスリトール単位、エチルヘキシルカルビトール単位、グリセリン単位などや、ノニルフェノール単位、パラクミルフェノール単位、ビスフェノールA単位、スチレンオキシド単位、イソシアヌル酸単位、ビスフェノールF単位、フタル酸単位、フェノキシ単位などの環状不飽和構造を含む単位などを例示することができる。
【0046】
(A)単官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的には、例えば、フェノキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化1等)、ノニルフェノールエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化2等)、メトキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化3等)、エトキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化4等)、2エチルヘキシルエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化5等)、ブトキシエチレンオキシド変性アクリレート(表1の化6等)、エチレンオキシド変性クレゾールアクリレート(表1の化7等)などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0047】
【表1】

【0048】
一方、(B)ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを合わせ持つ化合物である。(B)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、イソシアネート化合物に水酸基含有アクリレートが直接付加したタイプ、イソシアヌレートのようなポリイソシアネート化合物に水酸基含有アクリレートが直接付加したタイプ、ポリオールとイソシアネート化合物の反応物に水酸基含有アクリレートが付加したタイプなどのウレタン(メタ)アクリレートを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0049】
上記イソシアネート化合物としては、ピュアMDI、クルードMDI、IPDIなどが挙げられる。また、上記ポリオールとしては、エステル系、エーテル系ポリオールなどが挙げられる。また、上記水酸基含有アクリレートとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
【0050】
これらのうち、屈曲性、強度などの観点から、ポリオールとイソシアネート化合物の反応物に水酸基含有アクリレートが付加したタイプのウレタン(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0051】
また、(B)ウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、良好な耐付着性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、6個以上、より好ましくは、8個以上、さらにより好ましくは、10個以上であると良い。
【0052】
なお、上記(メタ)アクリロイル基の上限の数は、特に限定されるものではないが、上記(メタ)アクリロイル基の数が過度になると、硬度が上がり、屈曲性が低下するなどの傾向が見られる。そのため、好ましくは、20個以下であると良い。
【0053】
上記導電性組成物は、硬化後における表層の電気抵抗、耐付着性のバランスを良好にするなどの観点から、(A)成分/前記(B)成分(質量比)が、好ましくは、20/80〜80/20、より好ましくは、25/75〜75/25、さらにより好ましくは、30/70〜70/30の範囲内にあると良い。
【0054】
上記導電性組成物は、上記(A)成分、(B)成分以外にも、必要に応じて、他の光重合成分を含有していても良い。
【0055】
なお、他の光重合成分としては、例えば、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されていない、単官能の(メタ)アクリレートモノマー、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている、多官能の(メタ)アクリレートモノマー、分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されていない、多官能の(メタ)アクリレートモノマーなどを例示することができる。
【0056】
また、上記導電性組成物は、紫外線などの光により光重合して硬化するものであり、光重合開始剤を含んでいる。
【0057】
上記光重合開始剤は、特に限定されることなく、通常使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0058】
上記光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、2−メチルベンゾイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジアセチル、エオシン、チオニン、ミヒラ−ケトン、アントラセン、アントラキノン、アセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピルαヒドロキシイソブチルフェノン、α・α´ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルベンゾイルフォルメイト、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]・2・モルフォリノ−プロペン、チオキサントン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−イル)チタニウム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(η5 −2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0059】
上記光重合開始剤の含有量の下限値は、導電性組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらにより好ましくは、1質量部以上であると良い。
【0060】
一方、上記光重合開始剤の含有量の上限値は、導電性組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下であると良い。
【0061】
また、上記導電性組成物は、好ましい添加成分として、(C)イオン導電剤をさらに含んでいると良い。(C)イオン導電剤を含む場合には、上記導電性組成物の硬化物である表層の電気抵抗の調整を図りやすくなる。また、抵抗ムラも比較的発生し難くなる。
【0062】
上記イオン導電剤は、特に限定されることなく、電子写真機器分野で使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0063】
上記イオン導電剤としては、具体的には、例えば、化8で表される4級アンモニウム過塩素酸塩(但し、化8中、R、R、R、Rは、炭素数1〜18のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基などを示す)、化9で表されるホウ酸塩(但し、化9中、R、R、R、Rは、炭素数1〜18のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、キシリル基などを示し、Mn+は、アルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンであり、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどを示す)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0064】
(化8)

【0065】
(化9)

【0066】
上記イオン導電剤の含有量の下限値は、導電性組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、さらにより好ましくは、1質量部以上であると良い。
【0067】
一方、上記イオン導電剤の含有量の上限値は、導電性組成物中に含まれる重合成分100質量部に対し、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、10質量部以下であると良い。
【0068】
また、上記導電性組成物は、粗さ形成用粒子を含んでいると良い。粗さ形成用粒子を含んでいる場合には、上記導電性組成物の硬化物である表層表面に凹凸が形成されやすくなる。そのため、帯電ロールの表層表面と感光ドラム表面との間に形成される微小ギャップが増加し、放電部分が増加して、帯電の均一化、帯電量の向上に寄与しやすくなるからである。
【0069】
上記粗さ形成用粒子としては、具体的には、例えば、ウレタン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、アクリル粒子、尿素樹脂粒子、アミド粒子などの樹脂粒子、ゴム粒子、シリカ粒子などを好適なものとして例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0070】
上記粗さ形成用粒子の平均粒径は、後述する表層の厚みなどを考慮して最適な値を選択することができる。
【0071】
上記粗さ形成用粒子の平均粒径としては、好ましくは、0.1〜30μm、より好ましくは、1〜20μm、さらに好ましくは、5〜15μmなどを例示することができる。
【0072】
上記導電性組成物は、他にも、必要に応じて光安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種の添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0073】
以上説明した導電性組成物は、取扱い性が良好であるなどの観点から、その粘度(25℃)が、好ましくは、100000mPa・s以下、より好ましくは、10000mPa・s以下であると良い。塗工性などにも優れるなどの観点から、さらにより好ましくは、5000mPa・s以下であると良い。
【0074】
上記導電性組成物は、上記範囲に粘度を調製するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIDK)、THF、DMFなどの有機溶剤、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などといった溶剤を適宜含んでいても良い。また、無溶剤であっても良い。
【0075】
上述した導電性組成物は、各種材料を所望の配合となるように秤量し、これらを攪拌機、サンドミルなどの混合手段により混合するなどして調製することができる。なお、混合中、混合後に脱泡処理などを行っても良い。
【0076】
このような導電性組成物を用いて、ベース層や中間層の外周に表層を形成する方法としては、例えば、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。
【0077】
より具体的には、例えば、軸体にベース層、さらに中間層が任意に形成されたロール体の表面にロールコーティング法などにより、上記導電性組成物を塗工し、紫外線を照射して硬化させる方法、上記ロール体を、上記導電性組成物が貯留された貯留槽内に浸漬し、引き上げた後に紫外線を照射して硬化させる方法などを例示することができる。溶剤を含有する場合、モノマー成分を含有する場合には、紫外線硬化後、熱処理を行っても良い。
【0078】
なお、これらコーティング法は1種または2種以上組み合わせても良い。また、上記コーティング法は、1回または2回以上繰り返し行っても良い。
【0079】
表層の厚みは、特に限定されるものではないが、電気抵抗を上昇させ難い、ロール硬度の上昇を抑制するなどの観点から、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは、0.1〜20μm、さらにより好ましくは、0.3〜10μmの範囲内から選択すると良い。
【0080】
また、表層の体積抵抗率は、ロールの電気抵抗制御性などの観点から、好ましくは1×10〜1×10Ω・cm、より好ましくは、1×10〜1×10Ω・cmの範囲内から選択することができる。
【0081】
本帯電ロールは、上述した通り、中間層を有していても良い。中間層は、抵抗調整層として機能し得るものである。
【0082】
中間層を形成する主材料としては、ゴム弾性材料を好適に用いることができる。ゴム弾性材料としては、具体的には、例えば、ヒドリンゴム(ECO)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、ウレタン系エラストマー、フッ素ゴム、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)などを例示することができる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0083】
上記ゴム弾性材料としては、電気抵抗制御性、耐ヘタリ性などの観点から、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、ウレタン系エラストマーなどが好ましい。
【0084】
中間層には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO 、c−ZnO、c−SnO (c−は導電性を意味する。)、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)などの従来公知の導電剤を、上記材料中に適宜添加することができる。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、軟化剤(オイル)等を適宜添加しても良い。
【0085】
なお、ベース層の外周に中間層を形成するには、ベース層を形成した軸体をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、中間層形成用組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する(注型法)、ベース層の表面に中間層形成用組成物を押出成形する(押出法)などすれば良い。また、中間層を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰り返し行えば良い。
【0086】
中間層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.001〜2mm、より好ましくは、0.01〜0.5mmの範囲内から選択することができる。
【0087】
また、中間層の体積抵抗率は、好ましくは、10〜1010Ω・cm、より好ましくは、10〜10Ω・cm、さらにより好ましくは、10〜10Ω・cmの範囲内から選択することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0089】
1.実施例および比較例に係る帯電ロールの表層に用いる導電性組成物の調製
後述する表2に示す配合割合(単位は質量部)となるように、各種材料を秤量し、これらを攪拌機により撹拌、混合した後、室温にて24時間放置(脱泡のため)することにより、実施例1〜9、比較例1〜2に係る帯電ロールの表層に用いる各導電性組成物を調製した。
【0090】
この際、上記各導電性組成物の調製時に使用した各種材料は、以下の通りである。
・メトキシエチレンオキシド変性アクリレート(CH=CHCO(OCHCHOCH、n≒22)[新中村化学工業(株)製、「NKエステル AM−230G」]
・フェノキシエチレンオキシド変性アクリレート(CH=CHCO−(OCHCH−O−C)[東亞合成(株)製、「アロニックス M101」]
・ノニルフェノールエチレンオキシド変性アクリレート(CH=CHCO−(OCHCH−C−C19)[共栄社化学(株)製、「ライトアクリレートNP−8EA」]
【0091】
・ウレタンアクリレート(1)(官能基数f=6)[ダイセルUCB(株)製、「Ebecryl 1290」]
・ウレタンアクリレート(2)(官能基数f=10)[根上工業(株)製、「アートレジン UN904」]
・ウレタンアクリレート(3)(官能基数f=15)[根上工業(株)製、「アートレジン UN3320HS」]
【0092】
・光重合開始剤[チバスペシャルティケミカルズ(株)製、「イルガキュアー127」]
【0093】
・イオン導電剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート)
【0094】
・ウレタン粒子(大日本インキ化学工業(株)製、「バーノックCFB100」、平均粒径20μm)
【0095】
2.導電性組成物の硬化物の特性評価
次に、得られた各導電性組成物の硬化物の特性評価を以下のようにして行った。
【0096】
(摩擦係数)
バーコート法により、ガラス板上に各導電性組成物をコーティングした後、紫外線を照射し、厚さ約100μm、縦100mm、横100mmの各シート状硬化物を作製した。この際、紫外線照射機(アイグラフィック社製「UB031−2A/BM」)の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とコーティングした各組成物との距離は200mmとし、紫外線は50秒間照射(紫外線強度100mW/cm)した。
【0097】
次いで、摩擦係数測定機(協和界面科学(株)製、「DFPM−S」)を用い、先端子:剛球、測定荷重:50gの測定条件で、作製した各シート状硬化物の摩擦係数μsを測定した。
【0098】
(電気抵抗)
上記各シート状硬化物表面に1cm角の銀ペースト電極を形成し、JIS K6271(2重リング電極法)に準拠して、100V印加したときの体積抵抗率を測定した。
【0099】
3.電子写真機器用帯電ロールの作製
(ベース層形成用組成物の調製)
初めに、ヒドリン系ゴム(ダイソー(株)製、「エピクロマーCG102」)100質量部と、ステアリン酸(花王(株)製、「ルナックS−30」)1質量部と、酸化亜鉛2種(三井金属工業(株)製)5質量部と、粉末イオウ(鶴見化学工業(株)製)1.5質量部と、チアゾール系加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーDM」)1.5質量部と、チウラム系加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーTS」)0.5質量部と、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート1質量部とを、ニーダーで混練することにより、ヒドリンゴム系のベース層形成用組成物を調製した。
【0100】
(ベース層の形成)
次に、その内部に芯金(直径6mm)を同軸にセットした円筒状金型内に、ベース層形成用組成物を注入し、180℃で45分間加熱した後、冷却、脱型した。これにより、芯金の外周に、ヒドリンゴム系組成物よりなるベース層(厚み3mm)を備えた各ロール体を作製した。
【0101】
(表層の形成)
次いで、ロールコート法を用いて、上記各ロール体の表面に各導電性組成物をコーティングするとともに、紫外線を照射(紫外線強度100mW/cm、50秒間照射)し、130℃で30分熱処理して各導電性組成物を硬化させた。上記操作により、各ベース層の外周に各表層(厚み3μm)を形成した。これにより、実施例1〜9、比較例1〜2に係る帯電ロール(2層構成)を作製した。
【0102】
4.帯電ロールの特性評価
(ロール抵抗)
金属ドラム上に各帯電ロールを線接触させ、ロールの芯金の両端に各々500gの荷重をかけた状態で金属ドラムを回転駆動し、30rpmで各帯電ロールをつれ回り回転させ、500V印加した状態での芯金と金属ドラム間の電気抵抗を測定し、ロール抵抗とした。
【0103】
(耐付着性)
トナーの耐付着性を、フィルミングを調査することにより、評価した。評価は下記の手順により行った。
【0104】
各帯電ロールを、カラーレーザープリンタ(リコー(株)製、「IPSIO CX−3000」)のカートリッジ内に組み込み、環境温度15℃、相対湿度10%RHの条件下にて、5%印字文字画像(A4紙面積に対し、5%分が印字された状態の画像)を15000枚画像出しした。
【0105】
上記耐久後、メンディングテープ(スコッチ社製、「810」)を用いて、各帯電ロール表面の汚れを剥がし取り、マクベス濃度計にてその濃度を測定した。
【0106】
この際、上記濃度が0.15以下であった場合を、トナー付着がほとんどないとして耐付着性「◎」、上記濃度が0.16〜0.2であった場合を、多少のトナー付着はあるが許容範囲内であるとして耐付着性「○」、上記濃度が0.21以上であった場合を、トナー付着が多いとして耐付着性「×」とした。
【0107】
(帯電性)
各帯電ロールを、カラーレーザープリンタ(リコー(株)製、「IPSIO CX−3000」)のカートリッジ内に組み込んだ。
【0108】
次いで、各感光ドラムを各帯電ロールに押し付けながら回転させ、DC−1200Vの電圧をかけ、そのときの感光ドラム上の表面電位を測定した。上記表面電位が−700V以下であった場合を、帯電性に優れるとして「◎」、上記表面電位が−700V超〜−600V以下であった場合を、帯電性が良好であるとして「○」、上記表面電位が−600V超であった場合を、帯電性に劣るとして「×」とした。
【0109】
(画像出し評価)
各帯電ロールを、カラーレーザープリンタ(リコー(株)製、「IPSIO CX−3000」)のカートリッジ内に組み込み、環境温度15℃、相対湿度10%RHの条件下にて、ハーフトーンの画像出しを行った。得られた初期画像について、濃度ムラの状態を目視にて確認した。濃度ムラがなかったものを良好「○」とし、濃度ムラが大きく、実用に耐えないものを不良「×」とした。
【0110】
表2に、実施例および比較例に係る帯電ロールの評価結果を、表層形成用の導電性組成物の配合割合および材料特性とともにまとめて示す。
【0111】
【表2】

【0112】
表2を相対比較すると、以下のことが分かる。すなわち、比較例1に係る帯電ロールは、その表層が、重合成分として(A)成分だけを含む導電性組成物の硬化物よりなっている。
【0113】
そのため、低抵抗であるものの、タック性が高く(摩擦係数μsが高く)、トナー耐付着性に劣ることが分かる。
【0114】
また、比較例2に係る帯電ロールは、その表層が、重合成分として(B)成分だけを含む導電性組成物の硬化物よりなっている。
【0115】
そのため、タック性が低く(摩擦係数μsが低い)、フィルミングが生じ難いものの、高抵抗であり、帯電性に劣る。その結果、良好な画像が得られないことが分かる。
【0116】
これらに対し、実施例に係る帯電ロールは、何れも、各表層が、本願で規定される重合成分である(A)成分および(B)成分の両方を含有する導電性組成物の硬化物よりなっている。
【0117】
そのため、(A)成分による帯電性の確保と、(B)成分によるタック性の低下により、帯電性能を維持しつつ、トナーや外添剤に対する耐付着性に優れた帯電ロールを得ることができることが確認できた。
【0118】
したがって、かかる帯電ロールによれば、これが組み込まれるプリンタや複写機などのOA機器の画質を、長期間高画質に維持することができると言える。
【0119】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本実施形態に係る帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。
【図2】本実施形態に係る帯電ロールの他の例を示す周方向断面図である。
【符号の説明】
【0121】
10 帯電ロール
12 軸体
14 ベース層
16 表層
18 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層が、
(A)分子構造中にエチレンオキシド単位が導入されている、単官能の(メタ)アクリレートモノマーと、
(B)ウレタン(メタ)アクリレートと、
を含有する紫外線硬化型導電性組成物の硬化物よりなることを特徴とする電子写真機器用帯電ロール。
【請求項2】
前記(A)成分/前記(B)成分(質量比)は、20/80〜80/20の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記(B)ウレタン(メタ)アクリレート1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は、6個以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記紫外線硬化型導電性組成物は、(C)イオン導電剤を含有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
軸体と、前記軸体の外周に形成されたベース層と、前記ベース層の外周に形成された前記表層とを有する、または、
軸体と、前記軸体の外周に形成されたベース層と、前記ベース層の外周に形成された中間層と、前記中間層の外周に形成された前記表層とを有することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項6】
前記表層は、粗さ形成用粒子を含むことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の電子写真機器用帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−8893(P2009−8893A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170227(P2007−170227)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】