説明

電子写真機器用弾性材料、電子写真機器用部材および電子写真機器用弾性材料の製造方法

【課題】速硬化性による生産性の向上が可能で、柔軟性に優れた電子写真機器用弾性材料を提供すること。これを用いた電子写真機器用部材を提供すること。
【解決手段】光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーと、ゴムとを含有する組成物の硬化物よりなる電子写真機器用弾性材料とする。光重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレートモノマー、光重合性オリゴマーとしては、(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ゴムとしては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレン(ジエン)ゴム、天然ゴムなどが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用弾性材料、電子写真機器用部材および電子写真機器用弾性材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されている。これら電子写真機器の内部には、帯電ロール、現像ロール、トナー供給ロール、転写ロールなどの各種導電性ロールや、中間転写ベルトなどの導電性ベルトが組み込まれている。
【0003】
従来、上記導電性ロール、導電性ベルトに使用される弾性材料は、柔軟性を付与するため、各種ゴムを硫黄または過酸化物により熱硬化させる処方がほとんどであった。
【0004】
最近では、上記ゴム処方に代えて、例えば、特許文献1などに示されるように、アクリレートモノマーを紫外線硬化させる処方も提案されるようになってきている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−274242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、電子写真機器の部材に適用される弾性材料は、以下の点で改良の余地があった。
【0007】
すなわち、従来のゴム処方は、架橋反応による熱硬化に時間がかかる。場合によっては二次的な硬化が必要になることもある。そのため、生産性が悪いといった問題があった。また、熱エネルギーの消費も多いことや、成形に金型が必要であるため、型費用、型メンテナンス費用などが発生し、製造コストが高くなるなどといった短所も有していた。
【0008】
一方、従来の紫外線硬化による処方は、速硬化可能ではあるものの、その硬化物は、比較的硬くて脆いものや、柔軟性は発現するが、ゴムのような高弾性回復性に劣るといった問題があった。そのため、この材料を電子写真機器の部材に使用すると、耐久面で不利であり、長期放置後の画像不具合を引き起こすと考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、速硬化性による生産性の向上が可能で、柔軟性、高弾性回復性が良好な電子写真機器用弾性材料を提供することにある。また、これを用いた電子写真機器用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器用弾性材料は、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーと、ゴムとを含有する組成物の硬化物よりなることを要旨とする。
【0011】
ここで、上記光重合性モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであり、上記光重合性オリゴマーは、(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましい。
【0012】
また、上記光重合性モノマーおよび/または上記光重合性オリゴマーは、分子構造中にエチレンオキシド単位を有する光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含んでいると良い。
【0013】
また、上記ゴムは、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレン(ジエン)ゴム、および、天然ゴムから選択される1種または2種以上を含んでいると良い。
【0014】
また、上記組成物は、イオン導電剤をさらに含んでいても良い。
【0015】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロール、導電性ベルトなどの電子写真機器用部材は、上記電子写真機器用弾性材料を用いたことを要旨とする。
【0016】
本発明に係る電子写真機器用弾性材料の製造方法は、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーと、ゴムとを含有する組成物に、活性エネルギー線を照射し、硬化させる工程を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電子写真機器用弾性材料は、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーと、ゴムとを含有する組成物の硬化物よりなっている。
【0018】
従来知られるゴム組成物(硫黄加硫系、パーオキサイド架橋系など)は、架橋反応による熱硬化に時間がかかる。一方、従来知られるアクリレートモノマーによる紫外線硬化型組成物は、速硬化可能であるものの、その硬化物は比較的硬くて脆い、もしくは、弾性回復性に劣る。
【0019】
これらに対して、上記組成物は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、短時間で硬化させることができる。また、上記組成物は、光重合成分とゴムとを含有し、ゴム中で光重合成分が網目上に結合しているので、その硬化物は、低硬度でヘタリ難く、柔軟性に優れている。
【0020】
したがって、上記弾性材料を電子写真機器用部材に適用すれば、速硬化性により電子写真機器用部材の生産性を向上させることができる。また、低硬度でヘタリ難く、柔軟性に優れた電子写真機器用部材が得られる。
【0021】
ここで、(メタ)アクリレートモノマーおよび/または(メタ)アクリレートオリゴマーは、比較的種類が多く、材料選択の幅が広い。そのため、上記光重合性モノマーが、(メタ)アクリレートモノマーであり、上記光重合性オリゴマーが、(メタ)アクリレートオリゴマーである場合には、硬度、耐ヘタリ性などを調節して柔軟性を可変させやすく、材料設計の自由度を向上させることができる。
【0022】
また、上記光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーが、分子構造中にエチレンオキシド単位を有する場合には、当該弾性材料の電気抵抗制御性を向上させることができる。
【0023】
とりわけ、分子構造中にエチレンオキシド単位を有する光重合性モノマーを用いた場合には、低抵抗側の制御性に優れる。そのため、電子写真機器の帯電ロール、現像ロール、中間転写ベルトなど、所定の体積抵抗が要求される用途に好適に用いることができる。
【0024】
また、上記ゴムを選択した場合には、光重合成分との相溶性に優れるため、低硬度、低ヘタリ性を発現しやすくなる。そのため、当該弾性材料が優れた柔軟性、高弾性回復性を発揮しやすくなる。
【0025】
また、上記組成物がイオン導電剤を含む場合には、当該弾性材料の抵抗制御性を一層向上させることができる。
【0026】
本発明に係る電子写真機器用部材は、上記電子写真機器用弾性材料を用いている。そのため、電子写真機器用部材の生産性に優れる。また、低硬度でヘタリ難く、柔軟性に優れた電子写真機器用部材が得られる。
【0027】
また、上記弾性材料に、分子構造中にエチレンオキシド単位を有する光重合性モノマー等を用いた場合には、低抵抗側の制御性に優れる。そのため、良好な体積抵抗を有する電子写真機器用部材が得られる。
【0028】
本発明に係る電子写真機器用弾性材料の製造方法によれば、短時間で上記組成物の硬化物を得ることができるので、生産性に優れる。また、低硬度でヘタリ難く、柔軟性に優れた弾性材料を得ることができる。
【0029】
また、生産ライン中に熱硬化設備が不要になることから、工程が簡略化され、これによっても生産性を向上させることができる。熱エネルギーの消費も削減できるため、省エネルギー化にも寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本実施形態に係る電子写真機器用弾性材料(以下、「本弾性材料」ということがある。)、本実施形態に係る電子写真機器用部材について説明する。
【0031】
1.本弾性材料
本弾性材料は、光重合成分とゴムとを含有する未硬化組成物の硬化物よりなる。
【0032】
光重合成分とは、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射により硬化しうる光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーのことである。
【0033】
上記組成物は、光重合性モノマー、光重合性オリゴマーを1種または2種以上含んでいても良い。光重合性モノマー、光重合性オリゴマーは、(メタ)アクリロイル基などの光重合反応に関与する官能基を1個有していても良いし(単官能)、上記官能基を2個以上有していても良い(多官能)。
【0034】
光重合性モノマー、光重合性オリゴマーは、好ましくは、架橋密度が高い状態でゴム中で光重合性成分が結び付くことで、より低ヘタリ性を発現しやすくなるなどの観点から、多官能であると良い。
【0035】
光重合性モノマー、光重合性オリゴマーとしては、具体的には、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマーなどを好適なものとして例示することができる。
【0036】
(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマーは、比較的種類が多く、材料選択の幅が広い。そのため、硬度、耐ヘタリ性などを調節して柔軟性を可変させやすく、材料設計の自由度を向上させることができるからである。
【0037】
光重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、2エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのエチレンオキシド単位を含有する光重合性モノマーや、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキシド変性アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、プロポキシエトキシビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス(3−フェニル−4−アクリロイルポリオキシエトキシ)フルオレン、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートなどのエチレンオキシド単位と環状不飽和構造単位とを含む光重合性モノマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0038】
光重合性オリゴマーとしては、具体的には、例えば、ポリエチレンポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどエチレンオキシド単位を有するもの、カーボネートアクリルオリゴマー、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリカプロラクトンジアクリレート、ポリエステルアクリレートなどエチレンオキシド単位を有しないものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0039】
上述した光重合性モノマー、光重合性オリゴマーのうち、好ましくは、本弾性材料の電気抵抗制御性を向上させやすいなどの観点から、分子構造中にエチレンオキシド単位を有するものを好適に用いることができる。
【0040】
上記組成物は、光重合成分以外にゴムを含有している。ゴムとしては、具体的には、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、ウレタンエラストマー、エチレンプロピレン(ジエン)ゴム、天然ゴム、水素添加ニトリルゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴムなどを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0041】
上述したゴムのうち、好ましくは、光重合成分との相溶性に優れる、柔軟性を発揮しやすくなるなどの観点から、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレン(ジエン)ゴム、天然ゴムなどを好適に用いることができる。
【0042】
上記組成物において、光重合成分、ゴムの割合は、特に限定されるものではない。硬度、ヘタリ量、柔軟性などを考慮して、両者の割合を調整することができる。
【0043】
光重合成分、ゴムの合計質量に占める光重合成分の割合は、好ましくは、3〜70質量%の範囲内、より好ましくは、5〜60質量%の範囲内、さらにより好ましくは、10〜50質量%の範囲内であると良い。
【0044】
一方、光重合成分、ゴムの合計質量に占めるゴムの割合は、好ましくは、30〜97質量%の範囲内、より好ましくは、40〜95質量%の範囲内、さらにより好ましくは、50〜90質量%の範囲内であると良い。
【0045】
上記組成物は、その他の成分として、必要に応じて、各種添加剤などを含んでいても良い。
【0046】
上記添加剤としては、例えば、本弾性材料の導電性を調整するために添加する導電剤を代表的なものとして挙げることができる。導電剤は、四級アンモニウム塩などのイオン系導電剤、カーボンブラック、導電性金属酸化物などの電子系導電剤の何れであっても用いることができる。好ましくは、抵抗バラツキが少なく、抵抗制御性を向上させやすいなどの観点から、イオン系導電剤を好適に用いることができる。
【0047】
なお、導電剤を添加する場合、その効果を十分に得るため、光重合成分100重量部に対して、好ましくは、0.01〜20質量部の範囲内、より好ましくは、0.05〜15質量部の範囲内、さらにより好ましくは、0.1〜10質量部の範囲内とすると良い。
【0048】
また、上記添加剤として、例えば、光重合開始剤を代表的なものとして挙げることができる。もっとも、光重合開始剤は、上記組成物を、紫外線硬化させる際には必要になるが、電子線硬化させる際には特に添加する必要はない。光重合開始剤は、特に限定されるものではなく、市販されている各種のものを適用することができる。
【0049】
なお、光重合開始剤を添加する場合、その効果を十分に得るため、光重合成分100質量部に対して、好ましくは、0.01〜10質量部の範囲内、より好ましくは、0.05〜8質量部の範囲内、さらにより好ましくは、0.1〜5質量部の範囲内とすると良い。
【0050】
その他の添加剤としては、例えば、充填剤、導電剤、安定剤、可塑剤、粘度調整剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、架橋剤、架橋助剤、分散剤、消泡剤、顔料などを例示することができる。
【0051】
本弾性材料は、上記未硬化組成物を光硬化させたものである。光硬化の種類としては、紫外線硬化、電子線硬化などが挙げられる。好ましくは、設備が簡略である、安全性に優れるなどの観点から、紫外線硬化であると良い。
【0052】
本弾性材料の形状は、特に限定されるものではなく、層状、ロール状、チューブ状など、各種の形状を採用することができる。
【0053】
本弾性材料の厚みは、形状、光硬化条件などを考慮して可変させることができる。
【0054】
本弾性材料の厚みは、弾性体としての特長を活かし、硬化物特性に優れるなどの観点から、好ましくは、0.1μm〜10mmの範囲内、より好ましくは、0.5μm〜8mmの範囲内、さらに好ましくは、1μm〜5mmの範囲内であると良い。
【0055】
以上説明した本弾性材料は、基本的には、光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーと、ゴムとを含有する組成物に、活性エネルギー線を照射し、硬化させる工程を経ることにより製造することができる。以下、具体的に説明する。
【0056】
上述した光重合性モノマーおよび/またはオリゴマーと、ゴムと、必要に応じて添加する導電剤、光重合開始剤などの各種添加剤とを、ニーダーや2軸混練機などを用いて均一になるまで混練し、未硬化組成物を調製する。
【0057】
次いで、調製した未硬化組成物を、押出法、注型法、プレス法などを用いて、層状、ロール状、チューブ状などの所望形状に形成する。または、未硬化組成物を溶剤に溶解させて、所定の溶液を調製し、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート法などを用いて、層状、ロール状、チューブ状などの所望形状に形成することもできる
【0058】
次いで、所望形状に形成した未硬化物に対して、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を、組成に合わせた最適な光量、時間で照射し、光硬化させる。速硬化による生産性の向上などの観点から、硬化時間が、好ましくは、3分以内、より好ましくは、2分以内、さらにより好ましくは、1分以内となるように、光量などの条件を設定すると良い。
【0059】
2.電子写真機器用部材
本実施形態に係る電子写真機器用部材は、当該部材を構成する弾性材料として、本弾性材料を用いている。
【0060】
電子写真機器用部材としては、具体的には、例えば、帯電ロール、現像ロール、トナー供給ロール、転写ロールなどの各種導電性ロール、転写ベルトなどの導電性ベルトなどを例示することができる。
【0061】
例えば、導電性ロールとしては、例えば、軸体と、軸体の外周に1層または2層以上の導電性を有する弾性体層が積層された構成を例示することができる。
【0062】
具体的な層構成としては、軸体の外周に、ベース層、抵抗調整層などの中間層、表層が順に積層された層構成、ベース層、表層が順に積層された層構成などを例示することができる。なお、各層は、それぞれ単層、複数層から構成されていても良い。
【0063】
軸体は、導電性を有するものであれば、何れのものでも使用し得る。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。また必要に応じ、軸体の表面には、接着剤、プライマーなどを塗布してもよい。上記接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0064】
ここで、上記導電性ロールは、本弾性材料より形成された弾性体層を有している。本弾性材料より形成された弾性体層は、ロール層構成中、何れの位置に配置されていても良い。
【0065】
好ましくは、比較的厚みが厚くなり、低硬度で耐ヘタリ性が要求され、柔軟性よる利点を活かしやすいなどの観点から、ベース層、中間層などが本弾性材料により形成されていると良い。
【0066】
本弾性材料より形成された弾性体層の厚みは、特に限定されるものではないが、ベース層として用いる場合、好ましくは、0.1〜3mm程度であると良い。中間層として用いる場合、好ましくは、0.01μm〜1mm程度であると良い。表層として用いる場合、好ましくは、0.1μm〜100μm程度であると良い。
【0067】
他の弾性体層を形成する材料は、特に限定されるものではなく、導電性ロールの種類、他の弾性体層が配置される層位置などに応じて、従来公知の弾性材料(各種ゴム、樹脂などに導電剤、粗さ形成粒子などの添加物を必要に応じて添加した材料など)を適宜選択して用いることができる。
【0068】
一方、導電性ベルトとしては、例えば、基材と、基材の表面に1層または2層以上の導電性を有する弾性体層が積層された構成を例示することができる。また、必要に応じて、弾性体層の表面に表層が積層されていても良い。
【0069】
基材は、張力を保持することができれば、何れのものでも使用し得る。必要な剛性などを考慮して適宜選択すれば良い。具体的には、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンどを例示することができる。
【0070】
ここで、上記導電性ベルトは、本弾性材料より形成された弾性体層を有している。本弾性材料より形成された弾性体層は、ベルト層構成中、何れの位置に配置されていても良い。
【0071】
本弾性材料より形成された弾性体層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは、0.01mm〜1mm程度であると良い。
【0072】
他の弾性体層を形成する材料は、特に限定されるものではなく、導電性ベルトの種類、他の弾性体層が配置される層位置などに応じて、従来公知の弾性材料(各種ゴム、樹脂などに導電剤などの添加物を必要に応じて添加した材料など)を適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0074】
1.実施例に係る弾性材料、比較例に係る弾性材料の作製
(実施例1〜8)
後述する表1に示す配合割合(単位は質量部)となるように、各種材料を秤量し、これらをニーダーを用いて30分間混練し、各未硬化組成物を調製した。
【0075】
次いで、得られた各未硬化組成物を、押出法を用いて、シート状に成形した。
【0076】
次いで、実施例3〜6、8については、各未硬化物に対して、紫外線照射機(アイグラフィック社製「UB031−2A/BM」、水銀ランプ形式)を用いて紫外線を照射し、各未硬化物を紫外線硬化させた。
【0077】
これにより、実施例3〜6、8に係るシート状の弾性材料(厚み約0.5mm、縦100mm、横100mm)を作製した。この際、紫外線照射強度は120mW/cm、照射時間は30秒とした。
【0078】
また、実施例1、2、7については、各未硬化物に対して、電子線照射機(三菱重工(株)製「MIWEL」)を用いて電子線を照射し、各未硬化物を電子線硬化させた。
【0079】
これにより、実施例1、2、7に係るシート状の弾性材料(厚み約0.5mm、縦100mm、横100mm)を作製した。この際、電子線照射強度は50kGy、照射時間は1秒とした。
【0080】
なお、上記組成物の調製時に使用した各種材料は、以下の通りである。
(光重合成分)
・ポリテトラメチレングリコール系アクリレートモノマー[新中村化学工業(株)製、「NKエステルA−PTMG65」、アクリル官能基数f=2、分子量=750]
・ポリテトラメチレングリコール系アクリレートオリゴマー[新中村化学工業(株)製、「UA160TM」、アクリル官能基数f=2、分子量=1600]
・エチレンオキシド(EO)変性アクリレートモノマー[新中村化学工業(株)製、「NKエステルA−600」、アクリル官能基数f=2、分子量=750、EO含有量14モル]
・エチレンオキシド(EO)変性グリセリンアクリレートモノマー[新中村化学工業(株)製、「A−CLY−9EO」、アクリル官能基数f=3、分子量=650、EO含有量9モル]
【0081】
(ゴム成分)
・NBR<1>[日本ゼオン(株)製、「ニポールDN202」]
・NBR<2>[日本ゼオン(株)製、「ニポールDN1072」]
・CR[電気化学工業(株)製、「デンカクロロプレンM−40」]
・ECO[ダイソー(株)製、「エピクロマーCG−102」]
・EPDM[住友化学(株)製、「エスプレン505」]
・NR「RSS#3]
【0082】
(導電剤)
・カーボンブラック(電子導電剤)[電気化学工業(株)製、「デンカブラック」]
・テトラブチルアンモニウムクロライド(イオン導電剤)[東京化成工業(株)製]
【0083】
・光重合開始剤[チバスペシャルティケミカルズ(株)製、「イルガキュアー819」]
【0084】
(比較例1)
ECO(ダイソー(株)製、「エピクロマーCG−102」)100質量部と、ステアリン酸(花王(株)製、「ルナックS−30」)1質量部と、酸化亜鉛2種(三井金属工業(株)製)5質量部と、受酸剤(協和化学工業(株)製、「DHT−4A」)3質量部と、粉末イオウ(鶴見化学(株)製)1.5質量部と、チアゾール系加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーDM」)1.5質量部と、チラウム系加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーTS」)0.5質量部と、テトラブチルアンモニウムクロライド(イオン導電剤、東京化成工業(株)製)1質量部とを、ニーダーで混練することにより、ヒドリンゴム系未硬化組成物を調製した。
【0085】
次いで、得られた未硬化組成物を、プレス成形、架橋(160℃で30分)することにより、比較例1に係るシート状の弾性材料(厚み約0.5mm、縦100mm、横100mm)を作製した。
【0086】
(比較例2)
ニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン(株)製、「ニポールDN401」)100重量部と、ステアリン酸(花王(株)製、「ルナックS−30」)0.5重量部と、テトラブチルアンモニウムクロライド(イオン導電剤、東京化成工業(株)製)3重量部と、酸化亜鉛(ZnO)5重量部と、スルフェンアミド系加硫促進剤(大内新興化学(株)製、「ノクセラーCZ−G」)1重量部と、ジオカルバミン酸塩系加硫促進剤(大内新興化学(株)製、「ノクセラーBZ−P」)0.5重量部と、粉末硫黄1重量部とを、ニーダーでゴム練りすることにより、ニトリルゴム系未硬化組成物を調製した。
【0087】
次いで、得られた未硬化組成物を、プレス成形、架橋(160℃で30分)することにより、比較例2に係るシート状の弾性材料(形状は、比較例1と同じ)を作製した。
【0088】
(比較例3)
X−34−264A/B(信越化学工業(株)製)を攪拌することにより、シリコーンゴム系未硬化組成物を調製した。
【0089】
次いで、得られた未硬化組成物を、プレス成形、架橋(160℃で15分)することにより、比較例3に係るシート状の弾性材料(形状は、比較例1と同じ)を作製した。
【0090】
(比較例4)
ウレタンアクリレートオリゴマー(共栄社化学(株)製、「UF8001」)50重量部と、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学(株)製、「MTG−A」)50重量部と、重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド(チバスペシャリティケミカルズ社製、「IRGACURE819」)5重量部と、テトラブチルアンモニウムクロライド(イオン導電剤、東京化成工業(株)製)2重量部とを、攪拌することにより、紫外線硬化材料の未硬化組成物を調製した。
【0091】
次いで、得られた未硬化組成物を、紫外線照射(ウシオ電機(株)製 ユニキュアUVH−0252C装置を用いて、照度400mW、積算光量1000mJ/cmで紫外線を照射)することにより、比較例4に係るシート状弾性材料(形状は、比較例1と同じ)を作製した。
【0092】
(比較例5)
ポリウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、「スーパーフレックス126」)を水中に分散した水溶液(固形分20%)80重量部と、酸化すず20重量部とをボールミルにて混合することにより、ウレタン系未硬化組成物を調製した。
【0093】
次いで、得られた未硬化組成物を、乾燥加熱(150℃で10分)することにより、比較例5に係るシート状の弾性材料(形状は、比較例1と同じ)を作製した。
【0094】
2.実施例に係る弾性材料、比較例に係る弾性材料の評価
次に、得られた実施例に係る弾性材料、比較例に係る弾性材料について、以下の評価を行った。
【0095】
(速硬化性)
各弾性材料作製時に、未硬化組成物の硬化に要した時間が1分以内であった場合を速硬化性が良好であるとして○、同時間が1分超であった場合を速硬化性に劣るとして×と評価した。
【0096】
(硬度)
JIS K6253に準拠して、各シート状弾性材料の表面硬度を、MD−1硬度計(高分子計器(株)製、「マイクロゴム硬度計MD−1型」)を用いて測定した。
【0097】
(弾性回復率)
ISO14577−1に準拠し、微小硬度計(Fischer社製、マイクロスコープHS100)を用いて、シート状弾性材料表面を下記の測定条件にて測定し、ηIT[%]を求めた。すなわち、微小硬度計を用いて、試験荷重を一定にして、材料表面に圧子を押し込むと、押し込み仕事中に示されるくぼみの全機械的仕事量Wtotalは、くぼみの塑性変形仕事量Wplastとしてごく一部だけ消費される。試験荷重の除荷時に、残りの部分は、くぼみの弾性戻り変形仕事Welastとして開放される。この機械的仕事をW=∫Fdhと定義とすると、その関係は以下の通りである。
ηIT[%]=Welast/Wtotal
但し、Wtotal=Welast+Wplast
<測定条件>
圧子:対面角度136°の四角垂型ダイヤモンド圧子
初期荷重:0mN
押込み最大荷重:1mN(定荷重)
最大荷重到達時間:0.25〜10sec
最大荷重保持時間:30sec
抜重時間:0.25〜10sec
【0098】
(電気抵抗)
JIS K6271に準拠して、各シート状弾性材料表面に、それぞれ10mm角の電極を形成し、100V印加したときの電気抵抗値を測定した。
【0099】
(シート状弾性材料の破断時引張応力<TSb>、切断時延び<Eb>の測定)
JIS K6251:2004に準拠して、引張試験機(AE−Fストログラフ、東洋精機製作所社製)を用い、上記シート状弾性材料について、破断時引張応力(TSb)および切断時延び(Eb)を測定した。
【0100】
表1に、実施例に係る弾性材料、比較例に係る弾性材料を作製したときの配合割合および評価結果をまとめて示す。
【0101】
【表1】

【0102】
表1によれば、以下のことが分かる。すなわち、実施例に係る弾性材料は、速硬化性に優れており、比較的低硬度でヘタリ難く、柔軟性に優れ、TSb×Ebの値が大きく靱性にも優れていることが分かる。
【0103】
3.電子写真機器用の帯電ロール、現像ロール、中間転写ベルトの作製
3.1 帯電ロールの作製
(実施例1Tb〜8Tb)
実施例1Tb〜8Tbに係る帯電ロールとして、芯金の外周に、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物を光硬化させて形成したベース層、アクリルフッ素系の表層がこの順に積層された2層構造の各帯電ロールを、以下の手順により作製した。なお、実施例1Tb〜8Tbと実施例1〜8とは、それぞれ対応している。
【0104】
押出法を用いて、芯金(SUS製、外径6mm、長さ250mm)の外周に、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物をロール状に押し出し、これに紫外線または電子線を照射して、各組成物を紫外線または電子線硬化させ、厚み1mmのベース層を形成した。
【0105】
次いで、フッ素変性アクリルバインダー(大日本インキ化学工業(株)製、「ディフェンサTR230K」)50質量部と、フッ素樹脂(アトフィナジャパン(株)製、「カイナー7201」)50質量部と、導電性酸化チタン(石原テクノ(株)製、「タイペークET300W」)100質量部と、MEK200質量部とを配合し、サンドミルを用いて分散処理することにより、アクリル系表層形成組成物を調製した。
【0106】
次いで、ロールコーティング法により、上記各ベース層の表面に、上記表層形成組成物を塗工し、100℃で30分間加熱処理することにより、厚み20μmの表層を形成した。
【0107】
これにより、実施例1Tb〜8Tbに係る帯電ロールを作製した。
【0108】
(比較例1Tb)
注型法を用いて、上記芯金の外周に、比較例1にて調製した未硬化組成物をロール状に成形し、170℃で45分間加熱処理することにより、厚み1mmのベース層を形成した。
【0109】
次いで、ロールコーティング法により、このベース層の表面に、上記表層形成組成物を塗工し、100℃で30分間加熱処理することにより、厚み20μmの表層を形成した。
【0110】
これにより、比較例1Tbに係る帯電ロールを作製した。
【0111】
(実施例1Tm〜8Tm)
実施例1Tm〜8Tmに係る帯電ロールとして、芯金の外周に、シリコーンゴム(信越化学工業(株)製、「KE1350A/B」)系のベース層、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物を光硬化させて形成した中間層、アクリルフッ素系の表層がこの順に積層された3層構造の各帯電ロールを、以下の手順により作製した。なお、実施例1Tm〜8Tmと実施例1〜8とは、それぞれ対応している。
【0112】
注型法を用いて、上述した芯金の外周に、上記シリコーンゴム系ベース層形成組成物をロール状に成形し、150℃で45分間加熱処理することにより、厚み4mmのベース層を形成した。
【0113】
次いで、ロールコーティング法を用いて、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物を溶剤に溶解した塗工液をコーティングし、これを上記ベース層の表面に被せるとともに、紫外線または電子線を照射して、各組成物を紫外線または電子線硬化させ、厚み0.03mmの中間層を形成した。
【0114】
次いで、ロールコーティング法により、上記各中間層の表面に、上述した表層形成組成物を塗工し、100℃で30分間加熱処理することにより、厚み20μmの表層を形成した。
【0115】
これにより、実施例1Tm〜8Tmに係る帯電ロールを作製した。
【0116】
(比較例2Tm)
押出法を用いて、比較例2にて調製した未硬化組成物をチューブ状に押し出し、これを実施例1Tm〜8Tmにて作製したベース層の表面に被せ、160℃で45分間加熱処理することにより、厚み0.03mmの中間層を形成した。
【0117】
次いで、ロールコーティング法により、上記中間層の表面に、上述した表層形成組成物を塗工し、100℃で30分間加熱処理することにより、厚み20μmの表層を形成した。
【0118】
これにより、比較例2Tmに係る帯電ロールを作製した。
【0119】
3.2 現像ロールの作製
(実施例1Gb〜8Gb)
実施例1Gb〜8Gbに係る現像ロールとして、芯金の外周に、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物を光硬化させて形成したベース層、ウレタン系の表層がこの順に積層された2層構造の各現像ロールを、以下の手順により作製した。なお、実施例1Gb〜8Gbと実施例1〜8とは、それぞれ対応している。
【0120】
押出法を用いて、上述した芯金の外周に、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物をロール状に押し出し、これに紫外線または電子線を照射して、各組成物を紫外線または電子線硬化させ、厚み1mmのベース層を形成した。
【0121】
ウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製、「ニッポラン5199」)100質量部と、カーボンブラック(電気化学工業(株)製、「HS−100」)20質量部と、ウレタン粒子(根上工業(株)製、「アートパールC400BM」)15質量部とに、MEK400質量部を加え、サンドミルを用いて分散、混合することにより、ウレタン系表層形成組成物を調製した。
【0122】
次いで、ロールコーティング法により、上記各ベース層の表面に、上記表層形成組成物を塗工し、130℃で30分間加熱処理することにより、厚み20μmの表層を形成した。
【0123】
これにより、実施例1Gb〜8Gbに係る現像ロールを作製した。
【0124】
(比較例3Gb)
注型法を用いて、上記芯金の外周に、比較例3にて調製した未硬化組成物をロール状に成形し、150℃で45分間加熱処理することにより、厚み1mmのベース層を形成した。
【0125】
次いで、ロールコーティング法により、このベース層の表面に、上記表層形成組成物を塗工し、130℃で30分間加熱処理することにより、厚み20μmの表層を形成した。
【0126】
これにより、比較例3Gbに係る帯電ロールを作製した。
【0127】
3.3 中間転写ベルトの作製
(実施例1B〜8B)
実施例1B〜8Bに係る中間転写ベルトとして、基材の表面に、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物を光硬化させて形成した弾性層が積層されたシームレス構造の各中間転写ベルトを、以下の手順により作製した。なお、実施例1B〜8Bと実施例1〜8とは、それぞれ対応している。
【0128】
先ず、ポリアミドイミド樹脂(東洋紡績(株)製、「HR−16NN」)100質量部と、NMP(溶剤)800質量部と、カーボンブラック(電気化学工業(株)製、「デンカブラックHS−100」)10質量部とを分散・混合して、ポリアミドイミド樹脂分散溶液を調製した。
【0129】
次いで、準備した円筒形基体(金型)の表面に、上記ポリアミドイミド樹脂分散溶液をスプレーコーティングして、常温〜250℃まで2時間かけて昇温させた後、250℃で1時間加熱処理を施した。
【0130】
次いで、基層と円筒形基体(金型)との間にエアーを吹き付け、円筒形基体(金型)を抜き取り、基層として、厚み0.1mm、内周長1000mmの円筒状ポリアミドイミド層を形成した。
【0131】
次いで、この基層の表面に、実施例1〜8にて調製した各未硬化組成物を積層した。
【0132】
次いで、得られた積層体に対して、紫外線または電子線を照射して、各組成物を紫外線または電子線硬化させ、基層表面に、厚み0.15mmの弾性体層を形成した。
【0133】
次いで、この積層体に、表層(シリコーングラフトアクリル樹脂(東亞合成(株)製、「サイマックUS−350」)をスプレーコーティングすることにより、実施例1B〜8Bに係る中間転写ベルトを作製した。
【0134】
実施例1B〜8Bに係る中間転写ベルトの作製において、円筒状ポリアミドイミド層の表面に比較例4にて調製した未硬化組成物(光重合成分のみ、ゴム成分なし)を積層した。
【0135】
次いで、得られた積層体に対して、紫外線を照射して、各組成物を紫外線硬化させ、基層表面に、厚み0.15mmの弾性体層を形成した。
【0136】
これにより、比較例4Bに係る中間転写ベルトを作製した。
【0137】
(比較例5B)
実施例1B〜8Bに係る中間転写ベルトの作製において、円筒状ポリアミドイミド層の表面に比較例5にて調製した未硬化組成物を積層した。
【0138】
次いで、得られた積層体を、160℃で30分間加熱処理することにより、基層表面に、厚み0.15mmの弾性体層を形成した。
【0139】
次いで、上述と同様にして表層を形成し、比較例5Bに係る中間転写ベルトを作製した。
【0140】
4.帯電ロール、現像ロール、中間転写ベルトの評価
4.1 ロール評価
(耐ヘタリ性)
<帯電ロール>
市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)製、「レーザーショット LBP−2510」)のカートリッジ内の感光体に、帯電ロールを圧接し、40℃×95%RH環境下において、1週間放置した。それを上記装置内に組み込んで、15℃×10%RH環境下において画像出しを行い、目視評価にて画像ムラやスジ、斑点などが認められないものを○、画像ムラやスジ、斑点等が認められたものを×とした。
【0141】
(耐ヘタリ性)
<現像ロール>
現像ロールをトナーカートリッジ(キヤノン社製、EP−85シアン)に組み付け、40℃×湿度95%RHの条件下、2週間放置した後、ベタ画像の画出しを実施した。そして、その画像に放置痕がみられなかったものを○、その画像に放置痕がみられたものを×と評価した。
【0142】
(耐久性)
帯電ロールについては、耐久性を以下のようにして評価した。すなわち、市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)製、「レーザーショット LBP−2510」)の黒のカートリッジ内に、各帯電ロールを組み込んだ。
【0143】
次いで、このカラーレーザープリンターにより、黒単色モード、および、15℃×10%RHの環境下で、ハーフトーン画像出しを5000枚(A4サイズ)行った。
【0144】
上記耐久試験後、帯電ロールの外観を確認した。すなわち、このような耐久試験を行うと、トナーから外れたシリカなどの外添剤がロール表面に付着してくる現象が生じてくる。
【0145】
ここでは、上記耐久試験後、ロール表面上に白粉がほとんどのっていないもの、または、うっすらと白粉がのっている箇所が部分的にあるもの、あるいは、ロール表面全面にうっすらと白粉がのった程度のものを耐久性有りとして○とした。ロール表面全面に白粉が付着しており、灰色を越え、白く見えるものを耐久性なしとして×とした。
【0146】
一方、現像ロールについては、耐久性を以下のようにして評価した。すなわち、市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)製、「レーザーショット LBP−2510」)に組み込み、20℃×50%RHの環境下、黒べた画像にて、5000枚通紙後、端部に削れがなく、トナーもれがないものを○とした。端部が削れ、トナーがもれている状態のものを×とした。
【0147】
4.2 ベルト評価
(初期画像)
市販のマルチファンクションプリンター((株)リコー製、「MPC−2500」)に組み込み、初期画像(ベタ画像)での色ずれや画像ムラがないものを○、色ずれや画像ムラが生じたものを×とした。
【0148】
(耐久性)
市販のマルチファンクションプリンター((株)リコー製、「MPC−2500」)に組み込み、3万枚複写後の画像で、色ずれや、ベルト裏面とそのベルトを張架するローラーとの間に摩耗屑の凝集物が挟まることにより生じた、ベルト表面側の凸変形による画像不具合(斑点濃度むら等)が確認されなかったものを○、そのような画像不具合が確認されたものを×とした。
【0149】
表2〜表5に、実施例および比較例に係る帯電ロール、現像ロール、中間転写ベルトの評価結果をそれぞれを示す。
【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5】

【0154】
表2〜表5によれば、次のことが分かる。すなわち、実施例に係る帯電ロール、現像ロール、中間転写ベルトは、ベース層、中間層、基層表面の弾性体層に、実施例に係る弾性材料を用いている。そのため、光硬化を利用した速硬化性により、生産性に優れると言える。
【0155】
また、ベース層、中間層、基層表面の弾性体層は、低硬度でヘタリ難く、柔軟性に優れる。そのため、トナーにストレスを与え難く、長期にわたって良好な画質が得られると言える。
【0156】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーと、ゴムとを含有する組成物の硬化物よりなることを特徴とする電子写真機器用弾性材料。
【請求項2】
前記光重合性モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであり、
前記光重合性オリゴマーは、(メタ)アクリレートオリゴマーであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用弾性材料。
【請求項3】
前記光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーは、分子構造中にエチレンオキシド単位を有する光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用弾性材料。
【請求項4】
前記ゴムは、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレン(ジエン)ゴム、および、天然ゴムから選択される1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の電子写真機器用弾性材料。
【請求項5】
前記組成物は、イオン導電剤を含むことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の電子写真機器用弾性材料。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の電子写真機器用弾性材料を用いたことを特徴とする電子写真機器用部材。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載の電子写真機器用弾性材料を用いたことを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
【請求項8】
請求項1から5の何れかに記載の電子写真機器用弾性材料を用いたことを特徴とする電子写真機器用導電性ベルト。
【請求項9】
光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーと、ゴムとを含有する組成物に、活性エネルギー線を照射し、硬化させる工程を有することを特徴とする電子写真機器用弾性材料の製造方法。

【公開番号】特開2009−244463(P2009−244463A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89327(P2008−89327)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】