説明

電子写真機器用材料および電子写真機器用導電性ロール

【課題】強度向上による割れ防止と、汚染の低減が可能な電子写真機器用材料を提供すること。
【解決手段】ポリオールとイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとにより形成されたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリルアミドと、光重合開始剤とを含有する紫外線硬化型組成物の硬化物とする。ポリオールは、エチレンオキシド単位またはジエチレングリコール単位を有すると良い。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、数平均分子量(Mn)が1000〜30000の範囲内にあると良い。この材料は、電子写真機器用導電性ロールの基層や表層として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性ロールの弾性層に好適な電子写真機器用材料および電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されている。これら電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれている。この感光ドラムの周囲には、帯電ロール、現像ロール、トナー供給ロール、転写ロールなどの各種導電性ロールが配設されている。
【0003】
上記導電性ロールは、通常、芯金の外周に1層または2層以上の導電性弾性層を有している。導電性弾性層には、トナーや感光体ドラム、層形成ブレードなどに対するストレスの低減を図るため、低硬度であることが要求されている。また、感光体ドラムや層形成ブレードなどによる圧接痕に起因する画像不具合の低減を図るため、耐ヘタリ性に優れることが要求されている。
【0004】
そのため、導電性弾性層の材料には、シリコーンゴムやウレタンゴム、ウレタンアクリレートが良く用いられている。また、最近では、紫外線硬化型樹脂塗料の硬化物を導電性弾性層として用いることも提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、官能基数が1〜3のウレタンアクリレートオリゴマーと、光重合開始剤と、導電剤とを含む紫外線硬化型樹脂組成物を紫外線照射で硬化させた紫外線硬化型樹脂を弾性層として用いることが開示されている。
【0006】
また、導電性ロールの弾性層に用いられるものではないが、紫外線硬化型の樹脂組成物としては、特許文献2に示されるように、水酸基含有(メタ)アクリルアミドと、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させることにより得られる、(メタ)アクリルアミド基を有するウレタン(メタ)アクリルアミドオリゴマーを含有するものが知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−206436号公報
【特許文献2】特開2002−37849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、紫外線硬化型の樹脂組成物を用いて導電性ロールの弾性層を形成したときには、脱型時やロール回転時等において強度不足による割れが発生することがあった。また、得られた導電性ロールを使用した際に、感光体ドラムや層形成ブレードなどと接触したときに、変形による割れが発生することがあった。
【0009】
また、弾性層を形成する紫外線硬化型の樹脂組成物中に1官能アクリレートが多く含まれると、低硬度、低ヘタリを達成しやすい。しかしながら、1官能アクリレートは架橋点が少ないため、紫外線硬化反応が遅くなる。また、形成される弾性層が厚いと、紫外線が十分に届きにくいことがある。これらの結果、弾性層材料中に未反応成分が多く残存し、これが表面にブリード、ブルームして、感光ドラム等を汚染するという問題があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、強度向上による割れ防止と、汚染の低減が可能な電子写真機器用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用材料は、ポリオールと、イソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートとにより形成されたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリルアミドと、光重合開始剤とを含有する紫外線硬化型組成物の硬化物であることを要旨とするものである。
【0012】
このとき、前記ポリオールは、エチレンオキシド単位またはジエチレングリコール単位を有すると良い。
【0013】
また、デュロメータタイプA硬度が5〜60度の範囲内にあると良い。
【0014】
さらに、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、数平均分子量(Mn)が1000〜30000の範囲内にあると良い。
【0015】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、上記材料よりなる層を有することを要旨とするものである。
【0016】
このとき、前記層としては、基層や表層を好適に示すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電子写真機器用材料は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリルアミドと、光重合開始剤とを含有する紫外線硬化型組成物の硬化物である。この硬化物は、分子構造中にアクリルアミド基を含有しているため、破断強度が向上する。これにより、脱型時等における強度不足による割れを防止することができる。また、この硬化物を導電性ロールの基層などに用いたときには、ロール回転時等における接触、変形による割れを防止することができる。また、アクリルアミド基を含有しているため、紫外線硬化反応の酸素による阻害が軽減される。そのため、硬化反応が促進されて、未反応成分が低減する。これにより、感光ドラム等の汚染を低減することができる。
【0018】
また、紫外線硬化により、高生産性、省エネルギーを達成することができる。このとき、硬化反応が促進されるため、より一層、高生産性、省エネルギーにすることが可能である。
【0019】
この際、前記ポリオールが、エチレンオキシド単位またはジエチレングリコール単位を有する場合には、低抵抗にすることができる。
【0020】
そして、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量(Mn)が1000〜30000の範囲内にある場合には、低硬度にすることができる。
【0021】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、上記材料よりなる層を有する。そのため、ロール回転時等における強度不足による割れや感光ドラム等の汚染を抑えることができる。特に、前記層が基層や表層であると、その効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明に係る電子写真機器用材料(以下、本材料ということがある。)について詳細に説明する。本材料は、特定成分を含有する紫外線硬化型組成物(以下、本組成物ということがある。)の硬化物である。本材料は、電子写真機器の導電性ロールに好適に用いられる。本材料は、例えば、上記導電性ロールの基層や表層に好適に用いられる。
【0023】
本組成物は、特定成分として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリルアミドと、光重合開始剤とを含有する紫外線硬化型組成物の硬化物である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールと、イソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートとにより合成されるものである。
【0024】
ポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルジオール、ポリエステルトリオール等のポリエステルポリオールや、ポリエーテルポリオール等があげられる。これらは、1種または2種以上併せて用いられる。
【0025】
上記ポリオールは、硬化物の電気抵抗を低くしやすいなどの観点から、エチレンオキシド単位やジエチレングリコール単位を有することが好ましい。これらは、1種または2種以上含有されていても良い。また、これらの単位以外にも、他の単位が1種または2種以上、分子構造中に導入されていても良い。他の単位としては、例えば、炭素数3〜20のアルキレンオキシド単位、トリメチロールプロパン単位、ペンタエリスリトール単位、エチルヘキシルカルビトール単位、グリセリン単位などを例示することができる。
【0026】
このとき、エチレンオキシド単位、ジエチレングリコール単位の含有量としては、硬化物の電気抵抗が低くなるなどの観点から、好ましくは、1〜98質量%の範囲内、より好ましくは、20〜98質量%の範囲内、さらに好ましくは、40〜98質量%の範囲内にあると良い。なお、エチレンオキシド単位、ジエチレングリコール単位の含有量は、例えば、NMR(核磁気共鳴装置)などを用いて測定することができる。
【0027】
分子構造中にエチレンオキシド単位を含むポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、エチレンオキシド変性ポリプロピレングリコールなどを例示することができる。
【0028】
また、分子構造中にジエチレングリコール単位を含むポリオールとしては、具体的には、例えば、ジエチレングリコールとアジピン酸とをエステル重合させて得られるポリエステルポリオールなどを例示することができる。
【0029】
さらに、エチレンオキシド単位とジエチレングリコール単位の両方を含むポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコールとジエチレングリコールとアジピン酸とをエステル重合させて得られるポリエステルポリオールなどを例示することができる。
【0030】
ポリオールの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、硬化物を低硬度にするなどの観点から、下限値は1000以上であることが好ましい。一方、本組成物の粘度上昇を抑制でき、取り扱い性が良好になるなどの観点から、上限値は30000以下であることが好ましい。
【0031】
上記イソシアネートとしては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス−4−シクロヘキシルジイソシアネートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。また、上記イソシアネートの変性体やプレポリマー化した材料などを使用しても良い。
【0032】
上記イソシアネートの配合量は、特に限定されるものではない。例えば、ウレタン化反応を促進させつつ、残存イソシアネート基の量を少なくするなどの観点から、上記イソシアネートの配合量は、5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、6.5〜30質量%の範囲内である。
【0033】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0034】
水酸基含有(メタ)アクリレートの配合量は、特に限定されるものではない。例えば、低硬度化、耐ヘタリ性向上などの観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートの配合量は、2.0〜20質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、2.5〜15質量%の範囲内である。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの合成時には、必要に応じて、各種ウレタン化触媒、鎖延長剤、アミン類、安定剤、充填剤などを1種または2種以上添加することができる。合成条件としては、ウレタン化反応を行なうときの通常の反応温度、反応時間であれば良い。例えば、反応温度としては、0〜100℃の範囲内であれば良い。また、反応時間としては、反応させる化合物の種類や反応温度等にもよるが、例えば、1〜24時間程度であれば良い。
【0036】
上記各成分により合成されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量は、上記硬化物を低硬度にするなどの観点から、その下限値は1000以上であることが好ましい。一方、本組成物の粘度上昇を抑制でき、取り扱い性が良好になるなどの観点から、その上限値は30000以下であることが好ましい。より好ましくは、3000〜8000の範囲内である。
【0037】
上記光重合開始剤は、特に限定されることなく、通常使用されるものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0038】
上記光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、2−メチルベンゾイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジアセチル、エオシン、チオニン、ミヒラ−ケトン、アントラセン、アントラキノン、アセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピルαヒドロキシイソブチルフェノン、α・α´ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルベンゾイルフォルメイト、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]・2・モルフォリノ−プロペン、チオキサントン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−イル)チタニウム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(η5 −2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0039】
上記光重合開始剤の含有量は、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量部の範囲内である。
【0040】
ここで、本組成物は(メタ)アクリルアミドを含有する。そして、この(メタ)アクリルアミドにより、本組成物の硬化速度を速くすることができる。そのため、未反応成分などの抽出成分の量が減少する。これにより、例えば本材料を電子写真機器用導電性ロールの層に用いた時に、抽出成分に起因する汚染を低減できる。この(メタ)アクリルアミドはモノマーであるため、組成物の低粘度化による成形性向上を図ることができる。また、本組成物中でモノマーの状態にあるため、硬化反応の促進効果が高い。
【0041】
上記(メタ)アクリルアミドは、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを形成する(メタ)アクリレートと異なり、水酸基を含有していても良いし、水酸基を含有していなくても良い。また、アミノ基などの他の官能基を含有していても良い。より好ましくは、抽出成分(未反応成分)の量がさらに低減されるなどの観点から、水酸基含有(メタ)アクリルアミドである。
【0042】
上記(メタ)アクリルアミドとしては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルピペリジン、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを例示することができる。また、アミノ基を有する(メタ)アクリルアミドをハロゲン化アルキル、硫酸エステル等と反応させて得られる4級アンモニウム塩を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0043】
上記(メタ)アクリルアミドの配合量は、1〜80質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、10〜50質量%の範囲内である。
【0044】
本組成物中には、上記必須成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、導電剤(イオン導電剤、電子導電剤)、光安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、分散剤、消泡剤、顔料などの各種の添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0045】
本組成物は、取扱い性が良好である、塗工性に優れるなどの観点から、その粘度(25℃)は、好ましくは、500000mPa・s以下、より好ましくは、300000mPa・s以下、さらに好ましくは、100000mPa・s以下であると良い。
【0046】
本組成物のアクリル当量は、低硬度化、紫外線硬化性等の観点から、100〜5000の範囲内にあることが好ましい。また、本組成物の残存イソシアネート基の量は、組成物の安定性等の観点から、0.1質量%以下であることが好ましい。なお、上記アクリル当量は、例えば、赤外線吸収分光法(IR)により測定することができる。
【0047】
本組成物を得るには、上記の必須成分および必要に応じて添加する任意成分とを所望の配合となるように秤量し、これらを攪拌機、サンドミルなどの混合手段により混合する方法などを例示することができる。なお、混合中、混合後に脱泡処理などを行っても良い。
【0048】
本組成物に紫外線照射することにより、硬化物を得ることができる。紫外線照射は、例えば、水銀ランプなどを用いて行なわれる。照射条件としては、通常行なう条件で良い。また、紫外線照射に限られず、電子線照射などによっても硬化物を得ることは可能である。
【0049】
上記硬化物は、分子構造中にアクリルアミド基を含有している。そのため、破断強度に優れる。これにより、割れが発生しにくい。また、紫外線硬化反応の酸素による阻害が軽減される。これにより、硬化反応は促進されるため、未反応成分が低減する。また、硬化反応が促進されるため、光重合開始剤の添加量を減らすことができる。
【0050】
そのため、未反応成分や光重合開始剤等の抽出成分の量が減少し、抽出成分による汚染を低減することができる。さらに、反応時間の短縮を図ることができる。そして、紫外線硬化により、高生産性、省エネルギーを達成することができる。
【0051】
本組成物を硬化させた硬化物は、例えば、電子写真機器用導電性ロールに用いた際に、回転時の発生音の低減、トナーストレスの低減などに寄与しやすいなどの観点から、デュロメータタイプA硬度が、好ましくは、5〜60の範囲内、より好ましくは、5〜50の範囲内にあると良い。硬化物のデュロメータタイプA硬度をこの範囲内にするには、例えば、本組成物を構成する各成分の種類を適宜選択し、各成分の配合割合を調整し、または、硬化条件を調整するなどすれば良い。
【0052】
次に、本発明に係る電子写真機器用導電性ロール(以下、導電性ロールということがある。)について詳細に説明する。
【0053】
導電性ロールは、導電性シャフトの外周に、1層または2層以上の導電性層が積層されている。
【0054】
導電性シャフト材料としては、導電性を有するものであれば、何れのものでも使用し得る。一般には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。
【0055】
導電性ロールの具体的な層構造としては、導電性シャフトの外周に、基層、抵抗調整層などの中間層、表層が順に積層された3層構造、基層、表層が順に積層された2層構造、基層のみが形成された1層構造などを例示することができる。
【0056】
ここで、導電性ロールは、上記組成物が硬化されて形成された本材料よりなる層を有する。この層は、積層構造中の何れの位置に有していても良い。例えば、基層や表層とすることができる。このとき、本材料よりなる層を複数有していても良い。この場合、各層の組成は同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0057】
本材料よりなる層としては、より好ましくは基層である。上述するように、本材料は(メタ)アクリルアミドを含有しているため、硬化反応が促進される。すなわち、架橋点が少ない単官能であっても硬化反応が速い。これにより、本材料を用いると、低硬度で汚染が少ない層とすることができるからである。また、硬化反応が速いため、層を厚く形成しても、未反応成分が残りにくいからである。
【0058】
上記導電性ロールの積層厚みは、特に限定されるものではないが、導電性ロールを組み込む画像形成装置などの小型化に有利になるよう小径化を図るなどの観点から、好ましくは、0.1〜5mm、より好ましくは、0.5〜4mm、さらに好ましくは、1〜3mmの範囲内にあると良い。
【0059】
また、上記基層の厚みは、通常、0.1〜3mm程度であると良い。中間層の厚みは、通常、0.05〜1mm程度であると良い。表層の厚みは、通常、1μm〜20μm程度であると良い。
【0060】
本材料よりなる層以外の他の層を形成する材料としては、具体的には、例えば、ヒドリンゴム(CO、ECO)、NBR、シリコーンゴム、EPDM、アミド系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などに電子導電剤やイオン導電剤などの導電性付与剤、さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、表面調整剤、可塑剤などを1種または2種以上添加した組成物などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0061】
本材料よりなる層は、ディッピング法、ロールコーティング法、スプレーコート法などの各種のコーティング法により本組成物を塗布し、塗布された組成物に対して、紫外線照射装置により所定光量の紫外線を所定時間照射して硬化させることにより形成することができる。なお、上記塗布は、1回または2回以上繰り返しても良い。
【0062】
例えば、基層に対して本材料を適用する場合には、本組成物を貯留した貯留槽内に導電性シャフトを浸漬し、引き上げた後に紫外線を照射して硬化させる方法などを例示することができる。
【0063】
また例えば、中間層や表層などに対して本組成物を適用する場合には、導電性シャフトに下層となる層が形成されたロール体を、上記と同様に本組成物が貯留された貯留槽内に浸漬し、引き上げた後に紫外線を照射して硬化させる方法、下層となる導電性層の表面にロールコーティング法などにより、本組成物を塗布し、紫外線を照射して硬化させる方法などを例示することができる。
【0064】
なお、本組成物によらない他の材料により層を形成する方法としては、その材料の状態にもよるが、注型法、押出法、ディッピング法、ロールコーティング法などが挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0066】
[原材料]
(アクリルアミド)
・HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド)[興人社製、粘度280(mPa・s)、アクリル当量115]
・DMAA(ジメチルアクリルアミド)[興人社製、粘度2(mPa・s)、アクリル当量99]
・DMAPAA(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)[興人社製、粘度50(mPa・s)、アクリル当量156]
・NIPAM(イソプロピルアクリルアミド)[興人社製、粉体、アクリル当量112]
・DEAA(ジエチルアクリルアミド)[興人社製、粘度1.7(mPa・s)、アクリル当量127]
【0067】
(実施例1〜7)
<ウレタンアクリレートオリゴマーの合成>
ポリオール(旭硝子社製「エクセノール850」、Mn=7000、OHV=24、エチレンオキシド単位含有3官能ポリプロピレングリコール)88.9質量部と、ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製「HEA」)4.4質量部と、ウレタン化触媒(トリエチレンジアミン)3ppmとを合成用反応釜の中に加え、反応釜内を窒素ガス置換した後、液温度を50℃に温調した。次いで、イソシアネート(三井化学ポリウレタン社製「コスモネートT80」、NCO48質量%含有)6.7質量部を反応釜中に投入して、50℃で10時間ウレタン化反応させた。これにより、ウレタンアクリレートオリゴマーを合成した(数平均分子量=8000)。
【0068】
<紫外線硬化型組成物の調製>
上記ウレタンアクリレートオリゴマーと、表1に記載の各アクリルアミドと、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、「イルガキュアー184」)と、イオン導電剤(4級アンモニウム塩)とを、表1に記載の配合割合(質量部)で混合して、実施例1〜7に係る各紫外線硬化型組成物を調製した。
【0069】
<硬化物の作製>
上記実施例1〜7に係る各紫外線硬化型組成物を、バーコート法によりガラス板上にコーティングし、紫外線を照射し、厚さ約1mm、縦100mm、横100mmのシート状硬化物を作製した。また、上記各紫外線硬化型組成物を用いて、JIS K6262に規定される大型試験片(直径29mm、厚み12.5mmの円柱状硬化物)を作製した。この際、紫外線照射機(アイグラフィック社製「UB031−2A/BM」)の紫外線ランプ(3000W水銀ランプ)とコーティングした各組成物との距離は200mmとし、紫外線を60秒間照射(紫外線強度50mW/cm)した。
【0070】
(比較例1)
<紫外線硬化型組成物の調製>
アクリルアミドを配合しなかった点以外、実施例と同様にして、比較例1に係る各紫外線硬化型組成物を調製した。
【0071】
<硬化物の作製>
上記比較例1に係る各紫外線硬化型組成物を用い、実施例1と同様にして、シート状硬化物および円柱状硬化物を作製した。
【0072】
<液特性の評価>
上記各紫外線硬化型組成物について、下記測定方法に基づいて液特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
(液粘度)
25℃における粘度を、B型粘度計((株)トキメック製、「VISCOMETER DVL−B2」)にて測定した。
【0074】
(アクリル当量)
東ソー社製GPC分析機「TC8012」を用いて、各紫外線硬化型組成物のTHF3%溶液を作製し、数平均分子量Mnの測定を行なった。また、ThrrmoNicolet社製赤外分光分析装置「Avatar」を用いて、各紫外線硬化型組成物について原液のまま赤外分光分析(IR分析)を実施し、その二重結合濃度からアクリル濃度を算出した。そして、数平均分子量Mnとアクリル濃度とから当量計算を行なった。
【0075】
(残存NCO量)
JIS K1603に準じて、未反応NCO基量を測定した。
【0076】
<硬化物特性の評価>
得られた各硬化物について、下記に示す硬化物特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
(デュロメータタイプA硬度)
得られた各円柱状硬化物につき、JIS K6253に準拠して、デュロメータタイプA硬度を測定した。このとき、硬度が60度以下の場合を低硬度であるとした。
【0078】
(圧縮永久歪)
上記各円柱状硬化物を用い、JIS K6262に準拠して、70℃に168時間保持した後の圧縮永久歪み(圧縮率25%)を測定した。このとき、30%以下の場合を耐ヘタリ性に優れているとした。
【0079】
(破断強度、破断伸び)
JIS K6251に準拠し、2号ダンベル試験片を用いて、各硬化物の破断強度、破断伸びを測定した。その結果、破断強度1.2MPa以上の場合を良好とした。また、破断伸び50%以上の場合を良好とした。
【0080】
(抽出量)
得られた各円柱状硬化物につき、ソックスレー抽出法により、80℃で5hrアセトン抽出を行なった。その結果、有機物の抽出量が6.5質量%以下の場合を良好とした。
【0081】
以上の結果を、表1にまとめて示す。
【0082】
【表1】

【0083】
比較例1に係る紫外線硬化型組成物の硬化物は、実施例1〜7に係る紫外線硬化型組成物の硬化物と比較して、抽出量が大きいことが分かる。すなわち、実施例1〜7に係る紫外線硬化型組成物の硬化物によれば、従来よりも抽出量を低減できることが分かった。また、実施例1〜7に係る紫外線硬化型組成物の硬化物は、低硬度であり、強度に優れることが分かった。これにより、これを電子写真機器用材料として用いたときには、硬化物表面へのブリードやブルームが低減されるため、感光ドラム等の汚染を低減可能であることが確認できた。また、硬化物の強度が向上したため、脱型時やロール回転時等において強度不足による割れ防止が可能であることが確認できた。
【0084】
また、実施例3、6、7を見れば、アクリルアミドがDMAPAAであると、硬化物が、より低硬度で、一層耐ヘタリ性に優れることが確認できた。
【0085】
(電子写真機器用現像ロールの作製)
(実施例8、比較例2)
<表層用塗工液の調製>
ポリウレタンエラストマー(日本ポリウレタン工業社製、「N2304」)100質量部と、ポリイソシアネート(大日本インキ化学工業社製、「バーノックD750」)25質量部と、カーボンブラック(電気化学工業社製、「デンカブラックHS100」)20質量部と、MEK800質量部とを混合し、サンドミルで分散させて、表層用塗工液を調製した。
【0086】
<現像ロールの作製>
ガラス製の成形型に、芯金(φ10mm)と、表2に示す各紫外線硬化型組成物とをセットし、この芯金を回転させながら積算光量120mW/cmで30秒間紫外線照射することにより、芯金の外周に厚み3mmの紫外線硬化物よりなる基層を形成した。次いで、この基層の外周面にロールコーティング法により上記表層用塗工液を塗布した後、150℃×30分の条件でオーブン加熱加硫を行い、厚み6μmの表層を形成した。これにより、実施例8、比較例2に係る各現像ロールを作製した。
【0087】
(電子写真機器用帯電ロールの作製)
(実施例9、比較例3)
<表層用塗工液の調製>
フッ素変性アクリルバインダー(大日本インキ化学工業社製、「ディフェンサTR230K」)50質量部と、フッ素樹脂(アトフィナジャパン社製、「カイナー7201」)50質量部と、導電性酸化チタン(石原テクノ社製、「タイペークET300W」)100質量部と、MEK200質量部とを混合し、サンドミルで分散させて、表層用塗工液を調製した。
【0088】
<帯電ロールの作製>
ガラス製の成形型に、芯金(φ6mm)と、表3に示す各紫外線硬化型組成物とをセットし、この芯金を回転させながら積算光量120mW/cmで30秒間紫外線照射することにより、芯金の外周に厚み1.8mmの紫外線硬化物よりなる基層を形成した。次いで、この基層の外周面にロールコーティング法により上記表層用塗工液を塗布した後、120℃×30分の条件でオーブン加熱加硫を行い、厚み6μmの表層を形成した。これにより、実施例9、比較例3に係る各帯電ロールを作製した。
【0089】
<現像ロールおよび帯電ロールの評価>
現像ロールでは、キヤノン(株)製、「LBP−2510」を評価機種とし、帯電ロールでは、リコー(株)製、「IPSIO CX−3000」を評価機種として、以下の評価を行なった。
【0090】
(割れ評価)
各ロールを、軸に沿って平行になるように金属ロールに押し当て、ロールの両端に荷重をかけて、1mm圧縮変形させた状態で、100rpmで1時間回転させた。その結果、割れの発生しなかったものを「○」とし、割れ、ヒビが発生したものを「×」とした。なお、割れの有無の確認は、目視にて行なった。
【0091】
(汚染性評価)
各ロールを、カラーレーザープリンタのカートリッジ内に組み込み、40℃×95%RHで1ヶ月間過酷環境にて耐久後、ベタ画像の出力を行なった。得られた画像について、抽出物(ブリード・ブルーム)による画像スジの有無を目視にて確認した。画像スジがなかったものを良好「○」とし、画像スジが発生したものを不良「×」とした。
【0092】
(画像出し評価)
各ロールを、カラーレーザープリンタのカートリッジ内に組み込み、初期状態におけるベタ画像の出力を行なった。得られた画像について、濃度ムラの有無を目視にて確認した。濃度ムラがなかったものを良好「○」とし、濃度ムラが発生したものを不良「×」とした。
【0093】
(耐久評価)
各ロールを、カラーレーザープリンタのカートリッジ内に組み込み、15℃×10%RHの低温低湿環境下で、10000枚のハーフトーン画像出しを行った後、ベタ画像を出力した。得られた画像について、濃度ムラの有無と、初期画像からの変化とを目視にて確認した。濃度ムラがなく、初期画像からの変化がなかったものを良好「○」とし、濃度ムラが発生し、初期画像からの変化があったものを不良「×」とした。
【0094】
以上の結果を、表2および3にまとめて示す。
【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
表2より、実施例8と比較例2とを比較すれば、現像ロールにおいて、本発明に係る紫外線硬化型組成物の硬化物を基層材料に用いた場合、ロール回転時における割れの発生が抑えられることが確認できた。また、抽出物による画像スジが抑制されることが確認できた。すなわち、抽出物による感光ドラム等の汚染が抑制されることが確認できた。
【0098】
そして、表3より、実施例9と比較例3とを比較すれば、帯電ロールにおいて、本発明に係る紫外線硬化型組成物の硬化物を基層材料に用いた場合、抽出物による画像スジが抑制されていることが確認できた。すなわち、抽出物による感光ドラム等の汚染が抑制されていることが確認できた。また、ロール回転時における割れが発生していない。
【0099】
そして、表2および表3より、実施例に係る現像ロール、帯電ロールのいずれにおいても画像出し評価、耐久評価において問題がなく、実施例に係る現像ロール、帯電ロールは製品として使用できることを確認した。
【0100】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、イソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートとにより形成されたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、
(メタ)アクリルアミドと、
光重合開始剤とを含有する紫外線硬化型組成物の硬化物であることを特徴とする電子写真機器用材料。
【請求項2】
前記ポリオールは、エチレンオキシド単位またはジエチレングリコール単位を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用材料。
【請求項3】
デュロメータタイプA硬度が5〜60度の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用材料。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、数平均分子量(Mn)が1000〜30000の範囲内にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子写真機器用材料。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の材料よりなる層を有することを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
【請求項6】
前記層は、基層または表層であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真機器用導電性ロール。

【公開番号】特開2009−244461(P2009−244461A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89276(P2008−89276)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】