説明

電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及び電子写真現像剤

【課題】特にカラートナーに対して色汚れ、キャリアの高抵抗化による画像濃度の低下、エッジ現象等の画質の低下を伴わず、さらに高耐久性を有する電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及び該樹脂被覆キャリアを用いた電子写真現像剤を提供する。
【解決手段】磁性粒子表面が樹脂で被覆されており、かつ被覆樹脂中に炭素含有量が75重量%以上であるカーボンナノチューブを含有することを特徴とする電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及び該樹脂被覆キャリアを用いた電子写真現像剤を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用される電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及び該キャリアを用いた電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
二成分系現像剤用キャリアの耐久性を向上させるために、トナーによるスペント化防止対策として各種樹脂で被覆した樹脂被覆キャリアが報告されている。
【0003】
しかし、樹脂を被覆することによって、キャリアの抵抗が高くなり、画像濃度の低下やエッジ現象等の画質の低下が生じるという問題が発生する。キャリアの抵抗値についてはマシーンシステムや現像条件によって最適化する必要がある。キャリア抵抗の調整法としては被覆樹脂層に導電性物質(導電剤)を添加することが数多く報告されている。一般的な導電性物質としては、各種カーボンブラックが安価で抵抗の調整が容易であり広く知られている。
【0004】
カラートナー、特に淡色トナー(イエロー等)に対しては、被覆樹脂中にカーボンブラックを添加して抵抗を調整したキャリアでは、画像濃度、エッジ現象については問題ないが、被覆樹脂に添加したカーボンブラックがトナーに混入して色味が濁り、画質が低下するということが問題となっている。また、環境依存性に関しても、カーボンブラックを用いたものは、カーボンブラック自体の抵抗が低すぎるため、抵抗依存性が大きく、特に高温高湿下で電荷のリークが発生してしまい、マシーンの電源を入れたスタート時に、デスチャージが激しく地汚れが発生しやすく、かつ帯電の立ち上がりが悪いため、鮮明な画像が得られず、環境依存性に問題があった。
【0005】
逆に色汚れや環境依存性を改良するためにカーボンブラックの添加量を減らすと画像濃度の低下やエッジ現象等の画質の低下が生じる。
【0006】
このような画像濃度の低下対策ならびにエッジ現象等の画質の低下対策と色汚れ対策、並びに環境依存性対策を両立させるために以下の提案がなされている。すなわち、特許文献1(特開2004−45773号公報)には、磁性キャリア芯材粒子表面に、フラーレン及び/又はカーボンナノチューブを含有する樹脂被覆層を設けてなることを特徴とする電子写真現像剤用キャリアが提案されている。
【0007】
また、特許文献2(特開2009−210795号公報)には、少なくとも芯材粒子と、当該芯材粒子を被覆する被覆層を有してなる電子写真用キャリアにおいて、当該樹脂被覆層は、少なくとも結着樹脂と、固体粒子と、カーボンナノチューブとを含み、当該固体粒子の粒径をD(μm)、前記被膜層における樹脂部分の平均厚みをh(μm)としたとき、1<(D/h)<10を満たす電子写真用キャリアが提案されている。
【0008】
しかしながら、前記提案では、長時間の耐刷により被覆層が削れると色汚れが発生し、抜本的な対策となってはいないのが現状である。
【0009】
近年、高画質化の要求に伴いトナーが小粒径化されるため高帯電量エリアでの検討がなされている。また、キャリア芯材についても高画質化、長寿命化に伴い、鉄粉等の高磁力芯材からフェライト等の低磁力芯材に移行したため、芯材としての抵抗が上がってしまい、従来の方法では現像剤の抵抗が高すぎて、画像濃度が低下し、またエッジ現象が生じて所望の画質、寿命が得られないという問題が生じる。導電性物質の添加量を増量して、抵抗を合わせた場合、被覆樹脂の強度が低下してしまい寿命がさらに短くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−45773号公報
【特許文献2】特開2009−210795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、特にカラートナーに対して色汚れ、キャリアの高抵抗化による画像濃度の低下、エッジ現象等の画質の低下を伴わず、さらに高耐久性を有する電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及び該樹脂被覆キャリアを用いた電子写真現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、検討の結果、キャリア芯材の表面を被覆する被覆樹脂中に特定性状を有するカーボンナノチューブを含有させることによって、前記課題を解決できることを知見し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、磁性粒子表面が樹脂で被覆されており、かつ被覆樹脂中に炭素含有量が75重量%以上であるカーボンナノチューブを含有することを特徴とする電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを提供するものである。
【0014】
本発明に係る前記電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアにおいて、前記カーボンナノチューブが被覆樹脂固形分に対して0.1〜25.0重量%含有されていることが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアにおいて、前記カーボンナノチューブの繊維長が0.5〜4.0μmであることが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアにおいて、前記カーボンナノチューブ中の炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が10〜50重量%であることが望ましい。
【0017】
また、本発明は、前記樹脂被覆キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを用いることによって、特にカラートナーに対して色汚れ、キャリアの高抵抗化による画像濃度の低下、エッジ現象等の画質の低下を伴わず、さらに高耐久性を有する電子写真現像剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア>
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、磁性粒子(キャリア芯材)表面が樹脂で被覆されている。
【0020】
ここで用いられるキャリア芯材としての磁性粒子とは、従来から電子写真現像剤用キャリアとして使用されている鉄粉、マグネタイト粒子、樹脂キャリア粒子、あるいはフェライト粒子等が挙げられる。この中でも特に、Mn、Mg、Li、Ca、Sr、Tiから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトであることが望ましい。近年の廃棄物規制を始めとする環境負荷低減の流れを考慮すると、Cu、Zn、Niの重金属を、不可避不純物(随伴不純物)の範囲を超えて含まないことが好ましい。
【0021】
磁性粒子がフェライト粒子である場合には、空隙率の高いフェライト粒子も用いることができる。その場合には、フェライト粒子の空隙部分に樹脂を充填した樹脂充填型フェライトキャリアとして用いることができる。
【0022】
前記磁性粒子の平均粒径は15〜80μmが望ましく、この範囲でキャリア付着が防止され、また良好な画質が得られる。平均粒径が15μm未満では、キャリア付着が発生しやすくなるため好ましくない。平均粒径が80μmを超えると、画質が劣化しやすくなり好ましくない。
【0023】
また、磁性粒子表面を被覆する被覆樹脂は、特に限定されず、ストレートシリコーン樹脂や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂及びフッ素樹脂等の各樹脂及びこれらの変性樹脂、或いはこれらを2種類以上組み合わせた樹脂が挙げられる。
【0024】
樹脂被覆量は、キャリア芯材(磁性粒子)に対して0.1〜3.5重量%であることが望ましい。樹脂被覆量が0.1重量%未満であるとトナーのスペントが悪化し、耐久後の帯電量が低下する。3.5重量%を超えると粒子間凝集が発生し、トナーのスペントが悪化する。
【0025】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、被覆樹脂中にカーボンナノチューブを含有する。ここで用いられるカーボンナノチューブの炭素含有量が75重量%以上、好ましくは85重量%以上であるカーボンナノチューブが用いられる。炭素含有量が75重量%未満のカーボンナノチューブを用いた場合には、所望の抵抗値が得られず、また帯電量の低下や画像の濃度の低下、エッジ現象の発生が生じることから好ましくない。
【0026】
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、繊維長が0.5〜4.0μmであることが望ましく、1.0〜4.0μmであることがさらに望ましい。繊維長が0.5μm未満の場合には、被覆樹脂中に充分に保持されず、色汚れが発生する。また、繊維長が4.0μmを超えると、リークが発生し、白斑等の画像欠陥を引き起こすことから望ましくない。
【0027】
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、炭素元素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が10〜50重量%であることが望ましく、20〜40重量%であることがさらに望ましい。鉄元素の含有量が10重量%未満の場合には、理由は定かではないが、帯電量低下が発生し、カブリが悪化する。また、鉄元素の含有量が50重量%を超えると、高純度のカーボンナノチューブが得られないことから、所望の抵抗が得られず、画像低下及びエッジ現象が生じる。
【0028】
カーボンナノチューブの含有量は、被覆樹脂固形分に対して、0.1〜25.0重量%であることが望ましく、0.5〜20.0重量%であることがさらに望ましい。カーボンナノチューブの含有量が0.1重量%未満の場合には、カーボンナノチューブの含有効果が得られず、所望の抵抗が得られない。カーボンナノチューブの含有量が25.0重量%を超える場合には、カブリが悪化する。
【0029】
被覆樹脂中には、前記カーボンナノチューブと各種導電剤を組み合わせて使用することができる。導電剤としては、導電性カーボンや酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、各種の有機系導電剤、イオン性液体、イオン伝導性樹脂等が挙げられる。
【0030】
更に、前記被覆樹脂中には、帯電制御剤を含有させることができる。帯電制御剤の例としては、トナー用に一般的に用いられる各種の帯電制御剤や、各種シランカップリング剤が挙げられる。これは多量の樹脂を充填した場合、帯電付与能力が低下することがあるが、各種の帯電制御剤やシランカップリング剤を添加することにより、コントロールできるためである。使用できる帯電制御剤やカップリング剤の種類は特に限定されないが、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等の帯電制御剤やアミノシランカップリング剤等が好ましい。
【0031】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、電気抵抗(LogR)が6.0〜11.5にあることが望ましい。電気抵抗が11.5を超えると、画像濃度の低下、エッジ現象及び高抵抗カブリが発生する。電気抵抗が6.0未満であると、低抵抗カブリが悪化する。この電気抵抗は、下記によって測定される。
【0032】
(抵抗)
電極間間隔1.0mmにて非磁性の平行平板電極(10mm×40mm)を対抗させ、その間に、試料200mgを秤量して充填する。磁石(表面磁束密度:1500Gauss、電極に接する磁石の面積:10mm×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、100Vの電圧を印加し、印加電圧における抵抗を絶縁抵抗計(SM−8210、東亜ディケーケー(株)製)にて測定した。なお、室温25℃、湿度55%に制御された恒温恒湿室内で測定を行った。
【0033】
<本発明に係る電子写真現像剤>
次に、本発明に係る電子写真用現像剤について説明する。
本発明に係る電子写真現像剤は、前記した電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアとトナーとからなるものである。
【0034】
本発明の電子写真現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子を使用することができる。
【0035】
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
【0036】
粉砕トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、さらにはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独又は混合して用いられる。
【0037】
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料及び4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
【0038】
着色剤(色材)としては、従来より知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためのシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
【0039】
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法、エステル伸長重合法、相転乳化法といった公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤及び重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させる。塩析によって得られた粒子を、濾過、洗浄、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥されたトナー粒子に外添剤を添加する。
【0040】
さらに、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
【0041】
前記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステル及びメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
【0042】
前記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー及びフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いてその表面が改質されていてもよい。
【0043】
前記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を使用することができる。
【0044】
ここで、アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。さらに、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
【0045】
前記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤の使用量は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼすことから、単量体の分散安定性が確保され、かつ重合トナー粒子の環境依存性に過度の影響を及ぼしにくい前記範囲内の量で使用することが好ましい。
【0046】
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物を挙げることができる。
【0047】
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
【0048】
さらに、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改善剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
【0049】
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
【0050】
また、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0051】
さらに、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
【0052】
前記のようにして製造されたトナー粒子の平均粒径は、2〜15μm、好ましくは3〜10μmの範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子が2μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しカブリやトナー飛散を引き起こしやすく、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
【0053】
前記のように製造された樹脂被覆キャリアとトナーとを混合し、電子写真現像剤を得ることができる。樹脂被覆キャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は3〜15重量%に設定することが好ましい。3重量%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15重量%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生しやすくなる。
【0054】
本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤としても用いることもできる。この際の樹脂被覆キャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は100〜3000重量%に設定することが好ましい。
【0055】
前記のように調製された本発明に係る電子写真現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機等に使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機等にも適用可能である。
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0056】
MnO換算で39.7mol%、MgO換算で9.9mol%、Fe換算で49.6mol%及びSrO換算で0.8mol%になるように、各原材料を適量乾式混合し、乾式振動ミルにて2時間粉砕し、乾式造粒機にて約2cmの大きさを持つ造粒物を得て、ロータリーキルン炉を用い、950℃にて仮焼成を行い、仮焼成物を得た。再度、湿式ボールミルにて2時間粉砕したスラリーをスプレードライヤーにて造粒乾燥し、トンネルキルン炉窒素雰囲気中にて1300℃に3時間保持した後、解砕、粒度分布調整を経て、平均粒径60μmのMn−Mg−Srフェライト芯材を得た。
【0057】
次に、メチルシリコーン樹脂を固形分換算で150g秤量し、500mlのトルエンに溶解させ、更に、炭素含有量95重量%、繊維長3.0μm、炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が32.5重量%であるカーボンナノチューブをメチルシリコーン樹脂の固形分に対して5.0重量%添加し、コーティング溶液を得た。ここで炭素含有量、繊維長及び炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量は、下記によって測定した。以下の実施例及び比較例においても同様である。
【0058】
(炭素含有量)
炭素含有量の測定は、LECO社製炭素分析装置C−200を用いてJIS−Z2615に準拠して測定した。
【0059】
(繊維長)
繊維長の測定は、日本電子社製走査型顕微鏡JSM−6390を用いて測定した。
【0060】
(炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量)
炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量の測定は、リガク製ZSX100eを用いて、含有元素スキャニング機能であるEZスキャンにより測定をいった。EZスキャンにより測定された炭素以外の全元素中に対する鉄元素の比率を算出した。
【0061】
前記Mn−Mg−Srフェライトコア(磁性粒子)10kgに、ディップ式コーティング装置を用いて前記コーティング溶液を用い、磁性粒子に対するメチルシリコーン樹脂の被覆量が1.5重量%になるように被覆した。その後、棚式箱型乾燥機にて、220℃にて2時間焼き付けを行い、解砕、粒度調整を経て、樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例2】
【0062】
炭素含有量95重量%、繊維長0.5μm、炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が32.5重量%であるカーボンナノチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例3】
【0063】
炭素含有量95重量%、繊維長4.0μm、炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が32.5重量%であるカーボンナノチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例4】
【0064】
炭素含有量98重量%、繊維長3.0μm、炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が15.5重量%であるカーボンナノチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例5】
【0065】
炭素含有量92重量%、繊維長3.0μm、炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が49.0重量%であるカーボンナノチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例6】
【0066】
被覆樹脂に対するカーボンナノチューブの含有量を0.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例7】
【0067】
被覆樹脂に対するカーボンナノチューブの含有量を25重量%とした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例8】
【0068】
被覆樹脂としてアクリル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例9】
【0069】
被覆樹脂としてアクリル変性シリコーン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【実施例10】
【0070】
被覆樹脂としてフッ素変性シリコーン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【比較例】
【0071】
[比較例1]
炭素含有量72.5重量%、繊維長3.0μm、炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が22.5重量%であるカーボンナノチューブを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆キャリアを得た。
【0072】
実施例1〜10及び比較例1で用いた被覆樹脂の種類及び磁性粒子(キャリア芯材)に対する被覆量、カーボンナノチューブの炭素含有量、繊維長、炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量及び被覆樹脂の固形分に対するカーボンナノチューブの含有量を表1に示す。
【0073】
実施例1〜10及び比較例1で得られた樹脂被覆キャリアの電気抵抗を測定し、その結果を表2に示す。電気抵抗の測定方法は、上述した通りである。
【0074】
実施例1〜10及び比較例1で得られた樹脂被覆キャリアと市販の富士ゼロックス株式会社製DocuPrintC3530のイエロートナーを、トナー濃度8重量%の1kgの現像剤量になるように秤量を行った後、30分間撹拌を行い、現像剤を得た。この帯電量(初期)を下記に準じて測定し、結果を表2に示す。
【0075】
これら現像剤を富士ゼロックス株式会社製DocuPrintC3530に搭載し、50K枚の耐刷試験を行った。この帯電量(50K後)を下記に準じて測定し、結果を表2に示す。
【0076】
(帯電量)
帯電量は、キャリアとトナーとの混合物を、吸引式帯電量測定装置(Epping q/m−meter、PES−Laboratoriumu社製)により測定し求めた。使用するステンレス網は795Meshの目開きのものを用いた。吸引圧を100MPaとし、90秒間トナーを吸引して、90秒後の電荷量を吸引されたトナー量から、帯電量を計算した。
【0077】
また、実施例1〜10及び比較例1の帯電量の変化率を下記に準じて測定し、結果を表2に示す。
【0078】
(帯電量の変化率)
前記で得られた現像剤の初期帯電量及び50K枚の耐刷後の帯電量に基づいて下記式から算出した。ここにおいて、帯電量の変化率の値が100%に近い方が、変化が小さいことを示し、100%の場合には、変化がないことを示す。
【0079】
【数1】

【0080】
実施例1〜10及び比較例1の上記現像剤について画像評価(画像濃度、カブリ、エッジ現象、色汚れ及び白斑)について下記の基準に基づいて評価し、結果を表2に示す。
【0081】
(色汚れ)
市販のデジタルフルカラープリンター(富士ゼロックス株式会社製DocuPrintC3530)にて0.5%画像面積の画像チャートを50Kまでランニングした後、予め準備した見本との比較により下記により評価した。
◎:色汚れなし
○:色汚れ殆どなし
△:色汚れはあるが目立たず
×:明らかに色汚れが目立つ
【0082】
(画像濃度、カブリ、エッジ現象及び白斑)
市販のデジタルフルカラープリンター(富士ゼロックス株式会社製DocuPrintC3530)を用いて、50Kまでランニングを実施した。50K後の画像について画像濃度、カブリ濃度、ベタ画像の白斑の有無を調査した。画像濃度、カブリ濃度はマクベス濃度計を用い、転写紙を基準に測定した。また、白斑に関しては、予め準備した見本との比較により評価を行った。これらの特性については下記に基づいて評価した。
◎:非常に良好であり、使用レベルにある。
○:良好であり、使用レベルにある。
△:概ね良好であり、使用レベルにある。
×:不良であり、使用レベルにない。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
表2に示されるように、実施例1〜10は、電気抵抗、初期及び50K後の帯電量、帯電量の変化率のいずれも良好であった。また、画像評価(画像濃度、カブリ、エッジ現象、色汚れ及び白斑)においても優れたものであった。
【0086】
これに対し、比較例1は、電気抵抗が高く、帯電量の変化率も劣ったものであった。画像評価においては、画像濃度やエッジ現象が使用レベルを超えていた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆フェライトキャリアを用いることによって、特にカラートナーに対して色汚れ、キャリアの高抵抗化による画像濃度の低下、エッジ現象等の画質の低下を伴わず、さらに高耐久性を有する電子写真現像剤が得られる。
【0088】
従って、本発明は、高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機等の分野に広く使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子表面が樹脂で被覆されており、かつ被覆樹脂中に炭素含有量が75重量%以上であるカーボンナノチューブを含有することを特徴とする電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが被覆樹脂固形分に対して0.1〜25.0重量%含有されている請求項1に記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ中の繊維長が0.5〜4.0μmである請求項1又は2に記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ中の炭素以外の元素の総量に対する鉄元素の含有量が10〜50重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂被覆キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。

【公開番号】特開2012−208441(P2012−208441A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76015(P2011−76015)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000231970)パウダーテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】