説明

電子写真現像用の磁性キャリア芯材およびその製造方法、磁性キャリア並びに電子写真現像剤

【課題】電子写真の高画質化を保ちながらキャリア飛散を抑制した、電子写真現像用の磁性キャリア芯材、磁性キャリア、および電子写真現像剤を提供する。
【解決手段】組成式:MnFe3−x(但し、0≦x≦1.0)で表記される電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材であって、粉末XRDパターンにおいて、MnFe相とSiO相とが観測され、SiO含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であり、格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材、当該磁性キャリア芯材に樹脂が充填、または充填かつ被覆されている磁性キャリア、当該磁性キャリアとトナーとを含む電子写真現像剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式現像用の磁性キャリア芯材およびその製造方法、当該磁性キャリア芯材を用いた磁性キャリア、並びに電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の乾式現像法は、電子写真現像剤である粉体のトナーを感光体上の静電潜像に付着させ、当該付着したトナーを所定の紙等の媒体へ転写して現像する方法である。この方法は、電子写真現像剤として、トナーのみを含む1成分系現像剤を用いる方法と、トナーと磁性キャリアとを含む2成分系現像剤を用いる方法に大別される。近年では、トナーの荷電制御が容易で安定した高画質が得ることができ、かつ高速現像が可能な2成分系現像法が電子写真現像剤の主流となっている。
【0003】
2成分現像剤を用いた現像方法では、電子写真の高画質化のためのトナーの小粒径化、および、現像スリーブ上での現像ブラシのより緻密な穂立ちの実現、等が実施され、それに伴って、磁性キャリアの小粒径化を行い、磁気ブラシを細くすることで、より緻密な潜像の現像を行うことが提案されている。
しかしながら、磁性キャリアの小粒径化に伴い、磁性キャリア粒子1個当たりの磁化が小さくなるため、現像スリーブ上での磁気的な拘束力が弱くなり、磁性キャリアが像担持体上へ飛散し易くなるという問題(所謂、キャリア飛散)が発生した。
【0004】
このようなキャリア飛散を抑制するため、例えば、特許文献1では、磁性キャリア芯材におけるグレイン径分布のバラツキ、磁化、粒子径を規定する提案がなされている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−53201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来の技術に係る磁性キャリアとキャリア飛散との関連について検討を行った。その結果、例えば特許文献1に提案されている磁性キャリアを始め、従来の技術に係る磁性キャリアでは、キャリア飛散を改善するには不十分であることに想到した。
本発明は、上述の状況の下でなされたものであり、電子写真の高画質化を保ちながらキャリア飛散を抑制した電子写真現像用の磁性キャリア芯材、磁性キャリア、および電子写真現像剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、磁性キャリアとキャリア飛散との関連について、さらに鋭意研究を行った結果、従来の技術に係る磁性キャリアは粒子密度が高い為、現像スリーブの回転によって当該磁性キャリアに加えられる遠心力が当該磁性キャリアを当該現像スリーブに保持しようとする磁気力および静電気力よりも大きくなり、キャリア飛散を発生させていることに想到した。
【0008】
ここで、本発明者らは、磁性キャリア芯材へ低密度物質であるSiOを添加して、当該粒子密度を下げた磁性キャリア芯材のキャリア飛散について鋭意検討をおこなった。その結果、SiOの原料粒径を小さくし、磁性キャリア芯材の粒子内部のSiOの偏析を低減させることでキャリア飛散を低減させることができたが、満足できるレベルではなかった。
そこで本発明者らは、キャリア飛散が発生する原因について、さらに研究を行い、SiOを添加した磁性キャリア芯材の結晶構造に着目した。そして、当該研究の結果、キャリア飛散発生の原因が磁性キャリア粒子中における弱磁性部分の存在にあるとの知見に想到した。
【0009】
本発明者らは、前記磁性キャリア粒子中の弱磁性部分について詳細な検討を行った結果、当該弱磁性部分が発生する原因が、磁性キャリア粒子中に存在する構造欠陥や構造の歪み、酸化された粒子、Siの固溶物、であることに想到した。
ここで本発明者らは試行錯誤を重ね、MnFe3−x(但し、0≦x≦1.0)で表記される電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材であって、粉末XRDパターンにおいて、MnFe相とSiO相とが観測され、SiO含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であり、格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である磁性キャリア芯材に想到した。そして、当該磁性キャリア芯材を用いて製造した磁性キャリアがキャリア飛散を著しく低減することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
組成式:MnFe3−x(但し、0≦x≦1.0)で表記される電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材であって、
粉末XRDパターンにおいて、MnFe相とSiO相とが観測され、
SiO含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であり、
格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である、ことを特徴とする電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材である。
【0011】
第2の発明は、
1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上、350emu/ml以下、
粒子密度が3.5g/ml以上、4.8g/ml以下である、ことを特徴とする第1の発明に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材である。
【0012】
第3の発明は、
平均粒子径が、15μm以上、80μm以下である、ことを特徴とする第1または第2の発明に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材である。
【0013】
第4の発明は、
Fe原料と、Mn原料と、SiOとを混合して、一般式:MnFe3−x(但し、0≦x≦1.0)で表記され、SiO含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であるフェライトが生成するように成分調整されたスラリーを得る工程と、
当該スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、
当該造粒物を焼成して磁性相を有する焼成物を得る工程と、
得られた焼成物に解粒処理を行って粉末化し、その後に所定の粒度分布を持たせる工程と、を有することを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材の製造方法である。
【0014】
第5の発明は、
第1〜第3の発明のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリア芯材に、樹脂が充填、または、樹脂が充填かつ被覆されていることを特徴とする電子写真現像用の磁性キャリアである。
【0015】
第6の発明は、
第5の発明に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリアとトナーとを含むことを特徴とす
る電子写真現像剤である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低密度で高磁化の磁性キャリア芯材、磁性キャリアを得ることが出来、さらに、キャリア飛散の抑制された電子写真を現像する電子写真現像剤を製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について、詳細に説明する。
[磁性キャリア芯材の組成]
本発明に係る磁性キャリア芯材の組成はソフトフェライトであればよく、一般式MFe3−x(但し、0≦x≦1.0)で表されるものが好ましい。尤も、Mは、Fe、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Ni等の2価の金属から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。さらに近年の環境問題を考慮すると重金属を含まないものが好ましく、当該観点からは、Feで表されるマグネタイトや、MnFe3−xで表されるマンガンフェライト、MgFe3−xで表されるマグネシウムフェライトが好ましい。さらに、後述する磁気特性を実現する観点からは、MnFe3−xで表されるマンガンフェライトが好ましい。
【0018】
本発明に係る磁性キャリア芯材は、Si換算で4wt%以上、15wt%以下のSiOを含有している。当該SiO添加の目的は、上述したように、低密度物質であるSiOを磁性キャリア芯材に添加することで、当該磁性キャリア芯材さらには磁性キャリアの粒子密度を下げることにある。
【0019】
[磁性キャリア芯材の結晶構造]
本発明に係る磁性キャリア芯材の結晶は、格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である。これは、格子定数が8.483Å以上の場合、磁性キャリア芯材の結晶の還元が適度であるので、酸素欠損が少なく、Siが結晶構造中へ固溶することがないので、磁化が低下せず好ましい、一方、格子定数が8.492Å以下の場合、磁性キャリア芯材の結晶中に未反応物や酸化した粒子が存在することがない為、磁化が低下せず好ましいとの本発明者らの知見によるものである。
【0020】
上述したように、本発明に係る磁性キャリア芯材にはSiOが添加されている。本発明者らの検討によると、SiOを添加したマンガンフェライトにおいては、当該マンガンフェライト生成時に、SiOがFeやMnの拡散を妨げるため、磁性キャリア粒子内に未反応物が存在し易かった。ここで、本発明者らは、試行錯誤の結果、SiO添加量によって最適な焼成温度があることを見出し、さらに、後述する様に、焼成後の冷却過程において、雰囲気の酸素濃度を5000ppm以下にすることでフェライトの酸化を抑制し、磁性キャリア芯材の結晶の格子定数を8.483Å以上、8.492Å以下とすることが出来ることを見出したものである。
【0021】
尚、本発明に関する磁性キャリア芯材の結晶の格子定数は、X線回折装置(リガク製、RINT2000)を用いて測定した。X線源はコバルトを使用し、加速電圧40kV、電流30mAでX線を発生させた。粉末X線の測定条件は走査モード;FT、発散スリット;1/2°、散乱スピード;1/2°、受光スリット;0.15mm、回転速度;5.000rpm、走査範囲;66.000〜68.000°、測定間隔0.01°、計数時間5秒、積算回数3回で測定を行った。得られたXRDパターンから格子定数を算出した。
【0022】
〔磁気特性〕
本発明に係る磁性キャリア芯材の磁気特性は、1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上、350emu/ml以下である。
1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上あることで、当該磁性キャリア芯材の磁気的拘束力が確保出来、キャリア飛散を抑止出来る。一方、1000Oeにおける磁化σ1kが350emu/ml以下であることで、磁気ブラシの穂立ちがソフトになり、高画質を得ることができるので好ましい。
【0023】
尚、当該磁気特性は、本発明に係る磁性キャリア芯材に対してVSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて磁化の測定を行い、当該測定結果から下記式を用いて外部磁場1000Oeにおける磁化σ1k(emu/ml)を得た。
磁化σ1k(emu/ml)=σ1k(emu/g)×粒子密度(g/ml)
【0024】
〔磁性キャリアの粒子密度〕
当該SiO添加により、本発明に係る磁性キャリア芯材の粒子密度は3.5g/ml以上、4.8g/ml以下である。
本発明に関する磁性キャリア芯材の粒子密度が3.5g/ml以上あることで、過剰のSiOによる粒子密度の低下、および、磁化の低下を防げるので好ましい。
一方、磁性キャリア芯材の粒子密度が4.8g/ml以下であることで、粒子密度が高いことによるキャリアに加えられる遠心力を低減でき、さらに磁気ブラシの穂立ちがソフトになり、高画質を得ることができるので好ましい。
【0025】
尚、当該磁性キャリアの粒子密度は、例えば、ウルトラピクノメーター(カンタクロム社製)により測定することが出来る。さらに、本発明において粒子密度とは、粒子内に存在するクローズドポアをも含む当該粒子の見掛け密度のことをいう。
【0026】
〔磁性キャリア芯材の粒子径〕
本発明に係る磁性キャリア芯材は、平均粒子径が15μm以上、80μm以下である。本発明に係る磁性キャリア芯材の平均粒子径が15μm以上あることで、1粒子あたりに必要な磁化を得ることができ、キャリア飛散の発生を抑止出来る。また、平均粒子径が80μm以下であることで、所望の画像を得る事が出来る。
【0027】
〔キャリア飛散の測定方法〕
本発明に係る磁性キャリア芯材に対するキャリア飛散の測定方法について説明する。
磁性キャリア芯材試料のキャリア飛散の測定は、直径50mm、表面磁力1000Gaussの磁気ドラムに磁性キャリア芯材の体積が750mlとなるように試料を充填して仕込む(但し、充填する芯材の重量(g)=750(ml)×芯材の見かけ密度(g/ml))。次に磁気ドラムを270rpmで30分間回転させた後、当該磁気ドラムから飛散した磁性キャリア芯材粒子を回収し、その重量を測定した。そして、仕込み量に対し、飛散した磁性キャリア芯材粒子の割合を算定しキャリア飛散量とした。
【0028】
〔磁性キャリア芯材、磁性キャリア、電子写真現像剤の製造方法〕
本発明に係る磁性キャリア芯材、磁性キャリア、電子写真現像剤は、例えば、以下に説明する製造方法によって製造することが出来る。
《原料》
Fe供給源としては金属Fe、Fe、Feが好適に使用できる。Mn供給源として金属Mn、MnO、Mn、Mn、MnCOが好適に使用できる。SiOとして結晶シリカが好適に使用できる。そして、これらの原料の配合比を、マンガンフェライトの目的組成と一致させて秤量し混合して、金属原料混合物を得る。
尚、結晶シリカとは、XRDパターンにおいて2θ=30〜32°に最大ピーク強度を有するSiO原料を指す。
【0029】
《スラリー化工程》
上記の原料を秤量した後、これらを媒体液中で混合撹拌することによってスラリー化する。スラリー化の前に、必要に応じて、原料混合物に乾式で粉砕処理を加えてもよい。原料粉と媒体液の混合比は、スラリーの固形分濃度が50〜90質量%になるようにすることが望ましい。媒体液は、水にバインダー、分散剤等を添加したものを用意する。その他、潤滑剤や、焼結促進剤として、リンやホウ酸等を添加することができる。混合攪拌して得られたスラリーに対し、さらに湿式粉砕を施すことが好ましい。
【0030】
《造粒工程》
上記スラリーを噴霧乾燥機に導入することによって造粒を行う。これにより、概ね、径が10〜200μmの粒子を含む造粒粉を得ることができる。得られた造粒粉は、磁性キャリア芯材の最終粒径を考慮し、振動ふるい等を用いて、大きすぎる粒子や微粉を除去することにより粒度調整しておくことが望ましい。
【0031】
《焼成工程》
次に、造粒粉を1000〜1290℃に加熱した炉に投入して、マンガンフェライトを合成するための一般的な手法で焼成することにより生成させる。また、焼成の際には、炉内の酸素濃度を制御して焼成を行う。炉内の酸素濃度の制御は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス、または、これらの不活性ガスと酸素との混合ガスを炉内にフローさせることにより達成可能である。
【0032】
上述したように、本発明者らは、格子定数が8.483〜8.492Åの範囲内にある磁性粉末を製造する方法について、検討を重ねた。その結果、焼成工程でSiOの添加量によって合成に必要な最適温度で焼成することが極めて有効であるとの知見に想到した。
【0033】
当該知見について、図1〜図3を参照しながら説明する。
図1〜図3は、いずれも縦軸に磁化、横軸に焼成温度をとったグラフで、図1は添加Si濃度4.3wt%、図2は添加Si濃度7.6wt%、図3は添加Si濃度12.4wt%のときのものである。図1〜図3から明らかなように、いずれのSi濃度においても、高い磁化を得ることの出来る温度範囲があることが判明した。これは、当該温度範囲より焼成温度が低いと、フェライトの合成が不十分となる為、一方、当該温度範囲より焼成温度が高いと、過剰還元が起き、ウスタイト相の生成やSiの固溶が発生する為ではないかと考えられる。
結局のところ、磁性キャリアとして求められる密度から、磁性キャリア芯材に添加すべきSi濃度を決定し、当該Si濃度に適した焼結温度を検討すれば良い。
【0034】
《冷却工程》
焼成工程の次の段階である冷却工程について説明する。
本発明者らは、焼成によってマンガンフェライトを生成した後の冷却工程において、当該マンガンフェライトの酸化が起こることによっても、磁化が低下するとの知見に想到した。
そこで、当該冷却工程において、当該焼成物であるマンガンフェライトを、酸素濃度5000ppmに調整した窒素フロー雰囲気下において冷却を行った。この結果、マンガンフェライトの磁化の低下を抑止することが出来た。
【0035】
以上説明した、焼成工程における焼成温度の制御と、冷却工程における雰囲気制御とにより、得られた焼成物の結晶の格子定数を8.483Å以上、8.492Å以下とすることが出来た。
【0036】
《解粒工程》
得られた焼成物に対し、ハンマーミル、ボールミル等により解粒処理を行い、その後に篩分級を行うことにより、目的とする粒度分布を持たせることで、本発明に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0037】
《磁性キャリア粉の製造》
本発明に係るキャリア芯材を、シリコーン系樹脂やアクリル樹脂等で充填、または、充填かつ被覆し、帯電性の付与および耐久性の向上させることで、本発明に係る磁性キャリアを得ることが出来る。当該シリコーン系樹脂等の充填方法、被覆方法は、公知の手法により行えば良い。
【0038】
《電子写真現像剤の製造》
本発明に係る磁性キャリアと適宜なトナーとを混合することで、本発明に係る電子写真現像剤を得ることが出来る。本発明に係る磁性キャリアは、十分な磁化と適宜な密度とを有するので、本発明に係る電子写真現像剤は、高性能な電子写真現像機やMFPにおいても、安定して良好な画質特性を発揮できる。
【実施例】
【0039】
《実施例1》
Fe10kg、Mn3.6kg、SiO2.7kgを純水5kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤60gを添加して混合物とした。当該混合物を湿式ボールミルにより粉砕処理し、FeとMnとSiOとの混合スラリーを得た。原料の混合比は、FeとMnとは、前述のフェライトの組成式MnFe3−xにおいて、x=0.82となるよう算出したものである。SiO量は、製造を目論んでいるフェライト中にSi換算で7.6wt%含有されるように算出したものである。
【0040】
得られたスラリーを湿式ボールミルにて湿式粉砕し、しばらく攪拌した後、スプレードライヤーにて熱風中に噴霧し、粒径10〜200μmの乾燥造粒物を得た。
【0041】
この造粒物から網目60μmと25μmの篩網を用いて粗粒、微粒を分離した後の造粒物を、1200℃、窒素雰囲気下で5hr焼成し、フェライト化させた。次に、冷却工程において、当該焼成物を、酸素濃度5000ppmに調整した窒素フロー雰囲気下においた。このフェライト化した焼成物をハンマーミルで解粒し、風力分級機を用いて微粉を除去し、網目45μmの振動ふるいで粒度調整し、平均粒径35μmの実施例1に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0042】
得られた実施例1に係る磁性キャリア芯材にXRD解析を行い、格子定数を計算し、その結果を、表1、図2、図4、図6に示した。
尚、図4は、縦軸に磁性キャリア芯材の磁性特性として1000Oeにおける磁化σ1kをとり、横軸に磁性キャリア芯材の格子定数をとったグラフである。図6は、磁性キャリア芯材のXRDパターンを示すグラフである。後述する図5、図7も同様のグラフである。
【0043】
《実施例2》
焼成において焼成温度を1125℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例2に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0044】
《実施例3》
焼成において焼成温度を1150℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例3に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0045】
《実施例4》
焼成において焼成温度を1175℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例4に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0046】
《実施例5》
焼成において焼成温度を1240℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例5に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0047】
《実施例6》
Feを10kg、Mnを3.6kg、SiOを5.4kg、とし、焼成において焼成温度を1120℃とした以外は、実施例15と同様の条件で操作を行い、実施例6に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0048】
《実施例7》
焼成において焼成温度を1150℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、実施例7に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0049】
《実施例8》
焼成において焼成温度を1200℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、実施例8に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0050】
《実施例9》
焼成において焼成温度を1240℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、実施例9に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0051】
《実施例10》
Feを10kg、Mnを3.6kg、SiOを1.4kgとし、焼成において焼成温度を1120℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例10に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0052】
《実施例11》
焼成において焼成温度を1150℃とした以外は、実施例10と同様の条件で操作を行い、実施例11に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0053】
《実施例12》
焼成において焼成温度を1200℃とした以外は、実施例10と同様の条件で操作を行い、実施例12に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0054】
《実施例13》
焼成において焼成温度を1240℃とした以外は、実施例10と同様の条件で操作を行い、実施例13に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0055】
《比較例1》
焼成において焼成温度を1300℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、比較例1に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0056】
《比較例2》
焼成において焼成温度を1300℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、比較例2に係る磁性キャリア芯材を得た。
【0057】
(実施例1〜13および比較例1、2のまとめ)
実施例1〜13および比較例1、2に係る磁性キャリア芯材の格子定数、磁化、キャリア飛散量を表1に示す。尚、キャリア飛散量は、仕込み量に対するキャリア飛散量の割合を示す。
また、図4に格子定数と磁化の関係について示し、図5〜7に実施例1〜13および比較例1、2に係る磁性キャリア芯材のXRDパターンを示した。
【0058】
【表1】

【0059】
図4の格子定数と磁力の関係から実施例1〜13に係る磁性キャリア芯材は、格子定数8.483〜8.492Åの範囲内にあり、高い磁化を示すことが判明した。
一方、比較例1〜2に係る磁性キャリア芯材では格子定数が8.483〜8.492Åの範囲外であり、磁化が低下していることが判明した。その結果、表1からわかるように、比較例1、2に係る磁性キャリア芯材ではキャリア飛散量が増加した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】濃度4.3wt%のSiを含むマンガンフェライトの焼結温度と磁化との関係を示すグラフである。
【図2】濃度7.6wt%のSiを含むマンガンフェライトの焼結温度と磁化との関係を示すグラフである。
【図3】濃度12.4wt%のSiを含むマンガンフェライトの焼結温度と磁化との関係を示すグラフである。
【図4】磁性キャリア芯材中の結晶の格子定数と磁化との関係を示すグラフである。
【図5】実施例10〜13に係る磁性キャリア芯材のXRDパターンである。
【図6】実施例1〜5、比較例1に係る磁性キャリア芯材のXRDパターンである。
【図7】実施例6〜9、比較例2に係る磁性キャリア芯材のXRDパターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式:MnFe3−x(但し、0≦x≦1.0)で表記される電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材であって、
粉末XRDパターンにおいて、MnFe相とSiO相とが観測され、
SiO含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であり、
格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である、ことを特徴とする電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材。
【請求項2】
1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上、350emu/ml以下、
粒子密度が3.5g/ml以上、4.8g/ml以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材。
【請求項3】
平均粒子径が、15μm以上、80μm以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材。
【請求項4】
Fe原料と、Mn原料と、SiOとを混合して、一般式:MnFe3−x(但し、0≦x≦1.0)で表記され、SiO含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であるフェライトが生成するように成分調整されたスラリーを得る工程と、
当該スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、
当該造粒物を焼成して磁性相を有する焼成物を得る工程と、
得られた焼成物に解粒処理を行って粉末化し、その後に所定の粒度分布を持たせる工程と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3に記載の電子写真現像剤用磁性キャリア芯材に、樹脂が充填、または、樹脂が充填かつ被覆されていることを特徴とする電子写真現像用の磁性キャリア。
【請求項6】
請求項5に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−86339(P2009−86339A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256654(P2007−256654)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(000224802)DOWA IPクリエイション株式会社 (96)
【Fターム(参考)】