説明

電子写真現像用キャリアおよびその製造方法、並びに二成分系現像剤

【課題】様々な環境下における使用に際して良好な特性を維持できると共に、長期にわたる電子写真現像において高品質な画像形成を維持することのできる電子写真現像用キャリアを提供する。
【解決手段】キャリア芯材1の表面に、それぞれ導電性微粒子3を飽和状態となるまで含有させた親水性樹脂4と疎水性樹脂2の混合物を被覆し、それにより親水性樹脂4と疎水性樹脂2の界面に、親水性樹脂4に含有されていた導電性微粒子を析出・集積させて導電経路5を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分系現像剤に使用される電子写真現像用キャリアに係り、特に、フェライト等のキャリア芯材の表面に導電性微粉末を含有する樹脂被覆が施された電子写真現像用キャリアおよびその製造方法、並びに二成分系現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真現像用の二成分系現像剤には、トナーと電子写真現像用キャリア(以下、単に「キャリア」と記載する場合がある)とが含まれている。この電子写真現像用キャリアには、電気特性、摩擦帯電性、耐久性、流動性などの様々な特性が要求されている。また、電子写真現像中の撹拌によるキャリア同士の衝突や、現像ユニットとキャリアの間の摩擦などにより、キャリア表面へのトナー成分の融着(スペント化)が生じて帯電不良が起こるのを防止するために、キャリアの表面に樹脂被覆が施される場合がある。
【0003】
このように樹脂被覆が施された、いわゆる樹脂被覆キャリアでは、撹拌によるキャリア同士の衝突や現像ユニットとキャリアの間の摩擦などによりキャリアの表面の被覆樹脂が剥離することがある。当該剥離が発生すると、キャリア表面にトナー成分が融着して帯電不良が起こるので、当該剥離を起こさないことが要求される上、様々な環境下で絶えず所望の帯電特性が得られることが要求されている。
【0004】
さらに、このようにキャリアの表面に樹脂被覆を施した従来の二成分現像剤では、耐刷時の環境の変動により、高温高湿下では帯電量が低下して、トナー飛散、画像かぶり、前引きなどの不具合が生じ、低温低湿時では帯電量が上昇して、画像濃度が不足するという不具合が生じ、この結果、現像剤の寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
また、最近では、消費電力を低減させるために、トナーのメインバインダー樹脂として、様々な樹脂の中でも比較的溶融粘度が低く、負帯電性であり、酸価により帯電レベルが調整し易いポリエステル樹脂を使用することが多い。しかし、ポリエステル樹脂を使用すると、トナーの流動性が悪くなる上、高温高湿環境下において吸湿し易く、帯電量が低下するという問題がある。
【0006】
このような問題を解消するために、キャリアの被覆層表面で帯電量が高くなるよう種々の樹脂を組み合わせ帯電量の調整を行う方法がある。しかしこのように帯電量が高く調整された表面被覆層は、長期間使用されるうちに表面の磨耗、剥離等でキャリアの表面の厚さが変化することにより、帯電上昇が起こり、低温低湿下で画像濃度の低下の不具合が生じ、現像剤の寿命が短くなるという問題がある。
【0007】
ここで、トナー飛散及びトナー汚染を発生することなく、複写機の高速化高画質化に耐えるキャリアとして、キャリア芯材の表面の樹脂被覆層にカーボンブラックを含有させると共に、含有するカーボンブラックに被覆層の厚み方向に濃度勾配を持たせたキャリアが、特許文献1に提案されている。
【0008】
また、トナーのスペント化を防止し、良質の画質を長期提供することができるようにするため、特定粒径のグラファイト粉末およびカーボンブラック粉末を分散させた樹脂により、キャリア芯材の表面がコーティングされたキャリアが、特許文献2に提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開平8−179570号公報
【特許文献2】特許第2824778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし本発明者らの検討によると、特許文献1に記載された技術は、樹脂被覆中の厚み方向にカーボンブラックの濃度勾配が存在しているので、キャリア抵抗を変えずに帯電量の立ち上がり速度を調整できる。しかし、当該樹脂被覆層が磨耗してくると、カーボンブラックの厚み方向における濃度勾配の為に、今度は誘電率も変化し、その結果、帯電量も変化してしまう。
【0011】
また、特許文献2に記載された技術では、攪拌ストレスの大きな現像槽で使用すると、被覆層の磨耗が進行するにつれ、比較的粒径の大きいグラファイト粉末が被覆層から剥離し、その部分でのトナーのスペント化が起きやすくなり、帯電量の安定性が低下し、長期にわたる電子写真現像において高品質画像を維持するのが困難であった。
【0012】
本発明は、上述した状況を背景としてなされたものであり、低温低湿環境および高温高湿環境を含めた様々な環境下における使用に際して、良好な特性を維持できることは勿論、長期にわたる電子写真現像において高品質な画像形成を維持することのできる電子写真現像用キャリアおよびその製造方法、並びに二成分系現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来、キャリア芯材の表面には、シランカップリング剤がカップリング剤として被覆され、さらにその上に、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の被覆樹脂が被覆され、その被覆樹脂内に導電性微粉末が添加されることで、帯電量の調整等が行われていたが、被覆樹脂層内に導電性微粉子を分散させた場合は、理想的な均一分散でない限り、被覆層が磨耗した場合に被覆層の厚みに応じて導電性が変化してしまうため、長期にわたる耐刷性や耐久性において安定な効果が得られなかった。
【0014】
本発明者らが、鋭意研究を重ねた結果、当該問題を解決する手段として、次の(1)、(2)を採用した。
(1)導電性微粒子が不均一な分散状態でも、微粒子がある程度凝集し、コア表面から被覆層内に連続した導電経路が常時形成されるように、微粒子の分散性を比較的低く設定した樹脂を被覆層として用いた。
(2)被覆層全体としての導電性の調整も可能にするため、均一に導電性微粉末が分散する状態も存在させ、異なる2つの分散状態が同時に存在する被覆層を形成させることにした。
【0015】
即ち、課題を解決するための第1の手段は、キャリア芯材の表面を、それぞれ導電性微粒子を含有させた親水性樹脂と疎水性樹脂の混合物により被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリアである。
当該構成を有する電子写真現像用キャリアは、被覆層が磨耗しても、被覆層が一定の導電性を維持し、キャリア抵抗が安定した。
【0016】
第2の手段は、少なくとも前記疎水性樹脂に、導電性微粒子を飽和状態となるまで含有させてあることを特徴とする第1の手段に記載の電子写真現像用キャリアである。
当該構成を有する電子写真現像用キャリアは、安定した導電経路が形成された。
【0017】
第3の手段は、前記導電性微粒子がカーボンブラックであり、その平均粒径が80nm以上、1μm以下であることを特徴とする第1または第2の手段に記載の電子写真現像用キャリアである。
【0018】
第4の手段は、前記疎水性樹脂の表面張力が30mN/m以下であり、前記親水性樹脂の表面張力が36mN/m以上であることを特徴とする第1〜第3の手段のいずれかに記載の電子写真現像用キャリアである。
【0019】
第5の手段は、前記キャリア芯材がソフトフェライトを含むことを特徴とする第1〜第4の手段のいずれかに記載の電子写真現像用キャリアである。
【0020】
第6に手段は、ポリエステル樹脂を主成分として含有するトナーと、第1〜第5の手段のいずれかに記載の電子写真現像用キャリアとを含むことを特徴とする二成分系現像剤である。
【0021】
第7の手段は、キャリア芯材の表面に、それぞれ導電性微粒子を飽和状態となるまで含有させた親水性樹脂と疎水性樹脂の混合物を被覆することにより、親水性樹脂と疎水性樹脂の界面に、親水性樹脂に含有されていた導電性微粒子を析出・集積させることを特徴とする電子写真現像用キャリアの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、長期にわたる電子写真現像や、低温低湿環境および高温高湿環境を含めた様々な環境下において、安定な帯電量を保つことができた。また、長期にわたる電子写真現像や、低温低湿環境および高温高湿環境を含めた様々な環境下において長期間使用しても、画像かぶりやトナー飛散の無い、シャープな画像を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態の電子写真現像用キャリアは、キャリア芯材の表面を、それぞれ導電性微粒子を含有させた親水性樹脂と疎水性樹脂の混合物により被覆したものであり、少なくとも疎水性樹脂には、導電性微粒子を飽和状態となるまで含有させてある。
尚、本発明において、樹脂に導電性微粒子が飽和した状態とは、当該樹脂への導電性微粒子の分散量を増加させた場合、これ以上の量は分散させきることが出来ず、当該樹脂外へ流出し始める状態をいう。
【0024】
導電性微粒子としては、平均粒径が80nm以上で1μm以下のカーボンブラックを用いるのが好ましい。また、疎水性樹脂としては表面張力が30mN/m以下のもの、より好ましくは26mN/m以下のものを用いるのがよく、親水性樹脂としては表面張力が36mN/m以上のもの、より好ましくは42mN/m以上のものを用いるのがよい。また、キャリア芯材には、ソフトフェライトを含むものを使用するのが好ましい。また、二成分系現像剤を構成する場合は、ポリエステル樹脂を主成分として含有するトナーと、本実施形態のキャリアとを含むものとする。
【0025】
本実施形態のキャリアを製造する場合は、キャリア芯材の表面に、それぞれ導電性微粒子を飽和状態となるまで含有させた親水性樹脂と疎水性樹脂の混合物を被覆する。そして、それにより、親水性樹脂と疎水性樹脂との界面部分の親水性樹脂層に、親水性樹脂に含有されていた導電性微粒子を析出・集積させて導電経路を形成する。
【0026】
当該導電経路の形成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るキャリアであって、キャリア芯材の表面に形成された樹脂コート部分の模式的な断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るキャリアは、キャリア芯材1の表面がカップリング層6で被覆され、さらに当該カップリング層6上に、それぞれ導電性微粒子3を飽和状態となるまで含有させた親水性樹脂4と疎水性樹脂2との混合物が被覆されている。親水性樹脂4と疎水性樹脂2とは互いに混じり合うことなく存在し、疎水性樹脂2が泡状形状をとり、親水性樹脂4は、泡状形状をとる疎水性樹脂2の周囲に存在していると考えられる。
【0027】
一方、上述したように、親水性樹脂4と疎水性樹脂2とには、それぞれ導電性微粉末3としてカーボン粉末が添加されている。当該導電性微粉末3は親水性樹脂4には馴染まず、疎水性樹脂2には馴染む性質がある。この為、親水性樹脂4に添加されていた導電性微粉末2は、親水性樹脂4の中心部から排除されることになり、疎水性樹脂2との境界付近に集積することとなる。しかし、既に、疎水性樹脂2中には導電性微粉末3が存在しているので、自由に疎水性樹脂3中へ侵入することも出来ず、疎水性樹脂2との境界付近に集積することになり、導電経路5が形成されると考えられる。当該効果は、疎水性樹脂2内の導電性微粉末3の存在量を飽和状態、さらには、過飽和状態にしておくことで、さらに顕著となり好ましい。
【0028】
従って、当該導電経路5は、親水性樹脂4と疎水性樹脂2との境界に沿って、網の目状にコア表面から被覆層内へ、連続した導電経路を常時形成することになる。そして、この網の目状の導電経路が確保されることにより、被覆層が磨耗しても、残りの被覆層が一定の導電性を維持し、キャリア抵抗が安定しているものと考えられる。
【0029】
ここで、導電性微粒子の具体例としては、例えば、VULCAN XC72R、REGAL330R、MONARCH120(キャボット社製)、#2700、MA100、MA7、#52(三菱化学製)等が使用できる。
【0030】
また、疎水性樹脂として使用するシリコーン樹脂の例としては、ストレートシリコンタイプのものが好ましく使用でき、更に好ましくはジメチルタイプのものが適する。具体的には、例えば、SR2410、SR2411、SH804、SH805、SH806A、SH8404(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、X-40-2151、KR350(信越化学株式会社製)、TSR116、TSR144、TSR102、TSR127B(GE東芝シリコーン)等が好適に使用できる。
【0031】
また、疎水性樹脂として使用するエポキシ樹脂の例としては、いわゆるBPA型、例えば、アデカレジンEP4100(旭電化製)、ノボラック型だけでなくシリコン変性タイプ(エポキシ変性シリコーン樹脂)も好ましく使用できる。具体的には、例えば、SR2115、SR2145(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、TSR194(GE東芝シリコーン)等が好適に使用できる。
【0032】
また、親水性樹脂として使用するメラミン樹脂としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミンといったタイプのものが好ましく使用できる。例えば、MW-30HM(三和ケミカル製)、J-820-60(大日本インキ製)、サイメル300(三井サイテック)等が好適に使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明する。
《実施例1》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)100部に対しカーボンブラック2部を含有する溶液を調製し、別にメラミン樹脂(固形分50%)100部にカーボンブラックを5部添加し溶液を調製した。そして、2種の溶液を100部と20部の割合で混合し、コート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂2000部、メラミン樹脂1000部、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック200部、メラミン樹脂(親水性樹脂)中のカーボンブラック100部となる。尚、本実施例においては、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラックは飽和状態にある。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアと、市販のポリエステルを主成分としたトナーとを、キャリア:トナーの比を94:6の割合で混合して、実施例1に係る電子写真用現像剤を製造した。そして当該電子写真用現像剤を用いて実機にて画像を出力したところ、抵抗の変化がなく安定した画像を得ることができた。
【0034】
《実施例2》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)100部に対しカーボンブラック5部を含有する溶液を調製し、別にメラミン樹脂(固形分50%)100部にカーボンブラックを5部添加し溶液を調製した。そして、2種の溶液を100部と20部に混合し、コート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂2000部、メラミン樹脂1000部、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック500部、メラミン樹脂(親水性樹脂)中のカーボンブラック100部となる。尚、本実施例においては、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラックは過飽和状態にある。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして実施例2に係る電子写真現像剤を製造し、実機にて画像を出力したところ、抵抗の変化がなく安定した画像を得ることができた。
【0035】
《実施例3》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)100部に対しカーボンブラック2部を含有する溶液を調製し、別にメラミン樹脂(固形分50%)100部にカーボンブラックを10部添加し溶液を調製した。そして、2種の溶液を100部と20部に混合しコート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂2000部、メラミン樹脂1000部、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック200部、メラミン樹脂(親水性樹脂)中のカーボンブラック200部となる。尚、本実施例においては、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラックは飽和状態にある。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして実施例3に係る電子写真現像剤を製造し、実機にて画像を出力したところ、抵抗の変化がなく安定した画像を得ることができた。
【0036】
《実施例4》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)50部とエポキシ樹脂(固形分20%)50部に対しカーボンブラック2部を含有する溶液を調製し、別にメラミン樹脂(固形分50%)100部にカーボンブラックを5部添加し溶液を調製した。そして、2種の溶液を100部と20部に混合しコート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂1000部、エポキシ樹脂1000部、メラミン樹脂1000部、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック200部、メラミン樹脂(親水性樹脂)中のカーボンブラック100部となる。尚、本実施例においては、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラックは飽和状態にある。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして実施例4に係る電子写真現像剤を製造し、実機にて画像を出力したところ、抵抗の変化がなく安定した画像を得ることができた。
【0037】
《実施例5》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、エポキシ樹脂(固形分20%)100部に対しカーボンブラック2部を含有する溶液を調製し、別にメラミン樹脂(固形分50%)100部にカーボンブラックを5部添加し溶液を調製した。そして、2種の溶液を100部と20部に混合しコート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、エポキシ樹脂2000部、メラミン樹脂1000部、エポキシ樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック200部、メラミン樹脂(親水性樹脂)中のカーボンブラック100部となる。尚、本実施例においては、エポキシ樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラックは飽和状態にある。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして実施例5に係る電子写真現像剤を製造し、実機にて画像を出力したところ、帯電量の変化はやや大きいものの、抵抗の変化がなく安定した画像を得ることができた。
【0038】
《比較例1》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)100部に対しカーボンブラック1部を含有する溶液を調製し、別にエポキシ樹脂(固形分20%)100部にカーボンブラックを2部添加し溶液を調製した。そして、2種の溶液を100部と50部に混合しコート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂2000部、エポキシ樹脂1000部、シリコーン樹脂およびエポキシ樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック200部となる。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして比較例1に係る電子写真現像剤を製造し、実機にて画像を出力したところ、ライフでの抵抗が低下し、かぶりの多い画像となった。
【0039】
《比較例2》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)100部に対しカーボンブラック2部を含有する溶液を調製した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂2000部、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック200部となる。尚、本比較例においては、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラックは飽和状態にある。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が2.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして比較例2に係る電子写真現像剤を製造し、実機にて画像を出力したところ、ライフでの抵抗が低下し、かぶりの多い画像となった。
【0040】
《比較例3》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)100部に対しカーボンブラック2部を含有する溶液を調製し、これを100部とメラミン樹脂(固形分50%)20部の割合しコート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂2000部、メラミン樹脂1000部、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラック200部となる。尚、本比較例においては、シリコーン樹脂(疎水性樹脂)中のカーボンブラックは飽和状態にある。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして比較例3に係る電子写真現像剤を製造し実機にて画像を出力したところ、帯電量が高すぎ画像濃度が不足した画像となった。
【0041】
《比較例4》
芯材として平均粒径50μmの窒素雰囲気中で焼成したMn−Mg系フェライトを用い、カップリング処理としてアミノシランとグリシドキシルシランを1:1の比率で混合し一定時間撹拌したものを有機溶剤に溶かし、芯材に対する総重量割合が0.3%になるように加熱撹拌し溶剤を除去した。
その後、シリコーン樹脂(固形分20%)50部とエポキシ樹脂(固形分20%)50部に混合した溶液を調製し、別のメラミン樹脂(固形分50%)20部と100部の割合で混合し、コート層を形成するための溶液を準備した。
従って、当該コート層を形成するための溶液において、固形分を割り返した100%の樹脂分として換算すると、シリコーン樹脂1000部、エポキシ樹脂1000部、メラミン樹脂1000部となる。
これをカップリング処理後のフェライト粒子に浸漬法を用いて、粒子表面にコート層の重量割合が3.0%となるように加え、加熱撹拌し、溶剤を除去した。
コート後の粒子は250℃で硬化させ、キャリアを得た。
このキャリアを用い、実施例1と同様にして比較例4に係る電子写真現像剤を製造し実機にて画像を出力したところ、帯電量の上昇が大きく画像濃度が不足した画像となった。
【0042】
実施例と比較例とに係る試料の特性および組成を、一覧表として表1に示す。
試料の特性値としては、静抵抗値、疎水性樹脂の表面張力、親水性樹脂の表面張力を測定した。さらに、電子写真用現像剤を用いて、実機による10000(10K)枚の電子写真現像を行い、1枚目の現像時を初期、10000(10K)枚目の現像時を10Kとして、帯電量を測定した。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例と比較例とに係る試料の実機評価結果を、一覧表として表2に示す。
実機評価は、実施例と比較例とに係る試料を用いて電子写真用現像剤を製造し、当該電子写真用現像剤を用いて、実機による10000(10K)枚の電子写真現像を行った。
評価項目は、画像濃度、画像かぶり、帯電量環境変動、トナー飛散、および、キャリア付着の項目で行った。尚、当該実機評価において、実機を高温高湿環境や低温低湿環境に設置して、電子写真現像を行った。
そして当該評価項目において、1枚目の現像結果を初期、10000(10K)枚目の現像結果を10Kとし、非常に良いレベルの場合は◎、良いレベルの場合は○、使用可能レベルの場合は△、使用できないレベルの場合は×、と評価した。
【0045】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係るキャリアの樹脂コート部分の様式的な断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 キャリア芯材
2 疎水性樹脂
3 導電性微粉末
4 親水性樹脂
5 導電経路
6 カップリング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア芯材の表面を、それぞれ導電性微粒子を含有させた親水性樹脂と疎水性樹脂の混合物により被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項2】
少なくとも前記疎水性樹脂に、前記導電性微粒子を飽和状態となるまで含有させてあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項3】
前記導電性微粒子がカーボンブラックであり、その平均粒径が80nm以上、1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項4】
前記疎水性樹脂の表面張力が30mN/m以下であり、前記親水性樹脂の表面張力が36mN/m以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項5】
前記キャリア芯材がソフトフェライトを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項6】
ポリエステル樹脂を主成分として含有するトナーと、請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真現像用キャリアとを含むことを特徴とする二成分系現像剤。
【請求項7】
キャリア芯材の表面に、それぞれ導電性微粒子を飽和状態となるまで含有させた親水性樹脂と疎水性樹脂の混合物を被覆することにより、親水性樹脂と疎水性樹脂の界面に、親水性樹脂に含有されていた導電性微粒子を析出・集積させることを特徴とする電子写真現像用キャリアの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−271864(P2007−271864A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96744(P2006−96744)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【出願人】(000224802)DOWA IPクリエイション株式会社 (96)
【Fターム(参考)】