説明

電子写真用キャリアの製造方法

【課題】現像剤のベタ画像部における初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着が生じず、耐固化性が良好で、耐色汚れ性が良好な電子写真用キャリアの製造方法、電子写真用キャリア及び現像剤を提供すること。
【解決手段】少なくとも、芯材と該芯材の表面に形成された被覆層とからなる電子写真用キャリアの製造方法であって、芯材に被覆材料を被覆する工程と被覆された材料を加熱処理する焼成工程とを含み、該焼成工程が、高周波誘導加熱装置によって芯材を高周波誘導加熱することによって被覆材料を昇温して加熱処理する工程であり、キャリア単位質量あたりの該高周波誘導加熱装置の電力Eが0.01〜2.5[kWh/kg]であることを特徴とする、電子写真用キャリアの製造方法。(但し、E=W/M[kWh/kg]、W:時間あたりの電力[kW]、M:時間あたりに処理されるキャリアの質量[kg/h])

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用キャリアの製造方法、電子写真用キャリア、電子写真用現像剤に係り、特に静電潜像をトナー像化するために使用される電子写真用キャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の像担持体上に静電荷による静電潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させて可視像を形成した後、該トナー像を紙等の記録媒体に転写し、該トナー像を定着することにより出力画像が形成される。近年、電子写真方式を用いたコピアやプリンタの技術は、モノクロからフルカラーへの展開が急速になりつつあり、フルカラーの市場は拡大する傾向にある。
【0003】
フルカラー電子写真法によるカラー画像形成は一般に3原色であるイエロー、マゼンタ、シアンの3色のカラートナー又はそれに黒色を加えた4色のカラートナーを積層させて全ての色の再現を行なうものである。従って、色再現性に優れ、鮮明なフルカラー画像を得るためには、定着されたトナー画像表面をある程度平滑にして光散乱を減少させる必要がある。このような理由から従来のフルカラー複写機等の画像光沢は10〜50%の中〜高光沢のものが多かった。
【0004】
一般に、乾式のトナー像を記録媒体に定着する方法としては、平滑な表面を持ったローラやベルトを加熱し、トナーと圧着する接触加熱定着方法が多用されている。この方法は熱効率が高く高速定着が可能であり、カラートナーに光沢や透明性を与えることが可能であるという利点がある反面、加熱定着部材表面と溶融状態のトナーとを加圧下で接触させた後加熱定着部材表面から剥離するために、トナー像の一部が加熱定着部材表面に付着して別の画像上に転移する、いわゆるオフセット現象が生じる。
【0005】
このオフセット現象を防止することを目的として、離型性に優れたシリコーンゴムやフッ素樹脂で加熱定着部材表面を形成し、さらにその加熱定着部材表面にシリコーンオイル等の離型オイルを塗布する方法が一般に採用されていた。しかしこの方法は、トナーのオフセットを防止する点では極めて有効であるが、離型オイルを供給するための装置が必要であり、定着装置が大型化しマシンの小型化に不向きである。このためモノクロトナーでは、溶融したトナーが内部破断しないように結着樹脂の分子量分布の調整等でトナーの溶融時の粘弾性を高め、さらにトナー中にワックス等の離型剤を含有させることにより、定着ローラに離型オイルを塗布しない(オイルレス化)、或いはオイル塗布量をごく微量とする方法が採用される傾向にある。
【0006】
一方、カラートナーにおいてもモノクロ同様マシンの小型化、構成の簡素化の目的でオイルレス化の傾向が見られている。しかし、前述したようにカラートナーでは色再現性を向上させるために定着画像の表面を平滑にする必要があるため溶融時の粘弾性を低下させねばならず、光沢のないモノクロトナーよりオフセットし易く、定着装置のオイルレス化や微量塗布化がより困難となる。また、トナー中に離型剤を含有させると、トナーの付着性が高まり転写紙への転写性が低下し、さらにトナー中の離型剤がキャリア等の摩擦帯電部材を汚染し帯電性を低下させることにより耐久性が低下するという問題を生じる。
【0007】
また、キャリアに関しては、画像形成をより速く、より美しくという要望は高まる一方で、近年のマシンの高速化に伴い、キャリアとトナーを含む現像剤が受けるストレスも飛躍的に増大しており、従来長寿命とされたキャリアにおいても充分な寿命が得られ難くなる一方である。
【0008】
更に、高画質化実現のためキャリアの小粒径化が進んでいるが、画質面では高精細な画像の形成に効果が大きいものの、副作用も多数生じさせている。その一つとして、高温高湿環境下での保存性の悪化がある。この高温高湿環境下での保存性は、特に高湿度環境下での保存性の悪化が著しく、現像剤の固化(キャリアとトナー、或いはキャリア同士、或いはトナー同士がくっ付き合って塊となる現象)という問題を生じさせている。例えば、新品の現像剤を現像ユニットにセットする場合、通常は新品の現像剤を詰めたケースから、現像ユニット側へ容易に落下移行するので、容易に現像ユニット内に現像剤を移すことができるが、固化した現像剤は容易に落下せず、現像ユニット内に現像剤が移らないので、まともに絵出しができないという問題が生じたり、現像ユニット内に現像剤が移ったとしても、固化した塊が現像剤中に残っている場合には、現像ローラー上の現像剤量を一定量に整える規制板にこの塊が引っかかることで、現像ローラー上に現像剤が汲み上がらない箇所が発生するため、異常画像が発生したりする。また、現像ユニット内で固化した場合や、最初から現像剤が現像ユニット内に投入されており現像剤を詰めたケースを持たない場合において、現像ユニット内の攪拌羽根により崩せないレベルまで固化が進むと、異常画像の発生や、駆動不可能といった不具合が生じる。
【0009】
この原因については、小粒径化に伴いキャリア、トナー共に比表面積が増加していることが一因として挙げられるが、それ以外にも低温定着化、オイルレス化の影響も多大であると考えられる。また、近年のマシンの小型化に伴う現像ユニットの小型化、レイアウト上の現像剤の落下のし難さが、現像剤が固化した場合に不具合を生じさせ易くしていることもあげられる。更に、市場の多様化に伴い、使用を保証する環境も従来に比べ広くする必要があり、現像剤にはより厳しい品質が求められていることも事実である。
【0010】
そして、この問題を解決させるために、特許文献1では、樹脂被覆キャリアを電気炉で焼成するに際して焼成温度を上げることで固化を改善する方法が提案されているが、焼成温度を上げることで被覆樹脂には黒味がかった色が生じるため、色汚れという問題が発生してしまう。
【0011】
このように、これまで生じることの無かった現像剤の固化は、今後重要な課題として認識されていくことになると考えられる。ちなみに、トナーの固化については、従来より認識されており、例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5などが挙げられるが、いずれもトナー単体についての問題であり、トナーとキャリアとからなる現像剤の固化についてのものではない。
【0012】
このような問題に対処するため、例えば、特許文献6、特許文献7では、キャリアの被覆層に膜よりも大きな粒子を含有させる電子写真用キャリアが提案されている。更に、特許文献8では、トナーとキャリアとを現像装置に補給するとともに、前記現像装置内の余剰となった現像剤を排出しながら現像を行う方法が提案されている。
【0013】
また、キャリアに関しては、画像形成をより速く、より美しくという要望は高まる一方で、近年のマシンの高速化に伴い現像時の現像ローラーの回転は高回転化が著しく、現像剤にかかる遠心力は高まる一方である。更に、高画質化に対しても同様で、キャリア及びトナーの小径化が著しい。
従って、高速化に伴う遠心力の増大に対しては、キャリアの磁化が同じであれば粒径の影響は無い(重量当りの磁化は同じ)が、高画質化に伴うトナー及びキャリアの小径化に対しては、小径化が進むに連れて重量当りの表面積が増えるため、磁化に対して帯電量が大きくなってしまう。即ち、キャリアは感光体からの電気的な力に対して弱くなってしまい、キャリア付着が生じ易くなってしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1〜8記載のものでは、その効果が不十分であり、現像剤のベタ画像部における初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着、耐固化性、耐色汚れ性については不十分であり問題である。
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、現像剤のベタ画像部における初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着が生じず、耐固化性が良好で、耐色汚れ性が良好な電子写真用キャリアの製造方法、キャリア、現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、少なくとも芯材と該芯材の表面に形成された被覆層とからなる電子写真用キャリアの製造方法において、被覆材料を被覆した芯材に高周波誘導加熱装置からの交番磁界により、芯材の損失(ヒステリシス損とうず電流損)のため芯材が加熱されることで、被覆材料を昇温させて架橋反応させることにより上記課題を解決することができることを見出して、本件発明を完成した。
すなわち、本件発明は以下に記載する通りのものである。
【0016】
(1)少なくとも、芯材と該芯材の表面に形成された被覆層とからなる電子写真用キャリアの製造方法であって、芯材に被覆材料を被覆する工程と被覆された材料を加熱処理する焼成工程とを含み、該焼成工程が、高周波誘導加熱装置によって芯材を高周波誘導加熱することによって被覆材料を昇温して加熱処理する工程であり、キャリア単位質量あたりの該高周波誘導加熱装置の電力Eが0.01〜2.5[kWh/kg]であることを特徴とする、電子写真用キャリアの製造方法。
但し、前記電力Eは下記式(1)で算出される値である。
E=W/M [kWh/kg] (1)
W:時間あたりの電力[kW]
M:時間あたりに処理されるキャリアの質量[kg/h]
(2)前記高周波誘導加熱装置の出力周波数が、10〜500kHzであることを特徴とする、(1)に記載の電子写真用キャリアの製造方法。
(3)前記高周波誘導加熱装置の出力電圧が、200〜1500Vであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の電子写真用キャリアの製造方法。
(4)前記高周波誘導加熱装置による焼成温度の保持時間が、0〜60minであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真用キャリアの製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、電子写真用キャリア。
(6)少なくとも(5)に記載の電子写真用キャリアとトナーとからなることを特徴とする、電子写真用現像剤。
(7)潜像担持体と、少なくとも現像手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、該現像手段は現像剤を保持し、該現像剤が(6)に記載の電子写真用現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキャリアの製造方法によれば、現像剤のベタ画像における初期キャリア付着及び経時のキャリア付着が生じず、耐固化性が良好で、耐色汚れ性が良好な電子写真用キャリアを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における高周波誘電加熱の一例の模式図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明について更に具体的に詳しく説明する。本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を続けてきた結果、少なくとも、芯材と該芯材の表面に形成された被覆層とからなる電子写真用キャリアの製造方法であって、芯材に被覆材料を被覆する工程と被覆された材料を加熱処理する焼成工程とを含み、該焼成工程が、高周波誘導加熱装置によって芯材を高周波誘導加熱することによって被覆材料を昇温して加熱処理する工程であり、キャリア単位質量あたりの該高周波誘導加熱装置の電力Eが0.01〜2.5[kWh/kg](E=W/M[kWh/kg]、W:時間あたりの電力[kW]、M:時間あたりに処理されるキャリアの質量[kg/h])であることにより改善効果が顕著であることが判った。
本発明におけるキャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力Eとは、例えば、時間あたりの電力W=5.0[kW]において、時間あたりに処理されるキャリアの質量M=6.25[kg/h]であるとき、E=W/M=5.0/6.25=0.80[kWh/kg]と計算できる値である。
【0020】
すなわち、高周波誘導加熱による焼成では、高周波電流が流れる導線から発生する交番磁界による芯材の損失(ヒステリシス損とうず電流損)により芯材が加熱されることで被覆膜中の残留溶剤の乾燥や、被覆材料の架橋反応が行われる。そのため、高周波誘導加熱ではキャリア一粒一粒の被覆層を内側から昇温できるので、残留溶剤の乾燥に対しては、内側から乾燥し始めることで溶剤が被覆層外へ抜け易く、残留溶剤の量を低く抑えることが可能となる。これに対し、従来の電気炉やロータリーキルン等の焼成機では、被覆材料を被覆した芯材の外側から熱をかけるため、被覆層は外側から乾燥や架橋反応が進むので、内側の残留溶剤が抜け難くなり結果として残留溶剤を低く抑えることが難しい。
【0021】
一方、被覆材料の架橋反応に対しても同様で、高周波誘導加熱による焼成では、キャリア一粒一粒の被覆層を内側から昇温できるので、全ての被覆層に同等の熱が入り、全てのキャリア粒子被覆層を均一な架橋反応状態にすることが可能となる。これに対し、従来の電気炉やロータリーキルン等の焼成機では、積層されたキャリア粒子の外側から熱をかけるため、熱源に対し近い側(外側)に配置されたキャリア粒子には所望の熱量がきっちりと入るが、熱源に対し遠い側(内側)に配置されたキャリア粒子には、熱が伝わり難く所望の熱量を入れることが出来ない。従って、キャリア全体での架橋具合のバラツキが大きく、全てのキャリア粒子被覆層を均一な架橋反応状態にすることが難しい。
【0022】
そして、この被覆層の残留溶剤や未架橋反応被覆材料は、保管時、特に高湿環境下における保管時の固化(キャリアとトナー、キャリア同士、トナー同士がくっ付き合って塊になる現象)に対して不利に働き、耐保管性を著しく低下させることになる。また、この耐保管性を向上させるために、従来では焼成温度を引き上げる手段をとっているが、この焼成温度を上げる手段は色汚れに対して不利に働く、特にフルカラーにおいてはおのずと限界が存在し、固化と色汚れの妥協点を選択するしかないというのが現状となっている。
【0023】
これに対して、本発明の高周波誘導加熱では、前述のとおり被覆層の乾燥や架橋反応を効率良く行えるため、乾燥では従来よりも低い焼成温度にて行うことが可能となる。また架橋反応も同様で、従来は積層されたキャリア層の内部の粒子にまで熱量を供給させるため、表面のキャリア粒子には過剰な熱量を与えていたが、高周波誘導加熱による均一加熱が可能となることで、従来よりも低い焼成温度にて焼成を行うことが可能となり、色汚れに対して有効である。
【0024】
また、高周波誘導加熱による焼成では、前述のように被覆樹脂の乾燥及び均一な架橋反応状態にすることができることで、粒子表面の帯電サイトを均一に形成できるため、粒子一粒上での場所による帯電量の均一性が向上することに加え、粒子間での帯電量の均一性も向上させることが出来、キャリア粒子としての帯電量分布をシャープにすることが出来る。これにより、極端に帯電量の高いキャリア粒子が存在しない為、現像時に感光体側へ電気的に引っ張られる粒子が無くなるので、初期でのベタ画像部におけるキャリア付着を改善することができる。
【0025】
さらに、高周波誘導加熱による焼成において、前述のように被覆樹脂の乾燥及び均一な架橋反応状態にすることができることで、強固な樹脂被覆膜が形成でき、粒子一粒上での場所による膜強度の均一性が向上することに加え、粒子間での膜強度の均一性も向上させることが出来る。従って、キャリア全体での膜強度を高いレベルで均一に出来るため、キャリアの耐摩耗性を向上することが出来る。
これにより、経時での抵抗低下に伴うベタ画像部におけるキャリア付着を改善することができる。
【0026】
該高周波誘導加熱装置の電力を高くすると、導線より発生する交番磁化が大きくなり、キャリアの昇温速度が速くなる。
しかし、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力Eが2.5[kWh/kg]を超えると高周波電流が流れる導線から発生する大きな交番磁界により、急激にキャリアが昇温することで、キャリアの磁化低下を引き起こす。磁化が低下したキャリアは、静電気力に反することができず、感光体に引き寄せられ、キャリア付着を引き起こす。キャリアの磁化低下の原因として、急激に昇温することにより芯材自体の組織が破壊され、磁化が低下したと考えられる。さらに、急激にキャリアが昇温し、被覆層へ大きな熱量(エネルギー)がかかることで、被覆層の着色による色汚れにも不利な方向となる。
【0027】
一方、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力Eが0.01[kWh/kg]未満であると高周波電流が流れる導線から発生する交番磁界は小さくなり、焼成温度まで昇温することができず、被覆材料の架橋反応が十分に進行しない。架橋反応が十分に進行しないため、初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着に不利である。
また、残留溶剤の乾燥性も悪く、耐固化性の悪化を引き起こすこととなる。特に、時間あたりの電力は、2〜350[kW]の範囲が好ましく、2〜200[kW]の範囲において更に好ましい。時間あたりの電力が2〜350[kW]の範囲は、高周波電流が流れる導線より発生する交番磁界が適切な値となる好ましい範囲であり、2〜200[kW]の範囲においてさらに好ましく、前述のように被覆樹脂の乾燥及び均一な架橋反応状態にすることができ、且つキャリアの磁化低下が発生しない範囲である。一方、時間あたりに処理されるキャリアの質量は、1.0〜400.0[kg/h]の範囲が好ましく、1.0〜100.0[kg/h]の範囲においてさらに好ましい。時間あたりに処理されるキャリアの質量が、1.0〜400.0[kg/h]の範囲は、キャリア全体における被覆材料の架橋具合のばらつきが小さくなる範囲であり、さらに1.0〜100.0[kg/h]の範囲において被覆材料の架橋具合のばらつきがより小さくなる。
【0028】
本発明における高周波誘導加熱とは、一般的に高周波誘導加熱、誘導加熱、電磁誘導加熱、IH(Induction Heating)等と呼ばれる加熱方法のことで、加熱原理は上述の通りであり、媒体を介さず直接金属を発熱させることができるため、エネルギー効率が非常に高い事が特徴として挙げられる。
図1は本発明における高周波誘導加熱の様子を模式的に示す図であり、高周波発信器3から供給される高周波電流をコイル4に流して交番磁場を発生させ、この磁場によって被覆材料2を被覆した芯材1が繰り返し磁化されることにより発熱し、この熱によって被覆材料を架橋反応させる。
【0029】
本発明における固化とは、キャリアとトナー、キャリア同士、トナー同士がくっ付き合って塊になる現象を言い、この現象は高温高湿環境下、特に高湿度環境下で著しい。また、この固化が進むと、例えば、現像ユニット内で現像剤が固化した場合には、現像ユニット内の攪拌により塊が崩せないレベルにまで固化が進むと、固化した塊が現像ローラー上の現像剤量を一定量に整える規制板に引っかかり、現像ローラー上に現像剤が汲み上がらない箇所が発生するため、白スジ等の異常画像が発生する。更に、固化が酷い場合には、現像ユニット内の攪拌力で現像剤が全く崩せない状況となり、駆動力不足で攪拌不可能という状況に陥ることにもなり得る。
【0030】
本発明における色汚れとは、現像ユニット内で現像剤が攪拌される際に、微量の被覆膜の削れが生じ、トナー側へ移行し画像中に混入することで、カラー画像がくすみ色再現範囲が狭くなるという不具合である。キャリアの被覆膜の削れは、非常に微量ながら色への影響力は大きく、特にイエロー画像への影響力が大きい。ここで注意しておきたい点は、従来の色汚れレベルと、本発明で言う色汚れレベルには大きな差があるという点である。
具体的に説明すると、近年の高速化に伴い現像剤へかかるストレスが飛躍的に増大しており、従来色汚れが許容されていたキャリアが、許容できなくなっている。更に、色への要求も年々厳しくなる一方で、従来許容されていた色汚れレベルが、近年許容できなくなっている。
【0031】
更に、前記高周波誘導加熱装置の出力周波数が、10〜500kHzであることにより改善効果が顕著であることが判った。一般に、高周波誘導加熱を含む電磁波を用いた加熱は、出力周波数が高くなるほど、電磁波のエネルギーが、被加熱物へ浸透しにくくなり、電磁波のエネルギーが被加熱物表面に集中する。例えば、高周波誘導加熱(3〜300MHz)より高い周波数であるマイクロ波加熱(1,000〜10,000MHz)の場合、薄い被加熱物の加熱には、被加熱物の昇温速度が速く、加熱効率に優れているが、積層されたキャリア粒子の均一加熱には、電磁波のエネルギーがキャリア粒子内部まで浸透することができず、薄い表層のキャリア粒子しか加熱されないため、キャリアの均一加熱性には不利である。さらに、高周波誘導加熱は、導体を加熱する誘導加熱であり、マイクロ波加熱は、不導体を加熱する誘電加熱であるため、導体であるキャリアを加熱する場合には、高周波誘導加熱のほうが効率的に加熱することができる。つまり、キャリアの焼成(加熱)において、出力周波数10〜500kHzの範囲は、キャリアの加熱効率性と均一加熱性の取れた好ましい周波数帯である。出力周波数が10kHz未満であると、焼成温度まで昇温することができず、被覆材料の架橋反応が十分に進行しない。さらに残留溶剤の乾燥性も悪く、耐固化性の悪化を引き起こすこととなる。一方、出力周波数が500kHzを超える場合、表層のキャリア粒子が顕著に加熱され、被覆材料を均一に架橋を促進させることができず、キャリア全体の架橋具合のばらつきが大きくなる。これにより、初期及び経時のキャリア付着に不利となる。
【0032】
更に、前記高周波誘導加熱装置の出力電圧が、200〜1500Vであることにより改善効果が顕著であることが判った。小さい出力電圧で緩やかに焼成温度まで昇温させる方法は、被覆材料中の残留溶剤の乾燥性に有利であることが判った。しかし、200V未満の出力電圧の場合、高周波電流が流れる導線から発生する交番磁界は小さくなり、前述のように焼成温度まで昇温することができず、被覆材料の架橋反応が十分に進行しない。架橋反応が十分に進行しないため、初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着に不利である。また、残留溶剤の乾燥性も悪く、耐固化性の悪化を引き起こすこととなる。
一方、1500Vを超える電圧の場合、前述のように高周波電流が流れる導線から発生する大きな交番磁界により、急激にキャリアが昇温することで、キャリアの磁化低下が発生し、キャリア付着を引き起こすこととなる。
【0033】
更に、前記高周波誘導加熱装置による焼成温度の保持時間が、0〜60minであることで改善効果が顕著であることが判った。被覆材料を架橋させるために必要な熱量(エネルギー)があり、焼成温度の保持時間を調整することにより、キャリアの被覆材料が架橋するための熱量(エネルギー)が与えられ、架橋反応を十分に行うことができる。被覆材料の架橋反応が十分に進行しないと、耐固化性の悪化を引き起こすこととなる。さらに、保持時間を与えることにより、キャリア全体の架橋具合のばらつきが小さくなるため、経時のキャリア付着に有利となる。しかし、保持時間が60minを越えるとキャリアの被覆層へ余剰に熱量(エネルギー)がかかり、被覆層の着色による色汚れの原因となる。
尚、焼成温度は被覆材料により適宜設定することができる。
【0034】
被覆材料としては、樹脂、樹脂の架橋剤、帯電制御剤、無機微粒子等が挙げられる。
本発明における被覆材料に用いる樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン、等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、等の弗素樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン/ウレア系樹脂、ポリエチレン系樹脂、テフロン(登録商標)系樹脂、等の各種熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂およびその混合物ならびに、これらの樹脂の共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体およびポリマーブレンド等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0035】
本発明では、樹脂の架橋剤として、アミノ樹脂を用いることが出来る。アミノ樹脂としては、全てのアミノ樹脂を用いることが可能であるが、グアナミン、メラミンを用いることで、帯電量付与能力が著しく向上する。また、ここで挙げた樹脂以外にも、キャリア用被覆樹脂として一般的に用いられているもの全てを使用することができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーポネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルフィン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリブチラール系樹脂、尿素系樹脂、ウレタン/ウレア系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、テフロン(登録商標)系樹脂等の各種熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂およびその混合物、ならびに、これらの樹脂の共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体およびポリマーブレンド等であるが、これらに限るものではない。
【0036】
前記帯電制御剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。例えば、シランカップリング剤としては、下記一般式で示される化合物である。
YRSiX3
但し、Xは、ケイ素原子に結合している加水分解基でクロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、アルキルアミノ基、プロペノキシ基などである。Yは、有機マトリックスと反応する有機官能基でビニル基、メタクリル基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基などである。Rは、炭素数1〜20のアルキル基またはアルキレン基である。
更に、シランカップリング剤の中でも、特に負帯電性を有する現像剤を得るにはYにアミノ基を有するアミノシランカップリング剤が好ましく、正帯電性を有する現像剤を得るにはYにエポキシ基を有するエポキシシランカップリング剤が好ましい。
【0037】
本発明では、被覆層中に粒子を含有することが出来る。例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズ等の無機酸化微粒子や、フェノール樹脂、メラミン樹脂のような有機樹脂微粒子等が挙げられ、これら例示に限定するものではない。更に、前記粒子基材の表面を、親水化処理、疎水化処理、低抵抗化処理などを施したものでも良く、これら例示に限定するものではない。また、粒径については特に制約はないが、長期に渡り粒子を保持させるためには、粒子が被覆層中に完全に入り込むか、或いは被覆層の平均厚みの3倍以内にすることが望ましく、好ましくは0.01〜1μm、更に好ましくは、15〜0.5μmであるが、これに限定するものではない。更に、粒子の含有率に関しては品質、被覆樹脂との兼ね合いがあるため一概に決め難いが、好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは40〜80重量%であるが、これに限定するものではない。
【0038】
本発明では、被覆液を芯材上に成膜し易くするために、希釈溶媒を用いることが出来る。この希釈溶媒を用いることで、被覆液の粘度を適正に制御できるだけではなく、乾燥速度や表面張力等も制御できるため、被覆層の成膜状態を任意に制御することが可能となる。また、希釈溶媒の種類については特に限定するものではなく、被覆液の種類や目的とする成膜状態より任意に選択すれば良いが、例えば、水、テトラヒドロフラン、メタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、イソパラフィン系炭化水素(IPソルベント、IPクリーン)、イソプロピルアルコール、ネオコールなどが有用であるが、これに限定するものではない。
【0039】
本発明のキャリア用芯材粒子としては、高周波誘導加熱により加熱されるもので、上記加熱原理より磁性を有する芯材もしくはうず電流が芯材中もしくは芯材間を流れるものである。例えば、電子写真用二成分キャリアとして公知のものとして、鉄、フェライト、マグネタイト、ヘマタイト、コバルト、鉄系、マグネタイト系、Mn−Mg−Sr系フェライト、Mn系フェライト、Mn−Mgフェライト、Li系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Ba系フェライト、等キャリアの用途、使用目的に合わせて適宜選択して用いればよく、上記例に限るものではない。また、キャリア用芯材粒子の粒径としては、特に制限されるものではないが、好ましくは10〜100[μm]、更に好ましくは20〜60[μm]である。
【0040】
次に本発明の電子写真用キャリアの製造方法の一例を述べる。
以下に記載する方法は数あるキャリアの製造方法の一例に過ぎず、本発明のキャリアの製造方法は以下の例示された方法に限定されるものではない。
まずは、キャリアの製造方法の大きな流れは、以下に記す通りである。
[原材料計量]⇒[被覆液分散]⇒[被覆層コーティング]⇒[焼成]⇒[解砕]
即ち、まず所望の割合に原材料を計量したものを、分散機により分散処理を行う。ここで用いる分散機としては、一般に用いられる分散機であれば何でも良く、例えばホモミキサー、羽根回転型分散機(エバラマイルダー、キャビトロン、等)、ビーズミル等が挙げられ、原材料処方に適した分散機を適宜用いれば良い。こうして得た分散液を、芯材表面へコーティング装置により被覆を行う。ここで用いるコーティング装置としては、一般に用いられるコーティング装置であれば何でも良く、例えばスプレーを用いた転動流動層や、分散液中に芯材を浸漬させ溶媒を乾燥させる方法などが挙げられる。そして、このコーティングがされた粒子の被覆層を乾燥や架橋反応を進めるため、焼成を行う。ここで用いる焼成装置としては、高周波誘導加熱装置を用いて、特定の条件で焼成を行う。最後に、焼成により凝集した粒子を解すため解砕を行う。ここで用いる解砕装置としては、粒子が1粒に解れれば何でも良いが、一般的には篩装置を用いることが多く、例えば、振動篩や超音波振動篩等が挙げられる。更に、この篩装置を用いる場合には、粒子の凝集を解すだけではなく、粗大粒子の除去や異物の除去も同時に行うことも可能となるため、非常に効率が良い。
このようにして得られた粒子が、本発明で言うキャリア粒子であるが、ここではその製造方法の1つを例示しただけで、ここに記した内容に限定するものではない。
【0041】
本発明の現像剤は本発明のキャリアとトナーとを含有する。
本発明で言うカラー用トナーとは、一般的にカラー単色で用いられるカラートナーだけではなく、フルカラー用として用いられるイエロー、マゼンダ、シアン、レッド、グリーン、ブルーなどに加え、ブラックトナーも含まれる。更に、本発明でいうトナーとは、モノクロトナー、カラートナー、フルカラートナーを問わず、一般的にいうトナーを用いることができる。例えば、従来より用いられている混練粉砕型のトナーや、近年用いられるようになってきた多種の重合トナーなどが挙げられる。
【0042】
更に、離型剤を含有するトナー、いわゆるオイルレストナーも用いることができる。一般的に、オイルレストナーは離型剤を含有するため、この離型剤がキャリア表面に移行するいわゆるスペントが生じやすいが、本発明のキャリアは耐スペント性が優れているため、長期にわたり良好な品質を維持できる。特にオイルレスフルカラートナーにおいては、結着樹脂が軟らかいため一般的にスペントし易いと言われるが、本発明のキャリアは非常に向いていると言える。
【0043】
本発明に係るトナーに用いる結着樹脂としては、公知のものが使用できる。例えばポリスチレン、ポリ−p−スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸共重合隊、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプロピル共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリチメルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが単独であるいは混合して使用できる。
【0044】
さらに、圧力定着用結着樹脂としては、公知のものを混合して使用できる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等のオレフィン共重合体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸、マレイン酸変性フェノール樹脂、フェノール変性テルペン樹脂などが単独あるいは混合して使用でき、これらに限られるものではない。
【0045】
また、本発明で用いるトナーには、上記結着樹脂、着色剤、帯電制御剤の他に、離型剤を含有することもできる。これにより、定着ロールにトナー固着防止用オイルを塗布しない定着システム、いわゆるオイルレスシステムにおいても使用できる。離型剤としては、公知のものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、アミド系ワックス、多価アルコールワックス、シリコーンワニス、カルナウバワックス、エステルワックス等が使用でき、これらに限られるものではない。
【0046】
本発明のカラートナー等のトナーに用いられる着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色のトナーを得ることが可能な公知の顔料や染料が使用でき、ここで挙げるものに限らない。例えば、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。
【0047】
橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGKが挙げられる。
【0048】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bが挙げられる。
【0049】
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBCが挙げられる。
【0050】
緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、等がある。
黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物が挙げられる。
また、これら着色剤は1種または2種以上を使用することができる。
【0051】
本発明のカラートナー等のトナーには必要に応じ帯電制御剤をトナー中に含有させることができる。例えば、ニグロシン、炭素数2〜16のアルキル基を含むアジン系染料(特公昭42−1627号公報参照)、塩基性染料(例えばC.I.Basic Yello 2(C.I.41000)、C.I.Basic Yello 3、C.I.Basic Red 1(C.I.45160)、C.I.BasicRed 9(C.I.42500)、C.I.Basic Violet 1(C.I.42535)、C.I.Basic Violet 3(C.I.42555)、C.I.Basic Violet 10(C.I.45170)、C.I.Basic Violet 14(C.I.42510)、C.I.Basic Blue 1(C.I.42025)、C.I.Basic Blue 3(C.I.51005)、C.I.Basic Blue 5(C.I.42140)、C.I.Basic Blue 7(C.I.42595)、C.I.Basic Blue 9(C.I.52015)、C.I.Basic Blue 24(C.I.52030)、C.I.Basic Blue25(C.I.52025)、C.I.Basic Blue 26(C.I.44045)、C.I.Basic Green 1(C.I.42040)、C.I.Basic Green 4(C.I.42000)など、これらの塩基性染料のレーキ顔料、C.I.Solvent Black 8(C.I.26150)、ベンゾイルメチルヘキサデシルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルクロライド、等の4級アンモニウム塩、或いはジブチル又はジオクチルなどのジアルキルスズ化合物、ジアルキルスズボレート化合物、グアニジン誘導体、アミノ基を含有するビニル系ポリマー、アミノ基を含有する縮合系ポリマー等のポリアミン樹脂、特公昭41−20153号公報、特公昭43−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報に記載されているモノアゾ染料の金属錯塩、特公昭55−42752号公報、公昭59−7385号公報に記載されているサルチル酸、ジアルキルサルチル酸、ナフトエ酸、ジカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、有機ホウ素塩類、含フッ素四級アンモニウム塩、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。ブラック以外のカラートナーは、当然目的の色を損なう荷電制御剤の使用は避けるべきであり、白色のサリチル酸誘導体の金属塩等が好適に使用される。
【0052】
外添剤については、シリカや酸化チタン、アルミナ、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素等の無機微粒子や樹脂微粒子を母体トナー粒子に外添することにより転写性、耐久性をさらに向上させている。転写性や耐久性を低下させるワックスをこれらの外添剤で覆い隠すこととトナー表面が微粒子で覆われることによる接触面積が低下することによりこの効果が得られる。これらの無機微粒子はその表面が疎水化処理されていることが好ましく、疎水化処理されたシリカや酸化チタン、といった金属酸化物微粒子が好適に用いられる。樹脂微粒子としては、ソープフリー乳化重合法により得られた平均粒径0.05〜1μm程度のポリメチルメタクリレートやポリスチレン微粒子が好適に用いられる。
【0053】
さらに、疎水化処理されたシリカ及び疎水化処理された酸化チタンを併用し、疎水化処理されたシリカの外添量より疎水化処理された酸化チタンの外添量を多くすることにより湿度に対する帯電の安定性にも優れたトナーとすることができる。上記の無機微粒子と併用して、比表面積20〜50m2/gのシリカや平均粒径がトナーの平均粒径の1/100〜1/8である樹脂微粒子のように従来用いられていた外添剤より大きな粒径の外添剤をトナーに外添することにより耐久性を向上させることができる。
【0054】
これはトナーが現像装置内でキャリアと混合・攪拌され帯電し現像に供される過程でトナーに外添された金属酸化物微粒子は母体トナー粒子に埋め込まれていく傾向にあるが、これらの金属酸化物微粒子より大きな粒径の外添剤をトナーに外添することにより金属酸化物微粒子が埋め込まれることを抑制することができるためである。
【0055】
上記した無機微粒子や樹脂微粒子はトナー中に含有(内添)させることにより外添した場合より効果は減少するが転写性や耐久性を向上させる効果が得られるとともにトナーの粉砕性を向上させることができる。また、外添と内添を併用することにより外添した微粒子が埋め込まれることを抑制することができるため優れた転写性が安定して得られるとともに耐久性も向上する。
【0056】
なお、ここで用いる疎水化処理剤の代表例としては以下のものが挙げられる。ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、p−クロルフェニルトリクロルシラン、3−クロルプロピルトリクロルシラン、3−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルジクロルシラン、ジメチルビニルクロルシラン、オクチル−トリクロルシラン、デシル−トリクロルシラン、ノニル−トリクロルシラン、(4−t−プロピルフェニル)−トリクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)−トリクロルシラン、ジベンチル−ジクロルシラン、ジヘキシル−ジクロルシラン、ジオクチル−ジクロルシラン、ジノニル−ジクロルシラン、ジデシル−ジクロルシラン、ジドデシル−ジクロルシラン、ジヘキサデシル−ジクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)−オクチル−ジクロルシラン、ジオクチル−ジクロルシラン、ジデセニル−ジクロルシラン、ジノネニル−ジクロルシラン、ジ−2−エチルヘキシル−ジクロルシラン、ジ−3,3−ジメチルベンチル−ジクロルシラン、トリヘキシル−クロルシラン、トリオクチル−クロルシラン、トリデシル−クロルシラン、ジオクチル−メチル−クロルシラン、オクチル−ジメチル−クロルシラン、(4−t−プロピルフェニル)−ジエチル−クロルシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ジエチルテトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等。この他チタネート系カップリング剤、アルミニューム系カップリング剤も使用可能である。この他、クリーニング性の向上等を目的とした外添剤として、脂肪酸金属塩やポリフッ化ビニリデンの微粒子等の滑剤等も併用可能である。
【0057】
本発明におけるトナーの製造には粉砕法、重合法など従来公知の方法が適用できる。例えば粉砕法の場合、トナーを混練する装置としては、バッチ式の2本ロール、バンバリーミキサーや連続式の2軸押出し機、例えば神戸製鋼所社製KTK型2軸押出し機、東芝機械社製TEM型2軸押出し機、KCK社製2軸押出し機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出し機、栗本鉄工所社製KEX型2軸押出し機や、連続式の1軸混練機、例えばブッス社製コ・ニーダ等が好適に用いられる。
【0058】
以上により得られた溶融混練物は冷却した後粉砕されるが、粉砕は、例えば、ハンマーミルやロートプレックス等を用いて粗粉砕し、更にジェット気流を用いた微粉砕機や機械式の微粉砕機などを使用することができる。粉砕は、平均粒径が3〜15μmになるように行うのが望ましい。さらに、粉砕物は風力式分級機等により、5〜20μmに粒度調整されることが好ましい。
【0059】
次いで、外添剤の母体トナーへ外添が行われるが、母体トナーと外添剤をミキサー類を用い混合・攪拌することにより外添剤が解砕されながらトナー表面に被覆される。この時、無機微粒子や樹脂微粒子等の外添剤が均一にかつ強固に母体トナーに付着させることが耐久性の点で重要である。以上はあくまでも例でありこれに限るものではない。
【0060】
本発明の現像剤において、前記キャリアの現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90〜98質量%が好ましく、93〜97質量%がより好ましい。
【0061】
図2に、本発明のプロセスカートリッジの構成を示す。図2において、プロセスカートリッジは、潜像担持体(感光体)、帯電手段、現像手段、クリーニング手段を有している。
本発明においては、上述の潜像担持体、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段等の構成要素のうち、少なくとも潜像担持体および現像手段をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やプリンター等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成する。このとき、現像装置においては、本発明の現像剤を用いて現像が行われる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明について実施例及び比較例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1〕
・アクリル樹脂溶液(固形分率;50質量%) 70質量部
・グアナミン溶液(固形分率;70質量%) 20質量部
・酸性触媒(固形分率;40質量%) 1質量部
・シリコーン樹脂溶液(固形分率;20質量%) 350質量部
・アミノシラン(固形分率;100質量%) 5質量部
・導電処理酸化チタン粒子(表面;ITO処理,1次粒子径;50nm,
体積固有抵抗;1.0×102Ω・cm) 165質量部
・トルエン 700質量部
を、ホモミキサーで10分間分散して、被覆層形成用溶液を調製した。
【0064】
次に、芯材粒子として平均粒径;35μm焼成フェライト粉[DFC−400M(Mnフェライト,DOWAIPクリエイション株式会社製)]を用い、上記被覆膜形成溶液を芯材粒子表面に膜厚0.3μmになるように、スピラコーター(岡田精工社製)によりコーター内温度60℃で塗布し乾燥した。
【0065】
得られたコート上がりキャリアを、中空導線直径6mmの3巻コイル内側に静置させ、時間あたりの電力W=40.0[kW]、時間あたりに処理されるキャリアの質量M=50.0[kg/h]にすることで、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=0.80[kWh/kg]、出力周波数480[kHz]、出力電圧220[V]を該導線に流し、品温160℃、保持時間0分の焼成を行った。なお、中空導線は肉厚が1mmで内径が4mmであり、導線内に流れる高周波誘導電流により導線が昇温するため、この熱を冷却させるために導線内部に冷却水を流した。また、高周波誘導電流の発信機には、AMBRELL製のEKOHEATを用いた。こうして焼成を行ったキャリアを冷却後、目開き63μmの篩を用いて解砕し、[キャリア1]を得た。
【0066】
一方、トナーは、
・結着樹脂:ポリエステル樹脂 100質量部
・離型剤:カルナウバワックス 5質量部
・帯電制御剤:E−84[オリエント化学工業社製] 1質量部
・着色剤:C.I.P.Y.180 8質量部
上記材料のうち、着色剤と結着樹脂及び純水を1:1:0.5の割合で、混合し、2本ロールにより混練した。混練を70℃で行い、その後ロール温度を120℃まで上げて、水を蒸発させマスターバッチを予め作製した。こうして得たマスターバッチを使用して、上記処方と同じになるように材料を計量し、ヘンシェルミキサーにより混合し、2本ロールで120℃で40分溶融混練し、冷却後、ハンマーミルで粗粉砕後、エアージェット粉砕機で微粉砕し得られた微粉末を分級して重量平均粒径5μmのトナー母体粒子を作った。
【0067】
さらに、このトナー母体100部に対し、表面を疎水化処理したシリカ:1部、表面を疎水化処理した酸化チタン:1部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することでイエロートナーである[トナー1]を得た。
こうして得た[トナー1]7質量部と[キャリア1]93質量部を混合攪拌し、トナー濃度7質量%の現像剤を調製した。
【0068】
〔実施例2〕
実施例1において、時間あたりに処理されるキャリアの質量M=50.0[kg/h]は同様にし、時間あたりの電力をW=1.50[kW]に変えることより、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=0.03[kWh/kg]に変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア2]を得た。こうして得た[キャリア2]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔実施例3〕
実施例1において、時間あたりに処理されるキャリアの質量M=50.0[kg/h]は同様にし、時間あたりの電力をW=115[kW]に変えることより、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=2.30[kWh/kg]に変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア3]を得た。こうして得た[キャリア3]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
【0069】
〔実施例4〕
実施例1において、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=0.80[kWh/kg]は同様にし、出力周波数5.0[kHz]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア4]を得た。こうして得た[キャリア4]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔実施例5〕
実施例1において、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=0.80[kWh/kg]は同様にし、出力周波数30.0[kHz]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア5]を得た。こうして得た[キャリア5]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
【0070】
〔実施例6〕
実施例1において、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=0.80[kWh/kg]は同様にし、出力周波数520.0[kHz]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア6]を得た。こうして得た[キャリア6]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
【0071】
〔実施例7〕
実施例1において、出力電圧を180[V]へ変更したことにより、時間あたりの電力W=32.7[kW]となったため、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力を同様のE=0.80[kWh/kg]にするため、時間あたりに処理されるキャリアの質量をM=40.9[kg/h]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア7]を得た。こうして得た[キャリア7]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔実施例8〕
実施例1において、出力電圧を1480[V]へ変更したことにより、時間あたりの電力W=269[kW]となったため、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力を同様のE=0.80[kWh/kg]にするため、時間あたりに処理されるキャリアの質量をM=336[kg/h]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア8]を得た。こうして得た[キャリア8]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔実施例9〕
実施例1において、出力電圧を1520[V]へ変更したことにより、時間あたりの電力W=276[kW]となったため、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力を同様のE=0.80[kWh/kg]にするため、時間あたりに処理されるキャリアの質量をM=345[kg/h]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア9]を得た。こうして得た[キャリア9]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
【0072】
〔実施例10〕
実施例1において、保持時間を50[min]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア10]を得た。こうして得た[キャリア10]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔実施例11〕
実施例1において、保持時間を70[min]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア11]を得た。こうして得た[キャリア11]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔実施例12〕
実施例1において、保持時間を30[min]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア12]を得た。こうして得た[キャリア12]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
【0073】
〔実施例13〕
実施例1において、品温200℃、被覆層形成用溶液処方が以下に変更になったこと以外は同様にしてキャリア化し、 [キャリア13]を得た。こうして得た[キャリア13]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
・シリコーン樹脂溶液(固形分率;20質量%) 597質量部
・アミノシラン(固形分率;100質量%) 5質量部
・導電処理酸化チタン粒子(表面;ITO処理,1次粒子径;50nm,
体積固有抵抗;1.0×102Ω・cm) 165質量部
・トルエン 700質量部
〔実施例14〕
実施例1において、品温180℃、被覆層形成用溶液処方が以下に変更になったこと以外は同様にしてキャリア化し、 [キャリア14]を得た。こうして得た[キャリア14]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
・アクリル樹脂溶液(固形分率;50質量%) 169質量部
・グアナミン溶液(固形分率;70質量%) 48質量部
・酸性触媒(固形分率;40質量%) 2.5質量部
・アミノシラン(固形分率;100質量%) 5質量部
・導電処理酸化チタン粒子(表面;ITO処理,1次粒子径;50nm,
体積固有抵抗;1.0×102Ω・cm) 165質量部
・トルエン 700質量部
【0074】
〔比較例1〕
実施例1において、時間あたりに処理されるキャリアの質量M=50.0[kg/h]は同様にし、時間あたりの電力をW=0.40[kW]に変えることより、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=0.008[kWh/kg]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア15]を得た。こうして得た[キャリア15]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔比較例2〕
実施例1において、時間あたりに処理されるキャリアの質量M=50.0[kg/h]は同様にし、時間あたりの電力をW=135[kW]に変えることより、キャリア単位質量あたりの高周波誘導加熱装置の電力E=2.70[kWh/kg]へ変更したこと以外は同様にしてキャリア化し、[キャリア16]を得た。こうして得た[キャリア16]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
【0075】
〔比較例3〕
実施例1において、焼成方法が高周波誘導加熱をマイクロ波加熱に変更し、マイクロ波加熱装置(ミクロ電子株式会社製マイクロ波バッチ式オーブン)にてキャリア単位質量あたりのマイクロ波加熱装置の電力E=0.08[kWh/kg]、出力周波数2450[MHz]、出力電圧220[V]、品温160℃で焼成した。その後は、実施例1と同様にキャリア化し、[キャリア17]を得た。こうして得た[キャリア17]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔比較例4〕
実施例1において、焼成方法が高周波誘導加熱を電気炉に変更し、電気炉中にて品温160℃で60[min]放置して焼成した。その後は、実施例1と同様にキャリア化し、[キャリア18]を得た。こうして得た[キャリア18]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
〔比較例5〕
実施例1において、焼成方法が高周波誘導加熱を電気炉に変更し、電気炉中にて品温180℃で60[min]放置して焼成した。その後は、実施例1と同様にキャリア化し、[キャリア19]を得た。こうして得た[キャリア19]と[トナー1]を用い、実施例1と同様の方法により現像剤を作製した。
【0076】
上記実施例1〜14及び比較例1〜5で調製された現像剤を使用して、現像剤のベタ画像部における初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着、耐固化性、耐色汚れ性の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
なお実施例及び比較例で得たキャリアの物性値の測定方法及びキャリアの上記評価項目に関する評価方法は下記に従った。
【0077】
〔初期のキャリア付着評価方法〕
市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、imagio MP C5000)改造機に現像剤をセットし、初期の現像剤のベタキャリア付着を評価した。評価方法は、上記複写機を用いて、地肌ポテンシャルを150Vに固定し、A3用紙全面のベタ画像を、現像剤セット後の1枚目から10枚目まで連続で現像・定着した。こうして得られたベタ画像をルーペで観察することにより、白抜け個所の個数、及び実際に付着しているキャリアの個数をカウントし、その総数をその画像のキャリア付着個数とした。更に、評価した画像10枚の総数の平均を、この現像剤における初期のキャリア付着個数とし、その個数が0個である場合を◎、1〜7個である場合を○、8〜15個である場合を△、16個以上である場合を×として判定し、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
【0078】
〔経時のキャリア付着評価方法〕
市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、imagio MP C5000)改造機に現像剤をセットし、単色による300,000枚のランニング評価を行った。そして、このランニングを終えた現像剤のベタキャリア付着を評価した。
ベタ画像のキャリア付着評価方法については、上記複写機を用いて、地肌ポテンシャルを150Vに固定し、A3サイズ用紙に全面ベタ画像を現像し、ルーペで観察することにより評価した。画像上の白抜け個所の個数及び実際に付着しているキャリアの個数の総数が0個である場合を◎、1〜5個である場合を○、6〜10個である場合を△、11個以上である場合を×として判定し、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
【0079】
〔耐固化性評価方法〕
現像ユニット内の現像剤の固化具合を確認するため、A4ハーフトーンベタ画像により評価する。固化具合が悪い場合は、現像部ドクターブレードの後ろに現像剤の塊が詰まり、画像中にスジが生じ欠陥画像となるため、この程度を以下に示すランク付けを行った。
評価方法は、市販のデジタルフルカラープリンター(リコー社製IPSiO CX 8200)の改造現像ユニットの現像剤ホッパーに、攪拌部へ現像剤が落ちないようにシールをした状態で現像剤をセットし、マシン本体にセットした状態で、55℃、95%RHの環境試験室に投入し48時間の保存を行った。注意点としては、環境試験室に投入の際には結露させないために、温湿度を徐々に上げながら55℃、95%RHに調整する必要がある。そして、48時間の保管が終了したら、常温環境下に取り出し2時間以上放置させて常温湿度に戻した。この際の注意点としては、現像ユニットに振動を与えてはならない。理由は、振動は固化した物をほぐすことになるので、評価結果に大きく影響を与える為である。
【0080】
こうして高温高湿保管された現像剤の固化度合いを評価する為、現像ユニットに装着されている、現像剤ホッパーと現像ユニット攪拌部を仕切っているシールを引き抜き、現像剤を攪拌部へと落下させる。もし固化していなければ、現像剤はスムーズに落下し攪拌部へ移行するが、固化がひどい場合には、現像剤の落下が無く攪拌部への移行が無い状態となる。この状態でマシンの初期設定を実施した後に、A4ハーフトーンベタ画像を出力し、画像の状態から以下のとおりランク分けした。
◎ : 初期剤設定ができ、良好なハーフトーン画像
○ : 初期剤設定は可能だが、スジがうっすら確認できる
□ : 初期剤設定は可能だが、スジがはっきり確認できる
△ : 現像剤の落下が少なく初期設定不能で実用上使用できないレベル
× : 現像剤の落下が無く初期設定不能で実用上使用できないレベル
◎、○、□を合格とし、△、×を不合格とした。
【0081】
〔耐色汚れ性評価方法〕
市販のデジタルフルカラープリンター(株式会社リコー製、imagio MP C5000)改造機の現像ユニットに現像剤をセットし、現像ユニット単独で1時間攪拌を実施。こうして得た現像剤を現像及び定着を行い、画像濃度が1.5となる箇所のCIE表色系のL*1、a*1、b*1値を求める。なお、CIE表色系のL*1、a*1、b*1値の測定は、X−Rite社製の分光濃度計である、X−Rite938により行った。一方、色汚れのない画像を得るために、キャリアと接触させることなくトナー単独で画像化(定着を含む)したものを作成し、前記と同様に画像濃度が1.5となる箇所のCIE表色系のL*0、a*0、b*0値を求める。こうして得た2つの画像の色差ΔEを下式により求め、ΔE≦0.5を◎、0.5<ΔE≦1.25を○、1.25<ΔE≦2.00を△、ΔE>2.0を×とし、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
【数1】

【0082】
【表1】

【0083】
表1で示す評価結果から、本発明による実施例1〜14による現像剤は、比較例1〜5と比較して現像剤のベタ画像部における初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着、耐固化性、耐色汚れ性が良好になることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の電子写真用キャリアはトナーと組み合わせて現像剤として用いた場合に、現像剤のベタ画像部における初期のキャリア付着及び経時のキャリア付着が生じず、耐固化性が良好で、耐色汚れ性が良好であるため、静電潜像をトナー像化するために使用される電子写真用キャリアとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 芯材
2 被覆層
3 高周波発信器
4 コイル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2006−154453号公報
【特許文献2】特公平02−051177号公報
【特許文献3】特開平09−304959号公報
【特許文献4】特開平09−329910号公報
【特許文献5】特開2001−312093号公報
【特許文献6】特開2007−102159号公報
【特許文献7】特開2008−70837号公報
【特許文献8】特開2007−286078号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、芯材と該芯材の表面に形成された被覆層とからなる電子写真用キャリアの製造方法であって、芯材に被覆材料を被覆する工程と被覆された材料を加熱処理する焼成工程とを含み、該焼成工程が、高周波誘導加熱装置によって芯材を高周波誘導加熱することによって被覆材料を昇温して加熱処理する工程であり、キャリア単位質量あたりの該高周波誘導加熱装置の電力Eが0.01〜2.5[kWh/kg]であることを特徴とする、電子写真用キャリアの製造方法。
但し、前記電力Eは下記式(1)で算出される値である。
E=W/M [kWh/kg] (1)
W:時間あたりの電力[kW]
M:時間あたりに処理されるキャリアの質量[kg/h]
【請求項2】
前記高周波誘導加熱装置の出力周波数が、10〜500kHzであることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真用キャリアの製造方法。
【請求項3】
前記高周波誘導加熱装置の出力電圧が、200〜1500Vであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子写真用キャリアの製造方法。
【請求項4】
前記高周波誘導加熱装置による焼成温度の保持時間が、0〜60minであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用キャリアの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、電子写真用キャリア。
【請求項6】
少なくとも請求項5に記載の電子写真用キャリアとトナーとからなることを特徴とする、電子写真用現像剤。
【請求項7】
潜像担持体と、少なくとも現像手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、該現像手段は現像剤を保持し、該現像剤が請求項6に記載の電子写真用現像剤であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−173471(P2012−173471A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34567(P2011−34567)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】