説明

電子写真用トナー、及び該トナーを用いた現像剤、画像形成装置

【課題】結着樹脂としてポリ乳酸骨格有する樹脂を用いた場合においても、長期の高温保存で固着すること無しに、より低温で定着し得る電子写真用トナーを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも昇温速度5℃/分での示差走査熱量計におけるガラス転移温度が二箇所Tg1およびTg2に観察される結着樹脂を含有し、Tg1は−20℃〜20℃、Tg2は35℃〜65℃の範囲であって、それぞれのガラス転移に伴うベースラインの差h1およびh2の比率h1/h2が1.0未満であり、該結着樹脂のタッピングモードAFMによって観察される位相像において、位相像を、該位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理した二値化像において、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像と、位相差の小さい部位からなる第二の位相差像とを有し、前記第一の位相差像が前記第二の位相差像中に分散された構造をとる電子写真用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の静電複写プロセスの画像形成に用いられるトナー及び現像剤、並びにこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真装置、静電記録装置等において、電気的又は磁気的潜像は、トナーによって顕像化されている。例えば、電子写真法では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成し、次いで、トナーを用いて該潜像を現像して、トナー画像を形成している。トナー画像は、通常、紙等の転写材上に転写され、次いで、加熱等の方法で定着させている。
【0003】
トナーの構成成分の70%以上を占めるバインダーレジンに関しては、そのほとんどが石油資源を原料としており、石油資源の将来枯渇への問題、石油資源を大量消費することによる二酸化炭素を大気中へ排出することによる温暖化問題が懸念されている。そこで、大気中の二酸化炭素を取り込んで成長する植物を原料とする環境循環型高分子をトナーバインダーとして使用できれば、それによって生じる二酸化炭素は環境中で循環するだけとなり、地球温暖化の抑制と石油資源の枯渇の問題を同時に満たす可能性がある。このことから植物資源を原料とするポリマー(バイオマス)に注目が集まっている。
【0004】
このような植物由来の樹脂をトナーバインダーに用いる検討としては、例えば、特許文献1では、ポリ乳酸を結着樹脂として使用することが提案されている。ポリ乳酸は植物資源を原料とするポリマーとして汎用で入手しやすく、特許文献2及び3に記載されているように、乳酸モノマーの脱水縮合、もしくは乳酸環状ラクチドの開環重合によって合成される。しかし、ポリ乳酸をそのままトナーに用いた場合、ポリエステル樹脂に比べてエステル基濃度が高く、エステル結合を介する分子鎖が炭素原子のみであることから、トナーに必要な物性をポリ乳酸のみで達成することは困難である。
【0005】
この問題に対しては、ポリ乳酸とそれ以外の第2の樹脂を混合すること、もしくは共重合させることで、トナーに必要な物性、及び熱特性を確保することが考えられる。例えば熱特性を改良するため、特許文献4では、ポリ乳酸系生分解樹脂に低分子量成分として、テルペンフェノール共重合体を含有することが提案されている。しかし、この提案は、低温定着性とホットオフセット性を同時に満足するものではなく、ポリ乳酸系樹脂をトナーに実用化するには至っていない。さらに、ポリ乳酸の場合トナーに汎用的に用いられるポリエステル樹脂やスチレン−アクリル共重合体との相溶性や分散性が極めて悪く、他の樹脂を併用した場合に保存性・帯電性・流動性といったトナーの重要な特性を担う最表面の組成を制御することが非常に困難になる。
【0006】
共重合化によって上記課題の解決を試みた例としては、ポリ乳酸のD/L比率を規定したポリ乳酸骨格以外のポリエステル樹脂とのブロック共重合樹脂が特許文献5にて報告されている。しかしながら、電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、熱定着方式においてトナーを加熱することに消費されているため、低消費電力の定着装置だけでなく、低温定着できるトナーへの市場要求は近年さらに高まっている。この要求に対して、特許文献5記載の方式によるトナーでは満足のいく特性が得られるわけではなく、植物資源を原料とするポリマーといえども、さらに低温定着性への改善が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、結着樹脂としてポリ乳酸骨格を有する樹脂を用いた場合においても、長期の高温保存で固着すること無しに、より低温で定着し得る電子写真用トナーおよび現像剤、並びに該現像剤を用いる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはかかる課題に鑑み、トナーを構成するポリエステル樹脂の熱特性、及び相分離構造を精密に制御された樹脂を用いることで、上記課題が解決されることを知見した。
本発明は、前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
(1)昇温速度5℃/分での示差走査熱量計におけるガラス転移温度がTg1およびTg2の二箇所に観察される結着樹脂を含有するトナーであって、Tg1は−20℃〜20℃の範囲であり、Tg2は35℃〜65℃の範囲であって、それぞれのガラス転移に伴うベースラインの差h1およびh2の比率h1/h2が1.0未満であり、かつ、該結着樹脂のタッピングモードAFMによって観察される位相像を、該位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理した二値化像において、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像と、位相差の小さい部位からなる第二の位相差像とを有し、前記第一の位相差像が前記第二の位相差像中に分散された構造をとることを特徴とする電子写真用トナー。
(2)前記位相差の大きい部位からなる第一の位相差像の分散相における最大フェレ径の平均が100nm未満であることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真用トナー。
(3)前記結着樹脂がポリエステル骨格を有し、少なくとも、ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰返し構造に有するポリエステル骨格Aと、ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まない骨格Bとを、ブロック共重合させてなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真用トナー。
(4)前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まない骨格Bがヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まないポリエステルであり、該ポリエステルが分岐構造を有することを特徴とする前記(3)に記載の電子写真用トナー。
(5)前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まないポリエステルの酸成分において、三価以上の多価カルボン酸が1.5mol%以上含有されてなることを特徴とする前記(4)に記載の電子写真用トナー。
(6)前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰返し構造に有するポリエステル骨格Aが、L−ラクチドとD−ラクチドの混合物を開環重合して得られたものであることを特徴とする前記(3)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(7)前記結着樹脂における骨格Bの質量比率が25%以上50%以下であることを特徴とする前記(3)〜(6)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(8)前記結着樹脂における骨格Bの数平均分子量Mn(B)が3000以上5000以下であることを特徴とする前記(3)〜(7)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(9)前記結着樹脂の数平均分子量Mnが20000以下であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電子写真用トナーを含むことを特徴とする現像剤。
(11)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記現像剤が、前記(10)に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、結着樹脂としてポリ乳酸骨格を有する樹脂を用いた場合においても、長期の高温保存で固着すること無しに、より低温で定着し得る電子写真用トナーおよび現像剤、並びに該現像剤を用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における代表的な結着樹脂の2nd Heatingのサーモグラムと、そのときのTg1、Tg2、h1、h2を示すグラフである。
【図2】実施例1で用いた結着樹脂1のタッピングモードAFMによる位相像である。
【図3】実施例1で用いた結着樹脂1のタッピングモードAFMによる位相像の二値化像である。
【図4】比較例3で用いた結着樹脂11のタッピングモードAFMによる位相像である。
【図5】本発明に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略説明図である。
【図6】本発明の画像形成装置一の例を示す概略説明図である。
【図7】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略説明図である。
【図8】本発明の画像形成装置に係るタンデム型カラー画像形成装置の一例を示す概略説明図である。
【図9】図8に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(トナー)
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明に係るトナー用結着樹脂は、有機溶剤に可溶な結着樹脂であって、少なくとも昇温速度5℃/分での示差走査熱量計におけるガラス転移温度がTg1およびTg2の二箇所に観察され、Tg1は−20℃〜20℃の範囲であり、Tg2は35℃〜65℃の範囲であって、それぞれのガラス転移に伴うベースラインの差h1およびh2の比率h1/h2が1.0未満であり、かつ、結着樹脂のタッピングモードAFMによって観察される位相像を、該位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理した二値化像において、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像と、位相差の小さい部位からなる第二の位相差像とを有し、前記第一の位相差像が前記第二の位相差像中に分散された構造をとることを特徴とする。前記位相差の大きい部位からなる第一の位相差像の分散相における最大フェレ径の平均が100nm未満であることが好ましい。
尚、本発明において結着樹脂のAFMによって観察される位相像の二値化像において、前記第一の位相差像が前記第二の位相差像中に分散された構造をとるとは、二値化像において、ドメイン間の境界が規定でき、第一の位相差像の分散相におけるフェレ径が規定できることを言う。二値化像における第一の位相差像が、画像ノイズか位相差像かの判別が難しい微小粒径となる場合や、明確なフェレ径を規定できない場合は「分散された構造ではない」と判断する。第一の位相差像は画像ノイズに埋もれて、ドメイン間の境界が規定できない場合、フェレ径が規定できなくなる。
【0012】
加熱によって被定着体へトナーを定着させるためには、その設定温度で結着樹脂が接着しうる状態を発現させる必要がある。このためにはアモルファスである結着樹脂は少なくともガラス状態からゴム状態へ転移し、一定の流動性や粘着性を発現させないといけない。しかし、より低い温度で定着させるためには結着樹脂のガラス転移温度は実使用温度よりも低くせざるを得ず、保管中にトナー粒子が融着するブロッキングが起こりやすかった。この反面、実使用温度域におけるトナーブロッキングを防ぐためには少なくとも該実使用温度以上のガラス転移温度にする必要があり、低温定着性とはトレードオフの関係にならざるを得なかった。
【0013】
本発明では、結着樹脂を、前記低温定着性を発現しうる位相差の大きい部位からなる第一の位相差像(低Tgのユニット)を、トナー保存性に有効に働く位相差の小さい部位からなる第二の位相差像(高Tgユニット)の相中に微細な構造を持って分散させる構成とすることで、前記低温定着と保存性のトレードオフの関係を解消できることを知見した。前記分散状態を実現しうる結着樹脂の構造としては、ポリエステル骨格を有し、少なくとも、ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰返し構造に有するポリエステル骨格Aと、ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まない骨格Bとを、ブロック共重合させた構成が、微細でかつ明確な位相差の大きい像として現れる構造の分散相を得る上で有効である。
【0014】
前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰返し構造に有するポリエステル骨格Aは、ヒドロキシカルボン酸が(共)重合した骨格を有し、ヒドロキシカルボン酸を直接脱水縮合する方法、あるいは、対応する環状エステルを開環重合する方法で形成できる。重合法は、重合されるポリヒドロキシカルボン酸の分子量を大きくするという観点から環状エステルの開環重合体がより好ましい。トナーの透明性と熱特性の観点から、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーとしては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数2〜6のヒドロキシカルボン酸であり、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸などが挙げられるが、適切なガラス転移温度を示し、樹脂の透明性や着色剤との親和性の上で、乳酸は特に好ましい。
【0015】
ポリマーの原材料としてヒドロキシカルボン酸以外に、ヒドロキシカルボン酸の環状エステルを用いる事も可能であり、その場合には重合して得られる樹脂のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、環状エステルを構成するヒドロキシカルボン酸が重合した骨格となる。例えば、ラクチド(乳酸ラクチド)を用いて得られる樹脂のポリヒドロキシカルボン酸骨格は、乳酸が重合した骨格になる。
【0016】
前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰返し構造に有するポリエステル骨格Aは、ポリ乳酸骨格であることが好ましい。ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合により結合したポリマーであり、近年、環境に優しい生分解性プラスティックとして注目を集めている。即ち、自然界には、エステル結合を切断する酵素(エステラーゼ)が広く分布していることから、ポリ乳酸は環境中でこのような酵素により徐々に分解されて、単量体である乳酸に変換され、最終的には二酸化炭素と水になる。
【0017】
ポリ乳酸骨格中において、下記式で表される、モノマー成分換算での光学純度X(%)は、80%以下であることが好ましい。
X(%)=|X(L体)−X(D体)|
〔ただし、X(L体)は乳酸モノマー換算でのL体比率(%)、X(D体)は乳酸モノマー換算でのD体比率(%)を表す。〕
【0018】
ここで、前記光学純度Xの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリエステル骨格を有する高分子乃至トナーを純水と1N水酸化ナトリウム及びイソプロピルアルコールの混合溶媒に添加し、70℃で加熱攪拌して加水分解をする。次いで、ろ過して液中の固形分を除去した後硫酸を加えて中和して、ポリエステル樹脂から分解されたL−及び/又はD−乳酸を含有する水性溶液を得る。該水性溶液を、キラル配位子交換型のカラムSUMICHIRAL OA−5000(株式会社住化分析センター製)を用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定し、L−乳酸由来のピーク面積S(L)とD−乳酸由来のピーク面積S(D)を算出する。該ピーク面積から光学純度Xを次のようにして求めることができる。
X(L体)% = 100× S(L)/(S(L)+S(D))
X(D体)% = 100× S(D)/(S(L)+S(D))
光学純度X% = |X(L体)−X(D体)|
なお、当然のことながら、原料で用いているL体、D体は光学異性体であり、光学異性体は、光学特性以外の物理的、化学的性質は同じであるため、重合に用いた場合その反応性は等しく、モノマーの成分比と重合体におけるモノマーの成分比は同じとなる。
上記光学純度が80%以下であると、溶剤溶解性、樹脂の透明性が向上するため好ましい。
【0019】
ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成するモノマーのX(D体)、X(L体)は、ポリヒドロキシカルボン酸骨格を形成する際に用いたモノマーのD体、X体の比率と等しくなる。従って、結着樹脂のポリヒドロキシカルボン酸骨格のモノマー成分換算での光学純度X(%)を制御するにはモノマーとしてL体とD体のモノマーを適量併用しラセミ体を得ることで達成できる。
【0020】
ポリ乳酸樹脂の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。公知の製造方法のうち、例えば、原料となるとうもろこし等の澱粉を発酵し、乳酸を得た後、乳酸モノマーから直接脱水縮合する方法や乳酸から環状二量体ラクチドを経て、触媒の存在下で開環重合によって合成する方法がある。中でも、分子量の制御を開始剤量で制御できること、および反応を短時間で完結できることなど、生産性の観点から鑑みて開環重合法による方法が好ましい。
【0021】
反応開始剤としては、100℃、20mmHg以下の減圧乾燥や200℃程度の重合加熱を行っても揮散しないアルコール成分であれば、官能基数を問わず従来公知のいずれをも使用することができる。
【0022】
また、前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まない骨格Bは少なくとも20℃以下のガラス転移温度を有することが重要であり、これによって結着樹脂のTg1を20℃以下にすることができ、骨格Aを主成分とする外相に骨格Bを主成分とする内相が微分散した構造をとることができる。さらに、前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まない骨格Bは、少なくとも2個以上のヒドロキシル基を有する化合物により形成されることが好ましく、前記化合物を開始剤としてラクチドを開環重合して結着樹脂とすることができる。前記骨格Bを形成する化合物としてこのような2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を用いることで、着色剤との親和性を向上させる効果を示すとともに、両末端に骨格A由来の高Tgユニットを配置することで、前述のような骨格B由来の低Tgユニットが内部に分散しやすい結着樹脂の骨格を構築することができる。
【0023】
骨格Bとしては、前記を満たす骨格であれば特に規定は無いが、例えばポリエーテルやポリカーボネート、ポリエステル、ヒドロキシル基を有するビニル樹脂、末端にヒドロキシル基を有するシリコーン樹脂等が挙げられる。中でも骨格Bとしては着色剤との親和性の観点からポリエステル骨格であることが特に好ましい。
【0024】
前記骨格Bを構成するポリエステル骨格としては下記一般式(1)で表される1種若しくは2種以上のポリオールと、下記一般式(2)で表される1種若しくは2種以上のポリカルボン酸とをポリエステル化したものとを開環付加重合することで得ることができる。
A−(OH)m ・・・ 一般式(1)
ただし、前記一般式(1)中、Aは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。mは2〜4の整数を表す。
B−(COOH)n ・・・ 一般式(2)
ただし、前記一般式(2)式中、Bは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。nは2〜4の整数を表す。
【0025】
前記一般式(1)で表されるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレン付加物、ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA酸化エチレン付加物、水素化ビスフェノールA酸化プロピレン付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記一般式(2)で表されるポリカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(トリメリット酸)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記骨格Bを構成するポリエステル骨格のうち、酸成分として三価以上の多価カルボン酸が1.5mol%以上含有されることが好ましく、三価以上の多価カルボン酸としてはトリメリット酸が含有されることが好ましい。三価以上の多価カルボン酸を導入することで適度な分岐・架橋構造を付与することが可能であり、分岐構造によって実質的な分子鎖を短くすることができる。これによって内相に分散する骨格Bの分散径を小さく制御することが可能となり、前記AFMによって観察される位相差の大きい部位からなる第一の位相差像の分散相における最大フェレ径の平均を小さく制御することが可能となる。三価以上の多価カルボン酸が1.5mol%未満であると分岐が不十分となり、骨格Bの分散径が必要以上に大きくなりやすく、前記位相差の大きい部位からなる第一の位相差像の分散相における最大フェレ径の平均が大きくなりやすくなり、耐熱保存性に悪影響を及ぼす場合がある。また、前記三価以上の多価カルボン酸の上限は3mol%であることが好ましい。3mol%を超える場合には分岐・架橋構造が複雑化することで樹脂の分子量が増大したり、溶剤溶解性が悪化したりする場合があり好ましくない。
【0028】
前記結着樹脂のガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)の吸熱チャートから求めることができる。代表的にはTAインスツルメンツ社製、Q2000が挙げられる。当該結着樹脂を5〜10mgをアルミ製の簡易密閉パンに充填したものを以下の測定フローに供することで求めることができる。
1st Heating:30℃〜220℃、5℃/min.、220℃到達後1分保持
冷却 :温度制御なしで−60℃までクエンチ、−60℃到達後1分保持
2nd Heating:−60℃〜180℃、5℃/min.
【0029】
ガラス転移温度は、2nd HeatingのサーモグラムにおいてASTM D3418/82で定義されるミッドポイント法を採用して値を読み取り、ガラス転移温度とする。このとき、観察される低温側のガラス転移温度をTg1、高温側のガラス転移温度をTg2と定義する。なお、ガラス転移点の特定には、一次微分をおこなったDrDSCチャートを併記することで変極点をもとめて判断することが好ましい。一方、前記2nd Heatingのサーモグラムにおける二箇所のガラス転移温度にともなうベースラインの差をそれぞれh1、h2と定義し、各ガラス転移における低温側のオンセットポイントと高温側のエンドセットポイントの差から求めることができる。本発明における代表的な結着樹脂の2nd Heatingのサーモグラムと、そのときのTg1、Tg2、h1、h2の定義を図1に示した。
【0030】
前記結着樹脂の低温側のガラス転移点Tg1は−20℃〜20℃の範囲であることが必要である。Tg1が−20℃より低いと、保管時のトナーブロッキング性が悪化する。20℃より高いと、外側で保護する高Tg部位との熱特性差が小さくなり、低温定着性が損なわれる。また、Tg2は35℃〜65℃の範囲であることが必要であり、35℃より低いと、低温定着性に優れる低Tg部位に対する保護機能が作用せず、トナーブロッキングが発生する。65℃より高いと保護層としては有効であるが、内包された低Tgユニットの定着時の染み出しを阻害することで定着性能が大きく悪化する。また、それぞれのガラス転移に伴うベースラインの差h1およびh2の比率h1/h2が1.0未満であることが必要である。前記のような低Tgのユニットが分散された構造においては、Tg1、Tg2が必ずしも骨格B、骨格Aそれぞれのガラス転移温度に対応するわけではなく、部分相溶や微細な(ミクロ)相分離構造をとることによって結着樹脂内部のモルフォロジーが決定される。その際に観察されるガラス転移温度は骨格B、骨格Aそれぞれのガラス転移温度の間に二箇所現れる。また、そのときのベースラインの比率h1/h2も前記理由によって仕込みの質量比で必ずしも決定されるものではない。前記ベースライン比率h1/h2は最終的に生成した結着樹脂における低Tgユニットと高Tgユニットとの実質的な比率を表すものであり、その比率が1を超えないことが必要条件である。1以上になると、低Tgユニットの比率が多くなることで、トナーブロッキング性が悪化したり、極端な例だと低Tgユニットの相中に高Tgユニットが分散するような、相分離構造の逆転が引き起こされて好ましくない。
【0031】
前記結着樹脂は、低温定着性に優れるTg1を有するユニットが保存性に優れるTg2を有するユニットによって微細に分散され制御された構造を有することが特徴であり、その分散状態は原子間力顕微鏡(AFM)によるタッピングモードによる位相像によって確認される。原子間力顕微鏡におけるタッピングモードとはSurface Science Letter,290,668(1993)に記載されている方法であり、位相像とは、例えばPolymer,35,5778(1994)、Macromolecules,28,6773(1995)等に説明が記載されているように、カンチレバーを振動させながら、試料表面の形状を測定する。このとき、試料表面の粘弾性的性質により、カンチレバーの振動元であるドライブと、実際の振動との間に位相差が生じる。この位相差をマッピングしたものが位相像である。軟質な部位は位相の遅れが大きく、硬質部分は位相の遅れが小さく観察される。
【0032】
本発明における結着樹脂は低いTgを有するユニットはより軟質、すなわち位相差が大きい像として、高いTgを有する部位は硬質であり位相差が小さい像として観察される。このとき、硬質である低位相差の部位からなる第二の位相差像が外相であり、軟質な高位相差の部位からなる第一の位相差像が内相で微分散された構造であることが本発明においては必要である。
【0033】
前記位相像を得るためのサンプルとしては、例えばライカ製ウルトラミクロトームULTRACUT UCTを用いて以下の条件で結着樹脂のブロックを切断して切片を出したものを用いることで観察できる。
・切削厚み:60nm
・切削速度:0.4mm/sec
・ダイヤモンドナイフ(Ultra Sonic 35°)使用
【0034】
前記AFM位相像を得るための代表的な装置としては、例えばアサイラムテクノロジー社製のMFP-3Dにて、カンチレバーとしてOMCL-AC240TS-C3を用いて以下の測定条件にて観察することができる。
・ target amplitude:0.5V
・ target percent:-5%
・ amplitude setpoint:315mV
・ scan rate:1Hz
・ scan points:256×256
・ scan angle:0°
【0035】
本発明における前記AFM位相像の位相差の大きい部位からなる第一の位相差像(すなわち軟質・低Tgユニット)の最大フェレ径の平均の具体的な測定方法としては、タッピングモードAFMにより得られた位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理した二値化像を作成して行うことができる。前記二値化像は、上述したように、位相差の小さい部位を濃色、位相差の大きい部位を淡色のコントラストとなるよう位相像を撮影し、その後、位相像中の位相差最大の値と位相差最小の値の中間値を境界とした二値化処理を行うことで得られる。前記二値化像中、300nm四方の範囲における画像10点のうち第一の位相差像の最大フェレ径の大きいものから順に30点選び、その平均を最大フェレ径の平均とした。ただし、明らかに画像ノイズとして判断される、乃至画像ノイズか位相差像かの判別が難しい微小径画像については、平均径の算出からは除外する。具体的には、観測された位相像中、最大の最大フェレ径をもつ第一の位相差像に対し、同一画像上に存在する面積比100分の1以下の第一の位相差像は平均径の計算には使用しないものとする。前記最大フェレ径とは、位相差像を2本の平行線で挟んだ際に、最大となる平行線間距離のことである。
前記最大フェレ径の平均値は100nm未満であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。更に好ましくは30nm以上70nm以下である。前記最大フェレ径の平均値が100nm以上になると、保管時にトナーブロッキングが生じやすくなりやすく、20nm未満であると、低温定着性が悪化する場合がある。
なお、図2に本発明における代表的な結着樹脂である実施例1で用いた結着樹脂1の位相像を示し、この位相像に前記二値化処理を施した二値化像を図3に示した。図3中、明るい領域は位相差が大きい部位からなる第一の位相差像(位相差の大きい像)であり、暗い領域が位相差が小さい部位からなる第二の位相差像(位相差の小さい像)に相当する。
【0036】
前記骨格Bの構成としては、特定の分子量と含有率であることが好ましく、前記結着樹脂における骨格Bの質量比率が25%以上50%以下であることが好ましく、25%以上40%以下がより好ましい。骨格Bの数平均分子量Mn(B)は3000以上5000以下であることが好ましく、3000以上4000以下であることが、より好ましい。前記質量比率が25%未満であったり、骨格Bの数平均分子量Mnが3000未満であると、前記最大フェレ径の平均が小さくなりすぎて、ガラス転移温度が2箇所に確認され難くなり、所望の低温定着性が得られないことがある。また、前記質量比が50%を超えたり、骨格Bの数平均分子量が5000を超えると、前記最大フェレ径の平均が大きくなりすぎて長期保存に伴うトナー同士のブロッキングが発生しやすくなる。
また、前記結着樹脂の数平均分子量は20000以下であることが好ましく、8000〜15000であることがより好ましい。数平均分子量が20000を超えると定着性が損なわれると共に、溶剤への溶解性も低下することがあり好ましくない。
トナーにおける前記結着樹脂の含有量は60wt%以上が好ましく、さらに好ましくは80wt%以上である。60wt%より少ないと、低温定着性やトナーブロッキング性が著しく損なわれる場合がある。
【0037】
<着色剤>
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記着色剤の前記トナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0039】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、等が挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、などが挙げられる。
【0041】
前記マスターバッチは、前記マスターバッチ用樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。前記混合又は混練には、例えば三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。
【0042】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、離型剤、帯電制御剤、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、などが挙げられる。
【0043】
−離型剤−
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃〜120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好である。
【0044】
前記離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類等が好適なものとして挙げられる。前記ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスの他、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜120℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましい。前記融点が、50℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、120℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。
前記離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps〜1000cpsが好ましく、10cps〜100cpsがより好ましい。前記溶融粘度が、5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。
前記離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40質量%以下が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0046】
−帯電制御剤−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業株式会社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業株式会社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット株式会社製);銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、などが挙げられる。
【0047】
前記帯電制御剤の前記トナーにおける含有量としては、前記樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0048】
−無機微粒子−
前記無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用することができる。
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機微粒子の一次粒子径としては、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。
前記無機微粒子の前記トナーにおける含有量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
【0049】
−流動性向上剤−
前記流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが挙げられる。前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0050】
−クリーニング性向上剤−
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加され、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好適である。
【0051】
−磁性材料−
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0052】
以下、本発明におけるトナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限るものではない。
本発明のトナー製造方法としては、トナー材料の溶解乃至分散液を水系媒体中に乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製した後トナーを造粒することによるものが好ましく、以下の工程(1)〜(6)より成ることが好ましい。
【0053】
(1)トナー材料の溶解乃至分散液の調製
前記トナー材料の溶解乃至分散液は前記トナー材料を有機溶剤に溶解乃至分散させてなる。
前記トナー材料としては、トナーを形成可能である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記結着樹脂を少なくとも含み、更に必要に応じて、離型剤、着色剤、帯電制御剤等の前記その他の成分を含んでなる。
前記トナー材料の溶解乃至分散液は、前記トナー材料を前記有機溶剤に溶解乃至分散させて調製することで得られる。なお、前記有機溶剤は、トナーの造粒時乃至造粒後に除去される。
【0054】
前記有機溶剤としては、前記トナー材料を溶解乃至分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等が挙げられるが、エステル系溶剤であるのが好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記トナー材料100質量部に対し、40質量部〜300質量部が好ましく、60質量部〜140質量部がより好ましく、80質量部〜120質量部が更に好ましい。
【0055】
(2)水系媒体の調製
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などが挙げられるが、これらの中でも、水が特に好ましい。
前記水と混和可能な溶剤としては、前記水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水系媒体の調製は、例えば、樹脂微粒子を前記水系媒体に分散させることにより行うことができる。該樹脂微粒子の該水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5質量%〜10質量%が好ましい。
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されているのが好ましい。
なお、前記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0056】
また、前記樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。
前記少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業株式会社製)、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどが挙げられる。
【0057】
前記樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、該樹脂微粒子の水性分散液として得るのが好ましい。該樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、(i)前記ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法、(ii)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法、(iii)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、(iv)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(v)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(vi)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(vii)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法、(viii)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、などが好適な調製方法として挙げられる。
【0058】
また、前記水系媒体においては、必要に応じて、後述の乳化乃至分散時における、前記溶解乃至分散液の油滴を安定化させ、所望の形状を得つつ粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0059】
前記界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられる。
前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。前記フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。該フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子株式会社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M株式会社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業株式会社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
【0060】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、フルオロアルキル基を有する陽イオン界面活性剤等が挙げられる。前記アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。前記四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。前記フルオロアルキル基を有する陽イオン界面活性剤としては、例えばフルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。
前記カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ化学工業株式会社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
【0061】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0062】
前記難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
前記高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。
前記酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0063】
前記水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
【0064】
前記ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。
前記ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
前記アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。
前記クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。
【0065】
前記窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。
前記ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。
前記セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0066】
前記分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。
該分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。
また、前記溶解乃至分散液の結着樹脂として活性水素基含有化合物と反応可能な変性ポリエステル(プレポリマー)を含む場合においては、前記水系媒体中に例えばジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどの該反応における触媒を用いることもできる。
【0067】
(3)乳化乃至分散
前記トナー材料の溶解乃至分散液の前記水系媒体中への乳化乃至分散は、前記トナー材料の溶解乃至分散液を前記水系媒体中で攪拌しながら分散させるのが好ましい。該分散の方法としては、特に限定されるものではないが、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー(在原製作所製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機株式会社製)、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工株式会社製)等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業株式会社製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業株式会社製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。中でも、粒径の均一化の観点から、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサーを用いることが好ましい。
【0068】
(4)溶剤の除去
前記乳化乃至分散により得られた乳化スラリーから、前記有機溶剤を除去する。
前記有機溶剤の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、前記油滴中の前記有機溶剤を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。
【0069】
(5)洗浄・乾燥分級等
前記有機溶剤の除去が行われると、トナー粒子が形成される。該トナー粒子に対し、洗浄、乾燥等を行うことができ、更にその後、所望により分級等を行うことができる。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができ、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。なお、分散安定剤として前記水系媒体にリン酸カルシウム塩などの酸・アルカリに溶解可能なものを用いた場合には、塩酸などの酸によって該分散安定剤を溶解し、水洗いする法によりトナー粒子から除去することができる。
【0070】
(6)帯電制御剤・無機微粒子等の外添
こうして、得られたトナー粒子を、必要に応じて、シリカ微粒子や酸化チタン微粒子等の無機微粒子、帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、更に機械的衝撃力を印加することにより、該トナー粒子の表面から該離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。
前記機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック株式会社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0071】
本発明のトナーは、その形状、大きさ等の諸物性については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、体積平均粒径(Dv)、体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)、針入度、低温定着性、オフセット未発生温度、等を有していることが好ましい。
【0072】
前記トナーの体積平均粒径(Dv)としては、例えば、3μm〜8μmが好ましい。前記体積平均粒径が、3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
前記トナーにおける体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)としては、1.00〜1.25がより好ましい。
前記体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させたり、クリーニング性を悪化させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、1.30を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0073】
前記体積平均粒径と個数平均粒径との比(Dv/Dn)が、1.00〜1.25であると、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れ、特に、フルカラー複写機に使用した場合に画像の光沢性に優れる。二成分現像剤では長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られ、一成分現像剤ではトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なくなるとともに、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等への部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性が得られるため、高画質の画像を得ることができる。
前記体積平均粒径、及び、前記体積平均粒径と個数平均粒子径との比(Dv/Dn)は、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用いて測定することができる。
【0074】
前記針入度としては、例えば、針入度試験(JIS K2235−1991)で測定した針入度が、15mm以上であることが好ましく、25mm以上がより好ましい。
前記針入度が、15mm未満であると、耐熱保存性が悪化することがある。
前記針入度は、JIS K2235−1991に従って測定することができ、具体的には、50mlのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に20時間放置する。このトナーを室温まで冷却し、針入度試験を行うことにより針入度を測定することができる。
なお、本発明における針入度とは貫入量の深さをmmで示した値を指す。前記針入度の値が大きいほど、前記耐熱保存性が優れることを示している。
【0075】
前記低温定着性としては、定着温度低下とオフセット未発生とを両立させる観点からは、定着下限温度が低くなるほど好ましく、また、オフセット未発生温度が高くなるほど好ましく、定着温度低下とオフセット未発生とを両立させ得る温度領域としては、前記定着下限温度が130℃未満であり、前記オフセット未発生温度が180℃以上である。
なお、定着下限温度は、例えば、画像形成装置を用い、転写紙をセットし、複写テストを行い、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度を定着下限温度としたものである。
前記オフセット未発生温度は、例えば、画像形成装置を用いて、転写紙をセットし、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各単色、及び中間色としてレッド、ブルー、及びグリーンのベタ画像を各単色で現像されるように調整し、定着ベルトの温度が可変となるように調整して、オフセットの発生しない温度を測定することにより求めることができる。
【0076】
本発明のトナーの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは前記着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができる。
【0077】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
本発明の前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化する為のブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本発明の前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0078】
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50emu/g〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75emu/g〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30emu〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
前記芯材の粒径としては、体積平均粒径で、10μm〜150μmが好ましく、20μm〜80μmがより好ましい。
前記平均粒径(体積平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0079】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
前記アミノ系樹脂としては、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等が挙げられる。前記ハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0081】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、等が挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、等が挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブチルアセテート、等が挙げられる。
前記焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0082】
前記樹脂層の前記キャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。前記量が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
前記現像剤が前記二成分現像剤である場合、前記キャリアの該二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90質量%〜98質量%が好ましく、93質量%〜97質量%がより好ましい。
【0083】
<プロセスカートリッジ>
本発明で用いるプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
前記現像手段としては、本発明の前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容された現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置に着脱可能に備えさせることができ、後述する本発明で用いる画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが好ましい。
【0084】
ここで、前記プロセスカートリッジは、例えば、図5に示すように、静電潜像担持体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図5中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
次に、図5に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、静電潜像担持体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の静電潜像担持体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0085】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明に係る画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0086】
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、帯電工程と露光工程を含む。
前記静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」、「像担持体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0087】
前記静電潜像の形成は、例えば前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器(帯電手段)と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器(露光手段)とを少なくとも備える。
【0088】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
また、前記帯電器としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
また、前記帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、該帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0089】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0090】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記トナー又は現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を本発明の前記トナー乃至現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、本発明の前記トナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明の前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0091】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0092】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0093】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0094】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0095】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、などが挙げられる。
前記定着装置が、発熱体を具備する加熱体と、該加熱体と接触するフィルムと、該フィルムを介して前記加熱体と圧接する加圧部材とを有し、前記フィルムと前記加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着する手段であることが好ましい。前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0096】
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0097】
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0098】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0099】
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0100】
前記画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、図6を参照しながら説明する。図6に示す画像形成装置100は、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」という)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0101】
中間転写体50は無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、図中矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍に中間転写体用クリーニングブレード90が配置されており、また、記録媒体95に可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、この中間転写体50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、静電潜像担持体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と記録媒体95との接触部との間に配置されている。
【0102】
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、この現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M、及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラにより回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0103】
図6に示す画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。該可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0104】
前記画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図7を参照しながら説明する。図7に示す画像形成装置100は、図6に示す画像形成装置100において、現像ベルト41を備えてなく、感光体10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されていること以外は、図6に示す画像形成装置100と同様の構成を有し、同様の作用効果を示す。なお、図7においては、図6におけるものと同じものは同符号で示した。
【0105】
本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図8を参照しながら説明する。図8に示すタンデム画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。このタンデム画像形成装置は、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図8中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される記録媒体(転写紙)と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0106】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0107】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0108】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図9に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる帯電装置160と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(図9中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0109】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0110】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【実施例】
【0111】
以下に本発明の実施例と比較例を示し、本発明についてより具体的に説明する。尚、実施例における部は質量部を示す。
[実施例及び比較例で用いた成分の各物性値の測定方法]
(分子量の測定)
装 置:GPC(東ソー(株)製)、 検出器:RI、測定温度:40℃、
移動相:テトラヒドロフラン、 流 量:0.45mL/min.
分子量Mn、Mw、は分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量である。
【0112】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
装置:DSC(TAインスツルメンツ社製、Q2000)
試料5〜10mgをアルミ製の簡易密閉パンに充填したものを以下の測定フローに供した。
1st Heating:30℃〜220℃、5℃/min.、220℃到達後1分保持
冷却 :温度制御なしで−60℃までクエンチ、−60℃到達後1分保持
2nd Heating:−60℃〜180℃、5℃/min.
ガラス転移温度は、2nd HeatingのサーモグラムにおいてASTM D3418/82に記載される方法に基づいてミッドポイントによるガラス転移温度を求めて評価を行った。このとき、観察される低温側のガラス転移温度をTg1、高温側のガラス転移温度をTg2とした。
【0113】
(最大フェレ径の平均値の測定)
装置:AFM(アサイラムテクノロジー社製 MFP−3D)
・ カンチレバー:OMCL-AC240TS-C3target amplitude:0.5V
・ target percent:-5%
・ amplitude setpoint:315mV
・ scan rate:1Hz
・ scan points:256×256
・ scan angle:0°
結着樹脂をライカ製ウルトラミクロトーム ULTRACUT UCTを用いて以下の条件で結着樹脂のブロックを切断して切片を出したものを用いて観察した。
・切削厚み:60nm
・切削速度:0.4mm/sec
・ダイヤモンドナイフ(Ultra Sonic 35°)使用
得られたAFM位相像について、該位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理した二値化像を作成し、300nm四方の範囲における画像10点のうち位相差の大きい部位からなる第一の位相差像(すなわち軟質・低Tgユニット)の最大フェレ径の大きいものから順に30点選んでその平均値を最大フェレ径の平均値として算出した。
【0114】
(製造例1)
結着樹脂1の合成
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた300mlの反応容器中に、アルコール成分、酸成分を表1に示すような比率で試薬全体の質量が250gとなるように加えた。その際、重合触媒として、チタンテトライソプロポキシド(1000ppm対樹脂成分)も合わせて投入した。窒素気下中、4時間程度で200℃まで昇温し、ついで、2時間かけて230℃に昇温し、流出成分がなくなるまで反応を行った。その後さらに、10mmHg〜15mmHgの減圧で5時間反応し「ポリエステル開始剤(1)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(1)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(1)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂1を合成した。得られた結着樹脂1の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0115】
(製造例2)
結着樹脂2の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)の仕込み量を表2記載の比率に変更した以外は製造例1と同様にして結着樹脂2を合成した。得られた結着樹脂2の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0116】
(製造例3)
結着樹脂3の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)のアルコール成分、酸成分を表1に示すような比率に変更した以外は製造例1と同様にして「ポリエステル開始剤(2)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(2)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(2)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂3を合成した。得られた結着樹脂3の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0117】
(製造例4)
結着樹脂4の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)のアルコール成分、酸成分を表1に示すような比率に変更した以外は製造例1と同様にして「ポリエステル開始剤(3)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(3)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(3)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂4を合成した。得られた結着樹脂4の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0118】
(製造例5)
結着樹脂5の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)のアルコール成分、酸成分を表1に示すような比率に変更した以外は製造例1と同様にして「ポリエステル開始剤(4)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(4)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(4)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂5を合成した。得られた結着樹脂5の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0119】
(製造例6)
結着樹脂6の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)のアルコール成分、酸成分を表1に示すような比率に変更した以外は製造例1と同様にして「ポリエステル開始剤(5)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(5)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(5)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂6を合成した。得られた結着樹脂6の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0120】
(製造例7)
結着樹脂7の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)のアルコール成分、酸成分を表1に示すような比率に変更した以外は製造例1と同様にして「ポリエステル開始剤(6)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(6)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(6)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂7を合成した。得られた結着樹脂7の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0121】
(製造例8)
結着樹脂8の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)のアルコール成分、酸成分を表1に示すような比率に変更した以外は製造例1と同様にして「ポリエステル開始剤(7)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(7)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(7)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂8を合成した。得られた結着樹脂8の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0122】
(製造例9)
結着樹脂9の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)の仕込み量を表2記載の比率に変更した以外は製造例1と同様にして結着樹脂9を合成した。得られた結着樹脂9の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0123】
(製造例10)
結着樹脂10の合成
製造例1におけるポリエステル開始剤(1)のアルコール成分、酸成分を表1に示すような比率に変更した以外は製造例1と同様にして「ポリエステル開始剤(8)」を得た。
得られた「ポリエステル開始剤(8)」の数平均分子量Mn・ガラス転移温度Tgを表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(8)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂10を合成した。得られた結着樹脂10の数平均分子量Mn、ガラス転移温度Tgを表3に記載した。
【0124】
(製造例11)
結着樹脂11の合成
温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、開始剤として、ポリエステルポリオール(住友バイエルウレタン社製:デスモフェン1200 数平均分子量約1000、水酸基価165mgKOH/g)L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂11を合成した。得られた結着樹脂11の数平均分子量Mn、ガラス転移温度Tgを表3に記載した。
【0125】
(製造例12)
結着樹脂12の合成
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽内に、1,2−プロピレングリコール43.8質量部、テレフタル酸ジメチルエステル44.8質量部、アジピン酸11.2質量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.2質量部を入れ、窒素気流下にて180℃にて8時間、次いで、230℃にて4時間反応させた。更に5〜20mmHgの減圧下で反応させた後、軟化点が150℃になった時点で取り出した。取り出した樹脂を冷却後、粉砕して「ポリエステル開始剤(9)」を得た。得られた「ポリエステル開始剤(9)」の分子量・ガラス転移温度を表2に記載した。
次いで、温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、前記「ポリエステル開始剤(9)」、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタンを外割で1質量%添加し、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂12を合成した。得られた結着樹脂12の分子量、ガラス転移温度を表3に記載した。
【0126】
(製造例13)
結着樹脂13の合成
温度計、及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽内に、開始剤として、ラウリルアルコール、L−ラクチド、及びD−ラクチドを、下記表2に記載の比率で投入し、更にテレフタル酸チタン1質量%を入れ、窒素置換後160℃で6時間重合し、結着樹脂13を合成した。得られた結着樹脂13の数平均分子量、ガラス転移温度Tgを表3に記載した。
【0127】
得られた結着樹脂の1〜13について、タッピングモードAFMによって観察される位相像を、該位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理し、二値化像を作成した。結着樹脂1〜10については、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像が位相差の小さい部位からなる第二の位相差像中に分散された構造をとっていることが観察されたが、結着樹脂11〜13については、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像が位相差の小さい部位からなる第二の位相差像中に分散された構造が観察されず、画像ノイズに埋もれて明確なドメインおよびフェレ径を規定できない画像となった。前記位相差の大きい部位からなる第一の位相差像が位相差の小さい部位からなる第二の位相差像中に分散された構造をとっていることが観察された結着樹脂1〜10については、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像の分散相における最大フェレ径の平均値を求めた。結果を表3に示す。
結着樹脂1のタッピングモードAFMによる位相像を図2に、該位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理した二値化像を図3に示す。また、結着樹脂11のタッピングモードAFMによる位相像を図4に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
(実施例1)
トナー1の作製
−樹脂粒子Wの水性分散液の製造−
攪拌棒および温度計をセットした反応容器に、水600部、スチレン120部、メタクリル酸100部、アクリル酸ブチル45部、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩(エレミノールJS−2、三洋化成工業製)10部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で20分攪拌したところ、白色の乳濁液が得られた。これを加熱して、系内温度75℃まで昇温し6時間反応させた。
さらに1%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で6時間熟成してビニル樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチル−アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩の共重合体)の水性分散液である微粒子分散液Wを得た。
微粒子分散液WをELS−800で測定した体積平均粒径は0.08μmであった。
微粒子分散液Wの一部を乾燥して樹脂分を単離し、該樹脂分のフローテスター測定によるガラス転移温度は74℃であった。
【0131】
−水系媒体の調製−
イオン交換水300質量部、微粒子分散液W300質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2質量部を混合撹拌して均一に溶解させて水系媒体を調製した。
【0132】
−マスターバッチの作製−
水1,000質量部、及びDBP吸油量が42ml/100g、pHが9.5のカーボンブラック(Printex35、デグサ社製)530質量部、及び1200質量部の結着樹脂1を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。
二本ロールを用いて、得られた混合物を150℃で30分間混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マスターバッチを作製した。
【0133】
−トナー1の作製−
反応容器内に結着樹脂1を100質量部、及び酢酸エチル100質量部を加えて攪拌して、樹脂溶液1を調製した。
次に、樹脂溶液1にカルナウバワックス(分子量1,800、酸価2.7mgKOH/g、針入度1.7mm(40℃))5質量部、及びマスターバッチ5質量部を仕込み、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時、ディスク周速度6m/秒で、粒径が0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスしてトナー材料液を得た。
次に、容器内に水系媒体150質量部を入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmで攪拌しながら、トナー材料液100質量部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを得た。
更に、攪拌機、及び温度計をセットしたコルベンに、乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら、30℃で10時間脱溶剤し、分散スラリーを得た。
次に、分散スラリー100質量部を減圧濾過し、得られた濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。
【0134】
得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液20部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行った。得られた濾過ケーキに10質量%塩酸20質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、フッ素系第四級アンモニウム塩化合物フタージェントF−310(ネオス社製)を、フッ素系四級アンモニウム塩がトナーの固形分100質量部に対して0.1質量部相当になるよう5%メタノール溶液で添加し、10分間攪拌した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行い、濾過ケーキを得た。
循風乾燥機を用いて、得られた濾過ケーキを40℃で36時間乾燥し、目開きが75μmのメッシュで篩い、トナー母粒子1を作製した。次にトナー母粒子1の100質量部に対し、疎水性シリカ(キャボット製、TS720)を1.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて3000rpmで5分間ブレンドしてトナー1を得た。
【0135】
(実施例2〜8)
トナー2〜8の作製
実施例1において、使用する樹脂を結着樹脂2〜8に変更した以外は実施例1と同様の手順により実施例2〜8のトナー2〜8を作製した。
【0136】
(比較例1〜5)
実施例1において、使用する樹脂を結着樹脂9〜13に変更した以外は実施例1と同様の手順により比較例1〜5のトナー9〜13を作製した。
【0137】
−キャリアの作製−
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニングシリコーン社製、SR2411)100質量部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、コート層形成液を調製した。該コート層形成液を、流動床型コーティング装置を用い、粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面にコーティングして磁性キャリアを作製した。
【0138】
−現像剤の作製−
実施例1〜8及び比較例1〜5の各トナー5質量部と前記キャリア95質量部とをボールミル混合し、実施例1〜8及び比較例1〜5の各二成分現像剤を製造した。
得られた各現像剤について、以下のようにして、(a)画像濃度、(b)耐熱保存性、及び(c)定着性を測定した。結果を表3に示した。
【0139】
(a)画像濃度
タンデム型カラー電子写真装置(imagio Neo 450、株式会社リコー製)を用いて、複写紙(TYPE 6000<70W>、株式会社リコー製)に各現像剤の付着量が1.00±0.05mg/cm2のベタ画像を定着ローラの表面温度が160±2℃で形成した。得られたベタ画像における任意の6箇所の画像濃度を、分光計(938 スペクトロデンシトメータ、X−Rite社製)を用いて測定し、下記評価基準に基づいて、評価を行った。なお、画像濃度値は、6箇所の画像濃度の平均値で示した。
〔評価基準〕
○:2.0以上
△:1.70以上2.0未満
×:1.70未満
【0140】
(b)耐熱保存性(針入度)
50mlのガラス容器に各トナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した。このトナーを24℃に冷却し、針入度試験(JIS K2235−1991)により針入度(mm)を測定し、下記基準に基づいて評価した。なお、本発明における針入度とは貫入量の深さをmmで示した値を指す。前記針入度の値が大きいほど耐熱保存性が優れていることを示し、5mm未満の場合には、使用上問題が発生する可能性が高い。
〔評価基準〕
◎:針入度25mm以上
○:針入度15mm以上25mm未満
△:針入度5mm以上15mm未満
×:針入度5mm未満
【0141】
(c)定着性
定着ローラとしてテフロン(登録商標)ローラを使用した株式会社リコー製複写機MF−200の定着部を改造した装置を用いて、普通紙及び厚紙の転写紙(株式会社リコー製のタイプ6200及びNBSリコー製の複写印刷用紙<135>)にベタ画像で、0.85±0.1mg/cm2のトナー付着量で定着評価した。定着ベルトの温度を変化させて定着試験を行い、普通紙でホットオフセットの発生しない上限温度を定着上限温度とした。また、厚紙で定着下限温度を測定した。定着下限温度は、得られた定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とした。
〔評価基準〕
−定着上限温度−
定着上限温度は190℃以上の場合は◎、180℃以上190℃未満の場合は○、170℃以上180℃未満の場合は△、170℃未満の場合は×とした。
−定着下限温度−
定着下限温度は120℃未満の場合は◎、120℃以上130℃未満の場合は○、130℃以上140℃未満の場合は△、140℃以上の場合は×とした。
【0142】
【表3】

【0143】
表3に示されるように、結着樹脂のガラス転移温度が二箇所Tg1およびTg2に所定の温度帯で観察され、結着樹脂のタッピングモードAFMによって観察される位相像における最大フェレ径の平均値が100nm未満である樹脂を用いた実施例1〜8のトナーのいずれも良好な低温定着性と幅広い定着可能な温度領域、及び耐熱保存性が高い次元で両立されることが確認された。比較例1は低Tgであるユニットの比率が高く、h1/h2が1.0を超えると共に、軟質(低Tg)ユニットの最大フェレ径の平均値が100nm以上であった。このトナーの定着下限温度は良好であったが、耐熱保存性が大きく悪化した。分散径が大きくなり、トナー表面に一部露出しやすくなることが保存性に悪影響を及ぼすものと考えられる。比較例2はh1/h2の比率や最大フェレ径の平均値も小さく、低Tgユニットが微分散された構造であるものの、Tg1が低く、定着性には有効であったものの、保存性が悪化することが確認された。比較例3は開始剤として用いた前記骨格BのTgは十分に低いものの、合成された結着樹脂は低Tgユニットが内部で微分散された構造をとらないことがDSC、AFMの結果から明らかであり、このような場合には良好な低温定着性が発現しないことが確認された。さらに比較例4では、開始剤として用いた前記骨格BのTgが高く、AFMによる樹脂の軟質・硬質部位が共存するような分散構造を有さなかった。この結果低温定着を実現しえなかった。さらに片末端から開環重合させることで得たポリ乳酸樹脂を用いた比較例5においても、相分離構造を有する骨格は得られず、定着下限や耐熱保存いずれも所望の特性を得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0144】
10 感光体(感光体ドラム)
10K ブラック用静電潜像担持体
10Y イエロー用静電潜像担持体
10M マゼンタ用静電潜像担持体
10C シアン用静電潜像担持体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像装置
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック用現像器
45Y イエロー用現像器
45M マゼンタ用現像器
45C シアン用現像器
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 コロナ帯電器
53 定電流源
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 分離ローラ
60 クリーニング装置
61 現像器
62 転写帯電器
63 感光体クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100 画像形成装置
120 タンデム型現像器
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
200 給紙テーブル
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】
【特許文献1】特許第2909873号公報
【特許文献2】特許第3347406号公報
【特許文献3】特開昭59-96123号公報
【特許文献4】特許第3785011号公報
【特許文献5】特開2008−262179号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇温速度5℃/分での示差走査熱量計におけるガラス転移温度がTg1およびTg2の二箇所に観察される結着樹脂を含有するトナーであって、Tg1は−20℃〜20℃の範囲であり、Tg2は35℃〜65℃の範囲であって、それぞれのガラス転移に伴うベースラインの差h1およびh2の比率h1/h2が1.0未満であり、かつ、該結着樹脂のタッピングモードAFMによって観察される位相像を、該位相像における位相差の最大値と位相差の最小値との中間値で二値化処理した二値化像において、位相差の大きい部位からなる第一の位相差像と、位相差の小さい部位からなる第二の位相差像とを有し、前記第一の位相差像が前記第二の位相差像中に分散された構造をとることを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項2】
前記位相差の大きい部位からなる第一の位相差像の分散相における最大フェレ径の平均が100nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
前記結着樹脂がポリエステル骨格を有し、少なくとも、ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰返し構造に有するポリエステル骨格Aと、ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まない骨格Bとを、ブロック共重合させてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まない骨格Bがヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まないポリエステルであり、該ポリエステルが分岐構造を有することを特徴とする請求項3に記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰り返し構造に含まないポリエステルの酸成分において、三価以上の多価カルボン酸が1.5mol%以上含有されてなることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用トナー。
【請求項6】
前記ヒドロキシカルボン酸が脱水縮合された構成単位を繰返し構造に有するポリエステル骨格Aが、L−ラクチドとD−ラクチドの混合物を開環重合して得られたものであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【請求項7】
前記結着樹脂における骨格Bの質量比率が25%以上50%以下であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【請求項8】
前記結着樹脂における骨格Bの数平均分子量Mn(B)が3000以上5000以下であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【請求項9】
前記結着樹脂の数平均分子量Mnが20000以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真用トナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項11】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記現像剤が、請求項10に記載の現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76975(P2013−76975A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137750(P2012−137750)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】