説明

電子写真用トナー用結着樹脂

【課題】定着の際の加圧力が低くても良好な低温定着性及び耐オフセット性を有する電子写真用トナー用結着樹脂、該結着樹脂を含有した電子写真用トナー、及び該電子写真用トナーを用いた画像形成方法を提供すること。
【解決手段】炭素数10〜24の1価の脂肪族カルボン酸化合物及び炭素数10〜24の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の1価の脂肪族化合物を含有してなる原料モノマーを縮重合させて得られる、軟化点が110〜130℃のポリエステルを含有してなる、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に使用される電子写真用トナー用結着樹脂、該結着樹脂を含有してなる、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に使用される電子写真用トナー、並びに該電子写真用トナーを、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に用いて定着させる工程を有する画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用トナー用結着樹脂、該結着樹脂を含有した電子写真用トナー及び該電子写真用トナーを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーの画像形成装置には、小型軽量化、高速化、高信頼性化、オンデマンド化、そしてさらなる省エネルギー化が厳しく追及されてきている。
【0003】
そこで、従来広く使用されている熱ロール方式の定着機に代わり、ベルトニップ方式(特許文献1参照)、フラッシュ定着(特許文献2参照)、オーブン定着(特許文献3参照)等の定着機を有する画像形成装置が報告されている。ベルトニップ方式では、定着ニップ部のニップ幅を広くすることができるため熱効率を高めることができる。また、非接触定着では、熱ローラー等により未画像トナーがつぶされることがないため、高画質画像を形成することができる。
【0004】
一方、トナーに対する試みとしては、耐オフセット性に優れたトナーとして、軟化点が高めで、1価の長鎖脂肪族モノアルコール等を原料として用いたポリエステルを使用するトナーが報告されている(特許文献4、5参照)。
【特許文献1】特開平9−34291号公報
【特許文献2】特開平7−28355号公報
【特許文献3】特開2003−162084号公報
【特許文献4】特開平11-282203号公報
【特許文献5】特開平7-333891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベルトニップ方式や非接触定着方式の定着機は、熱ロール定着方式の定着機と比較すると、その構造上、定着時にトナーにかかる圧が小さく、低温定着性(定着強度)の維持が困難である。
【0006】
本発明の課題は、定着の際の加圧力が低くても良好な低温定着性及び耐オフセット性を有する電子写真用トナー用結着樹脂、該結着樹脂を含有した電子写真用トナー、及び該電子写真用トナーを用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕 炭素数10〜24の1価の脂肪族カルボン酸化合物及び炭素数10〜24の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の1価の脂肪族化合物を含有してなる原料モノマーを縮重合させて得られる、軟化点が110〜130℃のポリエステルを含有してなる、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に使用される電子写真用トナー用結着樹脂、
〔2〕 前記〔1〕記載の結着樹脂を含有してなる、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に使用される電子写真用トナー、並びに
〔3〕 前記〔2〕記載の電子写真用トナーを、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に用いて定着させる工程を有する画像形成方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子写真用トナー用結着樹脂及び該結着樹脂を含有した電子写真用トナーは、定着の際の加圧力が低くても良好な低温定着性及び耐オフセット性を有するという優れた効果を奏するものである。また、本発明のトナーを用いて、低温、低圧でも良好にトナーを定着させ画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の電子写真用トナー用結着樹脂は、特定の炭素数を有する1価の脂肪族化合物(以下、1価の長鎖脂肪族化合物ともいう)を含有した原料モノマーを縮重合させて得られる、低軟化点のポリエステルを含有している点に特徴を有する。トナーを定着させる際の加圧力が低い場合は、トナーに熱が伝わりにくく、軟化点の高い高分子量の樹脂を用いて、耐オフセット性を向上させることが困難である。しかしながら、本発明では、1価の長鎖脂肪族化合物がポリエステルの原料モノマーとして使用されているため、ポリエステル中に柔らかい部分(熱的に弱い部分)が生じ、軟化点に比べて相対的に分子量の高いポリエステルが得られている。これにより、驚くべきことに、通常、相反する特性と考えられている低温定着性と耐オフセット性の両立が達成されているものと推定される。
【0010】
本発明において、1価の脂肪族化合物は、炭素数10〜24の1価の脂肪族カルボン酸化合物及び炭素数10〜24の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であるが、定着性、特に耐オフセット性の観点から、炭素数10〜24の1価の脂肪族カルボン酸化合物が好ましい。
【0011】
炭素数10〜24の1価の脂肪族カルボン酸化合物としては、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、これらの酸の無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0012】
炭素数10〜24の1価の脂肪族アルコールとしては、1-ドデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)等が挙げられる。
【0013】
1価の脂肪族化合物は、直鎖構造及び分岐鎖構造のいずれを有していてもよいが、本発明の所望の効果をより高めるためには、炭素数10〜24、好ましくは12〜18の直鎖構造を有していることが好ましい。
【0014】
1価の脂肪族化合物の含有量は、原料モノマー中、0.1〜20モル%が好ましく、1〜15モル%がより好ましく、2〜10モル%がさらに好ましい。
【0015】
本発明のトナー用結着樹脂が含有するポリエステルの原料モノマーとしては、前記1価の脂肪族化合物に加えて、アルコール成分とカルボン酸成分とが用いられる。
【0016】
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等がの、式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、ROはアルキレンオキサイドであり、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5.0である)
で表される、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水素添加ビスフェノールA等の2価のアルコール;ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、アルコール成分として、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が用いられていることが好ましい。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量は、トナーの保存性の観点から、アルコール成分中、30モル%以上が好ましく、50〜95モル%がより好ましく、70〜90モル%がさらに好ましい。
【0020】
さらに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物中、プロピレンオキサイドが3モル以上付加したビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量は、15モル%以上が好ましく、20〜85モル%がより好ましく、40〜70モル%がさらに好ましい。
【0021】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の平均付加モル数は、1.5〜4.0が好ましく、2.1〜4.0がより好ましく、2.3〜3.5がさらに好ましく、2.9〜3.4がさらに好ましい。ここでいう平均付加モル数とは、ビスフェノールA 1モルに対するプロピレンオキサイドの平均付加モル数を意味する。
【0022】
一方、カルボン酸成分において、2価のカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらの中では、帯電性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましく、テレフタル酸及びイソフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
【0023】
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、55〜99モル%が好ましく、70〜90モル%がより好ましい。
【0024】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、例えば1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0025】
3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、粉砕性の観点から、カルボン酸成分中、3〜49モル%が好ましく、10〜45モル%がより好ましく、20〜40モル%がさらに好ましい。
【0026】
3価以上の原料モノマー(3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸化合物)の含有量は、全原料モノマー中、1〜25モル%が好ましく、3〜23モル%がより好ましく、7〜21モル%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の結着樹脂は、例えば、1価の長鎖脂肪族化合物を含有する原料モノマーを、不活性ガス雰囲気中、要すればエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。
【0028】
さらに、本発明の結着樹脂には、前記ポリエステルとビニル系樹脂とを有するハイブリッド樹脂も含まれる。
【0029】
ビニル系樹脂の原料モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン化合物;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられ、スチレン及び/又は(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが、50重量%以上、好ましくは80〜100重量%含有されていることが望ましい。
【0030】
なお、ビニル系樹脂の原料モノマーを重合させる際には、重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて使用してもよい。
【0031】
本発明においては、ポリエステルのビニル系樹脂に対する重量比、即ちポリエステルの原料モノマーのビニル系樹脂の原料モノマーに対する重量比は、連続相がポリエステルであることが好ましいことから、50/50〜95/5が好ましく、60/40〜95/5がより好ましい。
【0032】
ハイブリッド樹脂において、ポリエステルとビニル系樹脂は、ポリエステルの原料モノマーとビニル系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを介して部分的に化学結合していることが好ましい。従って、本発明において、ポリエステルを形成する縮重合反応とビニル系樹脂を形成する付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましく、これにより、ポリエステルとビニル系樹脂とが部分的に両反応性モノマーを介して結合し、ポリエステル中にビニル系樹脂がより微細に、かつ均一に分散した樹脂が得られる。
【0033】
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。両反応性モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)エステルであってもよいが、反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸が好ましい。
【0034】
本発明において、両反応性モノマーのうち、官能基を2個以上有するモノマー(ポリカルボン酸等)及びその誘導体はポリエステルの原料モノマーとして、官能基を1個有するモノマー(モノカルボン酸等)及びその誘導体はビニル系樹脂の原料モノマーとして扱う。両反応性モノマーの使用量は、官能基を2個以上有するモノマー及びその誘導体についてはポリエステルの原料モノマー中、官能基を1個有するモノマー及びその誘導体についてはビニル系樹脂の原料モノマー中、1〜10モル%が好ましく、4〜8モル%がより好ましい。
【0035】
ハイブリッド樹脂を製造する際には、縮重合反応と付加重合反応は、同一反応容器中で行うことが好ましい。また、それぞれの重合反応の進行及び完結が時間的に同時である必要はなく、それぞれの反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。具体的には、例えば、ポリエステルの原料モノマー、ビニル系樹脂の原料モノマー、両反応性化合物等を混合し、まず、主として50〜180℃で付加重合反応により縮重合反応が可能な官能基を有するビニル系樹脂成分を得、次いで反応温度を190〜270℃に上昇させた後、主として縮重合反応によりポリエステル成分を形成させることが好ましい。
【0036】
ハイブリッド樹脂を製造する際には、離型剤の分散性及びトナーの耐久性の観点から、反応系に離型剤を添加し、樹脂中に内添してもよい。離型剤の添加量は、原料モノマーの総量100重量部に対して、0.5〜25重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、3〜10重量部がさらに好ましい。
【0037】
本発明における前記ポリエステルの軟化点は、低温定着性の観点から、110〜130℃であり、好ましくは115〜119℃、より好ましくは117〜125℃である。軟化点は、反応温度、反応時間等により適宜調整することができる。
【0038】
また、ポリエステルのガラス転移点は、定着性及び保存性の観点から、45〜70℃であり、好ましくは47〜65℃、より好ましくは50〜60℃である。
【0039】
さらに、本発明の結着樹脂を含有した電子写真用トナーを提供する。かかるトナーには、本発明の結着樹脂以外の結着樹脂が含有されていてもよいが、本発明の結着樹脂の含有量は、全結着樹脂中、20重量%以上が好ましく、30〜80重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。
【0040】
本発明のトナーは、さらに、1価の長鎖脂肪族化合物を原料モノマーとして使用した、前記110〜130℃のポリエステルに加えて、かかるポリエステルより軟化点が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15〜30℃低い結着樹脂を含有していることが好ましい。両者の結着樹脂を併用した結着樹脂を含有する電子写真用トナーは、定着の加圧力が低い画像形成装置に実装した場合において、耐オフセット性を維持しつつ特に優れた低温定着性を発揮する。
【0041】
1価の長鎖脂肪族化合物を原料モノマーとして使用した、前記ポリエステルよりも軟化点が低い結着樹脂は、ポリエステル、スチレン-アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等のいずれであってもよいが、前記ポリエステルとの相溶性の観点から、ポリエステルが好ましい。かかるポリエステルも、前記ポリエステルと同様の原料モノマーを用いて得られ、1価の長鎖脂肪族化合物の有無は特に限定されない。
【0042】
本発明のトナーには、さらに、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0043】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0044】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転送法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することが出来る。トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0045】
本発明の電子写真用トナーは、一成分現像用トナーとして、またはキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができるが、本発明のトナーは、内添剤の分散性が良好であるため、磁性粉を多量に含有する磁性トナーとしても好適に使用することができる。磁性粉の含有量は、トナー中、30重量%以上が好ましく、35〜60重量%がより好ましい。なお、磁性粉は黒色着色剤として含有されていてもよい。
【0046】
磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケル等の強磁性体、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガン等の金属の合金、Fe、γ−Fe、コバルト添加酸化鉄等の金属酸化物、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト等の各種フェライト、マグネタイト、ヘマタイト等が挙げられる。さらに、それらの表面がシランカップリング剤、チタネートシランカップリング剤等の表面処理剤で処理されたもの、又はポリマーコーティングされたものであってもよい。
【0047】
本発明の電子写真用トナーは、定着時の総圧が低い画像形成装置、すなわち定着時の加圧力が600N以下、より好ましくは400N以下である定着機を有する画像形成装置を用いてトナーを定着させる画像形成方法に用いられる。このような定着時にトナーにかかる圧力の低い定着機としては、ベルトニップ方式の定着機や、オーブン定着、フラッシュ定着等の非接触熱定着方式の定着機が挙げられる。これらのなかでは、ベルトニップ方式は、トナーを溶融させる時間(ニップ幅)が長く、ローラーへの紙の巻き付き等を招きやすいが、前記1価の長鎖脂肪族化合物は離型性に優れるため、ローラーへの巻き付きも防止することができる。従って、本発明のトナーは、ベルトニップ方式の定着機に好適に用いられる。
【0048】
本発明の画像形成方法は、転写したトナー像を定着させる定着工程に特徴を有する以外は、公知の工程を経て画像を形成することができる。画像形成方法における代表的な工程としては、感光体表面に静電潜像を形成させる工程(帯電・露光工程)、静電潜像を現像する現像工程、現像したトナー像を紙等の被転写材に転写する工程(転写工程)、感光体ドラム等の現像部材に残存したトナーを除去する工程(クリーニング工程)等がある。
【実施例】
【0049】
〔軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0050】
〔ガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/minで100℃まで昇温し、降温速度100℃/minで−10℃まで冷却した試料を3分間放置し、その後、昇温速度60℃/minで25℃まで昇温し2分間保持して、昇温速度10℃/minで測定を開始する。ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移点とする。
【0051】
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマー及び酸化ジブチル錫4gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃で12時間かけて反応させた後、8.3kPaにて所定の軟化点を得るまで反応させて、樹脂A〜Fを得た。
【0052】
【表1】

【0053】
樹脂A〜Fで使用したBPA-PO(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物)とBPA-EO(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物)に含まれる付加モル数の内訳を表2、3に示す。各アルコールの内訳については、ガスクロマトグラフィーのピーク面積比より重量比を求め、重量比を分子量で換算してモル比を求めた。
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
実施例1〜4及び比較例1、2
表4に示す結着樹脂を用い、荷電制御剤「T-77」(保土谷化学工業社製)0.5重量部、離型剤「カルナバワックス C1」(加藤洋行社製)3重量部及び磁性粉「MTS106HD」(戸田工業社製)67重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロール回転速度は150r/minであった。ロール内の加熱温度は130℃であり、混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は、約18秒であった。
【0057】
得られた混練物を冷却ローラーで圧延した後、機械式粉砕機し、分級して、体積中位粒径(D50)が7μmのトナーを得た。
【0058】
得られたトナー100重量部に対して、疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製)1.0重量部及びチタン酸ストロンチウム「TiSr」(富士チタン社製)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した。
【0059】
試験例1〔耐オフセット性〕
ベルトニップ定着方式の複写機「LaserJet 4200」(ヒューレット・パッカード社製)により、トナー付着量が0.6mg/cm2の未定着画像(2cm×12cm)得た。
【0060】
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を、オフラインでの定着を可能にし、加圧力が40kgf(392N)になるように改良した定着機(定着速度:200mm/sec)で、100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、未定着画像を定着させた。定着の際、オフセット発生の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、耐オフセット性を評価した。定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ社製、75g/m)を使用した。結果を表4に示す。
【0061】
〔評価基準〕
◎:非オフセット域が60℃以上である。
○:非オフセット域が20〜50℃である。
×:非オフセット域が10℃以下である。
【0062】
試験例2〔紙の巻き付き〕
定着機の定着速度を50mm/secに変更した以外は、試験例1と同様にして、未定着画像を定着させて、紙のローラーへの巻き付きを観察した。結果を表4に示す。
【0063】
試験例3〔低温定着性〕
ベルトニップ定着方式の複写機「LaserJet 4200」(ヒューレット・パッカード社製)により、トナー付着量が0.6mg/cm2の未定着画像(2cm×12cm)得た。
【0064】
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を、オフラインでの定着を可能にし、加圧力が40kgf(392N)になるように改良した定着機(定着速度:200mm/sec)で、80℃から10℃ずつ順次上昇させながら、未定着画像を定着させた。
【0065】
定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ロールに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。結果を表4に示す。
【0066】
〔評価基準〕
◎:最低定着温度が90℃以下である。
○:最低定着温度が100〜110℃である。
×:最低定着温度が120℃以上である。
【0067】
【表4】

【0068】
以上の結果より、実施例1〜4で得られたトナーは、耐オフセット性及び低温定着性のいずれにも優れ、ベルトニップ方式の定着機に使用しても、巻き付きが発生していないことが分かる。これに対し、1価の長鎖脂肪族化合物を使用したポリエステルを含有していない比較例1では、耐オフセット性に、所望の軟化点を有するポリエステルを含有していない比較例2では、低温定着性に、それぞれ欠けているとともに、いずれの比較例のトナーも、紙の巻き付きが発生している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電子写真用トナー用結着樹脂は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーの結着樹脂等として好適に用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数10〜24の1価の脂肪族カルボン酸化合物及び炭素数10〜24の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の1価の脂肪族化合物を含有してなる原料モノマーを縮重合させて得られる、軟化点が110〜130℃のポリエステルを含有してなる、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に使用される電子写真用トナー用結着樹脂。
【請求項2】
1価の脂肪族化合物の含有量が、原料モノマー中、0.1〜20モル%である請求項1記載の電子写真用トナー用結着樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2記載の結着樹脂を含有してなる、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に使用される電子写真用トナー。
【請求項4】
さらに、軟化点が110〜130℃のポリエステルより軟化点が10℃以上低い結着樹脂を含有してなる、請求項3記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
さらに、磁性粉を、トナー中30重量%以上含有してなる請求項3又は4記載の電子写真用トナー。
【請求項6】
定着機がベルトニップ方式である、請求項3〜5いずれか記載の電子写真用トナー。
【請求項7】
請求項3〜6いずれか記載の電子写真用トナーを、定着時の加圧力が600N以下である定着機を有する画像形成装置に用いて定着させる工程を有する画像形成方法。
【請求項8】
定着機がベルトニップ方式である、請求項7記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2007−58135(P2007−58135A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246766(P2005−246766)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】