説明

電子写真用トナー

【課題】 電子写真用トナー等の着色微粒子と溶媒とを含む混合物から、容易に効率よく低コストで、不純物を含まないように着色微粒子を分離させることである。
【解決手段】 着色微粒子の分離方法は、平均粒子径50μm以下の着色微粒子と溶媒とを含む混合物から前記着色微粒子を分離させる方法であって、側面に多数の貫通孔を有し回転可能なバスケットと前記バスケットの内側面を被覆するろ材とを備えた遠心ろ過機に前記混合物を加え、遠心効果が100〜1000Gとなるように前記バスケットを回転させて前記溶媒の除去および洗浄を行い、前記着色微粒子を含む固形分濃度50%以上のろ過ケーキを分離させる方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着色微粒子の分離方法、着色微粒子および電子写真用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真用トナー等の着色微粒子は、画質を向上させ高解像度化を図るために、粒子径をより小さくすることが求められている。このため、製造方法が乾式法から湿式法へと転換されている。乾式法は、重合、粉砕、分級等による製造する方法であるのに対して、湿式法では、懸濁重合、乳化重合等の重合手段が用いられるので、より小さい粒子径のものが得られるからである。しかも、湿式法において着色微粒子を得るためには、着色微粒子、水等を含んだ重合後の反応混合物に対して固−液分離を行って、着色微粒子を分離する必要がある。
【0003】固−液分離の具体例として、特開平8−137131号公報にはデカンターを用いて着色微粒子を分離することが記載されている。しかしながら、デカンターでは固−液分離効率が悪いため、分離後に得られる着色微粒子を含んだろ過ケーキの固形分濃度は約40%と非常に低く、これを乾燥するのには時間もコストもかかる。また、着色微粒子に付着した不純物を除去するために、通常はデカンター内で水洗浄も行われるが、これについても固−液分離効率が悪いので不純物の除去は不十分であり、得られる着色微粒子の環境安定性等の物性は良好ではない。不純物の除去を完全に行うために、ろ過ケーキを再び水に投入して固−液分離を何度も行うと、工程が煩雑となり、しかも多量の排水が発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、着色微粒子と溶媒とを含む混合物から、容易に効率よく低コストで、不純物を含まないように着色微粒子を分離させることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の実験を重ねた結果、粒子径が小さい着色微粒子について、特定の装置を用い、その運転条件を制御することによって、着色微粒子を分離精製できるという知見を得て、本発明に到達した。すなわち、本発明の着色微粒子の分離方法は、平均粒子径50μm以下の着色微粒子と溶媒とを含む混合物から前記着色微粒子を分離させる方法であって、側面に多数の貫通孔を有し回転可能なバスケットと前記バスケットの内側面を被覆するろ材とを備えた遠心ろ過機に前記混合物を加え、遠心効果が100〜1000Gとなるように前記バスケットを回転させて前記溶媒の除去および洗浄を行い、前記着色微粒子を含む固形分濃度50%以上のろ過ケーキを分離させる方法である。
【0006】本発明の着色微粒子は、上記分離方法で得られる着色微粒子である。本発明の電子写真用トナーは、上記着色微粒子を含んでなる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の着色微粒子の分離方法は、平均粒子径50μm以下の着色微粒子と溶媒とを含む混合物から着色微粒子を分離させる方法である。混合物としては、平均粒子径50μm以下の着色微粒子と溶媒とを含むものであれば特に限定はないが、たとえば、懸濁重合法、分散重合法、液中造粒法等で得られる着色微粒子と溶媒とを含む混合物を挙げることができる。
【0008】液中造粒法としては、たとえば、(1)マイクロ懸濁重合法または乳化重合法によって得られるサブミクロン微粒子を造粒させる方法や、(2)溶剤に溶かしたり、熱をかけて樹脂を樹脂液に変換し、溶媒中で懸濁造粒させる方法等を挙げることができる。以下、懸濁重合法について詳しく説明する。
【0009】懸濁重合法は、重合性単量体を、たとえば、水系溶媒等の中で懸濁させ、重合させる方法である。前記重合性単量体としては、通常の懸濁重合法において使用されるものであれば、特に制限はなく、たとえば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン系樹脂;アクリル酸、メタクリル酸、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン等のその他の単量体等が挙げられる。これらの2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、スチレン系単量体および/または(メタ)アクリル酸エステル系単量体を主成分とするものが好ましい。スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを併用して重合させて、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含む着色微粒子を製造することができる。後述の電子写真用トナーとして、このようにして得られた着色微粒子を必須成分として含むものは、低温定着性および貯蔵安定性に優れるため好ましい。重合性単量体が、50重量%以上のスチレンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体との混合物であると、トナーの熱特性が優れるようになるためさらに好ましい。
【0010】重合性単量体を懸濁重合させて着色微粒子を得る際に、上記重合性単量体以外に他の重合体、たとえばポリエステル等を存在させてもよく、重合度を調整するために、連鎖移動剤等の公知の添加剤を適宜配合してもよい。また、分子間に、架橋構造を有する樹脂粒子を得ようとする場合には、重合性二重結合基を分子中に複数個有する架橋剤を前記重合性単量体とともに共重合させてもよい。
【0011】架橋剤としては、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンや、これらの誘導体等の芳香族ビニル化合物;トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリッストール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール等の架橋性(メタ)アクリル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のビニル基を2個有する化合物やビニル基を3個以上有する化合物等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレン、不飽和ポリエステル、クロロスルホン化ポリオレフィン等を用いてもよい。
【0012】懸濁重合に用いられる重合開始剤としては、たとえば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,2,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤が挙げられる。これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】重合開始剤の使用量は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。懸濁重合は着色微粒子を製造するために、通常、着色剤の存在下で行われる。着色剤は、有機顔料、無機顔料のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。
【0014】無機顔料としては、たとえば、カーボンブラック、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、各種無機酸化物顔料、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ微粉体、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、酸化セリウム等の粉末または粒子が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。これら無機顔料は、チタンカップリング剤、シランカップリング剤や高級脂肪酸金属塩等の公知の疎水化処理剤で処理されたものであってもよい。
【0015】有機顔料としては、たとえば、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザーイエローG、ハンザーイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;キリブテンオレンジ、パーマネントオレンジRK、ベンジシンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアンカーミン6B、エオミンレーキ、ローダミンレーキB、ブザリンレーキ、ブリリアンカーミンB等の赤色顔料;ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;ピラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエログリーンG等の緑色顔料等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】着色剤の使用量は、重合性単量体100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部である。磁性を有する着色微粒子を得るために、たとえば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉体や、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の金属酸化物の粉体等の磁性粉の存在下で懸濁重合することができる。これら磁性粉は、単独または前記顔料と併用して着色剤として使用できることもある。
【0017】磁性粉の使用量は、重合性単量体100重量部に対して3〜200重量部、好ましくは5〜100重量部である。懸濁重合は、着色剤および/または磁性粉の存在下で必ずしも行う必要はなく、懸濁重合後に得られた微粒子に対して、着色剤や磁性粉で表面処理および/または分散処理を行って、微粒子を着色したり、磁性を微粒子に付与させて、着色微粒子としてもよい。
【0018】懸濁重合は、オフセット防止剤や、電荷制御剤の存在下で行ってもよく、オフセット防止剤や、電荷制御剤を含む着色微粒子が得られる。オフセット防止剤としては特に限定はないが、たとえば、環状法軟化点80〜180℃の重合体が挙げられる。環状法軟化点80〜180℃の重合体としては、たとえば、重量平均分子量1000〜45000、好ましくは重量平均分子量2000〜6000程度のポリオレフィン、すなわち、ポリオレフィンワックスが挙げられる。
【0019】ポリオレフィンワックスとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等の単独の重合体;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ペンテン共重合体、エチレン−3−メチル−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体;オレフィンと以下のその他の単量体との共重合体等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】上記その他の単量体としては、たとえば、ビニルメチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルアセテート、ビニルブチレート等のビニルエステル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン等のハロオレフィン類;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類; アクリロニトリル、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリル酸誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の有機酸類;ジエチルフマレート、β−ピネン等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】オフセット防止剤は、上記ポリオレフィン以外に、天然または合成のパラフィンワックス類、特に融点60〜70℃の高融点パラフィンワックス類;ステアリン酸の亜鉛塩、バリウム塩、鉛塩、コバルト塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のステアリン酸金属塩;オレフィン酸の亜鉛塩、マンガン塩、鉛塩、鉄塩等のオレフィン酸金属塩;パルチミン酸の亜鉛塩、コバルト塩、マグネシウム塩等の脂肪酸金属塩;炭素数17以上の高級脂肪酸金属塩;ミリシルアルコール等の高級アルコール類;ステアリン酸グリセリド、パルミチン酸グリセリド等の多価アルコールエステル類;ミリシルステアレート、ミリシルパルミテート等の脂肪酸エステル類;モンタン酸部分ケン化エステル等の脂肪酸部分ケン化エステル類;ステアリン酸、パルミチン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸類;エチレンビスステアロイルアミド等の脂肪酸アミド等を含むものであってもよい。
【0022】電荷制御剤としては特に限定はないが、たとえば、ニグロシン、モノアゾ染料、亜鉛、ヘキサデシルサクシネート、ナフトエ酸のアルキルエステル、アルキルアミド、ニトロフミン酸、N,N−テトラメチルベンジジン、トリアジン、サリチル酸金属錯体等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。電荷制御剤の添加は、懸濁重合開始前や懸濁重合中に限られるものではなく、懸濁重合終了後に添加を行ってもよい。
【0023】懸濁重合における懸濁粒子の安定化を図るために、懸濁重合を分散安定剤存在下に行ってもよい。分散安定剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、トラガント、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、アリル−アルキル−ポリエーテルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、3,3’−ジスルホンジフェニル尿素−4,4’−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2’,5,5’−テトラメチル−トリフェニルメタン−1,1’−ジメチル−アゾ−ビス−β−ナフトール−ジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸アンモニウム、アルカリスルホン酸ナトリウム、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等の界面活性剤;アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】上記分散安定剤を用いることによって着色微粒子の粒子径を調節することができ、分散安定剤の種類や、添加量を適宜選択して、着色微粒子の粒子径を1〜50μm、好ましくは3〜20μmに調節することができる。分散安定剤として水溶性高分子を用いる場合は、重合性単量体組成物100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。一方、分散安定剤として界面活性剤を用いる場合は、重合性単量体100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。
【0025】上記懸濁重合によって、平均粒子径50μm以下の着色微粒子と溶媒とを含む混合物が得られるが、着色微粒子は、その種類や粒子径分布によってダイラタンシー性を呈することがある。特にこのダイラタンシー性は、平均粒子径50μm以下、特に20μm以下の着色微粒子において顕著に発現することがあり、以下に詳しく述べる遠心ろ過の妨げになることがある。そこで、前記着色微粒子を含む混合物に対して凝集操作を行うことで、前記着色微粒子を2次凝集等させて、混合物が前記着色微粒子の凝集体をさらに含むようにすると、混合物中の粒子分布が変化し、見かけの粒子径が大きくなるので、遠心ろ過を円滑に行うことが可能になるため好ましい。また、ダイラタンシー性を顕著に呈しない場合でも凝集操作を行うと、ろ過および水洗浄が容易かつ低コストで行われるようになるため好ましい。
【0026】上記凝集操作は、着色微粒子を2次凝集等させるものであれば特に限定はなく、たとえば、凝集剤を添加する操作を挙げることができる。凝集剤としては、着色微粒子および分散安定剤とは逆の極性の物質;着色微粒子が溶解しない有機溶媒;酸および水溶性多価金属塩;疎水性シリカ、疎水性チタニア、疎水性ジルコニア等の疎水性微粒子等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。これらを添加することによって、着色微粒子の2次凝集を生じさせることができる。
【0027】凝集剤の添加量は、混合物に含まれる着色微粒子100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは0.02〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部である。次に、液中造粒法として乳化重合を行う場合、まず、乳化重合によってサブミクロンの大きさの超微粒子を得た後、着色剤や、適宜磁性粉等を添加して凝集操作を行って、着色微粒子が得られる。なお、乳化重合で着色微粒子を製造するのに用いられる着色剤および磁性粉としては、前述のものが用いられる。
【0028】乳化重合後の凝集操作は、超微粒子が凝集する操作であれば特に限定はないが、たとえば、酸、多価金属塩、アルカリ金属塩等の電解質物質の添加;疎水性微粒子の添加;逆イオン性微粒子の添加等の公知の方法によって行われる。着色剤の添加量は、サブミクロンの大きさの超微粒子を含んだ乳化重合物固形分100重量部に対して、1〜20重量部である。また、磁性粉の添加量は、乳化重合物固形分100重量部に対して、3〜200重量部である。
【0029】次に、液中造粒法として溶媒中で懸濁造粒させる方法を行う場合、各種樹脂を溶剤に溶解させたり、各種樹脂を加熱して溶融させて液状にして、各種樹脂を加熱して溶融させて液状にして、各種樹脂を溶解しない溶媒中に分散させた懸濁液を得る。ここで、各種樹脂を溶剤に溶解させた場合は、懸濁液を加熱し、樹脂液滴中から溶剤を除去することによって樹脂粒子が得られる。また、各種樹脂を加熱して溶融させた場合は、懸濁液を冷却して懸濁液温度を下げることによって樹脂粒子が得られる。
【0030】前記各種樹脂としては、溶剤に溶解したり、加熱して溶融して、液状になる物質であれば特に限定はなく、たとえば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】上記樹脂を懸濁造粒させる方法で、着色剤や磁性粉等の添加時期については特に限定はないが、各種樹脂を溶解させたり溶融させる時にこれらを添加し、分散させるのが好ましい。なお、樹脂を懸濁造粒させて着色微粒子を製造するのに用いられる着色剤および磁性粉としては、前述のものが用いられる。次に、着色微粒子の分離に用いられる遠心ろ過機としては、側面に多数の貫通孔を有し回転可能なバスケットとこのバスケットの内側面を被覆するろ材とを備えたものであれば特に限定はなく、たとえば、図1に示す遠心ろ過機7を挙げることができる。遠心ろ過機7では、回転可能なバスケット1が縦型の構造(縦型バスケット)となっており、遠心ろ過後に得られる着色微粒子を含むろ過ケーキは底部から排出される構造(底部排出構造)となっている。遠心ろ過機7は、回転可能なバスケット1と、バスケット1の内側面を被覆するろ材9と、ろ過ケーキに含まれる着色微粒子を洗浄するための洗浄液をバスケット1に供給する洗浄用シャワーリングノズル2と、着色微粒子と溶媒とを含む混合物をバスケット1に供給する給液パイプ3と、バスケット1を回転させるモーター4と、ろ材9に付着したろ過ケーキを掻取る掻取装置5と、ろ過ケーキを遠心ろ過機7から取り出すろ過ケーキ排出口6とを備えている。
【0032】バスケット1はその側面に多数の貫通孔8を有しており、この貫通孔8を通じて、混合物に含まれる溶媒や、ろ過ケーキに含まれる着色微粒子を洗浄液で洗浄した後の洗液が、バスケット1の外に排出されるようになっている。遠心ろ過機7を用いて着色微粒子を分離させる操作については、遠心ろ過機7のバスケット1での遠心効果が100〜1000Gとなるように回転させて、混合物を加え、混合物に含まれる溶媒を除去し、洗浄を行って、着色微粒子を含む固形分濃度50%以上のろ過ケーキを分離させるものであれば、特に限定はないが、より容易に効率よく低コストで、不純物を含まないように着色微粒子を分離させるためには、混合物供給・脱液工程と、洗浄・脱液工程と、掻取工程とを含む以下に詳しく説明する遠心ろ過操作が好ましい。
【0033】混合物供給・脱液工程は、バスケット1を回転させながら、給液パイプ3を通じて平均粒子径50μm以下の着色微粒子と溶媒とを含む混合物をバスケット1に供給し、遠心力によって溶媒をバスケット1から排出させ、着色微粒子を含むろ過ケーキをろ材9の内表面に付着させる工程である。洗浄・脱液工程は、バスケット1を回転させながら洗浄用シャワーリングノズル2から洗浄液を導入して、混合物供給・脱液工程においてろ材9の内表面に付着したろ過ケーキを洗浄し、遠心力によって洗浄した後の洗液をバスケット1から排出させ、ろ過ケーキから懸濁安定剤等の不純物を除去する工程である。なお、洗浄・脱液工程は、より精製された着色微粒子を得るために、複数に分けて行ってもよい。
【0034】洗浄液としては、着色微粒子を洗浄できる液体であれば特に限定はなく、たとえば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット等の石油系溶剤等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】掻取工程は、掻取装置5を用いて、洗浄・脱液工程後のろ材9の内表面に付着したろ過ケーキを掻取って、ろ過ケーキ排出口6から取り出す工程である。ろ材は、前記溶媒や洗液は通過させるが、着色微粒子を含むろ過ケーキを通過させないものが用いられる。ろ材としては、ろ過ケーキに含まれる平均粒子径50μm以下の着色微粒子を分離させる目開きを有するものであれば特に限定はなく、たとえば、ポリプロピレン、テトロン、ナイロン、綿、ビニロン等の材質のものを挙げることができる。ろ材の目開きの程度については限定はないが、好ましくは通気量500cc/cm2 ・min以下、さらに好ましくは300cc/cm2 ・min以下、最も好ましくは200cc/cm2 ・min以下である。ろ材の目開きの程度が通気量500cc/cm2 ・min以上であると、平均粒子径50μm以下の着色微粒子がろ材を通過し、着色微粒子の分離回収率が低下するとともに、ろ過後の溶媒や洗液に着色微粒子が混じるようになって、新たに排水処理の問題が生じることがある。
【0036】なお、上記遠心ろ過操作は、上記と同じ縦型バスケットを備えるが、排出については上部から行う構造の遠心ろ過機(図示せず)を用いて行ってもよいし、横型のバスケットを備えた構造の遠心ろ過機(図示せず)を用いて同様の操作を行うこともできる。バスケットの回転は、遠心力場内に作用する力の大小を示し、遠心加速度と重力加速度との比で定義される遠心効果が100〜1000G(無次元数)となるように行われ、混合物中に含まれる溶媒が除去されるとともに、洗浄液で洗浄される。この結果、遠心ろ過によって得られるろ過ケーキの厚みは均一になり、高いろ過率で良好な洗浄効果が得られるようになる。遠心効果は、さらに好ましくは200〜800G、最も好ましくは300〜700Gである。遠心効果が100G未満であると、遠心力が弱くなり、混合物に含まれる溶媒や、ろ過ケーキに含まれる着色微粒子を洗浄した後の洗液と、ろ過ケーキとの分離が不十分となり、ろ過ケーキの固形分濃度が低くなってしまうし、混合物中に含まれることがある懸濁安定剤等の不純物が水洗浄で十分に除去されずにろ過ケーキに残存するようになる。一方、遠心効果が1000Gを超えると、遠心力が強いためろ過効果は高くなるが、混合物を連続してバスケットに供給する場合、混合物に含まれる溶媒は瞬時にろ過され、ろ過ケーキはろ材表面にすぐに堆積するため、ろ過ケーキの厚みは不均一になりやすく、洗浄も均一に行うことができなくなる。さらに、ろ過ケーキに含まれる着色微粒子は強い遠心力によって高圧で圧せられるため、着色微粒子の破壊、破損が起こることがある。
【0037】このようにして得られる着色微粒子を含んだろ過ケーキの固形分濃度は、50%以上であり、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。固形分濃度が50%未満と、懸濁安定剤等の不純物が水洗浄で十分に除去されずにろ過ケーキに残存するようになり、さらに洗浄が必要になったり、ろ過ケーキを乾燥させるのに長時間かかったりするため好ましくない。
【0038】本発明の分離方法で得られる着色微粒子は、電子写真用トナーの他、ゴム用添加用塗料用添加剤、インク用添加剤、紙用添加剤、マット剤、艶消し剤、光拡散剤、感熱転写用インクリボンコート剤、感熱転写用インキ、磁気記録媒体用バックコート剤、粉体塗料、スペーサー材、着色剤等の幅広い用途に応用するすることができる。
【0039】本発明の電子写真用トナーは、上記分離方法で得られる着色微粒子を含んでなる。電子写真用トナーは、着色微粒子を必須成分として含み、疎水性シリカ、疎水性チタニア等の疎水性微粒子を含有する流動化剤をさらに含むものであってもよい。電子写真用トナーの帯電保持率は特に限定はないが、70%以上であると、電子写真用トナーの表面に付着した不純物は少なく、上記分離方法で十分に電子写真用トナーは精製され、湿度等の影響を受けにくく、環境安定性が高くなるため好ましい。
【0040】電子写真用トナー中に含まれる着色微粒子(以下、「電子写真用トナー中に含まれる着色微粒子」を「着色微粒子A」ということがある。)としては、上記分離方法で得られるものであれば、特に着色微粒子A中に含まれる成分について限定はないが、スチレン−アクリル系樹脂を主成分とし、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂をさらに含むことがあり、ガラス転移温度が50〜75℃(好ましくは60〜79℃)である樹脂Aを必須成分として含むと、トナーの熱溶融特性や機械的特性に優れるため好ましい。
【0041】着色微粒子Aは、上記樹脂A以外に、カーボンブラックや、ブラック、イエロー、マジェンダ、シアン等の色の各種有機顔料の着色剤;帯電制御剤;ワックス等を適宜配合してもよい。なお、着色微粒子Aが帯電制御剤を含むと、帯電量を一定に保つことが可能になる。着色微粒子Aがワックスを含むと、熱ロール定着方式において、樹脂Aが熱ロールに付着するのを防止することができる。
【0042】
【実施例】以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中「部」は「重量部」を示す。
(実施例1)スチレン3400部、n−ブチルアクリレート600部、ジビニルベンゼン1部、カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA−100R)400部、オレイン酸アミノオレエート20部、電荷制御剤(保土谷化学工業(株)製、スピロンブラックTRH)11部およびアゾビスバレロニトリル120部をバッチ式サンドミルに添加し、分散処理を行ってカーボンブラックを均一に分散させた重合性単量体組成物を得た。得られた重合性単量体組成物と、0.2%ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム水溶液4500部との混合液を、エバラマイルダー((株)荏原製作所製)に入れ、8000rpmで1回通過させて懸濁液を得た。この懸濁液を窒素雰囲気下で重合粒子が沈降しない程度に全体を均一に攪拌しながら、75℃で6時間重合させて着色微粒子(1)を製造した。
【0043】重合液中の着色微粒子濃度は20%であり、その粒子径は、コールターマルチサイダーII(コールター社製)で測定すると、体積平均粒子径6.5μmであった。単位体積当たり攪拌所要動力0.5kw/m3 で重合液を攪拌しながら、この重合液に10%疎水性シリカ(日本アエロジル社製、R−972)のメタノール分散液220部を添加し、70℃まで昇温して着色微粒子を凝集させ、常温まで冷却して凝集スラリーを得た。
【0044】ろ布(岡田帆布(株)製、通気量192cc/cm2 ・min)をバスケットの内側面にセットした遠心ろ過機((株)田邊鉄工所製、O−20型)を用意し、バスケットを遠心効果300Gで回転させながら、凝集スラリー20kgを3分間で供給し、2分間脱液を行った。ついで、常温の脱イオン水10kgを1分間でシャワリングノズルから供給して洗浄を行い、最後に2分間脱水してろ過ケーキを得た。
【0045】得られたろ過ケーキは、ろ布に均一な厚みで堆積し、その固形分濃度は82%であった。ろ過ケーキを掻取装置で掻き落とし回収して、振動流動減圧乾燥機を用いて50℃で3時間乾燥し、3.28kgの乾燥物を得た。この乾燥物をピンミルで解砕し、着色微粒子(1)を得た。解砕後の着色微粒子(1)の体積平均粒子径は6.5μmであり、重合後と同じであった。
【0046】温度23℃で、湿度60%および90%の条件下に24時間放置して、着色微粒子(1)の帯電保持率を測定すると、湿度60%では帯電保持率90%、湿度90%では帯電保持率89%であり、帯電保持率は湿度の影響をほとんど受けず、重合に使用された懸濁安定剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム)等は完全に除去されたことを示している。
【0047】この着色微粒子(1)を電子写真用トナー(1)として用い、これに疎水性シリカ(同前)を0.3%添加し、シリコーン樹脂コートフェライトキャリアでトナー濃度が4%になるように調整して、二成分現像剤を作製した。この二成分現像剤を複写機(東芝(株)製、レオドライ7610)にセットし、複写テストを行うと、鮮明な解像度の良好な画像が得られ、カブリも認められなかった。
【0048】実施例1および以下の実施例、比較例では、帯電保持率は以下のようにして測定した。直径50mm、深さ2.5mmの凹部を有する真鍮製容器に、着色微粒子粉体約5gを均一に充填した後、表面を平滑にし、温度23℃で、湿度60%および90%の条件下に24時間静置した。この真鍮製容器をアースされた試料台に置き、着色微粒子粉体表面にコロナチャージして強制帯電させ、着色微粒子粉体の表面電位を表面電圧計で測定し、強制帯電後5分間の帯電保持率を測定し、以下の計算式で強制帯電後の帯電保持率を算出した。
帯電保持率=(強制帯電後5分の表面電位)/(強制帯電直後の表面電位)×100(実施例2)実施例1で用いた0.2%ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム水溶液を、0.04%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと4%リン酸カルシウムとを含んだ水に変更する以外は、実施例1と同様の方法で懸濁重合を行って、着色微粒子(2)を製造した。
【0049】重合液中の着色微粒子濃度は20%であり、その粒子径は、実施例1と同様の方法で測定すると、体積平均粒子径10μmであった。この重合液に塩酸を添加してリン酸カルシウムを溶解させた。次に、ろ布(岡田帆布(株)製、通気量54cc/cm2 ・min)をバスケットの内側面にセットした遠心ろ過機(同前)を用意し、バスケットを遠心効果700Gで回転させながら、凝集スラリー20kgを3分間で供給し、2分間脱液を行った。ついで、常温の脱イオン水20kgを2分間でシャワリングノズルから供給して洗浄を行い、最後に5分間脱水してろ過ケーキを得た。
【0050】得られたろ過ケーキは、ろ布に均一な厚みで付着し、その固形分濃度は75%であった。ろ過ケーキを掻取装置で掻き落とし回収して、振動流動減圧乾燥機を用いて50℃で4時間乾燥し、3kgの乾燥物を得た。この乾燥物をピンミルで解砕し、着色微粒子(2)を得た。解砕後の着色微粒子(2)の体積平均粒子径は10μmであり、重合後と同じであった。
【0051】実施例1と同じ条件で着色微粒子(2)の帯電保持率を測定すると、湿度60%では帯電保持率86%、湿度90%では帯電保持率82%であり、帯電保持率は湿度の影響をほとんど受けず、十分に洗浄されたことを示している。実施例1と同様にして、この着色微粒子(2)を電子写真用トナー(2)として用いて複写テストを行うと、鮮明な解像度の良好な画像が得られ、カブリも認められなかった。
(実施例3)過硫酸カリウム20部を溶解させた0.2%ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム水溶液6000部を準備し、70℃で攪拌しながらこの水溶液に、スチレン3200部、n−ブチルアクリレート600部およびメチルメタアクリレート200部を含む重合性単量体組成物を2時間かけて滴下し、続けて熟成反応を4時間行い、固形分40%の乳化重合物を得た。
【0052】得られた乳化重合物のうちの4000部、カーボンブラック(同前)400部および電荷制御剤(同前)11部をアトライターを用いて60分間攪拌して分散処理した混合物を、残りの乳化重合物に添加した。さらに、単位体積当たり攪拌所要動力0.5kw/m3 で攪拌しながら、10%疎水性シリカ(同前)のメタノール分散液440部を添加し、75℃まで昇温して着色微粒子を凝集させて凝集粒子径5〜10μmに成長したのを光学顕微鏡で確認した後、常温まで冷却して凝集スラリーを得た。
【0053】ろ布(岡田帆布(株)製、通気量72cc/cm2 ・min)をバスケットの内側面にセットした遠心ろ過機(同前)を用意し、バスケットを遠心効果500Gで回転させながら、凝集スラリー20kgを3分間で供給し、2分間脱液を行った。ついで、常温の脱イオン水15kgを2分間でシャワリングノズルから供給して洗浄を行い、最後に5分間脱水してろ過ケーキを得た。
【0054】得られたろ過ケーキは、ろ布に均一な厚みで付着し、その固形分濃度は77%であった。ろ過ケーキを掻取装置で掻き落とし回収して、振動流動減圧乾燥機を用いて50℃で4時間乾燥し、3.1kgの乾燥物を得た。この乾燥物をピンミルで解砕し、着色微粒子(3)を得た。解砕後の着色微粒子(3)の体積平均粒子径は8.5μmであった。
【0055】温度23℃で、湿度60%および90%の条件下に24時間放置して、着色微粒子(2)の帯電保持率を測定すると、湿度60%では帯電保持率78%、湿度90%では帯電保持率75%であり、帯電保持率は湿度の影響をほとんど受けず、十分に洗浄されたことを示している。実施例1と同様にして、この着色微粒子(3)を電子写真用トナー(3)として用いて複写テストを行うと、鮮明な解像度の良好な画像が得られ、カブリも認められなかった。
【0056】
【表1】


【0057】(比較例1)実施例1と同じろ布をセットした遠心ろ過機を用意し、バスケットを遠心効果80Gで回転させながら、実施例1と同じ方法で得られた凝集スラリー20kgを4分間で供給し、5分間脱液を行った。ついで、常温の脱イオン水10kgを2分間でシャワリングノズルから供給して洗浄を行い、最後に5分間脱水してろ過ケーキを得た。
【0058】得られたろ過ケーキは、ろ布に均一な厚みで付着していたが、その固形分濃度は42%であった。ろ過ケーキを掻取装置で掻き落とし回収して、振動流動減圧乾燥機を用いて50℃で乾燥するのに10時間要し、1.68kgの乾燥物を得た。この乾燥物をピンミルで解砕し、比較用着色微粒子(1)を得た。解砕後の比較用着色微粒子(1)の体積平均粒子径は6.5μmであった。
【0059】温度23℃で、湿度60%および90%の条件下に24時間放置して、比較用着色微粒子(1)の帯電保持率を測定すると、湿度60%では帯電保持率62%、湿度90%では帯電保持率40%であり、帯電保持率は湿度の影響を強く受けており、洗浄が不十分であったことを示している。この比較用着色微粒子(1)を比較用電子写真用トナー(1)として用いて複写テストを行うと、鮮明な解像度の画像ではあったが、カブリが認められた。
(比較例2)実施例1と同じろ布をセットした回転速度を速くする目的で改造した遠心ろ過機を用意し、バスケットを遠心効果1100Gで回転させながら、実施例1と同じ方法で得られた凝集スラリー20kgを2分間で供給し、2分間脱液を行った。ついで、常温の脱イオン水10kgを1分間でシャワリングノズルから供給して洗浄を行い、最後に2分間脱水してろ過ケーキを得た。
【0060】得られたろ過ケーキはろ布に不均一な厚みで付着し、凝集スラリーの供給ノズル部付近で厚く積層しており、その固形分濃度は85%であった。ろ過ケーキを掻取装置で掻き落とし回収して、振動流動減圧乾燥機を用いて50℃で2.5時間乾燥し、3.4kgの乾燥物を得た。この乾燥物をピンミルで解砕し、比較用着色微粒子(2)を得た。解砕後の比較用着色微粒子(2)の体積平均粒子径は6.5μmであった。
【0061】温度23℃で、湿度60%および90%の条件下に24時間放置して、比較用着色微粒子(2)の帯電保持率を測定すると、湿度60%では帯電保持率53%、湿度90%では帯電保持率38%であり、帯電保持率は湿度の影響を強く受けており、洗浄が不十分であったことを示している。この比較用着色微粒子(2)を比較用電子写真用トナー(2)として用いて複写テストを行うと、鮮明な解像度の画像ではあったが、カブリが認められた。
(比較例3)実施例1と同じ懸濁重合を行い、比較用着色微粒子の濃度20%の重合液を得た。
【0062】遠心分離機(同前)を用意し、遠心効果1500Gで回転させながら、上記重合液を供給して固−液分離を行ってろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを脱イオン水10kgに再分散させ、洗浄、遠心分離機での固−液分離を3度行った。得られたろ過ケーキの固形分濃度は45%であった。これを振動流動減圧乾燥機を用いて50℃で乾燥するのに9時間要し、1.8kgの乾燥物を得た。この乾燥物をピンミルで解砕し、比較用着色微粒子(3)を得た。
【0063】温度23℃で、湿度60%および90%の条件下に24時間放置して、比較用着色微粒子(3)の帯電保持率を測定すると、湿度60%では帯電保持率35%、湿度90%では帯電保持率21%であり、帯電保持率は湿度の影響を強く受けており、洗浄が不十分であったことを示している。この比較用着色微粒子(3)を比較用電子写真用トナー(3)として用いて複写テストを行うと、鮮明な解像度の画像は得られず、カブリが認められた。
(比較例4)実施例2と同じ懸濁重合を行い、比較用着色微粒子を含む重合液を得た。
【0064】遠心分離機(同前)を用意し、遠心効果2000Gで回転させながら、上記重合液を供給して固−液分離を行ってろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを脱イオン水20kgに再分散させ、洗浄、遠心分離機での固−液分離を3度行った。得られたろ過ケーキの固形分濃度は39%であった。これを振動流動減圧乾燥機を用いて50℃で乾燥するのに10時間要し、1.56kgの乾燥物を得た。この乾燥物をピンミルで解砕し、比較用着色微粒子(4)を得た。
【0065】温度23℃で、湿度60%および90%の条件下に24時間放置して、比較用着色微粒子(4)の帯電保持率を測定すると、湿度60%では帯電保持率42%、湿度90%では帯電保持率33%であり、帯電保持率は湿度の影響を強く受けており、洗浄が不十分であったことを示している。この比較用着色微粒子(4)を比較用電子写真用トナー(4)として用いて複写テストを行うと、鮮明な解像度の画像は得られず、カブリが認められた。
【0066】
【表2】


【0067】
【発明の効果】本発明の着色微粒子の分離方法は、着色微粒子と溶媒とを含む混合物から、容易に効率よく低コストで、不純物を含まないように着色微粒子を分離させることができる。本発明の着色微粒子は、容易に効率よく低コストで得られ、不純物を含まない。
【0068】本発明の電子写真用トナーは、容易に効率よく低コストで製造され、帯電保持率は湿度の影響をほとんど受けず、不純物を含まない。そのため、複写テストを行うと、鮮明な解像度の良好な画像が得られ、カブリも認められない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の着色微粒子の分離方法に用いられる遠心ろ過機の概略図。
【符号の説明】
1 バスケット
2 洗浄用シャワーリングノズル
3 給液パイプ
4 モーター
5 掻取装置
6 ろ過ケーキ排出口
7 遠心ろ過機
8 貫通孔
9 ろ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】平均粒子径50μm以下の着色微粒子と溶媒とを含む混合物から前記着色微粒子を分離させる方法であって、側面に多数の貫通孔を有し回転可能なバスケットと前記バスケットの内側面を被覆するろ材とを備えた遠心ろ過機に前記混合物を加え、遠心効果が100〜1000Gとなるように前記バスケットを回転させて前記溶媒の除去および洗浄を行い、前記着色微粒子を含む固形分濃度50%以上のろ過ケーキを分離させる着色微粒子の分離方法。
【請求項2】前記混合物が前記着色微粒子の凝集体をさらに含む請求項1に記載の着色微粒子の分離方法。
【請求項3】前記着色微粒子は液中造粒法で得られる請求項1または2に記載の着色微粒子の分離方法。
【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の分離方法で得られる着色微粒子。
【請求項5】請求項4に記載の着色微粒子を含んでなる電子写真用トナー。

【図1】
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