説明

電子写真用ブレード

【課題】加水分解耐性はあるもののエステル系ポリウレタンよりも対摩耗性が劣り、ブレード素材としては不向きとされているエーテル系ポリウレタンに着目し実用的なブレードを開発する。
【解決手段】硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物を用いて得られるエーテル系ポリウレタンからなる電子写真装置用弾性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置用弾性部材、その製造方法、電子写真装置用現像ブレード、クリーニングブレード及び現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機、ファクシミリ等の電子写真装置には、感光体に接触する現像ローラ、クリーニングブレード、現像ローラ上にトナーの薄層を形成するための現像ブレード等、各種の摺動部品には、柔軟で弾性を有し、耐摩耗性にも優れたポリウレタンが一般に使用されている。電子写真用ブレードは、トナーをかきとったり、薄膜を形成したりと常に相手材と摺擦されるため対摩耗性の優れるポリウレタンが一般に用いられる。
各種のポリウレタンの種類を網羅的に例示した先行文献(例えば、特許文献1:特開2000−235337号公報)が見受けられる。
しかし、現実に実用化されているものは、エステル系ポリウレタンである。エステル系ポリウレタンは、対摩耗性が高いので一般に用いられている。一方、エステル系ポリウレタンには、加水分解し易く、圧接性能等の物性値が経年劣化する問題がある。しかし、対摩耗性を重視して使用されている。
【0003】
他の代表的なポリウレタンであるエーテル系ポリウレタンは、加水分解耐性はあるものの、エステル系ポリウレタンよりも対摩耗性が小さく、実用的でないとされ、使用されていないのが現実である。
さらに、近年高画質化のために、トナーの粒径は細かく、形状は丸くなる方向であり、クリーニングや薄膜を形成するブレードとしての最適点が小さくなる方向にある。トナーの小粒径化、球状化のためにクリーニングブレードは、確実にトナーをクリーニングするためにより強く相手材に圧接させた状態で使用するケースが増えてきており、より対摩耗性が要求されている。
つまり、耐加水分解性のあるエーテル系ポリウレタンの耐磨耗性向上が求められる。
つまり、エッジ部分はより対摩耗性が要求され、エッジ部以外の部分では、永久歪みが少ないことなど、要求が多様化しており、単一の材質によってブレードを構成するポリウレタンの材料設計が限界に来ている。そこでエッジ部とバックアップ層を別々の配合で形成する案が提案されており、配置や構造など実用に供するものが求められている。
本出願人は、エッジ部やニップ部の位置と形状をベースとなるバックアップ層と別素材で形成できるブレード素材の研究開発を継続しており、この位置と形状をコントロールできる技術を開発し、既に、特許文献2(特開2007−30385号公報)、特許文献3(特開2007−163676号公報)を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】:特開2000−235337号公報
【特許文献2】:特開2007−30385号公報
【特許文献3】:特開2007−163676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2種類の材料を用いることは工程が煩雑になり、コストも高くなる。本発明は、加水分解耐性はあるもののエステル系ポリウレタンよりも対摩耗性が劣り、ブレード素材としては不向きとされているエーテル系ポリウレタンに着目し実用的なブレードを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、硬化剤に着目し、十分な印字性能を備えたエーテル系ポリウレタン製ブレードを実現した。本発明の主な構成は次のとおりである。
1. 硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物を用いて得られるエーテル系ポリウレタンからなることを特徴とする電子写真装置用弾性部材。
2. 飽和脂肪酸アルカリ金属塩は、飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩である1.記載の電子写真装置用弾性部材。
3. エーテル系ポリウレタンがポリテトラメチレングリコール系ポリウレタンであって、
硬化触媒として、飽和脂肪酸アルカリ金属塩がポリウレタン100質量部に対して0.200〜0.001質量部、有機スズ化合物がポリウレタン100質量部に対して0.0001〜0.0050質量部であることを特徴とする1.又は2.記載の電子写真装置用弾性部材。
3−2 飽和脂肪酸アルカリ金属塩は、RCOOM(RはC2n+1で表されるアルキル基である。nは0〜9の整数である。Mはアルカリ金属である。)で表される塩である1.記載の電子写真装置用弾性部材。
4. 1.2.又は3.記載の電子写真装置用弾性部材を用いて得られることを特徴とする電子写真装置用現像ブレード。
5. 1.2.又は3.記載の電子写真装置用弾性部材を用いて得られることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
6. 1.2.又は3.記載の電子写真装置用弾性部材を用いて得られることを特徴とする電子写真装置用現像ローラ。
7. エーテル系ポリウレタンの構成成分と、硬化触媒としての飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物とを含む組成物を、ミキシングチャンバー内で混合・攪拌する工程(1)、
前記工程(1)で混合・攪拌された組成物を予め硬化温度に温調されている成形用金型に注入する工程(2)、
前記工程(2)で注入された組成物を硬化させる工程(3)、並びに、
前記工程(3)で得られた硬化物を脱型する工程(4)
を含むことを特徴とする電子写真装置用弾性部材の製造方法。
8. 成形用金型が、外周に成形溝、内部に加熱装置を備えた成形ドラム及び、該成形ドラムの外周に沿って、エーテル系ポリウレタン組成物の供給手段、成形ドラムの成形溝を覆いながら成形ドラムの回転に同期して回走するエンドレスベルトを順次配置し、成形溝に供給したエーテル系ポリウレタン組成物をエンドレスベルトと成形溝から形成される成形空間によって、所定の幅と厚さを有する帯状のブレード素材を成形ドラムを回転させながら硬化させて帯状のブレード素材を取り出し、長さを定寸にカットしてブレードを製造することを特徴とする7.記載の電子写真装置用弾性部材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
全体を、エーテル系ポリウレタンを用いた電子写真装置用弾性部材を開発することができた。電子写真装置用弾性部材は、摺擦部材であって、クリーニングブレード、現像用ブレード、電子写真装置用現像ローラ等である。
本発明のエーテル系ポリウレタン製のクリーニングブレードは、耐久性が優れている。
本発明の、エーテル系ポリウレタン製のクリーニングブレードは、永久歪みが小さく、トナーのすり抜けが無く綺麗な印字を実現できる。
本発明の電子写真装置用弾性部材は、ポリテトラメチレングリコールをポリオールとして用い、飽和脂肪酸アルカリ金属塩がポリウレタン100質量部に対して0.200〜0.001質量部、有機スズ化合物がポリウレタン100質量部に対して0.0001〜0.0050質量部を硬化触媒するエーテル系ポリウレタン製である。そして、この電子写真装置用弾性部材は、連続成形する外周に溝を設けた成形ドラムを回転させながら、短時間に硬化させて、連続的に製造できるので、複雑な工程を経ることなく低コストで製造することができる。
また、硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物を用いて得られる本発明のポリウレタンは、製造工程中のミキシングチャンバー内での汚染を抑制するのでチャンバー内のクリーニングなどのメンテナンスを少なくすることができ生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子写真装置用クリーニングブレードの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物を用いて得られるエーテル系ポリウレタンからなる電子写真装置用弾性部材である。本発明は、柔軟性、弾性、耐摩耗性等の優れた特性が得られるため、電子写真装置用現像ブレード、クリーニングブレード、現像ローラ等の電子写真装置用弾性部材に好適に使用することができる。
【0010】
上記電子写真装置用弾性部材を形成するエーテル系ポリウレタンとしては、ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート及び必要に応じて架橋剤を反応させて得られるもの等を挙げることができる。
【0011】
上記ポリオールは、数平均分子量が500〜5000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましい。上記範囲内のポリオールを用いることにより、柔軟性、弾性、ある程度の耐摩耗性等の優れた特性が得られる。
【0012】
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、それらの共重合体等のポリアルキレングリコール;ビスフェノールA、グリセリンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシド付加物等を挙げることができる。
【0013】
上記ポリイソシアネートとしては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネート等を挙げることができる。なかでも、芳香族イソシアネートが好ましい。
【0014】
上記脂肪族イソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。また、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体の変性体等を挙げることができる。上記脂環族イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。上記芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、カルボジイミド変性のMDI、ウレタン変性のMDI等を挙げることができる。耐摩耗性の点から、MDIが好ましい。上記ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記ポリウレタンにおいて、必要に応じて用いられる架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等を挙げることができる。なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0016】
上記ポリウレタンは、上記原料を使用し公知の方法で製造することができ、例えば、上記硬化触媒を使用し、各原料の当量比をOH/NCO=0.6〜1.05(好ましくは0.80〜1.00)に調整して溶融反応させること等により製造することができる。また、全原料を同時に反応させる方法(ワンショット法)、プレポリマー法、擬プレポリマー法等により製造することができる。
【0017】
本発明においては、硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物の両成分が併用される。アミン系化合物触媒を併用することも可能である。上記両成分をエーテル系ポリウレタンの製造の際の硬化触媒として併用した場合、耐磨耗性を向上できる。ミキシングチャンバー内での原料の攪拌中に、チャンバー内で硬化反応が進行することが抑制される。このため、チャンバー内への注入、攪拌、吐出の作業を長時間続けても、チャンバー内が硬化物で汚染されることを充分に防止することができる。
【0018】
また、チャンバー内で硬化物の生成が抑制されるため、硬化物が成形用金型に注入されることによる異物不良も防止することができる。このため、このような異物によって電子写真装置で得られる画像に悪影響を与えることも防止できる。更に、チャンバー内を溶剤等で頻繁に洗浄する必要がないため、環境上も望ましい。
【0019】
更に、上記両成分を硬化触媒として併用すると、成形用金型に注入した後において硬化反応を急激に進行させることが可能である。このため、硬化、脱型時間を短縮することができ、高効率でポリウレタン製品を製造することができる。従って、本発明の電子写真装置用弾性部材は、生産性良く製造することができる。
【0020】
製造工程中のミキシングチャンバー内での汚染を抑制すること、硬化脱型時間を短縮して生産性を向上させること、の両効果は、硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物の両成分を併用する場合に特異的に得ることができる。即ち、いずれか一方のみを使用した場合に上記効果を両立することはできない。本発明において上記効果を両立できる理由は明らかではないが、飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物の両成分を併用することによる相乗効果が発現しているためではないか、と推察される。
エーテル系ウレタンの耐摩耗性を向上できる効果は、硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物の両成分を併用する場合に特異的に得ることができる。
【0021】
本発明の電子写真装置用弾性部材は、硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物を用いて得られるエーテル系ポリウレタンからなるものである。
上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩としては、ポリウレタン製造の硬化反応を進行する機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸と、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのアルカリ金属との塩を挙げることができる。上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩を構成する飽和脂肪酸は、直鎖状、枝分かれ状のいずれであってもよい。上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩のなかでも、RCOOM(RはC2n+1で表されるアルキル基である。nは0〜9の整数である。Mはアルカリ金属である。)で表される塩が好ましい。これにより、上述した効果を良好に両立することができる。
【0023】
上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩としては、入手容易性の点から、飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。また、上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩としては、ポリウレタン製造用硬化剤への相溶性の点から、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸又はカプリン酸のアルカリ金属塩が好ましい。更に、これらの飽和脂肪酸アルカリ金属塩を使用した場合、上述した効果を良好に両立することができる。
【0024】
上記ポリウレタンの製造において、上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩の配合量は、上記ポリウレタンを構成する原料(組成物)100質量部に対して0.200〜0.001質量部であることが好ましい。0.001質量部未満であると、得られるポリウレタンの機械的特性が低下したり、硬化時間に長時間を要するおそれがある。0.2質量部を超えると、ミキシングチャンバー内で硬化反応が進行し、チャンバー内が硬化物で汚染されるおそれがある。0.01〜0.1質量部であることがより好ましい。
【0025】
上記有機スズ化合物としては、ポリウレタン製造の硬化反応を進行する機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、スタナスオクトエート、ジメチルチンジアセテート、ジブチルチンジアセテート、ジオクチルチンジアセテート、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジメチルチンジネオデカノエート、ジブチルチンジネオデカノエート、ジオクチルチンジネオデカノエート、ジメチルチンジメルカプタイド、ジブチルチンジメルカプタイド、ジオクチルチンジメルカプタイド、ジメチルスズマレイン酸塩、ジブチルスズマレイン酸塩、ジオクチルスズマレイン酸塩等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記ポリウレタンの製造において、上記ポリウレタンを構成する原料(組成物)100質量部に対して、飽和脂肪酸アルカリ金属塩が0.200〜0.001質量部、有機スズ化合物が0.0001〜0.0050質量部である。
この範囲を外れると、得られるポリウレタンの機械的特性が低下するので印字テストではトナーのすり抜けが発生する。また、硬化時間に長時間を要するおそれがある。また、多量に添加すると硬化反応が進み易くミキシングチャンバー内で硬化反応が進行し、チャンバー内が硬化物で汚染されるおそれがある。
【0027】
更に具体的には、以下に述べる製造方法によって本発明の電子写真装置用弾性部材を得ることができる。
上述した電子写真装置用弾性部材は、ポリウレタンの構成成分と、硬化触媒としての飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物とを含む組成物を、ミキシングチャンバー内で混合・攪拌する工程(1)、上記工程(1)で混合・攪拌された組成物を予め硬化温度に温調されている成形用金型に注入する工程(2)、上記工程(2)で注入された組成物を硬化させる工程(3)、並びに、上記工程(3)で得られた硬化物を脱型する工程(4)を含む方法により製造することができる。
【0028】
上記製造方法では、上記工程(1)のミキシングチャンバー内での組成物の混合・攪拌中に硬化反応が進行することを抑制できるため、チャンバー内の硬化物による汚染が防止される。このため、製造されるポリウレタン製品の異物不良も防止でき、異物による画像への悪影響を抑制することが可能となる。
【0029】
上記工程(1)で使用するポリウレタンの構成成分(原料)、硬化触媒(飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物)は、上述した成分と同様のものを挙げることができる。例えば、プレポリマー法で製造する場合は、ポリウレタンのプレポリマー及び架橋剤等の成分と、硬化触媒(飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物)等の添加剤とからなる原料を使用することができる。また、ワンショット法で製造する場合は、ポリオール、ポリイソシアネート及び必要に応じて架橋剤等の成分と、上記硬化触媒等の添加剤とからなる原料を使用することができる。上記工程(1)において、上記飽和脂肪酸アルカリ金属塩、有機スズ化合物の配合量は、上述した量と同様の量である。上記工程(1)におけるチャンバー内での混合・攪拌は、従来公知の方法により行うことができる。
【0030】
上記工程(2)における成形方法としては特に限定されず、例えば、常圧注型成形、減圧注型成形、遠心成形、回転成形、押出成形、射出成形、反応射出成形(RIM)、スピンコーティング等を挙げることができる。上記工程(2)における組成物の成形用金型への注入は、従来公知の方法により行うことができる。
【0031】
上記工程(3)は、上記組成物を所定時間加熱硬化させることによって行うことができる。硬化温度は90〜180℃が好ましく、100〜160℃であることがより好ましい。硬化時間は2分間以下で行うことができ、20秒以上行うことが好ましい。このように、本発明では、工程(3)で急速に硬化させることができるため、短時間で脱型することが可能である。従って、生産性良く製造することができる。上記工程(4)における硬化物の脱型は、従来公知の方法によって行うことができる。上記工程(4)で脱型した硬化物を、必要に応じて加工(切断、研磨等)することによって本発明の電子写真装置用弾性部材を得ることができる。
【0032】
本発明の電子写真装置用の弾性部材は、短時間に硬化させることができるので、外周に成形用溝を設けた成形ドラムを用いた連続製造方法が適している。この製造方法、製造装置は、特許第4012159号公報、特許第4018033号公報などに開示されたものを利用することができる。
【0033】
上記電子写真装置用弾性部材は、電子写真装置用現像ブレード、クリーニングブレード、現像ローラとして好適に用いることができ、上記電子写真装置用弾性部材を用いて得られる電子写真装置用現像ブレード、クリーニングブレード、現像ローラもそれぞれ本発明の1つである。
【0034】
本発明の電子写真装置用現像ブレード、クリーニングブレードとしては、例えば、上述の電子写真装置用弾性部材、支持部材及び接着剤層を有するものを挙げることができる。
上記支持部材は、弾性部材を支持する機能を有するものである。上記支持部材としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、剛体の金属、弾性を有する金属、プラスチック、セラミック等から製造されたもの等を挙げることができる。なかでも、剛体の金属が好ましい。
【0035】
上記接着剤層は、上記支持部材と上記弾性部材とを接着させる機能を有する層である。上記接着剤層は、例えば、EVA系、ポリアミド系、ポリウレタン系ホットメルト接着剤や、硬化型接着剤、若しくは両面テープによる接着方法又は板金による挟み込み等により形成することができる。上記クリーニングブレードは、従来公知の方法により製造することができる。
【0036】
以下、上記電子写真装置用クリーニングブレードを図1を用いて具体的に説明する。図1で示された電子写真装置用クリーニングブレードは、電子写真装置用弾性部材1、支持部材2及び接着剤層3を有するものを示したものである。
【実施例】
【0037】
クリーニングブレード用のブレードについて実施例を示す。製造手段は、外周に溝を形成した回転成形ドラムを利用して連続成型する方法を用いた。
クリーニングブレード用のブレードについて実施例を示す。製造手段は、外周に溝を形成した回転成形ドラムを利用して連続成型する方法を用いた。
【0038】
<クリーニングブレード>
ポリウレタン製弾性ゴム部材:厚さ2.0mm、幅12.3mm、長さ326mm
金属製支持体:厚さ1.2mmの鋼板
接着処理:ダイマー酸ベースのホットメルト接着剤使用
【0039】
<熱硬化型ポリウレタン>
用いたエーテル系ウレタンの配合は、及び評価を表1、2に示したとおりである。
【0040】
<評価>
4万枚印字した後トナーのすり抜け状態を観察して印字状態を評価した。
◎:トナーのすり抜け無し
○:若干トナーのすり抜けが観察されるが問題とならない程度である
×:トナーのすり抜けが筋状などに観察された
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表1から、実施例の電子写真装置用弾性部材の製造は、短い硬化時間で脱型可能であったため、優れた生産性を有していた。また、ミキシングチャンバー内での混合・攪拌中の汚染を良好に抑制することができた。
実施例1〜15は、トナーのすり抜けも見られず、良好な印字性能を確認することができた。
特に、実施例1〜5、10〜15は、とても良好であり、実施例6、実施例9は実用に耐えうるが若干すり抜けによる筋が観察された。実施例6あるいは実施例9が両触媒の上限、下限を示していると判断できる。実施例6より少ない触媒を添加すると、硬化時間が長くなり硬化重合が不良となる。実施例9より多くの触媒を添加すると硬化時間が短くなり、比較例5や比較例7に見られるようにミキシング中に重合が始まり、混合不良が発生する。
比較例2、3にあるように、飽和脂肪酸アルカリ金属塩あるいは有機スズ化合物単独では、不良である。また、一般に使用されているアミン系化合物でも、比較例1にあるようにトナーのすり抜けが発生し不十分であった。ただし、実施例5と実施例12の結果より、アミン系化合物を触媒として併用しても良いことが確認できた。
【0044】
この試験データから、硬化触媒として、ポリウレタンを構成する原料(組成物)100質量部に対して、飽和脂肪酸アルカリ金属塩が0.200〜0.001質量部、有機スズ化合物が0.0001〜0.0050質量部であるエーテル系ポリウレタン(ポリテトラメチレングリコール系ポリウレタン)によって、電子写真装置用弾性部材を提供することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の電子写真装置用弾性部材は、電子写真装置用現像ブレード、クリーニングブレード、現像ローラに使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 電子写真装置用弾性部材
2 支持部材
3 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化触媒として飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物を用いて得られるエーテル系ポリウレタンからなることを特徴とする電子写真装置用弾性部材。
【請求項2】
飽和脂肪酸アルカリ金属塩は、飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩である請求項1記載の電子写真装置用弾性部材。
【請求項3】
エーテル系ポリウレタンがポリテトラメチレングリコール系ポリウレタンであって、硬化触媒として、飽和脂肪酸アルカリ金属塩がポリウレタン100質量部に対して0.200〜0.001質量部、有機スズ化合物がポリウレタン100質量部に対して0.0001〜0.0050質量部であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真装置用弾性部材。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の電子写真装置用弾性部材を用いて得られることを特徴とする電子写真装置用現像ブレード。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の電子写真装置用弾性部材を用いて得られることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載の電子写真装置用弾性部材を用いて得られることを特徴とする電子写真装置用現像ローラ。
【請求項7】
エーテル系ポリウレタンの構成成分と、硬化触媒としての飽和脂肪酸アルカリ金属塩及び有機スズ化合物とを含む組成物を、ミキシングチャンバー内で混合・攪拌する工程(1)、
前記工程(1)で混合・攪拌された組成物を予め硬化温度に温調されている成形用金型に注入する工程(2)、
前記工程(2)で注入された組成物を硬化させる工程(3)、並びに、
前記工程(3)で得られた硬化物を脱型する工程(4)
を含むことを特徴とする電子写真装置用弾性部材の製造方法。
【請求項8】
成形用金型が、外周に成形溝、内部に加熱装置を備えた成形ドラム及び、該成形ドラムの外周に沿って、エーテル系ポリウレタン組成物の供給手段、成形ドラムの成形溝を覆いながら成形ドラムの回転に同期して回走するエンドレスベルトを順次配置し、成形溝に供給したエーテル系ポリウレタン組成物をエンドレスベルトと成形溝から形成される成形空間によって、所定の幅と厚さを有する帯状のブレード素材を成形ドラムを回転させながら硬化させて帯状のブレード素材を取り出し、長さを定寸にカットしてブレードを製造することを特徴とする請求項7記載の電子写真装置用弾性部材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−247718(P2012−247718A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121232(P2011−121232)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】