説明

電子写真用ローラの製造方法および円筒体の乾燥方法

【課題】洗浄起因の不良を抑制した電子写真用ローラの製造方法、および、円筒体表面の液体を効率的に除去することのできる乾燥方法を提供する。
【解決手段】芯金と、芯金の両端部の周面以外の周面を被覆する1層以上の弾性層とを有する電子写真用ローラの製造方法であって、(1)芯金の周面に形成した弾性層の周面を液体で洗浄する工程と、(2)弾性層の周面を乾燥させる工程と、を有し、工程(2)が、弾性層の周囲に気体の渦流を生じさせることにより、弾性層の周面に付着した液体を除去する工程を含む。液体で洗浄された円筒体の周囲に、円筒体と同心に気体の渦流を生じさせて、該円筒体の周面に付着した液体を除去する工程を有する円筒体の乾燥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置において、帯電ローラや現像ローラとして用いられる電子写真用ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置に使用される帯電ローラや現像ローラは、その製造工程において、芯金の表面に形成したゴム層の表面研磨や、端部の切断が行われる。そのため、研磨や切断後のゴム層の表面に付着したゴムの研磨粉等を取り除くために、ゴム層の表面の清掃が行われることがある。特許文献1には、複数のエアー噴出口を略円周上かつ内向きに配置したエアー噴出ヘッドの内側に、画像形成装置に用いられるローラを配置した状態で、該エアー噴出ヘッドから該ローラの表面に対してエアーを噴出させて該ローラの表面を清掃する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−273362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1の方法に係る方法を用いて、洗浄後のローラのゴム層表面の液体を除去することを検討した。その結果、ゴム層表面に付着した洗浄液を十分には除去できない場合があった。洗浄工程で用いた洗浄液の液滴が付着したままであると、それが乾燥した部分において、表面特性が他の部分と異なることがある。このようなローラを例えば、帯電ローラとして用いると、感光ドラムの帯電不良を招来することがある。
【0005】
したがって、本発明は、洗浄起因の不良を抑制した電子写真用ローラの製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、円筒体表面の液体を効率的に除去することのできる乾燥方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ローラの外周に配置した複数の吐出口(リングヘッド)からローラの表面に対して、該ローラの接線方向成分を含むような乾燥用の気体の流体を吹きつけることで、上記の課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明によれば、芯金と、該芯金の両端部の周面以外の周面を被覆する1層以上の弾性層とを有する電子写真用ローラの製造方法であって、
(1)該芯金の周面に形成した弾性層の周面を液体で洗浄する工程と、
(2)該弾性層の周面を乾燥させる工程と、
を有し、
該工程(2)が、該弾性層の周囲に気体の渦流を生じさせることにより、該弾性層の周面に付着した該液体を除去する工程を含む電子写真用ローラの製造方法が提供される。
【0007】
また本発明によれば、液体で洗浄された円筒体の周囲に、該円筒体と同心に気体の渦流を生じさせて、該円筒体の周面に付着した該液体を除去する工程を有する円筒体の乾燥方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、洗浄起因の不良を抑制した電子写真用ローラの製造方法が提供される。また本発明により、円筒体表面の液体を効率的に除去することのできる乾燥方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明の製造方法の説明図である。(b)は、(a)におけるY−Y’断面を示す断面図である。
【図2】リングヘッドAの説明図である。(a)は正面図である。(b)は(a)におけるX−X’断面を示す断面図である。(c)は(b)におけるY−Y’断面を示す断面図である。
【図3】リングヘッドBの説明図である。(a)は正面図である。(b)は(a)におけるX−X’断面を示す断面図である。(c)は(b)におけるY−Y’断面を示す断面図である。
【図4】本発明の工程(1)および(2)の説明図である。
【図5】本発明を実施することのできる装置の例を示す模式図である。
【図6】画像形成装置の概略を示す模式図である。
【図7】(a)は比較例1の製造方法を説明するための模式図であり、(b)は(a)におけるY−Y’断面を示す断面図である。
【図8】(a)は比較例2の製造方法を説明するための模式図であり、(b)は(a)におけるY−Y’断面を示す断面図である。
【図9】(a)は比較例3の製造方法を説明するための模式図であり、(b)は(a)におけるY−Y’断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電子写真用ローラは、芯金と、1層以上の弾性層とを有する。弾性層は芯金の両端部の周面以外の周面を被覆する。芯金と弾性層との間に、他の層(接着剤層など)が存在してもよいし、存在しなくてもよい。
【0011】
以下、電子写真用ローラとして、帯電ローラに用いられるゴムローラを例にして更に詳細に説明する。
【0012】
芯金上にゴム層(弾性層)が設けられたゴムローラの成形方法としては、例えば次のような方法があるが、特に限定されるものではない。円筒金型に同心に軸状の芯金を保持する2つの円筒駒を組み、ゴム材料を注入後加熱することにより材料を硬化させてゴムローラを成形する射出成形。ゴム材料をチューブ状に押出した後、芯金にチューブ状のゴム材料を被せる、或いは芯金とゴム材料を一体に押出して円筒状のゴムローラを成形する押出成形。トランスファー成形。プレス成形。製造時間の短縮を考えるとゴム材料を芯金と一体に押出してゴムローラを成形する押出成形が好ましい。
【0013】
硬化のためのゴムローラの加熱方法に関しては、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等のいずれの方法でも良く、更に加熱状態の円筒状または平面状の部材にゴムローラを回転させながら押し当てる方法を用いても良い。また、加熱後に所望のローラ形状、ローラ表面粗さにするために回転砥石を用いた乾式研磨をする場合もある。なお、研磨手段としては、特に限定しないが、砥石が移動して研磨する所謂トラバース方式や、より幅の広い砥石により移動することなしに一括で研磨するプランジ方式がある。
【0014】
ここで、ゴムローラの芯金として使用する材質は、ニッケルメッキしたSUM材等の鋼材を含むステンレススチール棒、リン青銅棒、アルミニウム棒、耐熱樹脂棒が好ましい。
【0015】
又、芯金上に設けられたゴム層は導電性の弾性層とすることができる。ゴム層を形成するポリマーとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴム、熱可塑エラストマー等のいずれでも良い。
【0016】
次に、本発明に係る電子写真用ローラの製造方法(洗浄方法)について説明する。
本発明の製造方法によれば、弾性層の周面を液体で洗浄する工程(1)の後に、弾性層の周面を乾燥させる工程(2)を行う。そして、工程(2)において、弾性層の周囲に、乾燥用の気体の渦流を生じさせて、弾性層の周面に付着した液体を除去する。渦流は弾性層の接線方向の流れ成分を少なくとも有するものである。ゴムローラ表面(特には弾性層周面)の周囲に乾燥用の気体の渦流を生じさせることにより、安定して確実にゴムローラ表面の洗浄液、異物、研磨粉、等を弾き飛ばして除去することができる。またゴムローラと同心に、ゴムローラ表面の周囲に気体の渦流を生じさせるとより効果的である。ここで、ゴムローラ表面の周囲の渦流により、洗浄液、異物、研磨粉、等をゴムローラ表面から一気に遠心方向に弾き飛ばすことで、ゴムローラ表面への再付着を防いで確実に除去することができるのである。
【0017】
ゴムローラの弾性層の周囲に気体の渦流を生じさせて洗浄する方法としては、弾性層の周面に対して所定の間隔をなす距離の円周上に設けられた複数の吐出口を有するリングヘッドより、弾性層の周面に気体を吹きつける方法が挙げられる。このリングヘッド方法は気体の渦とゴムローラ(芯金)との同心を調整しやすく、好ましい方法である。
【0018】
ここで、図1に複数の吐出口を有するリングヘッドよりゴムローラの弾性層の周囲に気体の渦流を生じさせながら気体を吹きつける方法の模式図を示す。1はゴムローラ、2は複数の吐出口を有するリングヘッド、3は円周上に設けられた複数の吐出口、4は気体の供給口、5は気体の分配室、6は気体の渦流の方向、9はゴムローラの指示部材を示す。リングヘッドは、ゴムローラの弾性層の周面に対して所定の間隔をなす距離の円周上に設けられた複数の吐出口(リングヘッドの内周面に複数の吐出口が設けられている)を有する。また、リングヘッドの外部にある気体供給手段から気体を供給するための1箇所以上の気体の供給口を有する。さらに、供給された気体を、リングヘッド内において合流し周方向に分配するための分配室を1箇所以上、有する。
【0019】
複数の吐出口が並ぶ円周と、芯金とを同心にすることにより、芯金と同心の渦流を容易に生じさせることができる。
【0020】
このようなリングヘッドを用い、ゴムローラとリングヘッドとを所定の移動速度で軸方向に相対移動させ、ゴムローラの弾性層の周囲に気体の渦流を生じさせながら気体をゴムローラの弾性層の周面に吹きつける。このように、リングヘッドとゴムローラとが相対移動する場合においては、渦流には、ローラの軸方向の流れ成分が含まれることとなる。このように、ローラの軸方向(回転軸方向)の成分と、回転方向(ローラの周方向)の成分とを有する気体の流れを、本発明においては旋回流という。そして、本発明における渦流は、旋回流をも包含するものである。
【0021】
リングヘッドとゴムローラとの相対的な移動速度としては、10〜500mm/sが好ましい。気体の圧力及び流量にもよるが、移動速度を10mm/s以上、500mm/s以下にすることにより、ゴムローラの弾性層の全域で安定した気体の旋回流を生じさせることができる。図1に示す紙面右向き矢印は、この相対移動方向を示す。
【0022】
気体の圧力の目安としては0.1〜1.0MPa、流量としては10〜1000L/min(20℃、0.5MPa基準。以下気体の流量に関して同じ。)が好ましい。気体の圧力を0.1MPa以上とすること、また流量を10L/min以上とすることで、より確実に本発明に係る効果を享受し得る。また、気体の圧力を1.0MPa以下とすること、また流量を1000L/min以下とすることにより、ローラの表面、特には、ゴム層の表面への傷付きを確実に抑制し得る。
【0023】
リングヘッドの円周上に設けられた複数の吐出口のうち、一つの吐出口の開口面積の目安としては、0.0001mm2以上1.0mm2以下が好ましい。
【0024】
リングヘッドの材質としては、ステンレス、鉄、アルミニウム、銅、真鋳等の金属やフッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂を用いることができるが、加工精度が高いステンレス等の鋼材を用いることが好ましい。
【0025】
ここで、リングヘッドの形状の例について説明する。図2にリングヘッド(以下、リングヘッドAもしくはリングノズルAと称す)の模式図を、図3にリングヘッドAよりも吐出口の数が多いリングヘッド(以下、リングヘッドBもしくはリングノズルBと称す)の模式図を示す。吐出口の数や吐出口の角度は任意に調整して良いが、ゴムローラ表面の周囲に気体の渦流が生じるようにリングヘッドを設計する。複数の吐出口がゴムローラ(弾性層)の外周に対して接線方向に向くように、且つゴムローラ(弾性層)の外周に対して同一回転方向に向くようにリングヘッドを設計することが好ましい。これにより、ゴムローラの弾性層の周囲に気体の渦流を効率的に生じさせることができる。ここで、リングヘッドを用いた場合、ゴムローラは回転させなくても良く製造装置としては簡略化できる。ただし、ゴムローラは回転させても良く、ゴムローラを回転させる場合には、弾性層の周囲の渦流とは逆方向にゴムローラを回転させるとより効果的である。
【0026】
また、複数の吐出口を有するリングヘッドを用いる方法以外に、複数の気体吐出ノズルをゴムローラの外周に対して接線方向を向くように、且つゴムローラの外周に対して同一回転方向に向くように円周上に配置して気体を吹きつける方法もある。しかし、この場合にはゴムローラ表面の周囲に気体の渦流が効率的に生じるように、気体の流れを規制するリング状の規制部材を設けた方が良い。
【0027】
次に、本発明に係るゴムローラの製造方法(洗浄方法)の工程について詳細に説明する。図4に工程(1)、(2)を説明するための模式図を示す。7はゴムローラの芯金、8は液体を高圧で噴射する噴射ノズル、9はゴムローラの支持部材である。工程(1)では、ゴムローラの弾性層の周面を液体で洗浄する。図4(a)にはゴムローラの弾性層の周面に対して、液体を高圧で噴射する洗浄方法を示す。液体を高圧で噴射する噴射ノズルは、ゴムローラの軸方向(紙面右向き矢印の方向)に対して平行移動可能とし、噴射ノズルを複数個設けることも可能である。噴射ノズルを複数個設けた場合には、噴射ノズルを可動にせず固定することも可能である。噴射ノズルの向きは、高圧で噴射された液体の流線(中心軸)が、ゴムローラの軸方向に対して垂直になるように配置させることが好ましい。また、噴射される液体の圧力としては1〜10MPa、噴射ノズルからゴムローラの距離としては10〜100mm程度が好ましい。液体の圧力を1MPa以上とすること、また噴射ノズルからゴムローラの距離を100mm以下とすることで、より確実な洗浄効果を期待できる。液体の圧力を10MPa以下とすること、また噴射ノズルからゴムローラの距離を10mm以上とすることにより、ローラ表面とノズルとの接触による、ローラ表面の傷つきをより確実に回避し得る。
【0028】
高圧で噴射する液体としては環境面からも水が好適に用いられる。より高い洗浄効果を得るために、イオン交換水、精製水、超純水、アルカリイオン水、超還元性水等を、特に好適に用い得る。また、液体を高圧で噴射しながらゴムローラを回転させて洗浄を行うことが好ましい。液体を高圧で噴射する時にゴムローラを回転させる理由としては、ゴムローラの弾性層の周面に一様に高圧で噴射された液体をあてるためである。また同時に、ゴムローラの弾性層の周面に付着した液体を遠心力で液切りする効果もある。また、液体を高圧で噴射する方法以外に、例えばブラシやスポンジをゴムローラの弾性層の周面に接触させながら液体を塗布して洗浄する方法や液体を圧縮空気と共にゴムローラの弾性層の周面に向けて吹きつける方法等がある。
【0029】
液体を高圧で噴射する時のゴムローラの支持方法としては、液体の圧力に負けず、ゴムローラが回転自在で、両端の芯金の露出部を支持するものが挙げられる。支持方法としては、逆センター方式、コレットチャック方式、等が挙げられるが特にこれに限定されるものではない。搬送ハンド(不図示)により芯金が把持されている状態のゴムローラに対して、支持部材が移動してゴムローラの芯金を支持して位置決め、固定を行う。支持部材の材質としては、ステンレス、鉄、アルミニウム、銅、真鋳等の金属やフッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂を用いることができる。支持部材はゴムローラの芯金を支持する部材であり、芯金を傷つけないことを考慮して材質を選定することができる。
【0030】
工程(1)の後に行われる工程(2)では、ゴムローラの弾性層の周面に乾燥用の気体を吹きつける。ここで用いる気体は、化学的に不活性で安全な気体が好適であり、空気、窒素ガス等が例示される。また、気体の温度、湿度を任意に設定しても良い。
【0031】
以下、乾燥用の気体として圧縮空気を用いる場合を例に本発明について説明する。
【0032】
ゴムローラの弾性層の周面に対して所定の間隔をなす距離の円周上に複数の吐出口を設けたリングヘッドを配置する。リングヘッドの外部にある圧縮空気の供給手段により、リングヘッドに具備される供給口に圧縮空気を供給する。圧縮空気はリングヘッド内の分配室で周方向に均一に分配され、リングヘッドの複数の吐出口から圧縮空気が噴出される。この時、ゴムローラ表面の周囲に渦流が生じるように、ゴムローラの外周に対して接線方向で且つゴムローラの外周に対して同一回転方向になるように圧縮空気が吹きつけられる。そしてゴムローラとリングヘッドとを所定の速度(例えば10〜500mm/s程度)で軸方向に相対移動させ、ゴムローラの弾性層の周囲に圧縮空気の渦流を生じさせながら、ゴムローラの弾性層の周面に吹きつける。このようにして、安定して確実にゴムローラ表面の洗浄液、異物、研磨粉、等を圧縮空気の旋回流により弾き飛ばして除去することができる。ゴムローラとリングヘッドとの移動速度は一定速でもよく、あるいは必要に応じて段階的に速くしたり遅くしたり、調速にしても良い。圧縮空気の圧力及び流量は任意に調整して所望の値に決定して良いが、圧力としては0.1〜1.0MPa、流量としては10〜1000L/minが好ましい。流量については、段階的に増やししたり減らしたりしても良い。圧縮空気を吹きつけるタイミングについては、特に限定はしないがゴムローラの弾性層の周面から洗浄液、異物、研磨粉、等を完全に除去するように決定することができる。また、圧縮空気の供給ラインのドレンやゴミなどを防止するために供給ラインとリングヘッドの間にエアフィルタ、ミストセパレイタを入れることが好ましい。
【0033】
ここで、図5に渦流の圧縮空気を吹きつける装置の一例を示す。10はリングヘッドを固定するホルダー、11はリングヘッドを可動させる手段(1軸ロボット)、12はゴムローラを支持する部材を可動させる手段(エアーシリンダー)、13は製造装置を覆うチャンバーである。製造装置を覆うチャンバーは、圧縮空気により吹き飛ばされた洗浄液、異物、研磨粉、等の飛散を防ぐことができる。
【0034】
洗浄されたゴムローラの弾性層上に表面層を形成することができ、また弾性層の表面部に表面処理剤を含浸させて表面層を形成することができる。表面層の形成には、リングヘッド塗布や浸漬塗布(ディップ塗布)、ロールコート塗布等の方法を用いることができる。また、洗浄後のゴムローラの表面に活性エネルギー線を照射して表面改質してもよい。
【0035】
本発明の実施の形態であるゴムローラの製造方法により得られたゴムローラは、電子写真画像形成装置の電子写真用ローラとして用い得る。ここでは、帯電ローラとして用いた場合の使用形態を図6に示した。図6において、14は像担持体としての電子写真感光体(感光ドラム)であり、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。感光ドラムは、電源E1から帯電バイアスを印加した帯電ローラ15により周面が帯電される。次いで、露光系16により周面に目的の画像情報の静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像がマイナストナーによる反転現像方式のトナー現像ローラ17(電源E3からバイアス電圧が印可される)によりトナー画像として現像される。感光ドラムと転写手段としての転写ローラ18との間の転写部に不図示の給紙手段から所定のタイミングで転写材が給送され、転写ローラに対して電源E2から例えば約+2〜3KVの転写バイアスが印加され感光ドラム面の反転現像されたトナー像が転写材に対して順次転写されていく。トナー画像の転写を受けた転写材は、感光ドラム面から分離されて不図示の定着手段へ導入されて像定着処理を受ける。トナー画像転写後の感光ドラム面は、クリーニング手段19で転写残りトナー等の付着汚染物の除去処理を受けて清浄面化されて繰り返して作像に供される。
【0036】
以上説明したように本発明によれば、好ましくはローラと同心で、ローラの周囲に気体の渦流を生じさせることにより、安定して確実にローラ表面の洗浄液、異物、研磨粉、等を弾き飛ばして除去することができる。また、円周上に設けられた複数の吐出口(リングヘッド)からローラの外周に対して接線方向で且つローラの外周に対して同一回転方向に気体を吹きつけて、ローラの周囲に気体の渦流を生じさせることで、より短時間で乾燥させることが可能である。また、ローラを回転させずに乾燥させることが可能なため、製造装置として簡略化できる。そして、本発明の電子写真用ローラの製造方法は量産性に優れていることから、製造ラインを自動化することも容易である。その結果、洗浄不良による画像不良を抑え高品質なローラを安定して得ることができる。
【0037】
上述の方法は、電子写真用ローラに限らず、液体で洗浄された円筒体を乾燥させる際に応用することができる。つまり、液体で洗浄された円筒体を乾燥させる際に、円筒体の周囲に、円筒体と同心に気体の渦流を生じさせることにより、円筒体の周面に付着した液体を除去することができる。円筒体としては中空の円柱形状でも中実の円柱形状でもよい。液体を除去するとともに、円筒体の周面に付着した異物等を除去することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。各例において、得られたゴムローラについて以下の項目の評価を行った。
【0039】
〈ローラの外観目視評価〉
ゴムローラの洗浄液、異物、研磨粉、等の除去が残ってしまっている洗浄不良については、ゴムローラの外観を目視で観察し、下記の基準にて評価した。
○:洗浄液、異物、研磨粉、等が完全に除去されて洗浄不良が見られない。
×:洗浄液、異物、研磨粉、等が完全に除去されておらず洗浄不良が見られる。
【0040】
〈初期画像評価〉
ゴムローラを帯電ローラとして図6に示す構成を有する電子写真用カートリッジに組込み、感光体ドラムの両端に500gずつの荷重を付加した状態で圧接し、温度23.5℃/50%RH(相対湿度)の環境でハーフトーン画像を形成した。得られたハーフトーン画像を目視にて観察し、下記の基準に基づき初期画像評価を行った。
○:帯電ローラの洗浄液、異物、研磨粉、等の除去が残り洗浄不良の画像不良が発生していない。
×:帯電ローラの洗浄液、異物、研磨粉、等の除去が残り洗浄不良の画像不良が発生した。
【0041】
〈量産安定性〉
ゴムローラを連続して100本作成し、すべてのゴムローラについて、上記と同様にして外観の評価及び初期画像の評価を行った。そして、下記の基準に基づき、量産時のゴムローラの品位の安定性を判定した
○:100本のゴムローラの外観目視評価及び初期画像評価で1本も不良が見られない。
×:100本のゴムローラの外観目視評価及び初期画像評価で1本でも不良がみられた。
【0042】
〔実施例1〕
〈ゴムローラの作製〉
以下の原料を加圧式ニーダーで15分間混練した。
【0043】
【表1】

【0044】
更に、加硫促進剤(TBzTD:テトラベンジルチウラムジスルフィド)4.5質量部及び加硫剤としてイオウ1.2質量部を加えて、15分間オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。
【0045】
次いで、外径φ(直径)6mm、長さ252mmのステンレス棒の芯金を用意した。ここで、クロスヘッド押出機を用いて前記芯金と未加硫ゴム組成物とを一体に押出してゴムローラを成形した。その後160℃、1時間の加熱加硫を行い、更にプランジ方式の研磨機で回転砥石を用いた乾式研磨、端部の切断・除去処理により、厚み1.25mm、長さ232mmの弾性層を有するゴムローラを得た(弾性層外径φ8.5mm)。芯金両端部10mmが露出したゴムローラである。
【0046】
〈ゴムローラの洗浄工程〉
前記より得られたゴムローラを搬送用ハンドで芯金を把持して水平状態に支持した。搬送用ハンドによりゴムローラを支持部材で支持可能な位置に搬送して、支持部材をゴムローラに近づく方向にそれぞれ移動させてゴムローラの芯金部分を支持した。ここで、ゴムローラの弾性層の周面に対して、水を高圧で噴射して洗浄を行った。水を高圧で噴射する噴射ノズルを、ゴムローラの軸方向に対して垂直になるように配置して100mm/sの速度でローラ軸方向に平行移動させ、ゴムローラを1500rpmの速度で回転させながら、ゴムローラの芯金の周面及び弾性層の周面の洗浄を行った。噴射される水の圧力は5MPaであった。
【0047】
その後、図2に示したリングヘッドAを用いて、ゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気の渦流を生じさせて、ゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気を吹きつけた。具体的には、リングヘッドは、ゴムローラ(芯金)と同心で、ゴムローラの弾性層の周面に対して1.0mmの間隔を形成する距離の円周上に複数の吐出口がくるように配置した。そして、リングヘッドとゴムローラを50mm/sの一定の速度で軸方向に相対移動させると同時に空気の渦流を生じさせ、ゴムローラの弾性層の周面に空気の旋回流を生じさせた(図1)。圧縮空気を吹きつけた時間は、6secであった。この時、リングヘッドの吐出口の数は8個、吐出口一つの開口面積は約0.15mm2で、空気の圧力は0.5MPa、流量は100L/minであった。また、ゴムローラの洗浄工程を行った環境としては、温度22℃/相対湿度55%であった。圧縮空気を吹き付けた間のヘッドの移動距離は300mmであり、この移動距離の間にゴムローラ(全長252mm)全体が含まれるように、圧縮空気を吹き付けた。
【0048】
〈表面層を形成する塗料の作製〉
下記原料を用意した。
【0049】
【表2】

【0050】
前記原料を混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物を加水分解し、縮合して加水分解性縮合物を得た。この加水分解性縮合物を2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の加水分解性縮合物含有アルコール溶液を調製した。この加水分解性縮合物含有アルコール溶液100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加した。更に固形分1.0質量%となるようにエタノールで希釈して表面層用塗料を作製した。この時の塗布液の粘度は、B型粘度計の値で1.0mPa・s(20℃)であった。塗料を密閉容器に入れ、密閉容器を液供給手段であるシリンジポンプにつなぎ、更にリングヘッドに具備された1箇所の液供給口につなぎ、リングヘッド内に適量の塗料を供給した。塗料は、リングヘッド内で合流し周方向に分配するための液分配室を有するリングヘッド内に充填された。
【0051】
〈ゴムローラの塗布(表面層形成)工程〉
前記の洗浄工程後、すぐにゴムローラの塗布を行った。前記より得られたゴムローラの外径に対して0.5mmの間隔を形成する距離に全周に開口された環状スリットの吐出口がくるように塗布用リングヘッドを配置した。この時、環状スリットの吐出口の開口幅(スリット幅)は0.1mmであった。塗布用リングヘッドとゴムローラの弾性層を85mm/sの一定の速度で軸方向に相対移動させると同時に前記塗料を0.07mL、0.03mL/sの吐出速度で全周均一に塗布を行った。その後、表面層を硬化させるため、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング製)による紫外線照射を5分間行った。低圧水銀ランプに関しては、主に254nmの波長を代表とする紫外線で、この時の紫外線積算光量は約10000mJ/cm2であった(紫外線強度は35mW/cm2)。
【0052】
以上のようにして得られたゴムローラについて、上記した各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0053】
〔実施例2〕
〈ゴムローラの作製〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラを得た(弾性層外径φ8.5mm、芯金両端部10mm露出)。
【0054】
〈ゴムローラの洗浄工程〉
前記の実施例1と同様な方法で、ゴムローラの弾性層の周面に対して、水を高圧で噴射して洗浄を行った。その後、リングヘッドとゴムローラの相対移動速度を300mm/s、圧縮空気の流量を300L/minに変更した以外は、前記の実施例1と同様な方法で圧縮空気の吹きつけを行った。圧縮空気を吹きつけた時間は、1secであった。
【0055】
〈ゴムローラの表面処理工程〉
前記の洗浄工程後、ゴムローラ表面に電子線の照射を行った(表面層は形成しなかった)。電子線の照射には電子線照射装置(岩崎電気株式会社製)を用い、照射時の雰囲気に窒素ガスパージを行った。電子線照射条件:加速電圧150kV、電子電流20mA、照射時間2secで電子線の照射を行い、照射時の雰囲気の酸素濃度は約500ppmであった。この時の電子線の線量は約1000kGyであった。ゴムローラは500rpmで回転させながら上記照射時間になるように搬送して電子線の照射を行った。以上のようにして得られたゴムローラについて、上記各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0056】
〔実施例3〕
〈ゴムローラの作製〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラを得た(弾性層外径φ8.5mm、芯金両端部10mm露出)。
【0057】
〈ゴムローラの洗浄工程〉
前記の実施例1と同様な方法で、ゴムローラの弾性層の周面に対して、水を高圧で噴射して洗浄を行った。
【0058】
その後、リングヘッドとゴムローラの相対移動速度を300mm/s、また図3に示したリングヘッドBを用いた以外は、前記の実施例1と同様な方法で圧縮空気の吹きつけを行った。圧縮空気を吹きつけた時間は、1secであった。この時、リングヘッドの吐出口の数は16個、吐出口一つの開口面積は約0.15mm2であった。
【0059】
〈表面層を形成する塗料の作製〉
前記の実施例1と同様な方法で塗料を得た。
【0060】
〈ゴムローラの塗布工程〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラの塗布を行った。以上のようにしてゴムローラを連続100本作製して評価を行った。結果を表3に示す。
【0061】
〔比較例1〕
〈ゴムローラの作製〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラを得た(弾性層外径φ8.5mm、芯金両端部10mm露出)。
【0062】
〈ゴムローラの洗浄工程〉
前記の実施例1と同様な方法で、ゴムローラの弾性層の周面に対して、水を高圧で噴射して洗浄を行った。
【0063】
その後、環状スリットを有するリングスリットヘッドを用いて、ゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気を吹きつけた。リングスリットヘッドは、ゴムローラ(芯金)と同心で、ゴムローラの弾性層の周面に対して1.0mmの間隔を形成する距離の円周上に、全周に開口された環状スリットがくるように配置した。そして、リングスリットヘッドとゴムローラを300mm/sの一定の速度で軸方向に相対移動させると同時に、ゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気を吹きつけた。圧縮空気を吹きつけた時間は、1secであった。この時、リングスリットヘッドの環状スリットのスリット幅は0.1mmであった。また、圧縮空気の圧力は0.5MPa、流量は100L/minであった。ここで、図7に比較例1の製造方法の模式図を示す。20は環状スリットを有するリングスリットヘッドである。
【0064】
〈表面層を形成する塗料の作製〉
前記の実施例1と同様な方法で塗料を得た。
【0065】
〈ゴムローラの塗布工程〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラの塗布(表面層形成)を行った。以上のようにしてゴムローラを連続100本作製して評価を行った。結果を表4に示す。
【0066】
〔比較例2〕
〈ゴムローラの作製〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラを得た(弾性層外径φ8.5mm、芯金両端部10mm露出)。
【0067】
〈ゴムローラの洗浄工程〉
前記の実施例1と同様な方法で、ゴムローラの弾性層の周面に対して、水を高圧で噴射して洗浄を行った。
【0068】
その後、複数の吐出口がゴムローラの中心軸に向いているリングヘッド(以下、リングヘッドCもしくはリングノズルCと称す)を用いて、ゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気を吹きつけた。リングヘッドは、ゴムローラ(芯金)と同心で、ゴムローラの弾性層の周面に対して1.0mmの間隔を形成する距離の円周上に複数の吐出口がくるように配置した。そして、リングヘッドとゴムローラを300mm/sの一定の速度で軸方向に相対移動させると同時に、ゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気を吹きつけた。圧縮空気を吹きつけた時間は、1secであった。この時、リングヘッドの吐出口の数は12個、吐出口一つの開口面積は約0.15mm2であった。また、圧縮空気の圧力は0.5MPa、流量は100L/minであった。ここで、図8に比較例2の製造方法の模式図を示す。21は複数の吐出口がゴムローラの中心軸に向いているリングヘッドCである。
【0069】
〈表面層を形成する塗料の作製〉
前記の実施例1と同様な方法で塗料を得た。
【0070】
〈ゴムローラの塗布工程〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラの塗布(表面層形成)を行った。以上のようにしてゴムローラを連続100本作製して評価を行った。結果を表4に示す。
【0071】
〔比較例3〕
〈ゴムローラの作製〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラを得た(弾性層外径φ8.5mm、芯金両端部10mm露出)。
【0072】
〈ゴムローラの洗浄工程〉
前記の実施例1と同様な方法で、ゴムローラの弾性層の周面に対して、水を高圧で噴射して洗浄を行った。
【0073】
その後、圧縮空気の吐出ノズル1個を用いて、ゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気を吹きつけた。圧縮空気の吐出ノズルをゴムローラに対して接線方向になるように配置して圧縮空気を吹きつけた。そして、圧縮空気の吐出ノズルとゴムローラを50mm/sの一定の速度で軸方向に相対移動させると同時に、ゴムローラを回転させながらゴムローラの弾性層の周面に圧縮空気を吹きつけた。この時、圧縮空気を吹きつける方向とは逆方向にゴムローラを500rpmの速度で回転させながら圧縮空気を吹きつけた。圧縮空気を吹きつけた時間は、6secであった。また、圧縮空気の圧力は0.5MPa、流量は300L/minであった。ここで、図9に比較例3の製造方法の模式図を示す。22は圧縮空気の吐出ノズルである。
【0074】
〈表面層を形成する塗料の作製〉
前記の実施例1と同様な方法で塗料を得た。
【0075】
〈ゴムローラの塗布工程〉
前記の実施例1と同様な方法でゴムローラの塗布(表面層形成)を行った。以上のようにしてゴムローラを連続100本作製して評価を行った。結果を表4に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【符号の説明】
【0078】
1‥‥‥ゴムローラ
2‥‥‥複数の吐出口を有するリングヘッド
3‥‥‥円周上に設けられた複数の吐出口
4‥‥‥気体の供給口
5‥‥‥気体の分配室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金の両端部の周面以外の周面を被覆する1層以上の弾性層とを有する電子写真用ローラの製造方法であって、
(1)該芯金の周面に形成した弾性層の周面を液体で洗浄する工程と、
(2)該弾性層の周面を乾燥させる工程と、
を有し、
該工程(2)が、該弾性層の周囲に気体の渦流を生じさせることにより、該弾性層の周面に付着した該液体を除去する工程を含むことを特徴とする電子写真用ローラの製造方法。
【請求項2】
前記気体の渦流を、芯金と同心に生じさせる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)において、前記気体を吐出する複数の吐出口が円周上に設けられたリングヘッドであって、該複数の吐出口が、弾性層の外周に対して、接線方向に向くとともに同一回転方向に向くリングヘッドを用いて、前記渦流を生じさせる請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
液体で洗浄された円筒体の周囲に、該円筒体と同心に気体の渦流を生じさせて、該円筒体の周面に付着した該液体を除去する工程を有することを特徴とする円筒体の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255815(P2012−255815A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127252(P2011−127252)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】