説明

電子写真用光沢シート

【課題】本発明の目的は、電子写真方式の印刷記録材として、最表層にある断熱層によってより効率的な印刷が可能あり、高温での処理後も光沢感を維持し、更にはリサイクルが可能な電子写真用光沢シートを製造することにある。
【解決手段】顔料を主体とした塗工層を設けた塗工紙上に、ガラス転移点が120℃以上の水溶性樹脂が100質量部に対して、中空型有機顔料を10〜100質量部配合した塗工層を2〜30g/m2塗布することを特徴とする電子写真用光沢シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の印刷記録材として、最表層にある断熱層によってより効率的な印刷が可能あり、高温での処理後も光沢感を維持し、更にはリサイクルが可能な電子写真用光沢シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式は高精細でフルカラーの印刷が可能であることから広く普及している。特に光沢で平滑な支持体と高画質な印刷の組み合わせで写真出力としての用途での使用が増加している。
【0003】
この様な用途で使用される光沢シートは、加熱処理工程での効率を高める為に断熱性を有する薄層を最表面に設けることが効果的である。例えば、有機顔料を主体とした塗工層や、発泡させた塗工層を設ける方法が報告されている。しかしながら、有機顔料を主体とした塗工層の場合は、実用化されている有機顔料がガラス転移点が100℃程度のポリスチレンアクリル系の樹脂を主成分とするため、特に180℃を超えるような高温で定着させるタイプの印刷機の場合には、加熱処理後に光沢シートの光沢度が低下する問題があった。また、発泡させた塗工層を設ける方法については、泡を安定して制御して均一に塗布することが技術的に難しい為、広く実用化されるには至っていない(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2005−173513号公報
【特許文献2】特開2005−031128号公報
【特許文献3】特開2002−123032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電子写真方式の印刷記録材として、最表層にある断熱層によってより効率的な印刷が可能あり、高温での処理後も光沢感を維持し、更にはリサイクルが可能な電子写真用光沢シートを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、本発明の電子写真用光沢シートを発明するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の電子写真用光沢シートは、顔料を主体とした塗工層を設けた塗工紙上に、ガラス転移点が120℃以上の水溶性樹脂が100質量部に対して、中空型有機顔料を10〜100質量部配合した塗工層を2〜30g/m2塗布することを特徴とする。
【0007】
また、該水溶性樹脂が主鎖にベンゼン環構造を持ち、側鎖に極性置換基を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子写真用光沢シートは、最表層にある断熱層によってより効率的な印刷が可能あり、高温での処理後も光沢感を維持し、更にはリサイクルが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の電子写真用光沢シートについて、詳細に説明する。本発明の電子写真用光沢シートは、顔料を主体とした塗工層を設けた塗工紙上に、ガラス転移点が120℃以上の水溶性樹脂が100質量部に対して、中空型有機顔料を10〜100質量部配合した塗工層を2〜30g/m2塗布することを特徴とする。
【0010】
本発明の電子写真用光沢シートにおける塗工層を設ける原紙としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGWRMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0011】
また、ノーサイズプレス原紙、澱粉、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた原紙などを用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施す場合も有る。
【0012】
顔料を主体とする塗工層の主成分である顔料とは、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトホンなどの複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0013】
顔料を主体とする塗工層に含まれるバインダーとしては、例えば、スチレン、ブタジエン、及びその他モノマーの共重合体から成るラテックスバインダー、ポリビニルアルコール、澱粉、カゼイン、およびそれらの変性物が挙げれらる。
【0014】
顔料を主体とする塗工層を設けるための塗工液に含まれるその他助剤としては、分散剤、増粘剤、保水剤、耐水化剤、蛍光増白剤、染料、色づけを目的とした顔料、防腐剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0015】
顔料を主体とする塗工層の塗工方法は特に限定されるものではなく、フィルムプレス、カーテン、ロッド、ブレード、エアナイフ、キャスト、スプレーなどの各方式が好適に使用される。
【0016】
また、顔料を主体とする塗工層塗設後は平滑性を調整する為に、各種カレンダー処理を施す場合がある。顔料を主体とする塗工層を設けたシートに対して水溶性樹脂を塗布して得られる強グロスの電子写真用光沢シートの美観をより高める為に、顔料を主体とする塗工層表面の平滑度は高い方が望ましい。
【0017】
本発明における水溶性樹脂のガラス転移点は120℃以上である。
【0018】
本発明の電子写真用光沢シートは、電子写真方式の印刷や印刷後の加工において、極短時間から数十秒程度の間、120〜200℃程度までの高温にさらされる工程があり、そのような環境下で問題なく使用できる程度の耐熱性が必要とされる。よって、最表面にある水溶性樹脂のガラス転移点が規定の範囲にあることによって、耐ブロッキング性の向上や、熱処理後の光沢感の低下を防ぐことができる。
【0019】
本発明における水溶性樹脂の成分としては、高分子構造の主鎖にベンゼン環構造を持ち、また、側鎖に極性置換基を持つものが望ましい。高分子は主鎖に剛直なベンゼン環構造を有することにより,鎖の回転および屈曲性の自由度が低下して,高いガラス転移点と溶融点を示す。また、側鎖に導入する極性置換基としては、例えば、カルボキシル基、スルフォニル基などが挙げれらる。
【0020】
本発明における水溶性樹脂と混合する中空型有機顔料としては、素材は特に限定されるものではないが、工業的に広く実用化されているものとしてはポリスチレンアクリル系の物が挙げられる。また、その形状としては粒子径が200nm程度から数μm程度で、中空率が20から80%程度のものが実用的である。
【0021】
本発明における水溶性樹脂及び中空型有機顔料を含む塗工層を設けるための塗工液には、助剤として分散剤、増粘剤、保水剤、耐水化剤、蛍光増白剤、染料、色づけを目的とした顔料、防腐剤、pH調整剤などを混合することができる。
【0022】
水溶性樹脂及び中空型有機顔料を含む塗工層の塗工方法は特に限定されるものではなく、顔料を主体とする塗工層と同様に、フィルムプレス、カーテン、ロッド、ブレード、エアナイフ、キャスト、スプレーなどの各方式が好適に使用される。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0024】
<原紙配合>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 30部
【0025】
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
カチオン化澱粉 1.0部
カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調製し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
【0026】
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ塗工用原紙を得た。
【0027】
<塗工液の配合>
カオリンクレー 50部
重質炭酸カルシウム 50部
市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
スチレンブタジエン系ラテックスバインダー 12部
市販燐酸エステル化澱粉 2部
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調製
水にて固形分濃度62%に調製
【0028】
上記の塗工液を調製し、ファウンテン/ブレードコーターで片面15g/m2塗工し、スーパーカレンダー処理を施して塗工紙を得た。
【0029】
(実施例1)
下記化学式で示される高分子を成分とする水溶性樹脂100部に対して中空型有機顔料(ポリスチレンアクリル系、平均粒子径1μm、中空率50%)を30部配合する水溶液を顔料を主体とする塗工層上に片面10g/m2塗布した。塗布はロッドバー塗工とエアドライヤーによる乾燥で実施した。
【0030】
【化1】

【0031】
(実施例2)
実施例1と同じ水溶性樹脂100部に対して実施例1と同じ中空型有機顔料を80部配合した水性塗工液を実施例1で作製した顔料を主体とする塗工層上に片面10g/m2塗布した。塗布はロッドバー塗工とエアドライヤーによる乾燥で実施した。
【0032】
(比較例1)
アクリル系のエマルション型接着剤(ガラス転移点105℃)100部に対して実施例1と同じ中空型有機顔料30部配合した水性塗工液を実施例1で作製した顔料を主体とする塗工層上に片面10g/m2塗布した。塗布はロッドバー塗工とエアドライヤーによる乾燥で実施した。
【0033】
(比較例2)
実施例1と同じ水溶性樹脂100部に対して実施例1と同じ中空型有機顔料を300部配合した水性塗工液を実施例1で作製した顔料を主体とする塗工層上に片面に10g/m2塗布した。塗布はロッドバー塗工とエアドライヤーによる乾燥で実施した。
【0034】
(比較例3)
実施例1と同じ水溶性樹脂100部に対して中空型有機顔料配合しない水性塗工液を実施例1で作製した顔料を主体とする塗工層上に片面に10g/m2塗布した。塗布はロッドバー塗工とエアドライヤーによる乾燥で実施した。
【0035】
(比較例4)
比較例2の方法で得られた電子写真用光沢シートに対して、光沢度を上げるためにカレンダー処理を行った。
【0036】
以上のようにして得られた電子写真用光沢シートを次の項目について評価した。尚、印刷機は富士ゼロックス ドキュカラー1256GAを用いた。それらの結果を表1に示す。
【0037】
(耐ブロッキング性)
二枚の電子写真用光沢シートの光沢面が重なり合うようにして、80〜200℃まで任意に温度を設定できる加圧ロールの間を通した。通紙速度は1cm/秒とした。二枚の電子写真用光沢シートどうしを剥がすと電子写真用光沢シートが損傷を受けた時のロール温度をブロッキング発生温度とした。
【0038】
(白紙光沢)
JIS P 8142紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法に則り、電子写真印刷機による印刷前後の白紙光沢を測定した。
【0039】
(画像部光沢)
白紙光沢と同じ機器を使用し、黒100%のベタ印刷部分について、60度入反射角での光沢度を測定した。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1および2は、耐ブロッキング性に優れ、印刷前後の白紙光沢の低下が見られない。また、断熱性を有する塗工層の働きにより画像部光沢に優れている。一方で、比較例1はガラス転移点の低いバインダーを使用した為、ブロッキングが生じている。また、比較例2は中空型有機顔料の配合量が多すぎる為、平滑な白紙面が毀損し、白紙光沢値が低下してしまった。比較例3は中空型有機顔料を含有しない為、画像部光沢に優位性がない。比較例4はカレンダー処理により印刷前の白紙光沢は向上したが、これは有機顔料の配向によるものであり、印刷時の加熱処理によってその配向性が崩れて、白紙光沢が低下してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
電子写真方式の印刷記録材として、最表層にある断熱層によってより効率的な印刷が可能あり、高温での処理後も光沢感を維持し、更にはリサイクルが可能な光沢シートの利用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を主体とした塗工層上に、ガラス転移点が120℃以上の水溶性樹脂100質量部に対して、中空型有機顔料を10〜100質量部配合した塗工層を2〜30g/m2塗布してなることを特徴とする電子写真用光沢シート。
【請求項2】
上記水溶性樹脂が主鎖にベンゼン環構造を持ち、側鎖に極性置換基を持つことを特徴とする請求項1記載の電子写真用光沢シート。

【公開番号】特開2008−89850(P2008−89850A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269278(P2006−269278)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】