説明

電子写真用半導電性弾性部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】電気的特性が均一で充分な帯電能力を有し、長期の使用においても、感光体等の汚染が抑制され、かつ抵抗安定性にも優れた半導電性性弾性部材を提供する。
【解決手段】芯金11とその外周に設けられた弾性体層12とから成る弾性部材において、その弾性体層に1〜50nmの細孔径もしくは層間距離を持つ材料とイオン性液体とを共に含有することを特徴とする半導電性弾性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置内で用いられる、現像部材、帯電部材、転写部材等の電子写真用半導電性部材及びそれを用いたプロセスカートリッジ並びに電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機や光プリンタ等の電子写真装置、静電記録装置等の画像形成装置において、感光体や誘電体等の像担持体面を帯電処理する手段として、従来よりコロナ放電装置が利用されてきた。
【0003】
しかしながら、コロナ放電装置は像担持体等の被帯電体面を所定の電位に均一に帯電処理する手段として有効であるものの、高価な高圧電源を必要とすること、装置が大型になることに加え、放電の際にオゾン等のコロナ生成物の発生が多いこと、異常放電により被帯電体面が破壊される等の不具合が発生する場合があった。
【0004】
この様なコロナ放電装置に対して、近年では接触帯電方式が採用されている。接触帯電方式においては、電圧を印加した帯電する部材(帯電部材とも記載する)を、被帯電体面に近接又は接触させて、被帯電体面を帯電処理するもので、コロナ放電式に対して、オゾン等のコロナ生成物の発生が少ない、構造が簡単で低コスト化や装置の小型化が図れる、異常放電による被帯電体面の破壊が少ない等の利点がある。そして、一般的には、金属製芯金の軸上に半導電性の弾性体層が形成されたゴムローラ型の帯電部材が使用される。
【0005】
接触帯電方式で用いられる帯電部材の弾性体層には、感光体等の被帯電体表面のピンホールや傷等により生じるリークを防止するために、適度な半導電性が必要である。また、被帯電体を均一に帯電させるためには、帯電部材の電気抵抗値が体積固有抵抗率で1×103〜1×109Ω・cm程度の均一な半導電性であることが重要である。そして、この様な電気特性を実現するために、従来、カーボンブラック等の導電粒子が配合され半導電化された電子導電系の半導電性ゴム組成物を用いて、弾性体層を作製してきた。
【0006】
しかしながら、この様な電子導電系ゴム組成物は原料ゴムに配合するカーボンブラック等の導電粒子の添加量によって、電気抵抗を調整することができるものの、体積固有抵抗率が1×103〜1×109Ω・cmの半導電領域においては、導電粒子の配合量の僅かな変化により、電気抵抗が大きく変化する場合がある。この場合、半導電領域において均質な所望の電気抵抗値を示す弾性体層を作製することが困難となり、帯電部材内及び帯電部材間で電気抵抗のバラツキが生じ易い。
【0007】
電気抵抗が均一なゴム組成物を得る手法としては、エピクロルヒドリンゴムやNBR等のそれ自身が半導電性を有する極性ゴムを使用する、或いは原料ゴムにイオン導電剤を添加して半導電性を付与する等のイオン導電系ゴムにより、弾性体層を構成することが知られている。
【0008】
一方、帯電部材には感光体等の像担持体(以下、感光体と記載する)を汚染しないことも要求される。接触帯電方式においては帯電部材が感光体に接触して使用されるため、長期間の使用において、帯電部材中のイオン導電剤や軟化剤等の低分子成分が感光体を汚染して感光体に機能障害が生じ、画像不良が発生する場合がある。
【0009】
低分子成分による感光体汚染を防ぐ方法として、帯電部材に使用されるゴム材料に層状有機珪酸塩や多孔質充填材を混入する例がある。(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
さらに、イオン導電剤の中でも揮発性の小さいイオン性液体を用いたり、ポリマーとの親和性の高いイオン導電剤を用いることで、感光体汚染を軽減する例がある。(例えば、特許文献3、4参照)。
【0011】
ところで、近年の電子プロセスのより一層の高速化への要求の下で、電子写真感光体を安定に帯電させる為に、本発明者らは、帯電部材の低抵抗化について検討したところ、帯電部材を構成する弾性層中のイオン性液体の増量により低抵抗化の要求には対応し得るものの、帯電部材から感光体への移行による感光体の汚染や破損を生じさせる場合がある、という従来の課題に加え、弾性層中における多量の当該イオン性液体の経時的な偏在により帯電部材の抵抗値が変動し、それによって帯電能が経時的に変化してしまう場合があることを見出した。
【特許文献1】特開2003-223038号公報
【特許文献2】特開2001-109233号公報
【特許文献3】特開2003-202722号公報
【特許文献4】特開2004-272209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の目的は、電子写真に用いられ、電気的特性が均一で充分な帯電能力を有し、長期の使用においても、感光体等の汚染が抑制され、かつ抵抗安定性にも優れた半導電性性弾性部材を提供することである。
【0013】
また本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して提供する電子写真装置並びにこれに用いられるプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、半導電性弾性体中に、1〜50nmの細孔径もしくは層間距離を持つ材料とイオン性液体とを含む電子写真用半導電性部材が提供される。
【0015】
また本発明の他の態様によれば、上記電子写真用半導電性部材を、現像部材、帯電部材及び転写部材から選ばれる少なくとも1つとして具備している電子写真装置が提供される。
【0016】
更に本発明の他の態様によれば、電子写真感光体と、現像部材及び帯電部材から選ばれる少なくとも1つと、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在に構成されているプロセスカートリッジであって、該現像部材及び該帯電部材から選ばれる少なくとも1つが、上記の電子写真用半導電性部材であるプロセスカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明によれば、高速高耐久使用においても、感光体等の被帯電部材の汚染が抑制され、均一帯電性に優れた半導電性部材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
【0019】
本発明における半電性部材は、半導電性弾性体中に、半導電性弾性部材の中に1〜50nmの細孔または層間をもつ無機材料とイオン性液体を共に含有することで感光体の汚染を防止し、高速高耐久使用において帯電能力の安定した電子写真用半導電性部材を提供することが可能となる。この理由については定かではないが、種々の実験結果より、以下のように考えられる。即ち、細孔径又は層間が1〜50nmである無機材料を弾性体成分であるポリマー中に分散させることで、ブルーム成分である低分子成分を細孔内もしくは層間に捕捉しブルームを抑制する。さらに、抵抗制御のために使用するイオン性液体も上記ブルーム成分になり得るが、上記材料と併用することで、ポリマー中の移行を抑制することができる。また、イオン性液体が細孔内や層間にはいることで、長期使用におけるイオンの偏在が抑制され抵抗が安定する。さらに、イオン性液体が細孔内や層間にはいった状態でポリマー中に分散されることで、イオン性液体がポリマー中に均一に分散され低抵抗化が実現できる。
【0020】
細孔径が1〜50nmである材料としては、メソポーラス材料が挙げられる。メソポーラス材料としては、活性炭やシリカゲルの他に、SiO2、SiO2-MOn/2(M=Al)、Ti、V、B、Mn、Fe、Ga、Zr、Al23、TiO2、ZrO2、Ta25、Nb25、SnO2、HfO2、AlPO4を組成とし、ヘキサゴナル、キュービック、ラメラ等の結晶構造を持つものがある。これらの細孔径は材料や製造条件によって異なるが、なかでも細孔径が3〜40nmであるメソポーラスシリカ(SiO2)が好ましい。
【0021】
メソポーラスシリカの合成は、いろいろな方法があるが、例えばNature第359巻710ページに記載されている様な、界面活性剤の存在下においてケイ素のアルコキシドを加水分解させて合成されるMCM−41と呼ばれる物質であり、また、Journal of Chemical Society Chemical Communicationsの1993巻680ページに記載されている様な、層状ケイ酸の一種であるカネマイトの層間に、アルキルアンモニウムをインターカレートさせて合成されるFSM−16と呼ばれる物質、さらにはJ.Am.Chem.Soc.,Vol.120,P6024−6036(1998)に記載されているように、高分子量の非イオン性界面活性剤であるトリブロックコポリマーなどをテンプレートとし、シリカのアルコキシドをシリカ源として,酸性領域で合成する方法をとることもできる。
【0022】
メソポーラス材料の含有量としては特に限定されるものではないが、ベースのポリマー100質量部に対して、0.5〜100質量部の割合で配合することが好ましい。配合量が0.5質量部未満の場合には汚染防止効果が充分に得られず、100質量部超の場合、弾性部材の硬度が非常に高くなり好ましくない。更に好ましい範囲は1〜30質量部である。
【0023】
メソポーラス材料の細孔径は、メソポーラス材料が含有された高分子組成物試料についてX線回折装置を用いて、回折像の2θスキャンを行い、その回折強度のピーク角度から層間距離を求めることが出来る。
【0024】
また、層間が1〜50nmである層状粘土鉱物は、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サボナイト、ヘクトライト及びソーコナイト等のスメクタイトやバーミキュライトや緑泥石及び雲母の一部が挙げられる。これらのなかで、その板状結晶粒子の層表面はマイナスに帯電し、層間にはナトリウムやカルシウムのような交換性陽イオンを介在して電気的に中性を保っているものにおいては、この交換性陽イオンが第四級アンモニウムイオン等に代表される陽イオンとイオン交換し、板状層間に置き換えられた有機変性層状粘土鉱物を使用しても良い。有機変性層状粘土鉱物は有機変性していないものに比較し層間が1.5倍から5倍に広がっている。
特にモンモリロナイトを主成分とする天然鉱物であるベントナイトにおいて移行防止効果が大きい。
【0025】
層状粘土鉱物の含有量としては特に限定されるものではないが、ベースのポリマー100質量部に対して、0.5〜100質量部の割合で配合することが好ましい。配合量が0.5質量部未満の場合には汚染防止効果が充分に得られず、100質量部超の場合、弾性部材の硬度が非常に高くなり好ましくない。更に好ましい範囲は1〜30質量部である。
【0026】
層状粘土鉱物の層間距離は、層状鉱物が含有された高分子組成物試料についてX線回折装置を用いて、回折像の2θスキャンを行い、その回折強度のピーク角度から層間距離を求めることが出来る。
【0027】
イオン性液体は特定の有機カチオンとアニオンの組み合わせにより、室温で液体である溶融塩であり、カチオン成分側ではイミダゾリウム塩系、ピリジニウム塩系、四級アンモニウム塩系、スルホニウム塩系、ホスホニウム塩系、アニオン成分側ではCl-、Br-、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO22-、NO3-、CH3COO-、(CN)2-等の組み合わせが挙げられる。なかでも有機カチオンとして、1〜50nmの細孔径もしくは層間に安定して存在するという点から、1−アルキルー3メチルイミダゾリウム化合物、1−アルキルー2,3ジメチルイミダゾリウム化合物、1,2−アルキルー3メチルイミダゾリウム化合物、1―アルキル―3アリルイミダゾリウム化合物(下記一般式(1))、1アルキルピリジニウム化合物、3―メチル―1アルキルピリジニウム化合物を用いることが好ましい。
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基)
イオン性液体の含有量としては特に限定されるものではないが、ベースのポリマー100質量部に対して、0.5〜30質量部の割合で配合することが好ましい。配合量が0.5質量部未満の場合には導電性効果が充分に得られず、30質量部超えても導電性の変化は小さく、効果的ではない。更に好ましい範囲は1〜5質量部である。
【0030】
上記メソポーラス材料や層状粘土鉱物とイオン性液体は、ポリマー中に別々に混合しても良いし、ポリマーに混合する前にプレミックスしたものを用いても良い。プレミックスは、ホモミキサーやペイントシェーカーを用い、例えばメソポーラス材料や層状粘土鉱物とイオン性液体を15℃〜45℃の範囲内で8〜48時間混合すれば良い。
【0031】
弾性体用の原料ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、電気抵抗が均一なイオン導電系ポリマーを使用することが好ましい。イオン導電系ポリマーとしては、例えば、エチレンオキサイド―プロピレンオキサイドーアリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリンホモポリマー(CHC)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(CHR)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(CHR−AGE)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物(H−NBR)、アクリルゴム(ACM、ANM)及びウレタンゴム(U)等が挙げられる。なお、原料ポリマーはこれらに限らず、また、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
弾性層の体積固有抵抗率は、帯電電圧を電子写真感光体に印加することができるよう、1×103〜1×109Ω・cmであることが好ましい。
【0033】
更に、本発明の弾性層には、発明の効果を著しく損なわない範囲内で必要に応じて、ゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、軟化剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、粘着付与剤、分散剤、発泡剤等を添加することができる。
【0034】
これらの原料の混合方法としては、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーといった密閉型混合機を使用した混合方法や、オープンロールのような開放型の混合機を使用した混合方法等を例示することができる。
【0035】
図1は本発明の弾性部材の形態を示す概略図である。弾性部材の構成は図1(a)に示すように、芯金11とその外周に設けられた弾性体層12とからなる単層構成であっても、図1(b)に示すような、弾性体層12の外側に表面層13を配置した2層構成であってもよく、更に弾性体層12と表面層13との間に中間層や接着層を何層か配置した多層構成であってもよい。さらに弾性部材は、その最外部の感光体と接する部分が、トナーや外添剤の付着を防止する目的で、非粘着処理しても良い。最外部の非粘着処理としては、弾性部材表面に電子線、紫外線、X線及びマイクロウェーブ等のエネルギー線を照射して表面を硬化し非粘着性とする方法や、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びシリコーン樹脂等の非粘着性樹脂やシリコーン系の反応性表面処理剤を用いることが好ましい。
【0036】
表面層を形成する場合には、表面層が形成された半導電性弾性部材の電気抵抗が半導電性域を示すように調整する必要がある。この場合、先述した非粘着性樹脂に対して、必要に応じて、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン及び酸化錫等の酸化物や、銅、銀等の金属を、所望の電気抵抗値としたものが用いられる。
【0037】
本発明において1〜50nmの細孔もしくは層間をもつ無機材料とイオン性液体は弾性体層に含まれていてもよく、表面層や中間層等の弾性体層以外に含まれていてもよい。
【0038】
本発明の半導電性弾性部材は、電子写真装置等の画像形成装置や、感光体及び弾性部材を一体的にカートリッジ化し、画像形成装置本体に対して着脱自在としたプロセスカートリッジにおいて、感光体等の被弾性部材に当接してして使用される導電性弾性部材、すなわち帯電部材等として好適である。
【0039】
具体的には、少なくとも像担持体と、前記像担持体に接触し、電圧の印加により前記像担持体を帯電する帯電部材とが一体的に設けられてカートリッジ化されており、画像形成装置本体に対して着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、前記帯電部材として本発明の弾性部材を用いることが好ましい。
【0040】
また、前記帯電部材が、前記像担持体に当接し、電圧の印加により前記像担持体上に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像し、トナー像を形成する現像部材である場合に、前記帯電部材、すなわち現像部材として本発明の弾性部材を用いることが好ましい。
【0041】
また、少なくとも像担持体と、前記像担持体に接触し、電圧の印加により前記像担持体を帯電する帯電部材とを有する画像形成装置において、前記帯電部材として本発明の弾性部材を用いることが好ましい。
【0042】
また、少なくとも像担持体と、前記像担持体の表面に形成されたトナー像を転写材に転写する転写部材とを有する画像形成装置において、前記転写部材として本発明の弾性部材を用いることが好ましい。
【0043】
図2には、本発明の弾性部材を有する電子写真装置の概略構成を示す。21は被帯電体としての電子写真感光体であり、本例の電子写真感光体は、アルミニウム等の導電性を有する支持体21bと、支持体21b上に形成した感光層21aを基本構成層とするドラム形状の電子写真感光体である。軸21cを中心に図の矢印方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0044】
電子写真感光体21に接触配置されて電子写真感光体を所定の極性・電位に帯電(一次帯電)する帯電ローラ1は、芯金11と、芯金11上に形成した弾性層12と、弾性層12上に形成した表面層13からなり、芯金11の両端部を不図示の押圧手段で電子写真感光体21の回転駆動に伴い従動回転する。
【0045】
電源23で摺擦電源23aにより、芯金11の所定の直流(DC)バイアス、あるいは直流+交流(DC+AC)バイアスが印加されることで電子写真感光体21が所定の極性・電位に接触帯電される。帯電ローラ1で周面が帯電された電子写真感光体21は、次いで露光手段24により目的画像情報の露光(レーザービーム走査露光、原稿画像のスリット露光等)を受けることで、その周面に目的の画像情報に対した静電潜像が形成される。
【0046】
その静電潜像は、次いで、現像部材25により、トナー画像として順次に可視像化されていく。このトナー画像は、次いで、転写手段26により不図示の給紙手段部から電子写真感光体21の回転と同期取りされて適正なタイミングをもって電子写真感光体21と転写手段26との間の転写部へ搬送された転写材27に順次転写されていく。本例の転写手段26は転写ローラであり、転写材27の裏からトナーと逆極性の帯電を行うことで電子写真感光体21側のトナー画像が転写材27に転写されていく。
【0047】
表面にトナー画像の転写を受けた転写材27は、電子写真感光体21から分離されて不図示の定着手段へ搬送されて像定着を受け、画像形成物として出力される。あるいは、裏面にも像形成するものでは、転写部への再搬送手段へ搬送される。
【0048】
像転写後の電子写真感光体21の周面は、前露光手段28による前露光を受けて電子写真感光体ドラム上の残留電荷が除去(除電)される。この前露光手段28には公知の手段を利用することができ、例えばLEDチップアレイ、ヒューズランプ、ハロゲンランプ及び蛍光ランプ等を好適に例示することができる。前露光手段は、除電効果を考慮すると、その露光量は前述した露光手段の露光量よりも大きいことが好ましいといえる。また、前露光手段の位置は本実施形態に限定されるものではなく、クリーニング手段(後述する)と帯電手段の間に設けてもよいし、現像手段と転写手段の間に設けてもよい。
【0049】
除電された電子写真感光体21の周面は、クリーニング部材29で転写残りトナー等の付着汚染物の除去を受けて洗浄面化されて、繰り返して画像形成に供される。
【0050】
帯電ローラ1は面移動駆動される電子写真感光体21に従動駆動させてもよいし、非回転にしてもよいし、電子写真感光体21の面移動方向に順方向又は逆方向に所定の周速度をもって積極的に回転駆動させるようにしてもよい。
【0051】
また、露光は、電子写真装置を複写機として使用する場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは原稿を読み取り信号化し、この信号に基づいてレーザービームを走査したり、LEDアレイを駆動したり、又は液晶シャッターアレイを駆動したりすること等により行われる。
【0052】
本発明の電子写真導電性弾性部材を使用しうる電子写真装置としては、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンター、あるいは、電子写真製版システム等の電子写真応用装置等が挙げられる。
【0053】
本発明の弾性部材は、帯電ローラ等の帯電部材以外に、現像部材、転写部材、除電部材や、給紙ローラ等の搬送部材としても使用可能である。
【0054】
本発明においては、図3に示されるように、電子写真感光体、帯電部材、現像部材、クリーニング部材のような電子写真装置の複数の要素が、プロセスカートリッジに一体的に組み込まれることもできる。プロセスカートリッジは、電子写真装置本体に対して着脱自在の構成とすることができる。例えば、本発明の帯電部材及び電子写真感光体、必要に応じて、更に現像部材やクリーニング部材等をプロセスカートリッジに一体的に組み込み、電子写真装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在に構成できる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を意味しており、試薬等で特に指定のないものは、市販の高純度品を用いた。
(メソポーラスシリカの合成)
メソポーラスシリカ粉末は、メソ孔およびマイクロ孔を形成するための鋳型であるブロック共重合体EO20−PO70−EO20(EO:エチレンオキシド、PO:プロピレンオキシド)(P123)を用い、前記ブロック共重合体を希塩酸に溶解し、Ts=35℃の溶解温度において撹拌し、シリカ前駆体であるTEOS(テトラエチルオルトシリケート)を加えた。この溶液および沈殿物を80℃で24時間放置した後、ろ過し、水で洗浄して室温にて風乾した。最後に焼成条件、400℃で4時間放置し、400℃から100℃まで8時間かけて冷却した後、自然冷却によって室温に戻して製造した。
【0056】
(実施例1)
原料ゴムとして、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(商品名:ZSN8030、日本ゼオン(株)社製)100部、加工助剤としてステアリン酸1部、加硫促進助剤として酸化亜鉛3部、充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW、白石カルシウム(株)社製)100部、メソポーラスシリカ2部、イオン性液体として以下に示すカチオンとBF4-からなる塩1部、加硫剤として2-メルカプトベンゾチアゾール(商品名:ノクセラーM、大内新興化学工業(株)社製)1部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(商品名:ノクセラーTRA、大内新興化学工業(株)社製)2部、テトラエチルチオラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製)1部及び硫黄1部をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。
【0057】
【化2】

【0058】
得られた未加硫ゴム組成物をベント式ゴム押出機(φ50mmベント押出機 L/D=16 EM技研社製)によってチューブ状に押出し、加硫缶を用いた加圧水蒸気により160℃で30分間の一次加硫を行い、外径15mm、内径5.5mm、長さ250mmのゴムチューブを得た。
【0059】
次に、直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性芯金(鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部232mmに導電性ホットメルト接着剤を塗布し、80℃で30分間乾燥したものに、前述のゴムチューブを圧入し、熱風炉にて160℃で2時間の二次加硫と接着処理を行った。この加硫後のローラのゴム両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを232mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径8.40mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の弾性体層を得た。
【0060】
次に、弾性体層表面に紫外線を照射して表面処理を行い帯電ローラを得た。表面処理はローラを回転させながら、その表面に紫外線照射装置(185nm、245nmが波長主成分)を用いて紫外線強度40mW/cm2を10分間照射した。図4に帯電部材の電気抵抗測定装置の概略図を示した。ゴムローラ4aは芯金11の両端部を不図示の押圧手段で円柱状のアルミニウムドラム41に圧接され、アルミニウムドラム41の回転駆動に伴い従動回転する。この状態で、ゴムローラ4aの芯金部分11に電源42を用いて直流電圧を印加し、41のアルミニウムドラムに直列に接続した抵抗43にかる電圧から、帯電ローラの電気抵抗を計算した。
【0061】
上記帯電ローラの電気抵抗は、温度23.5℃/湿度60%R.H.(N/Nとも記載する)環境下で、図4の装置を使用し、芯金と金属ドラムの間に直流200Vの電圧を印加して電気抵抗を求めた結果、は1.06×104Ωであった。
【0062】
この弾性体層から2mm厚の試験片を短冊状に数枚切り出し、アルミニウム製の試料ホルダーに測定面が平滑に揃うように敷き詰め、X線回折装置(TTR―2、(株)リガク製)によって層状鉱物の層間距離を2θ/θスキャン法にてθ=10°まで測定した。なお、X線回折測定の条件は、X線出力50kV、300mAのCuKα線を用い、発散スリット0.2mm、発散縦制限スリット10.00mm、散乱スリット開放、受光スリット0.15mm、インシデントモノクロメーター使用とした。その結果、メソポーラスシリカの細孔径は7.00nmであった。
【0063】
この帯電ローラを図3に示したプロセスカートリッジに組み込み、図2に示した電子写真装置(レーザショットLBP−2510、キヤノン製)にて画像評価を行った。画像評価は帯電ローラによる帯電能の差が最も顕著に表れるように、N/N環境下において、画像評価は感光体表面電位が−600Vとなるように、帯電ローラの芯金に直流電圧のみを印加して、図2に示した電子写真プロセスにおける前露光手段を作動させないようにして、1ドットをケイマパターンで印字したハーフトーン画像を形成させて評価を行った。
【0064】
画像評価は帯電能力が不足した場合に生じる、ハーフトーン画像の横黒スジ状画像不良の発生状況によりランク付けを行った。ランク1は非常に良好(黒スジ状の画像不良はまったく見られない)、ランク2は良好(部分的に軽微な黒スジ状の画像不良が確認できる)、ランク3は画像の全面に軽微な黒スジ状の画像不良が確認できる、ランク4は画像全面に黒スジ状の画像不良が非常に目立つ、というレベルであり、本例の画像ランクはランク1であった。
【0065】
次に、このカートリッジを40℃/95%R.H.の環境下で30日間放置した後、もう一度、電子写真装置に組込み、N/N環境下でハーフトーンの画像形成を行い、過酷環境放置後の画像評価を行った。その結果、帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0066】
(実施例2)
メソポーラスシリカを4部、イオン性液体を3部とした他は実施例1と同様に帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は5.49×103Ω、メソポーラスシリカの細孔径は7.00nmであった。
【0067】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク1であり、過酷環境放置後も帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0068】
(実施例3)
メソポーラスシリカを6部、イオン性液体を5部とした他は実施例1と同様に帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は3.38×103Ω、メソポーラスシリカの細孔径は7.00nmであった。
【0069】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク1であり、過酷環境放置後も帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0070】
(実施例4)
原料ゴムとして、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(商品名:ZSN8030、日本ゼオン(株)社製)100部、加工助剤としてステアリン酸1部、加硫促進助剤として酸化亜鉛3部、充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW、白石カルシウム(株)社製)100部、有機変性した層状粘土鉱物として有機ベントナイト(商品名:エスベンNX、ホージュン(株)社製)を2部、イオン性液体として実施例1と同様のものを1部、加硫剤として2-メルカプトベンゾチアゾール(商品名:ノクセラーM、大内新興化学工業(株)社製)1部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(商品名:ノクセラーTRA、大内新興化学工業(株)社製)2部、テトラエチルチオラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製)1部及び硫黄1部をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物から、実施例1と同様に帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は2.11×104Ω、層状粘土鉱物の層間距離は3.52nmであった。
【0071】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク2であり、過酷環境放置後も帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0072】
(実施例5)
有機変性した層状粘土鉱物として有機ベントナイト(商品名:エスベンNX、ホージュン(株)社製)を4部、イオン性液体を3部とした他は実施例4と同様に帯電ローラを得た。
N/N環境下での電気抵抗は1.52×104Ω、層状粘土鉱物の層間距離は3.52nmであった。
【0073】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク2であり、過酷環境放置後も帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0074】
(実施例6)
有機変性した層状粘土鉱物として有機ベントナイト(商品名:エスベンNX、ホージュン(株)社製)を6部、イオン性液体を5部とした他は実施例4と同様に帯電ローラを得た。
N/N環境下での電気抵抗は1.26×104Ω、層状粘土鉱物の層間距離は3.52nmであった。
【0075】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク2であり、過酷環境放置後も帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0076】
(比較例1)
原料ゴムとして、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(商品名:ZSN8030、日本ゼオン(株)社製)100部、加工助剤としてステアリン酸1部、加硫促進助剤として酸化亜鉛3部、充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW、白石カルシウム(株)社製)100部、メソポーラスシリカ4部、加硫剤として2-メルカプトベンゾチアゾール(商品名:ノクセラーM、大内新興化学工業(株)社製)1部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(商品名:ノクセラーTRA、大内新興化学工業(株)社製)2部、テトラエチルチオラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製)1部及び硫黄1部をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物から実施例1と同様の方法で帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は2.75×104Ω、メソポーラスシリカの細孔径は7.00nmであった。
【0077】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク3であった。また、放置後に帯電ローラから感光体への汚染物質の移行はなかったものの、画像不良は改善されていなかった。
【0078】
(比較例2)
原料ゴムとして、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(商品名:ZSN8030、日本ゼオン(株)社製)100部、加工助剤としてステアリン酸1部、加硫促進助剤として酸化亜鉛3部、充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW、白石カルシウム(株)社製)100部、有機変性した層状粘土鉱物として有機ベントナイト(商品名:エスベンNX、ホージュン(株)社製)を4部、加硫剤として2-メルカプトベンゾチアゾール(商品名:ノクセラーM、大内新興化学工業(株)社製)1部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(商品名:ノクセラーTRA、大内新興化学工業(株)社製)2部、テトラエチルチオラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製)1部及び硫黄1部をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物から実施例1と同様の方法で帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は7.60×105Ω、層状粘土鉱物の層間距離は3.52nmであった。
【0079】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク3であった。また、放置後に帯電ローラから感光体への汚染物質の移行はなかったものの、画像不良は改善されていなかった。
【0080】
(比較例3)
原料ゴムとして、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(商品名:ZSN8030、日本ゼオン(株)社製)100部、加工助剤としてステアリン酸1部、加硫促進助剤として酸化亜鉛3部、充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW、白石カルシウム(株)社製)100部、層状粘土鉱物として焼成カオリン(商品名:ST−KE、白石カルシウム(株)社製)4部、加硫剤として2-メルカプトベンゾチアゾール(商品名:ノクセラーM、大内新興化学工業(株)社製)1部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(商品名:ノクセラーTRA、大内新興化学工業(株)社製)2部、テトラエチルチオラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製)1部及び硫黄1部をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物から実施例1と同様の方法で帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は4.22×105Ω、層状粘土鉱物の層間距離は0.53nmであった。
【0081】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク3で画像不良が発生し、放置後に電ローラから感光体への汚染物質の移行したものと見られる画像不良も確認された。
【0082】
(比較例4)
原料ゴムとして、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(商品名:ZSN8030、日本ゼオン(株)社製)100部、加工助剤としてステアリン酸1部、加硫促進助剤として酸化亜鉛3部、充填剤として炭酸カルシウム(商品名:シルバーW、白石カルシウム(株)社製)100部、層状粘土鉱物として焼成カオリン(商品名:ST−KE、白石カルシウム(株)社製)4部、実施例1と同様のイオン性液体3部、加硫剤として2-メルカプトベンゾチアゾール(商品名:ノクセラーM、大内新興化学工業(株)社製)1部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(商品名:ノクセラーTRA、大内新興化学工業(株)社製)2部、テトラエチルチオラムジスルフィド(商品名:ノクセラーTET、大内新興化学工業(株)社製)1部及び硫黄1部をオープンロールにて混合し、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物から実施例1と同様の方法で帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は2.10×104Ω、層状粘土鉱物の層間距離は0.53nmであった。
【0083】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク3で画像不良が発生し、放置後に電ローラから感光体への汚染物質の移行したものと見られる画像不良も確認された。
【0084】
(実施例7)
実施例2で得た弾性体層の表面処理として、シリコーン系反応性表面処理液(商品名:SAT−500F、シンコー技研(株)社製)を用い、この処理液に弾性体層を1分間ディッピングした後、100℃、10分の熱処理を行い帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は4.58×103Ω、メソポーラスシリカの細孔径は7.00nmであった。
【0085】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク1であり、過酷環境放置後も帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0086】
(実施例8)
実施例5で得た弾性体層の表面処理として、シリコーン系反応性表面処理液(商品名:SAT−500F、シンコー技研(株)社製)を用い、この処理液に弾性体層を1分間ディッピングした後、100℃、10分の熱処理を行い帯電ローラを得た。N/N環境下での電気抵抗は8.80×105Ω、層状粘土鉱物の層間距離は3.52nmであった。
【0087】
実施例1と同様にN/N環境下での帯電能評価と過酷放置による感光体汚染試験を画像出力により行った。その結果、帯電能画像ランクはランク1であり、過酷環境放置後も帯電ローラから感光体への汚染物質の移行は確認されず、品位良好な画像が得られた。
【0088】
以上の結果について、弾性体層の材料組成、表面処理、作製した帯電ローラの評価結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
比較例1、2については帯電ローラを構成するポリマーに、本発明の1〜50nmの細孔径もしくは層間距離を持つ材料は含有されているが、イオン性液体が含有されておらず、その結果、帯電能不足による画像不良が発生した。長期放置で感光体上に汚染物質は観察されなかったものの、帯電能不足による画像不良が発生した。比較例3については、層状粘土鉱物の層間距離が短いために、長期放置時の低分子成分の移行を抑制しきれず感光体上に汚染物質が観察された。比較例4については、層状粘土鉱物とイオン性液体が含有されているが、層状粘土鉱物の層間距離が短いためにイオン性液体が層間にはいらず、電気抵抗が高くなり帯電能不足による画像不良が生じた。また、長期放置時の低分子成分の移行を抑制しきれず感光体上に汚染物質が観察された。
【0091】
表1から明らかなように、本発明の弾性部材である帯電ローラについては、弾性層電気抵抗が充分に低いため、N/N環境下でのハーフトーン画像出力における画像ランクが、ランク2以上であり、帯電ローラと感光体とを当接させて過酷環境下で長期放置した場合にも、帯電ローラからの移行物質が感光体汚染を汚染することによる画像不良は発生していない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の弾性部材の一例としての帯電ローラの構成を示す図である。
【図2】本発明における電子写真装置の例を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明におけるプロセスカートリッジの例を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明における導電性部材の電気抵抗の測定例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0093】
1 帯電ローラ
11 芯金
12 弾性体層
13 表面層
21 像担持体
21a 感光層
21b 導電性支持体
21c 支軸
23 電源
23a 摺擦電源
24 露光手段
25 現像手段
26 転写ローラ
27 転写材
28 前露光手段
29 クリーニング手段
41 アルミニウムドラム
42 外部電源
43 基準抵抗
4a ゴムローラ
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導電性弾性体中に、1〜50nmの細孔径もしくは層間距離を持つ材料とイオン性液体とを含むことを特徴とする電子写真用半導電性部材。
【請求項2】
前記材料がメソポーラス材料である請求項1に記載の電子写真用半導電性部材。
【請求項3】
前記メソポーラス材料がメソポーラスシリカである請求項2に記載の電子写真用半導電性部材。
【請求項4】
前記材料が層状粘土鉱物である請求項1に記載の電子写真用半導電性部材。
【請求項5】
前記イオン性液体が、1−アルキルー3メチルイミダゾリウム化合物、1−アルキルー2,3ジメチルイミダゾリウム化合物、1,2−アルキルー3メチルイミダゾリウム化合物、1―アルキル―3アリルイミダゾリウム化合物、1アルキルピリジニウム化合物、3―メチル―1アルキルピリジニウム化合物のうちの少なくとも一つである請求項1乃至4の何れかに記載の電子写真用半導電性部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の電子写真用半導電性部材を、現像部材、帯電部材及び転写部材から選ばれる少なくとも1つとして具備していることを特徴とする電子写真装置。
【請求項7】
電子写真感光体と、現像部材及び帯電部材から選ばれる少なくとも1つと、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在に構成されているプロセスカートリッジであって、該現像部材及び該帯電部材から選ばれる少なくとも1つが、請求項1乃至5の何れかに記載の電子写真用半導電性部材であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−154634(P2006−154634A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348582(P2004−348582)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】