説明

電子写真用導電ローラとその製造方法

【課題】周方向の抵抗ムラが小さい電子写真用導電ローラとその製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状のパイプ(7)とパイプの両端にそれぞれ配設された軸芯体を保持するための二つの駒(8a)(8b)とを有する金型を用い、前記パイプに沿って軸芯体を金型内に設置し、前記二つの駒(8a)(8b)の一方に設けられた注入穴より樹脂層材料を金型内に注入し、金型を加熱することにより樹脂層材料を硬化させて軸芯体の周りに樹脂層を形成する工程を有する電子写真用導電ローラの製造方法において、樹脂層材料が、粘度、フィラー充填量及び10%硬化時間が特定の範囲にある付加反応型液状シリコーンゴムであり、樹脂層材料を金型に注入する平均速度が特定の範囲にあり、樹脂層の長さ、樹脂層の厚さ並びに注入側、中央部及び出口側の加熱温度(T1)(T2)(T3)が特定の関係を満たす電子写真用導電ローラの製造方法。この方法で製造されたローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用される電子写真用導電ローラに関する。詳しくは、軸芯体の周りに樹脂層を有する、帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラ等の電子写真用導電ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置の概要図を、図1に示す。1は潜像担持体(以下感光ドラムと表す)であり、所定のプロセススピードで回転する。感光ドラムが所定のプロセススピードで回転する工程の際に、所定の帯電バイアスE1を持つ帯電手段2によって、感光ドラム表面は一定の電位になるよう帯電される。さらに、露光3により、画像露光(原稿像のアナログ露光、デジタル走査露光)を受けて感光ドラムの表面に目的とする静電潜像が形成される。
【0003】
現像バイアスE3を持つ現像手段4によって感光ドラム上の静電潜像を現像してトナー画像を形成する。感光ドラム1と転写手段5が当接している転写部には、給紙手段より、所定のタイミングで紙が搬送される。そして、転写手段5に対して転写バイアスE2が印加され、感光ドラム表面のトナー画像が、紙に転写される。
【0004】
トナー画像が転写された紙は、感光ドラム表面から分離されて定着手段へ移動し、定着手段によってトナー画像が紙に定着され、定着画像を有する紙は定着手段から排出される。また、一方で、トナー画像を転写した後の感光ドラムには、転写されなかったトナーが残る場合がある。転写されずに残ったトナーはクリーニング手段6により感光ドラム1の表面から除去される。
【0005】
現在、帯電手段、現像手段、転写手段として、それぞれ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラが用いられる場合が多い。これらのローラは半導電ローラとして用いる場合が多く、導電剤を添加することにより中抵抗に調整された数mmの厚さのゴム(樹脂層)を有する。
【0006】
軸芯体上に樹脂層を設ける方法の一つとして、中空の円筒状の金型に所定の液状材料を注入し、注入した材料を加熱硬化し、脱型する方法がある(特許文献1)。
【0007】
特許文献1には、円筒状成形型の片方端部から熱硬化性樹脂層材料を注入し、その後加熱硬化することによって、芯金の外周上に熱硬化性樹脂層を有する電子写真用導電ローラを製造する方法に関して提案がなされている。特許文献1に記載される方法では、円筒状成形型の温度を、材料注入時及び加熱硬化中を通して、材料注入側よりもその逆側(出口側)の方を低くしておく。これにより、熱硬化性樹脂層の軸方向両端部における熱履歴を均一化することができ、その結果としてローラの長手方向における外径差を小さくできることが開示されている。
【特許文献1】特開2006−090454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、この方法について更なる検討を重ねた。その過程で、電子写真用導電ローラの熱硬化性樹脂層の軸に沿う方向(以降「軸芯体長手方向」ともいう)の長さが300mm以上だと、周方向の抵抗ムラが大きくなってしまうことがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、樹脂層の軸芯体長手方向の長さが300mm以上のローラを、金型内に付加反応型液状シリコーンゴムを含む樹脂層材料を注入して成型する場合に、周方向の抵抗ムラを抑制することである。特に、周方向の抵抗ムラが生じやすいフィラーを添加した材料を用いても、周方向の抵抗ムラが小さい電子写真用導電ローラおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、円筒状のパイプと該パイプの両端にそれぞれ配設された軸芯体を保持するための二つの駒とを有する金型を用い、前記パイプに沿って軸芯体を金型内に設置し、前記二つの駒の一方に設けられた注入穴より付加反応型液状シリコーンゴムを含む樹脂層材料を金型内に注入し、金型を加熱することにより該樹脂層材料を硬化させて軸芯体の周りに樹脂層を形成する工程を有する電子写真用導電ローラの製造方法において、
該樹脂層材料が、以下の条件(i)から(iii)を満たし、
(i)金型投入時の温度における粘度が50Pa・s以上500Pa・s以下、
(ii)フィラーの充填量が付加反応型液状シリコーンゴム100質量部に対して10質量部以上80質量部以下、
(iii)100℃における10%硬化時間をT10(秒)としたとき50≦T10≦140、
該樹脂層材料を金型に注入する平均速度が5.0ml/sec以上30.0ml/sec以下であり、
該樹脂層の軸芯体長手方向の長さをL(mm)、該樹脂層の厚さをd(mm)、注入側の加熱温度をT1(℃)、中央部の加熱温度をT2(℃)、出口側の加熱温度をT3(℃)としたとき、d≧2.5かつ300≦L≦400であって、下式(1)から(3)を満たすことを特徴とする電子写真用導電ローラの製造方法に関する。
【0011】
【数1】

【0012】
さらに本発明は、軸芯体と該軸芯体の周りに配された樹脂層を有する電子写真用導電ローラであって、
上記製造方法により製造されたことを特徴とする電子写真用導電ローラに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、樹脂層の軸芯体長手方向の長さが300mm以上のローラを、金型内に付加反応型液状シリコーンゴムを含む樹脂層材料を注入して成型する場合に、周方向の抵抗ムラを抑制することができる。特に、周方向の抵抗ムラが生じやすいフィラーを添加した材料を用いても、周方向の抵抗ムラが小さい電子写真用導電ローラおよびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明により製造することのできる電子写真用導電ローラを図2に示す。電子写真用導電ローラは軸芯体14bの周面上に、例えば中抵抗(1×103〜1×1010Ω・cm)となるよう導電剤を配合した樹脂層14aを設けている。
【0015】
本発明で用いることのできる金型の例を図3に示す。金型は、円筒状のパイプ7と、パイプの両端にそれぞれ配設された軸芯体を保持するための二つの駒とで構成される。一方の駒(注入駒)8aには、成型材料(樹脂層材料)を円筒状のパイプ内に供給できるよう、貫通穴(注入穴)9aを設けており、他方の駒(出口駒)8bには、円筒状のパイプから材料を逃がすための貫通穴(出口穴)9bが設けられている。
【0016】
〔注入穴・出口穴の合計面積〕
本発明に用いる駒の注入穴の面積は合計10.0mm2以上25.0mm2以下であることが好ましい。注入穴の合計面積が10.0mm2以上であると、樹脂層材料を注入する際に材料圧力が大きくなることを抑制し、注入穴の入口付近で材料に含有される導電フィラーが凝集することを抑制し、抵抗ムラを抑制することが容易である。また25.0mm2以下であると金型に樹脂層材料を注入後、加熱している際に材料が金型より材料が垂れ易くなることを抑制し、成型後ローラ上に欠損が生じることを抑制することが容易である。なお、本発明において注入穴の合計面積とは、注入穴が複数ある場合に各々の穴の最小面積の和であり、注入穴が一つの場合はその穴の最小面積を意味する。最小面積とは注入穴の軸芯体長手方向の断面積が最も小さい部分の面積を表す。
【0017】
本発明に用いる駒の出口穴の合計面積は合計10.0以上25.0mm2以下であることが好ましい。出口穴の面積が10.0mm2以上であると以下の理由により周方向の抵抗ムラが生じやすくなることを、抑制することが容易である。すなわち、樹脂層材料注入時に生じた軸芯体付近の周方向の温度ムラにより硬化速度ムラが生じる。さらに、硬化速度ムラにより、周方向の内圧ムラが生じる。周方向の内圧ムラが出口穴より抜けきれず、そのまま硬化するため、内圧ムラが電子写真用導電ローラの中央部及び出口側に残る。よって、周方向の抵抗ムラが大きくなる。また、出口駒の合計面積が25.0mm2以下であると材料注入時にオーバーフローさせるために用いる材料が多くなることを抑制し、材料が金型内を通る際に特に注入側の金型の温度低下が著しくなることを抑制することが容易である。かつ、出口側の金型の温度低下が小さくなることを抑制し、出口側及び中央部の周方向の内圧ムラが残ったまま硬化することを抑制し、周方向の抵抗ムラが大きくなりやすくなることを抑制することが容易である。なお、本発明において出口穴の合計面積とは、出口穴が複数ある場合に各々の穴の最小面積の和であり、出口穴が一つの場合はその穴の最小面積を意味する。
【0018】
〔金型の予熱と加熱硬化時間〕
軸芯体を内部に設置した金型を予熱(好ましくは105℃以上130℃以下に)したうえで成型機に配置し、その後、金型を上記式(1)から式(3)を満たす温度で3分以上10分以下加熱して樹脂層材料を硬化させることが好ましい。周方向の抵抗ムラがより小さくなるからである。硬化時間が3分以上だと、注入時に生じる金型の周方向の温度ムラにより硬化速度ムラが生じることを抑制し、かつ、硬化が不十分となる部分の存在により周方向の抵抗ムラが生じやすくなることを抑制することが容易である。また、硬化時間が10分以下だと、電子写真導電ローラの抵抗が高くなることを抑制し、少しの周方向の硬化速度ムラでも周方向の抵抗ムラが大きくなりやすくなることを抑制することが容易である。また、金型を予熱しておくことが好ましい。連続して成型を行う際に樹脂層材料が受ける熱履歴のばらつきが小さくなるので周方向の抵抗ムラを小さくすることができるためである。
【0019】
〔樹脂層材料の条件(i)〕
本発明に用いる樹脂層材料は、付加反応型液状シリコーンゴムと、導電フィラー等のフィラーとを含有する。そして、金型に注入される際の樹脂層材料の粘度が50Pa・s以上500Pa・s以下である。好ましい粘度は70Pa・s以上450Pa・s以下である。
【0020】
粘度が50Pa・sより小さいと、金型に注入後、材料が入口穴より材料が流れ出し易くなり、成型後、ローラの注入側の端部に注入穴と同じ形状の欠損が生じやすくなる。また、粘度が500Pa・sより大きいと、材料注入時に、注入圧力が高くなり、注入穴の入口付近で分散している導電フィラーが凝集し、周方向の抵抗ムラが大きくなる。なお、材料の粘度は、金型投入時の温度に5時間静置した後に、BH型回転粘度計(東京計器社製)でロータNo.7を用いて10rpm条件で測定した値とする。
【0021】
〔樹脂層材料の条件(ii)〕
本発明に用いられる樹脂層材料は、付加反応型液状シリコーンゴムと、カーボンブラックなどの導電フィラーや、非導電性フィラー等のフィラーとを含有している。それらフィラーの合計含有量(充填量)は付加反応型液状シリコーンゴム100質量部に対して10質量部以上80質量部以下とする。好ましい充填量は付加反応型液状シリコーンゴム100質量部に対して20質量部以上、70質量部以下である。
【0022】
充填量が10質量部より少ないと、材料の粘度が低くなるため、金型に注入後、材料が入口穴より流れ易くなるので、成型後、ローラに欠損が生じやすくなる。また、充填量が80質量部より大きいと、材料の粘度が大きくなり、材料の注入圧力が高くなり、材料に含有される導電フィラーが凝集しやすく、周方向の抵抗ムラが大きくなる。
【0023】
〔樹脂層材料の条件(iii)〕
本発明に用いられる樹脂層材料の100℃における10%硬化時間をT10(秒)としたとき、50≦T10≦140が成り立つ。好ましいT10の範囲は55≦T10≦130である。T10が50秒より短いと、材料が早く硬化する。そのため、材料を注入した際に生じた周方向の温度ムラより発生した周方向の内圧ムラが、残ったまま材料が硬化するので、周方向の抵抗ムラが大きくなる。また、T10が140秒より長いと、硬化にかかる時間が長くなるため、電子写真導電ローラの抵抗が高くなり、少しの硬化速度ムラでも周方向の抵抗ムラが大きくなりやすい。
【0024】
なお、10%硬化時間はキュラストメーターV型(JSRトレーティング社製)を用いて、測定部および検出部を100℃とし、測定する。10%硬化時間とはキュラストメーターより測定される最大トルクの10%のトルクに達する時間を表している。
【0025】
〔樹脂層材料注入速度〕
樹脂層材料を注入する平均速度は、5.0ml/sec以上30.0ml/sec以下とする。好ましい注入速度の範囲は6.0ml/sec以上28.0ml/sec以下である。
【0026】
注入速度が5.0ml/secより遅いと以下の理由により、周方向の抵抗ムラが大きくなる。すなわち、材料を遅い速度で金型内を通過し、出口穴よりオーバーフローする際に、注入側は注入された材料により冷やされ、出口側の金型の温度が注入側と比べて高くなるので、出口側の硬化が早く硬化が進行する。周方向の内圧ムラが抜けきれないまま、材料が硬化する。よって、周方向の抵抗ムラが大きくなる。注入速度が30.0ml/secより速いと、注入時の材料圧力が高くなるため、材料に含有される導電フィラーが注入穴の入口部分で凝集しやすく、周方向の抵抗ムラが大きくなる。
【0027】
なお、注入速度は一定でも、あるいは、注入中に変化させても構わない。本発明における注入速度とは、
樹脂層形成用材料の注入量(ml)/樹脂形成用材料を注入するのに要した時間(sec)
の式より求められる値を表している。
【0028】
〔成型機〕
本発明に用いる成型機とは電子写真用導電ローラを製造するために用いる金型を加熱するための手段を指し、例えば以下のとおりである。半円筒状のくぼみがある板(熱盤)が2枚装備されており、金型を半円筒状のくぼみに合わさるように挟み込む。熱盤にはヒータが装備されており、ヒータによって、熱盤が加熱され、さらに挟んだ金型が加熱される。そして、この本発明の成型機には、ヒータが片側の熱盤の長手方向に3箇所装備されている。また、3箇所に装備したヒータを制御するために、温調器も装備されている。その状態で、スタティックミキサーにより、主剤と硬化剤を混合した樹脂層材料が注入穴より注入される。そして、金型を加熱することにより、樹脂層材料を円筒状に前記軸芯体と一体的に成形し、電子写真用導電ローラが製造される。熱盤の金型接触面は、その強度及び熱伝導性の良さから、金属材料で作製されている。
【0029】
〔式(1)〜(3)の条件〕
樹脂層の軸芯体長手方向の長さをL(mm)、樹脂層の厚さをd(mm)、注入側の加熱温度をT1(℃)、中央部の加熱温度をT2(℃)、出口側の加熱温度をT3(℃)とする。このとき、本発明では、d≧2.5かつ300≦L≦400とする。そして、次の式(1)〜(3)が満たされることが必要である。
【0030】
【数2】

【0031】
なお、本発明の樹脂層の厚さd(mm)とは以下の式、
((樹脂層の外径)−(軸芯体の外径))/2
より求められる値である。
【0032】
まず、式(3)の105≦T3≦130となるT3の温度を決め、T3とローラの長さL(mm)の値を用いて式(1)より適切なT1の温度範囲を決めることができる。T1、T3の値を用いて式(2)より適切なT2の温度範囲を決めることができる。
【0033】
T1〜T3の温度測定箇所を図4に示す。軸芯体長手方向で円筒状パイプ7の注入側の端部から30mmに位置する熱盤表面を接触式の温度測定器で測定しT1とする。軸芯体長手方向で円筒状パイプの出口側の端部から30mmに位置する熱盤表面を接触式の温度測定器で測定しT3とする。軸芯体長手方向で円筒状パイプの中央部、周方向で熱盤の奥側に位置する熱盤表面を接触式の温度測定器で測定しT2とする。
【0034】
本発明において、T3が105≦T3≦130である。110≦T3≦125であることが好ましい。T3が130℃より高いと、以下の理由により周方向の抵抗ムラが大きくなる。すなわち、材料注入時に生じた金型の周方向の温度ムラにより、周方向に硬化速度ムラが生じる。周方向に硬化速度ムラが生じると周方向の抵抗ムラが生じるが、出口側の加熱温度が高いため、特に、中央部から出口側にかけて、周方向の内圧ムラが抜けきれないまま、材料が硬化する。よって、周方向の抵抗ムラが大きくなる。また、T3が105℃より低いと、出口側の材料の硬化が十分に進行しないため、周方向の抵抗バラツキが大きくなり、周方向の抵抗ムラが大きくなる。
【0035】
本発明において、T1が0.03×L−6+T3≦T1≦0.15×L−40+T3の範囲を満たす。T1が0.03×L−6+T3より低いと出口側の材料が注入側と比べて、早く硬化するため周方向の内圧ムラが抜けきれないまま、材料が硬化し、周方向の抵抗ムラが生じる。また、T1が0.15×L−40+T3より高いと注入側の材料の硬化が早く進行するため、周方向の内圧ムラが抜けきれないまま、材料が硬化し、周方向の抵抗ムラが大きくなる。
【0036】
本発明において、T2がT2>T3、かつ、T1−2≦T2≦T1の範囲を満たす。T2がT3以下、あるいはT1−2より低いと注入側及び、出口側の硬化が早く進行するため中央部付近の内圧ムラが抜けきれないまま、材料が硬化し、周方向の抵抗ムラが生じる。また、T2がT1より高いと、中央部から出口側付近の材料の硬化が早く進行するので、内圧ムラが抜けきれないまま、材料が硬化し、周方向の抵抗ムラが大きくなる。
【0037】
〔抵抗ムラ〕
本発明において、電子写真用導電ローラの抵抗値の最大値と最小値の比を電子写真用導電ローラの抵抗ムラとする。また、抵抗ムラが1.5桁より大きい場合に抵抗ムラが大きいと判断する。
【0038】
抵抗ムラが1.5桁より大きいと、電子写真用導電ローラとして用いて、電子写真画像を出力すると、ローラの周期単位で、目視で認識可能な程度の濃淡ムラが発生しやすくなる。この原因としては、周方向での抵抗が違うため、電気的特性がその部分により変わるためである。よって、抵抗ムラは1.5桁以内が良い。
【0039】
電子写真用導電ローラの周方向の抵抗ムラ測定機の概略図を図5に示す。測定方法と抵抗の算出方法は以下のとおりである。電子写真用導電ローラ14をアルミ製ドラム11に圧接する。電子写真用導電ローラの両端にそれぞれ500gf(4.9N)の荷重をかけ、アルミと絶縁樹脂が一体となったドラムを電子写真用導電ローラの回転数が60rpmになるように回転させる。電子写真用導電ローラの軸芯体に100V印加する。各アルミドラムはR(Ω)の抵抗値を有する基準抵抗12を通じて接地されている。基準抵抗の両端の電位差を、電圧計13を用いて毎秒200回の速度でサンプリングする。電子写真用導電ローラを5回転させたところで測定をやめ、5周分のデータより電子写真用導電ローラの抵抗値を求める。詳しくは、求めた電圧の値をX(V)とする。全1000個(毎秒200個×5秒間のデータ)の求められたX(V)とR(Ω)より以下の式に従って、電流値I(A)を求める。
【0040】
【数3】

【0041】
ここから、電子写真用導電ローラの抵抗値Z(Ω)は以下のように計算される。
【0042】
【数4】

【0043】
求めたZ(Ω)の最大値、最小値より抵抗ムラは以下のように計算される。
【0044】
【数5】

【0045】
なお、周方向の抵抗ムラは温度25℃、相対湿度50%の環境下に電子写真導電ローラを24時間放置し、温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定する。
【0046】
〔軸芯体〕
電子写真用導電ローラの軸芯体は、導電性部材の電極および支持する部材として機能するものであれば本発明に適用できる。その材質として、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金、クロムやニッケルで鍍金処理を施した鉄、導電性合成樹脂の如き導電性の材質が挙げられる。
【0047】
なお、軸芯体とその周面に形成される樹脂層を接着するために、プライマーを軸芯体に塗布することができる。通常使用されているプライマーとして、例えばシランカップリング系プライマーが挙げられる。
【0048】
〔樹脂層材料〕
樹脂層材料に用いる付加反応型液状シリコーンゴムとしては化学式1および2に示されるものを用いることができる。
【0049】
【化1】

【0050】
ここで、X=50〜800の整数、Y=5〜50の整数、Z=100〜1500の整数である。
【0051】
また、式中のRは炭素数が1〜7の炭化水素基であり、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルのようなアルキル基、シクロヘキシルのようなシクロアルキル基、フェニルのようなアリール基のような炭化水素基が挙げられる。また式中の異なる位置に存在するRは互いに同一の基でも異なる基でも構わない。
【0052】
樹脂層材料には、必要に応じて、無機充填フィラーを添加することができる。無機充填フィラーの例は、乾式シリカ、湿式シリカ、炭酸カルシウム、タルク(含水けい酸マグネシウム)、酸化クロム、ベンガラ(酸化鉄)、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、二硫化モリブデン、マイカ、メタけい酸カルシウム、石英粉、けいそう土、けい酸ジルコニウム、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ、グラファイトを含む。
【0053】
樹脂層材料に、硬化反応を促進するための触媒を添加することができる。触媒は、例えば、その分子内の金属原子がビニル基等に配位し、Si−H基に作用することにより、反応を活性化させ、付加型シリコーンゴムの付加反応を促進させる。よって、触媒量が多いほど、反応速度が速くなる。触媒として例えば、白金単体、アルミナなどの単体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸(アルコールなどの錯体も含む)、白金の各種錯体、鉄、アルミニウム、チタンなどの金属の塩化物などを使用することができる。これらの中でも、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフイン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましい。これらの触媒は単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。なお、白金触媒を使用する場合、付加反応型液状シリコーンゴムの質量に対して、白金原子換算で0.1〜100ppmが好ましく、1〜50ppmがより好ましい。
【0054】
樹脂層材料に、付加反応型液状シリコーンゴムの硬化速度を調整するために硬化遅延剤を適宜添加することができる。硬化遅延剤がもつ非共有電子対が触媒に配位し、触媒がシリコーンゴムに配位するのを防止することにより反応を抑える。よって、硬化遅延剤が多いほど、硬化速度が遅くなる。3−メチル−1−ブチン−3−オール、3、5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノールのようなアルキンアルコール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3、5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどのエンイン化合物、1、3、5、7−テトラメチル−1、3、5、7−テトラビニルシクロテトラシロキサンなどのビニル基含有オルガノシロキサンオリゴマー、ベンゾトリアゾール、テトラメチルエチレンジアミンなどの窒素含有化合物を使用することができる。なお、硬化遅延剤の含有量は付加反応型液状シリコーンゴム100質量部に対して、0.001〜5質量部が好ましく、より好ましい範囲は0.01〜0.3質量部である。
【0055】
〔樹脂層の厚さ〕
本発明の電子写真用導電ローラの樹脂層の厚さは2.5mm以上が好ましく、より好ましい樹脂層の厚さは、3.0mm以上である。厚さが2.5mmより薄くなると、均一なニップを確保することが困難になる。
【0056】
〔表面層〕
本発明の電子写真用導電ローラの表面には、樹脂層からの低分子成分の染み出し防止の目的で表面層を設けることができる。表面層として用いる樹脂の例としては、以下のものが挙げられる。水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イソシアネート基,エポキシ基,不飽和基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基の如き反応基を持つ、フッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエーテル樹脂,アミノ樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂等及びこれらの混合物。
【0057】
上記酸無水物基の具体例としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、ポリアジピン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。上記不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。アルコキシメチル基の具体例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基等が挙げられる。
【0058】
表面層には前記樹脂にカーボンブラックを添加したものを用いることができる。カーボンブラックの配合量は前記樹脂成分を100質量部としたときに15〜30質量部となるよう設計することが好ましい。
【0059】
前記カーボンブラックとしては、以下のものが挙げられる。例えば、ケッチェンブラックの様な高い導電性をもつカーボンブラックや、中程度の導電性をもつゴム用カーボンブラック或いは塗料用のカーボンブラックが挙げられる。分散性と導電性の制御の観点から塗料用カーボンブラックが好ましい。
【0060】
前記表面層は前記樹脂とカーボンブラックと溶剤を混合、分散した塗工液を樹脂層に塗工することによって得ることができる。
【0061】
塗工液に用いる溶剤としては、表面層として用いる樹脂が溶解するという条件内で適宜使用することができる。具体的には以下のものが挙げられる。メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンに代表されるケトン類。ヘキサン、トルエン等に代表される炭化水素類。メタノール、イソプロパノールに代表されるアルコール類。水。特に好ましい溶剤は樹脂の溶解性、沸点からメチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンである。
【0062】
表面層の厚みは、5μm〜100μmが好ましく、特に10μm〜90μmが好ましい。厚みが5μm以上であると、弾性層中の低分子量成分が染み出してきて感光体を汚染することを抑制し、表面層が剥れることを抑制することが容易である。また、100μm以下であると、導電ローラの表面硬度が高くなって感光ドラム表面を削ることを抑制することが容易である。
【実施例】
【0063】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0064】
〔実施例1〕
軸芯体として、SUS304製の直径10mmの丸棒にシランカップリング系プライマー(DY35−051(商品名)、東レ・ダウコーニング社製))を塗布後、温度140℃で、60分間焼付けしたものを用いた。注入駒として、内径2.2mmの穴を4つ備えた駒(注入穴の合計面積:15.2mm2)を用いた。出口駒として、内径2.2mmの穴を4つ備えた駒(出口穴の合計面積:15.2mm2)を用いた。金型はこれら注入駒および出口駒と、内直径16mm、長さ370mmの円筒状のパイプとで構成される。
【0065】
注入駒、出口駒、円筒状パイプおよび前記軸心体を図3のように設置し、温度110℃で、10分間予熱した。次に、熱盤の各点の温度、T1、T2、T3が120℃、119℃、110℃となるよう温調し、金型を熱盤に配置後、下記樹脂層材料45mlを3.0秒かけて(注入速度15ml/sec)注入穴から金型内に注入した。金型に注入する際の樹脂層材料の温度は25℃であった。
【0066】
(樹脂層材料)
次の材料を混合して樹脂層材料を得た。
・重量平均分子量120000の化学式3で示される化合物:50質量部。
【0067】
【化2】

【0068】
・重量平均分子量120000の化学式4で示される化合物:50質量部。
【0069】
【化3】

【0070】
・シリカ(レオロシール(商品名)、トクヤマ社製):30質量部。
・カーボンブラック(ケッチェンブラック ECP−600JD(商品名)、ライオン社製):10質量部。
・触媒(白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体 白金含有量2重量%):0.273質量部。
・硬化遅延剤(3−メチル−1−ブチン−3−オール):0.04質量部。
【0071】
樹脂層材料を金型内に注入した後、5分間加熱することにより、樹脂層材料を硬化した。金型を室温まで冷却した後に軸芯体と一体となった樹脂層を脱型した。電子写真用導電ローラの表面温度が200℃となるようオーブン内の温度を設定し、表面温度を200℃、6時間保持し、二次加熱した。これにより樹脂層の長さが350mm、外直径16.0mm、芯金径(軸芯体直径)10.0mmの電子写真用導電ローラを得た。
【0072】
得られた電子写真用導電ローラの周方向抵抗ムラを前記方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0073】
また、樹脂層材料の粘度は以下の方法で測定した。樹脂層材料をよく分散させたものを、25℃で5時間放置後、BH型回転粘度計のロータNo.7を用いて10rpm条件下で測定したところ、250Pa・sであった。また、樹脂層材料の硬化速度を、キュラストメーターV型(JSRトレーティング社製)を用いて測定したところ、T10は100秒であった。得たローラの外観を確認し、欠損が無い場合は○、欠損がある場合は×と表し、結果を表1に示した。
【0074】
〔実施例2〕
樹脂層材料のカーボンブラックを5質量部、シリカを9質量部、触媒を0.191質量部とし、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0075】
〔実施例3〕
樹脂層材料のカーボンブラックを20質量部、シリカを50質量部、触媒を0.368質量部とし、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0076】
〔実施例4〕
樹脂層材料のカーボンブラックを8質量部、シリカを2質量部、触媒を0.178質量部とし、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0077】
〔実施例5〕
樹脂層材料のシリカを70質量部、触媒を0.400質量部とし、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0078】
〔実施例6〕
樹脂層材料の触媒を0.308質量部とし、たこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0079】
〔実施例7〕
樹脂層材料の触媒を0.246質量部とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0080】
〔実施例8〕
樹脂層材料の注入時間9.0秒(注入速度5ml/sec)とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0081】
〔実施例9〕
樹脂層材料の注入時間1.5秒(注入速度30ml/sec)とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0082】
〔実施例10〕
樹脂層材料の注入量を52ml、注入時間を3.5秒(注入速度15ml/sec)、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを400mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0083】
〔実施例11〕
樹脂層材料の注入量を39ml、注入時間を2.6秒(注入速度15ml/sec)、T1を115℃、T2を113℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを300mmとした。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0084】
〔実施例12〕
樹脂層材料の注入量を40ml、注入時間を2.7秒(注入速度15ml/sec)、樹脂層の厚さを2.5mmとした。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0085】
〔実施例13〕
T1を115℃、T2を114℃、T3を105℃とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0086】
〔実施例14〕
T1を138℃、T2を137℃、T3を130℃とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0087】
〔実施例15〕
T1を122℃、T2を121℃とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0088】
〔実施例16〕
T1を115℃、T2を114℃とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0089】
〔実施例17〕
T1を115℃、T2を115℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0090】
〔実施例18〕
T1を115℃、T2を113℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0091】
〔実施例19〕
樹脂層材料の注入量を39ml、注入時間を2.6秒(注入速度15ml/sec)、T1を108℃、T2を106℃、T3を105℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを300mmとした。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例20〕
樹脂層材料の注入量を39ml、注入時間を2.6秒(注入速度15ml/sec)、T1を135℃、T2を135℃、T3を130℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを300mmとした。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0093】
〔実施例21〕
樹脂層材料の注入量を52ml、注入時間を3.5秒(注入速度15ml/sec)、T1を111℃、T2を109℃、T3を105℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを400mmとした。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例22〕
樹脂層材料の注入量を52ml、注入時間を3.5秒(注入速度15ml/sec)、T1を150℃、T2を150℃、T3を130℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを400mmとした。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0095】
〔実施例23〕
材料の注入量を66ml、注入時間を4.4秒(注入速度15ml/sec)、樹脂層の厚さを4.0mmとした。それ以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0096】
〔実施例24〕
注入穴の内径を1.6mm、注入穴の個数を5個(注入穴の面積:10.0mm2)とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0097】
〔実施例25〕
注入穴を一辺が2.5mmの正方形形状(注入穴の面積:25.0mm2)とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0098】
〔実施例26〕
出口穴の内径を1.6mm、注入穴の個数を5個(注入穴の面積:10.0mm2)とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
【0099】
〔実施例27〕
出口穴を一辺が2.5mmの正方形形状(注入穴の面積:25.0mm2)とした以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。行った。結果を表1に示す。
【0100】
〔実施例28〕
実施例1において、以下の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:9質量部、
・シリカ:1質量部。
・触媒:0.209質量部。
・樹脂層材料の注入量:39ml。
・注入時間:7.8秒(注入速度5ml/sec)。
・T1=108℃、T2=106℃、T3=105℃。
・樹脂層の軸芯体長手方向の長さ:300mm。
【0101】
〔実施例29〕
実施例1において、以下の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:25質量部。
・シリカ:55質量部。
・触媒:0.368質量部。
・樹脂層形成用材料の注入量:52ml。
・注入時間:1.8秒(注入速度29ml/sec)。
・T1=150℃、T2=150℃、T3=130℃。
・樹脂層の軸芯体長手方向の長さ:400mm。
【0102】
〔実施例30〕
実施例1において、以下の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:1質量部。
・シリカ:9質量部。
・触媒:0.209質量部。
・注入時間:9.0秒(注入速度5ml/sec)。
【0103】
〔実施例31〕
実施例1において、以下の条件を変更し、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:1質量部。
・シリカ:9質量部。
・触媒:0.154質量部。
・注入時間:9.0秒(注入速度5ml/sec)。
【0104】
〔実施例32〕
実施例1において、以下の条件を変更し、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:1質量部。
・シリカ:9質量部。
・触媒:0.209質量部。
・注入時間:1.5秒(注入速度30ml/sec)。
【0105】
〔実施例33〕
実施例1において、以下の条件を変更し、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:1質量部。
・シリカ:9質量部。
・触媒:0.154質量部。
・注入時間:1.5秒(注入速度30ml/sec)。
【0106】
〔実施例34〕
実施例1において、以下の条件を変更し、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:25質量部。
・シリカ:55質量部。
・触媒:0.440質量部。
・注入時間:9.0秒(注入速度5ml/sec)。
【0107】
〔実施例35〕
実施例1において、以下の条件を変更し、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:25質量部。
・シリカ:55質量部。
・触媒:0.368質量部。
・注入時間:9.0秒(注入速度5ml/sec)。
【0108】
〔実施例36〕
実施例1において、以下の条件を変更し、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:25質量部。
・シリカ:55質量部。
・触媒:0.440質量部。
・注入時間:1.5秒(注入速度30ml/sec)。
【0109】
〔実施例37〕
実施例1において、以下の条件を変更し、樹脂層材料の粘度を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。その結果を表1に示す。
・樹脂層材料のカーボンブラック:25質量部。
・シリカ:55質量部。
・触媒:0.368質量部。
・注入時間:1.5秒(注入速度30ml/sec)。
【0110】
〔比較例1〕
樹脂層材料のカーボンブラックを5質量部、シリカを8質量部、触媒を0.188質量部とし、樹脂層材料の粘度を表2に示した値に調整した以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0111】
〔比較例2〕
樹脂層材料のカーボンブラックを20質量部、シリカを53質量部、触媒を0.378質量部とし、樹脂層材料の粘度を表2に示した値に調整した以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0112】
〔比較例3〕
樹脂層材料のカーボンブラックを7質量部、シリカを2質量部、触媒を0.175質量部とし、樹脂層材料の粘度を表2に示した値に調整した以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0113】
〔比較例4〕
樹脂層材料のカーボンブラックを10質量部、シリカを73質量部、触媒を0.409質量部とし、樹脂層材料の粘度を表2に示した値に調整したこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0114】
〔比較例5〕
樹脂層材料の触媒を0.310質量部としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0115】
〔比較例6〕
樹脂層材料の触媒を0.243質量部としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0116】
〔比較例7〕
樹脂層材料の注入時間を11.3秒(注入速度4ml/sec)としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0117】
〔比較例8〕
樹脂層材料の注入時間を1.4秒(注入速度31ml/sec)としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0118】
〔比較例9〕
樹脂層材料の注入量を53ml、注入時間を3.5秒(注入速度15ml/sec)、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを410mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0119】
〔比較例10〕
樹脂層材料の注入量を38ml、注入時間を2.5秒(注入速度15ml/sec)、T1を113℃、T2を112℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを290mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0120】
〔比較例11〕
樹脂層材料の注入量を38ml、注入時間を2.5秒(注入速度15ml/sec)、樹脂層の厚さを2.3mmとしたこと以外は実施例2と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0121】
〔比較例12〕
T1を115℃、T2を114℃、T3を103℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0122】
〔比較例13〕
T1を140℃、T2を138℃、T3を132℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0123】
〔比較例14〕
T1を125℃、T2を123℃、T3を110℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0124】
〔比較例15〕
T1を113℃、T2を111℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0125】
〔比較例16〕
T2を121℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0126】
〔比較例17〕
T2を117℃としたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0127】
〔比較例18〕
樹脂層材料の注入量を39ml、注入時間を2.6秒(注入速度15ml/sec)、T1を106℃、T2を103℃、T3を104℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを300mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0128】
〔比較例19〕
樹脂層材料の注入量を39ml、注入時間を2.6秒(注入速度15ml/sec)、T1を138℃、T2を139℃、T3を132℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを300mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0129】
〔比較例20〕
樹脂層材料の注入量を52ml、注入時間を3.5秒(注入速度15ml/sec)、T1を110℃、T2を107℃、T3を105℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを400mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0130】
〔比較例21〕
樹脂層材料の注入量を52ml、注入時間を3.5秒(注入速度15ml/sec)、T1を154℃、T2を155℃、T3を132℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを400mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0131】
〔比較例22〕
樹脂層材料の注入量を39ml、注入時間を2.6秒(注入速度15ml/sec)、T1を108℃、T2を105℃、T3を105℃、樹脂層の軸芯体長手方向の長さを300mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用導電ローラを作製、評価した。結果を表2に示す。
【0132】
なお、樹脂層の軸芯体長手方向の長さや厚さが実施例1と異なる例においては、実施例1と異なる長さの円筒状パイプや、径の異なる円筒状パイプおよび駒を適宜用いた。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

【0139】
実施例2、3及び比較例1、2より、周方向の抵抗ムラが1.5桁以下となる粘度の範囲が50Pa・s以上500Pa・s以下となることが明らかとなった。実施例4、5、29から37及び比較例3、4より、周方向の抵抗ムラが1.5桁以下となるフィラー充填量の範囲が付加反応型液状シリコーンゴム100質量部に対して10〜80質量部となることが明らかとなった。実施例6、7、29から37及び比較例5、6より、周方向の抵抗ムラが1.5桁以下となるT10の範囲が50≦T10≦140となることが明らかとなった。実施例8、9、29から37及び比較例7、8より、周方向の抵抗ムラが1.5桁以下となる注入速度の範囲が平均5.0〜30.0ml/secとなることが明らかとなった。実施例10から実施例23、実施例28、29及び比較例9から22より、d≧2.5かつ300≦L≦400のとき、下式1〜3を満たすと周方向の抵抗ムラが1.5桁以下となることが明らかとなった。
【0140】
【数6】

【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】画像形成装置(電子写真装置)の概略図である。
【図2】本発明の電子写真用導電ローラの一形態を示す模式図であり、(a)は断面面、(b)は側面図である。
【図3】本発明に使用することのできる金型の一形態を示す模式図であり、(a)は出口駒部の側断面図、(b)は正面断面図、(c)は注入駒部の側断面図である。
【図4】加熱温度(T1、T2、T3)を説明するための金型および熱盤の模式図であり、(a)は上面図、(b)は正面断面図である。
【図5】抵抗ムラを測定するための抵抗測定装置の概略図である。
【符号の説明】
【0142】
1 潜像担持体(感光ドラム)
2 帯電手段
3 露光系
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 円筒状パイプ
8a 注入駒
8b 出口駒
9a 材料が通る貫通穴(注入穴)
9b 材料が通る貫通穴(出口穴)
10 熱盤
11 アルミ製ドラム
12 基準抵抗
13 電圧計
14 電子写真用導電ローラ
14a 樹脂層
14b 軸芯体
E1、E2、E3 バイアス印加用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のパイプと該パイプの両端にそれぞれ配設された軸芯体を保持するための二つの駒とを有する金型を用い、前記パイプに沿って軸芯体を金型内に設置し、前記二つの駒の一方に設けられた注入穴より付加反応型液状シリコーンゴムを含む樹脂層材料を金型内に注入し、金型を加熱することにより該樹脂層材料を硬化させて軸芯体の周りに樹脂層を形成する工程を有する電子写真用導電ローラの製造方法において、
該樹脂層材料が、以下の条件(i)から(iii)を満たし、
(i)金型投入時の温度における粘度が50Pa・s以上500Pa・s以下、
(ii)フィラーの充填量が付加反応型液状シリコーンゴム100質量部に対して10質量部以上80質量部以下、
(iii)100℃における10%硬化時間をT10(秒)としたとき50≦T10≦140、
該樹脂層材料を金型に注入する平均速度が5.0ml/sec以上30.0ml/sec以下であり、
該樹脂層の軸芯体長手方向の長さをL(mm)、該樹脂層の厚さをd(mm)、注入側の加熱温度をT1(℃)、中央部の加熱温度をT2(℃)、出口側の加熱温度をT3(℃)としたとき、d≧2.5かつ300≦L≦400であって、下式(1)から(3)を満たすことを特徴とする電子写真用導電ローラの製造方法。
【数1】

【請求項2】
前記二つの駒の他方に、樹脂層材料を逃がすための出口穴が設けられ、
該注入穴の面積の合計が10.0mm2以上25.0mm2以下であり、
該出口穴の面積の合計が10.0mm2以上25.0mm2以下である
請求項1記載の電子写真用導電ローラの製造方法。
【請求項3】
軸芯体を設置した該金型を予熱したうえで成型機に配置した後、前記樹脂層材料を該金型内に材料を注入し、該金型を3分以上10分以下加熱して樹脂層材料を硬化させる請求項1または2に記載の電子写真用導電ローラの製造方法。
【請求項4】
軸芯体と該軸芯体の周りに配された樹脂層を有する電子写真用導電ローラであって、
請求項1から3のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする電子写真用導電ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137106(P2009−137106A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314648(P2007−314648)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】