説明

電子写真用導電性ローラ及びその製造方法

【課題】継続使用による劣化によっても、画像形成体への張り付きや帯電不良、出力画像におけるカブリ・現像スジが発生しないような表面特性を有する電子写真用導電性ローラを提供することにある。
【解決手段】導電性芯金の外周に少なくとも導電性弾性層が設けられた電子写真用導電性ローラにおいて、JIS B0601に基づいて表面粗さ計で測定された表面形状データを周波数変換して得られた空間周波数のスペクトルが、下記の2つの条件を満たす事を特徴とする電子写真用導電性ローラにより達成される。
(1)空間周波数5サイクル/mm以下の成分をAとしたとき、成分Aが全空間周波数成分Bの35%以上を占める。
(2)成分Aのうちでその平均値±30%以内の空間周波数範囲に含まれる成分をBとしたとき、成分Bが成分Aの50%以上を占める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ・複写機等の電子写真装置において使用する電子写真用導電性ローラ、特に電子写真装置の現像ローラとして用いる電子写真用導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ・複写機等の電子写真装置における潜像の現像方式の1つとして一成分現像方式が知られており、その中には芯金の外周に導電性弾性体が設けられたローラ(導電性ローラ)を使用した現像方法が存在する(特許文献1や特許文献2)。
【0003】
導電性ローラの使用形態の1つとして、画像形成工程において画像形成体表面を帯電させる接触式の帯電ローラが挙げられる。また、他の使用形態として、表面にトナーが担持された状態で画像形成体表面に接触又は近接させた状態で配置され、トナーを画像形成体上に搬送する現像ローラが挙げられる。これらの導電性ローラには、画像形成体に均一の電荷を供給する、或いはトナーをムラなく画像形成体上に供給する必要があり、このため画像形成体との間には常に安定した所定の放電領域や現像領域をもって接触又は近接していることが求められる。さらに現像ローラの場合には、その表面に層厚規制部材を均一に当接させる必要があり、これによってトナーが薄層化して均一に現像ローラ表面に担持される。
【0004】
したがって、導電性ローラには安定した物理特性が不可欠であり、それが欠如すると様々な画像不良を引き起こす。それを避ける為に導電性ローラが満たすべき物理特性は複数考えられるが、表面特性は中でも重要な管理特性の1つである。これが適切でない場合、帯電ローラとして使用する場合は、帯電ローラの画像形成体への張り付きや、紙粉が帯電ローラ表面へ付着することによる画像形成体の帯電不良をもたらす。現像ローラとして使用する場合は、トナーの搬送性に基づく濃度ムラや、現像ローラ表面およびトナーの劣化によるカブリ・現像スジといった画像不良を引き起こす。
【0005】
このような不良を防ぐ為に、従来、十点表面粗さRz、算術平均粗さRa、凹凸の平均差Sm等各種表面粗度の値を所定範囲に入るように形成された現像ローラが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開昭52−125340号公報
【特許文献2】特許2879962号公報
【特許文献3】特開2003−015401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年における電子写真装置の著しい進歩は装置の高速化、画質の高品位化を生んでおり、導電性ローラに要求される特性はさらに高度なものとなってきている。導電性ローラの表面粗度として上記のようなRz、Ra、Smの値を特許文献3に記載された範囲に入るように形成するだけでは不十分になりつつある。すなわち、導電性ローラ表面の劣化やトナーの劣化による特性の変化まで考慮すれば、例え初期は良好であったとしても多数の画像を出力しているうちに画像欠陥が発生するようになる場合も存在するが、特許文献3に記載された範囲は初期の特性を満足するように設定されたものであるため、劣化による影響には対応できていない。
【0007】
劣化を考慮してRz、Ra、Smの値の範囲を再度設定すると、各値の範囲は非常に狭くなってしまい、必要以上に厳しい条件になってしまうと考えられる。すなわち、これらの値は、劣化による影響をも加味した導電性ローラの表面特性の指標としては、適切でなくなってきている。
【0008】
近年の導電性ローラはこの困難な課題を解決したものが求められており、劣化のメカニズムを考慮に入れた表面特性が製品に盛り込まれる必要があり、そのためにさらなる工夫が不可欠であるものと思われた。
【0009】
以上の状況を鑑みた本発明の目的は、継続使用による劣化によっても、画像形成体への張り付きや帯電不良、出力画像におけるカブリ・現像スジが発生しないような表面特性を有する電子写真用導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
導電性芯金の外周に少なくとも導電性弾性層が設けられた電子写真用導電性ローラにおいて、
JIS B0601に基づいて表面粗さ計で測定された表面形状データを周波数変換して得られた空間周波数のスペクトルが、下記の2つの条件を満たす事を特徴とする電子写真用導電性ローラにより達成される。
(1)空間周波数5サイクル/mm以下の成分をAとしたとき、成分Aが全空間周波数成分の35%以上を占める。
(2)成分Aのうちでその平均値±30%以内の空間周波数範囲に含まれる成分をBとしたとき、成分Bが成分Aの50%以上を占める。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、継続使用による劣化によっても、画像形成体への張り付きや帯電不良、出力画像におけるカブリ・現像スジが発生しないような表面特性を有する電子写真用導電性ローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは上記の課題を解決すべく、検討を進めてきた。検討の結果、電子写真用導電性ローラにおいて単に表面粗度の値を規定するだけでは、最適な範囲の幅が狭くなり過ぎ達成困難であると共に、画像不良との明確な関連性も明らかにされておらず不十分であることが判明した。一般にRz、Ra、Sm等の表面粗度は微小な凹凸の平均値であって、初期におけるトナーの搬送性等について言及する際には有効であるものと思われる。しかしその一方で、カブリ、現像スジ及び紙粉の付着等が問題となるのは部材の使用開始直後の初期ではなく、相当に劣化が進んだ状態にある時であることが多い。このような状態においてはトナー及びローラ表面のいずれか又は両方が劣化し、トナーの帯電が適切に行われなくなっているものと考えられるので、表面特性として許容される表面粗度のレンジは一段と狭くなってしまう。したがって、もっと効率良く表面特性を管理するためには、劣化のメカニズムと直接結びついた管理特性が必要となる。
【0013】
さらに検討を進めた結果、本発明者らはRz、Ra、Sm等の粗さの平均ではなく粗さの分布に着目し、劣化が進みにくい表面特性を持つことが肝要であるという結論に達した。
【0014】
すなわち本発明は、導電性芯金の外周に少なくとも導電性弾性層が設けられた電子写真用導電性ローラにおいて、
JIS B0601に基づいて表面粗さ計で測定された表面形状データを周波数変換して得られた空間周波数のスペクトルが、下記の2つの条件を満たす事を特徴とする電子写真用導電性ローラである。
(1)空間周波数5サイクル/mm以下の成分をAとしたとき、成分Aが全空間周波数成分の35%以上を占める。
(2)成分Aのうちでその平均値±30%以内の空間周波数範囲に含まれる成分をBとしたとき、成分Bが成分Aの50%以上を占める。
【0015】
上記のような表面特性は、ローラ表面に局所的な突起が少なく全体になだらかな凹凸で覆われており、さらにそれらの凹凸の大きさは均一な分布をしていることを示している。表面がこのような状態であれば、画像形成体に接する面においてローラ表面に加わる力は均一に分散され、圧力が小さくなる。圧力が小さくなるのは、ローラ表面がなだらかな起伏に富むために画像形成体に接する面積が大きくなるからである(図1(a))。このためローラ表面に掛かる力は分散され、しかも起伏がほぼ均一に揃っているためにローラ表面における特定の場所に圧力が集中することもなくなり、その特定部位を中心として画像形成体への貼り付きや表面の劣化が促進されるということもない。これに対して、ローラ表面の起伏が大きい場所では、画像形成体に接する面積が小さく、特定の場所に圧力が集中することになる(図1(b))。帯電ローラ表面を覆う可能性のある紙粉や現像ローラ表面を覆っているトナーは、このローラと画像形成体間に働く圧力の影響を受けるので、劣化の様相もローラ表面に準じると考えられる。紙粉は帯電ローラ表面に貼り付くことで帯電ローラ表面の劣化をもたらし、トナーは表面の外添剤が剥ぎ取られやがては現像ローラ表面に付着する。しかしローラ表面が上述の如く均一且つなだらかであれば、やはり劣化は最小限に抑えられる。
【0016】
上記のように、電子写真用導電性ローラの表面形状について粗さ測定機の形状データを適正に処理する事により、敢えて画像評価をしなくても、帯電不良やカブリ・現像スジといった画像欠陥が長期の使用で発生するか否かを高い確率で予測することが出来ることから、製造時の管理指標として好適である。
【0017】
上記の表面形状データは、JIS B0601に基づき、表面粗さ計で測定する。表面粗さ計は、例えば、小坂研究所製の表面粗さ計SE3500(商品名)を用いることができる。測定条件としては、プローブの移動速度を0.1mm/sec、測定長を8.0mmに設定し、25600データを取得する方法で行うことが好ましい。測定時、電子写真用導電性ローラは固定し、測定長は可能な限り長くすることが好ましい。また測定は、1つの電子写真用導電性ローラについて複数箇所行うことが好ましい。
【0018】
次に、時系列データとして得られた表面形状データをフーリエ変換によって周波数データに変換し、それをさらに表面形状のスキャン速度を考慮して空間周波数のスペクトルに変換する。表面の微妙な凹凸は電子写真用導電性ローラの場所によって若干異なっていると考えられるので、複数箇所(好ましくは9〜18箇所)の測定データについての各々をフーリエ変換処理して空間スペクトルに変換したのち、平均をとって、電子写真用導電性ローラを代表する一つの空間周波数スペクトルを得る方法を採ることが好ましい。得られる空間周波数スペクトルの一例を図2に示す。図2の空間周波数スペクトルの斜線部が成分Aである。また、成分Aのうちでその平均値±30%の範囲が成分Bである。
【0019】
このような処理により、どれくらいのピッチを持った凹凸が支配的であるかが判るようになり、一般的な表面粗さのデータをより画像品質と関係の深い定量的な数値特性にすることができる。
【0020】
本発明では、上記の空間周波数スペクトルにおいて、空間周波数5サイクル/mm以下(波長にして200μm以上)の成分Aの、全空間周波数成分に対する比率が35%以上となる必要がある。好ましくは、50%以上である。さらに、成分Aのうちでその平均値±30%以内の空間周波数範囲に含まれる成分Bが成分Aの50%以上を占めることが必要である。好ましくは60%以上である。この条件を満たせばなだらかな凹凸が充分に支配的であり、かつ均質であって特定箇所に負荷が集中しないようになっているため、小さな局所的な凹凸が存在しても概ね劣化等の悪影響を及ぼさなくなると考えられる。
【0021】
本発明の電子写真用導電性ローラは、導電性芯金の外周に少なくとも導電性弾性層が設けられた構造のものである。更に機能上の必要性から、導電性弾性層の外周上に一層以上の被覆層が設けられた構造のものでも良い。被覆層には、ドラム汚染防止、帯電特性の改善あるいは紙粉・トナー付着防止の機能等が期待されているが、実際に従来の電子写真用導電性ローラでは、特に紙粉・トナー付着防止の機能に関して万全のものとはなっていない。本発明の電子写真用導電性ローラは、特に、電子写真装置の現像ローラとして好適に使用できるものである。
【0022】
上記電子写真用導電性ローラの導電性芯金は、例えば炭素鋼合金表面に5μm厚さの工業ニッケルメッキを施した円柱形状のものを用いることができる。他にも、例えば、鉄、アルミニウム、チタン、銅、ニッケル等の金属、これらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮、青銅等の合金、等を使用することもできる。又、円柱状のもの以外に、中心部分を空洞とした円筒形状のもの用いることもできる。用いる導電性芯金の外径は、用途によって適宜選択すれば良く、例えば、5〜15mmとすることができる。
【0023】
本発明における電子写真用導電性ローラは、上記導電性芯金の外周に導電性弾性層が形成されている。導電性弾性層を形成する材質としては、画像形成体との接触面を均一に保つために適度な低硬度及び低圧縮永久歪を得ることができる材質を使用するのが望ましく、この目的を達成できるものであれば種類を問われない。ゴムに導電性フィラーを添加したものが好適に用いられる。イオン導電性ゴムを用いることもできる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、(メタ)アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリレートゴム、エピクロルヒドリンゴム等である。これらは1種で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。用いられるゴムの分子量には特に制限が無く、低分子量(オリゴマー)から高分子量のゴムまで、適宜選択して使用できる。このようなゴムは、市販品を入手して使用することができる。シリコーンゴムは上記特性を満足するものの一つであり、好適に使用できる。
【0024】
導電性フィラーとしては、例えばアルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維を用いることができ、またカーボンブラックや、酸化チタン、酸化スズ・酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物の粉体を用いても良い。さらには表面を、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウム等を、電解処理、スプレー塗工、混合振とう等により付着させた粉体も使用可能であり、またアセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック等のカーボン粉も使用可能な候補として挙げられる。
【0025】
導電性フィラーとして特に好ましいのはカーボンブラックである。少量の添加で電気抵抗率を低下させることができ、導電性弾性層の硬度を大きくすることなく導電性を付与することができる。カーボンブラックの銘柄としては、例えばケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC600JD(ともに「ケッチェンブラックインターナショナル」製商品名)等を挙げることができる。
【0026】
導電性弾性層における導電性フィラーの含有量は、目的とする特性を発現させるように適宜設定すれば良い。例えば2〜50質量%が好ましい。更に好ましくは5〜30質量%である。少なすぎると、目的とする導電性を実現しにくいだけでなく、均一分散させにくく導電性の制御が難しくなることがある。また、多すぎると導電性弾性層が硬くなってしまうことがある。
【0027】
上記ゴムには、低硬度及び低圧縮永久歪の特徴を阻害しない範囲内であれば、通常使用される各種の配合剤、例えば、補強充填剤、増量剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、耐熱剤、加工助剤、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、滑剤等を添加することができる。これらの配合物は、必要に応じて弾性層材料を製造する過程において添加することができる。
【0028】
補強充填剤及び増量剤としては、例えば、導電性のカーボンブラック、導電性のフィラー、導電性可塑剤、KSCN、LiClO4、NaClO4、4級アンモニウム塩等のイオン伝導物質、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、カーボンブラック、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤を挙げることができる。これらの充填剤の表面は有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサン等で処理して疎水化してもよい。
【0029】
可塑剤としては、例えばポリジメチルシロキサンオイル・ジフェニルシランジオール・トリメチルシラノール・フタル酸誘導体・アジピン酸誘導体等を用いることができる。また軟化剤としては、例えば潤滑油・プロセスオイル・コールタール・ヒマシ油が使用可能である。老化防止剤としては例えばフェニレンジアミン類・フォスフェート類・キノリン類・クレゾール類・フェノール類・ジチオカルバメート金属塩類等が使用できる。耐熱剤としては酸化鉄・酸化セリウム・水酸化カリウム・ナフテン酸鉄・ナフテン酸カリウム等が使用できる。
【0030】
導電性弾性層を形成する方法としては、以上のような材料を混合したゴム組成物を、中心に導電性芯金を配置した成形機中に注入して、その後所定温度に加熱することによって硬化し、硬化終了後脱型する方法で行うことができる。
【0031】
形成する導電性弾性層の厚さは、用途によって適宜選択すれば良く、例えば、1〜10mmとすることができる。
【0032】
以上のようにして形成された導電性弾体層の外周上には、必要に応じて一層以上の被覆層を設けることができる。被覆層を形成するベース樹脂としては、例えば、ポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられる。上記被覆層をウレタン樹脂から形成すると、ポリオール成分及びイソシアナート成分の構造と配合比を種々変化させることで物性を広範囲に変化させることができるため好ましい。
【0033】
被覆層の形成材料としてウレタン樹脂を用いる場合、その原料であるイソシアナート成分には、通常二官能性または三官能性イソシアナートあるいは変性イソシアナートが用いられる。これらのうちで芳香族系では1,5−ナフタレンジイソシアナート、2,4−/2,6−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、m−/p−キシリレンジイソシアナート等が挙げられ、脂環族系ではイソホロンジイソシアナート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアナート等が挙げられ、脂肪族系では1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート等が挙げられる。また、ポリオール成分としては2〜3官能性で数平均分子量が数百〜数千のポリエーテル、ポリエステル、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが用いられる。これらのイソシアナート成分及びポリオール成分の官能基数及び数平均分子量を適宜調整することにより、被覆層の弾性率等を望みの物性にすることができる。
【0034】
被覆層中には平均粒径が1〜50μmの微粒子を分散しても良く、これにより導電性ローラ表面に適度の粗さを付与して画像形成体等に張り付き難くし、あるいは現像ローラならばトナーの搬送をし易くして充分な量のトナーを現像領域に供給することができるようにすると共に、画像形成体との接触面におけるトナーへのストレスを軽減するといった目的を達成しやすくする。このような目的に使用する微粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子等のプラスチックピグメントが挙げられるが、特にポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリウレタン微粒子、及びシリコーンゴム微粒子が好ましい。これらの微粒子は前記ベース樹脂の約5〜200質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0035】
これらの被覆層を構成する材料は、適宜選択した溶媒とともに、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル、ビスコミル等のビーズを利用した分散装置またはボールミルを用いた分散装置のような従来公知の分散装置を使用して分散させる。得られた被覆層形成用の塗料は、スプレー塗工法、ディッピング法等により導電性弾性層の表面に塗工される。
【0036】
被覆層の厚みとしては、5〜500μmが好ましく、特に5〜30μmが好ましい。薄すぎると導電性弾性層中の低分子量成分の染み出しにより画像形成体を汚染する恐れがあり、厚すぎると導電性ローラが硬くなり、融着やセット跡の回復性悪化の原因となる場合がある。
【0037】
上記被覆層は1層でも良いが、2層以上であっても良い。ドラムアタック防止、表面へのトナー付着防止等の複数機能を達成させる場合には、2層以上の方が設計し易いこともある。
【0038】
導電性ローラの表面特性を調整する方法としては、被覆層を形成する塗工液に含まれるウレタン粒子の径及び添加量を変えていく手法をとることができる。さらにフィラーとして多量の高抵抗カーボンブラックを投入することもできる。このような塗工液で作られた被覆層がウレタン粒子の径を充分反映するような目的の表面形状となるよう、塗工液の粘度を調整する。さらにディッピングにおいては、導電性弾性層を液に浸漬した後の引き上げ速度の調整によって、所望の厚さ及び表面特性の被覆層が得られる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例・比較例を示して発明の効果をより明らかにするが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0040】
〔実施例・比較例〕
(電子写真用導電性ローラの作製)
外径8mmの円柱形状の導電性芯金(材質:ステンレス製)の周囲に、導電性弾性層及び1層の被覆層を有する外径約16mmの電子写真用導電性ローラを作製した。
【0041】
導電性弾性層は、導電性フィラーを含有するシリコーンゴムで形成した。具体的には、主剤としてジメチルポリシロキサン50質量部と、硬化剤としてジメチルハイドロジェンポリシロキサン50質量部とを混合したゴムを用い、そこにケッチェンブラック(ケッチェンブラックEC;商品名、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)10質量部及びフィラー30質量部を混合したゴム組成物を用いた。成形機に導電性芯金を組込んで100℃で予備加熱を行い、ゴム組成物を注入して115℃/4h硬化した。その後、 25℃まで冷却し、脱型した後、再度140℃/4h二次硬化することで、厚さ4mmの導電性弾性層を形成した。
【0042】
被覆層は次のように形成した。まず、ポリエステルポリオール(ニッポランN5033;商品名、日本ポリウレタン製)47質量部とトルエンジイソシアナート(B−830;商品名、三井武田ケミカル製)53質量部とからなるエステル系ポリウレタン樹脂100質量部をMEKに溶解させ、これにケッチェンブラック(ケッチェンブラックEC;商品名、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)を10質量部加えた。さらにフィラーとして高抵抗カーボンブラック(MA77;商品名、三菱化学製)50質量部を加え、これをビスコミルにて5時間分散させた後、表1及び表2に記載の平均粒径を有するウレタン粒子を、表1及び表2に記載の質量部数加えて、再度2時間〜3時間半分散させた。この分散液中に、導電性弾性層を形成した導電性芯金を浸漬して引き上げることで、厚さ20μmの被覆層を形成して電子写真用導電性ローラを得た。なお、MEKの使用量(分散液の粘度)及び引き上げ速度を適切に調整することで、所定の厚さの被覆層を形成した。
【0043】
電子写真用導電性ローラは、各条件毎に3本ずつ作製した。これは、被覆層に用いたウレタン粒子の平均粒径や質量部数が同じであっても、個体差により表面特性には若干のバラツキができることを考慮している。
【0044】
(表面特性の測定)
各電子写真用導電性ローラの軸方向3箇所(100mm間隔)、周方向3箇所(120℃間隔)の計9箇所における表面形状を、JIS B0601に基づいて測定した。測定は小坂研究所製表面粗さ計SE3500(商品名)を用い、プローブの移動速度は0.1mm/sec、測定長は8.0mmとし、データ数は25600とした。得られたデータをフーリエ変換することで周波数データに変換し、さらに表面形状のスキャン速度を考慮して空間周波数のスペクトルに変換した。その空間周波数スペクトルから、空間周波数5サイクル/mm以下の成分Aの平均値及び全成分中の割合、さらに、成分Aのうちでその平均値±30%以内の空間周波数範囲に含まれる成分Bの成分Aに対する割合を求めた。また、十点表面粗さRz、算術平均粗さRa、凹凸の平均差Smも併せて測定した。以上の測定を各条件毎に3本ずつ作製した電子写真用導電性ローラに対して行い、その平均を取った。結果を表1及び表2に示す。
【0045】
(導電性ローラの耐久性評価)
作製した各電子写真用導電性ローラを、電子写真方式のプリンタのカートリッジに現像ローラとして組込んで、プリンタに装着して耐久性評価を行った。具体的には、黒色トナーを有するカートリッジに組み込んでプリンタにて耐久性評価用画像(文字と線及びベタからなる印字率2%の通紙用画像)を連続して8000枚の出力し、その後に性能評価用のハーフトーン画像を出力し、現像スジの発生が無いか調べた。
評価基準
○:現像スジが見られない。
△:薄い現像スジの発生が見られる。
×:くっきりとした現像スジの発生が見られる。
【0046】
さらに72時間放置した後、白紙を出力してカブリが良好なレベルか否かについても調べた。
○:カブリが見られない。
△:若干のカブリが見られるが、良好なレベルである。
×:カブリが見られ、実用上問題となるレベルである。
【0047】
以上の結果をまとめて表1及び表2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】電子写真用導電性ローラ表面の模式図であり、(a)は本発明の条件を満たす表面特性を有する電子写真用導電性ローラ、(b)は本発明の条件を満たさない表面特性を有する電子写真用導電性ローラ、の表面形状(実線:画像形成体と非接触の状態、破線:画像形成体と接触した状態)を示す。
【図2】周波数変換により得られた空間周波数スペクトルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 画像形成体表面
2 電子写真用導電性ローラ表面(画像形成体と非接触の状態;実線)
3 電子写真用導電性ローラ表面(画像形成体と接触した状態;破線)
4 電子写真用導電性ローラ表面(画像形成体と非接触の状態;実線)
5 電子写真用導電性ローラ表面(画像形成体と接触した状態;破線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯金の外周に少なくとも導電性弾性層が設けられた電子写真用導電性ローラにおいて、
JIS B0601に基づいて表面粗さ計で測定された表面形状データを周波数変換して得られた空間周波数のスペクトルが、下記の2つの条件を満たす事を特徴とする電子写真用導電性ローラ。
(1)空間周波数5サイクル/mm以下の成分をAとしたとき、成分Aが全空間周波数成分の35%以上を占める。
(2)成分Aのうちでその平均値±30%以内の空間周波数範囲に含まれる成分をBとしたとき、成分Bが成分Aの50%以上を占める。
【請求項2】
電子写真装置の現像ローラとして用いる請求項1に記載の電子写真用導電性ローラ。
【請求項3】
導電性芯金の外周に少なくとも導電性弾性層が設けられた電子写真用導電性ローラの製造方法において、
JIS B0601に基づいて表面粗さ計で測定された表面形状データを周波数変換して得られた空間周波数のスペクトルが、下記の2つの条件を満たすことを管理指標として製造することを特徴とする電子写真用導電性ローラの製造方法。
(1)空間周波数5サイクル/mm以下の成分をAとしたとき、成分Aが全空間周波数成分の35%以上を占める。
(2)成分Aのうちでその平均値±30%以内の空間周波数範囲に含まれる成分をBとしたとき、成分Bが成分Aの50%以上を占める。
【請求項4】
前記電子写真用導電性ローラが電子写真装置の現像ローラとして用いるものである請求項3に記載の電子写真用導電性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−71996(P2006−71996A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255606(P2004−255606)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】