説明

電子写真用導電性弾性ローラの製造方法

【課題】液状シリコーンゴムを射出成形してなる周方向の電気抵抗のムラを低減できる導電性弾性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒金型内に軸芯体2を配置し、該円筒金型を加熱して、該軸芯体2に対し同心状に導電性弾性層3となる少なくとも導電性充填剤を含む液状シリコーンゴムを射出し、該円筒金型内部で該液状シリコーンゴムを一次硬化した後、該円筒金型内から脱型し、一次硬化温度よりも高い温度で二次硬化する電子写真用導電性弾性ローラ1の製造方法において、前記一次硬化と二次硬化の間に、一次硬化後の導電性弾性ローラ1の半径方向に加圧して、周方向全面に均一に圧縮する加圧工程を行うことを特徴とする電子写真用導電性弾性ローラ1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置における現像、帯電、転写、クリーニング、除電等に用いうる電子写真用導電性弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザープリンタ等の電子写真装置において高速化、高画質化が急速に広まっている。レーザープリンタにおいて、画像形成の初期プロセスで、画像に直結する感光体やその近傍部材には、高精度化、高速化(応答性の良さ)等が求められている。
【0003】
レーザープリンタ等の電子写真装置の画像形成としては、非磁性一成分の現像剤を用いた現像法が知られている。具体的には、回転可能な感光体を帯電ローラ等の帯電手段により一様に帯電し、一様に帯電した感光体表面にレーザ光を露光して静電潜像を形成する。静電潜像を担持した感光体に、表面に現像剤の薄膜を形成した現像ローラを対向させ、感光体と現像ローラを相互に回転させる。このとき、現像ローラに現像バイアスを印加すると、現像剤は現像ローラ上から感光体上の静電潜像へ移動し、静電潜像はトナー像として現像される。その後、感光体上のトナー像は転写部において記録材上に転写され、定着部において加熱等により定着され、画像形成が完了した記録材が画像形成装置外へ排出される。
【0004】
中でも現像ローラにおいては、トナーの感光体への良好な搬送性と、トナーの良好な帯電性が要求されている。トナーの搬送性はトナーの電荷と現像電界によって決定される静電気力に依存することが知られている。現像電界は感光体上の潜像、つまり電位と、現像ローラにかけられるバイアス電位の間で現像電極の種類、位置関係により決定される。
【0005】
キヤリアを用いた二成分系のシステムでは電気的及び磁気的な作用により容易な搬送が可能であるが、一成分系のシステムで用いられる現像ローラには磁気力が発揮できない。よって、一成分では両極端面となる現像ローラ表面が均一に形成され、高い表面精度が要求されている。さらには、現像ローラのバイアス電位がかけられた場合に、極めて均一な電位分布が必要となり、抵抗値等の電気的な特性が現像ローラ内で極めて均一である必要がある。現像ローラの抵抗値が不均一であると、様々な画像不良が生じる。例えば、現像ローラの周回による濃度変化や現像ゴースト、かぶり等が挙げられる。このような問題の解決のために従来、種々の提案がなされている。
【0006】
なお、このような抵抗値の均一性については、上記現像ローラ等の現像部材に限らず、転写部材、帯電部材等、その他の電子写真用部材についても重要な性能の一つであり、抵抗値の均一性に優れた電子写真用導電性弾性ローラの開発が望まれる。
【0007】
上記要求に対し、電気抵抗の均一性を得る方法として、周面部に機械的圧力を加えながら電流を流すことにより、周面部の抵抗率を安定化させる方法が提案されている(特許文献1)。しかしながらこの方法では、液状シリコーンゴムを射出成形してなる導電性弾性ローラにおいては、加圧前後での周方向の電気抵抗のムラに差は見られず、効果がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−5153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、本発明は、液状シリコーンゴムを射出成形してなる周方向の電気抵抗のムラを低減できる導電性弾性ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子写真用導電性弾性ローラの製造方法は、円筒金型内に軸芯体を配置し、該円筒金型を加熱して、該軸芯体に対し同心状に導電性弾性層となる少なくとも導電性充填剤を含む液状シリコーンゴムを射出し、該円筒金型内部で該液状シリコーンゴムを一次硬化した後、該円筒金型内から脱型し、一次硬化温度よりも高い温度で二次硬化する電子写真用導電性弾性ローラの製造方法において、
前記一次硬化と二次硬化の間に、一次硬化後の導電性弾性ローラの半径方向に加圧して、周方向全面に均一に圧縮する加圧工程を行うことを特徴とする。
【0011】
また、前記加圧工程が、前記一次硬化後の電子写真用導電性弾性ローラの軸芯体両端部を把持し、該導電性弾性ローラを圧接部材に当接させて半径方向に加圧し、かつ、該導電性弾性ローラを周方向に少なくとも1回転以上回転する工程であることを特徴とする。
【0012】
また、前記半径方向への加圧は、
前記一次硬化後の電子写真用導電性弾性ローラの加圧前の導電性弾性層の厚みに対する、
前記電子写真用導電性弾性ローラの長手方向中央部における加圧時の導電性弾性層の厚みの圧縮率が、5%以上、50%以下となるように行うことを特徴とする。
【0013】
また、前記半径方向への加圧は、
前記一次硬化後の電子写真用導電性弾性ローラの端部と中央部との加圧時における導電性弾性層の厚みの圧縮率の差が10%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液状シリコーンゴムを射出成形してなる周方向の電気抵抗ムラを低減できる導電性弾性ローラの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る方法により製造された導電性弾性ローラの一実施形態の断面図である。
【図2】本発明に係る一次硬化後の導電性弾性ローラを圧接部材により半径方向に加圧する際の、導電性弾性ローラの長手方向中央部における断面の一例を示した図である。
【図3】本発明に係る方法により製造された導電性弾性ローラを現像ローラとして組み込んだ画像形成装置の一実施形態の概略構成図である。
【図4】本発明に係る導電性弾性ローラ抵抗測定装置の概念断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
本発明の電子写真用導電性ローラの製造方法は、円筒金型内に軸芯体を配置し、該円筒金型を加熱して、該軸芯体に対し同心状に導電性弾性層となる少なくとも導電性充填剤を含む液状シリコーンゴムを射出し、該円筒金型内部で該液状シリコーンゴムを一次硬化した後、該円筒金型内から脱型し、一次硬化温度よりも高い温度で二次硬化する電子写真用導電性弾性ローラの製造方法において、
前記一次硬化と二次硬化の間に、一次硬化後の導電性弾性ローラの半径方向に加圧して、周方向全面に均一に圧縮する加圧工程を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る電子写真用導電性弾性ローラ(以下、単に導電性弾性ローラと示す場合あり)の一例の断面図を図1(a)、(b)に示す。
【0019】
図1(a)、(b)に示す導電性弾性ローラ1は、軸芯体2と、軸芯体2の外周上に同心円状に形成された導電性弾性層3と、導電性弾性層3の外周上に形成された被覆層4を有する。なお、本発明に係る導電性弾性ローラは、異なる種類の材料からなる導電性弾性層3が複数層形成されていてもよく、また被覆層4は有さなくてもよい。
【0020】
〔軸芯体〕
軸芯体2としては、例えば、炭素鋼合金表面に5μm厚さの化学ニッケルメッキを施した、導電性の、円柱状の形状を有するものが好ましい。軸芯体2の材料として、例えば、鉄、アルミニウム、チタン、銅、ニッケル等の金属、これらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、青銅等の合金、さらにカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の剛直で導電性を有する材料も使用できる。また、軸芯体2の形状としては、中心部分を空洞とした円筒形状とすることも可能である。
【0021】
〔円筒金型〕
本発明で用いる円筒金型は、鋼鉄製で、少なくともキャビティ壁面を表面処理したものが好ましい。表面処理としては、化学ニッケルメッキ法、テフロンコーティング法、ガス窒化法、塩浴窒化法、ガス軟窒化法、プラズマ窒化法等の方法による表面処理が挙げられ、処理前の金型材質や形状により適宜選択することができる。
【0022】
〔導電性弾性層〕
前記軸芯体2の外周面上に導電性弾性層3を形成する。本発明においては、導電性弾性層3の原料として液状シリコーンゴム原料を用いる。
【0023】
〔液状シリコーンゴム原料〕
本発明における導電性弾性層3を構成する液状シリコーンゴム原料は、耐熱、耐寒性にすぐれ、広い温度範囲で良好な圧縮復元性を示し、耐候性、耐オゾン性、耐コロナ性、電気特性、耐熱油性、耐薬品性、耐熱水性などにも優れる材料であることが好ましい。これらの特性は、本発明における導電性弾性層3を構成する液状シリコーンゴム原料に配合されるシリコーンポリマー、充填剤、添加剤などの種類や、配合方法によって決めることができる。
【0024】
前記液状シリコーンゴム原料は、少なくとも導電性充填剤を含み、シリコーンポリマーとしてオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことが好ましく、さらに無機質充填剤や白金系触媒、硬化反応遅延剤等を含むことができる。
【0025】
〔オルガノポリシロキサン〕
前記オルガノポリシロキサンは、線状構造又は分岐鎖状構造を有しており、液状シリコーンゴム原料のベースポリマーとして用いられる。オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、10万以上、100万以下であるものが好ましく、重量平均分子量はおよそ50万程度であるものが好ましい。さらに液状シリコーンゴム原料の加工特性及び物性等の観点から、25℃におけるオルガノポリシロキサンの粘度は、10Pa・s以上が好ましく、50Pa・s以上がより好ましい。また、加工特性の観点から300Pa・s以下が好ましく、250Pa・s以下がより好ましい。オルガノポリシロキサンの粘度を10Pa・s以上とすると、液状シリコーンゴム原料の流動性が小さく、漏れにくくなるため好ましい。また、オルガノポリシロキサンの粘度を300Pa・s以下とすると、気泡をかみにくい液状シリコーンゴム原料が得られるため好ましい。
【0026】
前記オルガノポリシロキサンの分子末端基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位である。分子末端基の種類は特に限定されないが、トリオルガノシリル基、例えば、トリメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニルアリルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基等を例示することができる。活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基及びアリル基の少なくとも一方を含むトリオルガノシリル基であることが好ましく、ビニル基を含むトリオルガノシリル基であることがより好ましい。
【0027】
〔オルガノハイドロジェンポリシロキサン〕
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に直結した少なくとも2個の水素原子を有する。これは水素原子と前記オルガノポリシロキサン中のアルケニル基との付加反応によって架橋を形成し、これらを含む液状シリコーンゴム原料を硬化させるためである。ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量に特に制限はなく、1000〜10000であるものが好ましい。液状シリコーンゴム原料の硬化反応を適切に行なわせるためには、比較的低分子量のポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましく、具体的には、1000以上、5000以下が好ましい。
【0028】
後述する充填剤等が配合された液状シリコーンゴム原料の粘度は特に制限はないが、液状シリコーンゴム原料の流動性をある程度抑制して漏れを防止する観点から、10Pa・s以上であることが好ましい。また、形成された導電性弾性層3に、注入ゲート間において、ウエルドが発生する等の成形加工性の問題を回避するため、300Pa・s以下であることが好ましい。
【0029】
〔導電性充填剤〕
前記導電性充填剤は、導電性弾性層3に導電性を付与するためのものである。導電性充填剤としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボン繊維、金属繊維、金属粉末等が例示されるが、好ましくはカーボンブラックとグラファイトであり、より好ましくはカーボンブラックである。例えば、カーボンブラックとしては、通常、導電性ゴムに使用されている従来公知のものを使用することができる。チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック及びアセチレンブラックが例示されるが、いずれにしても導電性グレードであることが好ましい。
【0030】
導電性充填剤の使用量は、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して通常30〜300質量部の範囲とされるが、この範囲以外でも可能である。30質量部以上であると目的とする高導電性のものが容易に得られ、また、300質量部以下とすると導電性弾性層3が強靭なものとなり実用性に優れたものとなる。好ましい範囲としては50〜200質量部である。
【0031】
〔無機充填剤〕
前記無機充填剤は、液状シリコーンゴム原料の補強剤あるいは補強剤兼増量剤となるものである。無機充填剤としては、乾式シリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、水酸化アルミニウム、微粒子状アルミナ、コロイド状炭酸カルシウム、着色剤、カーボンブラック等が例示され、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0032】
無機充填剤の使用量は、無機充填剤の性状や所望される導電性弾性層3の引張強度及び硬さに依存し、特に限定されない。しかし、一般に無機充填剤が乾式シリカ、湿式シリカ、カーボンブラックのように、極めて微細であり、補強性が大きいものであるときは、オルガノポリシロキサン100質量部に対し5質量部〜80質量部用いることが好ましい。また、石英微粉末、ケイソウ土のようにさほど微細でなく補強性も小さいものであるときは、10質量部〜150質量部用いることが好ましい。
【0033】
〔白金系触媒〕
前記白金系触媒は、前記オルガノポリシロキサンと前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応を促進させるために必要とされるものである。これには白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、白金とビニルシロキサンの錯塩、例えば、塩化白金酸とビニルシロキサンの錯塩、塩化白金酸−アルコール配位化合物などの白金化合物等が例示される。これらは前記オルガノポリシロキサンと前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量に対して、いわゆる触媒量、すなわち白金量でおおむね1〜500ppm(質量比)の範囲で使用される。しかしながら、この範囲に限定されることなく、目標とする可使時間、硬化時間、製品形状等により適宜増減することができる。
【0034】
〔硬化反応遅延剤〕
前記硬化反応遅延剤は、前記オルガノポリシロキサンと前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンが前記白金系触媒の触媒作用により付加反応が生じて硬化するのを遅延させる添加物である。例えば、ベンゾトリアゾール、キノリン、ピコリン、N,N’−ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物、トリアルキルホスフィン、トリアルキルホスフェートなどの含リン化合物、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、シラン系3重結合含有化合物、メチルビニルテトラシクロシロキサンなどが例示される。本成分は、1種だけ添加してもよいし、2種以上を添加してもよい。
【0035】
〔電子写真用導電性弾性ローラの形成方法〕
電子写真用導電性弾性ローラは、例えば、次に記載する方法で成形する。
【0036】
液状シリコーンゴム原料としては、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、硬化反応遅延剤を0.01〜1質量部含む原料を用いる。必要とする導電性弾性層3の外径に対して、その内径が適当に選択された円筒型のキャビティ内に加硫接着タイプのシリコーンゴム用プライマーを表面に極薄く塗布した導電性の軸芯体2を、両端を駒型で押さえて配置する。そして、前記液状シリコーンゴム原料を、円筒型のキャビティ端部に設けた注入口から2.0〜10cc/sでキャビティ内に注入する。注入した液状シリコーンゴム原料を100℃〜150℃の温度で2分〜10分加熱し、一次硬化することにより、軸芯体2の外周面上に導電性弾性層3を形成する。次に円筒型を冷却し、該導電性弾性ローラを円筒型から取り外す(脱型する)ことにより、導電性の軸芯体2の外周面上に一次硬化した導電性弾性層3を形成した導電性弾性ローラを得ることができる。
【0037】
ここで一次硬化とは、円筒型から導電性弾性層3の形状を著しく損なうことなく成形した導電性弾性ローラを取り出すことができる程度にまで液状シリコーンゴム原料を硬化させることを指す。更には円筒型内で導電性弾性層3の破壊を起こさない範囲で液状シリコーンゴム原料を硬化させることを指す。
【0038】
さらに、導電性弾性層3の硬化及び物性の安定性を高めるために、後述する加圧工程を行った後、150〜250℃の恒温層中で加熱処理(二次硬化処理)される。これにより、本発明に係る導電性弾性ローラを得ることができる。本発明における導電性弾性層3の層厚は、通常2〜6mm、好ましくは3〜5mmとするのが適当である。
【0039】
〔加圧工程〕
本発明は一次硬化後に加圧工程を行い、その後二次硬化を行うことを特徴とする。加圧工程は、一次硬化後の導電性弾性ローラの半径方向に加圧して、周方向全面に均一に圧縮する工程である。加圧工程により導電性弾性層3内の導電性充填剤を再配列させることができ、周方向の電気抵抗のムラを低減することができる。好ましくは、加圧工程は、脱型した一次硬化後の導電性弾性ローラの軸芯体両端部を把持し、該導電性弾性ローラを圧接部材に当接させて半径方向に加圧し、かつ、該導電性弾性ローラを少なくとも1回転以上回転する工程である。
【0040】
前記半径方向への加圧は、加圧前の導電性弾性層3の厚みに対する、該導電性弾性ローラの長手方向中央部における加圧時の導電性弾性層3の厚みの圧縮率が、5%以上、50%以下となることが好ましい。一次硬化後の導電性弾性ローラ1を圧接部材6により半径方向に加圧する際の、導電性弾性ローラ1の長手方向中央部における断面の一例を図2に示す。前記圧縮率は、加圧前の導電性弾性層3の厚みaに対する加圧時の導電性弾性層3の厚みの圧縮量bの割合で示される。
(圧縮率)=b/a×100(%)。
【0041】
前記圧縮率が5%以上であると、導電性弾性層3が加圧され、それにより導電性充填剤が再配列を起こし、導電性弾性層3の周方向の電気抵抗ムラを均一にすることができる。圧縮率が50%以下であると、導電性弾性層3を凹ませたり、変形又は破壊したりせずに、導電性弾性層3の周方向の電気抵抗ムラを均一にすることができる。
【0042】
前記圧接部材6による半径方向の加圧は、前記一次硬化後の導電性弾性ローラ1端部と中央部との加圧時における導電性弾性層3の厚みの圧縮率の差が10%以下であることが好ましい。前記圧縮率の差が10%以下であると、導電性弾性層3の長手方向及び周方向の電気抵抗ムラを均一にすることができる。導電性弾性層3の長手方向及び周方向の電気抵抗ムラを均一にすることで、濃度ムラやかぶり等の画像不良がなくなり、良好な画像が得られる。
【0043】
導電性弾性ローラ1の表面を回転させながら当接させる圧接部材6の材質としては、紙、布、プラスチックフィルム、金属などが挙げられる。好ましくは、シリコーンゴムカスや熱変性により表面を浸蝕する離型剤が取れるという観点から、粘着性を有する粘着テープが好ましい。
【0044】
粘着テープは、一般的なものでよく、例えばクラフトテープ、布テープ、OPP(延伸されたポリプロピレンフィルム)テープなどが挙げられる。導電性弾性ローラ1表面を回転させながら加圧するにあたり、粘着テープの粘着剤が導電性弾性ローラ1表面に移行しないことが好ましい。
【0045】
これら粘着テープは、支持体と粘着剤とからなる。支持材としては、例えば、紙、布、プラスチックフィルムなどが挙げられる。紙としては、クラフト紙、和紙、クレープ紙などが挙げられる。布としては、レーヨン、綿、アセテート、ガラス、ポリエステル、ビニロンなどの単独又は混紡などの織布、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの割布、レーヨン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ガラスなどの不織布類が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、セロハン、アセテート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミドなどのフィルムが挙げられる。
【0046】
粘着剤としては、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系などが挙げられる。ゴム系としては、天然ゴム系、スチレンーブタジエンゴム系、イソブチレンゴム系、イソプレンゴム系、スチレンーイソプレンブロック共重合体、スチレンーブタジエンブロック共重合体などが挙げられる。アクリル系としては、一種類以上のアクリル酸C4〜C9アルキルエステルとビニル系モノマーの共重合体が挙げられる。シリコーン系としては、シリコーンゴムとシリコーンレジンからなる100%シリコーン組成物からなるものが挙げられる。
【0047】
粘着テープの粘着力は、1.0N/10mm以上、10.0N/10mm以下であることが好ましい。この粘着力の測定方法は、JIS−Z0237の粘着テープ・粘着シートの試験方法の180度引きはがし粘着力の測定に準ずる。粘着力が1.0N/10mm以上であると、導電性弾性ローラ1表面上のシリコーンゴムカスの付着力に勝り、導電性弾性ローラ1表面上からシリコーンゴムカスを除去することができる。粘着力が10.0N/10mm以下であると、粘着テープと導電性弾性ローラ1表面の付着力により、導電性弾性層3を破断せずに、導電性弾性ローラ1表面からシリコーンゴムカス、及び熱変性により導電性弾性ローラ1表面を浸食する離型剤を除去できる。
【0048】
圧接部材6の長手方向長さが、導電性弾性層3の長手方向の長さよりも長いことが、導電性弾性層3の長手方向全面を均一に加圧することが出来るため好ましい。圧接部材6の長手方向の長さより導電性弾性層3の長手方向の長さが短い場合には、導電性弾性ローラ1の一部分だけに集中して圧力を加えると、外観上跡が残ってしまうこともある。このため、圧力をかける場所を連続的にずらしながら、連続的に回転して圧接部材によって圧力をかけることが好ましい。圧接部材6の形状としては、当接面は平面形状でも良いが、曲面形状であることが好ましい。
【0049】
まず、当接面が曲面形状である圧接部材6を用いた加圧工程ついて説明する。具体的には、例えば円筒状の圧接部材6を用いる場合である。円筒状の圧接部材6の場合は回転している圧接部材6に軸芯体2の両端部を加圧しながら導電性弾性ローラ1を当接させ、従動回転させることによって連続的に位置を変えながら圧力を加えることができる。なお、円筒状の圧接部材6としては、導電性弾性ローラ1の外径よりも大きい内径を持つ円筒状の圧接部材6を用いて、該圧接部材6の内周面に当接させながら回転させてもよい。
【0050】
次に、当接面が平面形状である圧接部材6を用いた加圧工程について説明する。具体的には、例えば当接面が平板状の圧接部材6を用いる場合である。平板状の圧接部材6の場合は軸芯体2の両端部を把持し、導電性弾性ローラ1を圧接させながらその上を回転させることによって連続的に位置を変えながら圧力を加えることができる。
【0051】
前記圧接部材6による導電性弾性ローラ1の半径方向の加圧は、該導電性弾性ローラ1を周方向に少なくとも1回転以上回転して行う。これにより、導電性弾性層3の周方向全面に対して均一に加圧が行われるようにする。より好ましくは1回転以上、10回転以下ある。さらには回転数が整数倍であることが好ましい。1回転より少ないと、導電性弾性ローラ1の全周が加圧されず、周方向の電気抵抗ムラがより不均一となってしまう。10回転より多いと、導電性充填剤の再配列は終わっているため、より多く回転しても電気抵抗はそれ以上は安定化しない。なお、言うまでも無いが、加圧の手段、回転の手段を機械を用いて行うことにより、処理の自動化、コストダウンが期待できる。また、前述したように、圧接部材6の長手方向の長さが導電性弾性層3の長手方向の長さよりも短い場合には、圧力をかける場所を連続的にずらしながら行う。この場合の回転数は、周方向全面に対して均一に加圧された時を1回転とする。
【0052】
導電性弾性ローラ1を回転させる際の回転速度としては、1rpmから300rpmが適当である。1rpmより遅いと、偏荷重を起こす場合があす。また、300rpmより速いと圧縮が不均一な場合がある。
【0053】
〔電子写真プロセスカートリッジ〕
次に本発明の電子写真用導電性弾性ローラを使用したプロセスカートリッジの一例について、図を用いて説明する。図3は、本発明の導電性弾性ローラを現像ローラとして使用したプロセスカートリッジを搭載した画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0054】
プロセスカートリッジは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラム21に対向して当接又は圧接した状態で現像剤を担持する、本発明の導電性弾性ローラである現像ローラ25を備える。この現像ローラ25が感光ドラム21に現像剤としてのトナー28を付与することにより潜像を現像剤像として可視化する。プロセスカートリッジは、さらに、現像ブレード27、現像容器34、クリーニングブレード30を備えている。感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によって一様に帯電され、感光ドラム21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザ光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なプロセスカートリッジに保持される現像装置24によって現像剤たるトナー28を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0055】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ29によって記録媒体である紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0056】
一方、転写されずに感光ドラム21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21は上述作用を繰り返し行う。
【0057】
現像装置24は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての本発明の導電性弾性ローラである現像ローラ25とを備える。これにより感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0058】
なお、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。また、現像装置24においては、供給ローラ26が、現像容器34内で、現像ブレード27の現像ローラ25表面との当接部に対し現像ローラ25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【0059】
供給ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ25へのトナー28の供給及び未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。
【0060】
供給ローラ26の現像ローラ25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ローラ25に対してはその当接部において相対速度を持たせることが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
金型として、ニッケルメッキ製のキャビティ壁面が窒化処理されている円筒型の金型を用いた。また、離型剤として、フッ素系離型剤(商品名:「フリリース」、ネオス株式会社製)を用いた。
【0063】
円筒金型キャビティ壁面に上記の離型剤を塗布し、該金型キャビティ内に、直径8mmの軸芯体を同心となるように設置した。次に、導電性充填剤を含む液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、体積固有抵抗10×107Ω・cm品)を金型の注入口から10cc/sで注入した。100℃の温度にて10分加熱して一次硬化させ、硬化後冷却することなく脱型し、一次硬化後の導電性弾性ローラを作製した。得られた一次硬化後の導電性弾性ローラは、軸芯体の外周面上に形成された導電性弾性層を有しており、該導電性弾性層が形成された部位の直径はおよそ16mm、該導電性弾性層の形成された部位の長手方向の長さは240mmであった。
【0064】
次に、圧接部材として、粘着力が3.3N/10mmのクラフトテープ(商品名:「クラフトテープNo.500」、積水化学工業製、幅250mm)を用い、前記一次硬化後の導電性弾性ローラの軸芯体両端部を把持し、導電性弾性層を粘着テープに押し当てた。該導電性弾性ローラの中央部における圧縮率が10%かつ、該導電性弾性ローラ端部と該導電性弾性ローラ中央部での圧縮率の差が5%となるように該導電性弾性ローラを加圧し、該導電性弾性ローラを周方向に2回転、回転させた。
【0065】
その後、導電性弾性層の硬化後の物性を安定させ、導電性弾性層中の反応残渣及び未反応低分子分を除去すること等を目的として、該導電性弾性ローラをオーブンにて200℃で4時間熱処理(二次硬化)を行った。得られた導電性弾性ローラの周方向の抵抗ムラを下記方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0066】
〔抵抗ムラ測定方法〕
図4に示すように、導電性弾性ローラの長手方向に8等分したφ30の金属製電極用ローラに対して、片側500gずつ合計1000gの荷重で導電性弾性ローラを押し当てた。該金属製電極用ローラを32rpmで回転させて導電性弾性ローラを従動回転させた。この状態で直流電流電源より50Vの電圧を導電性弾性ローラ軸芯体・金属製電極用ローラ間に印加したときの各部の抵抗値を一周分にわたり測定した。この際の8等分した各部の抵抗値の最大値(Rmax)/最小値(Rmin)を求め、抵抗ムラとした。以下に抵抗ムラの評価方法を示す。なお、図4に示すように、8等分した金属製電極用ローラの左から順にP1〜P8と示すこととし、各箇所の抵抗ムラの平均値を全体の抵抗ムラとした。
◎:抵抗ムラの値が1.2以下
○:抵抗ムラの値が1.2よりも大きく、1.5以下
△:抵抗ムラの値が1.5よりも大きく、2.0以下
×:抵抗ムラの値が2.0よりも大きい。
【0067】
〔実施例2〕
回転数を7回転、中央部の圧縮率を5%、端部と中央部の圧縮率の差を3%に変えた以外は、実施例1と同様に導電性弾性ローラを作製した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
〔実施例3〕
回転数を1回転、中央部の圧縮率を8%、端部と中央部の圧縮率の差を15%に変えた以外は、実施例1と同様に導電性弾性ローラを作製した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
〔実施例4〕
回転数を5回転、中央部の圧縮率を4%、端部と中央部の圧縮率の差を7%に変えた以外は、実施例1と同様に導電性弾性ローラを作製した。得られた結果を表1に示す。
【0070】
〔比較例1〕
一次硬化後に加圧を行わなかった以外は、実施例1と同様に導電性弾性ローラを作製した。得られた結果を表1に示す。
【0071】
〔比較例2〕
回転数を0.5回転、中央部の圧縮率を2%、端部と中央部の圧縮率の差を13%に変えた以外は、実施例1と同様に導電性弾性ローラを作製した。得られた結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1及び2は一次硬化後に導電性弾性ローラを半径方向に加圧し、かつ導電性弾性ローラを周方向に少なくとも1回転以上、中央部における圧縮率が5〜50%以下、端部と中央部の圧縮率の差が10%以下の条件で二次硬化したため、周方向の抵抗ムラが小さい導電性弾性ローラが得られた。実施例3は一次硬化後に導電性弾性ローラを半径方向に加圧し、かつ導電性弾性ローラを周方向に少なくとも1回転以上、中央部における圧縮率が5〜50%以下の条件で二次硬化したため、周方向の抵抗ムラが比較的小さい導電性弾性ローラが得られた。実施例4は一次硬化後に導電性弾性ローラを半径方向に加圧し、かつ導電性弾性ローラを周方向に少なくとも1回転以上、端部と中央部の圧縮率の差が10%以下の条件で二次硬化したため、周方向の抵抗ムラが小さい導電性弾性ローラが得られた。これに対して、比較例1では一次硬化後に加圧せずに二次硬化したため、射出成形によるせん断による圧力差がそのまま残ってしまい、実施例と比較して抵抗ムラは大きかった。さらに比較例2では、一次硬化後に0.5周だけ、加圧回転したため、導電性弾性層の周方向全面が均一に加圧されておらず、回転した箇所としてない箇所での差が顕著になり、抵抗ムラはさらに大きくなった。
【符号の説明】
【0074】
1 導電性弾性ローラ
2 軸芯体
3 導電性弾性層
4 被覆層
5 金属製電極用ローラ
6 圧接部材
21 感光ドラム
22 帯電装置
23 レーザー光
24 現像装置
25 現像ローラ
26 供給ローラ
27 現像ブレード
28 トナー(現像剤)
29 転写ローラ
30 クリーニングブレード
31 廃トナー容器
32 定着装置
33 紙
34 現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒金型内に軸芯体を配置し、該円筒金型を加熱して、該軸芯体に対し同心状に導電性弾性層となる少なくとも導電性充填剤を含む液状シリコーンゴムを射出し、該円筒金型内部で該液状シリコーンゴムを一次硬化した後、該円筒金型内から脱型し、一次硬化温度よりも高い温度で二次硬化する電子写真用導電性弾性ローラの製造方法において、
前記一次硬化と二次硬化の間に、一次硬化後の導電性弾性ローラの半径方向に加圧して、周方向全面に均一に圧縮する加圧工程を行うことを特徴とする電子写真用導電性弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記加圧工程が、前記一次硬化後の電子写真用導電性弾性ローラの軸芯体両端部を把持し、該導電性弾性ローラを圧接部材に当接させて半径方向に加圧し、かつ、該導電性弾性ローラを周方向に少なくとも1回転以上回転する工程であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用導電性弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記半径方向への加圧は、
前記一次硬化後の電子写真用導電性弾性ローラの加圧前の導電性弾性層の厚みに対する、
前記電子写真用導電性弾性ローラの長手方向中央部における加圧時の導電性弾性層の厚みの圧縮率が、5%以上、50%以下となるように行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用導電性弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記半径方向への加圧は、
前記一次硬化後の電子写真用導電性弾性ローラの端部と中央部との加圧時における導電性弾性層の厚みの圧縮率の差が10%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真用導電性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−271463(P2010−271463A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121975(P2009−121975)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】