説明

電子写真用帯電ロール、画像形成装置

【課題】耐久性があり、抵抗値が環境条件で安定であり、かつピンホールリークや感光体汚染の心配のない、優れた品質の電子写真用帯電ロールを提供すること。
【解決手段】 例えば、ロール軸体1と、ロール軸体1の外周面に形成された導電性弾性体層2と、導電性弾性体層2上に形成された表面樹脂層4と、で構成した電子写真用帯電ロールにおいて、表面樹脂層4として、孔内に導電性微粒子を充填したフッ素樹脂多孔質体層を適用する。また、必要に応じて、導電性弾性体層2と表面樹脂層4との間に、中間層を介在させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザビームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に使用される帯電ロール、及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機の帯電ロールに用いられる導電性ロールは、103〜109Ω/cm2程度の範囲内の導電性を有することが求められており、通常、金属シャフトとその外周面に形成された導電性層とによって構成されている。このような導電性ロールは、帯電ロールとして充分な機能を果たすためには、電気抵抗レベルが、上記したように、103〜109Ω/cm2の範囲に入るのが望ましいとされている。
【0003】
帯電ロールは感光ドラムの外周面に圧接させて回転させ、接触部の摺動摩擦によって感光ドラムの外周面を帯電させるため、帯電ロールには弾性が要求される。このため上記導電性層は、一般に、シリコーンゴム等の合成ゴム中に導電性粉末や導電性繊維(カーボンブラック、金属粉末、金属酸化物、カーボン繊維等)を混入した導電性ゴム組成物によって形成されている(特開昭58−49960号公報、実開昭58−88645号公報)。
【0004】
また、合成ゴム本来のイオン導電性を利用し、あるいはこれに高誘電性液体やイオン性物質を添加して、上記合成ゴムのイオン導電性を補強したイオン導電性弾性層を備えた帯電ロールも知られている(特開平1−277257号公報、特開平2−198470号公報)。しかしながら、導電性ゴム層と感光体表面とが直接接触した状態で帯電を繰り返すと、ゴム層に含まれている低分子量成分が感光体に移行して画像欠陥を引き起こすという問題が生じる。またゴム層が感光体との接触によって磨耗して、ロール表面の凹凸が初期状態から大きく変化して帯電の均一性が損なわれるという問題が生じる。また導電性ゴム層の導電度が高い場合には、感光体の欠陥部分に過大な電流が流れるいわゆるピンホールリークが生じ、画像欠陥が現れる。
【0005】
このような問題を解決するために、導電性ゴム層の表面に抵抗の低い樹脂よりなる樹脂層を保護層として設けることが行われている(特開昭58−194061号公報、特開昭64−66674号公報)。
【0006】
しかしながら、この場合、環境条件によって抵抗値が変化し、画像濃度が環境条件によって変わるという問題があった。また感光体への帯電を繰り返し行うに伴って、樹脂層が不均一に磨滅して放電ムラが生じたり、樹脂層表面に放電生成物やトナーの構成材料の一部が付着して、画像欠陥を引き起こす等の問題が避けられなかった。また、ピンホールリークの発生を防ぐ目的で、導電性弾性体層と表面樹脂層との中間に108Ωcm程度の抵抗を有するイオン導電性のゴム材料からなる中間層を介在させるという試みもなされているが、この場合の中間層の膜厚は100μm程度であり、均一な膜厚を得るのが難しい等、製造上の問題とともに、環境条件によって帯電ロールの抵抗値が変化するため、帯電ロールへの印加電圧を定電流制御する必要がある等使用上の問題も残されている。
【0007】
一方で、保護層としてフッ素樹脂層を用いたものが数多く提案されているが、その離型性の低さによって、汚れが蓄積するという問題点がある。
【特許文献1】特開昭58−49960号公報
【特許文献2】実開昭58−88645号公報
【特許文献3】特開平1−277257号公報
【特許文献4】特開平2−198470号公報
【特許文献5】特開昭58−194061号公報
【特許文献6】特開昭64−66674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、これまでの帯電ロールは、いずれも感光体汚染、ピンホールリーク、抵抗値の環境変化、異物付着や磨耗による劣化等の問題があり、満足しうるものが得られていなかった。
【0009】
本発明は、従来の技術における上記のような事情に鑑みてなされたものである。したがって、本発明の目的は、耐久性があり、抵抗値が環境条件で安定であり、かつピンホールリークや感光体汚染の心配のない、優れた品質の電子写真用帯電ロール、及びそれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
本発明の電子写真用帯電ロールは、導電微粒子が孔内に充填されたフッ素樹脂多孔質体層により、表面が被覆されたことを特徴としている。
【0011】
本発明の電子写真用帯電ロールでは、表面樹脂層としてフッ素樹脂を主成分とした多孔質体層を適用している。そして、このフッ素樹脂多孔質体層には、その孔内に導電性微粒子を充填させているので、導電性微粒子は、見かけ上均一な分散状態で含まれている。このため、フッ素樹脂多孔質体層は均一な導電性が付与されている。したがって、耐久性があり、抵抗値が環境条件で安定であり、かつピンホールリークや感光体汚染の心配のない、優れた品質となる。
【0012】
本発明の電子写真用帯電ロールにおいて、前記フッ素樹脂多孔質体層の孔内には、さらに離型剤が充填されることが好適である。この構成により、フッ素樹脂多孔質体層表面に均一な離型性が付与されると共に、その表面が削れても離型剤が露出するため長期に渡って高い離型性を維持することができる。
【0013】
本発明の電子写真用帯電ロールにおいて、具体的なロール構成としては、例えば、ロール軸体と、前記ロール軸体の外周面に形成された導電性弾性体層と、前記導電性弾性体層上に形成された前記フッ素樹脂多孔質体層と、を有する構成、又は、ロール軸体と、前記ロール軸体の外周面に形成された導電性弾性体層と、前記導電性弾性体層上に形成された中間層と、前記中間層上に形成された前記フッ素樹脂多孔質体層と、を有する構成が好適に挙げられる。
【0014】
一方、本発明の画像形成装置は、上記本発明の電子写真用帯電ロールを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐久性があり、抵抗値が環境条件で安定であり、かつピンホールリークや感光体汚染の心配のない、優れた品質の電子写真用帯電ロール、及びそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与して説明する。
【0017】
本実施形態に係る画像形成装置10は、図1に示すように、矢印B方向に回転するドラム状の感光体11(像担持体)を有し、この感光体11の表面を帯電装置(帯電ロール)12により均一に帯電した後、その表面に走査露光式等の潜像書き込み装置13により画像情報に基づく露光を行って静電潜像を形成し、その静電潜像を現像装置14により現像してトナー像として可視化するようになっている。
【0018】
次に、本実施形態に係る画像形成装置10は、感光体11上のトナー像を、記録用紙等の記録媒体Pに直接又は中間転写体を介して静電的に転写するようになっている。この際、トナー像の記録媒体P又は中間転写体への転写は転写装置15により行う。本実施形態では、直接、記録媒体Pに転写する形態を示す。トナー像が転写された記録媒体Pは定着装置(図示省略)に送り込まれて定着処理される。これによりトナーからなる画像が形成された記録媒体Pが得られる。
【0019】
また、本実施形態に係る画像形成装置10には、感光体11の表面の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置16も備えている。クリーニング装置16は、合成ゴム等からなるクリーニングブレード17をその自由端部が感光体11の表面に当接するような状態で取付け支持板17aにより取り付けている。また、ロール形態のクリーニングブラシ18が感光体11の表面に当接するような状態で回転可能に取り付けている。
【0020】
そして、本実施形態に係る画像形成装置10おける帯電ロール12は、図2に示すようなロール軸体1の外周面に、同心円状に導電性弾性層2、中間層3、及び表面樹脂層4が順次形成された構成、又は、図3に示すようなロール軸体1の外周面に、同心円状に導電性弾性層2、及び表面樹脂層4が順次形成された構成とすることができる。
【0021】
帯電ロール10において、表面樹脂層4は、ロール軸体1の表面に直接設けてもよい。例えば、アモルファスシリコンのように表面が強固な感光体を帯電する目的に使用するものの場合には、表面樹脂層4をロール軸体1の表面に直接設けてもよい。しかしながら、ロール軸体1の外周に同心円状に形成された導電性弾性体層2を介して設けるのが好ましく、特に、外周に同心円状に形成された導電性弾性体層2、及びその上に形成された導電性粒子を分散した樹脂からなる中間層4を介して設けるのが好ましい。
【0022】
導電性弾性体層2としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム等のゴム材料に、カーボンブラックや金属酸化物、或いは過塩素酸リチウム等の導電材料を分散したものが適当である。また、導電性弾性層は、単層ではなく多層構造であってもよい。
【0023】
中間層3は、導電性粒子を分散した樹脂から形成されるが、用いる材料としては、樹脂層の塗布液によって溶解しない樹脂から選択しなければならない。したがって、アルコール系の溶剤に不溶なポリエステル、フェノール、アクリル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、セルロース等の樹脂が適当である。中間層3が存在すると、導電性弾性体層2と表面樹脂層4の2層構成の場合と比較して、さらにピンホールリークが著しく生じ難くなる。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、導電性粒子の分散状態が異なる2つの層を積層することによって両者の界面で電路切断が生じ、そこで過大電流が流れることが防止されると推測される。
【0024】
表面樹脂層3は、フッ素樹脂多孔質体層で構成させる。そして、このフッ素樹脂多孔質体層の孔内には、導電性微粒子が充填されている。
【0025】
フッ素樹脂多孔質体層の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)膜、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)膜などが挙げられる。
【0026】
また、孔内に十分に導電性微粒を充填させる点で、その空隙率は、5〜98%が好ましく、より好ましくは25〜95%である。空孔率は、JIS K 6885の見掛け密度測定に準拠し、測定した見掛け密度(ρ)より次式:空孔率(%)=(2.2−ρ)/2.2×100で計算して求めた値である。
【0027】
また、その表面粗さ(Ra)は(値)は、0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜4.5μmである。この表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601により求めた値である。
【0028】
また、その引張強度は、10N/mm2以上であることが好ましく、より好ましくは50N/mm2以上である。このの引張強度は、JIS K 7127により測定した値(試験片は2号試験片、試験速度は50mm/min、タテ・ヨコの平均値)である。
【0029】
また、その膜厚は、1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。
【0030】
このような特性を有するフッ素樹脂多孔質体層としては、充実構造のフッ素樹脂膜が好適に挙げられる。充実構造のフッ素樹脂膜は、離型性、強度、耐摩耗性等に優れているため好適に適用することができる。例えば、充実構造のPFAとFEPは、熱溶融性であるため、例えば、押出しインフレーション法、キャスティング法等により得られた充実構造の薄膜である。また、充実構造のPTFEは、延伸多孔質PTFE(ePTFE)フィルムを熱プレスすることにより得られ充実構造の薄膜である。特に、ePTFEフィルムを熱プレスして製造される充実構造のPTFE膜は、特に、耐熱性、離型性、強度、耐摩耗性等に優れているため好ましい。
【0031】
ここで、ePTFEフィルムとは、PTFEのファインパウダーを成形助剤と混合することにより得られるペーストの成形体から、成形助剤を除去した後、高温高速度で延伸、さらに必要に応じて焼成することにより得られるもので、一軸延伸の場合、ノード(折り畳み結晶)が延伸方向に直角に細い島状となっていて、このノード間を繋ぐようにすだれ状にフィブリル(折り畳み結晶が延伸により解けて引出された直鎖状の分子束)が延伸方向に配向している。そして、フィブリル間、又はフィブリルとノードとで画される空間が空孔となった繊維質構造となっている。また、二軸延伸の場合には、フィブリルが放射状に広がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在して、フィブリルとノードとで画された空間が多数存在するクモの巣状の繊維質構造となっている。
【0032】
このePTFEフィルムは、1軸延伸ePTFEフィルムであってもよいし、2軸延伸ePTFEフィルムであってもよいが、好ましくは2軸延伸ePTFEフィルムである。2軸延伸されたePTFEフィルムは、2軸方向に延伸されているため、1軸延伸されたePTFEフィルムよりも異方性が低く、TD方向(フィルム幅方向)、MD方向(フィルム長さ方向)ともに高い強度のPTFE膜を得ることができる。
【0033】
充実構造のPTFE膜を製造するには、例えば、先ず、ePTFEフィルムを、第1圧縮工程において、その融点未満の温度で圧縮(加圧)して圧延フィルムを得る。この場合、その圧縮温度は、PTFEの融点よりも低い温度であれば特に制約されないが、通常1℃以上、好ましくは100℃以上低い温度である。圧縮温度が融点以上になると充実フィルムの収縮が大きくなる。その圧縮条件は、得られるフィルムの空孔率が5〜98%以下、好ましくは25〜95%、より好ましくは40〜95%以下となるような条件である。圧縮力は、面圧で、例えば、0.05〜120N/mm2、好ましくは0.1〜100N/mm2である。
【0034】
次に、第1圧縮工程において得られる圧延フィルムを、第2圧縮工程において、例えば、PTFEの融点以上の温度で圧縮(加圧)する。この場合、その圧縮温度は、PTFEの融点以上の温度であればよく、特に制約されないが、通常、その融点よりも1〜100℃、好ましくは20〜80℃高い温度である。ePTFEフィルムを融点以上に加熱することにより、充実膜表面の平滑性を高めることができる。圧縮温度は、圧力を開放する時点で融点よりも低い温度まで下げられていることが好ましい。融点以上の温度で圧力を開放すると、充実フィルムの収縮が大きくなり、又皺が入り易くなる。圧縮条件は、得られる充実構造のフィルムの空孔率が上記範囲となるようにな条件である。その圧縮力は、面圧で、例えば、5〜50N/mm2、好ましくは5〜30N/mm2程度である。
【0035】
この際、ePTFEフィルムを圧縮しながらPTFEの融点以上の温度をかけた後、圧力を保持した状態でPTFEの融点以下の温度まで冷却することがよく、これにより1パスで充実膜を製造することができる。この方法によれば、ePTFEフィルムに圧縮開始時点からPTFEの融点以上の温度をかけても、ePTFEフィルムにかけられた圧力が開放される前にPTFEの融点より低い温度まで冷却されるため、得られる充実構造の膜に収縮がほとんど起こらない。例えば、ベルトプレス装置を用いれば、ePTFEフィルムがベルト間で圧縮された状態で、PTFEの融点以上の温度をかけた後、融点より低い温度まで冷却することにより、収縮の小さい充実膜を得ることができる。
【0036】
また、この方法によれば、スカイビング法では困難であった薄膜(例えば50μm以下)の透明PTFE薄膜を容易に得ることができる。また、得られるPTFE膜の表面粗さ(Ra)は、第2圧縮工程で圧縮(加圧)手段(プレス板を用いて熱プレスを行うときにはそのプレス板、熱プレス板で圧縮するときには、主にその耐熱性フィルム)の表面粗さ(Ra)で決まる。
【0037】
なお、充実構造のフッ素樹脂膜は、特開2003−254324公報に従って作製することができる。
【0038】
一方、フッ素樹脂多孔質体層の孔内に充填させる導電性粒子としては、粒径が3μm以下で体積抵抗率が109Ωcm以下であるものが望ましい。例えば、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、CeO2、ZrO2、In23等の金属酸化物あるいはそれらの合金からなる微粒子、あるいはBaSO4やTiO2のような微粒子の表面にこれらの金属酸化物を被覆したもの、あるいはカーボンブラック等を用いることができる。このような導電材料によって抵抗制御を行うことにより、表面樹脂層の抵抗値は環境条件によって変化せず、安定な特性が得られる。さらに、上記表面樹脂層には、フッ素系あるいはシリコーン系の樹脂或いは微粒子を添加してもよく、その場合、表面が疎水性となってロール表面への異物の付着が防止されるように作用する。またアルミナやシリカのような絶縁性の粒子を添加して、ロールの表面に凹凸を付与し、感光体との摺擦時の負担を小さくしてロールと感光体相互の耐磨耗性を向上させることも可能である。また導電性弾性体層或いは中間層との接着性向上のためにカップリング剤を添加することも可能である。
【0039】
これら導電性粒子を、フッ素樹脂多孔質体層の孔内に充填させる方法としては、特に制限はないが、例えば、フッ素樹脂多孔質体層を単独で作製後、当該多孔質層表面に導電性粒子を擦り付けて充填させる方法などがある。
【0040】
また、フッ素樹脂多孔質体層を、充実構造のフッ素樹脂膜(特に、PFTE膜)で構成する場合、第1圧縮工程によりePTFEフィルムを圧延した圧延フィルムの孔内に導電性微粒子を充填した後、第2圧縮工程を施すことで、より簡易に導電微粒子を充実構造のフッ素樹脂膜(フッ素樹脂多孔質体層)の孔内に充填させることができると共に、導電微粒子を孔内に十分固着させ、安定した導電性が付与される。
【0041】
また、フッ素樹脂多孔質体層の孔内には、さらに離型剤を充填されていることが好ましい。この離型剤としては、固体潤滑剤、オイル、低摩擦樹脂、高離型性樹脂などが挙げられる。
【0042】
固体潤滑剤としては、へき開性を有する一群の固体潤滑剤が好適に挙げられる。へき開性固体潤滑剤は、原子又は原子団が平面状に配列してシート構造を作り、この平面に垂直な方向にシート構造の繰り返しが見られるような層状構造又は層構造、あるいは層状格子の結晶構造を有している。
【0043】
へき開性固体潤滑剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化ジルコニア、二硫化タングステンなどの金属ジカルコゲナイド;水酸化マグネシウム(II)、水酸化カルシウム(II)、水酸化亜鉛(II)などの金属二価水酸化物;黒鉛;窒化ほう素;フッ化黒鉛;雲母;フタロシアニン;及びタルクなどから選ばれた少なくとも1種を用いることができる。上記各種へき開性固体潤滑剤のうちで黒鉛、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン及び窒化ほう素が潤滑性、安全性などに優れているため特に好ましい。
【0044】
その他の固体潤滑剤として三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂球形微粒子が好適である。該シリコーン樹脂球形微粒子はメチルトリアルコキシシランを原料として、加水分解反応及び脱水縮合反応を順次経由して合成される潤滑性に優れた球形微粒子である。
【0045】
オイルとしては、シリコーン系のオイルやフッ素系のオイルが好適に挙げられる。
【0046】
低摩擦樹脂は、フッ化ビニリデン系樹脂が好適に挙げられる。フッ化ビニリデン系樹脂としてはフッ化ビニリデンの単独重合体又はフッ化ビニリデンと他の重合性単量体との共重合体が挙げられる。共重合体としては、例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン3元共重合体などが実用されている。これらのうちで、フッ化ビニリデンを60モル%以上含有する共重合体及び単独重合体が好適であり、特にフッ化ビニリデン単独重合体が潤滑性、耐摩耗性などの点で好ましい。
【0047】
フッ化ビニリデン系共重合体において、フッ化ビニリデン単位の含有量が60モル%未満である場合には該共重合体の結晶化度が低下し、低弾性率でゴム的であり潤滑性に劣る樹脂(又はゴム)となる。
【0048】
フッ化ビニリデン系樹脂は、いわゆるフッ素ゴムとは異なり、結晶性樹脂であるため潤滑性に優れている。さらに、低沸点有機溶剤、特にアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系や酢酸エチルなどのエステル系有機溶剤に可溶であることから、コーテイング等の手法により緻密な薄膜を形成することができ、一方、有機溶剤は蒸発により容易に除去することができる。
【0049】
これら離型剤を、フッ素樹脂多孔質体層の孔内に充填させる方法としては、特に制限はないが、例えば、フッ素樹脂多孔質体層を単独で作製後、当該多孔質層を離型剤を含む塗料に浸漬することで、その孔内に含浸させて充填する方法が挙げられる。
【0050】
具体的には、例えば、離型剤としてのフッ化ビニリデン系樹脂をメチルエチルケトンなどの低沸点有機溶剤に溶解し、得えられた溶液に上記固体潤滑剤を混合し、均一に分散させることにより塗料が得て、フッ素樹脂多孔質体層に該塗料を浸漬することで、フッ化ビニリデン系樹脂をフッ素樹脂多孔質体層に孔内に含浸・充填させることができる。
【0051】
また、フッ素樹脂多孔質体層を、充実構造のフッ素樹脂膜(特に、PFTE膜)で構成する場合、第1圧縮工程によりePTFEフィルムを圧延した圧延フィルムの孔内に離型剤を充填した後、第2圧縮工程を施すことで、より簡易に離型剤を充実構造のフッ素樹脂膜(フッ素樹脂多孔質体層)の孔内に充填させることができると共に、離型剤を孔内に十分固着させることができる。
【0052】
帯電ロール12は、例えば次のようにして作製される。まず導電性カーボン等の導電性物質を配合した合成ゴム等の弾性体を、接着剤処理した金属シャフトの外周にまきつけ、金型加硫した後、研磨して導電性弾性層を形成させる。必要に応じて、中間層も同様に形成する。そして、予め作製したフッ素樹脂多孔質体のシート(或いはチューブ状物)を作製し、これに巻きつけることで、表面樹脂層を形成する。
【0053】
なお、導電性弾性体層の膜厚は500μm〜5mmであることが好ましく、中間層の膜厚は5μm〜500μmでであることが好ましく、表面樹脂層(フッ素樹脂多孔質体層)の膜厚は上記の通りである。
【0054】
以上、説明した本実施形態に係る画像形成装置10では、表面樹脂層として、孔内に導電性微粒子を充填したフッ素樹脂多孔質体層を有する帯電ロール12を用いている。この帯電ロール12では、この導電性微粒子をフッ素樹脂多孔質体層の孔内に充填しているので、見かけ上均一な分散状態で導電性微粒子がフッ素樹脂多孔質体層に分散されている。このため、この帯電ロール12は、フッ素樹脂多孔質体層に均一な導電性が付与されており、耐久性があり、抵抗値が環境条件で安定であり、かつピンホールリークや感光体汚染の心配のない、優れた品質となり、これを備えた画像形成装置10は良好な画像を形成可能となる。
【0055】
また、この帯電ロール12では、フッ素樹脂多孔質体層の孔内にさらに離型剤が充填させることで、フッ素樹脂多孔質体層表面に均一な離型性が付与されると共に、その表面が削れても離型剤が露出するため長期に渡って高い離型性を維持することができる。
【実施例】
【0056】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。
【0057】
[実施例1]
ePTFE膜(空孔率90%、厚さ20μm)をカレンダーロール装置でロール温度72℃、線圧10N/mm2、送り速度1m/minで圧縮し、空孔率80%、厚さ12μmの圧延フィルムを得た。
【0058】
そして、この圧延フィルムに、BaSO4微粒子表面に酸化錫を被覆した導電性微粒子(PASTRAN、三井金属社製)を擦り付け、圧延フィルムの孔内に導電性微粒子を充填させた。
【0059】
得られた導電性微粒子充填圧延フィルムを2枚のポリイミドフィルム(宇部興産製、ユーピレックス20S)の間に挟み、ホットプレス装置でプレス板温度120℃、面圧1MPaで5秒間加熱プレスし、表面粗さRa4μm、空孔率70%、厚さ10μmの充実構造のPTFEフィルムを得た。これを表面樹脂層シートとした。
【0060】
一方、シャフト径が8mmφの金属シャフトを用意し、その外周に導電性カーボンを配合したEPDMゴム組成物(硬度40°、電気抵抗104Ωcm)を巻き付けて導電性層を形成した。この導電性弾性層の厚みは3mmとした。
【0061】
そして、上記導電性弾性層付金属シャフトに、先に準備した表面樹脂層シートを巻きつけた。この場合、表面樹脂層の厚みは20μmとした。このようにして目的とする帯電ロールを得た。
【0062】
[実施例2]
実施例1において、導電性微粒子(PASTRAN、三井金属社製)を導電性ZnO微粒子(三井金属社製)に代えて用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
【0063】
[比較例1]
実施例1において、ウレタン樹脂(SIT−332、三洋化成社製)45重量部とBaSO4微粒子表面に酸化錫を被覆した導電性微粒子(PASTRAN、三井金属社製)55重量部に対し、メタノールを加え、フィルムを形成し、これを表面樹脂層シートとして用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
【0064】
[比較例2]
比較例1において、ウレタン樹脂(SIT−332、三洋化成社製)の代わりに、アクリル樹脂(BR−77、三菱レーヨン社製)を用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
【0065】
[比較例3]
比較例1おいて、ウレタン樹脂(SIT−332、三洋化成社製)の代わりに、メトキシメチル化ナイロン(T−8ナイロン、ユニチカ社製)を用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
[実施例3]
ポリエステル樹脂(VYLON300、東洋紡社製)40重量部とBaSO4微粒子表面に酸化錫を被覆した導電性微粒子(PASTRAN、三井金属社製)60重量部に対し、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを溶剤として加え、サンドグラインダーミルで約1時間分散して中間層形成用の塗布液を得た。この塗布液を粘度調整した後、浸漬塗布液として浸漬塗布槽に注入した。
【0066】
一方、シャフト径が8mmφの金属シャフトを用意し、その外周に導電性カーボンを配合したEPDMゴム組成物(硬度40°、電気抵抗104Ωcm)を巻き付けて導電性層を形成した。この導電性弾性層の厚みは3mmとした。
【0067】
次に、上記導電性弾性層付金属シャフトを、先に準備した中間層形成用の塗布液に浸漬してコーティングを行い、130℃で10分間乾燥して溶剤を除去し、中間層を形成した。この中間層の厚みは40μmとした。
【0068】
そして、上記導電性弾性層及び中間層付金属シャフトに、実施例1と同様の表面樹脂層シートを巻きつけた。
【0069】
[実施例4]
実施例3において、中間層のポリエステル樹脂の代わりにセルロース樹脂(シアノレジン、信越化学社製)を用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
【0070】
[実施例5]
実施例3において、EPDMゴムの代わりにウレタンゴムを用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
[比較例4]
実施例3において、ウレタン樹脂(SIT−332、三洋化成社製)45重量部とBaSO4微粒子表面に酸化錫を被覆した導電性微粒子(PASTRAN、三井金属社製)55重量部に対し、メタノールを加え、フィルムを形成し、これを表面樹脂層シートとして用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
【0071】
[実施例6]
実施例1において、圧延フィルムに、平均粒子径1μm程度のフッ化黒鉛を酸化錫に重量で5%添加したものを擦り付け、圧延フィルムの孔内に充填させた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
【0072】
[比較例5]
実施例5において、PFA(350HPJ デュポン製)45重量部に、予めBaSO4微粒子表面に酸化錫を被覆した導電性微粒子(PASTRAN、三井金属社製)55重量部を分散したものを用いて、厚み20μのチューブを作製し、これを表面樹脂シートとして用いた以外は、同様の処方で帯電ロールを得た。
【0073】
これらの帯電ロールを電子写真方式のプリンターに登載し、有機感光体ドラムと帯電ロールを接触回転しつつ、帯電ロールにDC成分を重畳したAC電圧を印加して感光体を帯電させることにより画像を繰り返し作成した。この試験は高温高湿環境(28℃、85%RH)と低温低湿環境(10℃、15%RH)で断続的に行われた。
【0074】
この結果、実施例1及び実施例2の帯電ロールは2万枚のプリントにおいて良好な画像が得られた。また、実施例3、実施例4及び5の場合は、さらにピンホールに対して有効であり、3万枚のプリントにおいても良好な画像が得られた。
【0075】
また、実施例6の帯電ロールは、5万枚のプリントにおいて良好な画像が得られたとなった。
【0076】
これに対し、比較例1及び4の帯電ロールを用いた場合、約1千枚のプリントを行った時点で画像にスジ状の欠陥が現れ、さらに約5千枚のプリントを行った時点で画像ムラが発生した。このスジ状の欠陥は帯電ロール表面に、放電生成物やトナーの構成材料の一部がスジ状に付着したことが原因と推定され、また画像ムラはロール表面の樹脂層が部分的に磨滅し、放電が不均一になったためと推定される。また、比較例2の場合、約5千枚のプリントを行った時点で、画像むらが発生した。この画像むらは、帯電ロール表面にクラックが入り、トナーが付着したことが原因と推定された。また、比較例3の場合は、帯電ロールの摩耗が激しく、トナーの付着が発生し、画像欠陥が発生した。また、比較例5の場合には、ロール表面の樹脂層における導電性微粒子の分散性が悪く、放電が不均一になり、画像ムラが発生した。
【0077】
これらの結果から、本実施例の帯電ロールは、その表面樹脂層として、表面樹脂層として孔内に導電性微粒子を充填したフッ素樹脂多孔質体層(特に、充実構造のPTFE多孔質膜)を適用しているため、磨耗しにくく、帯電ロールへの異物の付着が見られない等の点で耐久性に優れ、またピンホールリークを起こしにくい。また抵抗値が環境条件で安定であり、感光体汚染等がない優れた特性を有することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の帯電ロールの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置の帯電ロールの他の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ロール軸体
2 導電性弾性体層
3 中間層
4 表面樹脂層
10 画像形成装置
11 感光体
12 帯電ロール
13 潜像書き込み装置
14 現像装置
15 転写装置
16 クリーニング装置
17 クリーニングブレード
18 クリーニングブラシ
19 潤滑剤塗布装置
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電微粒子が孔内に充填されたフッ素樹脂多孔質体層により、表面が被覆されたことを特徴とする電子写真用帯電ロール。
【請求項2】
前記フッ素樹脂多孔質体層の孔内には、さらに離型剤が充填されたことをことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電ロール。
【請求項3】
ロール軸体と、前記ロール軸体の外周面に形成された導電性弾性体層と、前記導電性弾性体層上に形成された前記フッ素樹脂多孔質体層と、で構成したことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電ロール。
【請求項4】
ロール軸体と、前記ロール軸体の外周面に形成された導電性弾性体層と、前記導電性弾性体層上に形成された中間層と、前記中間層上に形成された前記フッ素樹脂多孔質体層と、で構成したことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用帯電ロール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用帯電ロールを備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−91185(P2006−91185A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274168(P2004−274168)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】