説明

電子写真用弾性ローラの製造方法

【課題】加熱時の付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面の酸化を低減し、弾性層の表面電流の低下を小さくすることで濃度ムラが良好な電子写真用弾性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】軸芯体1と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層2と、該弾性層の周囲に形成されてなる被覆層3とを有する電子写真用弾性ローラの製造方法において、(1)該軸芯体1の周囲に未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物組成物の塗布層を形成する工程と、(2)該塗布層の表面に酸化防止剤を付着させる工程と、(3)該工程(2)によって得られた該塗布層を、100〜280℃の温度で加熱硬化させて該弾性層を形成する工程と、を有することを特徴とする電子写真用弾性ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用画像形成装置に使用する電子写真用弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真用画像のより一層の高濃度化や均一性が要求されてきている。かかる要求に対して、特許文献1には、現像ローラ上のトナーを規制する現像ブレードに現像ローラよりも高いバイアスを印加する画像形成プロセスが提案されている。このように、現像ブレードにバイアスを印加する画像形成プロセスにおいては、従来の現像ローラと現像ブレードに同じバイアスを印加するプロセスと異なり、現像ローラの弾性層の電気抵抗の制御が重要となってくる。すなわち、現像ローラの弾性層の表面電流が低いと、わずかな電流ムラでも現像ブレードのバイアスの影響を受けて現像ローラの表面に電荷の分布ができ、その結果、現像バイアスに差が生じて濃度ムラが発生する場合があるからである。そこで、濃度ムラを防ぐには現像ローラの弾性層の電流をある一定以上にすることにより電荷の蓄積を抑制することが有効である。しかし、付加型液状シリコーンゴム組成物を含む弾性層形成用材料を加熱硬化させることにより形成されてなる弾性層においては、当該付加型液状シリコーンゴム組成物の加熱硬化の条件によっては、弾性層の表面電流が低くなることがあった。本発明者等の検討によれば、弾性層の表面電流が低下する原因は、付加型液状シリコーンゴム組成物を空気中など、酸素濃度が比較的高い雰囲気下で加熱硬化させたときに、表面層の表面に絶縁性の酸化膜が形成されることによって生じているためであることを見出した。ここで、付加型液状シリコーンゴム組成物の酸化を防ぐ方法として、特許文献2には、硬化前の付加型液状シリコーンゴム組成物に酸化防止剤を混合、分散させる方法が開示されている。また、特許文献3には、酸化防止剤を溶解させた溶液に硬化後の付加型液状シリコーンゴム組成物を含浸させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−112212号公報
【特許文献2】特開2005−344102号公報
【特許文献3】特開平09−001697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、上記特許文献2及び3に開示の方法を検討したところ、弾性層の表面電流の低減を抑える効果は極めて限定的であった。すなわち、弾性層の表面への酸化膜の形成が、必ずしも有効には抑えられていないとの知見を得た。
【0005】
そこで、本発明の目的は、付加型液状シリコーンゴム組成物の塗膜を加熱硬化させて形成してなる弾性層を備え、かつ、該弾性層の表面電流が十分に高い電子写真用弾性ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願に係る発明は、軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、該弾性層の周囲に形成されてなる被覆層とを有する電子写真用弾性ローラの製造方法において、
(1)該軸芯体の周囲に未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層を形成する工程と、
(2)該塗布層の表面に酸化防止剤を付着させる工程と、
(3)該工程(2)によって得られた該塗布層を加熱硬化させて該弾性層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、付加型液状シリコーンゴムから弾性層を形成する電子写真用弾性ローラの製造方法において、加熱時の付加型液状シリコーンゴムの塗布層表面の酸化を低減し、弾性層の電流低下を小さくすることが可能な製造方法を提供することができる。すなわち、加熱硬化前の付加型液状シリコーンゴムの塗布層の表面に酸化防止剤を付着させることで、加熱硬化時の塗布層表面の酸化が抑制され、その結果、弾性層の表面電流の低下が抑えられる。また、塗布層表面だけに酸化防止剤を偏在させることができる。そのため、酸化防止剤を過剰に配合する必要がなく、酸化防止剤のブルームを有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の電子写真用弾性ローラの一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の弾性層の形成に適用した製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施例における弾性層の表面電流の測定方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明の電子写真用弾性ローラは、軸方向に直交する方向の断面図である図1に示したように、軸芯体1、軸芯体1の外周上に形成された弾性層2を有する。また、形成された弾性層2の外周上に被覆層3が形成されている。
【0010】
<軸芯体>
軸芯体1を構成する材料としては以下の材料が挙げられる。鉄、鋼、アルミニウム、チタン、銅及びニッケルの合金やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅の合金、さらにカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料の剛直で導電性を示す公知の材料。また、形状としては円柱状でも中心部分を空洞とした円筒状でもよい。
【0011】
<弾性層>
弾性層2を形成するゴムとしては、付加型の液状シリコーンゴムを使用する。付加型液状シリコーンゴムは、アルケニル基を含有するポリシロキサンとヒドロシリル基を含有するハイドロジェンポリシロキサンが白金触媒の存在下、付加反応して架橋することで硬化する。アルケニル基を含有するポリシロキサンの分子量としては特に限定されないが、3万以上100万以下が好ましい。ポリシロキサンのアルケニル基は1分子中に少なくとも2個有ることが望ましい。アルケニル基の種類は特に限定されないが、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基及びアリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。なお、本発明での分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときの重量平均分子量である。すなわち、40℃のヒートチャンバー内で安定化させたカラムに溶媒としてトルエンを毎分0.5mlの流速で流し、0.1〜0.3質量%に調整した試料溶液を50〜200μl注入した。そして、数種の単分散ポリスチレン標準試料で作成した検量線から試料の重量平均分子量を算出した。
【0012】
ヒドロシリル基を含有するハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤として働く。一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上であり、硬化反応を最適に行わせるためには3個以上であることが好ましい。ハイドロジェンポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、1000以上10000以下が好ましく、硬化反応を適切に行わせるためには比較的低分子量の1000以上5000以下が特に好ましい。付加型液状シリコーンゴムのハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、ポリシロキサン中のアルケニル基数に対してハイドロジェンポリシロキサン中のヒドロシリル基数が、1.0倍以上3.0倍以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内とすることによって、シリコーンゴムの架橋が少なくなることによる圧縮永久歪の悪化を有効に抑えられる。また、ヒドロシリル基が過剰に残留することが避けられるため、経時での電子写真用弾性ローラの硬度、表面電流の変化が有効に抑制できる。
【0013】
付加型液状シリコーンゴムの触媒としては、ポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンの付加反応において触媒作用を示す白金触媒が使用できる。その具体例としては、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金トリフェニルホスフィン錯体が挙げられる。触媒の配合量に関しては、ポリシロキサン100質量部に対し、白金元素量として1ppm以上1000ppm以下が好ましい。弾性層には導電性を付与する目的で導電剤を添加することができる。添加する導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、またはイオン導電剤であるアルカリ金属塩、及びアンモニウム塩の微粒子を用いることもできる。これらの内、カーボンブラックは比較的容易に入手できるので好適に利用できる。更に、電子写真用弾性ローラの具体的な用途に応じて、弾性層自体に要求される機能に必要な成分として非導電性充填剤を適宜配合することができる。非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸アルミニウム、タルク、アルミナ、酸化鉄が挙げられる。
【0014】
軸芯体1の表面に弾性層2を形成する方法としては、リング状塗工ヘッドを用いて付加型液状シリコーンゴムを軸芯体の周囲に吐出塗工した後、加熱硬化させる方法が好適である。金型に付加型液状シリコーンゴムを注入して加熱硬化させる方法に比べて装置が小型で済み、また金型のメンテナンスや交換が必要ないため、安価に製造できる。リング状塗工ヘッドを用いた成形方法においては、付加型液状シリコーンゴムの粘度は5000Pa・s以上20000Pa・s以下であることが好ましい。粘度を上記範囲とすることにより、軸芯体の外周上に未硬化の付加型液状シリコーンゴムの塗布層を形成した際にも垂れが生じにくい。また、リング状塗工ヘッドから吐出するときの高せん断速度域でも付加型液状シリコーンゴムの粘度が高くなりにくいため、均一に吐出することが可能である。なお、ここでの付加型液状シリコーンゴムの粘度は粘弾性測定装置(Haake製Rheo Stress600)を使って次のようにして求められる。付加型液状シリコーンゴム約1gを採取して23℃に設定した試料台の上に載せ、φ35mm、傾斜角度1°のコーンプレートを試料台との間隔が52μmになるように上から押し付ける。試料台から押し出された試料を除去して3分間放置した後、試料にせん断速度を0.001(1/s)から1000(1/s)へと60秒かけて加えたときの0.01(1/s)のときの粘度である。
【0015】
ここで、本発明に好適に用いることができるリング状塗工ヘッドを有するリングコート機の概略説明図を図2に示す。図2に示す塗工装置においては、架台4の上に略垂直にコラム5が取り付けられ、さらに架台4とコラム5の上部に精密ボールネジ6が略垂直に取り付けられている。また、精密ボールネジ6と平行に2本のリニアガイド7がコラム5に取り付けている。LMガイド8はリニアガイド7及び精密ボールネジ6と連結し、サーボモータ9よりプーリ10を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。コラム5には、円筒状の軸芯体1の外周面に塗布液を吐出するリング形状の塗工ヘッド11が取り付けられている。さらにLMガイド8上にブラケット12が取り付けられ、このブラケット12には軸芯体1を保持し固定するワーク下保持具13とワーク上保持具14が取り付けられている。リング形状の塗工ヘッド11の中心軸は、ワーク下保持具13とワーク上保持具14の移動方向と平行となるように支持されている。また、ワーク下保持具13及びワーク上保持具14が昇降移動時において、塗工ヘッド11の内側に開口した環状スリットになっている吐出口の中心軸と、ワーク下保持具13及びワーク上保持具14の中心軸が略同芯になるように調節してある。このような構成により塗工ヘッド11の環状スリットになっている吐出口の中心軸を軸芯体1の中心軸に略同芯に合わせることができ、リング形状の塗工ヘッドの内周面と軸芯体1の外周面との間に均一な隙間が形成される。また、塗布液の供給口15は、塗布液搬送用の配管16を介して材料供給弁17に接続されている。材料供給弁17は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の塗布液を吐出可能なものとしている。付加型液状シリコーンゴムは材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合された付加型液状シリコーンゴムは、材料供給弁17から配管16を経由して、供給口15に送られる。供給口15より送り込まれた付加型液状シリコーンゴム組成物は、リング型の塗工ヘッド11内の流路を通り、リング型の塗工ヘッド11のノズルから吐出される。シリコーンゴムの肉厚を一定にするために、リング状塗工ヘッドノズルからの吐出量と材料供給ポンプからの供給量は一定にする。保持されている軸芯体1を垂直方向に上方へ移動させることで、軸芯体1は塗工ヘッド11に対して相対的に軸方向に移動し、軸芯体1の外周上に付加型液状シリコーンゴム組成物からなる円筒状の塗布層2が形成される。
【0016】
本発明では、円筒状に形成された未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面に酸化防止剤を付着させた後、加熱することで付加型液状シリコーンゴム組成物を硬化させる。すなわち、加熱する前に未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面に酸化防止剤を付着させることで、加熱時の塗布層表面の酸化を低減することができる。また、塗布層表面だけに酸化防止剤を偏在させることができるため、酸化防止剤を過剰に配合する必要がなく、酸化防止剤が染み出して周辺部材を汚染することもなくなる。酸化防止剤を付着させる前の未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層は、完全に硬化していなければ半硬化の状態でもよく、流動性を有していれば効果を発揮できる。なお、酸化防止剤が付着して酸化膜ができなかった部分が被覆層との電気的な接点となるので、酸化防止剤は付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面にある程度付着していればよく、必ずしも塗布層表面全体を覆う必要はない。
【0017】
上記のようにして酸化防止剤を付着させた付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層を加熱硬化させて弾性層を形成する。加熱温度は、100℃〜280℃が好ましい。加熱温度を上記の温度範囲とした場合、付加型液状シリコーンゴム組成物の硬化反応が、付加型液状シリコーンゴム組成物の粘度が熱によって低粘度化の速度よりも遅くすることができるため、加熱中に形状が崩れることを抑制することができる。また、加熱硬化時の付加型液状シリコーンゴム組成物や酸化防止剤の分解を有効に抑えられる。なお、本発明での加熱温度は、加熱中の付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面を放射温度計(ジャパンセンサー製TMZ52S−500−10E1.8)で測定したときの温度である。
【0018】
付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層に付着させる酸化防止剤については硬化阻害を起こさなければ特に規定はないが、耐熱性のあるフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、以下のものが挙げられる。2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸)ペンタエリトリトール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート。酸化防止剤は、1種単独でも2種以上組み合わせても用いることもできる。
【0019】
粉末の酸化防止剤はそのまま付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層にまぶすこともできるが、本発明では酸化防止剤を有機溶剤に溶解させて溶液にした後、付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層に噴霧するのが好ましい。溶液にすることで酸化防止剤が均一に分散されるため、酸化防止剤を直接付着させるよりも少量で同じ効果を発揮することができる。酸化防止剤の溶液を噴霧する方法としては、噴霧する液滴の大きさや噴霧量を簡単に調整することが可能なスプレー法が好適である。酸化防止剤を溶解させる有機溶剤としては、未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物との親和性があまり高くなく、かつ酸化防止剤が溶解すれば特に規定はないが、ヘキサン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトンは容易に入手できることから好ましい。これらの有機溶剤は1種単独でも2種類以上の混合溶液でもよい。酸化防止剤の溶液の濃度としては、3質量%以上10質量%以下にすることが好ましく、また溶液を付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%以上100%以下の面積に付着するように噴霧することが好ましい。さらに付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積については10%以上60%以下がさらに好ましい。溶液の濃度を上記範囲内とすることによって、塗布層表面の単位面積あたりの酸化防止剤の付着量を十分なものとすることができ、弾性層の表面への酸化層の形成を有効に抑制できる。なお、ここでの塗布層表面積とは被覆層が設けられる領域の塗布層の表面積のことである。例えば、弾性ローラの形状を半径R、長さLの円柱と見なした場合、円柱の側面部分に当たる領域しか被覆層を設けないときの塗布層表面積は、2πR×Lとなる。
【0020】
酸化防止剤を付着させた付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層は加熱処理され、弾性層となる。熱源としては、付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層を非接触で加熱できる遠赤外セラミックヒータ、近赤外線ヒータ、ランプ加熱ヒータ、UVヒータ、マイクロヒータが望ましい。
【0021】
本発明では上記のようにして形成された弾性層2の外周上に用途に応じた被覆層3を設ける。被覆層3を形成する材料としては、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、またはオレフィン樹脂が挙げられる。
【0022】
被覆層3には、個別的な用途に合わせて体積平均粒子径が1〜20μmの微粒子を分散させることもできる。このような微粒子としては、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、またはフェノール樹脂微粒子が挙げられる。
【0023】
被覆層3は、電子写真用弾性ローラ全体の電気抵抗を調整するために導電剤を配合することができる。導電剤としては、各種電子伝導機構を有する導電剤であるカーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、またはイオン導電剤であるアルカリ金属塩、及びアンモニウム塩の微粒子を用いることができる。
【0024】
これらの被覆層3を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、またはパールミルのビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して分散させることができる。得られた分散液を塗工する方法は特に規定はないが、操作が簡便なことからスプレー塗工法やディッピング法が好適である。
【0025】
次に、本発明の電子写真用弾性ローラを有する画像形成装置の一例を図3を用いて説明する。
【0026】
図3に示す画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する電子写真プロセスカートリッジ18が4個あり、タンデム方式で設けられている。
【0027】
現像装置22は、感光ドラム19と対向設置された現像ローラ27と現像剤25を収容した現像容器26を備えている。さらに、現像ローラ27に現像剤25を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ27に残っている現像剤25を掻き取る現像剤供給ローラ28及び現像ローラ27上の現像剤25の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード29が設けられている。
【0028】
感光ドラム19は、帯電ローラ20により所定の極性、電位に一様に帯電される。画像情報がビーム21として帯電された感光ドラム19の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に現像ブレード29に印加されたバイアスにより均一に現像ローラ27上にコートされた現像剤25が現像ローラ27から供給され、感光ドラム19表面に現像剤像が形成される。ここで、現像ブレード29に印加されるバイアスは、現像ローラ27のバイアスより数百V高い電圧が一般的である。画像転写装置24は、転写搬送ベルト31が駆動ローラ32、テンションローラ33及び従動ローラ34で張架され、転写搬送ベルト31の内側には感光ドラム19と対向した位置に転写ローラ36が設置されている。そして、静電吸着ローラ35にバイアスを印加することで転写搬送ベルト31の外周面に転写材30を静電吸着させ、転写材30を搬送する。転写材30が転写位置まで搬送されたら、転写ローラ36に感光ドラム19表面の現像剤像とは逆極性のバイアスを印加する。これによって、転写材30に現像剤像が転写される。
【0029】
現像剤像が転写された転写材30は、転写搬送ベルト31から定着装置37に送られ、現像剤像が転写材30に定着されて、印画が完了する。一方、現像剤像の転写材30への転写が終わった感光ドラム19はさらに回転し、クリーニング装置23により感光ドラム19表面がクリーニングされる。本発明の電子写真用弾性ローラは、上記の現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラに使うことができる。また、上記の画像形成装置以外に、中間転写方式の画像成形装置にも使うことができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明は下記実施例に制限されるものではない。まず、実施例、比較例で行った各種測定方法について説明する。
【0031】
[溶液の噴霧面積の測定方法]
溶液の噴霧面積は、溶液を付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面に噴霧した後、1分以内にキーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−200で塗布層表面を撮影して求めた。
【0032】
[弾性層の表面電流の測定方法]
図4に示すように、温度23℃、湿度50%RHの環境下、4.5mmの間隔で配置された直径12mmの電極用金属製ローラ2本の上に被覆層を形成する前の電子写真用弾性ローラを押し当てた。続いて、金属製ローラを60rpmで回転させて電子写真用弾性ローラを従動回転させた。この状態で、直流電源より20Vの電圧を2本の金属製ローラ間に5秒間印加したときの電流を測定した。
【0033】
[濃度ムラの評価方法]
ヒューレット・パッカード製HP Color LaserJet 3600を次のように改造したレーザービームプリンタを用いた。すなわち、現像ブレードとしてリン青銅のブレードを用い、この現像ブレードに現像ローラより200V高い電圧を印加できるように改造した。この改造したレーザービームプリンタのマゼンタの電子写真プロセスカートリッジに、被覆層を形成した電子写真用弾性ローラを組み込んだ。23℃、55%RHの環境下でハーフトーンの画像を出力し、濃度ムラを評価した。画像上に全く濃度ムラが見られない場合をA、画像の一部に濃度ムラが見られる場合をB、現像ローラピッチで濃度ムラが見られる場合をCとした。
【0034】
<実施例1>
[弾性層の調製]
直径6mm、長さ250mmの快削鋼製の軸芯体に、シリコーンゴムとの接着性を向上させる目的で、プライマー(東レ・ダウコーニング製DY39−051)を塗付し、150℃で30分間焼付けを行った。
【0035】
下記の材料を配合してベース材料を調製した。
・ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量4万、両末端にビニル基が置換し、主鎖の99mol%以上がジメチルポリシロキサンの繰り返し単位からなるもの)100質量部。
・カーボンブラック(Columbian Chemical製Raven890)10質量部。
【0036】
このベース材料に、さらに以下の材料を配合し、付加型液状シリコーンゴム組成物とした。
・塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体(硬化触媒として)1質量部。
・メチルハイドロジェンポリシロキサン;前記ビニル基が置換したジメチルポリシロキサンに含有するビニル基1モルに対して、ヒドロシリル基が1.2モルとなる量。
【0037】
図2に示すリング状塗工ヘッドを有するリングコート機の軸芯体保持軸(軸芯体上保持軸10及び軸芯体下保持軸9)に外径φ6mmの軸芯体を垂直にセットした。軸芯体保持軸を垂直に60mm/sで上昇させて軸芯体を移動させると同時に、付加型液状シリコーンゴム組成物を吐出し、軸芯体の外周に長さ230mm、厚さ3mmの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層を形成した。付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の粘度は、10000Pa・sであった。
【0038】
次にテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールをキシレンに溶解させて6質量%の溶液を調製した。付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層を30rpmで回転させながらスプレーガンでこの溶液が付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して30%付着するように噴霧した。酸化防止剤を付着させた付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層を60rpmで回転させながら赤外線加熱ランプ(ハイベック製HYL25)を出力1000Wで4分間照射し、硬化させた。赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度は200℃であった。その後、硬化した付加型液状シリコーンゴム組成物中の反応残渣及び未反応低分子を除去する目的で、200℃、4時間、熱風で加熱して厚みが3mmの弾性層を得た。
【0039】
得られた弾性層の表面電流を測定したところ、93μAであった。
【0040】
[被覆層の調製]
以下の材料にMEK120質量部を添加したものを調製した。
・ポリウレタンポリオールプレポリマー(三井武田ケミカル製タケラックTE5060)100質量部。
・イソシアネート(日本ポリウレタン製コロネート2521)77質量部。
・カーボンブラック(三菱化学製MA−100)20質量部。
【0041】
ボールミルにて5時間分散回転させた後、ウレタン微粒子(根上工業製アートパールC−400透明)6部を加えて再度1時間分散回転させた。この溶液に得られた弾性層を浸漬させて塗膜を形成し、風乾後、温度140℃で4時間の熱風処理によって厚みが30μmの被覆層を形成した。なお、被覆層の厚さはローラの一部を切り取り、キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−200で撮影し、ウレタン微粒子が存在しない部分の厚みを被覆層の厚みとした。これを現像ローラとしてレーザービームプリンタの電子写真プロセスカートリッジに組み込み、ハーフトーンの画像を出力したところ、濃度ムラは全く見られなかった。これらの結果を表1にまとめた。
【0042】
<実施例2>
付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層にテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール500mgの粉末をまぶして付着させた以外は実施例1と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0043】
<実施例3>
ジメチルポリシロキサンの重量平均分子量を3万にし、赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を280℃になるようにした以外は実施例2と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0044】
<実施例4>
ジメチルポリシロキサンの重量平均分子量を6万にした以外は実施例3と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0045】
<実施例5>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は実施例3と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0046】
<実施例6>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は実施例4と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0047】
<実施例7>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を280℃になるようにした以外は実施例2と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0048】
<実施例8>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は実施例2と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0049】
<実施例9>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールを3質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して60%付着するように噴霧した。また、赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を280℃になるようにした。これらの変更以外は実施例1と同様に弾性層を得た。
【0050】
<実施例10>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールを10質量%の溶液に調製した以外は実施例9と同様に弾性層を得た。
【0051】
<実施例11>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールの溶液を付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%付着するように噴霧した以外は実施例9と同様に弾性層を得た。
【0052】
<実施例12>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールの溶液を付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%付着するように噴霧した以外は実施例10と同様に弾性層を得た。
【0053】
<実施例13>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は実施例9と同様に弾性層を得た。
【0054】
<実施例14>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は実施例10と同様に弾性層を得た。
【0055】
<実施例15>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は実施例11と同様に弾性層を得た。
【0056】
<実施例16>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は実施例12と同様に弾性層を得た。
【0057】
<実施例17>
酸化防止剤を2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)にした以外は実施例3と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0058】
<実施例18>
酸化防止剤を2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)にした以外は実施例6と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0059】
<実施例19>
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を10質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して60%付着するように噴霧した以外は実施例17と同様に弾性層を得た。
【0060】
<実施例20>
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を3質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%付着するように噴霧した以外は実施例17と同様に弾性層を得た。
【0061】
<実施例21>
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を10質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して60%付着するように噴霧した以外は実施例18と同様に弾性層を得た。
【0062】
<実施例22>
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を3質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%付着するように噴霧した以外は実施例18と同様に弾性層を得た。
【0063】
<実施例23>
酸化防止剤をn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートにした以外は実施例4と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0064】
<実施例24>
酸化防止剤をn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートにした以外は実施例5と同様に弾性層を得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0065】
<実施例25>
n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを3質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して60%付着するように噴霧した以外は実施例23と同様に弾性層を得た。
【0066】
<実施例26>
n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを10質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%付着するように噴霧した以外は実施例23と同様に弾性層を得た。
【0067】
<実施例27>
n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを3質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して60%付着するように噴霧した以外は実施例24と同様に弾性層を得た。
【0068】
<実施例28>
n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを10質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%付着するように噴霧した以外は実施例24と同様に弾性層を得た。
【0069】
<実施例29>
n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを3質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して100%付着するように噴霧した以外は実施例24と同様に弾性層を得た。得られた弾性層の表面電流を測定したところ、105μAであった。
【0070】
さらに実施例1と同様に被覆層を形成した後、現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、ハーフトーンの画像を出力したところ、濃度ムラは全く見られなかった。
【0071】
<実施例30>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールを1質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して70%付着するように噴霧した。それ以外は実施例1と同様に弾性層を得た。弾性層表面には未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物がキシレンに溶け出したことによる微小の凹部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0072】
<実施例31>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールを20質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して70%付着するように噴霧した。それ以外は実施例1と同様に弾性層を得た。弾性層表面には未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物がキシレンに溶け出したことによる微小の凹部と、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0073】
<実施例32>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールを1質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して5%付着するように噴霧した。それ以外は実施例1と同様に弾性層を得た。
【0074】
<実施例33>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールを20質量%の溶液に調製して付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して5%付着するように噴霧した。それ以外は実施例1と同様に電子写真用弾性ローラを得た。弾性層表面には、酸化防止剤による微小な凸部が一部に見られたが、被覆層の形成後は特に問題はなかった。
【0075】
上記実施例2〜32に係る弾性層について、実施例1と同様にして表面電流を測定した。その結果を下記表1に示す。また、実施例1と同様に被覆層を形成した後、現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、ハーフトーンの画像を出力し、当該画像の濃度ムラについて評価した。評価結果を表1に示す。
【0076】
<比較例1>
テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトールを付着させなかった以外は実施例1と同様に弾性層を得た。
【0077】
<比較例2>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を280℃になるようにした以外は比較例1と同様に弾性層を得た。
【0078】
<比較例3>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を100℃になるようにした以外は比較例1と同様に弾性層を得た。
【0079】
<比較例4>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を320℃になるようにした以外は実施例2と同様に弾性層を得た。
【0080】
上記比較例1〜4に係る弾性層について、実施例1と同様にして表面電流を測定した。その結果を下記表1に示す。また、実施例1と同様に被覆層を形成した後、現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、ハーフトーンの画像を出力し、当該画像の濃度ムラについて評価した。評価結果を表1に示す。
【0081】
<比較例5>
赤外線加熱ランプを照射したときの付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層の表面温度を60℃になるようにした。それ以外は実施例2と同様にしたところ、加熱中に付加型液状シリコーンゴム組成物が垂れてしまい、継続して評価できるほどの形状精度を有する弾性層は得られなかった。
【0082】
【表1】

【符号の説明】
【0083】
1:軸芯体
2:弾性層
3:被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、該弾性層の周囲に形成されてなる被覆層とを有する電子写真用弾性ローラの製造方法において、
(1)該軸芯体の周囲に未硬化の付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層を形成する工程と、
(2)該塗布層の表面に酸化防止剤を付着させる工程と、
(3)該工程(2)によって得られた該塗布層を加熱硬化させて該弾性層を形成する工程と、を有することを特徴とする電子写真用弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記酸化防止剤は、濃度が3質量%以上10質量%以下の溶液になっており、前記溶液を前記付加型液状シリコーンゴム組成物の塗布層表面積に対して10%以上100%以下の面積に付着させる請求項1に記載の電子写真用弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−217313(P2010−217313A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61536(P2009−61536)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】