説明

電子写真用弾性ローラの製造方法

【課題】寸法精度、特には振れの小さいローコストな電子写真用弾性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】
軸芯体の両端部を鉛直方向に把持固定し中心軸の傾きを補正し、環状スリットを有する環状塗工ヘッドを用いて、軸芯体を鉛直方向に移動させ環状スリットから未硬化の弾性層材料を吐出して軸芯体外周上に塗工し硬化させる電子写真用弾性ローラの製造方法において、
前記吐出塗工前に、軸芯体の中心軸を基点座標として軸芯体の長手方向における最大振れ座標を検出する軸芯体振れ座標検出工程;
前記吐出塗工時に、環状塗工ヘッドの中心位置を基点座標から最大振れ座標の方向に一定の割合で移動し、最大振れ座標を検出した軸芯体の長手方向位置に環状塗工ヘッドが到達した後は環状塗工ヘッドの中心位置を基点座標の方向に一定の割合で移動する塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程;
を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複写機等の画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジに用いられる電子写真用弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真記録装置について、以下に説明する。この装置の本体内部には画像形成部が設置され、画像がクリーニング、帯電、潜像、現像、転写、定着のプロセスを経て形成される。画像形成部は像担持体である感光ドラム、クリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部及び転写部を備えている。この画像形成部で形成された感光ドラム上の画像は転写部材により、記録材に転写され、搬送された後、定着部にて加熱、加圧され定着された記録画像として排出される。
【0003】
電子写真方式を用いたプリンターにおいて、感光ドラムは帯電ローラにより均一に帯電され、レーザー等により静電潜像を形成する。次に、現像容器内の現像剤が現像剤塗布ローラ及び現像剤規制部材により適正電荷で均一に現像ローラ上に塗布され、感光ドラムと現像ローラとの接触部で現像剤の転写(現像)が行われる。その後、感光ドラム上の現像剤は、転写ローラにより記録紙に転写され、熱と圧力(加圧ローラと定着ローラ)により定着され、感光ドラム上に残留した現像剤はクリーニングブレードによって除かれ、一連のプロセスが完了する。
【0004】
電子写真装置において、例えば現像ローラの場合、常時感光ドラム及び現像剤規制部材に圧接された状態にあり、現像を行う際には現像ローラと感光ドラム、現像ローラと現像剤規制部材の間に現像剤が介在して圧接している。感光ドラムに転写されない現像剤は、現像剤塗布ローラによって剥ぎ取られ再度現像容器内に戻り、容器内で攪拌され再び現像剤塗布ローラによって現像ローラ上に搬送される。これらの工程を繰り返すうちに現像剤は大きなストレスを受けるという結果になる。そこで、現像剤へのストレスを軽減するという目的から現像ローラは適度な弾性を有する材料で形成されている。また、現像ローラや帯電ローラの場合、常に他部材と接触した状態で回転しているので、接触状態を安定に保つ必要があるためにローラとして高い寸法精度が必要とされる。接触状態を安定に保つことができないと現像剤の供給量がばらついたり、感光ドラムに対する圧力分布がばらつくなどして画像に影響を及ぼす場合がある。
【0005】
また近年、電子写真のカラー化及び高画質化のニーズが高まり、電子写真用弾性ローラの外形寸法や厚み精度の高精度化(振れの抑制)が厳しく要求されている。例えば、接触式現像方式において、現像ローラは上述したように、感光ドラム表面に対し接触しているため、外形寸法や厚み精度が正確でないと、感光ドラムとローラ間のニップ幅やニップ力に変動が生じ濃度ムラ等の画像欠陥が発生する。
【0006】
このような接触現像方式に用いられる現像ローラとしては、軸芯体の周囲に弾性層を設けた構成の弾性ローラとなっている。さらに必要に応じて、弾性層の外周に表面性を付与するために各種の樹脂溶液を塗布し、表面層を設けた構成の弾性ローラもある。
【0007】
従来、弾性ローラを製造するため、金型を用いた成形方法が用いられることが多い。また、金型を使用せずに軸芯体の外周上に弾性層材料を成形する方法としては、例えば、スプレー塗工法、浸漬塗工法、ロール塗工法、ブレード塗工法、環状塗工槽で塗工する方法、環状塗工ヘッドを用いた塗工法等種々検討されている。
【0008】
これら従来の塗工方法においては、数ミリ程度の厚みの弾性層を達成するためには、高粘度の弾性層材料を溶媒により希釈し、その弾性層材料を、塗工に必要な粘度にまで下げた状態で塗工する。その後、弾性層材料の希釈に使用した溶媒を、例えば、蒸発等により、除去して弾性層を形成する。しかし、形成された弾性層上にさらに弾性層材料を上塗り及び溶媒の除去といった工程を繰り返すしかなく、非常に生産性が低い。また、このように製造された弾性ローラは、多数の工程を繰り返すために、寸法精度や振れ(厚み精度)が公差の積み上げで、弾性ローラとしての寸法精度や振れ(厚み精度)の制御が困難であった。
【0009】
高粘度の弾性層材料を軸芯体に直接塗工する方法として、環状塗工ヘッドを用いた塗工方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法では、軸芯体と、リング形状の塗工ヘッドとを、塗工ヘッドの内周面と軸芯体の外周面との間に均一な隙間が形成されるように配置する。この方法は、軸芯体と塗工ヘッドとを移動させながら、塗工ヘッドから未硬化弾性層材料を吐出させて、軸芯体の周囲に未硬化弾性層を形成する工程と、未硬化の弾性層を硬化して弾性層とする工程とを有する。また、前記未硬化弾性層材料が、降伏応力が50Pa以上、600Pa以下であり、かつチキソトロピーインデックスが2.0以上、6.5以下である非ニュートン性液状の材料である。これによれば、より容易な装置で軸芯体の外周上に弾性層材料を直接塗工して、良好かつ均一な弾性層を数ミリ程度の層厚で、形成することができる。
【0010】
さらに、他の方法としては、まず、軸芯体を上下端部で把持固定し、該軸芯体の把持固定による軸芯体の両端部の傾きを補正する。その後、内側に開口した環状スリットを有する塗工ヘッドを用いて、該塗工ヘッドを該軸芯体に対し相対的に移動させ、該軸芯体外周上に該環状スリットから、粘度10〜5000Pa・sの未硬化の弾性層材料を吐出塗工する。その後、硬化させることにより弾性ローラを製造する方法である(例えば、特許文献2参照)。これによれば、高画質化などにより、要求高寸法精度に対し、ある程度の寸法精度、特には弾性層の厚み精度の良い弾性ローラを製造することができる。
【0011】
これらの方法によれば、金型成形のように、高精度な金型を多数必要とすることもないので、生産設備コストの大幅な抑制を可能とし、工程が少ないために生産設備の小型化を実現できる。これにより、低コストで寸法精度の良い弾性ローラを成形することができるが、電子写真のカラー化及び高画質化のニーズに対し、更なる改良が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−293015号公報
【特許文献2】特開2008−164987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、寸法精度、特には振れが小さく(弾性層の厚み精度が良く)、また繰返し再現性が良い安定したローコストな電子写真用弾性ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電子写真用弾性ローラの製造方法は、
軸芯体の両端部を鉛直方向に把持固定し、該軸芯体の把持固定による鉛直方向に対する軸芯体の両端面中心を結ぶ中心軸の傾きを補正し、内側に開口した環状スリットを有する環状塗工ヘッドを用いて、該軸芯体を該環状塗工ヘッドに対し鉛直方向に相対的に移動させると共に、該環状スリットから未硬化の弾性層材料を吐出して該軸芯体の外周上に塗工し、硬化させる電子写真用弾性ローラの製造方法において、
前記弾性層材料の吐出塗工前に、前記軸芯体の中心軸を基点座標として、把持固定された前記軸芯体の長手方向における最大振れ座標を検出する軸芯体振れ座標検出工程;
前記弾性層材料の吐出塗工時に、前記環状塗工ヘッドの中心位置を、前記基点座標から前記最大振れ座標の方向に一定の割合で移動し、
前記最大振れ座標を検出した軸芯体の長手方向位置に前記環状塗工ヘッドが到達した後は、前記環状塗工ヘッドの中心位置を前記基点座標の方向に一定の割合で移動する塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程;
を有することを特徴とする。
また、前記軸芯体振れ座標検出工程を、前記軸芯体の長手方向の中央部で行うことを特徴とする。
また、前記塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程は、前記環状塗工ヘッドが固定されているXYステージにより環状塗工ヘッドを移動して行うことを特徴とする。
また、前記軸芯体の個体別に、前記軸芯体振れ座標検出工程及び塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程を繰り返すことを特徴とする。
また、前記未硬化の弾性層材料の粘度が、10〜5000Pa・sであることを特徴とする。
また、前記環状塗工ヘッドの最大移動量が、前記基点座標から前記最大振れ座標の1%以上、80%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、寸法精度、特には振れが小さく(弾性層の厚み精度が良く)、また繰返し再現性が良い安定したローコストな電子写真用弾性ローラの製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るリングコート機の概略を表す断面図である。
【図2】本発明に係る軸芯体上保持軸の位置座標を基準とした環状塗工ヘッドの位置の補正方法の一例を示す概略説明図である。
【図3】本発明に係る弾性ローラの製造方法の概略説明図である。
【図4】本発明に係る弾性ローラの製造方法の概略説明図である。
【図5】本発明に係る弾性ローラの製造方法の概略説明図である。
【図6】本発明に係る最大振れ座標の方向及び基点座標の方向の概略説明図である。
【図7】本発明に係る弾性ローラを備える画像形成装置の一例の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による電子写真用弾性ローラ(以下、単に弾性ローラと示す場合有り)の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る電子写真用弾性ローラの製造方法は、
軸芯体の両端部を鉛直方向に把持固定し、該軸芯体の把持固定による鉛直方向に対する軸芯体の両端面中心を結ぶ中心軸の傾きを補正し、内側に開口した環状スリットを有する環状塗工ヘッドを用いて、該軸芯体を該環状塗工ヘッドに対し鉛直方向に相対的に移動させると共に、該環状スリットから未硬化の弾性層材料を吐出して該軸芯体の外周上に塗工し、硬化させる電子写真用弾性ローラの製造方法において、
前記弾性層材料の吐出塗工前に、前記軸芯体の中心軸を基点座標として、把持固定された前記軸芯体の長手方向における最大振れ座標を検出する軸芯体振れ座標検出工程;
前記弾性層材料の吐出塗工時に、前記環状塗工ヘッドの中心位置を、前記基点座標から前記最大振れ座標の方向に一定の割合で移動し、
前記最大振れ座標を検出した軸芯体の長手方向位置に前記環状塗工ヘッドが到達した後は、前記環状塗工ヘッドの中心位置を前記基点座標の方向に一定の割合で移動する塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程;
を有することを特徴とする。
【0019】
(リングコート機)
本発明の電子写真用弾性ローラの製造方法に好適に用いることができる環状塗工ヘッドを有するリングコート機の一例の概略説明図を図1に示す。
【0020】
このリングコート機は、架台31の上に略垂直にコラム32が取り付けられ、架台31とコラム32の上部に精密ボールネジ33が略垂直に取り付けられている。また、精密ボールネジ33と平行にコラム32にリニアガイド44が2本取り付けられている。LMガイド34はリニアガイド44と精密ボールネジ33とを連結し、サーボモータ35よりプーリ36を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。コラム32には環状塗工ヘッド固定テーブル45が取り付けられている。環状塗工ヘッド固定テーブル45には、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46が取り付けられており、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46上に環状塗工ヘッド38が取り付けられている。また、環状塗工ヘッド固定テーブル45には、軸芯体101の位置及び環状塗工ヘッド38の位置を検出する光学式測長器48が、軸芯体101を介するようにしてXY方向にそれぞれ二つずつ取り付けられている。なお、XY(座標)は、一つの平面(ここでは水平面)における直交座標である。
【0021】
LMガイド34にはブラケット37が取り付けられている。ブラケット37の下部には、軸芯体位置補正XYステージ47が取り付けられている。また、軸芯体位置補正XYステージ47上に軸芯体101を保持し固定する軸芯体下保持軸39が、略垂直に取り付けられている。また、軸芯体101の上端部を保持する軸芯体上保持軸40がブラケット37の上部に取り付けられ、軸芯体上保持軸40は軸芯体下保持軸39に対して中心軸が略同心になるように配置されて軸芯体101を保持している。
【0022】
環状塗工ヘッド38は内側に開口した環状スリットを有し、該環状スリットから弾性層材料を吐出することができる。環状塗工ヘッド38は、環状塗工ヘッド38の内側に開口した環状スリットの中心軸と、軸芯体下保持軸39及び軸芯体上保持軸40の移動方向とが平行になるようにそれぞれ支持されている。また、軸芯体下保持軸39及び軸芯体上保持軸40の昇降移動時において、環状塗工ヘッド38の内側に開口した環状スリットの中心軸と、軸芯体下保持軸39及び軸芯体上保持軸40の中心軸とが略同心になるように調節されている。
【0023】
弾性層材料の供給口41は、配管42を介して材料供給弁43に接続されている。材料供給弁43は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の弾性層材料を吐出可能としている。弾性層材料は材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合された弾性層材料は、材料供給弁43から配管42を経由して、供給口41に送られる。
【0024】
供給口41より送り込まれた弾性層材料は、環状塗工ヘッド38内の流路を通り、環状塗工ヘッド38の内側に開口した環状スリットから吐出する。該環状スリットは環状塗工ヘッド38の内面全周に渡って開口している。そして、吐出された弾性層材料は軸芯体101の外周面に塗布される。弾性層材料を均一な厚さに塗布するために、環状塗工ヘッド38の環状スリットからの吐出量と材料供給ポンプからの供給量を一定にして、保持されている軸芯体101を軸方向(軸芯体101の中心軸方向)に上方へ移動させる。これにより、軸芯体101は環状塗工ヘッド38に対して相対的に軸方向に移動され、軸芯体101の外周上に弾性層材料からなる円筒形状(ロール形状)の弾性層102が形成される。
【0025】
(弾性ローラ製造の前準備)
本発明に係る方法の一例として、図1に示す環状塗工ヘッド38を有するリングコート機を用いて、本発明に係る電子写真用弾性ローラを製造する方法を以下に示す。
【0026】
電子写真用弾性ローラを製造するにあたり、まず位置の基準とする軸芯体上保持軸40又は軸芯体下保持軸39の中心が環状塗工ヘッド38の内側に開口した環状スリットの中心と一致するように環状塗工ヘッド38の位置を調整(補正)する。どちらを基準にしても良いが、通常、軸芯体上保持軸40を基準にする。以下軸芯体上保持軸40を基準とした際の補正方法について記す。
【0027】
まず、図1に示すLMガイド34を鉛直方向に移動させ、軸芯体上保持軸40の先端が光学式測長器48の測定範囲に入るように調整し、軸芯体上保持軸40の中心の位置座標(水平面におけるX及びY座標)を読み取る。
【0028】
続いて環状塗工ヘッド38の位置を補正する。環状塗工ヘッド38の位置を補正する手法として、例えば環状塗工ヘッド38の位置を接触式で求めて調整する方法や、環状塗工ヘッド38に基準となるピンを立て、環状塗工ヘッド38の位置座標を光学式測長器48によって非接触で求める方法などが挙げられる。
【0029】
一例として、軸芯体上保持軸40の位置座標を基準とした場合の環状塗工ヘッド38の位置の補正方法を、図2を用いて説明する。まず、軸芯体上保持軸40を環状塗工ヘッド38の内側に開口している環状スリットに接触できるようにLMガイド34(図2には不図示)を鉛直方向に移動させる。その後、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、図2の矢印に示すように、環状塗工ヘッド38を水平方向(X方向及びY方向)にそれぞれ動かす。環状塗工ヘッド38と軸芯体上保持軸40との接触を検出し、環状塗工ヘッド38のX方向及びY方向の移動量から、軸芯体上保持軸40の中心と環状塗工ヘッド38の中心が重なるように環状塗工ヘッド38の位置を補正する。
【0030】
具体的には、例えば、ステッピングモータにより駆動される環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、環状塗工ヘッド38を図2の矢印に示す水平方向(X方向及びY方向)にそれぞれ動かす。環状塗工ヘッド38には、軸芯体上保持軸40と接触した時に導通するように回路を組んだものを用いる。X方向及びY方向の移動において環状塗工ヘッド38と軸芯体上保持軸40とが接触(導通)した時のステッピングモータに指示した移動量をX方向及びY方向で記録する。環状塗工ヘッド38のX方向及びY方向の移動量から、軸芯体上保持軸40を基準とした環状塗工ヘッド38の中心位置を算出し、該中心位置に環状塗工ヘッド38を移動し、補正する。
【0031】
この操作により軸芯体上保持軸40の中心に軸芯体101が把持されることにより、環状塗工ヘッド38の中心座標と軸芯体101の中心軸(軸芯体の両端面中心を結ぶ軸)の座標が同一になり、均一な厚さで塗工が可能となる。
【0032】
(弾性ローラの製造)
図3及び図4を用いて本発明に係る電子写真用弾性ローラの製造方法の一例を説明する。上記のように予め環状塗工ヘッド38の位置が調整されたリングコート機において、軸芯体上保持軸40及び軸芯体下保持軸39によって軸芯体101の両端部を鉛直方向に把持固定する。本発明において、軸芯体101の両端部を鉛直方向に把持固定するとは、図3(A)に示すように軸芯体101の中心軸が鉛直方向に平行になるように軸芯体101の両端部を上下で把持固定するものである。
【0033】
次に、軸芯体101の両端部を把持固定した状態で、LMガイド34(図3には不図示)を下降する。この時、X方向光学式測長器48−1、Y方向光学式測長器48−2によって、例えば軸芯体101の長手方向位置101−1、101−2、101−3の三箇所における位置座標(水平面におけるX座標及びY座標)を検出する(図3(B))。この検出は、軸芯体101の中心軸の座標を基点座標として行う。
【0034】
ここで、軸芯体101の長手方向位置101−1及び101−3の座標は、軸芯体101の把持固定による軸芯体101の両端部の傾きを補正するための座標である。軸芯体101の長手方向位置101−1及び101−3は、軸芯体101の長さにもよるが、通常軸芯体101両端からそれぞれ好ましくは80mm以内、より好ましくは50mm以内の二点を選ぶ。軸芯体101端部により近い方が精度の面で好ましい。
【0035】
本発明においては、軸芯体101の長手方向における軸芯体101の最大振れ座標(水平面におけるX及びY座標)を検出する軸芯体振れ座標検出工程を行う。軸芯体101の両端面中心を結ぶ直線に対して軸芯体101の中心軸は通常わずかにX方向、Y方向に振れており、この振れが最大となる軸芯体101の長手方向における軸芯体101の座標(X及びY座標)を最大振れ座標とする。
【0036】
軸芯体101の長手方向位置101−2は、軸芯体101の最大振れ座標を検出する位置である。軸芯体101の長手方向位置101−2は、軸芯体101の長手方向の中央部であることが好ましい。軸芯体101において振れが最大となるのは、後述する軸芯体101の製造面から、軸芯体101中央部であることが多いためである。
【0037】
その後、軸芯体上保持軸40の下端の位置座標を、X方向光学式測長器48−1、Y方向光学式測長器48−2によって検出するまで、LMガイド34を下降させる(図3(C))。
【0038】
次に軸芯体101の長手方向位置101−1の位置座標と軸芯体101の長手方向位置101−3における位置座標との差を解消するように、差異と同じ量だけ軸芯体位置補正XYステージ47により軸芯体下保持軸39を移動させて補正する(図3(D))。これにより、軸芯体101の中心軸の傾きを補正することができる。
【0039】
また必要に応じて、軸芯体101の位置101−3における位置座標と予め測定しておいた軸芯体上保持軸40の中心座標との差に、係数を足してあるいは乗じて、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、環状塗工ヘッド38の位置を補正する(図3(D))。この係数は、弾性層材料の分子量や添加剤の種類や配合量、および環状塗工ヘッド38内の構成等に由来するもので、適宜決定すればよい。これにより、弾性層材料を塗工したときの弾性層の偏りを補正することができる。
【0040】
ここで、軸芯体101の把持固定による軸芯体101の両端部の傾きの補正、及び環状塗工ヘッド38の位置の補正を行った後の軸芯体101の中心軸のX及びY座標が、塗工を開始するにあたっての基点座標とする。
【0041】
なお、軸芯体101の中心軸の傾き補正、および環状塗工ヘッド38の位置補正により、これら補正前に検出された軸芯体101の位置101−2の座標は、その補正量に応じて計算さる。計算された座標が、軸芯体101の位置101−2の塗工時の最大振れ座標となる。
【0042】
その後、環状塗工ヘッド38から弾性層材料を吐出しながら、保持されている軸芯体101を鉛直方向に上方へ移動させることで、軸芯体101の外周上に弾性層材料からなる円筒形状(ロール形状)の層102を形成する(図4(E))。塗布終了後、軸芯体上保持軸40を上昇させ、リングコート機から軸芯体101を取り外すことで弾性ローラ(未硬化)が製造される(図4(F))。
【0043】
本発明においては、前記弾性層材料の吐出塗工時に、環状塗工ヘッド38の中心位置を、前記基点座標から前記最大振れ座標の方向に一定の割合で移動し、前記最大振れ座標を検出した軸芯体101の長手方向位置に環状塗工ヘッド38が到達した後は、環状塗工ヘッド38の中心位置を前記基点座標の方向に一定の割合で移動する塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程を有する。
【0044】
例えば、軸芯体101の長手方向位置101−2を軸芯体101の長手方向の中央部として軸芯体101の最大振れ座標を検出した場合であって、軸芯体101がX方向にのみ振れている例を図5に示す(図5(H))。軸芯体101を鉛直方向に移動させながら、塗工中に環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46で環状塗工ヘッド38の中心位置を前記基点座標から最大振れ座標の方向と同方向のX軸方向に一定の割合で移動する(図5(I))。軸芯体101の長手方向の中央部が環状塗工ヘッド38の環状スリットの位置に到達した後は、環状塗工ヘッド38の中心位置を前記基点座標方向に移動し、環状塗工ヘッド38の中心位置を基点座標に戻すことで塗工が終了する(図5(J))。
【0045】
ここで、図6を用いて、最大振れ座標の方向、基点座標の方向に関して説明する。最大振れ座標の方向とは、前記基点座標から最大振れ座標を結んだ方向である。図6に示すように、軸芯体101の長手位置101−2における最大振れ座標Aに対して、前記基点座標Bから線を結んだ方向(矢印の方向)が、最大振れ座標の方向である。一方、基点座標の方向は、最大振れ座標の方向の反対方向を示す。
【0046】
前記塗工において、環状塗工ヘッド38の環状スリットと軸芯体101の間に存在するクリアランスにより、軸芯体101と環状スリットとの間で、吐出した弾性層材料の材料圧に差が生じる。クリアランスが狭いと、材料圧が上昇し、その圧を開放するため、クリアランスが広い方、つまり材料圧が小さい方へ吐出した材料がより回り込む。その結果、クリアランスが狭い位置でより弾性層層厚が薄くなり、クリアランスが広い位置でより弾性層層厚が厚くなり、電子写真用弾性ローラとしての振れが大きくなる。したがって、本発明においては、軸芯体101の最大振れ座標の方向及び基点座標の方向に環状塗工ヘッド38を一定の割合で位置補正(移動)することで、クリアランスの幅をある程度均一の状態で弾性層材料を吐出することができる。これにより、電子写真用弾性ローラの振れを小さくすることができる。
【0047】
塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程において、環状塗工ヘッド38の環状スリット部が、軸芯体101の長手方向の基点座標位置から最大振れ座標位置に到達する間の、環状塗工ヘッド38のXY平面における移動量(最大移動量)としては、弾性層材料の分子量や添加剤の種類や配合量、及び環状塗工ヘッド38内の構成等により適宜決定すればよい。前記最大移動量は、前記基点座標から前記最大振れ座標の1〜80%であることが好ましい。1%以上であれば、軸芯体101と環状スリットとの間で、吐出した弾性層材料の材料圧の差を緩和することができる。また、80%以下であれば、軸芯体101の振れに倣った弾性層層厚となることを回避することができる。より好ましくは、5〜50%である。
【0048】
なお、前述したように、環状塗工ヘッド38の位置の補正は、環状塗工ヘッド38が固定された環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46で行うことが、更なる設備の追加が不要であるため好ましい。
【0049】
本発明は、軸芯体101の個体別に、前記軸芯体振れ座標検出工程及び塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程を繰り返すことが好ましい。前述したように電子写真用弾性ローラにおいては、外径寸法や振れの要求レベルが高い。そこで、軸芯体101の個体別の振れをも考慮することで、高い振れ精度を有する電子写真用弾性ローラが繰返し再現性良く製造できる。すなわち、両端部で把持固定された場合、軸芯体101の一本毎の振れ座標(X及びY座標)は、ランダムになる。したがって、軸芯体101の個体別に、前記軸芯体振れ座標検出工程及び塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程を繰り返すことで、電子写真用弾性ローラとして、高い振れ精度を達成できる。また、軸芯体101の製造ロットによらない、安定性が高い電子写真用弾性ローラの製造方法となる。
【0050】
このように、本発明に係る方法では、軸芯体振れ座標検出工程、及び、塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程により、軸芯体101自体の振れを検出し、それに合わせて塗工時に環状塗工ヘッド38の位置を補正する。これにより、弾性層の厚み精度を良くすることができ、軸芯体101自体の振れによらず、振れの小さい電子写真用弾性ローラを製造することが可能である。
【0051】
本発明で使用される軸芯体101は、電極及び支持部材として機能するものである。軸芯体101は、例えばアルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金、クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、合成樹脂等の材質で構成される。形状は、円柱形や中心部を空洞化した円筒形が好ましい。軸芯体101の外径は適宜決めることができるが、通常4〜20mmの範囲にする。通常、軸芯体101は、強度や加工性から丸棒鋼が用いられる。この丸棒鋼は、抽伸機により、コイル状の素材である線材を、引抜きダイスで引抜き、切断し磨き製造される。高精度が求められる電子写真用弾性ローラに用いられる軸芯体101は、その精度を達成するために、軸芯体101自身にも高精度が求められる。そこで、抽伸機に矯正機構が設けられ、コイルを高真直にして高精度を達成するが、コストアップが避けられない。なお、素材が持つ内質的なコイルの履歴から、軸芯体101の長手方向において振れが最大となる位置は、軸芯体101を両端部で把持固定した場合は、軸芯体101の長手方向中央部であることが多い。このため、前述したように前記軸芯体振れ座標検出工程において、軸芯体101の最大振れ座標の検出は、軸芯体101長手方向中央部で行うことが好ましい。
【0052】
本発明で使用される軸芯体101は、上述した両端部で把持固定された状態で、軸芯体101の長手方向(Z座標)の中央部の振れが、100μm以下であることが好ましい。100μm以下であると、振れの小さい電子写真用ローラを製造することが可能である。また、100μm以下であれば、抽伸機に追加の矯正機構を設ける必要がなくコスト面でも有利である。なお、軸芯体101の長手方向(Z座標)の中央部の振れの下限は、軸芯体自体の振れが、電子写真用弾性ローラとしての振れに与える影響を少なくする観点から、現在可能な手段による最小の振れであることが好ましい。
【0053】
本発明における弾性層材料は、室温で流動性を持つポリマーであり、加熱により硬化が進行するポリマーが好ましい。具体的には、液状ジエンゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等)、液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴム等が挙げられる。このようなゴムは、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。中でも、弾性層には、十分な変形回復力を持たせることが重要であるため、弾性層材料としては液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムを用いることがより好ましい。特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなど生産性に優れる観点から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることがさらに好ましい。
【0054】
前記液状シリコーンゴムとしては、例えばオルガノポリシロキサン(A液)及びオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B液)を含み、さらに触媒や他の添加物を適宜含む組成物が挙げられる。前記オルガノポリシロキサンはシリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが、平均分子量1万以上、100万以下が好ましく、平均分子量5万以上、70万以下がより好ましい。
【0055】
上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されない。しかし、活性水素との反応が高い等の理由から、ビニル基、アリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基がより好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上であることが好ましい。硬化反応を最適に行わせるために、3個以上有するポリマーがより好ましい。
【0056】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの平均分子量は特に制限がなく、好ましい平均分子量は1000から10000程度である。硬化反応を適切に行わせるためには、比較的低分子量である平均分子量が1000以上、5000以下のポリマーがより好ましい。
【0057】
前記液状シリコーンゴムは、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの架橋触媒として、例えば、塩化白金酸六水和物を含むことができる。また、架橋触媒として、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物も使用できる。
【0058】
前記弾性層材料には、所望の性能が得られる範囲内になるように、非導電性充填材、可塑剤などの各種添加剤が適宜配合されていてもよい。非導電性充填剤としては、例えば、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、アルミノケイ酸、炭酸カルシウムなどが挙げられる。可塑剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンオイル、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体などが挙げられる。弾性層材料中にカーボンブラック、グラファイト及び導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤及びアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を適宣添加し、所望の抵抗に調整するのが一般的である。
【0059】
軸芯体101の外周に環状塗工ヘッド38で塗布する弾性層材料の粘度は、10〜5000Pa・sであることが好ましい。該粘度は25℃における、せん断速1s-1での値である(以下同様)。弾性層材料の粘度を10Pa・s以上とすることにより、弾性層材料の自重により重力方向に垂れが生じず、外径寸法や振れの精度を良くすることができる。また、弾性層材料の粘度を5000Pa・s以下とすることにより、弾性層材料供給における配管内のせん断速度において、弾性層材料粘度が高いために装置に高負荷がかかり安定した材料供給に困難が生じることを防止することができる。
【0060】
弾性層材料(弾性層)の層厚は通常0.5mm〜10.0mmの範囲とすることが好ましい。より好ましくは、2.0mm〜6.0mmである。
【0061】
電子写真用弾性ローラとして好ましく使用できる振れ(弾性層の厚みムラ)の程度は、電子写真記録装置のグレードや耐久性にもよるが、60μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下とすることにより、他部材に与える応力に偏りが生じず、ストレスが大きな部分の磨耗や劣化を早める原因となることを防止でき、電荷や現像剤の供給バランスが崩れることによる画像弊害、特には濃度ムラなどが生じる原因となることを防止できる。
【0062】
軸芯体101の外周に塗布された未硬化の弾性層材料の層を赤外線加熱で熱処理、硬化し、電子写真用弾性ローラとする。未硬化の弾性層材料の層の表面は、粘着性を有している。このため、熱処理する方法としては非接触で、装置が簡易で、軸芯体101外周上の弾性層材料の層を長手方向に均一に熱処理できる赤外線加熱が好ましい。この時、赤外線加熱装置を固定し、弾性層材料からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物層を設けた軸芯体101を周方向に回転させることにより、周方向に均一に熱処理が行われる。弾性層材料表面の熱処理温度としては、使用する弾性層材料にもよるが、例えば付加反応架橋型液状シリコーンゴムの場合、シリコーンゴム硬化反応が開始する100℃以上、250℃以下が好ましい。
【0063】
ここで、弾性層の硬化後の物性安定化、弾性層中の反応残渣及び未反応低分子分を除去する等を目的として、赤外線加熱後の弾性層に更に熱処理等の二次硬化を行ってもよい。その後、弾性層の両端を突き切って弾性層を必要な長さにすると共に、弾性層材料を軸芯体101上に形成する際の始端及び終端を予め除去することも好ましい。以上のようにして、本発明に係る方法を用いた電子写真用弾性ローラが製造される。
【0064】
(現像ローラ、プロセスカートリッジ、画像形成装置)
本発明に係る製造方法により製造された電子写真用弾性ローラは、寸法精度、特には振れ(弾性層の厚み精度)の良い、ローコストなものである。本発明に係る弾性ローラは、その弾性層の均一性が良好であることから、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等に使用可能である。さらに本発明に係るプロセスカートリッジ、画像形成装置は、本発明に係る電子写真用弾性ローラを現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等として具備する。以下、本発明に係る電子写真用弾性ローラを現像ローラとして具備した例を示す。
【0065】
本発明に係る電子写真用弾性ローラは現像ローラとして使用することができる。現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して、当接または圧接した状態で現像剤(トナー)を担持する。そして、現像ローラは、感光ドラムに現像剤としてのトナーを付与することにより潜像をトナー像として可視化する機能を持つ。本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、現像ローラとして本発明に係る電子写真用弾性ローラを使用する。本発明に係る電子写真用弾性ローラを現像ローラとして搭載したプロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図7に示す。
【0066】
図7に示す画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット10a〜10dが4個あり、タンデム方式で設けられている。各画像形成ユニットは、感光ドラム11、帯電装置12(図7では帯電ローラ)、画像露光装置(図7では書き込みビーム13)、現像装置14、クリーニング装置15、画像転写装置16(図7では転写ローラ)等を有する。これらの仕様が各色トナー特性に応じて少し調整に差異があるものの、基本的構成において4個の画像形成ユニット10a〜10dは同じである。また、感光ドラム11、帯電装置12、現像装置14及びクリーニング装置15が一体となり、プロセスカートリッジを形成している。
【0067】
現像装置14は、一成分トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光ドラム11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に一成分トナー5を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ1に担持されている一成分トナー5を現像ローラ1から掻き取るトナー供給ローラ7が設けられる。また現像ローラ1上の一成分トナー5の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード8が設けられている。
【0068】
感光ドラム11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が加増露光装置からビーム13として、帯電された感光ドラム11の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に本発明に係る方法で製造された弾性ローラを現像ローラ1とする現像装置14から一成分トナーが供給され、感光ドラム11表面にトナー像が形成される。このトナー像は感光ドラム11の回転に伴って、画像転写装置16と対向する場所に来たときにその回転と同期して供給されてきた紙等の転写材25に転写される。
【0069】
なお、図7では4つの画像形成ユニット10a〜10dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写材25上に重ねて形成されている。したがって、転写材25をそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる、つまり、画像形成が転写材25の挿入と同期している。そのために、転写材25を輸送するための転写搬送ベルト17が感光ドラム11と画像転写装置16との間に挟まれるように、転写搬送ベルト17の駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされる。転写材25は転写搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写材25を供給するための供給ローラである。
【0070】
画像が形成された転写材25は、転写搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー像は転写材25に定着されて、印画が完了する。一方、トナー像の転写材25への転写が終わった感光ドラム11はさらに回転して、クリーニング装置15により表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光ドラム11は次の画像形成に供される。なお、図7において、26、27はそれぞれ画像転写装置16、吸着ローラ21へのバイアス電源を示す。
【0071】
ここでは、タンデム型の転写材上へ直接各色のトナー像を転写する装置で説明したが、その限りではない。本発明に係る方法により製造した弾性ローラを現像ローラとして適用可能な装置としては、他にも白黒の単色画像形成装置、転写ローラや転写ベルトに一旦各色のトナー像を重ねてカラー画像を形成し、それを転写部材へ一括して転写する画像形成装置がある。また、各色の現像ユニットがロータ上に配置されたり、感光ドラムに並列して配置されたりした画像形成装置等が挙げられる。また、プロセスカートリッジではなく、感光ドラム、帯電装置、現像装置等が直接画像形成装置に組み込まれていても構わない。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【0073】
(振れ:弾性層の厚みムラ測定)
振れは、軸芯体を回転軸として弾性ローラを回転させ、回転軸に対して垂直に配置した非接触レーザー測長器(商品名:「LS−5000」、キーエンス製)で測定した弾性ローラの半径の最大値と最小値の差を値として求めた。弾性層の軸方向に1cmピッチで前記半径の最大値と最小値の差を求め、その差の値の中で最大の値を弾性層の厚みムラ(振れ)の値とした。
【0074】
(弾性層材料の粘度測定)
粘度測定には、Haake社製「RheoStress600」(商品名)を用いた。弾性層材料(シリコーンゴム材料の場合、A液及びB液を質量基準で、1:1で混合した未硬化の状態)約1gを採取した。これを試料台の上にのせ、コーンプレートを徐々に近づけて、試料台から約50μmの位置で測定ギャップを設定した(コーンプレートは直径35mm、傾斜角度1°を用いた)。そのとき、まわりに押し出された弾性層材料を奇麗に除去し測定に影響の出ないようにした。試料温度が25℃になるようにプレート台の温度を設定し、試料をセットしてから10分間放置後、測定を開始した。試料にかけるせん断速度を0.1s-1からスタートし10s-1までの範囲を、0.2s-1ずつ変化させ、せん断速度1s-1のせん断応力をせん断速1s-1で割った値を粘度とした。
【0075】
(実施例1)
弾性層材料を軸芯体101に塗工する塗工装置としては、図1に示した形態の環状塗工ヘッド38を有する縦型リングコート機を用いた。
【0076】
(弾性層材料の調製)
付加反応架橋型液状シリコーンゴム(商品名:「DY35−1265」、東レダウコーニング社製)のA液及びB液の各液100質量部に、それぞれカーボンブラック(商品名:「MA11」、三菱化学社製)10質量部を加えた。これらをそれぞれプラネタリーミキサーで、30分間混合脱泡した。その後、カーボンブラックを配合したA液及びB液を、それぞれ塗工装置付随の原料タンクにセットし、圧送ポンプを使用して、スタテックミキサーに送り出し、A液及びB液を質量基準で、1:1で混合した。このシリコーンゴム混合液を弾性層材料とした。その粘度は600Pa・sであった。
【0077】
(弾性ローラの作製の前準備)
弾性ローラを製造するにあたり、図2に示すように、軸芯体上保持軸40の軸中心が環状塗工ヘッド38の中心となるよう環状塗工ヘッド38の位置を調整した。
【0078】
まず、軸芯体上保持軸40の位置を光学式測長器48(商品名:「LS−7000」、キーエンス製、図2には不図示)で計測し、軸芯体上保持軸40の中心座標を算出した。続いて、軸芯体上保持軸40を環状塗工ヘッド38の内側に開口している吐出口に接触できるようLMガイド34(図2には不図示)を鉛直方向に移動させた。その後、環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により(図2には不図示)、環状塗工ヘッド38をX方向及びY方向(水平方向)にそれぞれ動かした。環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46はステッピングモータにより駆動される移動精度1μmのものを用いた。環状塗工ヘッド38が軸芯体上保持軸40と接触した時に、導通するように回路を組み、環状塗工ヘッド38と軸芯体上保持軸40が接触(導通)した時のステッピングモーターに指示した移動量をX方向及びY方向で記録した。環状塗工ヘッド38のX方向及びY方向の移動量から、軸芯体上保持軸40を基準とした環状塗工ヘッド38の中心位置を算出し、中心位置に環状塗工ヘッド38を動かした。具体的には図2に矢印で示したX方向及びY方向の移動距離のそれぞれ中央になる位置に環状塗工ヘッド38を移動させた。
【0079】
(弾性ローラの作製)
図3(A)に示すように軸芯体下保持軸39の上端を、環状塗工ヘッド38の中を通って環状塗工ヘッド38より上(鉛直方向上)に位置させた。この状態で、軸芯体下保持軸39にセットされた長さ280mm、外直径6mmの鉄製の軸芯体101を、軸芯体上保持軸40を下降させることで、略鉛直方向に把持した。その後、図3(B)に示すようにLMガイド34で把持した軸芯体101を下降させた。このとき、X方向光学式測長器48−1、Y方向光学式測長器48−2によって、軸芯体101の端部(下端)からの軸方向距離40mm(長手方向位置101−1)、軸芯体101の長手方向の中央部である140mm(長手方向位置101−2)、及び240mm(長手方向位置101−3)の三箇所において軸芯体101の座標(X及びY座標)を検出した。長手方向101−2における軸芯体101の座標を、把持固定された軸芯体101の最大振れ座標とした。その後、図3(D)に示すように、軸芯体101の長手方向位置101−1における位置座標と軸芯体101の長手方向位置101−3における位置座標との差を解消するように軸芯体位置補正XYステージ47により軸芯体下保持軸39を移動させた。これにより2つの座標を同座標とした。このように、軸芯体101の把持固定による軸芯体101の両端部の傾きを補正した。また、補正後の長手方向位置101−1における軸芯体101の中心座標と、予め求めておいた軸芯体上保持軸40の中心座標との差を環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46により、環状塗工ヘッド38を移動させることにより補正した。補正後のX及びY座標を塗工開始前の基点座標とした。
【0080】
その後、基点座標から軸芯体下保持軸39、軸芯体上保持軸40を垂直に上昇(30mm/sec)させて軸芯体101を移動させながら、環状塗工ヘッド38の内側に開口した環状スリットから、前記弾性層材料を2.52ml/secで吐出した。この時、環状塗工ヘッド38の環状スリット部分が101−2に到達するまでの間に、最大振れ座標の方向に、環状塗工ヘッド38の位置を最大移動量25%補正(移動)した。なお、環状塗工ヘッド38の補正は、環状塗工ヘッド38が固定された環状塗工ヘッド位置補正XYステージ46で行った。環状塗工ヘッド38の環状スリット部分が101−2に到達した後は、続けて、環状塗工ヘッド38の位置を基点座標の方向に補正(移動)して、101−3に到達した際に基点座標に戻るようにした。これにより、軸芯体101の外周に円筒形状(ロール形状)にシリコーンゴム材料の層を形成した。リングコート機から軸芯体101を取り外し、未硬化の成形物層を有するローラ(以下、未硬化のローラとする)を作製した。
【0081】
この未硬化のローラを、軸芯体101を中心として60rpmで回転させ、その未硬化の成形物層表面に、赤外線加熱ランプ「HYL25」(商品名、株式会社ハイベック製)で赤外線(出力1000W)を4分間照射し、成型物層を硬化させた。なお、赤外線照射時の成形物層表面とランプの距離は60mmであり、成形物層表面の温度は200℃であった。その後、硬化したシリコーンゴムの弾性層の物性を安定させ、シリコーンゴムの弾性層中の反応残渣及び未反応低分子分を除去すること等を目的として、電気炉で200℃、4時間の二次硬化を行った。こうして、軸芯体101の外周上に層厚3.0mmのシリコーン層(弾性層102)を有する弾性ローラを得た。
【0082】
このようにして、電子写真用弾性ローラを1000本同様に作製した。この時、投入した軸芯体101の把持固定された軸芯体101の長手方向での振れ(長手方向位置101−2)の分布、及び作製した弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。本実施例において作製した電子写真用弾性ローラは、振れが30μm未満のものが100%で、再現性も良く、安定して振れの小さい電子写真用弾性ローラを製造できた。
【0083】
(実施例2)
環状塗工ヘッド38の環状スリット部分が101−2に到達するまでの間に、最大振れ座標の方向に環状塗工ヘッド38の位置を最大移動量5%補正(移動)した以外は、実施例1と同様に電子写真用弾性ローラを製造した。
【0084】
このようにして、電子写真用弾性ローラを1000本同様に作製した。この時、投入した軸芯体101の把持固定された軸芯体101の長手方向での振れ(長手方向位置101−2)の分布、及び作製した弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。本実施例において作製した電子写真用弾性ローラは、振れが30μm未満のものが100%で、再現性も良く、安定して振れの小さい電子写真用弾性ローラを製造できた。
【0085】
(実施例3)
環状塗工ヘッド38の環状スリット部分が101−2に到達するまでの間に、最大振れ座標の方向に環状塗工ヘッド38の位置を最大移動量50%補正(移動)した以外は、実施例1と同様に電子写真用弾性ローラを製造した。
【0086】
このようにして、電子写真用弾性ローラを1000本同様に作製した。この時、投入した軸芯体101の把持固定された軸芯体101の長手方向での振れ(長手方向位置101−2)の分布、及び作製した弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。本実施例において作製した電子写真用弾性ローラは、振れが30μm未満のものが100%で、再現性も良く、安定して振れの小さい電子写真用弾性ローラを製造できた。
【0087】
(実施例4)
環状塗工ヘッド38の環状スリット部分が101−2に到達するまでの間に、最大振れ座標の方向に環状塗工ヘッド38の位置を最大移動量1%補正(移動)した以外は、実施例1と同様に電子写真用弾性ローラを製造した。
【0088】
このようにして、電子写真用弾性ローラを1000本同様に作製した。この時、投入した軸芯体101の把持固定された軸芯体101の長手方向での振れ(長手方向位置101−2)の分布、及び作製した弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。本実施例において作製した電子写真用弾性ローラは、振れが30μm未満のものが100%で、再現性も良く、安定して振れの小さい電子写真用弾性ローラを製造できた。
【0089】
(実施例5)
環状塗工ヘッド38の環状スリット部分が101−2に到達するまでの間に、最大振れ座標の方向に環状塗工ヘッド38の位置を最大移動量80%補正(移動)した以外は、実施例1と同様に電子写真用弾性ローラを製造した。
【0090】
このようにして、電子写真用弾性ローラを1000本同様に作製した。この時、投入した軸芯体101の把持固定された軸芯体101の長手方向での振れ(長手方向位置101−2)の分布、及び作製した弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。本実施例において作製した電子写真用弾性ローラは、振れが30μm未満のものが100%で、再現性も良く、安定して振れの小さい電子写真用弾性ローラを製造できた。
【0091】
(比較例1)
弾性層材料を吐出塗工中に塗工時環状塗工ヘッド位置補正を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に電子写真用弾性ローラを製造した。
【0092】
このようにして、弾性ローラを1000本同様に作製した。この時、把持固定された軸芯体101の長手方向での振れ(長手方向位置101−2)の分布、及び作製した弾性ローラ1000本の振れの分布を表1に示す。本比較例において作製した電子写真用弾性ローラは、振れが30μm未満のものが57%、振れが60μm未満のものが83%であった。本比較例の方法では、振れの小さい電子写真用弾性ローラを安定して製造出来なかった。
【0093】
【表1】

【符号の説明】
【0094】
1 現像ローラ
5 非磁性一成分トナー
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a〜d 画像形成ユニット
11 感光ドラム
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 画像露光装置からの書き込みビーム
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
25 転写材
26 バイアス電源(画像転写装置(転写ローラ)16用)
27 バイアス電源(吸着ローラ21用)
31 架台
32 コラム
33 ボールネジ
34 LMガイド
35 サーボモータ
36 プーリ
37 ブラケット
38 環状塗工ヘッド
39 軸芯体下保持軸
40 軸芯体上保持軸
41 供給口
42 配管
43 材料供給弁
44 リニアガイド
45 環状塗工ヘッド固定テーブル
46 環状塗工ヘッド位置補正XYステージ
47 軸芯体位置補正XYステージ
48−1 X方向光学式測長器
48−2 Y方向光学式測長器
101 軸芯体
101−1、101−2、101−3 軸芯体の長手方向位置
102 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体の両端部を鉛直方向に把持固定し、該軸芯体の把持固定による鉛直方向に対する軸芯体の両端面中心を結ぶ中心軸の傾きを補正し、内側に開口した環状スリットを有する環状塗工ヘッドを用いて、該軸芯体を該環状塗工ヘッドに対し鉛直方向に相対的に移動させると共に、該環状スリットから未硬化の弾性層材料を吐出して該軸芯体の外周上に塗工し、硬化させる電子写真用弾性ローラの製造方法において、
前記弾性層材料の吐出塗工前に、前記軸芯体の中心軸を基点座標として、把持固定された前記軸芯体の長手方向における最大振れ座標を検出する軸芯体振れ座標検出工程;
前記弾性層材料の吐出塗工時に、前記環状塗工ヘッドの中心位置を、前記基点座標から前記最大振れ座標の方向に一定の割合で移動し、
前記最大振れ座標を検出した軸芯体の長手方向位置に前記環状塗工ヘッドが到達した後は、前記環状塗工ヘッドの中心位置を前記基点座標の方向に一定の割合で移動する塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程;
を有することを特徴とする電子写真用弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記軸芯体振れ座標検出工程を、前記軸芯体の長手方向の中央部で行うことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程は、前記環状塗工ヘッドが固定されているXYステージにより環状塗工ヘッドを移動して行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記軸芯体の個体別に、前記軸芯体振れ座標検出工程及び塗工時環状塗工ヘッド位置補正工程を繰り返すことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電子写真用弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記未硬化の弾性層材料の粘度が、10〜5000Pa・sであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子写真用弾性ローラの製造方法。
【請求項6】
前記環状塗工ヘッドの最大移動量が、前記基点座標から前記最大振れ座標の1〜80%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電子写真用弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11509(P2011−11509A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159486(P2009−159486)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】