説明

電子写真用紙及びその製造方法

【課題】古紙パルプが高配合とされていながら、カールの発生が抑制された電子写真用紙とする。
【解決手段】古紙パルプを70質量%以上含有する抄紙原料を抄紙して得られる、灰分(JIS P 8251に準拠)6%以上の電子写真用紙であって、抄紙原料には、カチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤がこの順に添加されており、得られた前記電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gであり、ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35秒/(g/m2)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の資源の有効利用という観点から、電子写真用途においても、古紙パルプが高配合とされている。古紙パルプは、製造工程においてインキを取り除くために、界面活性剤を含む脱墨剤が添加されており、親水性が高く(通常、ステキヒドサイズが8秒程度。)、平衡水分率も高くなる特性を有している。したがって、電子写真印刷機で古紙パルプを高配合とした電子写真用紙を用いた場合、紙の表面、裏面で水分率の差が発生し、カールしやすくなる問題を有している。
【0003】
水分率の差の問題を解決する手段として、古紙パルプを高配合とした電子写真用紙においては、内添サイズ剤、外添サイズ剤の増添が解決策として想定される。しかしながら、古紙パルプの配合割合が70%未満では、内添サイズ剤、外添サイズ剤の増添効果が見られるものの、古紙パルプの配合割合が70%以上の割合の場合は、内添サイズ剤、外添サイズ剤の増添のみでは、水分率の差の是正に限界がある。
【0004】
上述したように、本発明者らの知見によると、古紙パルプを抄紙原料の70質量%以上使用すると、古紙パルプの配合割合が70質量%未満の電子写真用紙と比較した場合、吸湿時のカールが大きくなる問題が発生する。古紙パルプ70質量%以上の電子写真用紙における吸湿時のカール問題は、古紙の種類によってその挙動が異なるものの、古紙パルプは原料とする古紙の種類を一定にすることは困難であり、古紙品種の変動にともなって得られる古紙パルプ原料の伸縮率や平衡水分が変動するため、広くより多くの古紙を原料として利用するためには、これらの特性が変動してもカール変化量を一定にして電子写真用紙として好適に利用できる電子写真用紙の開発が必要になっている。
【0005】
また、例えば、特許文献1は、従来のバージンケミカルパルプからなる上質紙グレードの電子写真用紙と同等の電子写真適性を有し、開封直後及び吸湿後においても従来の電子写真用紙と同等のコピー後カール性を有する電子写真用転写用紙を提案している。この用紙は、全パルプ中に古紙パルプを70%以上含有し、包装開封時の含有水分率が所定の式に合致することを特徴とするものである。しかしながら、同文献においては、サイズ剤をコントロールすることによってカールを制御するという思想が開示されていない。
【0006】
さらに、特許文献2には、カールの少ない記録用紙として、少なくともパルプを原料とする普通紙であって、分子内に三つ以上のカルボキシル基を持つ有機酸を含有し、且つ該用紙のCD伸縮率(%)が0.25から0.65%の範囲であることすることを特徴とする記録用紙が提案されている。しかしながら、同文献においては、古紙パルプを高配合とする場合のカール制御について何ら開示・示唆されていない。
【0007】
さらに、特許文献3には、電子写真方式におけるトナー像の熱定着後のカールを低減することが可能で、両面印刷適性が高い電子写真用転写紙、及びそれを用いた電子写真記録方式の画像記録方法が提案されている。当該用紙は、全層の破断時伸びに対する破断時伸びの表裏差の比率が、MD方向及びCD方向のいずれにおいても、−10〜10%の範囲であることを特徴とするものである。しかしながら、同文献においても、古紙パルプを高配合とする場合のカール制御について何ら開示・示唆されていない。
【0008】
さらに、特許文献4には、新聞古紙、雑誌古紙を多配合しても、カール性、走行性、および外観品質において、近年の電子写真方式の複写機やプリンター等の高画質化・高速化に満足に対応できる電子写真用転写紙が提案されている。この用紙は、新聞古紙と雑誌古紙の少なくともいずれか一方を主原料とする古紙パルプを50〜100質量%含有し、ISO白色度が75〜95%であり、且つ水分伸縮率が0.6%以下、且つクラークこわさ試験法により測定されたクロス方向(CD方向)の臨界長さを15cm以上にするものである。しかしながら、同文献による用紙は、古紙含有率が高いが、カールに対する解決策が示されていない。
【特許文献1】特開平06‐295087号公報
【特許文献2】特開2006−77356号公報
【特許文献3】特開2007−121409号公報
【特許文献4】特開2007−298620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする主たる課題は、古紙パルプが高配合とされていながら、カールの発生が抑制された電子写真用紙及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
古紙パルプを70質量%以上含有する抄紙原料を抄紙して得られる、灰分(JIS P 8251に準拠)6%以上の電子写真用紙であって、
前記抄紙原料には、カチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤がこの順に添加されており、
得られた前記電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gであり、
ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35秒/(g/m2)である、
ことを特徴とする電子写真用紙。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
前記古紙パルプが新聞古紙及び/又は雑誌古紙を主原料とし、前記離解パルプスラリーの構成比が、NKP:10〜20、LKP:50〜70、MP:10〜40となるように配合され、
前記カチオン性凝結剤が原料パルプの配合調整段階で添加され、
前記サイズ剤が、中性ロジンサイズ剤で、かつ前記カチオン性凝結剤とは異なる後工程で添加される、
請求項1記載の電子写真用紙。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
前記カチオン性凝結剤が、
アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、及び、第3級アミンから選択された一種以上のアミン類と、
下記式(1)で表される化合物を主体とするポリカチオン物質と、
分子量10000〜70000のポリアルキレンイミンと、を反応させた下記式(2)で表される構造単位を有するポリアルキレンイミン変性物であり、
前記原料パルプの配合調整段階で、固形分で1.0〜3.0kg/パルプトン添加されている、
請求項1又は請求項2記載の電子写真用紙。
【化1】

ただし、Pはエポキシ基又はハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R1〜R4は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は、ベンジル基であり、X1〜X2は陰イオンである。
【化2】

ただし、pは0〜20の整数であり、R1〜R4は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は、ベンジル基であり、X1〜X2は陰イオンである。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
前記ポリアルキレンイミンが、ポリエチレンイミンである、
請求項3記載の電子写真用紙。
【0014】
〔請求項5記載の発明〕
前記カチオン性凝結剤、前記サイズ剤、及び、前記カチオン性凝集剤が、下記の場所、かつ下記の添加量で添加されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用紙。
前記カチオン性凝結剤が、原料パルプの配合調整段階で固形分で1.0〜3.0kg/パルプトン添加されている。
前記サイズ剤が、種箱で固形分で3.0〜8.0kg/パルプトン添加されている。
前記カチオン性凝集剤が、サイズ剤添加後の後工程で固形分で0.1〜5.0kg/パルプトン添加されている。
【0015】
〔請求項6記載の発明〕
古紙パルプを70質量%以上含有する抄紙原料を抄紙して灰分(JIS P 8251に準拠)6%以上の電子写真用紙を製造する方法であって、
前記抄紙原料に、カチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤をこの順に添加して、
得られた前記電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gとなり、かつ
ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35秒/(g/m2)となるようにする、
ことを特徴とする電子写真用紙の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、古紙パルプが高配合とされていながら、カールの発生が抑制された電子写真用紙及びその製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明者等は、内添サイズ剤を増添しても、古紙パルプの配合割合が70%を超える場合、古紙パルプ由来のアニオントラッシュにより原料スラリー中のイオン性がアニオン性に傾き、アニオントラッシュが内添サイズ剤のパルプ繊維への定着を阻害し、阻害するだけでなく、内添サイズが定着しないため、外添サイズの効果も上がらない現象を来たすことを知見して本発明を完成するに至った。
【0018】
本形態の電子写真用紙は、古紙パルプを70質量%以上含有する抄紙原料を抄紙して得られる、灰分(JIS P 8251に準拠)6%以上の用紙である。
【0019】
古紙パルプは、原料とする古紙の種類を一定にすることが困難であり、古紙品種の変動にともなって得られる古紙パルプ原料の伸縮率や平衡水分が変動する問題を有することは既に述べたが、古紙品種の変動により、得られる古紙パルプ原料自体のイオン性変動も、サイズ性低下の要因となる。
【0020】
本件発明者は、原料古紙パルプに、再資源の優等生として回収率の高い新聞用紙からなる新聞古紙を用いることが好ましく、新聞古紙及び/又は雑誌古紙等からなる古紙パルプを70%以上配合することが、各種ある製紙メーカーにおける新聞用紙、雑誌用紙を構成する原料パルプ種が近似なことから、構成パルプ種による原料構成の変動を抑えることができると共に、含有される填料類の種類も近似であることから、最も好適であることも知見している。
【0021】
特に新聞用紙は、一般的には古紙パルプが既に50%以上いられており、バージンの機械パルプやクラフトパルプの含有量が少なく、また、バージンの各種パルプが用いられていても、一度抄紙され、古紙処理により古紙パルプ化されているため、その性状は均質化しており、所謂同種のパルプ原料を用いることに類似したほぼ一定の性状からなる利点を有する。
【0022】
本形態における電子写真用紙の灰分は、古紙由来の灰分を主成分とし、必要に応じ添加するものであるが、その主成分として炭酸カルシウム及び/またはホワイトカーボンを含有することが好ましく、本形態に供される古紙パルプを取捨選択し組み合わせることで古紙由来の灰分調整を行い、電子写真用紙を得ることが好ましい。
【0023】
更に、本件発明者は、新聞用紙及び/又は雑誌用紙が不透明度向上剤としてホワイトカーボンを多用するとともに、近年では、新聞用紙及び/又は雑誌用紙の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムが填料として多用されている点に着目し、新聞用紙及び/又は雑誌用紙由来の古紙パルプを好適に持ち得ることを見出している。
【0024】
古紙由来の灰分は、古紙から古紙パルプを再生する工程において殆どが系外に排出されるものの、繊維に物理的又は化学的に固着した微細な灰分成分が古紙パルプ中に残留し、再び抄紙原料として用いられることにより得られるものであり、バージンの填料と比べて、原料パルプとの密着性が高い故に、電子写真印刷を行った際にトナーの定着性を向上する相乗効果をもたらす。
【0025】
新聞用紙及び/又は雑誌用紙由来の古紙パルプには、前記ホワイトカーボンと炭酸カルシウム等の微細無機粒子が残留し、古紙由来の微細填料として古紙パルプ中に含有される特徴を有する。
【0026】
本件発明においては、新聞用紙及び/又は雑誌古紙由来の填料を含め、灰分(JIS P 8251に準拠)を6%以上、好適には、好適には6〜12質量%、より好ましくは7〜10質量%になるように調整することが好ましい。
【0027】
新聞用紙及び/又は雑誌用紙由来の古紙パルプに含有するホワイトカーボンが、電子写真印刷におけるトナーの転写性、熱定着性を向上させ得るため、本発明の課題であるカールを改善できるとともに、ホワイトカーボンは微細な一次粒子が凝集した二次粒子凝集体を形成し多孔質であるため、トナーが表面に付着しやすく、トナーの未定着による電子写真印刷面の汚れを来たしにくく、シリコーンオイルを用いている電子写真印刷機により、ノンインパクトプリンタ方式で印字した場合でも、ホワイトカーボンがシリコーンオイルを吸収するので、トナーの定着がシリコーンオイルに妨げられるおそれもない。
【0028】
また、炭酸カルシウムは、新聞用紙及び/又は雑誌古紙由来の他の填料、例えば先のホワイトカーボンよりも古紙由来の填料として残留割合が比較的少ないものの、本件発明において好適に使用できるサイズ剤との相性が良く、特に中性ロジンサイズ剤の薬品歩留の向上に寄与し、サイズ性を発揮しやすくなると共に、炭酸カルシウムは表面電気抵抗が高く、ハイバックグランド(転写工程で感光体に付着した紙粉中の填料が現像部で現像剤に混入すると、トナーと填料が逆極性の場合、凝集体が形成され、この凝集体が非画線部に現像される)、及びディリーション(感光体の暗所での電気抵抗の低下により、正常な静電潜像が得られない)と呼ばれる現象の発生も同時に解決しうる。
【0029】
これらの古紙由来の残留する微細填料は、体積平均粒子径が0.01〜30μm、好ましくは1〜20μmの範囲にあるものが好適である。
【0030】
一方、灰分(JIS P 8251に準拠)を6%未満にするには、古紙由来の微細繊維、灰分を原料調整段階で十分に洗浄する必要があり、多大な洗浄設備を要する。
【0031】
他方、12%を超えると、電子写真印刷機で使用した場合、紙の放熱が悪くなり、熱がこもりやすくカールしやすい紙質となる。従って、得られた電子写真用紙をJIS P 8251に準拠して測定した灰分が6質量%以上、好適には6〜12質量%、より好ましくは、7〜10質量%になるように調整する。
【0032】
本形態において使用する古紙パルプは、新聞用紙及び/又は雑誌用紙からなる新聞古紙及び/又は雑誌古紙が好適に用いられるほか、製本、印刷工場、裁断所等において発生する裁落、損紙、幅落としした古紙である上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙を解離した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙等に平版、凸版、凹版印刷等、電子写真方式、感熱方式、熱転写方式、感圧記録方式、インクジェット記録方式、カーボン紙などにより印字された古紙、及び水性、油性インクや、鉛筆などで筆記した古紙を離解後脱墨、再利用可能に再生処理したパルプ(以下、DIPと略記する)等を使用できる。
【0033】
本形態における効果を効果的に発揮するには、以上の古紙以外に、バージンの化学パルプ(広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等、木材及びその他の繊維原料を化学的に処理して作成されたパルプ)や木材またはチップを機械的にパルプ化したグランドパルプや木材またはチップに薬液を滲み込ませた後、機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、ケミメカニカルパルプ、および、チップをやや柔らかくなるまで蒸解した後、リファイナーでパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプを含有させてもよい。
【0034】
本発明における原料パルプの構成は、得られた前記電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリーにおいて、NKP:10〜20、LKP:50〜70、MP:10〜40となるように配合されていることが好ましい。NKP(針葉樹クラフトパルプ)は、本発明において製造される電子写真用紙において、古紙パルプを70重量%以上配合することによる紙力低下を補完するために必用であり、10%を下回ると電子写真印刷機における熱定着により紙が脆くなり使用時における金具での保持やファイリング時に容易に破損しやすくなる問題が生じる。また、NKPが20%を上回ると、電子写真用紙の地合いが低下し、見た目が悪くなると共に、トナー定着性が低下し印刷適性の低下に繋がる。
【0035】
LKP(広葉樹クラフトパルプ)は、本発明における電子写真用紙表面の平坦性とトナー定着性を維持する目的で必要であり、LKPが50%未満ではトナー定着性が低下し印刷適性が劣る問題が生じ、70%を上回ると、元来短繊維であることも起因し、カールの発生割合が高まると共に紙粉が発生しやすくなる。
【0036】
MP(機械パルプ)は、本発明において製造される電子写真用紙において、古紙パルプを70重量%以上配合することによる嵩の低下を補完する効果を有する。MPが10%未満では、嵩が出ず腰のない電子写真用紙になるためカールは生じにくいものの、搬送性や作業性が劣る問題が生じる。MPが40%を超えると、元来強度向上効果が低いパルプであり、樹脂分を多く含みパルプ繊維自体が脆いため、使用時における金具での保持やファイリング時に容易に破損しやすくなる問題が生じる。
【0037】
これら原料パルプの調整は、古紙由来の古紙パルプを70重量%以上配合するにおいて通常は困難ながら、原料パルプの構成が紙製造会社ほぼ共通の新聞用紙古紙や雑誌古紙を主体に、古紙再生促進センター古紙分類に準拠した選別古紙を用いることで調整できる。
【0038】
但し、上記古紙以外にはバージンの化学パルプや機械パルプを含有する場合は、30重量%未満とする。30重量%を超えると、本発明が課題とする、古紙由来のアニオントラッシュによるサイズ剤効果低減の度合いが少なく、本発明の効果を遺憾なく発揮できない。
【0039】
本形態の抄紙原料には、カチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤がこの順に添加されており、得られた電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gであり、ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35/(g/m2)である。
【0040】
原料パルプが古紙パルプを70%以上含有する場合は、古紙由来のアニオントラッシュにより、原料パルプ中のイオン性の変動幅が大きく、変動幅が大きいまま抄紙工程を進めると、イオン性の変動により抄紙工程における薬品の効果が安定せず、サイズ性の低下が生じると共に、過剰薬品添加やウエットエンドにおける濾水性の低下などにより操業が安定せず、品質変動が大きくなるため、結果として本発明の解決課題であるカール問題が発現し良好な品質を保持する電子写真用紙が得られない。
【0041】
従って、図1に示すように、本形態に係る電子写真用紙を構成する原料パルプの配合調整段階(受入チェスト1〜マシンチェスト3まで)、好適には配合チェスト2でカチオン性凝結剤X1を固形分で1.0〜3.0kg/パルプトン添加し、原料パルプのイオン性を安定化させたうえで、後工程、好適には種箱4においてサイズ剤X2を添加する。
【0042】
配合チェストでカチオン性凝結剤X1を添加することで、本発明の課題であるカール問題の起因となるアニオントラッシュを抑え、後工程でのイオン性調整を容易にすることが可能になり、カール問題を解決するにいたる。
【0043】
ここで、配合チェスト2においては、各種原料パルプを受け入れた一又は二以上の受入チェスト1からダブルシックナー12を介して原料パルプが供給され、当該各種原料パルプが混合される。この混合された原料パルプは、マシンチェスト3を経て、種箱4に送られる。
【0044】
カチオン性凝結剤としては、市場で入手できるものが使用できる。例えば、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリエチレンイミン、分子量50000以上のポリアミン、エチレンイミンのグラフとにより変性されているポリアミン、ポリエーテルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリジン、ポリビニルイミダゾリン、ポリビニルテトラヒドロピリン、ポリ(ジアルキルアミノアルキルビニルエーテル)、プロトン化または四級化した形のポリ(ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート)ならびにアジピン酸とポリアルキレンポリアミン、アクリルアミドまたはメタクリルアミドとジアルキルアミノエチルアクリレートまたはジアルキルアミノエチルメタクリレートとの共重合体、例えばアクリルアミドとジメチルアミノエチルアクリレートとの塩酸を用いた塩の形または塩化メチルを用いた四級化した形の共重合体である。
【0045】
中でも本形態で好適に用いられるカチオン性凝結剤X1は、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、及び、第3級アミンから選択された一種以上のアミン類と、下記式(1)で表される化合物を主体とするポリカチオン物質と、分子量10000〜70000のポリアルキレンイミンと、を反応させた下記式(2)で表される構造単位を有するポリアルキレンイミン変性物であり、原料パルプの配合調整段階で、固形分で1.0〜3.0kg/パルプトン、好適には1.5〜2.5kg/パルプトン添加されている。
【0046】
1.0kg/パルプトン未満では、十分なアニオントラッシュの凝結やイオン性の中和効果がみられず、後工程でのサイズ剤添加効果が生じにくく、カールの問題が発現する。
【0047】
3.0kg/パルプトンを上回ると、原料パルプ系内のイオン性がカチオン性過度になり、不要な凝結やサイズ効果にムラが生じ、過剰の添加においてもカールの問題、さらには地合い不良も発現する問題が生じる。
【0048】
【化1】

【0049】
ただし、Pはエポキシ基又はハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R1〜R4は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は、ベンジル基であり、X1〜X2は陰イオンである。
【0050】
【化2】

【0051】
ただし、pは0〜20の整数であり、R1〜R4は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は、ベンジル基であり、X1〜X2は陰イオンである。
【0052】
さらに、ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンであると好ましい。ポリエチレンイミンは、例えば分子量2×106以下、有利には2000〜1000000を有する。殊に有利には、分子量5000〜800000を有するポリエチレンイミンが使用される。本形態に該当する市販の凝結剤には、ハイモ社製のSC−924が好適なカチオン性の凝結剤として例示され、更に好適なカチオン性の凝結剤としては、荷電密度が18Meq/g以上、より好適には18〜20Meq/gである。
【0053】
本発明におけるカチオン性凝結剤X1の添加は、好適には原料パルプの配合調整段階で、より好適には配合チェスト2で添加される。配合調整段階における原料パルプは、各種異なる原料パルプの製造工程で生じたアニオントラッシュに加え、抄紙工程で生じた損紙からなる離解パルプ等が配合されるため、配合調整段階の原料パルプはイオン性の変動幅が大きく、後工程でのイオン性の安定化を図るためには、高い荷電密度を呈するカチオン性凝結剤X1を原料パルプの配合調整段階で添加することが、イオン性の安定化と、後工程で添加するサイズ剤X2の定着に最も好適であることを知見している。
【0054】
本発明におけるサイズ剤X2は、原料パルプの配合調整段階以降であれば、抄紙工程何れでも添加できるが、最も好適には種箱4で添加することが好ましい。
【0055】
サイズ剤X2を種箱4で添加することで、原料パルプとの均一な混合が促進され、均一なサイズ性を得ることができる。
【0056】
古紙由来の古紙パルプが70%以上含有する原料パルプ構成からなる本形態において使用することができる内添サイズ剤は、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤が使用でき硫酸バンド、カチオン化澱粉等、適当なサイズ剤と繊維との定着剤を組み合せ好適に使用することができるが、従来から中性抄紙系のサイズ剤として使用されている、AKDやASAの使用は、サイズ度を高くする目的でサイズ剤の添加量を増すと紙の表面エネルギーが低下し、電子写真方式の複写機で転写したトナーの定着性が悪化する傾向が生じる。また、複写機の給紙部分で紙送りができなかったり、一度に複数枚の紙を給紙してしまうといった給紙トラブルが増加したりする傾向が発現する。
【0057】
本形態において、望ましくは、電子写真方式の複写機、プリンター等における走行性及びコピー後の用紙保存性の観点から、中性サイズ剤、特に、中性ロジンサイズ剤を使用する。中性ロジンサイズ剤を内添サイズ剤として使用した場合には、古紙パルプが70%以上の電子写真用紙の抄造において、原料配合工程で添加されるカチオン性凝結剤X1と組み合わせ、古紙由来のアニオントラッシュによるサイズ性低下の問題を軽減でき、効果的にサイズ性を確保可能になり、カールの防止を図ることができるとともに、トナー定着性および複写機での給紙特性の優れた電子写真転写紙を提供することができる。
【0058】
本形態における中性ロジンサイズ剤とは、例えば、紙パ技協誌第47巻第5号の31頁〜34頁に紹介されているような中性からアルカリ性のpH域においてサイズ剤のカルボン酸の解離やCaイオンなどとの塩形成を防止し、サイズ剤として有効な姿でパルプに歩留まるようにロジンに特殊な疎水化変性を施されたもの、各種界面活性剤もしくは水溶性高分子で乳化してなるエマルジョン型ロジンサイズ剤である。
【0059】
ここで、ロジン物質としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、アルデヒド変成ロジン、ロジンエステルなどのロジン類、更には該ロジン類とアクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのα、β−不飽和カルボン酸との加熱反応物を例示できるが、中性領域でのロジン物質の溶出を抑える目的で重合、耐水化等の不溶化処理を行なうことができる。
【0060】
中性ロジンサイズ剤のイオン性は、乳化時に用いる各種界面活性剤もしくは水溶性高分子によりアニオン性、カチオン性の選択は可能である。
【0061】
中性ロジンサイズ剤の場合、サイズ剤の中の疎水化変性ロジン、強化ロジン、未変性ロジンの組成比率によってサイズの発現性が異なる。本発明者等の知見では、中性ロジンサイズ剤の添加量が固形分で3.0〜8.0kg/パルプトン、より好適には3.5〜7.5kg/パルプトン添加される。
【0062】
対パルプ3.0kg/パルプトン未満では、後に述べるような表面サイズ剤の塗工処理を施しても、紙全体として充分なサイズ性を示すことができない。他方、中性ロジンサイズ剤の添加量を対パルプ8.0kg/パルプトン以上にするとサイズ性も飽和状態に達し、操業時において抄紙機の各部に汚れが発生する。また、本形態における電子写真用転写紙を製造する際に、中性ロジンサイズ剤の使用に当っては、硫酸バンドの併用がサイズ性・操業性の点から必要である。硫酸バンドの添加量は、抄造時における抄紙pHによって異なるが、対パルプ3.0〜8.0kg/パルプトン質量%の範囲が望ましい。
【0063】
中性ロジンサイズ剤等のサイズ剤の定着剤として、Alの多価金属化合物(例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェイト、アルミン酸ソーダなど)を使用できるが、アニオン性の強い微細繊維、灰分がパルプ中にあると、硫酸バンドなどと反応して、従来のサイズ定着効果が発揮されない。したがって、アニオン性の強い微細繊維、灰分をカチオン性凝結剤X1で封鎖するという観点からカチオン性凝集剤を添加する。
【0064】
本発明においては、先のカチオン性凝結剤X1の後工程、特にヘッドボックス9の直前において、好ましくは種箱4でサイズ剤X2を添加する事で、特にアニオン性の高い古紙パルプ繊維上に、先のAlの多価金属化合物(例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェイト、アルミン酸ソーダなど)を介してアニオン性の中性ロジンサイズ剤が定着し、更にカチオン性凝集剤X3の添加により、微細繊維に定着したサイズ剤、及び遊離のサイズ剤などを捕集する効果を発現し、ドライヤー上でアルミニウムイオンと反応することによりサイズ性が発現するものと推定される。
【0065】
また、本発明では、中性ロジンサイズ剤の特徴として、紙中への配合量が増加するとともに、紙の摩擦係数が増加するため、AKDを使用した場合に問題になったようなサイズ性向上に伴うスベリは発生せず、これに伴い複写機上で転写用紙が複数枚給紙される、いわゆる重送問題も解決される。さらに、本発明では中性抄紙を行なうことにより、填料として炭酸カルシウムを配合できることから紙の摩擦係数、及びコントロール性の格段の向上とともに、従来、相反する特性であったハイバックグランド、及びディリーションと呼ばれる現象問題も同時に解決しうる。
【0066】
本形態に好適に使用されるサイズ剤添加後のカチオン性凝集剤X3は、先の原料配合工程で使用されるカチオン性凝結剤X1よりも荷電密度が低いカチオン凝集剤が使用される。
【0067】
カチオン性の凝結剤X1を添加し、アニオントラッシュを凝結させたものに、サイズ剤X2を添加し、更にカチオン性の凝集剤X3を添加することで、サイズ剤のパルプ繊維への定着を促進すると共に、凝結したアニオントラッシュが凝集し、フロックを形成するため、サイズ剤のパルプ繊維への定着を阻害する要因が少なくなる。かかるメカニズムの下では、更にスラリー中に存在するアニオントラッシュをパルプに吸着させ極小な状態で紙料と共に工程を通過させることができ、アニオントラッシュに起因する紙粉や粉落ちの低減を図ることができる。このことで汚れ、欠陥、断紙を減少させることができ、生産性の向上が可能となる。
【0068】
サイズ剤X2添加後のカチオン性凝集剤X3としては、サイズ剤X2添加後の後工程で、図示例では第一ファンポンプ5及びスクリーン6,7を経た第二ファンポンプ8の直前で、分子量300万〜2000万、好適には500万〜2000万であり、かつカチオン性単量体のモル%が5〜100モル%、好適には10〜100モル%のカチオン性水溶性重合体または共重合体が固形分で0.1〜5.0kg/パルプトン、より好適には0.5〜4.0kg/パルプトン添加される。具体的には、カチオン性ポリアミン樹脂、カチオン性ポリアミンポリアミド樹脂、カチオン性ポリアクリルアマイド、カチオン変性澱粉、スチレンアクリル系樹脂、カチオン性熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0069】
カチオン性水溶性重合体または共重合体の分子量が300万未満であると効果が十分ではなく、2000万より多くても効果の向上が小さくコスト高となる。
【0070】
カチオン性凝集剤X3は、先のサイズ剤X2の添加後に原料パルプ中に添加することで、サイズ性の向上を図ることが可能になり、結果として本発明の課題であるカールを改善できる。
【0071】
前記カチオン性凝集剤X3の添加は抄紙原料を抄紙網に対して供給する直前、いわゆるヘッドボックス9の直前において添加するのが、先のカチオン性凝結剤X1の後工程、特にヘッドボックス9の直前においてサイズ剤X2を添加する事で、特にアニオン性の高い古紙パルプ繊維上に、先のAlの多価金属化合物(例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェイト、アルミン酸ソーダなど)を介してアニオン性の中性ロジンサイズ剤が定着し、更にカチオン性凝集剤X3の添加により、微細繊維に定着したサイズ剤、及び遊離のサイズ剤などを捕集する効果を発現し、ドライヤー上でアルミニウムイオンと反応することによりサイズ性が発現するものと推定されるため、好適である。
【0072】
また、抄紙網において欠損する微細填料(ホワイトカーボンや炭酸カルシウム)の量を格段に低減させることができる。
【0073】
ここで、本発明においては、カチオン性凝集剤X3の添加量は純分で50〜400ppmとする。好適には、100〜100ppmとする。50ppm未満では、炭酸カルシウムの歩留まり向上の効果が得られづらい。また、400ppmを超えて添加すると地合いが悪化する。
【0074】
本形態においては、カチオン性凝結剤X1が原料パルプの配合調整段階で添加され、サイズ剤X2が、中性ロジンサイズ剤で、かつカチオン性凝結剤X1とは異なる後工程で添加されると、より好ましいものとなる。つまり、配合チェスト2等で予めアニオン性の強い微細繊維、灰分をカチオン性凝結剤X1で安定化させ、後工程の種箱4等にてサイズ剤X2とサイズ定着剤を添加し、さらにカチオン性凝集剤X3で、封鎖しておくと好ましい。
【0075】
本発明において得られた電子写真用紙は、JIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gである。
【0076】
JIS P 8220に準拠して離解した、本発明に係る電子写真用紙の離解パルプスラリー濾液の荷電密度は、原料パルプ、原料パルプの配合調整段階で添加されるカチオン性凝結剤X1、サイズ剤X2、カチオン性凝集剤X3を調整主剤として用いることができるが、原料パルプの配合調整段階で添加されるカチオン性凝結剤X1は、原料パルプスラリーのイオン性を安定化させることが主目的であり、実質は、抄紙原料を抄紙網に対して供給する直前、いわゆるヘッドボックス9の直前において添加するカチオン性凝集剤X3の添加量に委ねるところが大きい。
【0077】
本発明者等は、古紙パルプ70%以上含有する電子写真用紙の製造について鋭意検討して、古紙パルプ由来のアニオントラッシュを原料パルプの配合段階で多く含んでいても、好適には荷電密度が18Meq/g以上のカチオン性凝結剤X1を添加して微細繊維などのアニオン性物質所謂アニオントラッシュの凝結を促進するとともに、更にコントロールし、荷電密度を+0.001〜+0.015meq/Lに制御し、更に後工程で内添サイズ剤X2を添加し、さらに原料調整工程で添加した凝結剤X1よりも荷電密度(強度)の低い凝集剤X3を添加することで、サイズ剤X2の定着促進と残留するアニオントラッシュなどによる欠陥の発生を抑制でき、得られた電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gであり、ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35秒/(g/m2)であることを特徴とする電子写真用紙を得ることができることを見出している。
【0078】
JIS P 8220に準拠して離解した、本発明に係る電子写真用紙の離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7meq/g未満の場合は、サイズ剤の定着や微細繊維の適度なパルプ繊維への定着が得られないため、微細な凝集体や、凝集体が十分に形成されない。凝集が未形成のため、抄紙段階でサイズ剤の流失が生じ、サイズ性の発現が成されない。その結果、電子写真印刷機での印刷において、水分変動が生じやすくなり、カールの問題が発現しやすくなる。
【0079】
逆に、荷電密度が1.4meq/gを超えた場合、原料調整段階で添加薬品の凝集や、その凝集物を介在して、パルプスラリーを凝集する効果が強い状態で抄紙されているため、電子写真用紙中でのアニオントラッシュや填料、微細繊維の凝集が大きくなり、こうした状態で製造された電子写真用紙は、地合い形成が不良に成りやすく、サイズ効果のムラが生じ、カールが生じやすくなる問題を発現する。
【0080】
前述したとおり、後工程の種箱4にてカチオン性のサイズ定着剤(硫酸バンド)を入れるため、種箱4における荷電密度を、後工程で添加するカチオン性凝集剤X3にて調整し、得られた前記電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gに成るように調整することが好ましい。
【0081】
離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gに成るように調整する手段は、本発明において、カチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤がこの順に添加されるように、原料パルプの配合調整段階での比較的高い荷電密度のカチオン性凝結剤を用い、サイズ剤添加後に先のカチオン性凝結剤よりも荷電密度の低いカチオン性凝集剤をもちいることで調整可能になる。
【0082】
本発明における電子写真用紙は、ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35秒/(g/m2)であるが、好ましくは0.12秒以上0.30秒以下の範囲、より好ましくは0.13秒以上0.25秒以下の範囲である。
【0083】
ステキヒドサイズが0.12秒/(g/m2)未満だと親水性が高く、平衡水分が上昇し、コピー機で使用した場合、紙の表面、裏面で水分率の差が発生し、カールしやすくなる問題を抱える。ステキヒドサイズが0.35秒/(g/m2)を超えると内添サイズ剤、外添サイズ剤を過剰に添加する必要があるため、マシン系内の汚れ、アフタードライヤーの汚れにつながる。
【0084】
また、このステキヒトサイズ度が、0.10秒未満であると、本発明におけるサイズ効果が十分に発現されていないことによるカールの問題が発現する。また、近年多用されるインクジェット記録におけるインクの吸収性が高くなるため、インクジェット記録方式においてフェザリングが悪化し、細かい文字が判別不能になってしまったり、バーコード等を印字した場合に読み取り不可能となったりして実用性を損なう。一方、0.35秒を超えると、インクの浸透が遅くなるため色間にじみが発生し、カラー画質が悪化する。
【0085】
ここで、本発明のステキヒトサイズ度は、JIS−P−8111:1998に規定する標準環境(温度23℃、相対湿度50%)において測定したJIS−P−8122:1976にいうステキヒトサイズ度を、記録用坪量を基準として補正したものである。ステキヒトサイズ度をそのまま使用したのでは、電子写真用紙の坪量の影響を排除できないからである。本発明で定義した「ステキヒトサイズ度」は、次の式(1)で表される。
式(1)
ステキヒトサイズ度 = ステキヒトサイズ度(JIS−P−8122) ÷ 坪量
【0086】
更には、古紙から得る古紙パルプの調整において、原料古紙の選択に合わせて、分級、叩解処理等による原料パルプの調整にて、NKP:10〜20、LKP:50〜70、MP:10〜40となるように配合された原料パルプ構成を取ることで、原料古紙の選択では不十分な、古紙パルプ配合割合が70重量%以上用いる電子写真用紙の製造において、カチオン性凝集剤、サイズ剤、カチオン性凝集剤との組み合わせにおいて、十分なステキヒドサイズ度の確保とカール防止を図ることができる。
【0087】
オンラインの荷電密度測定装置としては、代表的にPCT15もしくは20(mutek社製)を、携帯用の荷電密度測定装置としてはPCD03(mutek社製)を挙げることができる。この荷電密度測定装置は、試料を試験機のセルの中に導き入れ上下ピストンの稼動にてセルシリンダーとピストンの間にサンプル液の流れが生じることでコロイド粒子の表面電荷のひずみによって電気を生じさせる。パルプ懸濁液中のコロイド状溶解物質粒子はイオンにより電気を帯びており、これを利用することでチャージ要求量を高分子電解質測定によって測定させる装置である。
【0088】
古紙パルプの配合割合を70重量%以上配合することで、必然的に古紙由来の灰分の増加が生じる。古紙由来の灰分は、元来古紙から古紙パルプを再生する工程において殆どが系外に排出されるものの、繊維に物理的又は化学的に固着した微細な灰分成分が古紙パルプ中に残留し、再び抄紙原料として用いられることにより得られるものであり、バージンの填料と比べ、原料パルプとの密着性が高い故に、電子写真印刷を行った際にトナーの定着性を向上する相乗効果をもたらす。更に、原料として用いる古紙の選択により、灰分の主成分を炭酸カルシウムとホワイトカーボンに調整することで、古紙パルプを70重量%以上配合しながら、電子写真用紙の不透明性の向上と白色度向上に寄与する。
【0089】
また、荷電密度が高いカチオン性凝結剤を用いると好ましい。荷電密度が高いカチオン性凝結剤は、後工程で添加される中性ロジンサイズ剤との相性が良く、他の中性サイズ剤と比べ薬品歩留が高く、ステキヒドサイズを低添加量で向上させることができる。
【0090】
更に後工程で添加される先のカチオン性サイズ剤よりも低いカチオン性凝集剤を組み合わせることで、中性ロジンサイズ剤の更なる歩留向上を図れ、効果的なカール防止効果を醸し出すことができる。
【0091】
原料パルプ配合工程で、荷電密度の高いカチオン性凝結剤、後工程でサイズ剤、サイズ剤を添加後、先のカチオン性凝結剤よりも荷電密度の低いカチオン性凝集剤を組み合わせ使用することで、各薬品の効果向上を図ることができると共に、抄紙系内のアニオントラッシュによる汚染を防止すると共に、抄紙機でのウエットエンドコントロールが容易なり、操業性が改善されるとともに、得られる電子写真用紙は、古紙パルプの配合割合が70重量%以上と多いにも拘わらず、カールの無い、電子写真印刷適性に優れた電子写真用紙を得ることができる。
【0092】
さらに、コピー適性、走行性等の電子写真適性を付与するために原料の調成、製造条件のコントロールが行われる。また画像の乱れを防止し、適当なコピー画像濃度を維持するため、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スチレン‐マレイン酸コポリマー、第4級アンモニウム塩等の導電剤を抄紙機のサイズプレスで表面塗布して、表面電気抵抗(JIS K 6911による)を109〜1013Ω(温度20℃、湿度65%RH)にすることが好ましい。
【実施例】
【0093】
次に、本発明の実施例を説明する。
表1に示す種類及び割合で混合された原料パルプに、表2に示す種類、物性及び添加量(固形分)のカチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤をこの順に添加して(添加場所も表2中に示す。)抄紙原料を得、これを抄紙して電子写真用紙を得た。
【0094】
・A:カチオン性凝結剤
ハイモ(株)製のNR−783(1.45Meq/g)
ハイモ(株)製のSC−924(5.4〜7.2Meq/g)
ポリアルキレンイミン変性物A(15.2Meq/g)
… エピクロロヒドリンとジメチルアミンとを反応させたポリカチオン物質に、日本触媒株式会社製ポリエチレンイミンP―200を反応させて得た、ポリアルキレンイミン変性物である。
ポリアルキレンイミン変性物B(18.6Meq/g)
… エピクロロヒドリンとジメチルアミンとを反応させたポリカチオン物質に、日本触媒株式会社製ポリエチレンイミンSP―1050を反応させて得た、ポリアルキレンイミン変性物である。
ポリアルキレンイミン変性物C(17.5Meq/g)
… ポリアルキレンイミン変性物Bの反応において、ポリカチオン物質を調整し、荷電密度を変更した、ポリアルキレンイミン変性物である。
【0095】
・B:サイズ剤
松谷化学工業社製のアミロファックス(中性ロジン)
ハリマ化成社製のハーサイズAK−720H(AKD)
【0096】
・C:カチオン性凝集剤
ハイモ(株)製のND−270(0.34〜0.51Meq/g)
ポリアルキレンイミン変性物D(0.85Meq/g)
… ポリアルキレンイミン変性物Aの反応において、ポリカチオン物質を調整し、荷電密度を変更した、ポリアルキレンイミン変性物である。
【0097】
・D:アニオン性凝集剤
ハイモ(株)製のFA−230(1.13〜1.38Meq/g)
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
得られた各電子写真用紙について、物性(品質データ)を表3に示した。また、テストコピー前及びテストコピー後におけるカール及びねじれ、並びに、走行性(ジャム、耳折れ、定着シワ、冊間重送)を評価し、結果を表4に示した。
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
(米坪)
JIS P 8124に基づいて測定した。
【0103】
(紙厚)
JIS P 8118に基づいて測定した。
【0104】
(平滑度)
JIS P 8119に基づいて測定した。
【0105】
(透気度)
【0106】
JIS P 8117に基づいて測定した。
【0107】
(剛度)
JIS P 8143に基づいて測定した。
【0108】
(白色度)
JIS P 8148に基づいて測定した。
【0109】
(電気抵抗)
22℃55%RHでの表面電気抵抗率は、22℃55%RHの条件下に24時間保存し、調湿された記録用紙を同環境下でJIS−K−6911に準拠した方法で測定したものである。
【0110】
(灰分)
JIS P 8251に基づいて測定した。
【0111】
(ステキヒドサイズ)
JIS P 8122に基づいて測定した。
【0112】
(荷電密度)
(1)測定試料を絶乾30g採取し、純水を使用して離解する。
離解条件 絶乾 :30g
純水量 :2000ml
離解濃度 :1.5%
離解時間 :10分
使用離解機:標準離解機(JIS P 8220に準拠)
(2)離解後試料を、吸引ろ過(ADVANTEC社製 型番:5A 70mm)後、濾液を10ml採取する。
(3)(2)の試料の荷電密度を、mutek社製の形式:PCD03にて測定した。
【0113】
(カール適正)
<コピー前>
・カール度
得られた電子写真用紙をA4サイズに断裁し、22℃55%RHで24時間放置後、100mm×100mmの大きさに断裁し、フェルト面(巻き取りの表出面)を上にして4時間以上静置した後に評価した。カールの計測は、カール内側の面が上になるように各試料を平らな板の上に載せ、各試料の4隅の高さを測ることによって行った。表に示す値は、4隅の高さの平均値の絶対値である。
【0114】
・ねじれ
得られた電子写真用紙をA4サイズに断裁し、図2に示すように、当該電子写真用紙Sを吊り下げ、距離L(絶対値)を計測し、ねじれ値とした。
【0115】
<コピー後>
・カール度
リコー製複写機(imagioMPC6000)を用い、A4横目でモノクロ印字を行い、10枚目の印字サンプルを用い、印字後10分後の平面に置いた四隅のカール高さ最大値(絶対値)を測定した。評価は下記の基準で評価した。
【0116】
・ねじれ
リコー製複写機(imagioMPC6000)を用い、A4横目でモノクロ印字を行い、10枚目の印字サンプルを用い、図2に示すように、当該電子写真用紙Sを吊り下げ、印字後10分後の距離L(絶対値)を計測し、ねじれ値とした。
【0117】
(走行性データ)
リコー製複写機(imagioMPC6000)を用い、A4横目でモノクロ印字を行い、1000枚印字した時のジャムトラブル、耳折れ、定着シワ、冊間重送について評価した。
○:ジャムトラブル、耳折れ、定着シワ、冊間重送が何れも無く、良好なもの。
△:ジャムトラブル、耳折れ、定着シワ、冊間重送の何れかが抑えられずやや不良なもの。
×:ジャムトラブル、耳折れ、定着シワ、冊間重送の何れかが不良で、使用不能なもの。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、電子写真用紙及びその製造方法として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】カチオン性凝結剤、サイズ剤及びカチオン性凝集剤の添加場所を説明するためのフロー図である。
【図2】ねじれ度の測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0120】
1…受入チェスト、2…配合チェスト、3…マシンチェスト、4…種箱、5…第1ファンポンプ、6…クリーナー,7…スクリーン、8…第2ファンポンプ、9…ヘッドボックス、10…炭酸カルシウム受入タンク、11…炭酸カルシウム添加タンク、12…ダブルシックナー、30…水和珪酸受入タンク、31…水和珪酸添加タンク、X1…凝結剤、X2…サイズ剤、X3…凝集剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプを70質量%以上含有する抄紙原料を抄紙して得られる、灰分(JIS P 8251に準拠)6%以上の電子写真用紙であって、
前記抄紙原料には、カチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤がこの順に添加されており、
得られた前記電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gであり、
ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35秒/(g/m2)である、
ことを特徴とする電子写真用紙。
【請求項2】
前記古紙パルプが新聞古紙及び/又は雑誌古紙を主原料とし、前記離解パルプスラリーの構成比が、NKP:10〜20、LKP:50〜70、MP:10〜40となるように配合され、
前記カチオン性凝結剤が原料パルプの配合調整段階で添加され、
前記サイズ剤が、中性ロジンサイズ剤で、かつ前記カチオン性凝結剤とは異なる後工程で添加される、
請求項1記載の電子写真用紙。
【請求項3】
前記カチオン性凝結剤が、
アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、及び、第3級アミンから選択された一種以上のアミン類と、
下記式(1)で表される化合物を主体とするポリカチオン物質と、
分子量10000〜70000のポリアルキレンイミンと、を反応させた下記式(2)で表される構造単位を有するポリアルキレンイミン変性物であり、
前記原料パルプの配合調整段階で、固形分で1.0〜3.0kg/パルプトン添加されている、
請求項1又は請求項2記載の電子写真用紙。
【化1】

ただし、Pはエポキシ基又はハロヒドリン基、pは0〜20の整数であり、R1〜R4は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は、ベンジル基であり、X1〜X2は陰イオンである。
【化2】

ただし、pは0〜20の整数であり、R1〜R4は、水素、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は、ベンジル基であり、X1〜X2は陰イオンである。
【請求項4】
前記ポリアルキレンイミンが、ポリエチレンイミンである、
請求項3記載の電子写真用紙。
【請求項5】
前記カチオン性凝結剤、前記サイズ剤、及び、前記カチオン性凝集剤が、下記の場所、かつ下記の添加量で添加されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用紙。
前記カチオン性凝結剤が、原料パルプの配合調整段階で固形分で1.0〜3.0kg/パルプトン添加されている。
前記サイズ剤が、種箱で固形分で3.0〜8.0kg/パルプトン添加されている。
前記カチオン性凝集剤が、サイズ剤添加後の後工程で固形分で0.1〜5.0kg/パルプトン添加されている。
【請求項6】
古紙パルプを70質量%以上含有する抄紙原料を抄紙して灰分(JIS P 8251に準拠)6%以上の電子写真用紙を製造する方法であって、
前記抄紙原料に、カチオン性凝結剤、サイズ剤、及び、カチオン性凝集剤をこの順に添加して、
得られた前記電子写真用紙をJIS P 8220に準拠して離解した離解パルプスラリー濾液の荷電密度が0.7〜1.4Meq/gとなり、かつ
ステキヒドサイズ(JIS P 8122に準拠)が0.10〜0.35秒/(g/m2)となるようにする、
ことを特徴とする電子写真用紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−19910(P2010−19910A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178104(P2008−178104)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】