説明

電子写真用紙

【課題】画像形成後の耐水性に優れ、脱墨処理の際に効率的にトナーを除去し得る電子写真用紙を提供する。
【解決手段】大豆タンパクポリマーを含有した電子写真用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
地球全体の自然環境を保護する観点から、森林資源を保護する重要性が認識され、資源の利用削減を図ることが重要課題となっている。資源の利用削減の一環として、複写機、プリンタ等で使用された用紙を再利用することが進められている。再利用方法としては、例えば、電子写真装置によってトナーが定着された印刷物を、繊維に叩解してトナーを除去した後、再び用紙として抄紙する方法(脱墨処理)が挙げられる。
【0003】
上記脱墨処理としては、ニーダーによる機械的な摩擦力による剥離方法、セルラーゼを用い用紙の一部を溶解することで剥離する方法などが検討され、またその他にもトナーを溶解する溶剤により剥離する方法(例えば、特許文献1乃至8参照)などが検討されてきた。
【0004】
また、防水性の観点から、アルカリ可溶性樹脂を含有した再生紙に関する技術が開示されている(例えば、特許文献9乃至15参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−241985号公報
【特許文献2】特開平8−146644号公報
【特許文献3】特開平8−146643号公報
【特許文献4】特開平6−299489号公報
【特許文献5】特開平6−297810号公報
【特許文献6】特開平5−125684号公報
【特許文献7】特開2001−303468号公報
【特許文献8】特開2001−214389号公報
【特許文献9】特開2006−104622号公報
【特許文献10】特開平6−166989号公報
【特許文献11】特開平7−279093号公報
【特許文献12】特開平8−3896号公報
【特許文献13】特開平5−247894号公報
【特許文献14】特開平7−119081号公報
【特許文献15】特開平7−90799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、画像形成後の耐水性に優れ、脱墨処理の際に効率的にトナーを除去し得る電子写真用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
大豆タンパクポリマーを含有した電子写真用紙である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記大豆タンパクポリマーの含有量が0.5g/m以上5.0g/m以下である請求項1に記載の電子写真用紙である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂も含めた樹脂の総含有量が5.0g/m以下である請求項2に記載の電子写真用紙である。
【0010】
請求項4に係る発明は、
紙基材と、
該紙基材の画像が形成される側の表面を覆い、前記大豆タンパクポリマーを含む表面層と、
を有する請求項1乃至請求項3に記載の電子写真用紙である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、画像形成後の耐水性に優れ、脱墨処理の際に効率的にトナーを除去し得る電子写真用紙が提供される。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、大豆タンパクポリマーの含有量が本構成の範囲にない場合と比較して、トナーの定着性に優れ、且つ、脱墨処理の際に効率的にトナーを除去し得る電子写真用紙が提供される。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂も含めた樹脂の総含有量が本構成の範囲にない場合と比較して、トナーの定着性に優れた電子写真用紙が提供される。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、大豆タンパクポリマーが電子写真用紙内部に分散状態で存在している場合に比べ、脱墨処理の際に効率的にトナーを除去し得る電子写真用紙が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)はトナー画像を形成した状態の本実施形態に係る電子写真用紙を、(B)はトナー画像を形成した状態の本実施形態に係る電子写真用紙を脱墨する際の状態を模式的に示す概略図である。
【図2】(A)乃至(D)はトナー定着性の試験を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
<電子写真用紙>
本実施形態に係る電子写真用紙は、大豆タンパクポリマーを含有する。
また、上記大豆タンパクポリマーを0.5g/m以上5.0g/m以下含有することが望ましく、更には上記大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂も含めた樹脂の総含有量が5.0g/m以下であることが望ましい。
【0017】
尚、大豆タンパクポリマーとは、大豆から抽出された脱脂タンパク質を分子量(Mw)100,000Dalton以上200,000Dalton以下の範囲になるよう加水分解した後、0.3質量%濃度、40℃、且つpH10で全量の90質量%以上が溶解するまで、カルボキシ変性した大豆蛋白由来の高分子化合物を指す。
【0018】
本実施形態に係る電子写真用紙は、トナー画像が記録されて所望の用途に供された後に再生紙を製造する場合、脱墨処理が施される。この脱墨処理としては「脱墨剤を含有するアルカリ溶液」を用いた脱墨方法が利用され、例えば、脱墨剤を含有するアルカリ溶液によって繊維状に分解し、且つ前記トナーを離解させる離解工程と、離解した前記トナーを分離し繊維状に分解された前記電子写真用紙から前記トナーを脱墨する脱墨工程と、を経て脱墨処理が施される。本実施形態においては、大豆タンパクポリマーを含有するため、上記脱墨処理の際に効率的にトナーが除去される。
この作用は特に明確ではないものの、上記大豆タンパクポリマーが前記アルカリ溶液によって溶解するために、電子写真用紙に定着されたトナーも効率的に除去されるものと推察される。
【0019】
−大豆タンパクポリマーの含有量−
また、上記大豆タンパクポリマーは、本実施形態に係る電子写真用紙において上記の通り0.5g/m以上5.0g/m以下含有されることが望ましく、更には0.75g/m以上4.0g/m以下含有されることがより望ましく、1.0g/m以上3.0g/m以下含有されることが特に望ましい。
大豆タンパクポリマーの含有量が、0.5g/m以上5.0g/m以下の場合に、大豆タンパクポリマーは電子写真用紙内部に適度に存在するため、トナー定着時にトナーの電子写真用紙内部への適度な浸透と固定化が起こり、大豆タンパクポリマーの含有量がこの範囲にない場合に比べて、トナーを効率的に除去し得る。0.5g/m以上であることにより、画像が形成される側の表面に大豆タンパクポリマーが十分存在し、トナーの除去性に優れる。一方、5.0g/m以下であることにより、表面が樹脂で覆われ過ぎることがなく、トナー定着時に、トナーの電子写真用紙の空隙への投錨効果が機能し、トナー定着性に優れる。
【0020】
−大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂も含めた樹脂の総含有量−
また、本実施形態に係る電子写真用紙においては、上記大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂も含めた樹脂の総含有量が5.0g/m以下であることが望ましく、更には4.0g/m以下であることがより望ましく、3.0g/m以下であることが特に望ましい。
樹脂の総含有量が5.0g/m以下であることにより、樹脂が電子写真用紙内部に適度に存在するため、トナー定着時にトナーの電子写真用紙内部への適度な浸透が起こり、トナー定着性の低下が抑制される。また、表面が樹脂で覆われ過ぎることがなく、トナー定着時に、トナーの電子写真用紙の空隙への投錨効果が機能し、トナー定着性に優れる。
尚ここで、従来の耐水紙においては、耐水性を確保する観点で樹脂を充填していたが、本実施形態においては、トナーの電子写真用紙の空隙への投錨効果を機能させる観点、即ち電子写真特性の観点で、大豆タンパクポリマーとそれ以外の他の樹脂との含有量を上記範囲にすることが望ましい。
【0021】
−大豆タンパクポリマーが含有される態様−
尚、本実施形態に係る電子写真用紙は、紙基材と、該紙基材の画像が形成される側の表面を覆い、前記大豆タンパクポリマーを含む表面層と、を有する態様であることがより望ましい。
【0022】
即ち、図1に示すごとく、該紙基材52Aの画像が形成される側の表面を大豆タンパクポリマーを含む表面層54が覆った態様であることがより望ましい。該態様であることにより、脱墨処理の際に、表面層54が前記アルカリ溶液によって溶解するために、脱墨剤60が表面に付着したトナー40は紙基材52Aから効率的に除去され、且つ紙基材52Aは膨潤して繊維状の紙成分52Bに分解されるものと推察される。
【0023】
−平滑度−
また、上記のごとく、紙基材52Aの画像が形成される側の表面を、大豆タンパクポリマーを含む表面層54が覆った態様である場合には、更に、当該表面層54が形成されている側の表面の平滑度が20s以上180s以下であることが望ましく、30s以上150s以下であることがより望ましく、40s以上120s以下であることが特に望ましい。
【0024】
尚、上記平滑度は以下の方法により測定され、本明細書に記載の数値は該方法により測定したものである。前記平滑度として本明細書では王研式平滑度を用い、Japan TAPPI No.5で規定される方法により、王研式平滑度透気度試験機(型名EY−5、旭精工株式会社製)を用いて測定される。
【0025】
本実施形態に係る電子写真用紙にトナーを定着する際に、トナーの電子写真用紙の空隙への投錨効果を機能させる観点から、上記表面層54は紙基材52Aの表面の凹凸を埋めない状態で形成されていることが望ましく、その観点から表面層54が形成されている側の表面の平滑度が上記範囲であることが望ましい。
【0026】
−透気度−
また、上記のごとく、紙基材52Aの画像が形成される側の表面を大豆タンパクポリマーを含む表面層54が覆った態様である場合には、更に、電子写真用紙の透気度が7s以上100s以下であることが望ましく、10s以上80s以下であることがより望ましく、15s以上60s以下であることが特に望ましい。
【0027】
尚、上記透気度は、以下の方法により測定され、本明細書に記載の数値は該方法により測定したものである。前記透気度として本明細書では王研式透気度を用い、Japan TAPPI No.5で規定される方法により、王研式平滑度透気度試験機(型名EY−5、旭精工株式会社製)を用いて測定される。
【0028】
本実施形態に係る電子写真用紙にトナーを定着する際に、トナーの電子写真用紙の空隙への投錨効果を機能させる観点から、上記表面層54は紙基材52Aの表面の凹凸を埋めない状態で形成されていることが望ましく、その観点から電子写真用紙の透気度が上記範囲であることが望ましい。
【0029】
尚、平滑度および透気度を上記範囲に制御する方法としては、上記表面層54を薄く形成する、具体的には前述の含有量となる範囲で表面層54を形成する方法が挙げられる。
【0030】
−脱墨剤を含有するアルカリ溶液−
前述の通り、本実施形態に係る電子写真用紙は、トナー画像が記録されて所望の用途に供された後に再生紙を製造する場合、脱墨処理が施される。この脱墨処理としては「脱墨剤を含有するアルカリ溶液」を用いた脱墨方法が利用され、例えば、脱墨剤を含有するアルカリ溶液によって繊維状に分解し、且つ前記トナーを離解させる離解工程と、離解した前記トナーを分離し繊維状に分解された前記電子写真用紙から前記トナーを脱墨する脱墨工程と、を経て脱墨処理が施される。
ここで、上記脱墨剤としては、例えば、高級アルコール硫酸塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸塩、脂肪酸もしくは脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールおよびアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物、多価アルコールエステルアルキレンオキサイド、高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物またはそのエーテル化合物もしくはエステル化合物等が挙げられるが、本実施形態においては特に限定されるものではない。
また、上記アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、溶液のpHが9.0以上12.5以下の範囲であれば、上記材料でなくても構わない。アルカリ溶液としては1種類以上を使用しても、複数種類を併用してもよい。
【0031】
以下、本実施形態に係る電子写真用紙の構成について説明する。
【0032】
(紙基材)
紙基材としては、普通紙、一般の印刷用紙等の、通常用いられる記録紙が挙げられる。具体的には、例えば、パルプ繊維(および必要に応じて填料)を主成分として含むものを用いてもよい。また、上記実施形態において用いられる紙基材としては、例えば、トナー像を形成する側の面にパルプの繊維が露出しているものが挙げられる。
【0033】
前記パルプ繊維としては、化学パルプ、具体的には、広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等のほか、木材および綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ、等が望ましく挙げられる。
【0034】
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、およびチップを少し軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ、高収率が特徴であるケミサーモメカニカルパルプ等も使用される。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
【0035】
前記バージンパルプとしては、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free:ECF)や、塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free:TCF)で漂白処理されたものが望ましい。また、前記古紙パルプの原料としては、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;が挙げられ、これらを目的に応じて配合してもよい。
【0036】
古紙パルプとしては、上記した原料を、オゾン漂白処理および過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものが望ましい。また、前記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50から100質量%とすることが望ましい。さらに、前記古紙パルプの配合率を70から100質量%とすることがより望ましい。
【0037】
また、記録紙には、パルプ繊維に加え必要に応じて、不透明度、白さおよび表面性を調整するために填料を添加してもよい。また、ハロゲン含量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない填料を使用することが望ましい。
前記填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機顔料、および、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、尿素樹脂、等の有機顔料が挙げられる。
【0038】
また、記録紙に古紙パルプを配合する場合には、古紙パルプ原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
前記填量の配合量は、特に制限されないが、前記パルプ繊維100質量部に対して、1から80質量部が望ましく、1から50質量部がより望ましい。
【0039】
(大豆タンパクポリマー)
本実施形態に係る電子写真用紙に含有される大豆タンパクポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、カチオン電荷をもつよう変性した大豆タンパクポリマー、アニオン電荷をもつよう変性した大豆タンパクポリマー、アニオン電荷とカチオン電荷双方を持つよう変性した大豆タンパクポリマー等が挙げられる。
これらの中でも、アニオン電荷とカチオン電荷双方を持つよう変性した大豆タンパクポリマーが特に望ましい。
【0040】
上記大豆タンパクポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、100,000以上200,000以下が望ましく、更には110,000以上180,000以下がより望ましい。
【0041】
尚、上記重量平均分子量の測定は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel、SuperHM−M(15cm)を使用し、THF(テトラヒドロフラン)溶媒で行われる。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出されるものである。
【0042】
尚、大豆タンパクポリマーは、前記の通り0.5g/m以上5.0g/m以下含有することが望ましい。
【0043】
また、本実施形態においては、更に上記大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂を含有してもよい。該他の樹脂としては、酸化でんぷん、酵素変性でんぷん、変性でんぷん、誘導体化でんぷん、ポリビニルアルコール、カゼイン等が挙げられる。
上記大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂も含めた樹脂の総含有量は、前記の通り5.0g/m以下であることが望ましい。
【0044】
本実施形態に係る電子写真用紙においては、上記大豆タンパクポリマーを含有しており、更には、既述の通り、図1に示すごとく、紙基材52Aの画像が形成される側の表面を大豆タンパクポリマーを含む表面層54が覆った態様であることがより望ましい。
また、上記の表面層54を形成する際には、前述の平滑度および透気度の要件を備えることがより望ましい。
【0045】
ここで、紙基材52Aの画像が形成される側の表面に前記表面層54を形成する方法について説明する。
表面層54を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、サイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、バーコーターなどを用い塗工する方法が挙げられ、中でもサイズプレスによる塗工が望ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中において、「部」および「%」は、特に断りのない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
【0047】
−実施例1−
[記録用紙(A1)の製造方法]
・紙基材(中質古紙)の製造
濾水度380mlの中質脱墨パルプをパルプ固形分が0.3%になるようパルプ分散液を調製した。このパルプ分散液に、パルプ分散液中に含まれるパルプ固形分100部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製、Fibran−81)を0.3部と、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製Cato−304)0.5部とを配合し、熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1600m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cmの条件で抄紙した。その後、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kgf/cmで3分間圧搾した後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、0.5m/min条件で乾燥し、坪量67.5g/mの紙基材(中質古紙)を得た。この紙基材(中質古紙)の濾水度は380mlであった。
【0048】
・表面層の形成
この紙基材に、以下の表面サイズ液を50℃に加温し、大豆タンパクポリマーの含有量が1.5g/mに、樹脂の総含有量が2.3g/mになるように、熊谷理機製試験用サイズプレスでサイズプレスした後、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で120℃、1.0m/min条件で乾燥し記録用紙(1)を得た。坪量は70.0g/mであった。
(表面サイズ液)
・酸化澱粉(表面サイズバインダー、
王子コーンスターチ株式会社製、エースA) (固形分で)100部
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・大豆タンパクポリマー(Dupont Soy Polymers社製、
Pro−Cote4200、Mw180,000) 200部
を含む8%濃度の水溶液
【0049】
−実施例2−
[記録用紙(A2)の製造方法]
用いる紙基材を濾水度480mlのLBKP(LBKP(1)と称す)に変更し、表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を0.7g/mに、樹脂の総含有量を0.74g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・大豆タンパクポリマー(Dupont Soy Polymers社製、
Pro−Cote5000、Mw110,000) 300部
を含む2.6%濃度の水溶液
【0050】
−実施例3−
[記録用紙(A3)の製造方法]
表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を2.0g/mに、樹脂の総含有量を2.1g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・大豆タンパクポリマー(Dupont Soy Polymers社製、
Pro−Cote4200、Mw180,000) 300部
を含む7.3%濃度の水溶液
【0051】
−実施例4−
[記録用紙(A4)の製造方法]
用いる紙基材を濾水度380mlのLBKP(LBKP(2)と称す)に変更し、表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を3.2g/mに、樹脂の総含有量を4.1g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・酸化澱粉(表面サイズバインダー、
王子コーンスターチ株式会社製、エースA) (固形分で)60部
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・大豆タンパクポリマー(Dupont Soy Polymers社製、
Pro−Cote5000、Mw110,000) 240部
を含む14.3%濃度の水溶液
【0052】
−実施例5−
[記録用紙(A5)の製造方法]
表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を4.5g/mに、樹脂の総含有量を4.9g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・酸化澱粉(表面サイズバインダー、
王子コーンスターチ株式会社製、エースA) (固形分で)19部
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・大豆タンパクポリマー(Dupont Soy Polymers社製、
Pro−Cote5000、Mw110,000) 281部
を含む17%濃度の水溶液
【0053】
−実施例6−
[記録用紙(A6)の製造方法]
表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を2.9g/mに、樹脂の総含有量を5.2g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・酸化澱粉(表面サイズバインダー、
王子コーンスターチ株式会社製、エースA) (固形分で)130部
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・大豆タンパクポリマー(Dupont Soy Polymers社製、
Pro−Cote5000、Mw110,000) 170部
を含む18%濃度の水溶液
【0054】
−比較例1−
[記録用紙(B1)の製造方法]
用いる紙基材を前記LBKP(2)に変更し、表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を0g/mに、樹脂の総含有量を2.2g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・ウレタン樹脂(亜細亜工業社製、WU−104) 300部
を含む7.7%濃度の水溶液
【0055】
−比較例2−
[記録用紙(B2)の製造方法]
表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を0g/mに、樹脂の総含有量を1.0g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・酸化澱粉(表面サイズバインダー、
王子コーンスターチ株式会社製、エースA) (固形分で)270部
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・水系チタンポリマー 30部
を含む3.5%濃度の水溶液
【0056】
−比較例3−
[記録用紙(B3)の製造方法]
用いる紙基材を前記LBKP(2)に変更し、表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を0g/mに、樹脂の総含有量を3.2g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・水系ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロナールMD−1200) 300部
を含む11.1%濃度の水溶液
【0057】
−比較例4−
[記録用紙(B4)の製造方法]
表面サイズ液を以下のものに変更し、且つ大豆タンパクポリマーの含有量を0g/mに、樹脂の総含有量を2.0g/mに変更した以外は、実施例1に記載の方法により記録用紙を得た。
(表面サイズ液)
・ボウ硝 10部
・表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、ポリマロン1355) 10部
・ポリエチレンオキサイド(明成化学工業社製、アルコックス) 300部
を含む7%濃度の水溶液
【0058】
以上の各実施例および比較例の記録用紙における坪量、平滑度、透気度を前述の方法により測定した。結果を下記表1に示す。
【0059】
[評価方法]
・リサイクル性の評価方法
以下のように脱墨および再生用紙の作製を行って評価した。
DocuCentreColor f450(富士ゼロックス社製、以下「DCCf450」と称す)を用い、前記実施例および比較例にて得られた各記録用紙に単色黒色にて印刷面積率10%で、電子写真方式で画像を出力し、画像出力後の記録用紙を3cm角に切り刻んだ。
水酸化ナトリウムによりpH12に調整したアルカリ水溶液に、更に脱墨剤(DI−7027(花王株式会社製))を0.5%になるように添加し、その水溶液にパルプ濃度12%になるように、前記3cm角に切り刻んだ記録用紙を入れ、温度25℃の条件下で、Tappi標準離解機により、20分間離解させた。次いでこのパルプ液を1%まで希釈し、希釈したパルプ液を900mlのふた付きガラス瓶に500ml入れ、ラボシェイカーで200rpmにて10分間攪拌後、1分間静置し、浮遊トナーを取り捨てた。その後、15φのブフナーロートでろ過し、乾燥後の用紙坪量が65g/mから70g/mになるように再生用紙を作製した。
再生された用紙50枚を、顕微鏡もしくはスキャナーで観察し、0.004mm以上のダート数をカウントし、用紙1mあたりのダート数を算出して、以下の基準で評価を行った。
○:10,000個/m未満
△:10,000個/m以上20,000個/m未満
×:20,000個/m以上
【0060】
・トナー定着性の評価方法
定着性の評価方法は、前記DCCf450(富士ゼロックス社製)を用い、前記実施例および比較例にて得られた各記録用紙に図4(A)のように出力されたPk100%トナー画像部80を、図4(B)のように折り曲げ線に沿って折り曲げ、この折り曲げ部を図4(C)のようにベンコット82で軽く擦った際、目視でPkトナー画像の表面のトナー剥離が発生しているか否か(図4(D)参照)を確認し、その発生度合いを評価した。
なお、測定環境は、JIS環境(温度23℃、相対湿度50%RH)である。また、Pkトナー画像部とは、Y、M、Cの三色の画像濃度100%で黒色を表現した画像部分である。
◎:トナー剥離発生せず
○:折り曲げられた部分の面積の内、トナー剥離部分の面積率が5%未満
△:折り曲げられた部分の面積の内、トナー剥離部分の面積率が5%以上
【0061】
・耐水性の評価方法
前記DCCf450(富士ゼロックス社製)を用い、前記実施例および比較例にて得られた各記録用紙に単色黒色にて印刷面積率100%で電子写真方式で画像を出力し、画像出力後の記録用紙を3cm角に切り刻んだ。この3cm角のシート1枚を、900mlのふた付きガラス瓶にpH7±0.3の水溶液500mlと共に入れ、ラボシェイカーで200rpmにて10分間攪拌後、1分間静置し、ティッシュでそのシートの表面の水をふき取った後、ベンコットで軽く擦った際、目視で画像表面のトナー剥離が発生しているか否かを確認し、その発生度合いを評価した。
○:トナー剥離発生せず、
△:3cm角の全体面積の内、トナー剥離部分の面積率が5%未満
×:3cm角の全体面積の内、トナー剥離部分の面積率が5%以上
以上の評価の結果を、下記表1に示す。
【0062】
【表1】



【符号の説明】
【0063】
40 トナー
50 電子写真用紙
52A 紙基材
52B 繊維状の紙成分
54 表面層
60 脱墨剤
80 トナー画像部
82 ベンコット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆タンパクポリマーを含有した電子写真用紙。
【請求項2】
前記大豆タンパクポリマーの含有量が0.5g/m以上5.0g/m以下である請求項1に記載の電子写真用紙。
【請求項3】
前記大豆タンパクポリマー以外の他の樹脂も含めた樹脂の総含有量が5.0g/m以下である請求項2に記載の電子写真用紙。
【請求項4】
紙基材と、
該紙基材の画像が形成される側の表面を覆い、前記大豆タンパクポリマーを含む表面層と、
を有する請求項1乃至請求項3に記載の電子写真用紙。

【図1】
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【図2】
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