説明

電子写真用部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】長期間の使用によっても性能が変化し難い電子写真用部材の提供。
【解決手段】軸芯体、弾性層および表面層を有する電子写真用部材であって、該表面層は、下記式(1)および式(2)で表わされる化学結合を有する酸化チタン膜からなることを特徴とする電子写真用部材:
式(1)
O−Ti−O
式(2)
Ti−O−C。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像部材や帯電部材等に用いられる電子写真用部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において、現像ローラは感光ドラムとの間で十分なニップ幅を確保することで、安定に回転させるため、弾性層を有する構成が一般的である。そして、表面のトナー搬送性を良好とし、また、表面へのトナーの固着などを抑えるために表面層が形成されている。
【0003】
また、感光ドラムと接触配置され、当該感光ドラムを所定の電位に帯電させる帯電ローラも、現像ローラと同様に弾性層と表面層とを有する構成が一般的である。
【0004】
ところで、電子写真装置に対する、より一層の耐久性の向上の要求に伴って、現像ローラや帯電ローラ等の電子写真用部材に対しても、長期間の使用による性能の変化をより小さくすることが求められてきている。
【0005】
このような要求に対して、導電性ローラの表面近傍の耐久性を向上させるために、特許文献1では、表面に5μm以下のセラミックスコーティング層を設けた現像ローラが提案されている。また、特許文献2では、表面にチタンおよびタングステン原子を有するセラミックスをコーティングした現像ローラや現像剤規制部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01−257881号公報
【特許文献2】特開平01−142749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らの検討によれば、上記のようなセラミックスからなる表面層は、表面層自体の耐久性は高いものの、硬度が高い。そのため、このような表面層を備えた導電性ローラを現像ローラとして用いた場合、現像ローラの表面にトナーが固着していく、いわゆるフィルミング現象が発生する場合があった。
【0008】
フィルミングが発生するとトナーへの帯電性能や表面性状が変わるため、フィルミングの発生前後で電子写真画像の濃度等が変化することがある。また、上記特許文献に係る導電性ローラを帯電ローラとして用いた場合にも、表面へのトナーの固着が生じ感光ドラムに帯電ムラを生じさせることがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、長期間の使用によっても性能が変化し難い、耐久性に優れた電子写真用部材を提供することにある。また、本発明の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、軸芯体、弾性層および表面層を有する電子写真用部材であって、
該表面層は、下記式(1)および式(2)で表わされる化学結合を有する酸化チタン膜からなる電子写真用部材が提供される:
式(1)
O−Ti−O
式(2)
Ti−O−C。
【0011】
また、本発明によれば、上記の電子写真用部材を具備し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジが提供される。更に、本発明によれば、上記の電子写真用部材を具備している電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期間の使用によっても性能が変化し難く、安定した電子写真画像の形成に資する電子写真用部材を得ることができる。
【0013】
また、本発明によれば、高品位な電子写真画像を形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るローラ形状の電子写真用部材(電子写真用導電性ローラ)の断面概略図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の一例の概略図である。
【図3】本発明に係る現像装置の一例の概略図である。
【図4】本発明に係る表面層の形成に用い得るCVD装置に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる電子写真用部材は、電子写真装置において、現像ローラや帯電ローラ等に用いられる。図1に、本発明の導電性ローラの一例の断面概略図を示す。図1(a)及び(b)はそれぞれ、軸芯体の軸方向に対して平行及び垂直に導電性ローラを切断した際の断面概略図である。この導電性ローラは、軸芯体1aの外周上に、弾性層1bを有しており、弾性層1bの外周上に表面層1cを有している。
【0016】
(軸芯体)
軸芯体は、導電性部材の電極および支持する部材として機能するものであれば本発明に適用できる。その材質として、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、鉄等の金属または合金、導電性合成樹脂等の導電性の材質を用いることができる。
【0017】
(弾性層)
弾性層は、感光ドラムまたは現像剤規制部材との圧接時に適度に面積を持って接触するために、導電性ローラに弾性を持たせるための層であることができ、この目的を逸脱しない限り、弾性層は、単層または複数層とすることができる。
【0018】
また、本発明に用いる弾性層は、電子写真装置用導電性ローラにおいて公知の材料を用いて作製することができ、例えば以下のゴム及び導電剤を材料として用いることができる。
【0019】
ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブタジエンゴム(BR)、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。なお、これらのゴムを単独あるいは数種類を混ぜた混合物を弾性層に用いることもできる。
【0020】
弾性層に配合する導電剤としては、例えば、カーボンブラックを用いることができ、カーボンブラックは、特に制限することなく使用することができる。例えば導電性の高いアセチレンブラックや、ファーネスブラックとしてSAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF等が挙げられる。なお、導電性ローラの抵抗は1.0×10〜1.0×1012であることが好ましいことから、カーボンブラックの添加量は、ゴム100質量部に対して、1質量部以上80質量部以下とすることが好ましく、より好ましい範囲は2質量部以上70質量部以下である。
【0021】
さらに、必要に応じて他の導電剤をカーボンブラックと併せて使用することができる。例えば、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体などを各種導電化処理した金属酸化物が挙げられる。なお、導電性ローラの抵抗は1.0×10〜1.0×1012であることが好ましいことから、これらの他の導電剤の添加量は、ゴム100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下とすることが好ましく、より好ましい範囲は5質量部以上18質量部以下である。
【0022】
また、その他各種添加剤として、電子写真装置用導電性ローラにおいて公知のものを使用することができる。例えば親水性シリカ、疎水性シリカ、石英、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の補強剤、伝熱向上剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0023】
軸芯体上に弾性層を設ける製造方法としては、電子写真用導電性ローラにおいて公知の方法を用いることができる。例えば、軸芯体と、弾性層用の材料とを共に押出して成型する方法や、弾性層形成用材料が液状であれば、円筒状のパイプと、このパイプの両端に配設された軸芯体を保持するための駒と、軸芯体とを配設した金型にこの材料を注入し、加熱硬化する方法等が挙げられる。
【0024】
また、弾性層は、上述したように、単層あるいは複数層とすることができる。例えば、上記ゴムと導電剤を用いて形成した1層目の弾性層(第1の弾性層)の周面上に凹凸を設ける等の目的で、2層目の弾性層(第2の弾性層)を設けることができる。
【0025】
第2の弾性層として、数μm〜数mmの厚さのゴム層を設ける際は、第2の弾性層形成用材料を用いて、電子写真用ローラにおいて公知の製造方法で設けることができる。また、第2の弾性層として、樹脂層を設ける場合は材料として、公知の樹脂を用いることができる。具体的には、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂等及びこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
第2の弾性層として樹脂層を設ける際に、樹脂にカーボンブラックを添加したものを用いることができる。例えば、EC300JやEC600JD(いずれも商品名、ライオン社製)の様な高い導電性をもつカーボンブラックや、中程度の導電性をもつゴム用カーボンブラック或いは塗料用のカーボンブラックが挙げられる。分散性と導電性の制御の観点から塗料用カーボンブラックが好ましい。導電性ローラは中抵抗であることが好ましいことから、カーボンブラックの配合量は、樹脂成分100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。
【0027】
第2の弾性層として、厚さ数μm〜数十μmの樹脂層を設ける方法としては、例えば上記樹脂成分とカーボンブラックと溶剤とを混合、分散した塗工液を、第1の弾性層に塗工することによって得る方法がある。
【0028】
塗工液に用いる溶剤としては、樹脂層として用いる樹脂が溶解するという条件内で適宜使用することができる。例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンに代表されるケトン類、ヘキサン、トルエン等の炭化水素類、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エステル類、水等が挙げられる。特に好ましい溶剤は樹脂の溶解性、沸点からメチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンである。
【0029】
(表面層)
表面層は、下記式(1)および式(2)でそれぞれ表わされる化学結合を有する酸化チタン膜からなる:
式(1)
O−Ti−O、
式(2)
Ti−O−C。
【0030】
すなわち、本発明に係る酸化チタン膜は、酸化チタン膜を構成している少なくとも一部のチタン原子に対して酸素原子を介して炭素原子が結合している。このような構造の酸化チタン膜とすることによって、酸化チタン膜に対して高い柔軟性と弾性層への高い密着性とを付与することができる。なお、表面層中の式1及び2のそれぞれの化学結合は、走査型光電子分光分析装置を用いることにより特定することができる。
【0031】
酸化チタン膜中、上記式(2)で示される結合の量は、Ti原子の原子数に換算して、式1と式2のTi原子の総数に対して20%以上、80%以下が好ましい。この範囲内とすることで、表面層に対して高い耐久性と、トナーのフィルミングの抑制に十分な弾性とを付与し得る。
【0032】
従来の、式(1)で表される結合のみからなる酸化チタン膜を表面層として弾性層上に形成してなる導電性ローラは、当該表面層の硬度が高く、また、表面の平滑度が低いため、トナーのフィルミングが生じることがあった。
【0033】
一方、本発明においては、酸化チタン膜を構成するチタン原子の一部に酸素原子を介して炭素原子が結合しているため、酸化チタン膜の緻密さがある程度減少している。そのため、従来の酸化チタン膜と比較して柔軟性に富み、また、弾性層の変形に対する追従性に優れ、使用中の表面層の弾性層からの剥離が抑制されるものと考えられる。
【0034】
本発明に係る酸化チタン膜は、その表面抵抗を、1.0×10Ω/□以上、1.0×1011Ω/□以下とすることができる。このため、本発明に係る表面層は、絶縁性のセラミックスからなる表面層と比較して、トナーが静電的に付着し難い。なお、表面層が導電性であるとは、表面層の表面抵抗が1×10Ω/□以上、1×1013Ω/□以下であることを意味する。また、表面層が絶縁性であるとは、表面層の表面抵抗が1×1013Ω/□を超えることを意味する。また、酸化チタン膜(表面層)の表面抵抗は、ポリエステルフィルム上に成膜し、超高抵抗/微小電流計:R8340(商品名、アドバンテスト社)を用いてその膜の表面抵抗を測定することで特定することができる。
【0035】
表面層の膜厚は、表面層としての強度と柔軟性の観点から、5nm以上1.0μm以下、特には、10nm以上0.9μm以下が好ましい。
【0036】
<酸化チタン膜の製造方法>
本発明に係る酸化チタン膜は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティングの物理的気相成長(PVD)法、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学的気相成長(CVD)法、ゾルゲル法等によって形成することができる。
【0037】
例えば、プラズマCVD法を用いて、アルキル基が酸素原子を介して結合しているチタン原子を含む酸化チタン膜(以降、「アルコキシ変性酸化チタン膜」ともいう)を製造する場合、例えば以下のような装置および手順によって成膜することができる。すなわち、図4に示した、真空チャンバ41、互いに平行に配置された2つの平板電極42、原料ガスボンベ及び原料液体タンク43、原料供給手段44、チャンバ内のガス排気手段45、高周波を供給する高周波供給電源46、並びに、弾性ローラ48を回転するモータ47により構成される装置である。
【0038】
手順(1)
2つの平板電極42の間に軸芯体上に弾性層が形成された弾性ローラ48を設置し、アルコキシ変性酸化チタン膜が均一に形成されるように、モータ47を駆動させて軸芯体を軸を中心として回転させる。
手順(2)
排気手段により、真空チャンバ41内を減圧する。具体的には、例えば、2Pa以下、好ましくは1Pa以下にする。
手順(3)
原料ガス導入口より原料ガスを導入し、真空チャンバ41内の圧力の値が一定になるのを確認した後、平板電極42に高周波供給電源46により高周波電力を供給し、プラズマを発生させ、成膜を行う。
手順(4)
所定時間経過した後、原料ガス及び高周波電力供給を停止し、真空チャンバ41内に空気又は窒素を大気圧まで導入(リーク)し、アルコキシ変性酸化チタン膜が表面に形成された弾性ローラを取り出す。
【0039】
以上のような手順によりアルコキシ変性酸化チタン膜を有する導電性ローラを製造することが可能である。なお、プラズマCVD処理される弾性ローラ48は、均一なプラズマ雰囲気下に置けるのであれば多数本を同時に処理してもよい。
【0040】
ここで、原料ガスとしては、通常、ガス状の或いはガス状化したチタンテトラアルコキシドを使用し、必要に応じてこのチタンテトラアルコキシドを、アルゴンやヘリウム等の不活性ガス、酸化性ガス等と共に導入する。
【0041】
チタンテトラアルコキシドは、例えば、下記式(3)で示される構造を有するものが挙げられる。
【0042】
式(3)
Ti(OR)
上記式(3)中、Rは炭素数2以上18以下の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す。
【0043】
具体例を以下に挙げる。チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ‐n‐ブトキシド、チタンテトラ‐tert‐ブトキシド、チタンテトラ‐2‐エチルヘキソシド等。
【0044】
また、これらのチタンテトラアルコキシドを単独または複数混ぜた混合物として用いることができる。
【0045】
また、本発明に係るアルコキシ変性酸化チタン膜は、チタンテトラアルコキシドの制御された加水分解および縮合によっても製造することができる。即ち、本発明に係るアルコキシ変性酸化チタン膜は、チタンテトラアルコキシドの加水分解縮合物を含むことができる。かかる製造方法の1つの具体例としてゾルゲル法が挙げられる。
【0046】
ゾルゲル法においては、まず、アルコールおよび水の混合溶媒にチタンテトラアルコキシドを添加する。アルコールと水の混合比率はチタンテトラアルコキシドが溶解する範囲内で自由に設定することができる。また、アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等、水に溶解するアルコールであれば、任意に使用することができる。
【0047】
その後、必要に応じて、粘度調整や塗布性向上のため、メチルエチルケトンや酢酸エチル等の溶剤で希釈した後に、弾性層を設けたローラの周面上に塗布し、加熱することにより加水分解物を縮合させてアルコキシ変性酸化チタン膜を得る。ここで、加水分解及び縮合の際の加熱条件としては、加水分解および縮合によってすべてのアルコキシ基が反応してしまうことを抑制するために、加熱温度としては、160℃以上300℃以下、特には160℃以上180℃以下が好ましい。加熱時間としては、1時間以上、5時間以下が好ましい。
【0048】
また、表面にアルコキシ変性酸化チタン膜を有する本発明の導電性ローラの表面電位をVp、この導電性ローラの表面層を除去した、表面に弾性層を有するローラの表面電位をVeとしたとき、Vp/Veが0.10以上10.00以下(0.10≦Vp/Ve≦10.00)であることが好ましい。なお、Veは、弾性層の表面電位であることができ、弾性層を2層で構成した場合は、第2の弾性層の表面電位であることができる。
【0049】
Vp/Veを上記範囲内とすることにより、本発明に係る電子写真用部材を現像ローラとして使用した場合において、現像ローラの表面近傍の電位が最適な範囲に保たれるため、トナーに対する摩擦電荷の付与能力を、より安定させることができる。また、トナーの過剰な帯電による現像ローラの表面のトナー付着やゴーストの発生をより確実に抑制することができる。
【0050】
なお、導電性ローラの表面電位は、以下の方法により測定することができる。即ち、Quality Engineering Associates社製半絶縁体デバイスの郵電緩和分析システムを用いて、導電性ローラの長手方向に260分割、周方向に18分割した各点の表面電位を測定し、それらの値を平均した値とすることができる。
【0051】
本発明に係る酸化チタン膜の弾性率の最適化の観点から、炭素原子と結合している酸素原子の存在比(OC−O)と、炭素原子と結合する炭素原子(CC−C)の存在比率(CC−C/OC−O)は、3以上8以下、特には、3以上6以下が好ましい。
【0052】
なお、炭素原子と結合している酸素原子の存在比と炭素原子と結合する炭素原子の存在比の割合(CC−C/OC−O)は、走査型X線光電子分光分析装置を用いて、炭素原子‐酸素原子結合の酸素原子の存在比(OC−O)と炭素原子‐炭素原子結合の炭素原子の存在比(CC−C)の量をそれぞれ測定し、両者の割合を求めることで、算出できる。この分析装置としては、PHI5000VersaProbe(商品名、アルバック・ファイ株式会社)を用いることができる。
【0053】
(電子写真装置及び現像装置)
本発明の導電性ローラを用いることができる電子写真装置の一例を図2に示す。なお、この例では、本発明の導電性ローラを現像ローラとして使用している。図2の模式図に示すカラー電子写真装置は、イエローY、マゼンダM、シアンC及びブラックBKの色トナー毎に設けられた現像装置(各色用)(10a〜10d)をタンデム形式で有している。
【0054】
現像装置は、仕様は各色トナー特性に応じて少し差異があるものの、基本的構成において同じである。現像装置には、矢印方向に回転する感光体ドラム2が設けられている。その周囲には、感光体ドラム2を一様に帯電するための帯電ローラ9、一様に帯電した感光体ドラム2にレーザー光21を照射して静電潜像を形成する露光手段、静電潜像を形成した感光体ドラム2にトナーを供給し静電潜像を現像するホッパー3が設けられている。更に、感光体ドラム2上のトナー像を、給紙ローラ22により供給され搬送ベルト23によって搬送される紙等の記録媒体(転写材)24の裏面からバイアス電源25を印加して記録媒体24上に転写する転写ローラ26を有する転写部材が設けられている。
【0055】
搬送ベルト23は、駆動ローラ27、従動ローラ28及びテンションローラ29に懸架され、各画像形成部で形成されたトナー像を記録媒体24上に順次重畳して転写するように、画像形成部と同期して移動して記録媒体24を搬送するよう制御されている。なお、記録媒体24は、搬送ベルト23にさしかかる直前に設けられた吸着ローラ30の働きにより、搬送ベルト23に静電的に吸着されて、搬送されるようになっている。
【0056】
この電子写真装置では、感光体ドラム2と、本発明の導電性ローラ1である現像ローラとは接触して配置されており、それらは感光体ドラム2と現像ローラの接触箇所において同方向に回転している。更に、この電子写真装置には、記録媒体24上に重畳転写したトナー像を加熱などにより定着する定着装置31と、画像形成された記録媒体を装置外に排紙する搬送装置(図示せず)とが設けられている。なお、記録媒体24は剥離装置32の働きにより搬送ベルト23から剥がされて定着装置31に送られるようになっている。一方、現像装置には感光体2上に転写されずに残存する転写残トナーを除去するクリーニングブレード33を有するクリーニング部材と、感光体から掻き取られたトナーを収納する廃トナー容器34とが設けられている。クリーニングされた感光体ドラム2は画像形成可能となって待機するようになっている。
【0057】
続いて、図3に現像装置の一例を示す。この現像装置では、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体としての感光体ドラム2は、矢印B方向に回転される。トナー容器であるホッパー3中には非磁性一成分トナー4を撹拌するための撹拌翼5が設けられている。本発明の導電性ローラ1である現像ローラにトナー4を供給し、かつ現像後の現像ローラの表面に存在するトナー4を剥ぎ取るためのトナー供給部材6が現像ローラに当接している。トナー供給部材である供給ローラが現像ローラ(矢印A方向)と同じ方向(矢印C方向)に回転することにより、トナー供給・剥ぎ取りローラの表面は現像ローラの表面とカウンター方向に移動することになる。これにより、ホッパー3から供給された非磁性トナーを有する一成分非磁性トナーが現像ローラに供給される。現像ローラには、これに担持された非磁性トナーを有する一成分非磁性トナー4を移動させるために、現像バイアス電源7により現像バイアス電圧が印加される。
【0058】
トナー供給・剥ぎ取り部材6としては、樹脂、ゴム、スポンジ等の弾性ローラ部材が好ましい。感光体ドラム2に現像移行されなかったトナーをトナー供給・剥ぎ取り部材6により、一旦現像ローラ表面から剥ぎ取ることにより、現像ローラ上における不動のトナーの発生を阻止し、トナーの帯電を均一化する。
【0059】
現像ローラ上の非磁性一成分トナー4の層厚を規制する部材としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴム弾性を有する材料、あるいはリン青銅、ステンレス銅などの金属弾性を有する材料のトナー規制部材8を使用することができる。トナー規制部材8を現像ローラの回転方向と逆の姿勢で該現像ローラに圧接させることにより、現像ローラ上に更に薄いトナー層を形成することができる。
【0060】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真用部材を例えば帯電ローラとして具備し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されることができる。
【実施例】
【0061】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0062】
[導電性ローラの形状]
各例において、導電性ローラの形状を、用途に応じて、下記の芯金の直径、および弾性層の厚さとなるよう導電性ローラを製造した。なお、弾性層が2層構成の場合は、その2層の合計が以下の厚さになるようにした。
・現像ローラ: 芯金の直径=6mm、弾性層の厚さ=3.0mm
・帯電ローラ: 芯金の直径=6mm、弾性層の厚さ=1.25mm
また、第2の弾性層(2層目の弾性層)及び表面層については、現像ローラ、帯電ローラに関わらず、記載された厚みの弾性層及び表面層を製造した。
【0063】
[弾性ローラの製造]
まず、軸芯体(芯金)と、弾性層とを有する以下の弾性ローラを作製した。
【0064】
(弾性ローラ1−1の作製)
ステンレス鋼(SUS304)製の導電性の軸芯体を芯金に用いた。当該軸芯体の周面にシランカップリング系プライマー(商品名:DY35−051、東レ・ダウコーニング社)を塗布し、その後、温度150℃で60分間焼付けた。
【0065】
次に、円筒状の金型の内部に、上記の軸芯体を同軸に配置し、該金型の内周面と該軸芯体の周面との間隙を下記表1に示す材料を分散させた弾性層形成用の液状材料で充填し、温度150℃で20分加熱した。冷却後、金型から軸芯体を脱型し、更に、該軸芯体を温度200℃に加熱したオーブン中で5時間加熱して、軸芯体の周りに第1の弾性層を設けた。
【0066】
【表1】

【0067】
次に第1の弾性層の周面上に以下のようにして第2の弾性層(樹脂層)を設けた。すなわち、表2に示す材料を、メチルエチルケトン(MEK)を加えて、よく混合した混合物をオーバーフロー型の循環式塗布装置に入れた。当該循環式塗布装置に、第1の弾性層を設けた軸芯体を浸漬し、引き上げた後に、風乾を30分行い、その後、温度150℃に加熱したオーブン中で5時間加熱し、厚さ20μmの第2の弾性層を設け、軸芯体と2層の弾性層とを有する弾性ローラ1−1を製造した。
【0068】
【表2】

【0069】
(弾性ローラ1−2〜1−6の作製)
表1において、カーボンブラックの量を12質量部、15質量部、8質量部、18質量部、および、13質量部にそれぞれ変更したこと以外は、弾性ローラ1−1と同様にして弾性ローラ1−2〜1−6を作製した。
【0070】
(弾性ローラ2−1の作製)
ステンレス鋼:SUS304製の軸芯体にシランカップリング系プライマー:DY35−051(商品名、東レ・ダウコーニング社)を塗布後、温度150℃で60分間焼付けした。次に、この軸芯体上に、以下の表3に示す材料をよく混練したゴム混合物をクロスヘッド押出機により設け、温度170℃で20分加熱し、弾性ローラ2−1を作製した。
【0071】
【表3】

【0072】
(弾性ローラ2−2〜2−3の作製)
表3において、カーボンブラックの配合量を15質量部、および50質量部にそれぞれ変更したこと以外は弾性ローラ2−1と同様にして弾性ローラ2−2〜2−3を作製した。
【0073】
(弾性ローラ3−1の作製)
ステンレス鋼:SUS304製の軸芯体にプライマー:メタロックU−20(商品名、東洋化学研究所社)を塗布し、温度80℃で30分間乾燥後、さらに120℃で60分加熱した。次いで、この軸芯体の上に、以下の表4に示す材料をよく混練したゴム混合物をクロスヘッド押出機により設け、温度150℃で50分加熱し、弾性ローラ3−1を作製した。
【0074】
【表4】

【0075】
(弾性ローラ3−2〜3−3の作製)
上記表4において、カーボンブラックの配合量を、30質量部、および50質量部にそれぞれ変更したこと以外は弾性ローラ3−1と同様にして弾性ローラ3−2〜3−3を作製した。
【0076】
(弾性ローラ4−1の作製)
ステンレス鋼:SUS304製の軸芯体にプライマー:メタロックU−20(商品名、東洋化学研究所社)を塗布し、温度80℃で30分間乾燥後、さらに120℃で60分加熱した。次いで、この軸芯体の上に、以下の表5に示す材料をよく混練したゴム混合物をクロスヘッド押出機により設け、温度140℃で60分加熱し、弾性ローラ4−1を作製した。
【0077】
【表5】

【0078】
(弾性ローラ4−2〜4−3の作製)
上記表4において、カーボンブラックの配合量を、8質量部、および、1質量部にそれぞれ変更したこと以外は、弾性ローラ4−1と同様にして弾性ローラ4−2〜4−3を作製した。
【0079】
(弾性ローラ5の作製)
弾性ローラ2−1の周面上に、以下のようにして第2の弾性層を設けた。すなわち、表6に示す材料を秤量し、メチルイソブチルケトン(MIBK)を加え、よくかきまぜた混合物をオーバーフロー型循環式塗布装置に入れた。上記塗布装置に弾性ローラ2−1を浸漬し、引き上げた後に、温度80℃で1時間加熱後、更に、温度160℃で1時間加熱し厚さ20μmの第2の弾性層を設け、弾性ローラ5を製造した。
【0080】
【表6】

【0081】
(弾性ローラ6の作製)
弾性ローラ3−1の周面上に、弾性ローラ5に係る第2の弾性層を設けた。これを、弾性ローラ6と称する。
【0082】
(弾性ローラ7の作製)
弾性ローラ4−1の周面上に、弾性ローラ5に係る第2の弾性層を設けた。これを、弾性ローラ7と称する。
【0083】
[実施例1]
(実施例1−1)
<電子写真用ローラ1−1の作製>
上記で作製した弾性ローラ1−1の弾性層の周面に以下の方法によって表面層を形成した。すなわち、弾性ローラ1−1を、図4に示すCVD装置にセットし、チャンバ内を真空ポンプで2Paになるまで減圧した。次いで、ガス化したチタンテトライソプロポキシドをチャンバ内に5cm/secの流量で導入し、かつ、弾性ローラ1−1を、回転数20rpmで回転させながら、高周波電源より、周波数13.56MHz、70Wの電力を平板電極に供給し、電極間にプラズマを発生させた。この状態を120秒間維持することにより、弾性ローラ1−1の周面上に厚さ100nmの表面層を製造した。こうして、電子写真用ローラ1−1を作製した。
【0084】
(実施例1−2〜1−3)
<電子写真用ローラ1−2〜1−3の作製>
弾性ローラ1−1を、弾性ローラ1−2および弾性ローラ1−3にそれぞれ変更したこと以外は、電子写真用ローラ1−1と同様にして電子写真用ローラ1−2〜1−3を作製した。
【0085】
[評価(1):式1、式2で表わされる化学結合の有無の確認]
実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3の各々の表面層について、走査型X線光電子分光分析装置(商品名:PHI5000 VersaProbe、アルバック・ファイ株式会社)を用いて、分析を行って、O−Ti−O結合、および、Ti−O−C結合の有無を確認した。
【0086】
[評価(2):酸素、炭素原子比CC−C/OC−Oの評価]
実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3の各々の表面層について、走査型X線光電子分光分析装置(商品名:PHI5000VersaProbe、アルバック・ファイ株式会社)を用いて、炭素原子と結合している炭素原子の存在比(CC−C)と、炭素原子と結合している酸素原子(OC−O)の存在比の量を測定し、割合CC−C/OC−Oを求めた。
【0087】
[評価(3):表面層を構成している酸化チタン膜の表面抵抗]
ポリエステルフィルム上に、実施例1に係る表面層と同じ方法を用いて酸化チタン膜を成膜し、超高抵抗/微小電流計(商品名:R8340、アドバンテスト社)を用いて印加電圧300Vとしたときの酸化チタン膜の表面抵抗を測定した。
【0088】
[評価(4):表面電位評価]
実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3の各々について、長手方向に260分割、周方向に18分割した各点で表面電位を測定した。全測定点における表面電位の値の算術平均値を各電子写真用ローラの表面電位、Vpとした。
【0089】
次に、Vpを測定後の各電子写真用ローラの表面を研磨機を用いて、表面から深さ方向に厚さ10μm削った。研磨後の各電子写真用ローラの各々について、先と同様にして表面電位を測定し、算出して、研磨後の電子写真用ローラの各々の表面電位、Veを得た。表面電位VpとVeからVp/Veを求めた。なお、表面電位の測定には、Quality Engineering Associates社製の誘電緩和分析システムを用いた。
【0090】
[評価(5):現像ローラとして用いたときの評価(その1)]
<評価(5)−1>:ゴースト性能評価
実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3を現像ローラとして、カラーレーザープリンタ(商品名:LBP7700C改造機、キヤノン社製)用のプロセスカートリッジにそれぞれ装着した。これらのプロセスカートリッジをそれぞれ上記カラーレーザープリンタに装填し、温度30℃/相対湿度80%の環境下、および、温度15℃/相対湿度10%の環境下で、電子写真画像を20000枚出力した。電子写真画像は、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字が、印字率が1%となるように印字される画像とした。引き続いて、以下のような画像を出力した。
【0091】
・ゴースト性能を評価するための画像
一枚の紙のなかで上部に一辺20mmの正方形状のベタ画像が6つ横に並んでおり、その下に全面ハーフトーンのパターンがある画像で、ハーフトーンの濃度がそれぞれ異なる2種類の画像パターンをそれぞれ1枚ずつ計2枚用いた。なお、ハーフトーンは分光濃度計:X−Rite504(商品名、エス・ディ・ジー社)を用いて測定した値が0.4と0.7を示す濃度のものを用いた。
【0092】
得られた画像を目視で観察し、下記表7の基準によって評価した。
【0093】
【表7】

【0094】
<評価(5)−2>:フィルミング評価
現像ローラとして使用した各電子写真用ローラをプロセスカートリッジから取り出し、光学顕微鏡にて表面を観察し、下記表8に記載の基準によって評価した。
【0095】
【表8】

【0096】
[評価(6)現像ローラとして用いたときの評価(その2)]
<評価(6)−1>
実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3を現像ローラとして、カラーレーザープリンタ(商品名:LBP7700C改造機、キヤノン社製)用のプロセスカートリッジにそれぞれ装着した。これらのプロセスカートリッジをそれぞれ上記カラーレーザープリンタに装填し、温度30℃/相対湿度80%の環境下で、電子写真画像を20000枚出力した。電子写真画像は、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字が、印字率が1%となるように印字される画像とした。引き続いて、ベタ白画像を出力後、白色光度計TC−60DS/A(商品名、東京電色社)で反射濃度を測定した。その際、印刷前後の非印字部を測定したときの濃度差をかぶり(%)とし、下記表9に記載の基準によって評価した。
【0097】
【表9】

【0098】
<評価(6)−2>
上記評価(6)−1の評価に供したベタ白画像の出力後に、現像ローラとして使用した各電子写真用ローラをプロセスカートリッジから取り出し、光学顕微鏡にて表面の削れの有無、程度を観察し、下記表10に記載の基準によって評価した。
【0099】
【表10】

【0100】
[実施例2]
(実施例2−1〜2−3)
<電子写真用ローラ2−1〜2−3の作製>
原料ガスとしてチタンテトラ−n−ブトキシドを用いたこと以外は、実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3と同様にして電子写真用ローラ2−1〜2−3をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0101】
[実施例3]
(実施例3−1〜3−3)
<電子写真用ローラ3−1〜3−3の作製>
原料ガスとしてチタンテトラn−ブトキシド/チタンテトラ2−エチルヘキソシド=1/1混合物(Ti原子のモル比)を用いたこと以外は、実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3と同様にして電子写真用ローラ3−1〜3−3をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0102】
[実施例4]
(実施例4−1〜4−3)
原料ガスとしてチタンテトラ2−エチルヘキソシドを用いたこと以外は、実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3と同様にして電子写真用ローラ4−1〜4−3をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0103】
[実施例5]
(実施例5−1〜5−3)
原料ガスとしてチタンテトラエトキシドを用いたこと以外は、実施例1に係る電子写真用ローラ1−1〜1−3と同様にして電子写真用ローラ5−1〜5−3をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0104】
[実施例6]
(実施例6−1〜6−2)
<電子写真用ローラ6−1〜6−2の作製>
弾性ローラ1−4および1−5を用いたこと以外は、実施例1に係る電子写真用ローラ1−1と同様にして電子写真用ローラ6−1〜6−2をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0105】
[実施例7]
(実施例7−1〜7−2)
<電子写真用ローラ7−1〜7−2の作製>
原料ガスとしてチタンテトラn−ブトキシド/チタンテトラ2−エチルヘキソシド=1/1混合物(Ti原子のモル比)を用いたこと以外は、実施例6に係る電子写真用ローラ6−1〜6−2と同様にして電子写真用ローラ7−1〜7−2をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0106】
[実施例8]
(実施例8−1〜8−2)
<電子写真用ローラ8−1〜8−2の作製>
原料ガスとしてチタンテトラ2−エチルヘキソシドを用いたこと以外は、実施例6に係る電子写真用ローラ6−1〜6−2と同様にして電子写真用ローラ8−1〜8−2をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0107】
[実施例9]
(実施例9−1)
<電子写真用ローラ9−1の作製>
チタンテトライソプロポキシド/チタンテトラオクタデシロキシド=1/1混合物(Ti原子のモル比)100質量部に対し、イソプロパノール20質量部、水500質量部を加え、150℃で2時間、加熱混合した。冷却後、溶液をディッピング装置に入れ、弾性ローラ1−1を浸漬し、引き上げた後に、風乾を60分行い、その後、温度180℃で5時間加熱し、厚さ100nmの表面層を製造した。こうして電子写真用ローラ9−1を作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0108】
(実施例9−2)
<電子写真用ローラ9−2の作製>
弾性ローラ1−5を用いたこと以外は電子写真用ローラ9−1と同様にして電子写真用ローラ9−2を作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0109】
[実施例10]
(実施例10−1〜10−3)
<電子写真用ローラ10−1〜10−3>
弾性ローラ2−1、4−1および3−1を用いたこと以外は、実施例1に係る電子写真用ローラ1−1と同様にして電子写真用ローラ10−1〜10−3をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0110】
[実施例11]
<電子写真用ローラ11の作製>
弾性ローラ3−2を用いたこと以外は、実施例2に係る電子写真用ローラ2−1と同様にして電子写真用ローラ11を作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0111】
[実施例12]
(実施例12−1〜12−2)
<電子写真用ローラ12−1〜12−2の作製>
弾性ローラ4−2、および2−2を用いたこと以外は、実施例3に係る電子写真用ローラ3−1と同様にして電子写真用ローラ12−1〜12−2をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0112】
[実施例13]
<電子写真用ローラ13の作製>
チタンテトライソプロポキシド/チタンテトラオクタデシロキシド=1/1混合物を、チタンテトラn−ブトキシド/チタンテトラ2−エチルヘキソシド=1/1混合物(Ti原子のモル比)に変更したこと以外は、電子写真用ローラ9−1と同様にして電子写真用ローラ13を作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0113】
[実施例14]
<電子写真用ローラ14の作製>
弾性ローラ3−1を用いたこと以外は、実施例4に係る電子写真用ローラ4−1と同様にして電子写真用ローラ14を作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0114】
[実施例15]
<電子写真用ローラ15の作製>
弾性ローラ1−6を用いたこと、および、チタンテトライソプロポキシド/チタンテトラオクタデシロキシド=1/1混合物を、チタンテトラ−2−エチルヘキソシドに変更したこと以外は、電子写真用ローラ9−1と同様にして電子写真用ローラ15を作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0115】
[実施例16]
(実施例16−1〜16−2)
<電子写真用ローラ16−1〜16−2の作製>
弾性ローラ2−2、および4−3を用いたこと以外は、実施例4に係る電子写真用ローラ4−1と同様にして電子写真用ローラ16−1〜16−2をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0116】
[実施例17]
<電子写真用ローラ17の作製>
弾性ローラ2−3を用いたこと以外は、実施例5に係る電子写真用ローラ5−1と同様にして電子写真用ローラ17を作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0117】
[実施例18]
(実施例18−1〜18−2)
<電子写真用ローラ18−1〜18−2の作製>
弾性ローラ3−3、および4−3を用いたこと以外は、実施例3に係る電子写真用ローラ3−1と同様にして電子写真用ローラ18−1〜18−2をそれぞれ作製し、評価(1)〜(6)に供した。
【0118】
[比較例1]
<電子写真用ローラC−1の作製>
弾性ローラ1−1を比較例1に係る電子写真用ローラC−1として用意し、評価(5)〜(6)に供した。
【0119】
[比較例2]
<電子写真用ローラC−2の作製>
弾性ローラ2−1を比較例2に係る電子写真用ローラC−2として用意し、評価(5)〜(6)に供した。
【0120】
[比較例3]
<電子写真用ローラC−3の作製>
弾性ローラ3−1を比較例3に係る電子写真用ローラC−3として用意し、評価(5)〜(6)に供した。
【0121】
[比較例4]
<電子写真用ローラC−4の作製>
弾性ローラ4−1を比較例4に係る電子写真用ローラC−4として用意し、評価(5)〜(6)に供した。
【0122】
[比較例5]
<電子写真用ローラC−5の作製>
弾性ローラ1−1を周方向に回転させながら、酸化チタン粉体(商品名:R−820、石原産業株式会社)をふりかけた後、余分な酸化チタン粉体をエアガンにより除去することにより酸化チタン粉体を弾性ローラ表面に担持させてなる電子写真用ローラC−5を作製し、評価(1)、および(5)〜(6)に供した。
【0123】
[比較例6]
<電子写真用ローラC−6の作製>
弾性ローラ1−1の表面にスパッタリングによって酸化チタン膜からなる表面層を形成して電子写真用ローラC−6を作製し、評価(1)、(5)および(6)に供した。
【0124】
[比較例7]
<電子写真用ローラC−7の作製>
弾性ローラ1−1を、図4に示すCVD装置にセットし、チャンバ内を真空ポンプで2Paになるまで減圧した。次いで、チャンバ内に、テトラメチルジシロキサンを20cm/secの流量で導入すると共に、酸素を100cm/secの流量で導入し、かつ、弾性ローラ1−1を、回転数20rpmで回転させながら、高周波電源より、周波数13.56MHz、200Wの電力を平板電極に供給し、電極間にプラズマを発生させた。この状態を120秒間維持することにより、弾性ローラ1−1の周面上にシリカ膜からなる表面層を形成した。こうして電子写真用ローラC−7を得た。この電子写真用ローラC−7を評価(1)および(3)〜(6)に供した。
【0125】
上記実施例1〜18について、評価結果を表11−1および表11−2に示す。また、比較例1〜7の結果を表12に示す。
【0126】
【表11】

【0127】
【表12】

【0128】
【表13】

【0129】
実施例1〜18で作製した電子写真用ローラは、表面層が式(1)および式(2)で表わされる化学結合をいずれも含む酸化チタン膜から構成されている。
式(2)で表される結合を含む酸化チタン膜は、式(1)で表される化学結合のみを含む酸化チタン膜よりも原子間の結合数が少ないため、柔軟な膜となる。そのため、各実施例に係る電子写真用ローラを現像ローラとして使用した場合においても、表面にトナー等が固着し難く、フィルミングの発生が抑制されていた。
【0130】
また、各実施例に係る電子写真用ローラを現像ローラとして用いた場合においても、表面層の削れが見られず、また、表面層は導電性であるため、ゴースト性能、かぶり性能が良好であった。
【0131】
一方、比較例1〜4に係る電子写真用ローラC−1〜C−4は、表面が弾性層由来の樹脂もしくはゴムであるため相対的に耐久性に劣り、現像ローラとして使用した場合に、感光ドラムや現像剤規制部材との摺擦により表面に削れが見られた。
【0132】
また、表面に酸化チタン粉末を付着させた比較例5に係る電子写真用ローラC−5は、現像ローラとしての使用中に、酸化チタン粉末が弾性層の表面から剥離し、弾性層の表面が露出し、その結果として、表面に削れが見られた。さらに、表面の平滑度が無いため、トナーが現像ローラの表面に滞留しやすくなり、これによってトナーが固着しやすくなり、フィルミングが見られた。
【0133】
さらに、表面層として式(2)で表される化学結合を有しない酸化チタン膜からなる表面層を有する比較例6に係る電子写真用ローラは、表面層が硬質であるため、トナーのフィルミングが生じた。
【0134】
さらにまた、シリカ膜からなる表面層を有する比較例7に係る電子写真用ローラC−7は、表面層が絶縁性であることから、表面電位が高く、電子写真画像にゴーストが見られた。
【0135】
以上より、本発明に係る電子写真用ローラは、現像ローラとして長時間用いても、表面層が削れにくい。また、本発明に係る酸化チタン膜は導電性を有するため、ゴーストが発生しにくい。また、式(1)で表される化学結合のみからなる酸化チタン膜と比較して柔軟であるため、トナーの劣化を引き起こしにくく、高品位な電子写真画像の長期に亘る安定的な形成に資するものである。
【0136】
[実施例19]
実施例10に係る電子写真用ローラ10−1と同じ電子写真用ローラを作製し、本実施例に係る電子写真用ローラ19とした。この電子写真用ローラ19の評価(1)〜(4)の結果は、電子写真用ローラ10−1と同じであるため省略し、下記の評価(7)に供した。
【0137】
<評価(7)>
電子写真用ローラ19を、帯電ローラとしてカラーレーザープリンタ(商品名:LBP7700C改造機、キヤノン社製)用のプロセスカートリッジに装着した。このプロセスカートリッジを上記カラーレーザープリンタに装填した。このレーザープリンタを用いて、温度15℃/相対湿度10%の環境下で、電子写真画像を20000枚出力した。電子写真画像は、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字が、印字率が1%となるように印字される画像とした。引き続いて、濃度がそれぞれ異なる2種類のハーフトーン画像をそれぞれ1枚ずつ出力した。なお、ハーフトーン画像は分光濃度計:X−Rite504(商品名、エス・ディ・ジー社)を用いて測定した値が0.4と0.7を示す濃度のものを用いた。
【0138】
ハーフトーン画像形成後の上記電子写真装置からプロセスカートリッジを取り出し、当該プロセスカートリッジから電子写真用ローラ19を取り出し、光学顕微鏡にて500倍の倍率で、表面の20か所を観察した。そして、観察される付着物の有無、および、付着物のサイズにより、下記表13に記載の基準によって評価した。
【0139】
【表14】

【0140】
また、上記で得た2枚のハーフトーン画像について、目視で、帯電ローラの帯電ムラに起因によるスジの有無を観察し、下記表14に記載の基準に基づいて評価した。
【0141】
【表15】

【0142】
[実施例20]
弾性ローラ3−1を用いたこと、および、原料ガスとしてチタンテトラエトキシドを用いた以外は、実施例9に係る電子写真用ローラ9−1と同様にして電子写真用ローラ20を作製し、評価(1)〜(4)および評価(7)に供した。
【0143】
[実施例21]
弾性ローラ4−1を用いたこと、および、原料ガスとして、チタンテトラ−n−プロポキシドを用いたこと以外は、実施例1に係る電子写真用ローラ1−1と同様にして電子写真用ローラ21を作製し、評価(1)〜(4)および(7)に供した。
【0144】
[実施例22]
弾性ローラ5を用いたこと、および、原料ガスとして、チタンテトラ−n−プロポキシドを用いたこと以外は、実施例9に係る電子写真用ローラ9−1と同様にして電子写真用ローラ22を作製し、評価(1)〜(4)および(7)に供した。
【0145】
[実施例23]
弾性ローラ6を用いたこと以外は、実施例19に係る電子写真用ローラ19と同様にして電子写真用ローラ23を作製し、評価(1)〜(4)および(7)に供した。
【0146】
[実施例24]
弾性ローラ7を用いたこと以外は、実施例20に係る電子写真用ローラ20と同様にして電子写真用ローラ24を作製し、評価(1)〜(4)および(7)に供した。
【0147】
[比較例8]
弾性ローラ2−1の周面にスパッタリングにて酸化チタン膜からなる表面層を形成して電子写真用ローラC−8を作製し、評価(1)および(7)に供した。
【0148】
[比較例9]
弾性ローラ7を用いたこと以外は、比較例7に係る電子写真用ローラC−7と同様にして電子写真用ローラC−9を作製し、評価(1)、(3)、(4)および(7)に供した。
【0149】
上記実施例19〜24および比較例8〜9の評価結果を表15に示す。
【0150】
【表16】

【0151】
本発明に係る電子写真用ローラを帯電ローラとして使用した場合、表面層がアルコキシ変性した酸化チタン膜からなるため、帯電ローラの表面への異物の付着が抑制される。そのため、帯電ローラに起因する電子写真感光体への帯電ムラの発生が抑制でき、その結果として、電子写真画像への帯電ムラ起因のスジの発生を抑制することができた。
【0152】
一方、表面層として式(2)で表される化学結合を有しない酸化チタン膜からなる表面層を有する比較例8に係る電子写真用ローラC−8は、弾性率が高いため感光ドラムとの接触圧が高くなり、これによりトナーの外添剤等が付着しやすくなり、帯電ローラ表面に50μm以上の付着物が観察された。
【0153】
さらにまた、シリカ膜からなる表面層を有する比較例9に係る電子写真用ローラC−9は、表面電位が高いため、表面に静電的にトナーの外添剤等が付着した。加えて、付着ムラと、高い表面電位とが相俟って、帯電ローラの周方向に表面電位ムラが生じ、電子写真感光体に帯電ムラを生じさせ、その結果として、電子写真画像に当該帯電ムラに起因するスジを生じさせた。
【0154】
以上より、本発明に係る電子写真用ローラを帯電ローラとして用いた場合において、帯電ローラ表面への異物の付着と、帯電ムラに起因するスジを抑制することができることがわかった。
【符号の説明】
【0155】
1 導電性ローラ
1a 軸芯体
1b 弾性層
1c 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体、弾性層および表面層を有する電子写真用部材であって、
該表面層は、
下記式(1)および式(2)で表わされる化学結合を有する酸化チタン膜からなることを特徴とする電子写真用部材:
式(1)
O−Ti−O
式(2)
Ti−O−C。
【請求項2】
前記酸化チタン膜が、下記式(3)で表されるチタンテトラアルコキシドの加水分解縮合物を含む請求項1に記載の電子写真用部材:
式(3)
Ti(OR)
(式(3)中、Rは炭素数2以上18以下の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す)。
【請求項3】
前記酸化チタン膜中の、炭素原子と結合している酸素原子の存在比(OC−O)と、炭素原子と結合する炭素原子(CC−C)の存在比率(CC−C/OC−O)が、3以上8以下である請求項2に記載の電子写真用部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子写真用部材を具備し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子写真用部材を具備していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−20240(P2013−20240A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129838(P2012−129838)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】